説明

金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体及びその製造方法

【課題】高温において使用可能な金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体及びその製造方法を提供する
【解決手段】金属材4とセラミックス−炭素複合材1との接合体6は、金属からなる金属材4と、セラミックス−炭素複合材1との接合体である。セラミックス−炭素複合材1は、複数の炭素粒子2と、セラミックスからなるセラミック部3とを有する。セラミック部3は、複数の炭素粒子2間に形成されている。金属材4と、セラミックス−炭素複合材1とは、接合層5を介して接合されている。接合層5は、金属の炭化物とセラミックスとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属としての特性と、炭素材としての特性とを兼ね備えた金属材と炭素材との接合体の需要が高まってきている。しかしながら、一般的に、金属材と炭素材との接合は困難である。現在のところ、金属材と炭素材との接合方法としては、例えば特許文献1に記載のようなろう材を用いた接合方法が提案されているにとどまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−313677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように、ろう材を用いて金属材と炭素材とを接合した場合、ろう材の融点よりも高い温度で使用可能な接合材が得られない。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みなされ、高温において使用可能な金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体及びその製造方法を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体は、金属からなる金属材と、セラミックス−炭素複合材との接合体である。セラミックス−炭素複合材は、複数の炭素粒子と、セラミックスからなるセラミック部とを有する。セラミック部は、複数の炭素粒子間に形成されている。金属材と、前記セラミックス−炭素複合材とは、接合層を介して接合されている。接合層は、金属の炭化物とセラミックスとを含む。
【0007】
なお、本発明において、「金属」には、合金が含まれるものとする。
【0008】
本発明の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体において、セラミック部は、連続した構造を有することが好ましい。
【0009】
本発明の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体において、セラミックスは、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素の少なくとも一方からなることが好ましい。
【0010】
本発明の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体において、金属は、W及びMoの少なくとも一方からなることが好ましい。
【0011】
本発明の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体において、セラミックスが炭化ケイ素を含む場合、接合層は、金属とケイ素(Si)とを含んでいてもよい。
【0012】
本発明の金属材とセラミックス−炭素複合体材との接合体の製造方法では、複数の炭素粒子と、複数の炭素粒子間に形成されており、セラミックスからなるセラミック部とを有するセラミックス−炭素複合材を用意する。セラミックス−炭素複合材と、金属材とを接触させた状態で焼成する。
【0013】
本発明の金属材とセラミックス−炭素複合体材との接合体の製造方法において、セラミック部は、連続した3次元網目構造を有することが好ましい。
【0014】
本発明の金属材とセラミックス−炭素複合体材との接合体の製造方法において、セラミックス−炭素複合材は、焼結助剤を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の金属材とセラミックス−炭素複合体材との接合体の製造方法において、金属材は、粉体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高温において使用可能な金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従う一実施形態における金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体の略図的断面図である。
【図2】実施例1で得られた接合体の接合面の走査型電子顕微鏡写真(左側は倍率500倍、右側は倍率5000倍)である。
【図3】実施例4で得られた接合体の接合面の走査型電子顕微鏡写真(左側は倍率500倍、右側は倍率2000倍)である。
【図4】実施例5で得られた接合体の接合面の走査型電子顕微鏡写真(左側は倍率100倍、右側は倍率2000倍)である。
