説明

金属対応の非接触式データキャリア装置

【課題】 接触式データキャリアインレット部の大きさが10mm×10mm以下のサイズの小型となった場合における、該非接触式データキャリアインレット部を用いた金属対応の非接触式のデータキャリア装置を提供する。
【解決手段】 金属対応の非接触式データキャリア装置であって、基材にアンテナ回路部とICチップとを有する非接触式データキャリアインレット部と、該非接触式データキャリアインレット部の一方の面と側面とを囲むようにして、該非接触式データキャリア部を保持する、強磁性体部とを備えている。そして該強磁性体部は、フェライトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属対応の非接触式データキャリア装置に関し、特に、10mm×10mm以下のサイズの小型の非接触式データキャリアインレット部を用いた金属対応の非接触式データキャリア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報の機密性の面からICカードが次第に普及されつつ中、近年では、読み書き装置(リーダライタ)と接触せずに情報の授受を行う非接触型のICカードが提案され、中でも、外部の読み書き装置との信号交換を、あるいは信号交換と電力供給とを電磁波により行う方式のものが実用化されつつある。
そして、このような中、データを搭載したICチップを、アンテナコイルと接続した、シート状ないし札状の非接触式のICタグが、近年、種々提案され、商品や包装箱等に付け、万引き防止、物流システム、商品管理等に利用されるようになってきた。
勿論、ICを持たない単なる共振タグも物品の存在感知に用いられている。
【0003】
このような非接触式のICタグの場合、物品の金属面に添付して用いる形態もあるが、この形態の場合、外部の読み書き装置との信号交換において、磁束は、ICタグを添付する金属面に平行になり、アンテナコイルを横切る磁束が減少して誘起起電力が低下し、これが原因でICチップ動作がうまくいかなくなるということがあった。
これに対応するため、フェライトコアにアンテナコイルを巻いて、このアンテナコイルの軸心が物品の金属面の磁束の方向と平行になるように配置し、アンテナコイル面を通過する磁束を増大させて、誘起起電力を増大させる方法が、特開2003−317052号公報(特許文献1)において提案されている。
この方法の場合、アンテナコイルを通過する磁束を増大させようとしてアンテナコイルの径を大きくすると、ICタグ自体の厚さが増大してしまうという問題があった。
このため、ICタグ自体の厚さを増大させない方法として、特開2005−310054号公報(特許文献2)では、アンテナコイルおよびICチップを覆うように、添付する物品の金属面側に、順に、磁性体層、第一接着層、第二基板、第二接着層、剥離紙を配設した構成のICタグ(ここではICラベルと言っている)を提案している。
また、その作製方法も提案している。
【特許文献1】特開2003−317052号公報
【特許文献2】特開2005−310054号公報 尚、このような、物品の金属面に添わせて用いる形態において、該物品の金属面の影響を全く、あるいは、ほとんど受けずに、その使用を可能にした、ICタグを用いた非接触式データキャリアを、ここでは金属対応の非接触式データキャリア、あるいは、金属対応の非接触式データキャリア装置と言うが、更にまた、これを単に金属対応ICタグと呼ぶこともある。
【0004】
一方、従来より、ロール状で製造されているICタグを使用して、金属対応タグを作製する場合、軟磁性体とICタグを組み合わせて作ることにより、量産効率を上げて金属対応ICタグを製造することが可能であることは知られている。
しかし、ICタグの大きさが10mm×10mm以下のサイズの小型となると、その製造工程時に軟磁性体を貼り付けることは、可能であるが、その状態でICタグを個片することはできない。
また、小型のICタグと個片にした軟磁性体を用意しておいて、それぞれを張り合わせて使うことも可能であるが、張り合わせの精度により、多少特性が変化したり、見た目が悪くなるという問題がある。
尚、特開平11−216627号公報(特許文献3)には、フェライトからなる強磁性体上にICタグ部を載せプラスチックケースで覆った構造で、強磁性体側を、物品(自動車)の金属面に添付して用いる形態のICタグ(ここではIDタグと言っている)が記載されている。
また、特開2000−34726号公報(特許文献4)には、強磁性体に巻回されたアンテナコイルを有するIDタグの記載がある。
【特許文献3】特開平11−216627号公報
【特許文献4】特開2000−34726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、近年、金属対応の非接触式データキャリア装置が各種提案され、また、その作製方法も、種々、開示されているが、用いられる非接触式データキャリアインレット部の大きさが10mm×10mm以下のサイズの小型となると、その製造工程時における軟磁性体の貼り付けと、その状態での非接触式データキャリアインレット部の個片化ができず、その対応が求められていた。
