金属材の加工方法および構造物
【課題】摩擦攪拌接合と溶融加工とを組み合わせて金属材を加工する場合において、接合強度を向上させることができる金属材料の加工方法およびこの加工方法によって形成された構造体を提供する。
【解決手段】第1ステップにおいて、後の溶融加工に伴う金属材の結晶粒の粗大化を防止するため、添加材を接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行う(S01)。その後、MIG溶接等の溶融加工を行う(S02)。接合部に添加する添加材は、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する物質と、金属材に対してミスフィットが±15%以内である物質とを含む物質とする。これにより、溶融加工による結晶粒の粗大化が抑制され、接合強度を向上させることができる。
【解決手段】第1ステップにおいて、後の溶融加工に伴う金属材の結晶粒の粗大化を防止するため、添加材を接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行う(S01)。その後、MIG溶接等の溶融加工を行う(S02)。接合部に添加する添加材は、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する物質と、金属材に対してミスフィットが±15%以内である物質とを含む物質とする。これにより、溶融加工による結晶粒の粗大化が抑制され、接合強度を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属材の加工方法およびこの加工方法によって形成された構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属材の加工方法においては、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)により金属材を接合する技術が知られている。摩擦攪拌接合では、接合しようとする金属材を接合部において対向させ、回転ツールの先端に設けられたプローブを接合部に挿入し、接合部の長手方向に沿って回転ツールを回転させて2つの金属材を接合する。摩擦攪拌接合は良好な接合強度を得ることができるが、接合部が曲面を有する場合および回転ツールを挿入しにくい場合には適用することが難しいため、実際に鉄道車両構体等の構造物を摩擦攪拌接合によって製造する際には、摩擦攪拌接合だけではなく、摩擦攪拌接合とMIG溶接等の溶融加工とを組み合わせて金属材を加工し、曲面を有する構造物を製造している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3224092号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、鉄道車両構体等の製造においては性能向上の観点からさらなる高強度化の要請があり、上記のような摩擦攪拌接合と溶融加工とを組み合わせた加工方法においても、さらに接合強度を向上させることが望まれている。
【0004】
本発明は、斯かる実情に鑑み、摩擦攪拌接合と溶融加工とを組み合わせて金属材を加工する場合において、接合強度を向上させることができる金属材料の加工方法およびこの加工方法によって形成された構造体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、2つの金属材を接合部において対向させ、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材を接合部に供給しつつ、接合部に棒状の回転ツールを挿入し、回転ツールを回転させ、2つの金属材を接合する第1ステップと、接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、を含む金属材の加工方法である。
【0006】
本発明者らが鋭意研究した結果、摩擦攪拌接合の接合部に溶接等の溶融加工を施した場合、摩擦攪拌接合により歪を有していた接合部の結晶粒が溶融加工の熱により再結晶が生じて粗大化し、接合強度が低下することが判明した。しかし、上記構成によれば、第1ステップにおいて、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材を接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行うため、接合部に当該添加材の粒子を混入させることができる。そのため、第2ステップにおいて接合部にさらに溶融加工を施しても、溶融加工における溶融部と特にその周囲の熱影響部(HAZ=Heat Affected Zone)において、添加材の粒子は、金属材と化学反応を生じず且つ溶融せずに残留し、粗大化しようとする結晶粒を押え込むため、溶融加工による金属材の結晶粒の粗大化を低減することができる。その結果、溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0007】
なお、本発明の金属材の加工方法の第1ステップにおいては、回転ツールを回転させつつ接合部の長手方向に沿って移動させる場合と、接合部において回転させた回転ツールを移動させずにその箇所で回転させ続ける場合とを含む。また、本明細書で「摩擦攪拌接合」とは、(1)板状の金属材の端部同士を突き合わせて接合部とし、回転ツールをその接合部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合、(2)板状の金属材の端部同士を突き合わせて接合部とし、回転ツールをその接合部で移動させずに回転させて接合するスポット摩擦攪拌接合(スポットFSW)、(3)金属材同士を接合部において重ね合わせ、少なくとも一方の金属材を貫通する孔を通して接合部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその箇所で移動させずに回転させて金属材同士を接合するスポット摩擦攪拌接合、(4)金属材同士を接合部において重ね合わせ、少なくとも一方の金属材を貫通する孔を通して接合部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその接合部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合の(1)〜(4)の4つの態様およびこれらの組み合わせを含む。
【0008】
また本発明は、2つの金属材を接合部において対向させ、金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材を接合部に供給しつつ、接合部に棒状の回転ツールを挿入し、回転ツールを回転させ、2つの金属材を接合する第1ステップと、接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、を含む金属材の加工方法である。
【0009】
上記構成によれば、第1ステップにおいて、金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材を接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行うため、接合部の金属材の結晶に対してミスフィット(Miss Fit)が小さい添加材の粒子を混入させることができる。そのため、第2ステップにおいて接合部にさらに溶融加工を施すと、溶融部において金属材が再凝固する際に、金属材の結晶に対してミスフィットの小さい添加材の粒子が凝固核となり、添加材の粒子ごとに結晶粒が生成される。このため、添加材の粒子ごとに凝固する金属材の結晶粒のそれぞれの大きさが小さなものとなり、それぞれの小さな結晶粒が粗大化しようとしても互いにぶつかり合いそれ以上に大きくなることができないため、金属材の結晶粒の粗大化を低減することができる。その結果、溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0010】
また本発明は、2つの金属材を接合部において対向させ、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材と、金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材と、を接合部に供給しつつ、接合部に棒状の回転ツールを挿入し、回転ツールを回転させ、2つの金属材を接合する第1ステップと、接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、を含む金属材の加工方法である。
【0011】
この構成によれば、第1ステップにおいて、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材と、金属材の結晶に対してミスフィットが小さい添加材とを接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行うため、各々の添加材の粒子を接合部の金属材に混入させることができる。そのため、第2ステップにおいて接合部にさらに溶融加工を施しても、金属材の融点より高い融点の添加材の粒子が熱により粗大化しようとする結晶粒を押え込み、さらに金属材の結晶に対してミスフィットが小さい添加材の粒子が凝固核となり、再凝固する金属材の個々の結晶粒の大きさが小さくなるため、金属材の結晶粒の粗大化を低減することができる。その結果、溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0012】
なお、本発明においては、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材と、金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材との2種類の添加材を接合部に供給する場合と、金属材と化学反応を起こさず、金属材の融点より高い融点を有し、且つ金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である1種類の添加材を接合部に供給する場合との両方を含むものとする。
【0013】
この場合、第1ステップにおいて、接合部の長手方向に沿って回転ツールを回転させつつ移動させ、2つの金属材を接合することができる。この構成によれば、接合部の長手方向に沿って回転ツールを回転させつつ移動させて2つの金属材を接合するため、2つの金属材の間にある接合部が長い場合でも、2つの金属材を接合することができる。
【0014】
一方、第1ステップにおいて、接合部への添加材の供給は、接合部に回転ツールを挿入する前に、接合部に添加材を配置することによって行うことができる。この構成によれば、予め接合部に添加材を配置するため、容易かつ確実に接合部に添加材を供給することができる。
【0015】
また、第1ステップにおいて、接合部への添加材の供給は、回転ツールの移動に伴い、接合部における回転ツールの移動先の部位に添加材を放出することによって行うことができる。この構成によれば、回転ツールの移動先の部位に添加材を放出するため、実際の加工作業現場で接合部の位置が変動する場合や、接合部の回転ツールを挿入する向きが垂直下向き方向以外の方向である場合でも対応することができる。
【0016】
この場合、第1ステップにおいて、接合部において回転ツールを移動させる前に、接合部を回転ツールと対向する方向に開いた開先に加工することができる。この構成によれば、接合部を回転ツールと対向する方向に開いた開先に加工し、当該開先に添加材を放出するため、開先に添加材が一時的に滞留し、接合部に添加材を一層供給しやすくすることができる。
