説明

金属材料の材質分析方法および材料安定化方法並びに材質安定化装置

【課題】 処理工程から出力された段階での材質を安定化させる材質分析方法および材質安定化方法並びに材質安定化装置を提供する。
【解決手段】 金属材料の処理条件を検知するセンサSa1〜Scnと、これらのセンサによって検出された処理条件データが与えられる材質安定化装置20とを有し、この材質安定化装置は、処理条件データを蓄積する処理条件データ蓄積部20a,20b,20cと、処理条件データと製品試験データに基づき、処理条件を構成している各因子と材料特性との散布図を作成する散布図作成部20dと、各散布図における因子について数値の幅を所定の間隔に分割して階層化する階層化処理部20eと、その階層内で材料特性の値の平均値を求め、その平均値に基づいて相関式を算出する相関式算出部20fと、相関式を求めることによって相関の有無を判別し、相関の認められた因子を抽出するとともに、その抽出した因子を材質に影響を与える因子として次回の処理条件における調整項目に設定する設定部20g,20h,20iとを備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の処理工程を経て製造される板材、棒材、線材、押出し材等の金属材料について、処理工程から出力された段階での材質を安定化させるのに好適な材質分析方法および材質安定化方法並びに材質安定化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃費の向上や軽量化を図ることを目的として、自動車用の鉄鋼材料やアルミ合金等の構造材料について高強度化が行われている。
【0003】
上記構造材料の素材となる鋼板を製造するラインでは、温度、荷重等の処理条件をモニタリングする管理ポイントが要所に設けられており、各管理ポイントに備えられた複数のセンサによって検出される処理条件を管理することで従来から材質の安定化が図られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところが、構造材料の製造設備は、もともと比較的低強度の材料を製造することを前提として設計されていることが多く、その製造ラインを高強度材料仕様として使用する場合、新たに高強度材料に適切な操業条件を見い出さなければならない。
【0005】
このように材料の仕様を変更するような場合には適切な操業条件を決定するまでに試行錯誤が行われ、多大な時間が費やされることになる。また、製造ライン上で試行錯誤を行った場合、製品仕様を満足しないものが製造されることも避けられず、規格外の製品は廃棄処分となるためコストも高くなる。
【0006】
処理条件の管理は上記したように従来から行われており所定の製品仕様を満足し得るレベルまで到達しているが、それ以上に精度の高い管理を行うためには試行錯誤で適切な操業条件を見い出すという作業が必要になる。なぜなら、製造ラインでは製品の材質に影響を与える様々な変動因子があり、しかも、これらの変動因子が相互に影響し合って材質に影響を与えているという複雑な事情があるからである。
【特許文献1】特許第2509481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、製品の材質に影響を与える複数の変動因子のうちの1変動因子について条件を3段階に変えて実機による製造実験を行った場合、他の変動因子が一定であれば、1変動因子によって材質が受ける影響を把握することができる。しかしながら、実際は他の変動因子が常に一定であることは限らない。
【0008】
また、製造ライン上に配置されている各種センサによって測定される鋼板の温度や荷重は、例えば加熱工程においては鋼板が高温でしかも高速で走行しているため測定誤差が含まれる。そのため信頼性を高めるのに多数の測定結果が必要となり、測定結果の多いことも分析を困難にしている。
【0009】
本発明は以上のような従来の材質管理方法における課題を考慮してなされたものであり、第一の目的は、処理工程に配設されている各種センサから検出される多数の処理条件データから材質に影響を与える変動因子を効率良く特定し、処理条件における調整項目として選択することができる金属材料の材質分析方法を提供することにあり、第二の目的は、その材質分析方法を用い、処理工程から出力された段階での材質を安定化させる材質安定化方法並びに材質安定化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の処理工程を経て製造される金属材料を分析する方法において、各処理工程に配設されている検出手段によって検出された処理条件データおよび製品試験データに基づき、処理条件を構成している各因子と材料特性との散布図を作成し、各散布図における因子について数値の幅を所定の間隔に分割して階層化し、その階層内で材料特性の値の平均値を算出し、算出された平均値に基づいて相関式を求めることにより相関の有無を判別し、相関の認められた因子を抽出し材質に影響を与える因子として特定する金属材料の材質分析方法を要旨とする。
