説明

金属板と金属サイディング材ならびに金属板の成形型と製造方法

【課題】金属板に深い凹型目地を付与する場合に、金属板端部における波打ちの発生を防止すること。
【解決手段】表面に凹型目地2の柄部3を有する金属板1であって、端部4において凹型目地2に近接して外方へと向って並ぶ帯状溝5を設けるとともに、帯状溝5の配設部に隣接して該帯状溝5とは異形の波打ち防止部12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板と、金属板を有する金属サイディング材、金属板を成形するためのエンボスロール、プレス型等の成形型、さらには、金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発泡ポリウレタン等の外表面をエンボス加工を施した薄板状金属板で覆った金属サイディング材が知られている。金属サイディング材は、経年変化に対する耐久性が高く、軽量で取り扱いやすく、また、エンボス加工によって様々な凹凸形状、模様等の意匠が簡単に表わせるという特徴から、例えば建物の外壁等において広く利用されている。
【0003】
このような金属サイディング材を構成する金属板の製造においては、一般的には、原板である金属帯板がエンボスロール、プレス型等の成形型によるエンボス加工によって柄部が成形される。そして、建物の外壁等に取り付ける際には、複数の金属サイディング材を連結させる必要があることから、金属板の両端部を折曲げ成形して、例えば、一方側を嵌合凸部に、他方側を嵌合凹部に形成し、両者を嵌合させることで、建物の外壁等に複数の金属サイディング材を組み付けている。
【0004】
ところが、近年、建物の外壁等に使用される金属サイディング材には、さらなる高級感、重厚感が求められ、高意匠化が進んでいる。これに伴って、金属サイディング材を構成する金属板の柄部の目地を深く形成することが望まれているが、柄付け後に端部に嵌合凸部、嵌合凹部等の嵌合部を形成する場合には、柄部と同じ柄(同程度の深さの柄)を施すと、嵌合部の形状成形時にシワや、歪を生じ、また、深さによっては、成形ができない等の問題があった。
【0005】
一方、金属板の柄部だけにエンボス加工を施し、両端部の折曲げ部にエンボス加工を施さないようにした場合には、エンボス加工時の応力や鋼材収縮の影響が両端部に及ぶため、両端部に波打ちが発生し、不規則に変形したりして、曲げ加工不良等の不具合が発生するという問題があった。
【0006】
そこで、金属板をエンボス加工する際の両端部の波打ちの発生を防止し、通常の曲げ加工法で折曲げ部を形成することが提案されている。
【0007】
特許文献1には、金属板の両端部(折曲げ部)のエンボス加工の凹凸深度が、飾り面部のエンボス加工の凹凸深度に較べて浅く形成された金属板が記載されている。ここでの金属板は、飾り面部(柄部)の深度を深くして意匠効果を高めたいような場合でも、短手方向端部の折曲げ加工が容易になるとされている。
【0008】
また、特許文献2には、目地部との段差が3mm以上の装飾部が複数個設けられ、金属板の両端部に複数の帯状リブが形成された、深彫り模様のある金属サイディング材が記載されている。この金属サイディング材は、両端部の波打ちが抑制されており、立体感にも優れているとされている。
【0009】
このような工夫も提案されている従来の金属サイディング材の金属板においては、例えば、図6の正面図および図7(A)の端部拡大図に示されるように、金属板1は、長手方向中央部に、例えば、縦目地2a、横目地2bのような凹型目地2が成形された柄部3を有し、短手方向の端部4に長手方向に沿って全体に均一なピッチの帯状溝5が形成されている。さらに、図7(A)のA−A’断面を示した図7(B)のように、この帯状溝5は、深さも均一である。
【0010】
そして、図8に例示するように、従来の金属サイディング材6は、通常、前記のような帯状溝5が形成された金属板1を表層に有し、裏面材7と、これらの間に充填される充填層8とによって構成されている。そして、金属板1の端部4は、曲げ加工が施され、一方側が嵌合凸部9に、他方側がこの嵌合凸部9と嵌合可能な嵌合凹部10に形成されている。
【0011】