【0017】
一方、第1ステップにおいて、接合部への添加材の供給は、回転ツール内部から接合部へ添加材を放出することによって行うことができる。この構成によれば、回転ツール内部から接合部へ添加材を放出するため、確実に接合部へ添加材を供給することができ、接合部の位置が変動する場合や、接合部の回転ツールを挿入する向きが垂直下向き方向以外の方向である場合でも対応することができる。
【0018】
また、第1ステップにおいて、接合部への添加材の供給は、予め回転ツールの材料に添加材を含有させておき、回転ツールを回転させることにより、回転ツールを磨耗させつつ接合部に添加材を供給することができる。この構成によれば、添加材を含有する回転ツールの磨耗に伴い接合部に添加材を供給するため、接合部にむらなく添加材を供給することができ、添加材の分散性を一層向上させることができる。
【0019】
一方、本発明の別の態様は、本発明の金属材の加工方法によって、2つ以上の金属材を加工して形成された構造物である。この構成によれば、本発明の加工方法によって、摩擦攪拌接合と溶融加工とを組み合わせて形成されているため、溶融加工による摩擦攪拌接合部の接合強度の低下が少なく、一層高強度の構造物とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の金属材の加工方法によれば、溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。また本発明の構造物は、溶融加工による摩擦攪拌接合部の接合強度の低下が少なく、一層高強度の構造物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。なお、同一の構成要素は同一の符号で示し、重複する説明は省略する。
【0022】
まず、本実施形態に係る金属材の加工方法の大まかな流れを説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る金属材の加工方法の流れを示すフロー図である。図1に示すように、本実施形態においては、第1ステップにおいて、後の溶融加工に伴う金属材の結晶粒の粗大化を防止するため、添加材を接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行う(S01)。一般的な曲面や回転ツールを挿入しにくい部位を有する構造物は、摩擦攪拌接合のみでは形成することが難しいため、その後、MIG溶接等の溶融加工を行う(S02)。
【0023】
以下、本実施形態の加工方法の各ステップについて詳細に説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る回転ツールを示す斜視図である。図2に示すように、回転ツール10は、略円柱状の回転ツール本体16からなる。回転ツール10は、回転ツール本体16の先端に、ショルダー14と金属材同士の接合部に挿入されるプローブ12とを備えている。プローブ12は、ショルダー14より小径の略円柱形をなしている。本実施形態において、回転ツール10の材質は、例えば、JISに規格されているSKD61鋼等の工具鋼や、タングステンカーバイト(WC)、コバルト(Co)からなる超硬合金、またはSi3N4等のセラミックスからなるものとすることができる。
【0024】
図3は、本発明の第1実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。図3に示すように、本実施形態の摩擦攪拌接合では、2つの金属材100,102を接合部104において突き合わせる。金属材100,102としては、例えば、Al材、Fe材、Mg材を適用することができる。あるいは、これらの金属材に繰り返し重ね接合圧延(ARB=AccumulativeRoll-Bonding)等の組織制御を行い、金属材の平均結晶粒径を10μm以下に微細化した超微粒子材を適用することができる。
【0025】
本実施形態の摩擦攪拌接合においては、接合部104には、回転ツール10を挿入する前に、金属材100,102と化学反応を起こさず且つ金属材100,102の融点より高い融点を有する物質と、金属材100,102の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である物質とを含む添加材18を充填する。
【0026】
金属材100,102と化学反応を起こさず且つ金属材100,102の融点より高い融点を有する物質は、後に行う溶融加工の際に溶融せずに残留し、金属材100,102の結晶粒の粗大化を防ぐための物である。金属材100,102がAl材、Fe材、Mg材およびこれらの超微粒子材である場合において、これらと化学反応を起こさず且つこれらの融点より高い融点を有する物質としては、Ti,W等の高融点の金属、およびSiC,TiC,Si3N4,BN,AlN,Al2O3,ZrO2,MgO等の炭化物、窒化物、酸化物のいずれかを適用することができ、特にはSiCを適用することができる。これらの物質は、摩擦攪拌接合の際に接合部104で分散しやすいように、平均粒径0.5〜5μmの粒状にされる。
【0027】
金属材100,102の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である物質、すなわちミスフィットが±15%以内である物質は、後に行う溶融加工後の金属材が再凝固する際に、凝固核となり、金属材の結晶粒の大きさを小さくするための物である。金属材100,102がAl材である場合には、ミスフィットが±15%以内である物質としては、VC(ミスフィット1.4%)、TiC(ミスフィット6.8%)、TiB2(ミスフィット4.8%)、AlB2(ミスフィット3.8%)、ZrC(ミスフィット14.5%)、NbC(ミスフィット8.6%)およびW2C(ミスフィット3.5%)等を適用することができる。金属材100,102がFe材である場合には、ミスフィットが±15%以内である物質としては、TiN(ミスフィット3.8%)、TiC(ミスフィット5.8%)、SiC(ミスフィット6.0%)、ZrN(ミスフィット11.2%)、WC(ミスフィット12.6%)およびZrC(ミスフィット14.4%)等を適用することができる。金属材100,102がMg材である場合には、合金成分にAlを含まないMg材については、Zr粒子を添加することにより、Zr粒子を凝固核とすることができる。また合金成分にAlを含むMg材については、C粒子を添加すると反応生成物のAl4C3が凝固核となる。これらの物質は、摩擦攪拌接合の際に接合部104で分散しやすいように、平均粒径0.5〜5μmの粒状にされる。
【0028】
上記の金属材100,102と化学反応を起こさず且つ金属材100,102の融点より高い融点を有する物質と、金属材100,102とのミスフィットが±15%以内である物質とは、それぞれ異なる物質を適用して、各々を混合して添加材18とすることができる。あるいは、上記の金属材100,102に対して、化学反応を起こさず且つ金属材100,102の融点より高い融点を有し、且つミスフィットが±15%以内である一種類の物質を適用して、添加材18としても良い。
【0029】
接合部104に添加材18を充填した後、接合部104に回転ツール10を挿入する。接合部104の長手方向に沿って回転ツールを回転させつつ移動させて、金属材100,102を接合する。接合部104に充填した添加材18の粒子は、回転ツール10によって攪拌され、金属材100,102と混合される。なお、接合部104において回転ツール10を移動させずにその場所で回転させるスポット摩擦攪拌接合によっても金属材100,102同士を接合することができる。
【0030】
図4は、本発明の第1実施形態に係る金属材の加工方法によって形成された鉄道車両構体を示す斜視図である。図4に示すように、鉄道車両構体200は、金属材である屋根構202,204、側構206,208、台枠210、妻構212および軒部材214,216からなる。図4の例では、摩擦攪拌接合部218において、側構206と軒部材214との間、側構208と軒部材216との間が摩擦攪拌接合によって接合される。その後、溶融接合部220において、一部に曲線部分を含む側構206,208同士および軒部材214,216同士が溶融接合によって接合される。摩擦攪拌接合部218と溶融接合部220との交点において、金属材に摩擦攪拌接合が施された後に、さらに溶融接合が行われた重複加工部222が形成される。なお、本実施形態においては、図4に示すような摩擦攪拌接合部218と溶融接合部220とが一部交わるようにすること以外にも、摩擦攪拌接合部218の上から重ねて溶融加工を行い、摩擦攪拌接合部218と溶融接合部220とを完全に重複させることもできる。また、摩擦攪拌接合を行った直後に溶融接合を行う以外にも、摩擦攪拌接合部218の部分的な空洞や溝状欠陥を補修する場合や、摩擦攪拌接合部218が時間の経過により劣化した部分を補修する場合に、摩擦攪拌接合部218に溶融加工を施すこともできる。溶融加工としては、ガス溶接、プラズマ溶接を適用することができる。あるいは、サブマージ溶接、MIG溶接、TIG溶接、CO2溶接、被覆アーク溶接等のアーク溶接や、スポット溶接等を適用することができる。
【0031】
以下、本実施形態の金属材の加工方法の作用効果について説明する。本発明者らの研究の結果、摩擦攪拌接合の接合部に溶接等の溶融加工を施した場合、摩擦攪拌接合により歪を有していた接合部の結晶粒が、溶融加工の熱により再結晶が生じて粗大化し、接合強度が低下することが判明した。そこで本実施形態においては、接合部104に、金属材100,102と化学反応を起こさず、且つ金属材100,102の融点より高い融点を有する添加材18の粒子を混入させる。この添加材18の粒子は、その後に接合部104に溶融加工を施しても、金属材100,102と化学反応を起こさず、溶融加工の熱により溶融せずに残留する。そして、添加材18の粒子が、溶融加工の熱により粗大化しようとする金属材100,102の結晶粒を押え込むため、金属材100,102の結晶粒の粗大化を低減することができる。この作用は、溶融加工による溶融部の周囲の熱影響部において特に顕著である。その結果、その後の溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部104の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0032】
なお、金属材100,102に超微粒子材を適用した場合には、超微粒子材と化学反応を起こさず且つ超微粒子材の融点より高い融点を有する添加材18を接合部104に混入させて摩擦攪拌接合を行うと、摩擦攪拌接合直後の接合強度を著しく向上させることができる。
【0033】
一方、本実施形態においては、接合部104に、金属材100,102の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれか(ミスフィット)が±15%以下である添加材18の粒子を混入させる。その後に接合部104に溶融加工を施すと、溶融加工による溶融部において金属材100,102が再凝固する際に、金属材100,102の結晶に対するミスフィットの小さい添加材18の粒子が凝固核となり、添加材18の粒子ごとに結晶粒が生成される。このため、添加材18の粒子ごとに凝固する金属材100,102の結晶粒のそれぞれの大きさは小さなものとなり、それぞれの小さな結晶粒が粗大化しようとしても互いにぶつかり合いそれ以上に大きくなることができないため、金属材100,102の結晶粒の粗大化を低減することができる。その結果、その後の溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部104の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0034】