本発明はこれに対応するもので、非接触式データキャリアインレット部の大きさが10mm×10mm以下のサイズの小型となった場合における、該非接触式データキャリアインレット部を用いた金属対応の非接触式のデータキャリア装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置は、金属対応の非接触式データキャリア装置であって、基材にアンテナ回路部とICチップとを有する非接触式データキャリアインレット部と、該非接触式データキャリアインレット部の一方の面と側面とを囲むようにして、該非接触式データキャリアインレット部を保持する、強磁性体部とを備えていることを特徴とするものである。
ぞして、上記の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記強磁性体部は、フェライトであることを特徴とするものである。
そしてまた、上記いずれかの金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記強磁性体部は、前記非接触式データキャリアインレット部の前記一面側を必要に応じてスペーサを配して接着層により固定して保持するものであることを特徴とするものである。
また、上記いずれかの金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記強磁性体部に、前記非接触式データキャリアインレット部の前記一面側を、該強磁性体部より離して保持する保持部を設けていることを特徴とするものであり、前記強磁性体部に、前記非接触式データキャリアインレット部の外周部、アンテナ回路の外側を嵌め込み、該非接触式データキャリアインレット部を保持する嵌合部を設けて、これを保持部としていることを特徴とするものであり、更に、前記嵌合部は、前記強磁性体部の物品側面側に、スリット状の凹部を設けたものであることを特徴とするものである。
また、請求項4ないし6に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記強磁性体部に、金属物を保持する保持部を設けていることを特徴とするものである。
また、請求項4ないし7に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記非接触式データキャリアインレット部の表裏の端部、その側面にかけて、回路と電気的に接続されていない金属層を配していることを特徴とするものである。
また、上記請いずれか1項に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記非接触式データキャリアインレット部のアンテナ回路部と前記非接触式データキャリアインレット部の一面側にある前記強磁性体部との距離を、1 mm以上としていることを特徴とするものである。
また、上記いずれかの金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記非接触式データキャリアインレット部は、10mm×10mm以下のサイズの小型であることを特徴とするものである。
尚、ここで言う、非接触式データキャリアインレット部とは、基材にアンテナ回路部とICチップとを有する部品の総称で、単に、非接触式データキャリアと呼ばれることもある。
ここでは、ICタグは非接触式データキャリアあるいは非接触式データキャリアインレット部とも呼ばれる。
そして、物品の金属面に添わせて用いる形態において、該物品の金属面の影響を全く、あるいは、ほとんど受けずに、その使用を可能にした、非接触式データキャリアインレット部を用いた非接触式の金属対応のデータキャリアを、ここでは、金属対応の非接触式データキャリア装置と言う。
【0007】
(作用)
本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置は、このような構成にすることにより、非接触式データキャリアインレット部の大きさが10mm×10mm以下のサイズの小型となった場合における、金属対応の非接触式のデータキャリア装置の提供を可能としている。
具体的には、基材にアンテナ回路部とICチップとを有する非接触式データキャリアインレット部と、該非接触式データキャリアインレット部の一方の面と側面とを囲むようにして、該非接触式データキャリアインレット部を保持する、強磁性体部とを備えていることにより、これを達成している。
これにより、磁性体と非接触式データキャリアインレット部の位置精度を気にせず、金属対応の非接触式データキャリア装置を作製することを可能としている。
非接触式データキャリアインレット部を、磁性体部に落とし込むだけで、容易に取り付けられるため、製品としての見た目も向上する。
詳しくは、付けて用いられる際の、該非接触式データキャリアインレット部の、一方の面と両側面とを囲むように、小型の非接触式データキャリアインレット部を簡単に取り付け可能な形状に、強磁性体を作製しておくことにより、磁性体と非接触式データキャリアインレット部の位置精度を気にせず、金属対応データキャリアを作製することができる。 このような強磁性体部の作製方法としては、成形法や切削法、その他の方法があるが、特に、量産性の面からは成形法が好ましい。
