説明

金属帯の連続加熱装置及び連続加熱方法

【課題】加熱する金属帯に応じて、酸化還元を比較的自由に且つ広範囲に変更可能な金属帯の連続加熱装置及び方法を提供する。
【解決手段】直火式加熱炉2内の少なくとも下流側で使用するバーナー設備6を、燃料ガスと燃焼用空気とを予めミキシング装置7で混合した予混合ガスを、ノズル17から噴射させる構成とする。そして、ミキシング装置7に燃料ガスを供給する燃料系配管9、及びミキシング装置7に燃焼用空気を供給する空気系配管8のそれぞれに、流量検出器及び流量調節弁を設け、加熱する鋼帯に対応して設定された空気比となるように、流量調節弁を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛メッキラインなどの設備に設けられる、金属帯の連続加熱装置及び連続加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の連続加熱装置としては、例えば特許文献1に記載の装置がある。この装置では、直火式加熱炉の最終ゾーンの加熱用として、予混合方式であるプレミックスバーナー設備を使用する。
この特許文献1に記載のプレミックスバーナー設備は、次のようになっている。
燃焼用空気を燃焼用空気配管を通じてミキシングバルブに供給すると共に、燃焼用空気配管には、空気コントロールバルブを介装しておく。また、燃料ガスを、燃料用ガス配管を通じてミキシングバルブに供給すると共に、その燃料用ガス配管に対し当該燃料用ガス配管内の圧が燃焼用空気配管と同圧となるように、ゼロバランスドレギュレータを介装しておく。
【0003】
そして、空気比設定値になるように空気比調節器でミキシングバルブのモーターをフィードバック制御して、ミキシングバルブにおける、燃料ガスと燃焼用空気との開口比を変化させることで空気比を一定に制御する。また、燃焼量の増減は、燃焼用空気配管に設置されている空気コントロールバルブを制御して行っていた。
なお、従来、直火加熱炉の最終ゾーンを還元域に制御している。
【特許文献1】特許第2741617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来例の構成にあっては、空気比を、ミキシングバルブの燃料ガスと燃焼用空気の開口比によって機械的に決めている要素が大きい。このため、オンラインによって、空気比を比較的自由に且つ広範囲に変更することが困難であった。
このため、連続加熱装置で加熱する金属帯の酸化還元を、加熱される金属帯に要求される性状に応じて広範囲に対応することが出来なかった。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、加熱する金属帯に応じて、酸化還元を比較的自由に且つ広範囲に変更可能な金属帯の連続加熱装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、連続して搬送される金属帯を加熱する直火式加熱炉を備えた連続加熱装置であって、
直火式加熱炉内の少なくとも下流側で使用するバーナー設備を、燃料ガスと酸素含有ガスとを予めミキシング装置で混合した予混合ガスをノズルから噴射させて燃焼する構成とすると共に、上記ミキシング装置に燃料ガスを供給する燃料系配管、及び上記ミキシング装置に酸素含有ガスを供給する空気系配管のそれぞれに、流量検出器及び流量調節弁を設け、加熱する金属帯に対応して設定された空気比となるように、上記流量検出器からの信号に基づき流量調節弁を制御する制御装置を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
次に、請求項2に記載した発明は、連続して搬送される金属帯を直火式加熱炉で連続して加熱する金属帯の連続加熱方法であって、
直火式加熱炉内の少なくとも下流側での加熱を、燃料ガスと酸素含有ガスとを予めミキシング装置で混合した予混合ガスをノズルから噴出させて燃焼する構成とすると共に、上記ミキシング装置に供給する燃料ガス及び酸素含有ガスを個別の流量調節弁で調節し、加熱する金属帯に対応して設定された空気比となるように、上記流量調節弁を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゼロバランスドレギュレータを使用する代わりに、燃料ガス配管系統及び燃焼用空気配管系統に各々流量調節弁と流量検出器を設けることによって、各系統での流量調節を個別に可能とする。そして、各系統の流量検出器からの流量実績値に基づいて各流量調節弁を動作させることで空気比制御を行わせる。これによって、ミキシング装置に供給する燃料ガスと酸素含有ガスの流量を個別に調整可能とする結果、対応とする金属帯に合わせて、空気比制御が、比較的自由に且つ広範囲に変更することを可能となる。