特に本実施形態においては、回転ツール10を接合部104に挿入する前に、接合部104に添加材18を充填するため、容易かつ確実に接合部104に添加材18を供給することができる。
【0035】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。図5に示すように本実施形態では、添加材放出ノズル20から添加材18を回転ツール10の移動先の部位に放出することによって、接合部104に添加材18を供給する点が、上記第1実施形態と異なっている。本実施形態では、添加材放出ノズル20は、回転ツール10の移動に対応して移動するようにされており、回転ツール10の移動する先の部位に添加材18を放出することができるようにされている。また本実施形態では、回転ツール10を移動させる前に、接合部104を回転ツール10と対向する方向に開いた開先106に加工してもよい。
【0036】
本実施形態においては、回転ツール10を移動させる部位に添加材18を放出するため、実際の加工作業現場で接合部104の位置が変動する場合や、接合部104の回転ツールを挿入する向きが垂直下向き方向以外の方向である場合でも対応することができる。また、開先106に添加材18が一時的に滞留するため、接合部104に添加材18を一層供給しやすくすることができる。
【0037】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。図6は本発明の第3実施形態に係る回転ツールを示す斜視図であり、図7は本発明の第3実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す断面図である。本実施形態では、回転ツール10の移動の移動に伴い、回転ツール10内部から接合部104へ添加材18を放出する点が、上記第1実施形態と異なっている。図6に示すように本実施形態の回転ツール10には、プローブ12の先端と側面、ショルダー14の先端に添加材放出孔22が設けられ、回転ツール本体16の内部には添加材放出孔22に通じる添加材供給路24が設けられている。図7に示すように、摩擦攪拌接合の際には、回転ツール10を回転させながら移動させると同時に、添加材供給路24を介して添加材18を供給し、添加材放出孔22から添加材18を放出させる。添加材18は開先106に一時的に滞留し、回転ツール10の回転に伴い、金属材100,102の粒子と混合される。
【0038】
本実施形態においては、回転ツール10内部から接合部104へ添加材18を放出するため、確実に接合部104へ添加材18を供給することができ、接合部104の位置が変動する場合や、接合部104の回転ツール10を挿入する向きが垂直下向き方向以外の方向である場合でも対応することができる。
【0039】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。図8は、本発明の第4実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。本実施形態では、予め回転ツール10の材料に添加材を含有させておき、接合部104の長手方向に沿って回転ツール10を回転させつつ移動させることにより、回転ツール10を磨耗させつつ接合部104に添加材を供給する点が、上記第1実施形態と異なっている。本実施形態において金属材100,102はAl材であり、回転ツール10は多孔質TiCからなる。金属材100,102がAl材である場合、TiCは、Al材と化学反応を起こさず、Al材の融点より高い融点を有し、且つAl材とのミスフィットが±15%以下である物質である。図8に示すように、回転ツール10が接合部104において回転しつつ移動することにより、回転ツール10が磨耗し、接合部104に添加材であるTiCを供給することができる。なお、金属材100,102の材質により、回転ツール10の磨耗量が大きい場合には、図4に示すような重複加工部222にのみ、添加材を含有させた回転ツールを用いて摩擦攪拌接合を行うことにより、回転ツール10の磨耗量を低減させ、回転ツール10の寿命を長くすることができる。
【0040】
本実施形態においては、添加材を含有する回転ツール10の磨耗に伴い接合部104に添加材を供給するため、接合部104にむらなく添加材を供給することができ、添加材の分散性を一層向上させることができる。
【0041】
以下、本発明の第5実施形態について説明する。図9は、本発明の第5実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。本実施形態においては、回転ツール10を移動させずに接合するスポット摩擦攪拌接合を行う点が上記第1〜4実施形態と異なっている。図9に示すように、本実施形態においては、金属材100,102同士を接合部104にて重ね合わせ、少なくとも金属材102を貫通する挿入孔116を穿設し、回転ツール10を挿入する前に挿入孔116に添加材18が充填する。次に、回転ツール10のプローブ12を挿入孔116を通して接合部104に挿入して回転させ、金属材100,102を接合する。接合後は、図9に示すような接合済み部118が形成される。
【0042】
本実施形態においては、重ね合わせた金属材100,102同士を接合することができる。また、回転ツール10を挿入孔116を介して接合部104に挿入する前に、挿入孔116に添加材18を充填するため、容易かつ確実に接合部104に添加材18を供給することができる。なお、挿入孔116に挿入した回転ツール10を回転させつつ接合部104の長手方向に沿って移動させて金属材100,102を接合する摩擦攪拌接合によっても、重ね合わせた金属材100,102同士を接合することができる。また、本実施形態においては、接合部104への添加材18の供給は、上記第2実施形態のようにノズル20より添加材18を放出して供給する方法、上記第3実施形態のように回転ツール10内部から添加材18を放出して供給する方法、上記第4実施形態のように添加材18を含有する回転ツール10の磨耗に伴い接合部104に添加材を供給する方法のいずれの方法もとることができる。
【0043】
次に、本発明者が本発明の金属材の加工方法により、実際に金属材の加工を行った実験結果を、従来法により接合した場合と比較して説明する。
【0044】
実験例1
厚さ6mmのAZ31材(Alを3%、Znを1%含有するMg合金)を用意した。用意したAZ31材の表面に、摩擦攪拌接合による接合部を想定して、幅1mm、深さ2mmの溝を形成した。形成した溝に、図10に示す粒径0.5〜5μm、平均粒径1μmのSiC粉末108を充填した。図3に示すような摩擦攪拌接合を想定して、AZ31材表面のSiC粉末を充填した溝に回転ツール10のプローブ12を挿入し、回転ツール10を回転させつつ移動させる摩擦攪拌処理を行った。
【0045】
図11は本実験例の摩擦攪拌処理を行った部位の状態を示す図であり、図12は母材と攪拌部との境界を拡大した図である。図11に示すように、AZ31材である母材110に対して、回転ツール10により摩擦攪拌処理を施した攪拌部112は結晶粒の状態が変化していることが判る。また、図12に拡大して示すように、攪拌部112内にはSiC粉末108が混入されていることが判る。
【0046】
一方、比較のため、SiC粉末を溝に充填せずに同様の摩擦攪拌処理を施したAZ31材と、摩擦攪拌処理を施していないAZ31材とを用意した。以下、3種類のAZ31材に対してそれぞれ測定および観察を行った。
【0047】
図13は、本実験例におけるAZ31材の微小硬度を示すグラフ図である。図13に示すように、摩擦攪拌処理を行っていないAZ31材の微小硬度が40〜50Hvであるに対し、摩擦攪拌処理を行ったAZ31材の微小硬度は、表面から深さ2mmまでの攪拌された部位において52〜57Hvに増大していることが判る。さらに図13に示すように、溝にSiC粉末を充填して摩擦攪拌処理を行ったAZ31材の微小硬度は、SiCが添加された表面から深さ2mmまでの部位において最大で77Hvまで増大していることが判る。
【0048】
次に、3種類のAZ31材の各々に対し、溶融加工を想定して、200℃,1時間の熱処理、300℃,1時間の熱処理、および400℃,1時間の熱処理をそれぞれ施し、熱処理を施したAZ31材の各々に対して観察および測定を行った。
【0049】
図14〜17はそれぞれ、熱処理を施していないAZ31材、200℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、300℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、および400℃,1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。図14〜17に示すように、AZ31材に対する熱処理の温度が高くなった場合でも、結晶粒の大きさの変動は少ないことが判る。
【0050】
図18〜21はそれぞれ、摩擦攪拌処理後のAZ31材、摩擦攪拌処理後に200℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、摩擦攪拌処理後に300℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、および摩擦攪拌処理後に400℃,1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。図18〜21に示すように、摩擦攪拌処理を施したAZ31材に対する熱処理の温度が高くなるほど、母材以上に結晶粒が粗大化していることが判る。これは、摩擦攪拌処理により歪を有していた結晶粒が、熱処理の熱により再結晶が生じて粗大化したためと考えられる。
【0051】
一方、図22〜25はそれぞれ、SiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材、SiCを添加した摩擦攪拌処理後に200℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、SiCを添加した摩擦攪拌処理後に300℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、およびSiCを添加した摩擦攪拌処理後に400℃,1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。図22〜25に示すように、熱処理の温度が高くなった場合でも、結晶粒の粗大化は生じていないことが判る。図26は、SiCを添加した摩擦攪拌処理後に熱処理を施したAZ31材の結晶粒の界面を拡大した図である。図26に示すように、SiC粉末108が結晶粒界面114に留まり、熱により粗大化しようとする結晶粒を押さえ込んだため、結晶粒の粗大化が抑制されたものと考えられる。
【0052】