例えば、非接触式データキャリアインレット部として、大きさが10mm×10mm以下のサイズの小型のICタグを用いて金属対応の非接触式のデータキャリア装置(金属対応タグとも言う)とする場合、ICタグが小さ過ぎて加工しずらいという問題が基本的にあるが、この場合でも、貼付されて用いられる際の、該非接触式データキャリアインレット部の、物品側の一面と両側面とを囲むように、小型タグを簡単に取り付け可能な形状に、強磁性体部を作製しておくことにより、磁性体とICタグの位置精度を気にせず、金属対応タグを作製することができる。
強磁性体部の材質はフェライトである請求項2の発明の形態とすることにより、容易に強磁性体部の作製加工をできるものとしている。
特に、フェライトタイプ磁性体の場合、大きさが10mm×10mm以下のサイズの小型タグに合う形状サイズにも、簡単に作製することができる。
強磁性体部としては、前記非接触式データキャリアインレット部の前記一方の面側を必要に応じてスペーサを配して接着層により固定して保持するものである、請求項3の発明の形態や、前記強磁性体部に、前記非接触式データキャリアインレット部の前記一面側を、該強磁性体部より離して保持する保持部を設けている、請求項4の発明の形態が挙げられる。
請求項4の発明の形態としては、強磁性体部に、非接触式データキャリアインレット部の外周部、アンテナ回路の外側を嵌め込み、該非接触式データキャリアインレット部を保持する嵌合部を設けて、これを保持部としている、請求項5の発明の形態が挙げられるが、この形態の場合、非接触式データキャリアインレット部の前記一方の面を強磁性体の面から所望の距離に固定できるとともに、接着剤なしに金属対応タグを作製できる。
更に具体的には、請求項5の形態において、前記嵌合部として、前記強磁性体部の物品側面側に、スリット状の凹部を設けた、請求項6の発明の形態、更には、請求項4〜請求項6の各形態において、強磁性体部に、金属物を保持する保持部を設けている、請求項7の発明の形態が挙げられる。
また、請求項4の形態〜請求項7の形態において、非接触式データキャリアインレット部の表裏の端部、その側面にかけて、回路と電気的に接続されていない金属層を配している、請求項8の発明の形態とすることにより、スリット状の凹部に非接触式データキャリアインレット部の外周部、アンテナ回路の外側を、挟むようにして嵌め込む際に、磨耗に対応できるものとしている。
特に、非接触式データキャリアインレット部が、10mm×10mm以下のサイズの小型である場合には、有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記のように、特に、非接触式データキャリアインレット部の大きさが10mm×10mm以下のサイズの小型となった場合における、金属対応の非接触式のデータキャリア装置の提供を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1(a)は本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の実施の形態の第1の例の1断面図で、図1(b)は図1(a)に示す非接触式データキャリア装置を物品の金属面に貼付した状態を示した断面図で、図2は図1に示す第1の例の非接触式データキャリア装置の変形例を示した図で、図3は非接触式データキャリアインレット部の一面からICチップとその接続状態を透視して示した図で、図4は図3のA1−A2における断面を簡略して示した図で、図5(a)は本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の実施の形態の第2の例の1断面図で、図5(b)はその強磁性体部を示した断面図で、図5(c)は図5(a)に示す非接触式データキャリア装置を物品の金属面に貼付した状態を示した断面図で、図6はスペースの厚さをパラメータとして、通信距離、共振周波数を測定する際の測定方法を示した概略図で、図7(a)はスペースの厚さと通信距離との関係を示したグラフの図で、図7(b)はスペースの厚さと共振周波数との関係を示したグラフの図で、図8(a)は図5(a)に示す第2の例の金属対応の非接触式データキャリア装置の変形例の1断面図で、図8(b)はその強磁性体部を示した断面図で、図9は非接触式データキャリアインレット部の他の1例を示した図で、図10(a)は本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の実施の形態の第4の例の1断面図で、図10(b)は図1(a)のD0側から透視して見た強磁性体部の図である。
尚、図3は図4のB1側から見た図である。
また、図10(a)は、図10(b)のD1−D2−D3ーD4−D5−D6における断面図で、図10(b)中、細線点線部は非接触式データキャリアインレット部の領域を示している。
