説明

金属基材用のポリフッ化ビニリデンコーティング

本発明は、優れた耐化学薬品性、耐衝撃性及び耐熱性並びに良好な可撓性を有する保護バリヤーを提供するために金属に対して用いるため、特に金属燃料パイプ及びブレーキチューブ等に対して用いるための1工程フルオロポリマー{特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)}コーティングに関する。コーティング組成物は、樹脂固形分を基準として75〜94%のポリフッ化ビニリデン樹脂、5〜20%のアクリル樹脂及び1〜15%のポリエポキシド樹脂を含有する。前記コーティングは、下塗りを必要とすることなく金属基材、特に前処理していない亜鉛めっき鋼に対する優れた接着性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐化学薬品性、耐衝撃性及び耐熱性並びに良好な可撓性を有する保護バリヤーを提供するために金属に対して用いるため、特に金属燃料パイプ及びブレーキチューブ等に対して用いるための1工程フルオロポリマー{特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)}コーティングに関する。コーティング組成物は、樹脂固形分を基準として75〜94%のポリフッ化ビニリデン樹脂、5〜20%のアクリル樹脂及び1〜15%のポリエポキシド樹脂を含有する。前記コーティングは、下塗りを必要とすることなく金属基材、特に前処理していない亜鉛めっき鋼に対する優れた接着性を有する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキチューブや金属燃料パイプのような金属チューブは、耐化学薬品性、塩水噴霧腐食耐性、耐衝撃性及び耐熱性を有することが必要とされる。この金属には一般的に、化学的浸食及び磨食(機械的浸食)に耐えることができる保護コーティングが施される。
【0003】
フルオロカーボンをベースとする樹脂は、金属に優れた保護を提供すると共に持続性がある美的外観を付与することが知られている。残念ながら、これらの樹脂はそれら自体では金属基材への接着性が非常に劣る。
【0004】
フルオロカーボンをベースとするコーティングの金属への接着性を高めるための1つの方法は、下塗り又はその他の表面処理であってトップコートの基材への接着性を改善し且つ基材の耐腐食性をも改善するものを施すものである。米国特許第6500565号明細書及び米国特許出願公開第2002/0090528号明細書には、自動車ブレーキチューブ用の多層耐腐食性PVDFコーティングが開示されている。その金属基材は、亜鉛又は亜鉛−ニッケルめっき層及び三価クロムのクロメートフィルムで表面処理され、エポキシ層を下塗りされる。米国特許第4379885号明細書には、金属基材用の下塗りとして特に有用なアクリルをベースとするコーティング組成物が開示されている。
【0005】
PVDFコーティングを提供するためのこれらの方法の問題点は、PVDFフィルムの良好な接着性を保証するためにはこれらの方法はアンダーコーティング及び続いてのPVDFコーティングの2つの工程を伴うということであり、このことは、追加の製造工程の費用及び複雑さを追加する。
【0006】
米国特許第5130201号明細書には、金属表面用の1工程ポリビニリデンコーティングが記載されている。非常に広範な(10〜95%)フッ化ビニリデン及び非常に広範な(1〜80%)相溶性が乏しい樹脂、例えばエポキシ樹脂が記載されている。最大70%のPVDF樹脂及び最少7.5%の硬化剤が例示されている。
【0007】
米国特許第5130201号明細書に記載された発明の1工程コーティングについての問題点は、教示されているコーティング中のPVDFの割合が低いことによってコーティングの保護特性がある程度犠牲になっているということであり、また、記載されている系は架橋度が高くて可撓性が殆どないものであり、即ちコーティングの亀裂を引き起こすことがあるということである。
【特許文献1】米国特許第6500565号明細書
【特許文献2】米国特許第4379885号明細書
【特許文献3】米国特許第5130201号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属基材(特に金属燃料パイプ及びブレーキチューブのような用途におけるもの)をコーティングするための、良好な接着性、優れた耐化学薬品性(例えば耐ブレーキ液性)、優れた保護特性及び可撓性を有する1工程コーティングに対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、75%超のフルオロポリマー、5〜20%のアクリル樹脂及び1〜15%のポリエポキシド樹脂を有する低架橋度の組成物から、良好な接着性、優れた耐化学薬品性、耐衝撃性、耐腐食性、耐摩耗性及び耐熱性並びに良好な可撓性を有するフルオロポリマーコーティングを形成させることができるということが見出された。このコーティングは、金属燃料パイプ及びブレーキチューブに要求される特性を提供する。追加の利点として、本発明の組成物でコーティングされたブレーキチューブは、優れた耐ブレーキ液性を有する。