しかしながら、このような従来の金属板1においては、凹型目地2の深さが、例えば3mm以上に深い場合や、凹型目地2の形状によっては、金属板1の凹型目地2近傍では、エンボス加工の際に局部的な縮みが生じ、結果として、均一な帯状溝5が形成される端部4と凹型目地2を有する柄部3の縮み量のバランスが悪くなる。このため、図6、図7、図8に例示するように、主に、凹型目地2と近接する端部領域11でふくれが生じ、端部4全体として波打ちが生じてしまうという問題がある。この波打ちは、前記のとおり、端部4の曲げ加工、釘打ち作業、嵌合作業における作業性の低下を招くとともに、製品としての外観を害していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−146627号公報
【特許文献2】特開平11−152877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、従来の問題点を解消して、金属板に深い凹型目地を付与する場合に、金属板端部における波打ちの発生を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0015】
第1に、本発明の金属板は、表面に凹型目地の柄部を有する金属板であって、端部において凹型目地に近接して外方へと向って並ぶ帯状溝が設けられているとともに、帯状溝の配設部に隣接して該帯状溝とは異形の波打ち防止部が設けられている。
【0016】
第2に、本発明の金属板は、異形の波打ち防止部には、外方へと向って並ぶ帯状溝が配設されているとともに、該帯状溝に比べて、凹型目地に近接して設けられている帯状溝は、並びピッチが小さいか、溝がより深いか、の少なくともいずれかにおいて異なっている。
【0017】
第3に、本発明の金属板は、凹型目地に近接する帯状溝は、溝の長さ方向が凹型目地と同方向に形成されている。
【0018】
第4に、本発明の金属板は、異形の波打ち防止部には、凹型目地に近接して設けられている帯状溝よりも深さの浅い不規則な柄が設けられている。
【0019】
第5に、本発明の金属板は、異形の波打ち防止部が、平坦部である。
【0020】
第6に、本発明の金属板は、金属板の両端部のうち、一方の端部は嵌合凹部が形成され、他方の端部は、前記嵌合凹部と嵌合可能な嵌合凸部が形成されている。
【0021】
第7に、本発明の金属サイディング材は、前記の金属板と、裏面材と、これらの間に充填される充填層とを有する。
【0022】
第8に、本発明の金属板の成形型は、金属板の表面に凹型目地の柄部と、端部において凹型目地に近接して外方へと向って並ぶ帯状溝を付与する成形型であって、金属板に凹型目地を付与する凸部と、帯状溝を付与する帯状リブとを有し、帯状リブに隣接して該帯状リブとは異形の波打ち防止部付与型を備えている。
【0023】
第9に、本発明の金属板の成形型は、異形の波打ち防止部付与型には、外方に向って並ぶ帯状溝を付与する帯状リブが配設されており、該帯状溝を付与する帯状リブに比べて、凸部に近接する帯状溝を付与する帯状リブは、並びピッチが小さいか、リブ高さが高いか、の少なくともいずれかにおいて異なっている。
【0024】
第10に、本発明の金属板の成形型は、前記凸部に近接する帯状リブは、前記凸部と同方向に配置されている。
【0025】
第11に、本発明の金属板の成形型は、異形の波打ち防止部の付与型には、凸部に近接する帯状リブよりも高さの低い不規則な柄の付与部が設けられている。
【0026】
第12に、本発明の金属板の成形型は、異形の波打ち防止部の付与型には、平坦部の付与部が設けられている。
【0027】
第13に、本発明の金属板の製造方法は、前記成形型によって金属帯板を成形する工程を含む。
【発明の効果】
【0028】
第1の発明の金属板は、端部において凹型目地に近接して外方へと向って並ぶ帯状溝が設けられているとともに、帯状溝の配設部に隣接して該帯状溝とは異形の波打ち防止部が設けられているため、端部における波打ちがなく、嵌合凹部および嵌合凸部などの加工作業が容易で、また、端部における釘打ちなどの作業も容易であり、商品価値が高い。
【0029】
第2の発明の金属板は、凹型目地に近接して設けられている帯状溝は、並びピッチが小さいか、溝がより深いか、の少なくともいずれかにおいて異なっているため、さらに確実に端部における波打ちの発生が防止されている。
【0030】
第3の発明の金属板は、凹型目地に近接する帯状溝は、溝の長さ方向が凹型目地と同方向に形成されているため、さらに確実に端部における波打ちの発生が防止されている。
【0031】
第4、第5の発明の金属板は、異形の波打ち防止部の特徴によって、上記同様に確実に端部における波打ちの発生が防止されている。