【0011】
本発明の材質分析方法において、上記因子として、各処理工程に配設されている検出手段によって測定される温度,荷重,応力等のプロセス因子、製品の成分分析値等の成分因子、および前工程によって影響を受ける前工程因子が含まれる。
【0012】
本発明は、複数の処理工程を経て製造される金属材料について各々の処理工程によって製造された段階での材質を安定化させる金属材料の安定化方法において、上記材質分析方法によって抽出した因子を相関度の高い順に記憶し、次回の処理条件における調整項目としてプロセスコンピュータに入力するとともに、設定した後に所望の特性が得られなかった場合に、相関度の高い因子から順番に因子を調整項目としてプロセスコンピュータに入力する金属材料の材質安定化方法を要旨とする。
【0013】
本発明は、複数の処理工程を経て製造される金属材料について各処理工程毎に処理条件を検知する検出手段と、これらの検出手段によって検出された処理条件データが与えられる材質安定化装置とを有し、この材質安定化装置は、検出手段によって検出された処理条件データを蓄積する処理条件データ蓄積部と、この処理条件データ蓄積部に蓄積された処理条件データと製品試験データに基づき、処理条件を構成している各因子と材料特性との散布図を作成する散布図作成部と、各散布図における因子について数値の幅を所定の間隔に分割して階層化する階層化処理部と、その階層内で材料特性の値の平均値を求め、その平均値に基づいて相関式を算出する相関式算出部と、相関式を求めることによって相関の有無を判別し、相関の認められた因子を抽出するとともに、その抽出した因子を材質に影響を与える因子として次回の処理条件における調整項目に設定する設定部とを備えてなる金属材料の材質安定化装置を要旨とする。
【0014】
本発明の材質安定化装置において、上記抽出した因子を相関度の高い順に記憶する抽出因子記憶部をさらに有するとともに、上記設定部は、次回の処理条件における調整項目として因子を設定した後に所望の特性が得られなかった場合に、相関度の高い因子から順番に調整項目に設定するように構成することができる。
【0015】
上記材質安定化装置における上記因子として、各処理工程に配設されている検出手段によって測定される温度,荷重,応力等のプロセス因子、製品の成分分析値等の成分因子、および前工程によって影響を受ける前工程因子が含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の材質分析方法によれば、処理工程に配設された検出手段から出力されている以前の多数の因子を統計処理することによって材質に影響を与える因子を効率良く特定することができる。
【0017】
本発明の材質安定化方法によれば、材質に影響を与える因子を、処理条件における調整項目としてプロセスコンピュータに入力するとともに、設定した後に所望の特性が得られなかった場合に、相関度の高い因子から順番に因子を調整項目としてプロセスコンピュータに入力するようにしたため、目標とする材質を得るまでに要する試行期間を大幅に短縮することができる。
【0018】
本発明の材質安定化装置によれば、処理工程から出力された段階での材質を安定化させることができるため、特性にばらつきのない金属材料を製造することができ、特に高強度材料に好適な金属材料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0020】
図1は、金属材料としての鋼板を製造するラインにおいて、そのラインの中の一つの処理工程として連続式亜鉛めっき設備を示したものである。
【0021】
同図において、払い出しリール1から連続的に巻き解かれる鋼板2は、入側洗浄装置3によって表面が洗浄され、予熱炉4に送られ、次に加熱炉5にて鋼板表面の酸化鉄の還元が行なわれる。次いで鋼板は徐冷炉6、調整炉7を経て溶融亜鉛ポット8に浸漬される。
【0022】
亜鉛浴を通過した鋼板は上方に引き上げられ、合金化炉9で合金化処理され、鋼板表面に亜鉛めっき層が強固に密着する。
【0023】
次いで亜鉛めっき鋼板は冷却装置10で冷却され、乾燥された後、巻取リール11に巻き取られる。
【0024】
このような亜鉛めっき設備においては、めっき前、めっき処理中、めっき後の各処理温度によって鋼板の材質が変化する。
【0025】
具体的には、加熱炉5における加熱温度によって鋼板の材質が変化し、溶融亜鉛ポット8の亜鉛浴温度によっても材質が変化し、さらには、合金化炉9における合金化温度によっても材質が変化する。
