説明

金属検出装置

【課題】検出対象金属の形状に関わらずに検出感度を向上させ、且つ部品点数を削減すること。
【解決手段】この金属検出装置1は、Z軸方向に沿って磁極が位置するように配置された永久磁石4と、YZ平面に沿って略板状を成し、Z軸に対して略垂直な端面7aが形成された磁心2a、及び、YZ平面に沿って略板状を成し、端面7aを含む同一平面上に端面7bが形成された磁心2bを有し、磁心2a,2bが、端面7a,7bとは反対側の端部において一体化されたコア部2と、磁心2bに巻き付けられたコイル3とを備え、永久磁石4は、磁心2aの磁心2bとは反対側の側面8に近接して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出対象物に含まれる金属片等の被検査物を検出する金属検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や電子部品等の対象物に混入された製造装置等から生じるステンレス屑等の金属片を検出する技術は、食品の安全性や電子部品の信頼性確保のために必要不可欠となっている。従来のこの種の技術としては、コイルから高周波の電磁場を発生させて、その結果生じる金属片の渦電流によるコイルのインピーダンスの変化を検出する装置や、磁性体金属を電磁誘導を利用して検出する装置等が知られている。後者のような装置として、下記特許文献1には、対象物の移動方向と平行に配置されたコイルと、そのコイルと垂直に対象物の移動経路を囲むように配置されたコイルと、これらのコイルを貫く磁束を発生するマグネットとを備える金属検出機が開示されている。
【特許文献1】特開平9−80162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のようにコイルのインピーダンスの変化を検出する場合には、アルミ包装等の金属部や塩分等を多く含む対象物に混入された金属片を感度良く検出することは困難であった。一方、特許文献1に記載の金属検出機のように電磁誘導による誘導起電力を検出する場合には、金属片の向きや移動方向に応じて検出感度を保つためには、金属片の形状に応じてコイルの配置を再設計する必要がある。また、コイルの内部に対象物を通過させる必要があるため装置構成が複雑になる。
【0004】
そこで、本発明はかかる課題に鑑みて為されたものであり、検出対象金属の形状に関わらずに検出感度を向上させることができ、且つ部品点数を削減することができる金属検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の金属検出装置は、所定の方向に沿って磁極が位置するように配置された永久磁石と、所定の方向に沿って略板状を成し、所定の方向に対して略垂直な第1の端面が形成された第1の磁心、及び、所定の方向に沿って略板状を成し、第1の端面を含む同一平面上に第2の端面が形成された第2の磁心を有し、第1及び第2の磁心が、第1及び第2の端面とは反対側の端部において一体化されたコア部と、第2の磁心に巻き付けられたコイルとを備え、永久磁石は、第1の磁心の第2の磁心に対して反対側の側面に近接して配置されている。
【0006】
このような金属検出装置によれば、永久磁石の磁極と、第1の磁心の第1の端面及び第1の磁心と一体化された第2の磁心の第2の端面との間に磁束が生じ、永久磁石が上記第1の磁心の側面に近接配置されることにより、第1及び第2の端面の前面の磁束密度の上記所定の方向に対して垂直な方向に沿った磁場勾配が大きく設定される。この第1の端面の前方と第2の端面の前方とを跨って金属片等の被検査物が移動すると、永久磁石と第1及び第2の磁心との間の磁束分布に大きな空間的な乱れが生じ、永久磁石から第2の磁心を通る磁束の密度において時間的変動が生じ、第2の磁心に巻き付けられたコイルにより磁束密度の変動が検出されることにより被検査物が検知される。その際、上記構成の永久磁石と第1及び第2の磁心からなるコア部とを設けることで磁束密度の変動値が大きくなり検出感度を効果的に向上させることができる。
【0007】
コア部は、所定の方向に沿って略板状を成し、第1及び第2の端面を含む同一平面上に第3の端面が形成され、第1の磁心と対称になるように第3の端面とは反対側の端部において第2の磁心と一体化された第3の磁心をさらに有することが好ましい。この場合、第1〜第3の磁心と永久磁石の磁極との間において広範囲にわたって磁場勾配を設定することができるので、被検出物の検出感度をさらに向上させることができる。
【0008】
また、コア部は、高透磁率材料によって形成されていることも好ましい。かかるコア部を備えれば、永久磁石からコア部を通る領域の磁束密度が大きくなり、第1の端面の前面から第2の端面の前面にわたる磁束密度の空間的な変化もさらに大きくなるので、検出感度を一層向上させることができる。
【0009】
さらに、第1の磁心及び第2の磁心は、所定の方向に対して垂直な方向に伸びるように長尺状を成していることも好ましい。かかる構成を採れば、上記所定の方向に対して垂直な方向の磁束の分散を抑制でき、第1の端面の前面から第2の端面の前面に亘る磁束密度の空間的な変化を大きくすることができるので、検出感度を一層向上させることができる。
【0010】