【図5】実施例6で得られた接合体の接合面の走査型電子顕微鏡写真(左側は倍率500倍、右側は倍率2000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0019】
実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0020】
図1は、本発明に従う実施形態における金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体を示す模式的断面図である。
【0021】
図1に示すように金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体6は、金属からなる金属材4と、セラミックス−炭素複合材1との接合体である。
【0022】
(金属材4)
金属材4を構成する金属は、特に限定されない。金属の具体例としては、例えばW、Mo、Ti,Si、Al、Cr、Cu、Snまたはこれらの合金などが挙げられる。金属材4は、W及びMoの少なくとも一方からなることが好ましい。すなわち、金属材4は、W、MoまたはWとMoとの合金からなることが好ましい。
【0023】
金属材4は、どのような形状を有していてもよい。金属材4の形状は、例えば粒子状、板状、柱状、繊維状などであってもよい。金属材4は、粉体であることが好ましい。
【0024】
(セラミックス−炭素複合材1)
セラミックス−炭素複合材1は、複数の炭素粒子2と、セラミックスからなるセラミック部3とを有する。
【0025】
炭素粒子2は、例えばりん状黒鉛、りん片状黒鉛、土状黒鉛などからなる天然黒鉛、コークス、メソフェーズ小球体などを原料とした人造黒鉛、炭素質等が好ましく用いられる。炭素粒子2の粒子径は、50nm〜500μm程度であることが好ましく、1μm〜250μm程度であることがより好ましく、5μm〜100μm程度であることがさらに好ましい。炭素粒子2の粒子径が小さすぎると、炭素粒子2が凝集しやすい。炭素粒子2が凝集しすぎると、セラミックス−炭素複合材1が炭素の特性を得られない場合がある。一方、炭素粒子2の粒子径が大きすぎると、焼成したセラミックス―炭素複合材1の強度が低下する場合がある。複数の炭素粒子2は、1種類の炭素粒子2のみを含んでいてもよいし、複数種類の炭素粒子2を含んでいてもよい。
【0026】
セラミック部3は、複数の炭素粒子2間に形成されている。セラミック部3は、連続した構造を有していることが好ましい。すなわち、複数の炭素粒子2は、連続した構造を有するセラミック部3によって一体化されていることが好ましい。セラミック部3は、3次元網目構造を有することが好ましい。セラミックス―炭素複合材1において、セラミック部3中に炭素粒子2が分散していることが好ましい。セラミック部3中に炭素粒子2が塊状となって分散していてもよい。なお、セラミック部3は、連続したひとつのセラミック部により構成されていてもよいし、孤立した複数のセラミック部により構成されていてもよい。
【0027】
セラミックス−炭素複合材1における炭素粒子2とセラミック部3との体積比(炭素粒子2の体積:セラミック部3の体積)は、95:5〜50:50であることが好ましく、90:10〜70:30であることがより好ましい。
【0028】
セラミック部3を構成するセラミックスとしては、例えば、AlNなどの窒化アルミニウム、Alなどの酸化アルミニウム、SiCなどの炭化ケイ素、Siなどの窒化ケイ素、BCなどの炭化ホウ素、TaCなどの炭化タンタル、NbCなどの炭化ニオブ、ZrCなどの炭化ジルコニウム、ZnOなどの酸化亜鉛、SiOなどの酸化ケイ素、ZrOなどの酸化ジルコニウムなどが挙げられる。なかでも、AlNなどの窒化アルミニウムと、SiCなどの炭化ケイ素とが、セラミック部3に好ましく用いられる。なお、セラミックスの組成は、均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0029】
セラミック部3の厚みは、100nm〜10μm程度であることが好ましい。
【0030】
セラミックス−炭素複合材1は、例えば、セラミックスが表面に付着した炭素粒子2を焼成することで作製することができる。セラミックスが表面に付着した炭素粒子2は、例えば、気相法、液相法、ミキサー等を用いてセラミックスと炭素粒子2とを混合する機械的混合方法、スラリー法またはこれらを組み合わせた方法により作製することができる。気相法の具体例としては、化学気相蒸着法(CVD法)、転化法(CVR法)などが挙げられる。液相法の具体例としては、例えば、化学沈殿法等が挙げられる。スラリー法の具体例としては、例えばゲルキャスト法、スリップキャスティング、テープキャスティングなどが挙げられる。
【0031】
セラミックスが表面に付着した炭素粒子2の焼成温度や焼成時間、焼成雰囲気の種類、焼成雰囲気の圧力等は、使用する材料の種類、形状、大きさ等に応じて適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、1700℃〜2100℃程度とすることができる。焼成時間は、例えば、5分間〜2時間程度とすることができる。焼成雰囲気の種類は、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることができる。焼成雰囲気の圧力は、例えば、0.01MPa〜10MPa程度とすることができる。