【0032】
第6の発明の金属板は、上記効果に加えて、嵌合凹部および嵌合凸部に波打ちがないため、嵌合凹部および嵌合凸部の嵌合作業を円滑に行うことができる。
【0033】
第7の発明の金属サイディング材は、上記特徴を有する金属板を備えるため、高級感、重厚感を演出することができるとともに、例えば、嵌合凹部および嵌合凸部による嵌合を介した金属サイディング材同士の嵌合作業等が容易である。
【0034】
第8から第12の発明の金属板の成形型および第13の発明の金属板の製造方法によれば、前記第1から4の金属板を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(A)は、本発明の金属サイディング材の金属板の一実施形態を例示する正面図である。(B)は、(A)のB−B’断面図である。
【図2】(A)は、図1に示す金属板の端部拡大図である。(B)は、(A)のC−C’断面図である。
【図3】本発明の金属板の別の実施形態を例示する端部拡大図である。
【図4】(A)本発明の金属板の別の実施形態を例示する端部拡大図であり、(B)は、(A)のD−D’断面図である。
【図5】本発明金属板の別の実施形態を例示した正面図である。
【図6】従来の金属サイディング材の正面図である。
【図7】(A)は、従来の金属板の端部拡大図、(B)は、(A)のA−A’断面図である。
【図8】従来の金属サイディング材を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0037】
図1(A)は、本発明の金属サイディング材の金属板の一実施形態を例示する正面図であり、図1(B)は、図1(A)の縦目地2aのB−B’断面図である。図2(A)は、図1に例示する金属板1の端部拡大図であり、図2(B)は、図2(A)のC−C’断面図である。
【0038】
本発明の金属板1は、図1に例示するように、長手方向中央部に、例えば、縦目地2a、横目地2bのような凹型目地2が形成された柄部3を有している。
【0039】
金属板1の柄部3は、成形によって柄が外部に露出する部分で、図1に示す例では、凹型の縦目地2a、横目地2bを有するレンガ調の柄が成形されている。柄部3の柄については、図1の例に限定されることはなく、規則的な柄の他、例えば、自然石風の柄などでもよい。いずれの柄においても、柄部3の凹型目地2の深さは、例えば、3mm以上とすることができ、好ましくは3〜10mm程度である。また、凹型目地2の形状は、例えば、図1(B)の断面図に例示されるような凹溝状であり、底部20の幅Lは、開口部の幅Mより小さく形成される。そして、図1(B)に示されるように、底部20と側壁21との接合部22がシャープな形状であることが好ましく、これによって、凹型目地2の深さ、形状の美しさが一層引き立ち、金属板1の高級感、重厚感をより強く感じさせることができる。凹型目地2の具体的な寸法は特に限定されないが、例えば、底部20の幅Lは、1〜10mm程度、開口部の幅Mは、4〜16mm程度とすることができ、L<Mとすることが好ましい。
【0040】
そして、図1、図2に例示するように、本発明の金属板1は、端部4において凹型目地2である縦目地2aに近接して外方へと向って並ぶ帯状溝5が設けられているとともに、この帯状溝5の配設部に隣接して、該帯状溝5とは異形の波打ち防止部12が設けられている。図1、図2に例示する実施形態においては、前記波打ち防止部12は、外方へと向って並ぶ帯状溝12aであり、縦目地2aに近接する帯状溝5は、波打ち防止部12としての帯状溝12aに比べて、並びピッチが小さく形成されている。
【0041】
ここで、「凹型目地2に近接する帯状溝5」とは、例えば、図1の例においては、縦目地2aと端部4とが接する点を基準として、長手方向に約5mm〜20mm程度の範囲に存在する複数の溝を意味し、図1(B)に例示する縦目地2aの開口部の幅Mを含むような広い範囲に存在する溝であることが好ましい。また、「並びピッチ」とは、隣合う帯状溝5同士の間隔をいい、例えば、図2(B)に例示するように、連続する帯状溝の凸部の頂点同士の間隔Nを基準とすることができる。帯状溝5、12aの並びピッチは、凹型目地2の深さ、凹型目地2の底部および開口部の幅等にも関係するが、例えば、波打ち防止部12としての帯状溝12aの並びピッチは、約4〜8mm程度とすることができ、縦目地2aに近接する帯状溝5の並びピッチは、波打ち防止部12としての帯状溝12aよりも、約1〜3mm程度小さくすることが好ましい。なお、図2(B)では、便宜的に、長手方向に連続する溝の凹凸を鋭角に表現しているが、実際は、この溝の凹凸は滑らかな波状であってよい。なお、帯状溝5、12aは、金属板1の短手方向の片端部または両端部に形成することができる。