またさらに、永久磁石の磁極の端部は、第1及び第2の端面と略同一平面上に位置していることも好ましい。こうすれば、永久磁石及びコア部の近傍空間の磁束密度を最大化することができ、検出感度を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検出対象金属の形状に関わらずに検出感度を向上させることができ、且つ部品点数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る金属検出装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の好適な一実施形態にかかる金属検出装置1の内部構成を示す斜視図、図2は、図1の金属検出装置1の平面図、図3は、図1の金属検出装置1の正面図である。金属検出装置1は、食品や電子部品等の被検出対象物に含まれる金属片等の磁性体片(被検査物)を検出する装置であり、コア部2とコア部2に巻き付けられたコイル3とコア部2に近接して設けられた永久磁石4とコイル3の両端に接続された検出用回路部5とを備える。ここで、各図において、コア部2の延在方向をY軸方向とし、Y軸及びコア部2の側面に垂直な方向をX軸方向とし、X軸及びY軸に垂直な方向をZ軸方向(所定の方向)とするものとする。
【0014】
コア部2は、YZ平面に平行な面を有するように略矩形平板状をなす3つの磁心2a,2b,2cによって構成され、これらの磁心2a,2b,2cは、コア部2の底面6側において一体化されることにより、ZX平面に沿った断面が略E字状とされている。この磁心2a,2b,2cは、Y軸及びZ軸方向においてほぼ同一の幅を有している。また、コア部2は、Y軸方向に沿って長尺状をなし、磁心2a,2b,2cのそれぞれの+Z軸方向における端部には、XY平面に平行な同一平面上に沿って端面7a,7b,7cが形成されている。すなわち、コア部2は、Z軸方向における一方の端部において、XY平面に平行な平面上において互いに不連続となるような端面7a,7b,7cが形成され、端面7a,7b,7cと反対側の他方の端部において、磁心2a,2b,2cがXY平面に平行な平面に沿って一体化された構造を有する。
【0015】
このようなコア部2の材料としては、透磁率が比較的高く、飽和磁束密度も比較的大きい磁性材料であるケイ素鋼がより好適に用いられるが、その他の材料としては、鉄アルミ合金、センダスト(鉄アルミケイ素合金)や、ニッケル含有量が50%以下の鉄ニッケル合金である低ニッケルパーマロイ等も用いられる。
【0016】
コア部2の3つの磁心2a,2b,2cのうちの中央の磁心2bの周囲には、XY平面に沿ってコイル3が巻き付けられている。そして、コイル3の両端には、コイル3の両端電圧の変化を検出する検出用回路部5が接続され、この検出用回路部5によりコイル3に発生した誘導起電力に基づく両端電圧の時間変化が検出されて、検出用回路部5に接続された外部装置に検出結果が出力される。このような検出用回路部5としては、帰還増幅器等を含む電圧増幅回路が用いられる。
【0017】
永久磁石4は、直方体形状のネオジム磁石等の焼結磁石であり、磁心2aの磁心2cに対して反対側の外側側面8におけるY軸方向の中央部に近接し、かつその上面9が磁心2a,2b,2cの端面7a,7b,7cと同一平面上に位置するように配置されている。この永久磁石4は両磁極を上面9及び底面10上に有し、上面9及び底面10に位置する両磁極が、Z軸方向に沿って位置するように配置されている。
【0018】
このような構成を有する金属検出装置1においては、コア部2の長手方向の中央部の+Z軸方向の前方において、被検出対象物を搬送する搬送路AがX軸方向に沿って設けられている。このような搬送路Aに被検出対象物が搬送されると、被検出対象物に含まれる磁性体片によってコイル3の両端電圧に時間変化が生じ、その時間変化が検出用回路部5によって検出される。
【0019】
次に、金属検出装置1による被検査物の検出の原理について説明する。
【0020】
図4には、被検出対象物に含まれる磁性体片Bが搬送路Aに沿って移動する際におけるコア部2と永久磁石4との間に発生する磁束の分布を示す。図4(a)に示すように、永久磁石4の上面9からZ軸に沿って伸びる磁力線の一部は、上面9の前方においてコア部2の端面7a,7b,7cに向けて曲げられて、大部分は高透磁率の磁心2a,2b,2cのいずれかの端面7a,7b,7cを通ってZ軸に沿って磁心2a,2b,2cを貫く。
【0021】
ここで、磁性体片Bが搬送路Aに沿って永久磁石4の上面9の前方から磁心2aの端面7aの前方に向けて移動すると、上面9の前方の磁束分布に乱れが生じ、磁心2cを貫く磁束の一部が磁心2bの端面7bを貫くように磁束分布が変化する(図4(a))。これにより、コイル3の内側を貫く磁束が増加し、コイル3の両端電圧に時間変化が生じる結果となる。
【0022】
一方、磁性体片Bが搬送路Aに沿って磁心2bの端面7bの前方から磁心2cの端面7cの前方に向けて移動すると、端面7bの前方の磁束分布に乱れが生じ、磁心2bを貫く磁束の一部が磁心2cの端面7cを貫くように変化する(図4(b))。これにより、コイル3の内側を貫く磁束が減少し、コイル3の両端電圧に時間変化が生じる。
【0023】