【0008】
また、燃料ガスと酸素含有ガスをミキシング装置で予混合してノズルに供給するので、燃料ガスと酸素含有ガスとを均一に予混合可能となる。このため、炉内の酸化還元状態のばらつきを、その分、抑えることが出来る。すなわち目的とする酸化還元状態への安定した制御が可能となる。
すなわち、操業に応じて、直火式加熱炉内を酸化雰囲気にしたり還元雰囲気にしたりすることが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る連続加熱装置を備えた金属帯の連続処理ラインの一部を示す模式図である。なお、連続処理ラインとしては、連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛メッキラインを例示することが出来る。
また、金属帯として鋼帯を例示するが、他の金属帯であっても良い。
【0010】
(構成)
連続して搬送されてくる鋼帯1が、直火式加熱炉2で連続して加熱された後に、後工程に連続して搬送される。
上記直火式加熱炉2内は、例えば鋼帯1の搬送方向に沿って例えば4つのゾーンに区画され、各ゾーン毎に配置したバーナー装置3〜6で、各ゾーンの雰囲気状態を制御しつつ鋼帯1を加熱する。
【0011】
本実施形態では、例えば第1ゾーン〜第3ゾーンまでは、ノズルミックス(ノズル内で混合する方式)のバーナー設備3〜5を使用し、設定された空気比として、目的の酸化還元雰囲気にして鋼帯1の加熱を行う。
また、最終ゾーンである第4ゾーンでは、プレミックスのバーナー設備6を採用する。その第4ゾーンのバーナー設備の構成は、図2に示すような構成となっている。
【0012】
即ち、ミキシング装置7に対して燃焼用空気系配管8の下流端と、燃料系配管9の下流端が連通している。これによって、ミキシング装置7に対し、酸素含有ガスとしての燃焼用空気と、燃料ガスとを供給可能となっている。
上記燃焼用空気系配管8の途中には、流量調節弁10が介装し、その流量調節弁10の上流側には、流量検出器としての流量発信器11を設ける。流量発信器11は、検出信号を計装用コントローラ15に出力する。また、流量調節弁10は、計装用コントローラ15からの指令に応じた流量となるように調整する。
【0013】
同様に、燃料系配管9の途中には、流量調節弁12が介装し、その流量調節弁12の上流側には、流量検出器としての流量発信器13を設ける。流量発信器13は、検出信号を計装用コントローラ15に出力する。また、流量調節弁12は、計装用コントローラ15からの指令に応じた流量となるように調整する。
ミキシング装置7は、供給された燃料用ガスと燃焼用空気とを混合する混合室を備え、混合室で混合されてなる予混合ガスを配管を介してノズルヘッダ16に供給し、ノズルヘッダ16に連通するノズル17から加熱炉2内に上記予混合ガスを噴射して加熱する。混合室は、配管よりも開口断面の大きな室である。
【0014】
符号18は、ノズルへの予混合ガス供給経路に設けた圧力計である。この圧力計18はインターロックのために設けてある。設定圧力以下を検出したら、バーナーを停止する。
また、直火式加熱炉2の出側には、加熱炉2から出る鋼帯1の温度を測定する温度計18が配置されている。この温度計18は、例えば放射温度計で構成する。温度計18は、計測した温度信号を計装用コントローラ15に出力する。
【0015】
計装用コントローラ15には、鋼種の変更の度に、加熱する鋼種に対応する空気比設定値が入力される。なお、鋼種(金属帯の性状)に応じて空気比を決定したテーブルを備え、そのテーブルを参照して、加熱する鋼帯1の空気比設定値を決定する。
その計装用コントローラ15は、制御部を構成し、設定計器部15A、燃料ガス流量調整部15B、及び燃焼用空気流量調整部15Cを備える。
【0016】
設定計器部15Aは、入力した空気比設置値及び温度信号に基づき、燃焼ガスの流量及び燃焼用空気の流量を決定し、その流量指令を、それぞれ燃料ガス流量調整部15B、及び燃焼用空気流量調整部15Cに出力する。空気比は、あくまで、空気比設置値で決定される。温度信号では、加熱量が調整される。即ち、供給流量の増減が調整される。
燃料ガス流量調整部15Bは、流量発信器13からの信号に基づき流量実績値を演算し、その演算値に基づき、設定計器部15Aからの信号に応じた燃料ガスの流量をミキシング装置7に供給するように、流量調節弁12を調節する。
【0017】
燃焼用空気流量調整部15Cは、流量発信器11からの信号に基づき流量実績値を演算し、その演算値に基づき、設定計器部15Aからの信号に応じた燃焼用空気の流量をミキシング装置7に供給するように、流量調節弁10を調節する。