【0010】
発明の概要
従って、本発明の第1の目的は、金属基材への良好な接着性を有するフルオロポリマーコーティングを製造することにある。
【0011】
本発明の第2の目的は、優れた耐化学薬品性、耐衝撃性、耐腐食性、耐摩耗性及び耐熱性のためにフルオロポリマーを高い割合で有するフルオロポリマーコーティングを製造することにある。
【0012】
本発明の第3の目的は、金属燃料パイプ及びブレーキチューブに用いるための可撓性コーティングを提供するフルオロポリマー組成物を製造することにある。
【0013】
本発明の第4の目的は、1工程プロセスによってフルオロポリマー組成物でコーティングされた被覆基材を製造することにある。
【0014】
本発明のこれらの目的は、本発明の好ましい実施態様の原理に従って、次のものを含む組成物によって達成される:
(a)75〜94重量%のフルオロポリマー樹脂;
(b)5〜20重量%の少なくとも1種のアクリル樹脂;
(c)1〜15重量%の少なくとも1種のエポキシド樹脂;及び
(d)随意としての5重量%までの架橋剤:
(すべての百分率は樹脂固形分を基準とする)。
【0015】
上記の目的はさらに、
・第1の目的のコーティング組成物を形成させる工程;
・該コーティング組成物を基材の少なくとも1つの表面に塗布する工程;及び
・このコーティングされた表面を少なくとも180℃の温度において硬化させる工程:
を含む、基材のコーティング方法によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の詳しい説明
本発明は、フルオロポリマーを高割合で有し、優れた化学的、物理的及び熱的耐性を有する可撓性コーティングを提供する、1工程フルオロポリマーコーティングに関する。
【0017】
本発明のコーティング組成物は、全樹脂固形分を基準として75〜94重量%の1種以上のフルオロポリマー樹脂を含有する。このコーティングは、80〜90%のフルオロポリマーを含有するのが好ましく、82〜88%のフルオロポリマーを含有するのが特に好ましい。
【0018】
フルオロポリマー樹脂の割合が低いほど、製造されるコーティングの耐化学薬品性が劣ったものになることがわかった。フルオロポリマー樹脂の割合が高いと、金属基材への接着性に対して悪影響がある。
【0019】
「フルオロポリマー樹脂」とは、フィルム形成性の任意のフルオロポリマーを意味する。これらは、ポリフッ化ビニリデンのようなホモポリマーであってもよく、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ化ビニリデン/クロロテトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)及びそれらの混合物(これらに限定されるわけではない)のようなコポリマーであってもよい。本発明のフルオロポリマーはまた、ETFE及びECTFEのような部分フッ素化ポリマー(完全フッ素化ポリマーと同様の分解生成物を有することができるもの)をも包含する。
【0020】
前記フルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマーであるのが好ましい。「PVDF」やPVDF樹脂やPVDFポリマーは、PVDFのホモポリマーだけではなくてフッ化ビニリデン(VDF)モノマー少なくとも約75重量%から調製されたコポリマーをも指す。そのコモノマーには、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロテトラフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)及びフッ化ビニルのような他のフッ素化モノマーが包含され得る。
【0021】
前記フィルム形成性フルオロポリマー樹脂は、典型的には、約150000〜約450000のMw及び約150〜170℃の融点を有するPVDFを含む。商品として入手できるPVDFであって本組成物中に用いるのに特に好適なものの一例は、KYNAR(登録商標)301F(ARKEMA社から入手できる)である。
【0022】
前記コーティング組成物はまた、全樹脂固形分を基準として5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の熱可塑性アクリル樹脂をも含有する。このアクリル樹脂は、熱力学的にフルオロポリマーと混和性でなければならない。有用なアクリル樹脂には、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルモノマーから作られたポリマー及びコポリマーが包含されるが、これらに限定されるわけではない。このアクリル樹脂は、フルオロポリマーがポリフッ化ビニリデンである場合にコーティング組成物にある程度の官能性を加え、従ってコーティング組成物に濡れ性及び接着性を加えるために必要とされる。また、前記組成物中には、例えばヒドロキシル官能性ポリマーのようなその他の樹脂も少量用いることができる。
【0023】