【0032】
セラミックス−炭素複合材1は、焼結助剤を含むことが好ましい。焼結助剤としては、Yなどの酸化イットリウム、Alなどの酸化アルミニウム、CaOなどの酸化カルシウム、SiOなどの酸化ケイ素等が挙げられる。
【0033】
(接合層5)
金属材4とセラミックス−炭素複合材1との間には、接合層5が形成されている。この接合層5を介して金属材4とセラミックス−炭素複合材1とが接合されている。接合層5は、金属の炭化物とセラミックスとを含む。
【0034】
接合層5に含まれる金属の炭化物は、後に詳述するように、接合工程において、金属材4から供給された金属が炭化してなるものである。すなわち、金属の炭化物は、金属材4由来のものである。このため、金属材4を構成する金属と同種の金属の炭化物である。よって、接合層5に含まれる金属の炭化物の種類は、金属材4を構成している金属によって決まる。例えば、金属材4がW及びMoの少なくとも一方からなる場合は、接合層5に含まれる金属の炭化物は、炭化タングステン及び炭化モリブデンの少なくとも一方となる。
【0035】
接合層5に含まれるセラミックスは、後に詳述するように、セラミック部3由来のものである。このため、接合層5に含まれるセラミックスは、セラミック部3を構成するセラミックスと同種のセラミックスである。例えば、セラミック部3が窒化アルミニウム及び炭化ケイ素の少なくとも一方からなる場合は、接合層5にも、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素の少なくとも一方が含まれている。なお、接合層5において、金属とセラミックスとは単体として存在していてもよいし、互いに結合した状態で存在していてもよい。
【0036】
接合層5の厚みは、通常1μm〜200μm程度である。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の接合体6では、接合層5が金属の炭化物とセラミックスとを含んでいる。よって、接合層5は、金属材4やセラミックス−炭素複合材1に対して優れた親和性を有する。従って、接合層5と、金属材4との間の密着強度が高く、且つ接合層5と、セラミックス−炭素複合材1との間の密着強度が高い。その結果、金属材4とセラミックス−炭素複合材1との間の密着強度も高くなる。すなわち、接合体6では、金属材4とセラミックス−炭素複合材1とが高い接合強度で接合されている。
【0038】
また、接合体6は、金属材4とセラミックス−炭素複合材1との接合にろう材を使用していない。よって、接合体6は、ろう材の融点よりも高い温度で使用可能である。
【0039】
以上より、本実施形態の接合体6は、高性能なX線回転対陰極、放熱部材や耐熱部材、耐放射線部材、耐プラズマ損傷部材などとして好適に使用できる。
【0040】
(接合体6の製造方法)
以下、金属材4とセラミックス−炭素複合体材1との接合体6の製造方法の一例について説明する。
【0041】
セラミックス−炭素複合材1と、金属材4とを接触させて得られる積層体を焼成する。この焼成工程において、金属材4のセラミックス−炭素複合材1側表層に含まれる金属がセラミックス−炭素複合材1の炭素粒子2から供給される炭素によって炭化し、金属炭化物が形成される。これにより金属炭化物とセラミック部3のセラミックスとを含む接合層5が形成される。その結果、金属材4とセラミックス−炭素複合材1とが接合した接合体6を得ることができる。
【0042】
なお、例えば、金属材4が粉体である場合は、セラミックス−炭素複合材1の上に粉体である金属材4を配置し、その状態で焼成することにより、接合体6を製造することができる。例えば金属材4が板状である場合は、セラミックス−炭素複合材1と金属材4とを積層した状態で焼成することにより、接合体6を製造することができる。
【0043】
ここで、WやMoは、炭化物を構成しやすい金属である。このため、W及びMoの少なくとも一方からなる金属材4を用いることにより、金属炭化物が形成されやすくなる。従って、金属材4とセラミックス−炭素複合材1との接合が容易となる。
【0044】
セラミックス−炭素複合材1と金属材4との焼成温度や焼成時間、焼成雰囲気の種類、焼成雰囲気の圧力等は、使用する材料の種類、形状、大きさ等に応じて適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、600℃〜1800℃程度とすることができる。焼成時間は、例えば、2分間〜2時間程度とすることができる。焼成雰囲気の種類は、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることができる。焼成雰囲気の圧力は、例えば、0MPa〜10MPa程度とすることができる。
【0045】
本実施形態の接合体6の製造方法によれば、ろう材や接着剤などを用いることなく、金属材4とセラミックス−炭素複合材1とを接合することができる。
【0046】
また、ボルト等による機械的な接合では接合できないような形状の金属材4とセラミックス−炭素複合材1とを接合することも可能である。