【0042】
従来では、例えば、5mm以上の深い凹型目地2を成形する場合、凹型目地2の形成によって、凹型目地2に局部的な縮みが生じ、凹型目地2の形成に伴う柄部3の縮みと、端部4の縮みとのバランスが悪く、端部4に波打ちが生じることがあった。これに対し、本発明のこの実施形態においては、成形時に、凹型目地2に近接する帯状溝5が、波打ち防止部12としての帯状溝12aよりも並びピッチが小さく形成されるため、成形時の金属板1の端部4の縮みと凹型目地2近傍の縮みとのバランスが良くなり、金属板1の端部4の波打ちを確実に防止することができる。したがって、成形後の金属板1は、例えば、端部4の折り曲げ加工などによる嵌合部の形成作業が容易であり、金属サイディング材としての利用に好適であるとともに、金属サイディング材の施工時の端部4同士の嵌合作業、端部4の釘打ちなどによる固定作業も容易である。
【0043】
さらに、本発明の金属板1の別の実施形態を図3の端部拡大図に例示する。この実施形態の金属板1は、図1、2に例示する形態と同様に、縦目地2aに近接する帯状溝5を、波打ち防止部12aとしての帯状溝12aよりも相対的に並びピッチを小さく形成し、さらに、縦目地2aに近接する帯状溝5の長さ方向を、縦目地2aと略同方向に形成している。
【0044】
端部4に形成する帯状溝5においては、エンボス成形時に、鋼板材料がエンボスロール中央方向に引き込まれる量をコントロールする必要がある。また、施工時における金属サイディング材の位置あわせのための軽微なスライドを可能とするために、嵌合する端部4の帯状溝5同士が歯車状に噛み合わないようにする必要がある。したがって、通常、帯状溝は、長手方向に直行な方向には設けられず、図1から図6に例示するように、長手方向に対してやや斜めに形成されるなどされる。そこで、本発明のこの実施形態では、縦目地2aに近接する帯状溝5を、波打ち防止部12としての帯状溝12aよりも相対的にピッチを小さく形成し、さらに縦目地2aに近接する帯状溝5の方向のみを縦目地2aと略同方向に形成することで、帯状溝5の上記機能を確保しつつ、金属板1の端部4の縮みと凹型目地2近傍の縮みとのバランスがさらに良くなるため、より確実に金属板1の端部4における波打ちの発生を防ぐことができる。
【0045】
さらに、本発明の金属板の別の実施形態としては、例えば、図4(A)の端部拡大図におけるD−D’断面を示す図4(B)のように、縦目地2aに近接する帯状溝5を、波打ち防止部12としての帯状溝12aよりも、相対的に深さを深く形成したものとすることができる。
【0046】
帯状溝5の深さは、縦目地2aの深さ、幅などにも関係するが、例えば、波打ち防止部12としての帯状溝12aでは、0.5〜1.2mm程度とすることができ、縦目地2aに近接する帯状溝5は、前記帯状溝12aよりも0.5mm〜1.0mm程度深く形成することが好ましい。
【0047】
これによって、上記の実施形態と同様に、エンボス加工時の金属板1の端部4の縮みと凹型目地2近傍の縮みとのバランスが良くなるため、金属板1の端部4に波打ちが生じない。したがって、成形後の金属板1は、例えば、端部4の折り曲げ加工などによる嵌合部の形成作業も容易であり、金属サイディング材としての使用に好適である。また、金属サイディング材の施工時に、金属板1の端部4における釘打ち固定などの作業も容易である。
【0048】
なお、図には示していないが、前記の実施形態の各々の特徴を組み合わせた金属板1、すなわち、凹型目地2に近接する帯状溝5の並びピッチが波打ち防止部12としての帯状溝12aよりも小さく、かつ、深い金属板1や、凹型目地2に近接する帯状溝5の深さが波打ち防止部12としての帯状溝12aよりも深く、かつ、帯状溝5の方向を縦目地2と同方向に形成した金属板1も本発明の範囲内にある。
【0049】
