説明

金属構造体の製造方法および金属構造体

【課題】加工性を向上できる金属構造体の製造方法および金属構造体を提供する。
【解決手段】金属構造体の製造方法は、以下の工程を備えている。基板上にパターン12aを有する樹脂型を形成する。樹脂型のパターン12aを覆うように金属層13を形成する。炭酸ガスレーザを照射することにより、樹脂型を除去する。樹脂型を形成する工程は、基板を被覆するように樹脂層を形成する工程と、樹脂層上に、パターンを有するマスクを配置し、マスクのパターンを介してレーザを照射することにより、樹脂層の一部を除去する工程とを含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属構造体の製造方法および金属構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波診断素子、コンタクトプローブなどの金属構造体の製造方法として、たとえばX線リソグラフィと電鋳およびモールディングとを組み合わせたLIGA(Lithographie Galvanoformung und Abformung)が知られている。このようなLIGA法として、たとえば特開平10−50576号公報(特許文献1)が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示の複合圧電材料の製造方法は、基板上にリソグラフィのための樹脂層を形成する工程と、この樹脂層にパターン形成のためのマスク層を介してシンクロトン放射光(SR)を照射する工程と、樹脂層を現像して露光された部分を除去する工程と、現像によりパターンが形成された樹脂層上に金属材料を堆積させる工程と、樹脂層を除去してパターン形成された樹脂層の形状が金属材料からなる型を得る工程とを備えている。また、特許文献1には、樹脂層を除去する工程では、ウエットエッチングあるいはプラズマエッチングにより除去することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−50576号公報(特許文献1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は鋭意研究の結果、ウエットエッチングあるいはプラズマエッチングにより樹脂層を除去する際に、樹脂層を十分に除去できない場合があることを見出した。樹脂層を十分に除去できない場合には、樹脂層のパターンに形成された金属材料の加工性が悪くなる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、加工性を向上できる金属構造体の製造方法および金属構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、樹脂層を除去する際に樹脂層を十分に除去できる手段について鋭意研究した結果、炭酸ガス(CO2)レーザを用いることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の金属構造体の製造方法は、以下の工程を備えている。基板上にパターンを有する樹脂型を形成する。樹脂型のパターンを覆うように金属層を形成する。炭酸ガスレーザを照射することにより、樹脂型を除去する。
【0009】
本発明の金属構造体の製造方法によれば、炭酸ガスレーザを照射することにより樹脂型を除去している。この炭酸ガスレーザは金属層に与える影響が小さいので、金属構造体となる金属層の特性を維持できる。このため、金属層を維持して樹脂型を十分に除去することができる。したがって、本発明の金属構造体の製造方法は、加工性を向上することができる。
【0010】
上記金属構造体の製造方法において好ましくは、樹脂型を形成する工程は、基板を被覆するように樹脂層を形成する工程と、樹脂層上に、パターンを有するマスクを配置し、マスクのパターンを介してレーザを照射することにより、樹脂層の一部を除去する工程とを含む。
【0011】
当業者であれば、樹脂層の一部を除去するためにレーザを照射すると、一般的には、干渉縞ができることに起因して、所望のパターンを形成することができないと考えられていた。しかし、本発明者は、レーザを用いて樹脂層の一部を除去すると、樹脂型のパターンとなるべき所望のパターンを形成できることを見出した。さらに、レーザを照射することにより樹脂層の一部を除去できるので、上記特許文献1のようにシンクロトン放射光を用いて樹脂層の一部を除去する場合に比べてコストを低減することができる。したがって、加工性を向上できるとともに、コストを低減することができる。
【0012】
上記金属構造体の製造方法において好ましくは、樹脂層の一部を除去する工程では、レーザとして炭酸ガスレーザを用いる。
【0013】
炭酸ガスレーザの波長は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)などの多くの樹脂に対し吸収を持つ。このため、炭酸ガスレーザを用いて樹脂層の一部を除去する場合に、樹脂層の材料を広く選択することができる。
【0014】