図1〜図6、図8、図9中、10、10A〜10Dは金属対応の非接触式データキャリア装置(単にデータキャリア装置とも言う)、11は非接触式データキャリアインレット部、12は強磁性体部、12aは側壁部、12bは支持部、12b1〜12b5は突出支持部、12cは凹部(空間部とも言う)、12dはスリット、12eは凹部(空間部とも言う)、12fはスリット、12S1〜12S5は面部、13、13a、13bは接着層、14はスペーサ、20〜22は(金属からなる)物品、30、31は接着層、41はICチップ、42はアンテナ回路部(アンテナコイルとも言う)、43a,43bはチップ端子、45、45a〜46dはスルーホール部、46a、46bはチップ接続用端子、47はチップ搭載用パッド、48はボンディングワイヤ、49は封止樹脂、50はソルダーレジスト、51は(配線用の)基材、52は接着層、60は積層配線基材、110は非接触式データキャリアインレット部、120はスペーサ、130は磁性体層、140は金属板部、200は非接触式データキャリアインレット部、210はICチップ、230は基材、235はアンテナ回路部、240はソルダーレジスト、250は金属部、260は積層配線基材である。
【0010】
はじめに、本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の実施の形態の第1の例を、図1に基づいて説明する。
第1の例の金属対応の非接触式データキャリア装置10は、物品20の金属面に付けて用いられる場合に共振周波数が好適に13.56MHzとなるよう設定した金属対応の非接触式データキャリア装置であって、図4にその断面を示すようなシート状の積層された積層配線基材60にアンテナ回路部42とICチップ41とを有する非接触式データキャリアインレット部11と、物品20に付けて用いられる際の、該非接触式データキャリアインレットの、物品20側の一面と側面とを囲むようにして、該非接触式データキャリアインレット部を嵌め込んだ状態で保持する成形されたフェライトからなる強磁性体部12とを備え、図1(a)に示すように、強磁性体部12は、非接触式データキャリアインレット部11の一面側を接着層13により支持部12bに固定して保持している。
ここでは、強磁性体部12側壁部12aと支持部12bとにより、形成される凹部(空間部)12cに非接触式データキャリアインレット部11を嵌め込んでいる。
側壁部12aは、非接触式データキャリアインレット部11の外形に沿う形状である。 そして、図1(b)に示すように、物品20に付けて用いられる。
本例は、特に、大きさが10mm角以下のサイズの小型の非接触式データキャリアインレット部11を用いているものであるが、強磁性体部12と非接触式データキャリアインレット部11の位置精度を気にせず、金属対応の非接触式データキャリア装置を作製することができる。
【0011】
強磁性体部12として、ここでは成形性の良いフェライトからなる強磁性体部を用いているが、材質として強磁性体であれば、これに限定はされないが、好ましくは軟磁性体を用いる。
本例では、強磁性体部12を成形によって作製したものを用いているが、切削によって作製したものでも良い。
【0012】
大きさが10mm角以下のサイズの小型の非接触式データキャリアインレット部11としては、例えば、図3、図4に示すようなアンテナ回路部42とICチップ41とを接続した構造のものが適用できる。
図4にその断面を示すように、非接触式データキャリアインレット部11は、簡単には、各基材51の表面にアンテナ回路部の一部を形成した基材を積層した積層配線基材60に設けられた、スルーホール45を介して、各層を電気的に接続してアンテナ回路部としたものであり、積層された積層配線基材60の表面部にICチップ41を搭載し、且つ、アンテナ回路部42と電気的に接続したものである。
ここでは、非接触式データキャリアインレット部11は全体が剛性を有し、平面形状を維持できるものである。
アンテナ回路部42は、ここでは、各層の巻回数が9回程度、4層の渦巻き状である。 非接触式データキャリアインレット部11のサイズとしては、例えば、5mm角、厚さ150μm程度のものが挙げられる。
このサイズは、カード型のRFIDタグ(ICカード)として標準的な大きさである54mm×85.6mmに比べるとはるかに小さい。
表面のICチップ41、ボンディングワイヤ48、アンテナ回路部42は、ソルダーレジスト50および封止樹脂49によりカバーされ保護されている。
アンテナ回路部42のアンテナコイルの線幅は約80μm、線間幅が約70μm、線厚は約18μmで、公知の、アディティブ法やセミアデティブ法等により、このような積層構造で形成できる。
ICチップ41は、ROM、RAM、ロジック回路、CPUから主に構成されている。 ICチップ41としては、フィロップス社のI−CODE SLIチップや、インフィニオンテクノロジー社のmy−dチップ等、13.56MHz帯のRFIDタグ用のチップとして市場で入手可能なものを、用途に合わせて適宜用いる。
本例においては、搭載されるICチップ41の大きさに対して、非接触式データキャリア部11の大きさは、それほど大きくはない。
形状は、必ずしも正方形でなくても良いが、多数枚取りの製造を容易とするため、矩形とする。
尚、積層された積層配線基材60を略正方形とすることで、小型化しながらアンテナの内側面積を確保することが容易となり、コイルのインダクタンス値を向上させることができる。