また、別の実施形態としては、図5に例示するように、本発明の金属板1は、端部4に、凹型目地2に近接して設けられている帯状溝5を有し、この帯状溝5の配設部に隣接するとともに、この帯状溝5とは異形の波打ち防止部12として、帯状溝5よりも深さの浅い不規則な柄12bが設けられたものとすることができる。また、図示してはいないが、端部4は、無模様の平坦部とすることもできる。いずれの場合も、図6に例示するように、金属板1の縦目地2aと近接する端部4には、例えば、ピッチが3〜5mm程度、深さ1.0mm〜2.0mm程度の帯状溝5を長手方向に約5mm〜20mm程度の範囲にわたって設けることができる。このような形態によっても、上記の実施形態と同様に、エンボス加工時の金属板1の端部4の縮みと凹型目地2近傍の縮みとのバランスが良くなるため、金属板1の端部4の波打ちを確実に防止することができる。
【0050】
さらに、図示してはいないが、本発明は、図1から図5に例示した本発明の金属板1を製造するための成形型も提供する。
【0051】
すなわち、本発明の成形型は、金属板1の表面に凹型目地2を有する柄部3と、端部4において凹型目地2に近接して外方へと向って並ぶ帯状溝5を付与する成形型であって、金属板1に凹型目地2を付与する凸部と、帯状溝5を付与する帯状リブとを有し、帯状リブに隣接して該帯状溝5とは異形の波打ち防止部12の付与型を備えている。この凸部、帯状リブ、および異形の波打ち防止部付与型の位置、形状に対応して、凹型目地2および帯状溝5、および異形の波打ち防止部12の形成が可能である。これによって、前記特徴を有する金属板1の成形を可能とする。ここでは、前記「凸部に近接する帯状リブ」は、「凹型目地2に近接する帯状溝5」に対応する。
【0052】
具体的には、例えば、異形の波打ち防止部12付与型として、外方へと向って並ぶ帯状溝12aを付与する帯状リブが配設され、前記凸部に近接する帯状リブが、異形の波打ち防止部付与型としての帯状リブよりも小さい並びピッチで形成されている成形型によれば、図1、図2に例示した形態の金属板1を製造することができる。
【0053】
また、前記凸部に近接する帯状リブが、異形の波打ち防止部付与型としての帯状リブよりも高さが高く形成されている成形型によれば、図4に例示した形態の金属板1を製造することができる。
【0054】
さらに、前記「凹型目地2を付与する凸部」と「凸部に近接する帯状リブ」を、同方向に形成した成形型によれば、図3に例示した形態の金属板1を製造することができる。
【0055】
また、異形の波打ち防止部付与型として、凸部に近接する帯状リブよりも高さの低い不規則な柄の付与部が設けられている成形型、および、異形の波打ち防止部付与型として、平坦部の付与部が設けられている成形型によれば、図5を用いて説明した形態の金属板1を製造することができる。
【0056】
その他の形態も同様に、本発明の金属板1の実施形態に対応した形状の凸部および帯状リブを有する成形型は、本発明の範囲内にある。
【0057】
ここで、金属板1の製造方法は特に限定されず、例えば、ラインに前記成形型を備えたプレス成形機を設け、原板となる金属帯板をラインに乗せ、金属帯板の上方からプレス型にてプレスして成形することができるし、前記成形型を有するエンボスロールによって柄付けを行ってもよい。
【0058】
そして、本発明の金属板1は、材料として、例えば、鋼板、アルミニウム板、銅板や、これらの金属に亜鉛や、ニッケルなどを含有させた合金板などを使用することができ、建物の外壁等に使用される金属サイディング材として利用することができる。この場合、例えば、本発明の金属サイディング材は、図7に例示する従来のものと同様に、前記金属板1を表層とし、金属板1と裏面材7との間に充填層8を有するパネル状に形成することができる。
【0059】
充填層8には、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム等の発泡樹脂、ロックウール、石膏ボードなど、一般に断熱材料として用いられている材料を用いることができる。
【0060】
また、金属板1の表面には、適宜、塗装を施すことができ、例えば、フッ素焼付塗装は、経年変化による色落ちが少なく長期にわたって美観を保つことができるため好ましい。
【0061】
さらに、従来のとおり、本発明の金属板1の端部4に曲げ加工を施し、一方側を嵌合凸部9、他方側をこの嵌合凸部9と嵌合可能な嵌合凹部10に成形することがでる。嵌合凸部9および嵌合凹部10の具体的な形状は特に限定されない。この加工の際に、金属板1の端部4に波打ちがないことで、加工作業が容易である。そして、前記嵌合凸部および嵌合凹部を嵌合させることで、建物の外壁等に複数の金属サイディング材を組み付けることができる。