ここで、計装用コントローラ15は、第1ゾーンから第3ゾーンのバーナー設備3〜5の空気比も、鋼種に応じて予め設定した空気比となるように制御する。なお、第1ゾーンから第3ゾーンのバーナー設備3〜5も上記バーナー設備6と同様な構成としても良い。
【0018】
(作用効果)
上記構成の連続加熱装置にあっては、連続して搬送されてくる鋼帯1の鋼種が代わっても、空気比を、その鋼種に適した値に、比較的自由に且つ広範囲に変更することが可能となる。
今までであれば、直火式加熱炉2の最終ゾーンを還元雰囲気となるように空気比を制御しているが、本実施形態では、鋼種に応じて、直火式加熱炉2の最終ゾーンを還元雰囲気としたり、酸化雰囲気としたりすることが可能となる。
なお、還元雰囲気とする場合には、例えば空気比設定値を0.85等に調整する。一方、酸化雰囲気とする場合には、例えば空気比設定値を1.2等に調整する。
【0019】
このように空気比を比較的広範囲に且つ自由に変更することは、上述した従来のプレミックスバーナーでは、困難であったが、本実施形態の連続加熱装置では、比較的自由に可能となる。
また、ミキシング装置7で、燃焼ガスと燃焼用空気とを予混合してからノズル17に供給している。ミキシング装置7で予混合することで、燃焼ガスと燃焼用空気との混合を均一に近い状態とすることが可能となる。このため、ノズル17から噴射する予混合ガスのバラツキを、その分低減し、安定して還元雰囲気若しくは酸化雰囲気とすることが可能となる。
【0020】
以上のように、操業に応じて、直火式加熱炉2の最終ゾーンを酸化雰囲気にしたり還元雰囲気にしたりすることが容易にできる。
例えば、Siなどの酸化されやすい成分を含有する鋼種の場合には、加熱によってSiの酸化物等が鋼帯1表面に形成されることで、後工程の処理品質に影響がでる場合がある。このような場合には、酸化、還元の条件を厳しくして制御する必要が生じ、本願発明を好適に適用できる。
すなわち、本実施形態の連続加熱装置は、プレミックスバーナーの空気比制御を比較的自由に且つ広範囲に変更することが可能であるので、鋼種に応じて、直火式加熱炉2の最終ゾーンを酸化雰囲気にしたり還元雰囲気にしたりすることが容易となり、操業効率を落とす事なく対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る加熱装置を示す模式図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係るバーナー設備を説明する図である。
【符号の説明】
【0022】
1 鋼帯(金属帯)
2 直火式加熱炉
6 バーナー設備
7 ミキシング装置
8 空気系配管
8 燃焼用空気系配管
9 燃料系配管
10 流量調節弁
11 流量発信器
12 流量調節弁
13 流量発信器
15 計装用コントローラ
15A 設定計器
15C 燃焼用空気流量調整部
15B 燃料ガス流量調整部
17 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して搬送される金属帯を加熱する直火式加熱炉を備えた連続加熱装置であって、
直火式加熱炉内の少なくとも下流側で使用するバーナー設備を、燃料ガスと酸素含有ガスとを予めミキシング装置で混合した予混合ガスをノズルから噴射させて燃焼する構成とすると共に、上記ミキシング装置に燃料ガスを供給する燃料系配管、及び上記ミキシング装置に酸素含有ガスを供給する空気系配管のそれぞれに、流量検出器及び流量調節弁を設け、
加熱する金属帯に対応して設定された空気比となるように、上記流量検出器からの信号に基づき流量調節弁を制御する制御装置を備えたことを特徴とする金属帯の連続加熱装置。
【請求項2】
連続して搬送される金属帯を直火式加熱炉で連続して加熱する金属帯の連続加熱方法であって、
直火式加熱炉内の少なくとも下流側での加熱を、燃料ガスと酸素含有ガスとを予めミキシング装置で混合した予混合ガスをノズルから噴出させて燃焼する構成とすると共に、上記ミキシング装置に供給する燃料ガス及び酸素含有ガスを個別の流量調節弁で調節し、加熱する金属帯に対応して設定された空気比となるように、上記流量調節弁を制御することを特徴とする金属帯の連続加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−235463(P2009−235463A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81241(P2008−81241)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】