上記金属構造体の製造方法において好ましくは、樹脂層の一部を除去する工程は、炭酸ガスレーザを照射する工程と、炭酸ガスレーザを照射する工程後に、ファイバレーザ、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザおよびYVO4(イットリウム・バナデート)レーザの少なくとも1つのレーザを照射する工程とを含む。
【0015】
炭酸ガスレーザの照射後に、ファイバレーザ、YAGレーザおよびYVO4レーザの少なくとも1つのレーザを照射することにより、炭酸ガスレーザにより除去すべき樹脂層の一部が残存した場合であっても、残存した樹脂を効果的に除去することができる。このため、加工性をより向上することができる。
【0016】
上記金属構造体の製造方法において好ましくは、樹脂層の一部を除去する工程では、テレセントリックレンズを用いる。
【0017】
テレセントリックレンズを用いることにより、基板に対する垂直性を高めてレーザを照射することができる。したがって、樹脂層の一部をより精度を向上して除去することができる。
【0018】
上記金属構造体の製造方法において好ましくは、樹脂層の一部を除去する工程は、マスクとなるべき材料を準備する工程と、マスクとなるべき材料にレーザを照射することにより、パターンを有するマスクを形成する工程とを含む。
【0019】
これにより、マスクの製造コストを低減できるので、コストを低減して金属構造体を製造することができる。
【0020】
上記金属構造体の製造方法において好ましくは、樹脂層の一部を除去する工程では、レーザを照射する際に、圧縮空気または酸素ガスをレーザの照射領域に向けて吹き付ける。また上記金属構造体の製造方法において好ましくは、樹脂型を除去する工程では、炭酸ガスレーザを照射する際に、圧縮空気または酸素ガスを炭酸ガスレーザの照射領域に向けて吹き付ける。
【0021】
これにより、樹脂層の一部を除去するためのレーザの照射、または樹脂型を除去するための炭酸ガスレーザの照射により樹脂層が炭素またはその化合物に分解されることで生じる残留物を除去することができる。
【0022】
上記金属構造体の製造方法において好ましくは、樹脂層を形成する工程では、樹脂層としてラミネータフィルムを形成する。
【0023】
ラミネータフィルムは炭酸ガスレーザで除去することが可能な材料であるため、安価なラミネータフィルムを用いることで、コストを低減することができる。またラミネータフィルムは薄いので、炭酸ガスレーザによる干渉縞の発生をより抑制できるので、加工性をより向上できる。
【0024】
本発明の金属構造体は、上記いずれかに記載の金属構造体の製造方法により製造される。本発明の金属構造体によれば、本発明の金属構造体の製造方法により製造されるので、樹脂型を十分に除去できるので、加工性を向上した金属構造体を実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の金属構造体の製造方法および金属構造体によれば、加工性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1における金属構造体を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態2における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態2における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態2における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態2における金属構造体の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0028】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の一実施の形態における金属構造体10について説明する。図1に示すように、本実施の形態における金属構造体10は、板状部10aと、板状部10aから突出した突起部10bとを備えている。板状部10aは、平面形状がたとえば円形または矩形である。突起部10bは、たとえば柱状または針状であり、単数であっても複数であってもよい。
【0029】
金属構造体10は金属材料で構成されていれば特に限定されないが、たとえばニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、金、金合金などからなる。
【0030】
続いて、図2〜図8を参照して、本実施の形態における金属構造体10の製造方法について説明する。
【0031】
まず、図2に示すように、基板11を準備する。基板11の材料は特に限定されないが、たとえばシリコン、銅、ニッケル、ステンレス、クロムなどが挙げられる。
【0032】