図27〜29はそれぞれ、AZ31材、摩擦攪拌処理後のAZ31材、およびSiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材について、それぞれの熱処理前後の微小硬度を示したグラフ図である。図27に示すように、摩擦攪拌処理を行っていないAZ31材は、熱処理前後で微小硬度の変動が少ないことが判る。しかし、図28に示すように、摩擦攪拌処理後のAZ31材は、熱処理温度が上がるにつれ、微小硬度が減少することが判る。一方、図29に示すように、SiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材は、SiCが添加された表面から深さ2mmまでの部位において、微小硬度が減少していないことが判る。
【0053】
さらに、表面に幅1mm、深さ2mmの溝を形成した厚さ6mmのAZ31材を用意し、溝にそれぞれ粉末状のSiC、WC、Siを充填し、上記と同様に摩擦攪拌処理を行い、その微小硬度を測定した。図30は、種々の添加材を添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材の微小硬度を示すグラフ図である。図30に示すように、それぞれの添加材を添加して摩擦攪拌処理を行ったAZ31材は、その微小硬度が増加していることが判る。さらに、WC,Siは、SiCと同様にAZ31材と化学反応を起こさず且つAZ31材よりも高融点を有する物質であるため、これらのAZ31材に溶融加工を施したとしても、結晶粒の粗大化が抑制され、微小硬度の低下が抑制されるものと考えられる。
【0054】
実験例2
厚さ6mmのJIS H 4000に規定のアルミニウム材であるA1050材を用意した。上記実験例1と同様に、表面に幅1mm、深さ2mmの溝を形成し、溝にSiC粉末を充填して摩擦攪拌処理を行った。摩擦攪拌処理後のA1050材に対し、300℃,1時間の熱処理を施した。また、比較のため、SiC粉末を添加せずに摩擦攪拌処理を行ったA1050材と、摩擦攪拌処理を行っていないA1050材とに対しても、300℃,1時間の熱処理を施した。熱処理の前後において、それぞれのA1050材の微小硬度を測定した。
【0055】
図31は、本実験例におけるA1050材の微小硬度を示すグラフ図である。図31に示すように、摩擦攪拌処理を施していないA1050材は熱処理の前後で微小硬度の変動が少ないが、摩擦攪拌処理を施したA1050材は熱処理後に微小硬度が大きく低下していることが判る。一方、SiCを添加して摩擦攪拌処理を施したA1050材は、熱処理の前後で微小硬度の変動が少ないことが判る。
【0056】
実験例3
厚さ5mmのJIS H 4000に規定のアルミニウム材であるA1050材を2枚用意した。図3に示すように、互いのA1050材を接合部で突き合わせ、接合部に平均粒径1μmのTiC粉末を充填し、回転ツールの回転速度500rpm、接合速度500mm/minで摩擦攪拌接合を行った。摩擦攪拌接合による接合部の幅は、A1050材の表面で10mmである。次に、摩擦攪拌接合による接合部の真上から当該接合部に平行に、180Aで200mm/minの接合速度でTIG溶接によるメルトラン溶接を行った。溶融した範囲の幅は、A1050材の板の厚みの中心で6mm程度となった。その後、当該接合部の横断面における板の厚みの中心部分の硬度を0.3mmピッチで測定した。
【0057】
図32は、実験例3におけるA1050材の接合部の硬度を示すグラフ図である。図32に示すように、摩擦攪拌接合による接合部に重ねてTIG溶接を行った接合部から±2.5mmの範囲では、その周辺の母材よりも高い硬度となっていることが判る。これは、TiC粒子が分散していた領域と一致する。
【0058】
また、A1050材に上記と同様の摩擦攪拌接合を行った後、摩擦攪拌接合による接合部の垂直方向に横断するように、180AでTIG溶接によるメルトラン溶接を行った。図33は、実験例3におけるA1050材の溶融接合部と摩擦攪拌接合部との境界における硬度分布を示すグラフ図であり、摩擦攪拌接合の長手方向に平行で、溶融接合部の長手方向に垂直な断面における硬度分布を示す図である。図33に示すように、溶融接合部においては、微細な結晶粒からなる凝固組織となり、硬さの低下がほとんどなく、溶融接合の熱影響部においても、粒成長が抑制され、全く硬度の変化がないことがないことが判る。このように、摩擦攪拌接合による接合部に溶融溶接を行っても、近傍部を含む接合部全体において硬度(強度)の低下が生じていないことが判る。
【0059】
尚、本発明の金属材の加工方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属材の加工方法の流れを示すフロー図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る回転ツールを示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る金属材の加工方法によって形成された鉄道車両構体を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る回転ツールを示す斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1実験例に係るSiC粉末を示す図である。
【図11】実験例1の摩擦攪拌処理を行った部位の状態を示す図である。
【図12】実験例1の母材と攪拌部との境界を拡大した図である。
【図13】実験例1におけるAZ31材の微小硬度を示すグラフ図である。
【図14】AZ31材の結晶粒を示す図である。
【図15】200℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図16】300℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図17】400℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図18】摩擦攪拌処理後のAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図19】摩擦攪拌処理後、200℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図20】摩擦攪拌処理後、300℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図21】摩擦攪拌処理後、400℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図22】SiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図23】SiCを添加した摩擦攪拌処理後、200℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図24】SiCを添加した摩擦攪拌処理後、300℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図25】SiCを添加した摩擦攪拌処理後、400℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図26】SiCを添加した摩擦攪拌処理後に熱処理を施したAZ31材の結晶粒の界面を拡大した図である。
【図27】AZ31材の熱処理前後の微小硬度を示すグラフ図である。
【図28】摩擦攪拌処理後のAZ31材の熱処理前後の微小硬度を示すグラフ図である。
【図29】SiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材の熱処理前後の微小硬度を示すグラフ図である。
【図30】種々の添加材を添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材の微小硬度を示すグラフ図である。
【図31】実験例2におけるA1050材の微小硬度を示すグラフ図である。
【図32】実験例3におけるA1050材の接合部の硬度を示すグラフ図である。
【図33】実験例3におけるA1050材の溶融接合部と摩擦攪拌接合部との境界における硬度分布を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0061】
10…回転ツール、12…プローブ、14…ショルダー、16…回転ツール本体、18…添加材、20…添加材放出ノズル、22…添加材放出孔、24…添加材供給路、100,102…金属材、104…接合部、106…開先、108…SiC粉末、110…母材、112…攪拌部、114…結晶粒界面、116…挿入孔、118…接合済み部、200…車両構体、202,204…屋根構、206,208…側構、210…台枠、212…妻構、214,216…軒部材、218…摩擦攪拌接合部、220…溶融接合部、222…重複加工部。
【技術分野】
【0001】
本発明は金属材の加工方法およびこの加工方法によって形成された構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属材の加工方法においては、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)により金属材を接合する技術が知られている。摩擦攪拌接合では、接合しようとする金属材を接合部において対向させ、回転ツールの先端に設けられたプローブを接合部に挿入し、接合部の長手方向に沿って回転ツールを回転させて2つの金属材を接合する。摩擦攪拌接合は良好な接合強度を得ることができるが、接合部が曲面を有する場合および回転ツールを挿入しにくい場合には適用することが難しいため、実際に鉄道車両構体等の構造物を摩擦攪拌接合によって製造する際には、摩擦攪拌接合だけではなく、摩擦攪拌接合とMIG溶接等の溶融加工とを組み合わせて金属材を加工し、曲面を有する構造物を製造している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3224092号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、鉄道車両構体等の製造においては性能向上の観点からさらなる高強度化の要請があり、上記のような摩擦攪拌接合と溶融加工とを組み合わせた加工方法においても、さらに接合強度を向上させることが望まれている。
【0004】
本発明は、斯かる実情に鑑み、摩擦攪拌接合と溶融加工とを組み合わせて金属材を加工する場合において、接合強度を向上させることができる金属材料の加工方法およびこの加工方法によって形成された構造体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、2つの金属材を接合部において対向させ、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材を接合部に供給しつつ、接合部に棒状の回転ツールを挿入し、回転ツールを回転させ、2つの金属材を接合する第1ステップと、接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、を含む金属材の加工方法である。
【0006】