【0047】
以下、本発明を、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0048】
(実験例1)
以下のようにしてセラミックス−炭素複合材1と実質的に同様の構成を有するセラミックス−炭素複合材を作製した。
【0049】
炭素粒子2として黒鉛(メソフェーズ小球体、東洋炭素株式会社製)を使用した。セラミックスとして窒化アルミニウム粉末(株式会社トクヤマ製のHタイプ)を使用した。
【0050】
黒鉛(10g)と、窒化アルミニウム(3.54g)と焼結助剤としてのY(0.19g)とを混合した粉末と、アクリルアミド(8g)及びN,N’―メチレンビスアクリルアミド(1g)をイソプロパノール(45g)に溶解したバインダー溶液(2.49g)とをゲルキャスティング法により混合し、混合物をプラスティックモールドにキャスティングした。混合物中の黒鉛とセラミックスとの体積比は80:20であった。得られた混合物を常圧下、80℃で12時間乾燥して乾燥物を得た。次に、乾燥物を真空中、700℃で1時間加熱してバインダーであるアクリルアミドを除去した。さらに、放電プラズマ焼結法にて、30MPaの圧力を印加しつつ、1900℃で5分間、真空条件でパルス通電焼結した。その結果、セラミックス−炭素複合材として、窒化アルミニウム−黒鉛複合材が得られた。
【0051】
得られた窒化アルミニウム−黒鉛複合材のかさ密度、曲げ強度及び熱伝導率を下記の要領で測定した。結果を下記の表1に示す。
【0052】
〔かさ密度〕
アルキメデス法により、かさ密度を測定した。具体的には、JIS A1509−3に基づき測定した。
【0053】
〔曲げ強度〕
3点曲げ強度試験により、曲げ強度を測定した。具体的には、JIS A1509−4に基づき測定した。
【0054】
〔熱伝導率〕
レーザーフラッシュ法により、熱伝導率を測定した。具体的には、JIS A1650−3に基づき測定した。
【0055】
(実験例2)
窒化アルミニウムの代わりに、炭化ケイ素(宇部興産株式会社製のE10タイプ)を使用したこと以外は、実験例1と同様にして、炭化ケイ素−黒鉛複合材を得た。黒鉛とセラミックスの体積比は70:30とした。
【0056】
得られた炭化ケイ素−黒鉛複合材のかさ密度、曲げ強度及び熱伝導率を実験例1に記載の要領で測定した。結果を下記の表1に示す。
【0057】
(実験例3)
実験例1において、焼結助剤を使用しなかったこと以外は、上記と同様にして、窒化アルミニウム−黒鉛複合材を得た。
【0058】
得られた窒化アルミニウム−黒鉛複合材のかさ密度、曲げ強度を実験例1に記載の要領で測定した。結果を下記の表1に示す。なお、熱伝導率は測定していない。
【0059】
(比較実験例1)
黒鉛(メソフェーズ小球体、東洋炭素株式会社製、10g)と、窒化アルミニウム(3.54g)と焼結助剤(Y 0.19g)とを混合した粉末と、エタノール(15g)とをボールミルで混合した。得られた混合物を常圧下、80℃で12時間分間乾燥して乾燥粉末を得た。次に、得られた粉末を、放電プラズマ焼結法にて、30MPaの圧力を印加しつつ、1900℃で5分間、真空条件でパルス通電焼結した。その結果、窒化アルミニウムと黒鉛との複合焼結体が得られた。
【0060】
得られた複合焼結体のかさ密度、曲げ強度及び熱伝導率を実験例1に記載の要領で測定した。結果を下記の表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
(実施例1)
実験例1で作製した窒化アルミニウム−黒鉛複合材(厚さ5mm、直径25mmの円柱)の端面を紙やすりで研磨後、金属材4としてのタングステン粉末(粒子径約0.6μm、4.5g)を、窒化アルミニウム−黒鉛複合材の端面上に、厚みが0.3mmとなるように配置し、積層体を得た。次に、積層体に30MPaの圧力を印加しつつ、1700℃で5分間、真空条件下でパルス通電焼結した。その結果、タングステンと窒化アルミニウム−黒鉛複合材との接合体6が得られた。得られた接合体6を以下のように加工、研磨して得られた試験片の曲げ強度を以下の要領で測定した。結果を下記表2に示す。
【0063】
〔試験片の作製〕
試験片は、幅約3mm、厚み2〜6mm、長さ20mmの直方体に加工し、80μmの研磨盤で研磨した。
【0064】
〔曲げ強度〕
3点曲げ強度試験により、曲げ強度を測定した。具体的には、JIS A1509−4に基づき測定した。
【0065】
(実施例2)
セラミックス−炭素複合材として、窒化アルミニウム−黒鉛複合材(厚さ5mm、直径25mmの円柱)を使用したこと、及び金属材4として、タングステン粉末(粒子径約0.6μm、5g)を厚みが0.5mmとなるように配置したこと以外は、実施例1と同様にして、タングステンと窒化アルミニウム−黒鉛複合材との接合体6を得た。得られた接合体6は、実施例1と同様にして、加工と研磨後に曲げ強度を測定した。結果を下記表2に示す。
【0066】
(実施例3)
実施例2と同様にして、タングステンと窒化アルミニウム−黒鉛複合材との接合体6を得た。得られた接合体6に熱サイクル処理を行った。熱サイクル処理の方法は、真空中にて室温から400℃までの加熱−冷却を10回繰り返した。得られた接合体6は、実施例1と同様にして、加工と研磨後に曲げ強度を測定した。結果を下記表2に示す。