【0062】
また、金属サイディング材の組み付けによる接合部は防水性が確保されることが好ましく、例えば、防水パッキンやシーリングの使用等が考慮される。本発明の金属板1は、従来より深い凹型目地2を有するものとすることができ、この金属板1を有する金属サイディング材を建物の外壁等に使用することで、外壁等の高級感、重厚感を演出することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 金属板
2 凹型目地
3 柄部
4 金属板の端部
5 帯状溝
6 金属サイディング材
7 裏面材
8 充填材
9 嵌合凸部
10 嵌合凹部
12 波打ち防止部
12a 帯状溝
12b 不規則な柄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹型目地の柄部を有する金属板であって、端部において凹型目地に近接して外方へと向って並ぶ帯状溝が設けられているとともに、帯状溝の配設部に隣接して該帯状溝とは異形の波打ち防止部が設けられていることを特徴とする金属板。
【請求項2】
異形の波打ち防止部には、外方へと向って並ぶ帯状溝が配設されているとともに、該帯状溝に比べて、凹型目地に近接して設けられている帯状溝は、並びピッチが小さいか、溝がより深いか、の少なくともいずれかにおいて異なっていることを特徴とする請求項1記載の金属板。
【請求項3】
凹型目地に近接する帯状溝は、溝の長さ方向が凹型目地と同方向に形成されていることを特徴とする請求項2記載の金属板。
【請求項4】
異形の波打ち防止部には、凹型目地に近接して設けられている帯状溝よりも深さの浅い不規則な柄が設けられていることを特徴とする請求項1記載の金属板。
【請求項5】
異形の波打ち防止部は、平坦部であることを特徴とする請求項1記載の金属板。
【請求項6】
金属板の両端部のうち、一方の端部は嵌合凹部が形成され、他方の端部は、前記嵌合凹部と嵌合可能な嵌合凸部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の金属板。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれかか一項に記載の金属板と、裏面材と、これらの間に充填される充填層とを有することを特徴とする金属サイディング材。
【請求項8】
金属板の表面に凹型目地の柄部と、端部において凹型目地に近接して外方へと向って並ぶ帯状溝を付与する金属板の成形型であって、
金属板に凹型目地を付与する凸部と、帯状溝を付与する帯状リブとを有し、帯状リブに隣接して該帯状リブとは異形の波打ち防止部付与型を備えていることを特徴とする金属板の成形型。
【請求項9】
異形の波打ち防止部付与型には、外方に向って並ぶ帯状溝を付与する帯状リブが配設されており、該帯状溝付与リブに比べて、凸部に近接する帯状溝を付与する帯状リブは、並びピッチが小さいか、リブ高さが高いか、の少なくともいずれかにおいて異なっていることを特徴とする請求項8に記載の金属板の成形型。
【請求項10】
前記凸部に近接する帯状リブは、前記凸部と同方向に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の金属板の成形型。
【請求項11】
異形の波打ち防止部の付与型には、凸部に近接する帯状リブよりも高さの低い不規則な柄の付与部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の金属板の成形型。
【請求項12】
異形の波打ち防止部の付与型には、平坦部の付与部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の金属板の成形型。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載の成形型によって金属帯板を成形する工程を含むことを特徴とする金属板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−94327(P2011−94327A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247057(P2009−247057)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】