本発明者らが鋭意研究した結果、摩擦攪拌接合の接合部に溶接等の溶融加工を施した場合、摩擦攪拌接合により歪を有していた接合部の結晶粒が溶融加工の熱により再結晶が生じて粗大化し、接合強度が低下することが判明した。しかし、上記構成によれば、第1ステップにおいて、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材を接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行うため、接合部に当該添加材の粒子を混入させることができる。そのため、第2ステップにおいて接合部にさらに溶融加工を施しても、溶融加工における溶融部と特にその周囲の熱影響部(HAZ=Heat Affected Zone)において、添加材の粒子は、金属材と化学反応を生じず且つ溶融せずに残留し、粗大化しようとする結晶粒を押え込むため、溶融加工による金属材の結晶粒の粗大化を低減することができる。その結果、溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0007】
なお、本発明の金属材の加工方法の第1ステップにおいては、回転ツールを回転させつつ接合部の長手方向に沿って移動させる場合と、接合部において回転させた回転ツールを移動させずにその箇所で回転させ続ける場合とを含む。また、本明細書で「摩擦攪拌接合」とは、(1)板状の金属材の端部同士を突き合わせて接合部とし、回転ツールをその接合部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合、(2)板状の金属材の端部同士を突き合わせて接合部とし、回転ツールをその接合部で移動させずに回転させて接合するスポット摩擦攪拌接合(スポットFSW)、(3)金属材同士を接合部において重ね合わせ、少なくとも一方の金属材を貫通する孔を通して接合部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその箇所で移動させずに回転させて金属材同士を接合するスポット摩擦攪拌接合、(4)金属材同士を接合部において重ね合わせ、少なくとも一方の金属材を貫通する孔を通して接合部に回転ツールを挿入し、回転ツールをその接合部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合の(1)〜(4)の4つの態様およびこれらの組み合わせを含む。
【0008】
また本発明は、2つの金属材を接合部において対向させ、金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材を接合部に供給しつつ、接合部に棒状の回転ツールを挿入し、回転ツールを回転させ、2つの金属材を接合する第1ステップと、接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、を含む金属材の加工方法である。
【0009】
上記構成によれば、第1ステップにおいて、金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材を接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行うため、接合部の金属材の結晶に対してミスフィット(Miss Fit)が小さい添加材の粒子を混入させることができる。そのため、第2ステップにおいて接合部にさらに溶融加工を施すと、溶融部において金属材が再凝固する際に、金属材の結晶に対してミスフィットの小さい添加材の粒子が凝固核となり、添加材の粒子ごとに結晶粒が生成される。このため、添加材の粒子ごとに凝固する金属材の結晶粒のそれぞれの大きさが小さなものとなり、それぞれの小さな結晶粒が粗大化しようとしても互いにぶつかり合いそれ以上に大きくなることができないため、金属材の結晶粒の粗大化を低減することができる。その結果、溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0010】
また本発明は、2つの金属材を接合部において対向させ、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材と、金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材と、を接合部に供給しつつ、接合部に棒状の回転ツールを挿入し、回転ツールを回転させ、2つの金属材を接合する第1ステップと、接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、を含む金属材の加工方法である。
【0011】
この構成によれば、第1ステップにおいて、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材と、金属材の結晶に対してミスフィットが小さい添加材とを接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行うため、各々の添加材の粒子を接合部の金属材に混入させることができる。そのため、第2ステップにおいて接合部にさらに溶融加工を施しても、金属材の融点より高い融点の添加材の粒子が熱により粗大化しようとする結晶粒を押え込み、さらに金属材の結晶に対してミスフィットが小さい添加材の粒子が凝固核となり、再凝固する金属材の個々の結晶粒の大きさが小さくなるため、金属材の結晶粒の粗大化を低減することができる。その結果、溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0012】
なお、本発明においては、金属材と化学反応を起こさず且つ金属材の融点より高い融点を有する添加材と、金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材との2種類の添加材を接合部に供給する場合と、金属材と化学反応を起こさず、金属材の融点より高い融点を有し、且つ金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である1種類の添加材を接合部に供給する場合との両方を含むものとする。
【0013】
この場合、第1ステップにおいて、接合部の長手方向に沿って回転ツールを回転させつつ移動させ、2つの金属材を接合することができる。この構成によれば、接合部の長手方向に沿って回転ツールを回転させつつ移動させて2つの金属材を接合するため、2つの金属材の間にある接合部が長い場合でも、2つの金属材を接合することができる。
【0014】
一方、第1ステップにおいて、接合部への添加材の供給は、接合部に回転ツールを挿入する前に、接合部に添加材を配置することによって行うことができる。この構成によれば、予め接合部に添加材を配置するため、容易かつ確実に接合部に添加材を供給することができる。
【0015】
また、第1ステップにおいて、接合部への添加材の供給は、回転ツールの移動に伴い、接合部における回転ツールの移動先の部位に添加材を放出することによって行うことができる。この構成によれば、回転ツールの移動先の部位に添加材を放出するため、実際の加工作業現場で接合部の位置が変動する場合や、接合部の回転ツールを挿入する向きが垂直下向き方向以外の方向である場合でも対応することができる。
【0016】
この場合、第1ステップにおいて、接合部において回転ツールを移動させる前に、接合部を回転ツールと対向する方向に開いた開先に加工することができる。この構成によれば、接合部を回転ツールと対向する方向に開いた開先に加工し、当該開先に添加材を放出するため、開先に添加材が一時的に滞留し、接合部に添加材を一層供給しやすくすることができる。
【0017】
一方、第1ステップにおいて、接合部への添加材の供給は、回転ツール内部から接合部へ添加材を放出することによって行うことができる。この構成によれば、回転ツール内部から接合部へ添加材を放出するため、確実に接合部へ添加材を供給することができ、接合部の位置が変動する場合や、接合部の回転ツールを挿入する向きが垂直下向き方向以外の方向である場合でも対応することができる。
【0018】
また、第1ステップにおいて、接合部への添加材の供給は、予め回転ツールの材料に添加材を含有させておき、回転ツールを回転させることにより、回転ツールを磨耗させつつ接合部に添加材を供給することができる。この構成によれば、添加材を含有する回転ツールの磨耗に伴い接合部に添加材を供給するため、接合部にむらなく添加材を供給することができ、添加材の分散性を一層向上させることができる。
【0019】
一方、本発明の別の態様は、本発明の金属材の加工方法によって、2つ以上の金属材を加工して形成された構造物である。この構成によれば、本発明の加工方法によって、摩擦攪拌接合と溶融加工とを組み合わせて形成されているため、溶融加工による摩擦攪拌接合部の接合強度の低下が少なく、一層高強度の構造物とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の金属材の加工方法によれば、溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。また本発明の構造物は、溶融加工による摩擦攪拌接合部の接合強度の低下が少なく、一層高強度の構造物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。なお、同一の構成要素は同一の符号で示し、重複する説明は省略する。
【0022】
まず、本実施形態に係る金属材の加工方法の大まかな流れを説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る金属材の加工方法の流れを示すフロー図である。図1に示すように、本実施形態においては、第1ステップにおいて、後の溶融加工に伴う金属材の結晶粒の粗大化を防止するため、添加材を接合部に供給しつつ摩擦攪拌接合を行う(S01)。一般的な曲面や回転ツールを挿入しにくい部位を有する構造物は、摩擦攪拌接合のみでは形成することが難しいため、その後、MIG溶接等の溶融加工を行う(S02)。
【0023】
以下、本実施形態の加工方法の各ステップについて詳細に説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る回転ツールを示す斜視図である。図2に示すように、回転ツール10は、略円柱状の回転ツール本体16からなる。回転ツール10は、回転ツール本体16の先端に、ショルダー14と金属材同士の接合部に挿入されるプローブ12とを備えている。プローブ12は、ショルダー14より小径の略円柱形をなしている。本実施形態において、回転ツール10の材質は、例えば、JISに規格されているSKD61鋼等の工具鋼や、タングステンカーバイト(WC)、コバルト(Co)からなる超硬合金、またはSi3N4等のセラミックスからなるものとすることができる。
【0024】
図3は、本発明の第1実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。図3に示すように、本実施形態の摩擦攪拌接合では、2つの金属材100,102を接合部104において突き合わせる。金属材100,102としては、例えば、Al材、Fe材、Mg材を適用することができる。あるいは、これらの金属材に繰り返し重ね接合圧延(ARB=AccumulativeRoll-Bonding)等の組織制御を行い、金属材の平均結晶粒径を10μm以下に微細化した超微粒子材を適用することができる。
【0025】
本実施形態の摩擦攪拌接合においては、接合部104には、回転ツール10を挿入する前に、金属材100,102と化学反応を起こさず且つ金属材100,102の融点より高い融点を有する物質と、金属材100,102の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である物質とを含む添加材18を充填する。
【0026】