次に、図3に示すように、基板11上にレジスト12を形成する。レジスト12の形成方法は特に限定されず、たとえば、コーターやスプレー方式により塗布することができる。レジスト12の材料は特に限定されないが、たとえばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂などの材料からなるフォトレジストなどが挙げられる。
【0033】
次に、図4に示すように、レジスト12の上にパターン14aを有するマスク14を配置し、マスク14を介してレジスト12にX線を照射する。マスク14は、たとえばX線を吸収する材料であるX線マスクである。この露光により、レジスト12にパターン12a(図5参照)を転写する。なお、露光は、X線に限定されず、たとえばUV光を用いてもよい。
【0034】
次に、レジスト12を現像して露光された部分を除去することで、レジスト12にパターン12aを形成する。パターン12aは、貫通していなくてもよいが、貫通していることが好ましい。なお、本実施の形態のレジスト12はポジ型であるが、ネガ型の材料を用いてもよい。これにより、図5に示すように、基板11上にパターン12aを有する樹脂型(レジスト12)を形成することができる。
【0035】
次に、図6に示すように、樹脂型としてのレジスト12のパターン12aを覆うように金属層13を形成する。金属層13は、レジスト12のパターン12aが露出しない程度に形成する。つまり、レジスト12のパターン12aの高さよりも厚くなるように金属層13を形成する。
【0036】
金属層13を形成する方法は特に限定されず、たとえば電解めっき法などを用いることができる。金属層13の材料は特に限定されないが、たとえばニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、金、金合金などを用いることができる。
【0037】
金属層13を形成した後に、金属層13のレジスト12と反対側の表面13aを研磨、切断、研削などにより加工してもよい。
【0038】
次に、図7に示すように、基板11を除去する。基板11を除去する方法は特に限定されないが、ウエットエッチングなどを用いることができる。
【0039】
次に、図8に示すように、炭酸ガスレーザを照射することにより、樹脂型としてのレジスト12を除去する。炭酸ガスレーザは、レジスト12に対し吸収可能な波長であることが好ましく、吸収が大きい観点から波長が9.3μm程度の波長であることがより好ましい。
【0040】
またこの工程では、炭酸ガスレーザを照射する際に、圧縮空気または酸素ガスを炭酸ガスレーザの照射領域に向けて吹き付けることが好ましい。炭酸ガスレーザの照射領域とは、本実施の形態では、炭酸ガスレーザが照射されるレジスト12である。炭酸ガスレーザ照射時に圧縮空気または酸素ガスを吹き付けることで、炭酸ガスレーザによって炭素またはその化合物に分解された残留物を炭酸ガスに変えて除去することができる。同時に酸化熱も発生するため低出力でのレーザ照射でレジスト12の除去が可能となる。
【0041】
また炭酸ガスレーザを照射する際に、テレセントリックレンズを用いてもよい。この場合、炭酸ガスレーザをレジスト12に対して垂直度を高めて照射することができるため、効率よくレジスト12を除去できる。このため、レジスト12の厚みが大きい場合に特に効果的である。
【0042】
なお、金属構造体10となる金属層13への熱ダメージの懸念がある場合には、レーザスキャン速度を上げる等の方策をとってもよい。
【0043】
また、レジスト12の除去が十分でないと判断される場合には、炭酸ガスレーザの照射後に、ファイバレーザ、YAGレーザおよびYVO4レーザの少なくとも1つのレーザを照射する。この場合、レジスト12の除去をより効果的にすることができる。
【0044】
上述した工程を実施することにより、図1に示す金属構造体10を製造することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態における金属構造体10の製造方法によれば基板11上にパターン12aを有する樹脂型としてのレジスト12を形成する工程と、レジスト12のパターン12aを覆うように金属層13を形成する工程と、炭酸ガスレーザを照射することにより、レジスト12を除去する工程とを備えている。
【0046】
本実施の形態における金属構造体10の製造方法によれば、炭酸ガスレーザを照射することによりレジスト12を十分に除去できる。また、炭酸ガスレーザは金属層13に与える影響が小さいので、金属構造体となる金属層13の特性を維持できる。このように、金属層13のみを残してレジスト12を選択的に除去できるので、金属構造体10に残留するレジスト12を低減できるため、加工性を向上することができる。
【0047】
また、炭酸ガスレーザにより樹脂型を除去すると、プラズマにより樹脂型を除去する場合に比べて、除去する際に発生する熱を低減できるので、温度上昇を低減することができる。
【0048】
本実施の形態の製造方法により製造される金属構造体10は加工性を向上できるので、微細な金属構造体であるコンタクトプローブや超音波診断素子、金型などを高い精度で製造することができる。つまり、本実施の形態における金属構造体10の製造方法は微細金属構造体に好適に用いられる。