【0067】
(実施例4)
セラミックス−炭素複合材として、実験例2で得られた炭化ケイ素−黒鉛複合材(厚さ5mm、直径25mm)を使用したこと以外は、実施例2と同様にして、タングステンとセラミックス−炭素複合材との接合体6を得た。得られた接合体6は、実施例1と同様にして、加工と研磨後に曲げ強度を測定した。結果を下記表2に示す。
【0068】
(実施例5)
セラミックス−炭素複合材1として、実験例2と同様の方法で得られた炭化ケイ素−黒鉛複合材(厚さ6mm、直径25mm)を使用したこと、及び金属材4としてモリブデン(Mo)粉末(粒子径約0.7mm、3.5g)を厚みが0.5mmとなるように配置したこと以外は、実施例1と同様にして、モリブデンとセラミックス−黒鉛複合材との接合体6を得た。得られた接合体6は実施例1と同様にして、加工と研磨後に曲げ強度を測定した。結果を下記表2に示す。
【0069】
(実施例6)
セラミックス−炭素複合材1として、実験例3で得られた窒化アルミニウム−黒鉛複合材(厚さ5mm、直径25mmの円柱)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、タングステンと窒化アルミニウム−黒鉛複合材との接合体6が得られた。得られた接合体6は、実施例1と同様にして、加工と研磨後に曲げ強度を測定した。結果を下記表2に示す。
【0070】
(比較例1)
東洋炭素株式会社製のIG−88黒鉛を紙やすりで研磨後、上部にタングステン粉末(粒子径約0.6μm、5g)を厚みが0.5mmとなるように5g配置した。次に、30MPaの圧力を印加しつつ、1700℃で5分間、真空条件下でパルス通電焼結した。その結果、黒鉛とタングステン粉末とを接合することはできなかった。結果を下記表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
なお、実施例1〜6におけるセラミックス−黒鉛複合材の厚みは、上記加工及び研磨後の試験片の厚みである。
【符号の説明】
【0073】
1…セラミックス−炭素複合材
2…炭素粒子
3…セラミック部
4…金属材
5…接合層
6…金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる金属材と、
複数の炭素粒子と、前記複数の炭素粒子間に形成されており、セラミックスからなるセラミック部とを有するセラミックス−炭素複合材とが、接合層を介して接合されている接合体であって、
前記接合層は、前記金属の炭化物と前記セラミックスとを含む、
金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体。
【請求項2】
前記セラミック部は、連続した構造を有する請求項1に記載の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体。
【請求項3】
前記セラミックスは、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素の少なくとも一方からなる請求項1または2に記載の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体。
【請求項4】
前記金属は、W及びMoの少なくとも一方からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体。
【請求項5】
前記セラミックスが炭化ケイ素であり、前記接合層は、前記金属とSiとを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体。
【請求項6】
金属材とセラミックス−炭素複合体材との接合体の製造方法であって、
複数の炭素粒子と、前記複数の炭素粒子間に形成されており、セラミックスからなるセラミック部とを有するセラミックス−炭素複合材を用意し、前記セラミックス−炭素複合材と金属材とを接触させた状態で焼成する、金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体の製造方法。
【請求項7】
前記セラミック部は、連続した3次元網目構造を有する請求項6に記載の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体の製造方法。
【請求項8】
前記セラミックス−炭素複合材は、焼結助剤を含む請求項6または7に記載の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体の製造方法。
【請求項9】
前記金属材は、粉体である請求項6〜8のいずれか一項に記載の金属材とセラミックス−炭素複合材との接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−246172(P2012−246172A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118581(P2011−118581)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】