金属材100,102と化学反応を起こさず且つ金属材100,102の融点より高い融点を有する物質は、後に行う溶融加工の際に溶融せずに残留し、金属材100,102の結晶粒の粗大化を防ぐための物である。金属材100,102がAl材、Fe材、Mg材およびこれらの超微粒子材である場合において、これらと化学反応を起こさず且つこれらの融点より高い融点を有する物質としては、Ti,W等の高融点の金属、およびSiC,TiC,Si3N4,BN,AlN,Al2O3,ZrO2,MgO等の炭化物、窒化物、酸化物のいずれかを適用することができ、特にはSiCを適用することができる。これらの物質は、摩擦攪拌接合の際に接合部104で分散しやすいように、平均粒径0.5〜5μmの粒状にされる。
【0027】
金属材100,102の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である物質、すなわちミスフィットが±15%以内である物質は、後に行う溶融加工後の金属材が再凝固する際に、凝固核となり、金属材の結晶粒の大きさを小さくするための物である。金属材100,102がAl材である場合には、ミスフィットが±15%以内である物質としては、VC(ミスフィット1.4%)、TiC(ミスフィット6.8%)、TiB2(ミスフィット4.8%)、AlB2(ミスフィット3.8%)、ZrC(ミスフィット14.5%)、NbC(ミスフィット8.6%)およびW2C(ミスフィット3.5%)等を適用することができる。金属材100,102がFe材である場合には、ミスフィットが±15%以内である物質としては、TiN(ミスフィット3.8%)、TiC(ミスフィット5.8%)、SiC(ミスフィット6.0%)、ZrN(ミスフィット11.2%)、WC(ミスフィット12.6%)およびZrC(ミスフィット14.4%)等を適用することができる。金属材100,102がMg材である場合には、合金成分にAlを含まないMg材については、Zr粒子を添加することにより、Zr粒子を凝固核とすることができる。また合金成分にAlを含むMg材については、C粒子を添加すると反応生成物のAl4C3が凝固核となる。これらの物質は、摩擦攪拌接合の際に接合部104で分散しやすいように、平均粒径0.5〜5μmの粒状にされる。
【0028】
上記の金属材100,102と化学反応を起こさず且つ金属材100,102の融点より高い融点を有する物質と、金属材100,102とのミスフィットが±15%以内である物質とは、それぞれ異なる物質を適用して、各々を混合して添加材18とすることができる。あるいは、上記の金属材100,102に対して、化学反応を起こさず且つ金属材100,102の融点より高い融点を有し、且つミスフィットが±15%以内である一種類の物質を適用して、添加材18としても良い。
【0029】
接合部104に添加材18を充填した後、接合部104に回転ツール10を挿入する。接合部104の長手方向に沿って回転ツールを回転させつつ移動させて、金属材100,102を接合する。接合部104に充填した添加材18の粒子は、回転ツール10によって攪拌され、金属材100,102と混合される。なお、接合部104において回転ツール10を移動させずにその場所で回転させるスポット摩擦攪拌接合によっても金属材100,102同士を接合することができる。
【0030】
図4は、本発明の第1実施形態に係る金属材の加工方法によって形成された鉄道車両構体を示す斜視図である。図4に示すように、鉄道車両構体200は、金属材である屋根構202,204、側構206,208、台枠210、妻構212および軒部材214,216からなる。図4の例では、摩擦攪拌接合部218において、側構206と軒部材214との間、側構208と軒部材216との間が摩擦攪拌接合によって接合される。その後、溶融接合部220において、一部に曲線部分を含む側構206,208同士および軒部材214,216同士が溶融接合によって接合される。摩擦攪拌接合部218と溶融接合部220との交点において、金属材に摩擦攪拌接合が施された後に、さらに溶融接合が行われた重複加工部222が形成される。なお、本実施形態においては、図4に示すような摩擦攪拌接合部218と溶融接合部220とが一部交わるようにすること以外にも、摩擦攪拌接合部218の上から重ねて溶融加工を行い、摩擦攪拌接合部218と溶融接合部220とを完全に重複させることもできる。また、摩擦攪拌接合を行った直後に溶融接合を行う以外にも、摩擦攪拌接合部218の部分的な空洞や溝状欠陥を補修する場合や、摩擦攪拌接合部218が時間の経過により劣化した部分を補修する場合に、摩擦攪拌接合部218に溶融加工を施すこともできる。溶融加工としては、ガス溶接、プラズマ溶接を適用することができる。あるいは、サブマージ溶接、MIG溶接、TIG溶接、CO2溶接、被覆アーク溶接等のアーク溶接や、スポット溶接等を適用することができる。
【0031】
以下、本実施形態の金属材の加工方法の作用効果について説明する。本発明者らの研究の結果、摩擦攪拌接合の接合部に溶接等の溶融加工を施した場合、摩擦攪拌接合により歪を有していた接合部の結晶粒が、溶融加工の熱により再結晶が生じて粗大化し、接合強度が低下することが判明した。そこで本実施形態においては、接合部104に、金属材100,102と化学反応を起こさず、且つ金属材100,102の融点より高い融点を有する添加材18の粒子を混入させる。この添加材18の粒子は、その後に接合部104に溶融加工を施しても、金属材100,102と化学反応を起こさず、溶融加工の熱により溶融せずに残留する。そして、添加材18の粒子が、溶融加工の熱により粗大化しようとする金属材100,102の結晶粒を押え込むため、金属材100,102の結晶粒の粗大化を低減することができる。この作用は、溶融加工による溶融部の周囲の熱影響部において特に顕著である。その結果、その後の溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部104の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0032】
なお、金属材100,102に超微粒子材を適用した場合には、超微粒子材と化学反応を起こさず且つ超微粒子材の融点より高い融点を有する添加材18を接合部104に混入させて摩擦攪拌接合を行うと、摩擦攪拌接合直後の接合強度を著しく向上させることができる。
【0033】
一方、本実施形態においては、接合部104に、金属材100,102の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれか(ミスフィット)が±15%以下である添加材18の粒子を混入させる。その後に接合部104に溶融加工を施すと、溶融加工による溶融部において金属材100,102が再凝固する際に、金属材100,102の結晶に対するミスフィットの小さい添加材18の粒子が凝固核となり、添加材18の粒子ごとに結晶粒が生成される。このため、添加材18の粒子ごとに凝固する金属材100,102の結晶粒のそれぞれの大きさは小さなものとなり、それぞれの小さな結晶粒が粗大化しようとしても互いにぶつかり合いそれ以上に大きくなることができないため、金属材100,102の結晶粒の粗大化を低減することができる。その結果、その後の溶融加工による摩擦攪拌接合の接合部104の強度低下を低減することができ、接合強度を向上させることができる。
【0034】
特に本実施形態においては、回転ツール10を接合部104に挿入する前に、接合部104に添加材18を充填するため、容易かつ確実に接合部104に添加材18を供給することができる。
【0035】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。図5に示すように本実施形態では、添加材放出ノズル20から添加材18を回転ツール10の移動先の部位に放出することによって、接合部104に添加材18を供給する点が、上記第1実施形態と異なっている。本実施形態では、添加材放出ノズル20は、回転ツール10の移動に対応して移動するようにされており、回転ツール10の移動する先の部位に添加材18を放出することができるようにされている。また本実施形態では、回転ツール10を移動させる前に、接合部104を回転ツール10と対向する方向に開いた開先106に加工してもよい。
【0036】
本実施形態においては、回転ツール10を移動させる部位に添加材18を放出するため、実際の加工作業現場で接合部104の位置が変動する場合や、接合部104の回転ツールを挿入する向きが垂直下向き方向以外の方向である場合でも対応することができる。また、開先106に添加材18が一時的に滞留するため、接合部104に添加材18を一層供給しやすくすることができる。
【0037】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。図6は本発明の第3実施形態に係る回転ツールを示す斜視図であり、図7は本発明の第3実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す断面図である。本実施形態では、回転ツール10の移動の移動に伴い、回転ツール10内部から接合部104へ添加材18を放出する点が、上記第1実施形態と異なっている。図6に示すように本実施形態の回転ツール10には、プローブ12の先端と側面、ショルダー14の先端に添加材放出孔22が設けられ、回転ツール本体16の内部には添加材放出孔22に通じる添加材供給路24が設けられている。図7に示すように、摩擦攪拌接合の際には、回転ツール10を回転させながら移動させると同時に、添加材供給路24を介して添加材18を供給し、添加材放出孔22から添加材18を放出させる。添加材18は開先106に一時的に滞留し、回転ツール10の回転に伴い、金属材100,102の粒子と混合される。
【0038】
本実施形態においては、回転ツール10内部から接合部104へ添加材18を放出するため、確実に接合部104へ添加材18を供給することができ、接合部104の位置が変動する場合や、接合部104の回転ツール10を挿入する向きが垂直下向き方向以外の方向である場合でも対応することができる。
【0039】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。図8は、本発明の第4実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。本実施形態では、予め回転ツール10の材料に添加材を含有させておき、接合部104の長手方向に沿って回転ツール10を回転させつつ移動させることにより、回転ツール10を磨耗させつつ接合部104に添加材を供給する点が、上記第1実施形態と異なっている。本実施形態において金属材100,102はAl材であり、回転ツール10は多孔質TiCからなる。金属材100,102がAl材である場合、TiCは、Al材と化学反応を起こさず、Al材の融点より高い融点を有し、且つAl材とのミスフィットが±15%以下である物質である。図8に示すように、回転ツール10が接合部104において回転しつつ移動することにより、回転ツール10が磨耗し、接合部104に添加材であるTiCを供給することができる。なお、金属材100,102の材質により、回転ツール10の磨耗量が大きい場合には、図4に示すような重複加工部222にのみ、添加材を含有させた回転ツールを用いて摩擦攪拌接合を行うことにより、回転ツール10の磨耗量を低減させ、回転ツール10の寿命を長くすることができる。
【0040】
本実施形態においては、添加材を含有する回転ツール10の磨耗に伴い接合部104に添加材を供給するため、接合部104にむらなく添加材を供給することができ、添加材の分散性を一層向上させることができる。