【0026】
このような亜鉛めっき設備における処理条件をモニタリングする方法として、図2に示すような散布図が従来から作成されている。
【0027】
同図において、横軸は溶融亜鉛ポット8に入る前の加熱温度を示しており、縦軸は延性(穴拡げ性λ)を示している。
【0028】
上記鋼板温度は、亜鉛めっき処理前の加熱炉5における管理ポイントに配設されている複数の温度センサによって検出されるようになっており、また、延性は亜鉛めっき設備から出力される段階でサンプリングされた鋼板を測定することによって求められる。
【0029】
したがって上記散布図を分析すれば、変動因子としての加熱温度と金属材料特性である延性との相関関係を解析することができる。
【0030】
なお、測定の信頼性を高めるため延性データは散布図中に多数プロットされる。これは、例えば高速で走行する鋼板の表面温度を非接触で測定する場合、センサを介して測定される測定温度と実際の鋼板温度との間に測定誤差が含まれることは避けられないからであり、絶えず変動する環境条件の中ではそれらの温度間で相関を求めることも現実的には不可能である。そこで、プロット数を増やして散布図を作成し、全体として傾向を把握するという手法が従来から採られている。
【0031】
例えば図3の(a)や(b)に示す散布図のように変動因子と特性の間に明かな相関があるような場合には変動因子を調整することによって材料の特性も制御することができる。
【0032】
図3の(a)や(b)に示す散布図では、プロットした点の全体に右下がりの傾向が見られ、変動因子の値を大きくする(X軸上で右)ことで特性値を小さく(Y軸上で下)することができる。
【0033】
このような場合、本発明の材質分析方法を適用するまでもなく散布図から材質を支配している変動因子を特定することができ、その変動因子を処理条件の調整項目として選択することで材料の特性を制御することができる。
【0034】
ところが、図3の(c)に示されるような散布図が得られた場合、変動因子と特性との間に相関関係があるかどうかを判断することは不可能になる。従来の解析手法によると、縦軸方向に分散した特異点(他のプロット点に比べて大きく外れた点)があると、その特異点の存在によって散布図が縦軸方向に幅広く分散してしまい傾向の有無を判断することができなくなる。
【0035】
本発明はこのように、散布図による単純な解析では変動因子の抽出が困難であるような場合であっても、材質に影響を与える変動因子を特定できるようにするものである。
【0036】
図4は本発明の材質分析装置の基本構成をブロック図で示したものである。
【0037】
なお、説明を簡単にするため、同図では各製造ラインで測定されるプロセス因子データと成分因子データと前工程因子データとをそれぞれ一つ代表的に選択している。
【0038】
鋼板を製造するラインの処理工程には、連続焼鈍炉、連続めっきライン、バッチ焼鈍炉、熱間圧延設備、冷間圧延設備、押出し設備等の各製造設備が配置されており、各製造設備の管理ポイント毎に温度、荷重或いは応力(プロセス因子)等の処理条件をモニタリングするためのセンサが設けられている。
【0039】
例えば、表面処理ラインでは、亜鉛めっき処理前の還元炉5における管理ポイントに複数の温度センサSa1〜Sanが設けられており、これらの複数の温度センサSa1〜Sanから出力される加熱温度信号はセンサ位置を表す位置情報が付加され、材質安定化装置20のプロセス因子データ蓄積部20aに与えられる。
【0040】
プロセス因子データ蓄積部20aは、位置情報と対応する位置インデックスを有し、与えられた位置情報に該当する位置インデックスに加熱温度データを順次蓄積する。
【0041】
また、製品の成分分析値、例えば鋼材中のC、Si、Mn、P、S等の成分濃度を示す成分因子データはセンサSb1〜Sbnによって検出され成分因子データ蓄積部20bに順次蓄積される。
【0042】
さらに、熱間圧延等の前工程因子データはセンサSc1〜Scnによって検出され前工程因子データ蓄積部20cに順次蓄積される。
【0043】
上記各データ蓄積部20a,20b,20cは処理条件データを蓄積する処理条件データ蓄積部として機能する。
【0044】
以前の処理条件データとして予め設定された期間にわたって各変動因子データがプロセス因子データ蓄積部20a、成分因子データ蓄積部20b、前工程因子データ蓄積部20cにそれぞれ蓄積されると、散布図作成部20dは管理ポイント毎に散布図を作成する。例えば図2に示したような加熱温度と延性の相関について散布図を作成する。ただし、延性は、ある処理工程から出力された段階でサンプリングされた鋼板を試験した結果として得られるものとする。
【0045】