前記コーティング組成物はまた、少なくとも1種のポリエポキシド樹脂をも含有する。このポリエポキシド樹脂は、複数個の1,2−エポキシ基を有する任意の化合物又は該化合物の混合物である。好ましいポリエポキシドは、約150〜約5000の分子量を有するものである。好ましい類のポリエポキシドは、ポリフェノールのポリグリシジルエーテルである。商業的に入手できるポリエポキシド樹脂であって本組成物中に用いるのに特に好適なものの一例は、EPON 1001(Resoution Performance Products社から入手できる)である。また、脂環式エポキシ樹脂もここで有用である。このエポキシ樹脂は、全樹脂を基準として1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%存在させる。エポキシ樹脂含有量が1重量%未満だと、コーティングの接着性が負の影響を受ける。15重量%より多いと、ブレーキ液化学薬品耐性及びコーティング可撓性が負の影響を受ける。また、ポリエポキシドと共に又はポリエポキシドの代わりに、官能基を有し、架橋を形成することができる他のポリマー、例えばフェノール樹脂、オルガノシラン及び他の既知の架橋形成剤を用いることも可能である。
【0024】
前記コーティング組成物中にはまた、随意に硬化剤又は架橋剤も存在させる。この硬化剤は、ポリエポキシド樹脂を3重量%より多く用いる場合に、コーティング組成物が良好な耐ブレーキ液性を有するために必要とされる。硬化剤は、エポキシ樹脂の重量を基準として20〜30重量%、好ましくは約25重量%、又は全樹脂固形分を基準として0.2〜5重量%存在させる。ポリエポキシド樹脂が全樹脂の1〜3重量%の範囲内である場合には、硬化剤は必要ない。本発明において有用な硬化剤には、メラミン、イソシアネート、ブロックされたイソシアネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂及びその他の既知の硬化剤が包含されるが、これらに限定されるわけではない。また、硬化剤の反応速度を促進するために、随意に触媒を添加してもよい。様々な硬化剤に対して有効な触媒の詳細は、当技術分野において周知である。
【0025】
前記コーティング組成物には、当技術分野において周知のその他の添加剤を含有させることもできる。この添加剤には、顔料、染料、充填剤、沈降防止剤、均展剤、界面活性剤、分散剤及び増粘剤が包含されるが、これらに限定されるわけではない。
【0026】
本発明のコーティング組成物は、慣用の方法で調製することができる。例えば、分散機及び混練装置、例えばスモールメディアミル(small media mill)やペイントシェーカー(paint shaker)を用いて各種成分をブレンドすることによって、前記コーティング組成物を調製することができる。
【0027】
前記コーティング組成物は、粉体として用いることもでき、溶剤中に溶解させて溶液を形成させることもでき、溶剤又は溶剤の組合せ物中に分散させて溶剤分散体を形成させることもできる。溶剤分散体用のキャリヤーとして有用な好適な溶剤は、室温においてPVDFを溶解又は膨潤させず、高温においてPVDFを溶媒和させるものである。好適な溶剤には、高級ケトン類、例えばイソホロン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等、グリコールエーテル類、例えばジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル等、グリコールエーテルエステル類、例えばジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等並びにその他のエステル、例えばフタル酸ジメチル及びグリセリルトリアセテートが包含されるが、これらに限定されるわけではない。
【0028】
本発明のコーティング組成物は、金属基材及びその他の環境暴露基材をコーティングするために用いることができる。本発明のコーティング組成物でコーティングすることができる金属の例には、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、GALVALUME(登録商標)、ZINCALUME(登録商標)、前処理した亜鉛めっき鋼及び前処理していない亜鉛めっき鋼が包含されるが、これらに限定されるわけではない。金属基材は随意に無機前処理又は下塗り、例えば六価クロム前処理、三価クロム前処理、リン酸鉄前処理等によって前処理することができる。本発明のコーティング組成物による保護から恩恵を受けることができるその他の基材には、焼成プロセスに耐えることができる基材、例えばセラミック、大理石、ガラス、陶磁器及び煉瓦が包含されるが、これらに限定されるわけではない。
【0029】