【0041】
以下、本発明の第5実施形態について説明する。図9は、本発明の第5実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。本実施形態においては、回転ツール10を移動させずに接合するスポット摩擦攪拌接合を行う点が上記第1〜4実施形態と異なっている。図9に示すように、本実施形態においては、金属材100,102同士を接合部104にて重ね合わせ、少なくとも金属材102を貫通する挿入孔116を穿設し、回転ツール10を挿入する前に挿入孔116に添加材18が充填する。次に、回転ツール10のプローブ12を挿入孔116を通して接合部104に挿入して回転させ、金属材100,102を接合する。接合後は、図9に示すような接合済み部118が形成される。
【0042】
本実施形態においては、重ね合わせた金属材100,102同士を接合することができる。また、回転ツール10を挿入孔116を介して接合部104に挿入する前に、挿入孔116に添加材18を充填するため、容易かつ確実に接合部104に添加材18を供給することができる。なお、挿入孔116に挿入した回転ツール10を回転させつつ接合部104の長手方向に沿って移動させて金属材100,102を接合する摩擦攪拌接合によっても、重ね合わせた金属材100,102同士を接合することができる。また、本実施形態においては、接合部104への添加材18の供給は、上記第2実施形態のようにノズル20より添加材18を放出して供給する方法、上記第3実施形態のように回転ツール10内部から添加材18を放出して供給する方法、上記第4実施形態のように添加材18を含有する回転ツール10の磨耗に伴い接合部104に添加材を供給する方法のいずれの方法もとることができる。
【0043】
次に、本発明者が本発明の金属材の加工方法により、実際に金属材の加工を行った実験結果を、従来法により接合した場合と比較して説明する。
【0044】
実験例1
厚さ6mmのAZ31材(Alを3%、Znを1%含有するMg合金)を用意した。用意したAZ31材の表面に、摩擦攪拌接合による接合部を想定して、幅1mm、深さ2mmの溝を形成した。形成した溝に、図10に示す粒径0.5〜5μm、平均粒径1μmのSiC粉末108を充填した。図3に示すような摩擦攪拌接合を想定して、AZ31材表面のSiC粉末を充填した溝に回転ツール10のプローブ12を挿入し、回転ツール10を回転させつつ移動させる摩擦攪拌処理を行った。
【0045】
図11は本実験例の摩擦攪拌処理を行った部位の状態を示す図であり、図12は母材と攪拌部との境界を拡大した図である。図11に示すように、AZ31材である母材110に対して、回転ツール10により摩擦攪拌処理を施した攪拌部112は結晶粒の状態が変化していることが判る。また、図12に拡大して示すように、攪拌部112内にはSiC粉末108が混入されていることが判る。
【0046】
一方、比較のため、SiC粉末を溝に充填せずに同様の摩擦攪拌処理を施したAZ31材と、摩擦攪拌処理を施していないAZ31材とを用意した。以下、3種類のAZ31材に対してそれぞれ測定および観察を行った。
【0047】
図13は、本実験例におけるAZ31材の微小硬度を示すグラフ図である。図13に示すように、摩擦攪拌処理を行っていないAZ31材の微小硬度が40〜50Hvであるに対し、摩擦攪拌処理を行ったAZ31材の微小硬度は、表面から深さ2mmまでの攪拌された部位において52〜57Hvに増大していることが判る。さらに図13に示すように、溝にSiC粉末を充填して摩擦攪拌処理を行ったAZ31材の微小硬度は、SiCが添加された表面から深さ2mmまでの部位において最大で77Hvまで増大していることが判る。
【0048】
次に、3種類のAZ31材の各々に対し、溶融加工を想定して、200℃,1時間の熱処理、300℃,1時間の熱処理、および400℃,1時間の熱処理をそれぞれ施し、熱処理を施したAZ31材の各々に対して観察および測定を行った。
【0049】
図14〜17はそれぞれ、熱処理を施していないAZ31材、200℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、300℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、および400℃,1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。図14〜17に示すように、AZ31材に対する熱処理の温度が高くなった場合でも、結晶粒の大きさの変動は少ないことが判る。
【0050】
図18〜21はそれぞれ、摩擦攪拌処理後のAZ31材、摩擦攪拌処理後に200℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、摩擦攪拌処理後に300℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、および摩擦攪拌処理後に400℃,1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。図18〜21に示すように、摩擦攪拌処理を施したAZ31材に対する熱処理の温度が高くなるほど、母材以上に結晶粒が粗大化していることが判る。これは、摩擦攪拌処理により歪を有していた結晶粒が、熱処理の熱により再結晶が生じて粗大化したためと考えられる。
【0051】
一方、図22〜25はそれぞれ、SiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材、SiCを添加した摩擦攪拌処理後に200℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、SiCを添加した摩擦攪拌処理後に300℃,1時間の熱処理を施したAZ31材、およびSiCを添加した摩擦攪拌処理後に400℃,1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。図22〜25に示すように、熱処理の温度が高くなった場合でも、結晶粒の粗大化は生じていないことが判る。図26は、SiCを添加した摩擦攪拌処理後に熱処理を施したAZ31材の結晶粒の界面を拡大した図である。図26に示すように、SiC粉末108が結晶粒界面114に留まり、熱により粗大化しようとする結晶粒を押さえ込んだため、結晶粒の粗大化が抑制されたものと考えられる。
【0052】
図27〜29はそれぞれ、AZ31材、摩擦攪拌処理後のAZ31材、およびSiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材について、それぞれの熱処理前後の微小硬度を示したグラフ図である。図27に示すように、摩擦攪拌処理を行っていないAZ31材は、熱処理前後で微小硬度の変動が少ないことが判る。しかし、図28に示すように、摩擦攪拌処理後のAZ31材は、熱処理温度が上がるにつれ、微小硬度が減少することが判る。一方、図29に示すように、SiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材は、SiCが添加された表面から深さ2mmまでの部位において、微小硬度が減少していないことが判る。
【0053】
さらに、表面に幅1mm、深さ2mmの溝を形成した厚さ6mmのAZ31材を用意し、溝にそれぞれ粉末状のSiC、WC、Siを充填し、上記と同様に摩擦攪拌処理を行い、その微小硬度を測定した。図30は、種々の添加材を添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材の微小硬度を示すグラフ図である。図30に示すように、それぞれの添加材を添加して摩擦攪拌処理を行ったAZ31材は、その微小硬度が増加していることが判る。さらに、WC,Siは、SiCと同様にAZ31材と化学反応を起こさず且つAZ31材よりも高融点を有する物質であるため、これらのAZ31材に溶融加工を施したとしても、結晶粒の粗大化が抑制され、微小硬度の低下が抑制されるものと考えられる。
【0054】
実験例2
厚さ6mmのJIS H 4000に規定のアルミニウム材であるA1050材を用意した。上記実験例1と同様に、表面に幅1mm、深さ2mmの溝を形成し、溝にSiC粉末を充填して摩擦攪拌処理を行った。摩擦攪拌処理後のA1050材に対し、300℃,1時間の熱処理を施した。また、比較のため、SiC粉末を添加せずに摩擦攪拌処理を行ったA1050材と、摩擦攪拌処理を行っていないA1050材とに対しても、300℃,1時間の熱処理を施した。熱処理の前後において、それぞれのA1050材の微小硬度を測定した。
【0055】
図31は、本実験例におけるA1050材の微小硬度を示すグラフ図である。図31に示すように、摩擦攪拌処理を施していないA1050材は熱処理の前後で微小硬度の変動が少ないが、摩擦攪拌処理を施したA1050材は熱処理後に微小硬度が大きく低下していることが判る。一方、SiCを添加して摩擦攪拌処理を施したA1050材は、熱処理の前後で微小硬度の変動が少ないことが判る。
【0056】
実験例3
厚さ5mmのJIS H 4000に規定のアルミニウム材であるA1050材を2枚用意した。図3に示すように、互いのA1050材を接合部で突き合わせ、接合部に平均粒径1μmのTiC粉末を充填し、回転ツールの回転速度500rpm、接合速度500mm/minで摩擦攪拌接合を行った。摩擦攪拌接合による接合部の幅は、A1050材の表面で10mmである。次に、摩擦攪拌接合による接合部の真上から当該接合部に平行に、180Aで200mm/minの接合速度でTIG溶接によるメルトラン溶接を行った。溶融した範囲の幅は、A1050材の板の厚みの中心で6mm程度となった。その後、当該接合部の横断面における板の厚みの中心部分の硬度を0.3mmピッチで測定した。
【0057】
図32は、実験例3におけるA1050材の接合部の硬度を示すグラフ図である。図32に示すように、摩擦攪拌接合による接合部に重ねてTIG溶接を行った接合部から±2.5mmの範囲では、その周辺の母材よりも高い硬度となっていることが判る。これは、TiC粒子が分散していた領域と一致する。
【0058】
また、A1050材に上記と同様の摩擦攪拌接合を行った後、摩擦攪拌接合による接合部の垂直方向に横断するように、180AでTIG溶接によるメルトラン溶接を行った。図33は、実験例3におけるA1050材の溶融接合部と摩擦攪拌接合部との境界における硬度分布を示すグラフ図であり、摩擦攪拌接合の長手方向に平行で、溶融接合部の長手方向に垂直な断面における硬度分布を示す図である。図33に示すように、溶融接合部においては、微細な結晶粒からなる凝固組織となり、硬さの低下がほとんどなく、溶融接合の熱影響部においても、粒成長が抑制され、全く硬度の変化がないことがないことが判る。このように、摩擦攪拌接合による接合部に溶融溶接を行っても、近傍部を含む接合部全体において硬度(強度)の低下が生じていないことが判る。
【0059】
尚、本発明の金属材の加工方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属材の加工方法の流れを示すフロー図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る回転ツールを示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る金属材の加工方法によって形成された鉄道車両構体を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る回転ツールを示す斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る摩擦攪拌接合の様子を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1実験例に係るSiC粉末を示す図である。