【0049】
(実施の形態2)
本実施の形態の金属構造体は、実施の形態1の図1に示す金属構造体10と同様である。
【0050】
本実施の形態の金属構造体の製造方法は、基本的には実施の形態1の金属構造体の製造方法と同様の構成を備えているが、樹脂型を形成する工程において異なる。具体的には以下の通りである。
【0051】
まず、実施の形態1と同様に、図2に示す基板11を準備する。
次に、図9に示すように、基板11上に膜21を形成する。膜21の形成方法は特に限定されず、たとえばスパッタ法などの成膜法により形成してもよく、金属薄膜を載せることで形成してもよい。膜21の材料は、たとえばチタン、クロムなどの金属や、紙などを用いることができる。膜21を用いることにより、後述する基板11を樹脂層22から除去する工程において、基板11と樹脂層22とを容易に分離することができる。また、膜21として金属膜を用いる場合には、後述する樹脂型に金属層を形成する工程において、電界めっきを用いることができる。なお、この工程は省略されてもよい。
【0052】
次に、図10に示すように、膜21を被覆するように樹脂層22を形成する。樹脂層22は膜21の全体を被覆し、樹脂層22が形成される側から見て、膜21および基板11は露出していない。
【0053】
樹脂層22の形成方法は特に限定されないが、たとえば樹脂層22としてラミネートフィルムを用いることができる。詳細には、膜21が形成された基板11上にラミネートフィルムを配置し、あるいは膜21が形成された基板11を2枚のラミネートフィルムで挟み込み、ラミネートフィルムを加熱し、基板11とラミネートフィルムとを接着する。なお、ラミネートフィルムとは、ベースフィルムと糊材とが積層された構造である。ベースフィルムは、たとえばPET、PVCなどが用いられ、糊材は、たとえばポリ酢酸ビニルなどの熱可塑性樹脂が用いられる。
【0054】
なお、2枚のラミネートフィルムで基板11を挟む場合(図示せず)には、膜21が形成される面と反対側の面と、基板11との間に、金属膜等を乗せて置く等、最終的にラミネートフィルムを基板11から容易に剥離できる状態にしておくことが好ましい。
【0055】
次に、図11に示すように、樹脂層22上に、パターン23aを有するマスク23を配置する。マスクは、たとえば金属ステンシルマスクを用いる。パターン23aは貫通していることが好ましい。
【0056】
この工程では、マスクとなるべき材料を準備し、このマスクとなるべき材料にレーザを照射することにより、パターン23aを有するマスク23を形成することが好ましい。言い換えると、レーザを照射することによりパターン23aを有するマスク23を形成することが好ましい。さらに言い換えると、マスクを構成する金属に吸収を持つ波長のレーザを照射することで、パターン23aを有するマスク23を形成することが好ましい。マスクとなるべき材料は、たとえば金属薄膜が挙げられ、レーザとしてはたとえばファイバレーザが挙げられる。この場合、コストを低減できる。
【0057】
次に、図12に示すように、マスク23のパターン23aを介して(マスク23の上方から)レーザを照射することにより、図13に示すように、樹脂層22の一部を除去する。樹脂層22の一部は、樹脂型のパターン(開口部)となるべき領域である。
【0058】
レーザとしては、炭酸ガスレーザを用いることが好ましく、9.3μm程度の波長を有する炭酸ガスレーザを用いることがより好ましい。
【0059】
この工程では、炭酸ガスレーザを照射した後に、ファイバレーザ、YAGレーザおよびYVO4レーザの少なくとも1つのレーザを照射することが好ましい。炭酸ガスレーザの照射のみでは、数μm程度、基板11上に樹脂層22が残る場合がある。しかし、炭酸ガスレーザの照射後に、ファイバレーザ、YAGおよびYVO4レーザの少なくとも1つのレーザを照射することで、下地の膜21を多少除去することにはなるが、実質的に完全に樹脂層22のパターン22aとなるべき領域を除去できるという知見を本発明者は得ている。このため、炭酸ガスレーザにより樹脂残渣が生じた場合には、この樹脂残渣を除去できる。
【0060】
レーザを照射する際には、圧縮空気または酸素ガスをレーザの照射領域に向けて吹き付けることが好ましい。レーザの照射領域とは、本実施の形態では、レーザが照射される樹脂層22である。この場合、レーザ照射周辺の炭化物付着を抑制できる。
【0061】
また、テレセントリックレンズを通してレーザを照射することが好ましい。つまり、テレセントリックレンズを用いることが好ましい。fθレンズをテレセントリックレンズにすることで、範囲の広いスキャンにおいても照射によって得られる樹脂層22の孔(パターン22a)の側面について、基板11の表面に対して垂直性を高めることができる。
【0062】
次に、図14に示すように、マスク23を取り外す。これにより、基板11上にパターン22aを有する樹脂型としての樹脂層22を形成することができる。
【0063】