1つの実施態様において、前記基材は、ブレーキチューブ又は金属燃料パイプから成る。前記コーティング組成物は、吹付け、刷毛塗り、静電塗装、浸し塗り及びロール塗布のような様々なよく知られた技術を用いて基材表面に塗布することができる。次いでフルオロポリマーフィルムを硬化させて、接着したポリマーフィルムを有する被覆基材を形成させる。焼成温度は臨界的なものではないが、分散体中に存在するフルオロポリマー粒子を凝集させて連続フィルムにするのに充分高くなければならない。二フッ化ビニリデンホモポリマーをベースとするコーティングを吹付けるためには、少なくとも約180℃の温度で約10分間が一般的に適切である。ロール塗布又は浸し塗りプロセスにおいては、オーブン滞在時間は大抵の場合約50秒以下であり、350℃ほど高いオーブン温度を採用することができる。二フッ化ビニリデンをベースとするフィルムは、金属基材が225℃〜260℃のピーク金属温度に達するように約30〜60秒間焼成することによって硬化させるのが好ましい。
【0030】
本発明の組成物でコーティングされた基材は、良好な基材接着性、優れた耐化学薬品性、耐衝撃性、耐腐食性、耐摩耗性及び耐熱性並びに良好な可撓性を有する。
【実施例】
【0031】
以下の実施例は、本発明の様々な局面を例示するためのものであり、いずれの局面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
原料
【0033】
PVDF:Arkema社よりKYNAR(登録商標)301F PVDFとして入手できるポリフッ化ビニリデン
【0034】
PARALOID Acrylic B44:Rohm and Haas社より入手でき、トルエン中の40重量%溶液として供給される、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチルコポリマー
【0035】
EPON 1001:Resolution Performance Products社から入手でき、トルエン中の75重量%溶液として供給される、ビスフェノールAをベースとするエポキシ樹脂
【0036】
CYMEL 303:Cytec Industries社より入手できる変性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂
【0037】
NACURE 2500:King Industrues社より入手できるp−トルエンスルホン酸触媒
【0038】
試験方法
【0039】
塗料粘度は、4 DIN粘度カップを用いて試験した。色は、HunterLab Labscan IIを用い、幾何学的配置0/45で読み取った。色の読み取りはCIE法L***、10度での観察、D65光源とする。光沢は、HunterLab ProGloss 3を用いて読み取った(幾何学的配置85°)。可撓性(T字曲げ成形性)は、ASTM法D4145−83「前塗装シートのコーティング可撓性についての標準試験方法」に従って測定した。耐衝撃性は、ASTM法D2794−90「有機コーティングの迅速変形作用(衝撃)に対する耐性についての標準試験方法」に従って測定した。亀裂がなくて4.5mmの変形において100%接着性を維持すれば、合格とする。さもなければ、不合格とする。鉛筆試験は、ターコイズペンシル(Turquoise pencil)を用い、ASTM法D3363−92a「鉛筆試験によるフィルム硬度についての標準試験方法」に従って行う。表面硬度は、フィルムを引っ掻くことができなかった鉛筆の中で最も硬い鉛筆グレードによって規定される。
【0040】
クロスハッチ接着性(ASTM法D3359−90)は、Gardco塗料接着性試験キットを用いて試験した。接着性を比較するために0〜5の等級(最悪〜最良)を用いた。5は接着性合格が100%である。4は接着性合格が90%以上100%未満である。3は接着性合格が60%以上90%未満である。2は接着性合格が30%以上60%未満である。1は接着性合格が0%超30%未満である。0は接着性合格が0%である。
【0041】
熱安定性:コーティングサンプルを150℃のオーブン中に24時間入れた。加熱の前後に色及び鉛筆硬度を測定した(ASTM法D3363−92a)。色変化CIE法LABΔE*<5であり且つ鉛筆硬度の低下がなければ、合格とする。さもなければ不合格とする。
【0042】
ブレーキ液(DOT3)及びガソリン耐化学薬品性試験:ブレーキ液又はガソリンの液滴をコーティング表面上に置き、時計皿を被せて室温において72時間置く。その前後の鉛筆硬度を測定した(ASTM法D3363−92a)。鉛筆硬度に変化がなければ、合格とする。
【0043】
実施例1〜6及び比較例1〜7
【0044】
下記の表1の成分をブレンドし、ペイントシェーカーを用いて1時間振り混ぜた。得られた塗料を次いで、ワイヤーラップドローダウン棒(#52)を用いて、クロメート化(Cr+6)アルミニウムAA3003パネル上及び前処理していない亜鉛めっき鋼基材上に流延する。刷毛塗りを用いてスチール管サンプルを作った。得られたフィルム、管及びパネルを585°F(約307℃)において50秒間焼成し、次いで冷水で急冷した。次いでフィルムを物理的特性及び機械的特性について試験した。結果を表2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
5:接着性合格100%;
4:90%<接着性合格<100%;
3:60%<接着性合格<90%;