【図11】実験例1の摩擦攪拌処理を行った部位の状態を示す図である。
【図12】実験例1の母材と攪拌部との境界を拡大した図である。
【図13】実験例1におけるAZ31材の微小硬度を示すグラフ図である。
【図14】AZ31材の結晶粒を示す図である。
【図15】200℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図16】300℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図17】400℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図18】摩擦攪拌処理後のAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図19】摩擦攪拌処理後、200℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図20】摩擦攪拌処理後、300℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図21】摩擦攪拌処理後、400℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図22】SiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図23】SiCを添加した摩擦攪拌処理後、200℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図24】SiCを添加した摩擦攪拌処理後、300℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図25】SiCを添加した摩擦攪拌処理後、400℃、1時間の熱処理を施したAZ31材の結晶粒を示す図である。
【図26】SiCを添加した摩擦攪拌処理後に熱処理を施したAZ31材の結晶粒の界面を拡大した図である。
【図27】AZ31材の熱処理前後の微小硬度を示すグラフ図である。
【図28】摩擦攪拌処理後のAZ31材の熱処理前後の微小硬度を示すグラフ図である。
【図29】SiCを添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材の熱処理前後の微小硬度を示すグラフ図である。
【図30】種々の添加材を添加した摩擦攪拌処理後のAZ31材の微小硬度を示すグラフ図である。
【図31】実験例2におけるA1050材の微小硬度を示すグラフ図である。
【図32】実験例3におけるA1050材の接合部の硬度を示すグラフ図である。
【図33】実験例3におけるA1050材の溶融接合部と摩擦攪拌接合部との境界における硬度分布を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0061】
10…回転ツール、12…プローブ、14…ショルダー、16…回転ツール本体、18…添加材、20…添加材放出ノズル、22…添加材放出孔、24…添加材供給路、100,102…金属材、104…接合部、106…開先、108…SiC粉末、110…母材、112…攪拌部、114…結晶粒界面、116…挿入孔、118…接合済み部、200…車両構体、202,204…屋根構、206,208…側構、210…台枠、212…妻構、214,216…軒部材、218…摩擦攪拌接合部、220…溶融接合部、222…重複加工部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金属材を接合部において対向させ、前記金属材と化学反応を起こさず且つ前記金属材の融点より高い融点を有する添加材を前記接合部に供給しつつ、前記接合部に棒状の回転ツールを挿入し、前記回転ツールを回転させ、前記2つの金属材を接合する第1ステップと、
前記接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、
を含む金属材の加工方法。
【請求項2】
2つの金属材を接合部において対向させ、前記金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材を前記接合部に供給しつつ、前記接合部に棒状の回転ツールを挿入し、前記回転ツールを回転させ、前記2つの金属材を接合する第1ステップと、
前記接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、
を含む金属材の加工方法。
【請求項3】
2つの金属材を接合部において対向させ、前記金属材と化学反応を起こさず且つ前記金属材の融点より高い融点を有する添加材と、前記金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材と、を前記接合部に供給しつつ、前記接合部に棒状の回転ツールを挿入し、前記回転ツールを回転させ、前記2つの金属材を接合する第1ステップと、
前記接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、
を含む金属材の加工方法。
【請求項4】
前記第1ステップにおいて、前記接合部の長手方向に沿って前記回転ツールを回転させつつ移動させ、前記2つの金属材を接合する請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属材の接合方法。
【請求項5】
前記第1ステップにおいて、前記接合部への前記添加材の供給は、前記接合部に回転ツールを挿入する前に、前記接合部に前記添加材を配置することによって行う、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項6】
前記第1ステップにおいて、前記接合部への前記添加材の供給は、前記回転ツールの移動に伴い、前記接合部における前記回転ツールの移動先の部位に前記添加材を放出することによって行う、
請求項2〜4のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項7】
前記第1ステップにおいて、前記接合部において回転ツールを移動させる前に、前記接合部を前記回転ツールと対向する方向に開いた開先に加工する、
請求項6に記載の金属材の加工方法。
【請求項8】
前記第1ステップにおいて、前記接合部への前記添加材の供給は、前記回転ツール内部から前記接合部へ前記添加材を放出することによって行う、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項9】
前記第1ステップにおいて、前記接合部への前記添加材の供給は、予め前記回転ツールの材料に前記添加材を含有させておき、前記回転ツールを回転させることにより、前記回転ツールを磨耗させつつ前記接合部に前記添加材を供給する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の金属材の加工方法によって、2つ以上の金属材を加工して形成された構造物。
【請求項1】
2つの金属材を接合部において対向させ、前記金属材と化学反応を起こさず且つ前記金属材の融点より高い融点を有する添加材を前記接合部に供給しつつ、前記接合部に棒状の回転ツールを挿入し、前記回転ツールを回転させ、前記2つの金属材を接合する第1ステップと、
前記接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、
を含む金属材の加工方法。
【請求項2】
2つの金属材を接合部において対向させ、前記金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材を前記接合部に供給しつつ、前記接合部に棒状の回転ツールを挿入し、前記回転ツールを回転させ、前記2つの金属材を接合する第1ステップと、
前記接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、
を含む金属材の加工方法。
【請求項3】
2つの金属材を接合部において対向させ、前記金属材と化学反応を起こさず且つ前記金属材の融点より高い融点を有する添加材と、前記金属材の単位結晶格子の稜の長さaに対して当該単位結晶格子の稜の長さa’の整数倍および整数倍分の1のいずれかが±15%以内である添加材と、を前記接合部に供給しつつ、前記接合部に棒状の回転ツールを挿入し、前記回転ツールを回転させ、前記2つの金属材を接合する第1ステップと、
前記接合部にさらに溶融加工を施す第2ステップと、
を含む金属材の加工方法。
【請求項4】
前記第1ステップにおいて、前記接合部の長手方向に沿って前記回転ツールを回転させつつ移動させ、前記2つの金属材を接合する請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属材の接合方法。
【請求項5】
前記第1ステップにおいて、前記接合部への前記添加材の供給は、前記接合部に回転ツールを挿入する前に、前記接合部に前記添加材を配置することによって行う、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項6】
前記第1ステップにおいて、前記接合部への前記添加材の供給は、前記回転ツールの移動に伴い、前記接合部における前記回転ツールの移動先の部位に前記添加材を放出することによって行う、
請求項2〜4のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項7】
前記第1ステップにおいて、前記接合部において回転ツールを移動させる前に、前記接合部を前記回転ツールと対向する方向に開いた開先に加工する、
請求項6に記載の金属材の加工方法。
【請求項8】
前記第1ステップにおいて、前記接合部への前記添加材の供給は、前記回転ツール内部から前記接合部へ前記添加材を放出することによって行う、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項9】
前記第1ステップにおいて、前記接合部への前記添加材の供給は、予め前記回転ツールの材料に前記添加材を含有させておき、前記回転ツールを回転させることにより、前記回転ツールを磨耗させつつ前記接合部に前記添加材を供給する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属材の加工方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の金属材の加工方法によって、2つ以上の金属材を加工して形成された構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2007−237281(P2007−237281A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66456(P2006−66456)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【Fターム(参考)】
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