散布図作成部20dによって散布図が作成されると、次いで階層化処理部20eは、図2に示した変動因子(加熱温度)の横軸を適当な間隔に分割し階層化する。
【0046】
なお、階層化するにあたっては各階層内で十分なサンプル数nが確保できるように階層の数を決定する。具体的には本実施形態では22階層、サンプル数nを5点以上とした。次いで階層化処理部20eは各階層内での平均値を求める。
【0047】
図5は図2に示した散布図を階層化したものである。
【0048】
図中×印は階層化内のプロット点を示しており、Aは各階層内のプロット点の値を平均した平均値を示している。これらの平均値は各階層での材質の期待値となる。
【0049】
図6〜図8は各管理ポイント毎に測定された因子データを階層化処理部20eによって階層化処理した具体例を示したものである。
【0050】
図6のプロセス因子を表すグラフにおいて、各グラフの横軸は温度を示し、縦軸は強度を示している。
【0051】
ある管理ポイントで測定された「温度1」では温度が上昇するにつれて強度が低下する傾向がある。別の管理ポイントで測定された「温度2」についても「温度1」に比べると勾配は緩やかなものの、温度が上昇するにつれて強度が低下する傾向がある。「温度5」については勾配は緩やかなものの、温度が上昇するにつれて強度も上昇する傾向がある。「温度3」、「温度4」、「温度6」については相関関係がなく分析の対象外となる。
【0052】
また、図7の成分因子を表すグラフにおいて、各グラフの横軸は成分を示し、縦軸は強度を示している。
【0053】
鋼材の成分中、「C」はその濃度が高くなるにつれて強度が高くなる傾向があり、「Mn」は「C」に比べると勾配は緩やかなものの、濃度が高くなるにつれて強度が高くなる傾向がある。「Si」,「P」,「S」では相関関係がなく、分析の対象外となる。
【0054】
また、図8の前工程因子を表すグラフにおいて、各グラフの横軸は温度を示し、縦軸は強度を示している。前工程因子のグラフではいずれも相関関係がなく、分析の対象外となる。
【0055】
次に、材質分析装置20の相関式算出部20fは上記階層化された各グラフで求められた平均値に基づいて期待直線(回帰直線)を求める。
【0056】
図9は図5で得られた平均値から回帰直線Bを求めた例を示したものである。
【0057】
同図に示す回帰直線Bの傾きθは鋼板の材質に影響を及ぼす感度となる。
【0058】
材質変動因子抽出部20gは、図6〜図8に示した散布図の中から有意性のある回帰直線が求められた変動因子、すなわち相関関係の認められた変動因子を抽出し、抽出された変動因子は抽出因子記憶部20hに記憶される。
【0059】
処理条件出力部20iは、抽出因子記憶部20hに記憶されている変動因子について回帰直線の傾きθの大きいものから並び替えて優先順位を付け、並び替えた変動因子のうち優先順位の高い因子(傾きθの大きい変動因子)を、鋼板の材質に影響を与える因子として製造ラインのプロセスコンピュータ21に出力する。
【0060】
上記材質変動因子抽出部20g、抽出因子記憶部20h、処理条件出力部20iは相関の認められた因子を抽出するとともに、その抽出した因子を材質に影響を与える因子として次回の処理条件における調整項目に設定する設定部として機能する。
【0061】
プロセスコンピュータ21では処理条件出力部20iから出力された変動因子を処理条件における調整項目として選択し、調整することにより、例えば現状の加熱温度を10℃下げるといった調整を行なう。
【0062】
この調整によって材質に変化がなく所望する鋼板が得られなかった場合は、プロセスコンピュータ21から処理条件出力部20iに対して変動因子要求指令が与えられ、処理条件出力部20iは優先順位2番目の変動因子を読み出し、鋼板の材質に影響を与える因子として再度、プロセスコンピュータ21に出力する。
【0063】
所望する材質が得られるまで、処理条件出力部20iは優先順位の高いものから順番に変動因子を読み出し、プロセスコンピュータ21に与える。
【0064】
図10は材質安定化装置によって得られる効果を示したグラフである。
【0065】
同図に示すグラフは鋼材の延性の指標を示し、縦軸は頻度を示している。
【0066】
材質安定化を行う前の鋼材はその延性(白抜きで示した棒グラフ)が5.5ポイント(5.5%)の範囲でばらついていたが、本発明の材質安定化を行えばその延性(黒塗りで示した棒グラフ)が3.5ポイント(3.5%)の範囲に収まり、材質安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る材質安定化方法が適用されるめっきラインの構成図である。
【図2】因子に対する特性をプロットした散布図である。