また、積層配線基材60は、例えば、各層を、厚さ0.1mmの絶縁基板を基材51とし、その片面ないし両面に厚さ18μmの銅箔が積層された、片面銅張り基板、両面銅張り基板を用いて、それぞれ、外層用、内層用として、フォトエッチング法を用いて所望の形状のアンテナ回路部42をエッチング形成し、各層を絶縁性接着層を介して、加熱加圧して積層し、更に、スルホールを形成して、作製する。
ここで、層間の接続にスルーホールを利用しているが、その他、略円錐形状の導体バンプで層間絶縁層を突き破って導通をとるB2it(登録商標)と呼ばれる層間接続法を適用することも可能である。
これにより、全製造工程数を減らすことが可能である。
【0013】
第1の例の金属対応の非接触式データキャリア装置10の変形例としては、図2に示す、第1の例において、非接触式データキャリアインレット部11の一面側をスペーサ14を配して接着剤13a、13bにより強磁性体部の支持部12bに固定して保持する形態の金属対応の非接触式データキャリア装置10Aが挙げられる。
この形態の金属対応の非接触式データキャリア装置10Aにおいては、図示していないリーダライタによる通信距離特性や共振周波数特性を、スペーサ14の厚みを変えることにより変化させることができるもので、強磁性体部12を汎用性のあるものとしている。 スペーサ14としては、単層あるいは複数層の絶縁性の樹脂フィルム等が用いられる。 それ以外の各部は、第1の例と同じで、説明を省く。
【0014】
次に、本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の第2の例を、図5を基に簡単に説明する。
第2の例の金属対応の非接触式データキャリア装置10Bは、第1の例と同様、物品21の金属面に付けて用いられる場合に好適な、共振通信周波数が13.56MHzとなるよう設定した金属対応の非接触式データキャリア装置であって、図4にその断面を示すようなシート状の積層された積層配線基材60にアンテナ回路部42とICチップ41とを有する非接触式データキャリアインレット部11と、金属からなる物品21に付けて用いられる際の、該非接触式データキャリアインレットの、物品側の一面と側面とを囲むようにして、該非接触式データキャリアインレット部11を保持する形状に成形された強磁性体部12とを備えており、特に、強磁性体部12は、その物品の側面側に、スリット状の凹部(スリット12dに相当)を設け、これを、前記非接触式データキャリアインレット部の外周部、アンテナ回路の外側を嵌め込み、該非接触式データキャリアインレット部を保持する嵌合部とし、非接触式データキャリアインレット部11を保持している。
そして、図5(c)に示すように、金属からなる物品21に付けて用いられる際には、金属物品21に接着層31を介して接着固定される。
尚、図5(a)に対応する強磁性体部12単体の断面は、図5(b)のようになるが、強磁性体部12の少なくとも一方側は、非接触式データキャリアインレット部11を挿入できるように、切り欠き(図示していない)を設けている。
第2の例の非接触式データキャリア装置10Bは、スリット12dの位置を決めることにより、強磁性体部12の面から所望の距離に非接触式データキャリアインレット部11を固定できるとともに、第1の例のように接着層(図1(a)の13)を用いないで金属対応の非接触式のデータキャリア装置を作製することがきる。
各部については、第1の例と同等で、ここでは説明を省く。
【0015】
次に、本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の第3の例を、図8を基に簡単に説明する。
第3の例は、図8(a)に示すように、第2の例の金属対応の非接触式データキャリア装置10Bにおいて、更に、磁性体部12に一体的に物品を嵌め込みこれを保持する嵌合部(図8(b)の凹部12e、スリット12f)を設けており、該嵌合部に金属からなる物品22を、その外周部を嵌合して保持する。
尚、図8(b)は、図8(a)に対応する磁性体部12のみを示したものである。
第3の例は、金属からなる物品22と非接触式データキャリアインレット部11とを所望の距離に固定することができる。
勿論、第1の例のように接着層(図1(a)の13)のような接着層を用いないで金属対応の非接触式のデータキャリア装置を作製することがきる。
【0016】
ここで、通信距離特性と周波数特性について簡単に説明しておく。
通常の、13.56MHz帯、10mWのリーダライタを用いた場合の、非接触式データキャリアインレット部11の通信距離特性と共振周波数特性について説明する。
図6に示すように、スペーサ120の厚さを変化させることにより、非接触式データキャリアインレット部110とリーダライタ150との距離L0を変化させて、その通信距離特性と周波数特性とを調べた結果、図7(a)、図7(b)に示すようなグラフが得られた。
尚、L0を通信距離とし、非接触式データキャリアインレット部110のアンテナ回路部は、スペーサ120側としている。