2:30%<接着性合格<60%;
1:0%<接着性合格<30%;
0:接着性合格0%。
【0048】
実施例及び比較例の結果からわかるように、ポリエポキシド共樹脂を少量加えることによって接着性、特に前処理していない亜鉛めっき鋼への接着性の有意の改善がもたらされた(実施例1〜6対比較例1)。ポリエポキシド樹脂の割合が高くなるほどより劣った耐ブレーキ液性がもたらされることがある。しかしながら、メラミン架橋剤を用いることによってはるかに良好な耐ブレーキ液性を達成することができた(実施例2〜4対比較例2〜4)。しかしながら、PVDF含有率が75%より低い時には、メラミン架橋剤を用いた場合にさえ、耐ブレーキ液性が良好ではない(比較例5、6及び7)。PVDF(75〜90%)、アクリル(5〜20%)及びポリエポキシド樹脂(1〜15%)のブレンドをメラミン架橋剤と共に用いると、配合物はクロメート化アルミニウム及び前処理していない亜鉛めっき鋼基材の両方に対して非常に良好な接着性を有する。この組成物でコーティングされた物品は、優れた耐衝撃性、耐化学薬品性、可撓性及び耐熱性をも有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)75〜94重量%の少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂;
(b)5〜20重量%の少なくとも1種のアクリル樹脂;
(c)1〜15重量%の少なくとも1種のエポキシド樹脂;及び
(d)随意としての5重量%までの少なくとも1種の硬化剤:
(すべての百分率は樹脂固形分を基準とし、合計を100%とする)を含む、金属基材用コーティング組成物。
【請求項2】
前記フルオロポリマー樹脂がポリフッ化ビニリデンホモポリマー又は少なくとも75重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位を有するコポリマーを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂を80〜90重量%含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂を82〜88重量%含む、請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のアクリル樹脂を5〜15重量%含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のエポキシド樹脂を2〜10重量%含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のエポキシド樹脂を3〜15重量%含み且つさらに硬化剤を0.2〜5重量%含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記硬化剤がメラミンを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
(a)請求項1に記載のコーティング組成物を形成させる工程;
(b)該コーティング組成物を基材の少なくとも1つの表面に塗布する工程;及び
(c)このコーティングされた表面を少なくとも180℃の温度において硬化させる工程:
を含む、基材上の化学的及び物理的耐性を有する可撓性コーティングを製造する方法。
【請求項10】
(a)少なくとも180℃の温度においてその形状を維持することができる基材;及び
(b)該基材の少なくとも1つの表面上に直接付着させたコーティング組成物:
を含み、前記コーティング組成物が
(1)75〜94重量%の少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂;
(2)5〜20重量%の少なくとも1種のアクリル樹脂;
(3)1〜15重量%の少なくとも1種のエポキシド樹脂;及び
(4)随意としての5重量%まで硬化剤:
(すべての百分率は樹脂固形分を基準とし、合計を100%とする)を含む、被覆基材。
【請求項11】
前記基材が金属、セラミック、大理石、ガラス、陶磁器又は煉瓦基材を含む、請求項10に記載の被覆基材。
【請求項12】
前記金属基材が鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、前処理した亜鉛めっき鋼及び前処理していない亜鉛めっき鋼から選択される、請求項11に記載の被覆基材。
【請求項13】
金属燃料パイプ又はブレーキチューブを含む、請求項12に記載の被覆基材。

【公表番号】特表2008−528727(P2008−528727A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552144(P2007−552144)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/047118
【国際公開番号】WO2006/078425
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】