【図3】(a)〜(c)は散布図における因子と特性との相関関係を示す説明図である。
【図4】材料分析装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図2に示した散布図を階層化したグラフである。
【図6】プロセス因子を階層化したグラフである。
【図7】成分因子を階層化したグラフである。
【図8】前工程因子を階層化したグラフである。
【図9】階層化したグラフから回帰直線を求めたグラフである。
【図10】材質安定化効果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 払い出しリール
2 鋼板
3 洗浄装置
4 予熱炉
5 加熱炉
6 除冷炉
7 調整炉
8 溶融亜鉛ポット
9 合金化炉
10 冷却装置
11 巻取リール
20 材質安定化装置
20a プロセス因子データ蓄積部
20b 成分因子データ蓄積部
20c 前工程因子データ蓄積部
20d 散布図作成部
20e 階層化処理部
20f 相関式算出部
20g 材質変動因子抽出部
20h 抽出因子記憶部
20i 処理条件出力部
21 プロセスコンピュータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理工程を経て製造される金属材料を分析する方法において、
各処理工程に配設されている検出手段によって検出された処理条件データおよび製品試験データに基づき、処理条件を構成している各因子と材料特性との散布図を作成し、
各散布図における上記因子について数値の幅を所定の間隔に分割して階層化し、
その階層内で材料特性の値の平均値を算出し、
算出された上記平均値に基づいて相関式を求めることにより相関の有無を判別し、
相関の認められた因子を抽出し材質に影響を与える因子として特定することを特徴とする金属材料の材質分析方法。
【請求項2】
上記因子として、各処理工程に配設されている上記検出手段によって測定される温度,荷重,応力等のプロセス因子、製品の成分分析値等の成分因子、および前工程によって影響を受ける前工程因子が含まれる請求項1記載の金属材料の材質分析方法。
【請求項3】
複数の処理工程を経て製造される金属材料について上記各々の処理工程によって製造された段階での材質を安定化させる金属材料の安定化方法において、
請求項1または2の材質分析方法によって抽出した因子を相関度の高い順に記憶し、次回の処理条件における調整項目としてプロセスコンピュータに入力するとともに、設定した後に所望の特性が得られなかった場合に、相関度の高い因子から順番に上記因子を調整項目として上記プロセスコンピュータに入力することを特徴とする金属材料の材質安定化方法。
【請求項4】
複数の処理工程を経て製造される金属材料について各処理工程毎に処理条件を検知する検出手段と、これらの検出手段によって検出された処理条件データが与えられる材質安定化装置とを有し、
この材質安定化装置は、上記検出手段によって検出された処理条件データを蓄積する処理条件データ蓄積部と、
この処理条件データ蓄積部に蓄積された処理条件データと製品試験データに基づき、処理条件を構成している各因子と材料特性との散布図を作成する散布図作成部と、
各散布図における上記因子について数値の幅を所定の間隔に分割して階層化する階層化処理部と、
その階層内で材料特性の値の平均値を求め、その平均値に基づいて相関式を算出する相関式算出部と、
相関式を求めることによって相関の有無を判別し、相関の認められた因子を抽出するとともに、その抽出した因子を材質に影響を与える因子として次回の処理条件における調整項目に設定する設定部とを備えてなることを特徴とする金属材料の材質安定化装置。
【請求項5】
上記抽出した因子を相関度の高い順に記憶する抽出因子記憶部をさらに有するとともに、上記設定部は、次回の処理条件における調整項目として上記因子を設定した後に所望の特性が得られなかった場合に、相関度の高い因子から順番に調整項目に設定するように構成されている請求項4記載の金属材料の材質安定化装置。
【請求項6】
上記因子として、各処理工程に配設されている上記検出手段によって測定される温度,荷重,応力等のプロセス因子、製品の成分分析値等の成分因子、および前工程によって影響を受ける前工程因子が含まれる請求項4または5記載の金属材料の材質安定化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−258653(P2006−258653A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77706(P2005−77706)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】