これより、それぞれ、厚さが0.5mm、0.7mm、1.0mmの各磁性体層(図6の130)を介して非接触式データキャリアインレット部110を金属からなる物品140に付けて用いた場合において、通信距離特性と共振周波数特性等の非接触データキャリアインレット部の特性が良好となるのは、スペーサ120の厚さは、1mm以上必要であることが分かる。
即ち、非接触式データキャリアインレット部110のアンテナ回路部と該非接触式データキャリアインレット部の一面側にある磁性体層130との距離を1 mm以上離すことが、通信距離特性と周波数特性の両面で有効であることが分かる。
この結果より、第1の例、第1に例の変形例、第2の例、第3の例において、物品に付けて用いられる際に金属対応として有効とするため、非接触式データキャリアインレット部のアンテナ回路部の位置を強磁性体層から1mm以上としている。
【0017】
次に、本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の第4の例を、図10を基に簡単に説明する。
第4の例は、図10(a)に示すように、第1の例において、アンテナ回路部(図3の42)領域が、接近して強磁性体部12に接しないように、非接触式データキャリアインレット部11の4隅と中央において、強磁性体部の突出支持部12b1〜12b5により非接触式データキャリアインレット部11の全体支持するものである。
このような構造にすることにより、強磁性体部12の非接触式データキャリヤインレット部に与える影響を極力少なくし、共振周波数特性の良いものとできる。
非接触式データキャリアインレット部11のアンテナコイルから強磁性体部12の支持部12bを、第1の例に比べて実質的に離すことにより、第1の例に比べて、共振周波数の変化を小さくすることができる。
尚、図7(b)からは、図6において、非接触式データキャリアインレット部110と磁性体層130との間にスペーサ120を入れずに、磁性体層130上に金属対応の非接触式データキャリアインレット部110を置いた場合、共振周波数が大きく低下することが分かる。
ここで、上記強磁性体部において、突出支持部は、4 隅と中央に限定されるものではなく、中央のみ、四隅のみ、または、非接触式データキャリアインレット部を保持できるような台座を設けるようにして、強磁性体部の成形を容易なものにしてもよい。
また、突出支持部を、非接触式データキャリアインレット部の周辺部全体に設けた形態も挙げられる。
それ以外については、各部は第1の例と同じで、説明を省略する。
【0018】
上記、第1の例とその変形例、第2の例、第3の例、第4の例に本発明は限定されるものではない。
例えば、第2の例、第3の例において、非接触式データキャリアインレット部11の積層配線基材(図4の60に相当)の表裏の端部、その側面にかけて、図9に示すように、回路と電気的に接続されていない金属層250を配している形態を挙げることができる。 この形態の場合は、第2の例、第3の例において、スリット(図5の12d、図8の12fに相当)に、非接触式データキャリアインレット部を嵌め込む際に、磨耗による損傷がないものとできる。
また、図3に示す非接触式データキャリアインレット部11に限定はされない。
上記の各例では、強磁性体部12を成形によって作製したものを用いているが、切削によって作製したものを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の実施の形態の第1の例の1断面図で、図1(b)は図1(a)に示す非接触式データキャリア装置を物品の金属面に貼付した状態を示した断面図である。
【図2】図2は図1に示す第1の例の非接触式データキャリア装置の変形例を示した図である。
【図3】非接触式データキャリアインレット部の一面からICチップとその接続状態を透視して示した図である。
【図4】図3のA1−A2における断面を簡略して示した図である。
【図5】図5(a)は本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の実施の形態の第2の例の1断面図で、図5(b)はその強磁性体部を示した断面図で、図5(c)は図5(a)に示す非接触式データキャリア装置を物品の金属面に貼付した状態を示した断面図である。
【図6】スペースの厚さをパラメータとして、通信距離、共振周波数を測定する際の測定方法を示した概略図である。
【図7】図7(a)はスペースの厚さと通信距離との関係を示したグラフの図で、図7(b)はスペースの厚さと共振周波数との関係を示したグラフの図である。
【図8】図8(a)は図5(a)に示す第2の例の金属対応の非接触式データキャリア装置の変形例の1断面図で、図8(b)はその強磁性体部を示した断面図である。
【図9】非接触式データキャリアインレット部の他の1例を示した図である。
【図10】図10(a)は本発明の金属対応の非接触式データキャリア装置の実施の形態の第4の例の1断面図で、図10(b)は図1(a)のD0側から透視して見た強磁性体部の図である。
【符号の説明】
【0020】
10、10A〜10D 金属対応の非接触式データキャリア装置(単にデータキャリア装置とも言う)
11 非接触式データキャリアインレット部