以上説明した金属検出装置1によれば、永久磁石4の磁極と磁心2a,2b,2cの端面7a,7b,7cとの間に磁束が生じ、永久磁石4が磁心2aの側面に近接配置されることにより、端面7a,7b,7cの前面の磁束密度のX軸方向に沿った磁束の分布が非対称になる結果、X軸方向の磁場勾配が大きく設定される。これは、高透磁率材料からなる磁心2a,2b,2cを用いることで、永久磁石4から出た磁束の大部分が、それぞれの磁心2a,2b,2cの端面7a,7b,7cに集束することに起因する。この端面7a,7bの前方を跨って磁性体片Bが移動すると、永久磁石4と磁心2a,2b,2cとの間の磁束分布に大きな空間的な乱れが生じ、永久磁石4から磁心2bを通る磁束の密度において時間的変動が生じ、磁心2bに巻き付けられたコイル3により磁束密度の変動が検出されることにより磁性体片Bが検知される。一般的には、金属片等の磁性体片のようにごく弱い磁気しか発生しないものを検出する場合においては、高透磁率材料のコアを検出用コイル内に挿入することは、地磁気等の外部磁場の影響により感度を落とす結果に繋がっていた。本実施形態では、永久磁石4と所定形状のコア部2とを近接配置することで、磁束密度の変動値が大きくなり磁性体片の検出感度を効果的に向上させることができる。
【0024】
また、永久磁石4に対してコア部2の磁心2aを挟んでコイル3が巻き付けられた磁心2bを設けることでコイル3の磁気飽和を防止することができ、その結果、磁性体片の検出感度を確実に向上させることができる。
【0025】
さらに、コア部2が長尺状を成しているので、Y軸方向の磁束の分散を抑制でき、端面7a,7b,7cの前面に亘る磁束密度の空間的な変化を大きくすることができるので、検出感度を一層向上させることができる。
【0026】
また、永久磁石4の上面9(磁極の端部)は、端面7a,7b,7cと略同一平面上に位置しているので、永久磁石4及びコア部2の近傍空間の磁束密度を最大化することができ、検出感度を一層向上させることができる。
【0027】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、コア部2の形状としては様々な変形態様を採ることができ、磁心2a,2bのみによって構成されていてもよい(図5)。また、コア部2の端面7a,7b,7c、側面8、底面6等の各面の形状は、平面には限定されず曲面であってもよい。また、永久磁石は磁心2cの側面側にも配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の好適な一実施形態にかかる金属検出装置1の内部構成を示す斜視図である。
【図2】図1の金属検出装置の平面図である。
【図3】図1の金属検出装置の正面図である。
【図4】被検出対象物が搬送路に沿って移動する際における図1のコア部及び永久磁石の間に発生する磁束の分布を示す正面図である。
【図5】本発明の変形例を示す金属検出装置の正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…金属検出装置、2…コア部、3…コイル、2a,2b,2c…磁心、7a,7b,7c…端面、4…永久磁石、5…検出用回路部、8…側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に沿って磁極が位置するように配置された永久磁石と、
前記所定の方向に沿って略板状を成し、前記所定の方向に対して略垂直な第1の端面が形成された第1の磁心、及び、前記所定の方向に沿って略板状を成し、前記第1の端面を含む同一平面上に第2の端面が形成された第2の磁心を有し、前記第1及び第2の磁心が、前記第1及び第2の端面とは反対側の端部において一体化されたコア部と、
前記第2の磁心に巻き付けられたコイルとを備え、
前記永久磁石は、前記第1の磁心の前記第2の磁心に対して反対側の側面に近接して配置されている、
ことを特徴とする金属検出装置。
【請求項2】
前記コア部は、前記所定の方向に沿って略板状を成し、前記第1及び第2の端面を含む同一平面上に第3の端面が形成され、前記第1の磁心と対称になるように前記第3の端面とは反対側の端部において前記第2の磁心と一体化された第3の磁心をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1記載の金属検出装置。
【請求項3】
前記コア部は、高透磁率材料によって形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の金属検出装置。
【請求項4】
前記第1の磁心及び第2の磁心は、前記所定の方向に対して垂直な方向に伸びるように長尺状を成している、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属検出装置。
【請求項5】
前記永久磁石の磁極の端部は、前記第1及び第2の端面と略同一平面上に位置している、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−92599(P2009−92599A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265787(P2007−265787)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(399000030)サン電子株式会社 (1)
【出願人】(392025009)東洋工業有限会社 (1)
【Fターム(参考)】