12 強磁性体部
12a 側壁部
12b 支持部
12b1〜12b5 突出支持部
12c 凹部(空間部とも言う)
12d スリット
12e 凹部(空間部とも言う)
12f スリット
12S1〜12S5 面部
13、13a、13b 接着層
14 スペーサ
20〜22 (金属からなる)物品
30、31 接着層
41 ICチップ
42 アンテナ回路部(アンテナコイルとも言う)
43a,43b チップ端子
45、45a〜46d スルーホール部
46a、46b チップ接続用端子
47 チップ搭載用パッド
48 ボンディングワイヤ
49 封止樹脂
50 ソルダーレジスト
51 (配線用の)基材
52 接着層
60 積層配線基材
110 非接触式データキャリアインレット部
120 スペーサ
130 磁性体層
140 金属板部
200 非接触式データキャリアインレット部
210 ICチップ
230 基材
235 アンテナ回路部
240 ソルダーレジスト
250 金属部
260 積層配線基材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属対応の非接触式データキャリア装置であって、基材にアンテナ回路部とICチップとを有する非接触式データキャリアインレット部と、該非接触式データキャリアインレット部の一方の面と側面とを囲むようにして、該非接触式データキャリアインレット部を保持する、強磁性体部とを備えていることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記強磁性体部は、フェライトであることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれか1項に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記強磁性体部は、前記非接触式データキャリアインレット部の前記一面側を必要に応じてスペーサを配して接着層により固定して保持するものであることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。
【請求項4】
請求項1ないし2のいずれか1項に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記強磁性体部に、前記非接触式データキャリアインレット部の前記一面側を、該強磁性体部より離して保持する保持部を設けていることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。
【請求項5】
請求項4記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記強磁性体部に、前記非接触式データキャリアインレット部の外周部、アンテナ回路の外側を嵌め込み、該非接触式データキャリアインレット部を保持する嵌合部を設けて、これを保持部としていることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。
【請求項6】
請求項5に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記嵌合部は、前記強磁性体部の物品側面側に、スリット状の凹部を設けたものであることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。
【請求項7】
請求項4ないし6に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記強磁性体部に、金属物を保持する保持部を設けていることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。
【請求項8】
請求項4ないし7に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記非接触式データキャリアインレット部の表裏の端部、その側面にかけて、回路と電気的に接続されていない金属層を配していることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記非接触式データキャリアインレット部のアンテナ回路部と前記非接触式データキャリアインレット部の一面側にある前記強磁性体部との距離を、1 mm以上としていることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の金属対応の非接触式データキャリア装置であって、前記非接触式データキャリアインレット部は、10mm×10mm以下のサイズの小型であることを特徴とする金属対応の非接触式データキャリア装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−172543(P2007−172543A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372943(P2005−372943)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】