次に、図15に示すように、樹脂型としての樹脂層22のパターン22aを覆うように金属層13を形成する。この工程は、実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0064】
次に、図16に示すように、基板11および膜21を除去する。基板11の除去方法は、実施の形態1と同様である。膜21がラミネータフィルムで挟まれている場合、つまり、膜21が基板11および樹脂層22に接着していない場合には、基板11を除去すると、膜21も除去できる。膜21が基板11に接着している場合には、たとえばウエットエッチングなどにより膜21を除去できる。
【0065】
次に、図17に示すように、炭酸ガスレーザを照射することにより、樹脂型としての樹脂層22を除去する。この工程は、実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0066】
上述した工程を実施することにより、図1に示す金属構造体10を製造することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態における金属構造体10の製造方法は、樹脂型としての樹脂層22を形成する工程では、樹脂層22上に、パターン23aを有するマスク23を配置し、マスク23のパターン23aを介してレーザを照射することにより、樹脂層22の一部を除去する。
【0068】
本実施の形態における金属構造体10の製造方法によれば、レーザを照射することにより樹脂層22の一部(樹脂型のパターンとなる領域)を除去できるので、シンクロトン放射光を用いて樹脂層の一部を除去する場合に比べてコストを低減することができる。また、露光工程を省略できるので、製造プロセスを簡略にすることができる。したがって、加工性を向上でき、かつコストを低減することができ、かつ製造プロセスを簡略化できる。
【0069】
本実施の形態における金属構造体10の製造方法において好ましくは、樹脂層22としてラミネートフィルムを形成する。熱可塑性樹脂を含んだラミネートフィルムは、汎用的な材料であるため安価に入手可能である。従来のLIGA等ではアクリル樹脂と基板11とを接着するためにアクリル樹脂を液状またはアクリル樹脂に接着材塗付等の工夫が必要であった。しかし、市販のラミネータフィルムは接着剤となる熱可塑性樹脂が含まれているため、基板11上に容易に樹脂層22を形成することができる。またラミネートフィルムは厚みが小さいため、レーザの干渉縞ができる前に樹脂型を除去できる。このため、ラミネートフィルムは炭酸ガスレーザで除去可能な材料であることから、本実施の形態の樹脂層22として好適に使用することができる。
【実施例】
【0070】
本実施例では、炭酸ガスレーザを照射することにより、樹脂型を除去する工程を備えることによる効果について調べた。
【0071】
(実施例1)
実施例1の金属構造体の製造方法は、実施の形態2にしたがった。具体的には、まず、図2に示すように、基板11として、3インチの直径を有し、かつ1mmの高さを有するSi基板を準備した。
【0072】
次に、図9に示すように、基板11上に、2μmの厚さを有するニラコ製のチタン箔を乗せることで、膜21を形成した。
【0073】
次に、PETからなるベースフィルムに、ポリ酢酸ビニルが付着され、かつ100μmの厚さを有するラミネートフィルムを2枚準備し、膜21が形成された基板11を2枚のラミネートフィルム間に挟み込み、ラミネートフィルムにより加熱付着させた。ラミネートフィルムの熱可塑性樹脂により、Ti膜付きSi基板を挟み込んだ状態で付着された。これにより、基板11を被覆するように樹脂層22を形成した。
【0074】
次に、図11に示すように、樹脂層22上に、パターン23aを有するマスク23を配置し、図12に示すように、マスク23のパターン23aを介してレーザを照射することにより、図13に示すように、樹脂層22の一部を除去した。詳細には、30μmの厚さを有するNi薄膜に、ファイバレーザで照射して、孔径34μmで、孔間隔52μmの貫通パターニングを作ることにより、金属ステンシルマスクを形成した。この金属ステンシルマスクを樹脂層22上に配置した。出力20W、波長9.3μmの炭酸ガスレーザを用い、金属ステンシルマスクの上面より、ガルバノスキャナ走査しワーキングディスタンス185mmのfθレンズを通してステンシルマスク上面を90μmステップ、スキャン速度100mm/秒にて5〜250回重ね照射した。この時、アシストガスとして圧縮空気または酸素ガスを用いることで照射周辺の炭化物付着を少なくできた。またfθレンズをテレセントリックレンズにすることで、範囲の広いスキャンにおいても照射によって得られる樹脂層22の孔(パターン22a)の側面が、基板11の表面に対して垂直に得られた。
【0075】
その後、出力25W、波長1.06μmのファイバレーザを用いて、ガルバノスキャナ走査で上記炭酸ガスレーザを照射した面を1〜10回照射スキャンした。これにより、炭酸ガスレーザで除去できなかった基板11上に形成された樹脂層22のパターン22aの樹脂残渣を除去することができた。
【0076】
次に、ステンシルマスクを樹脂層22から取り外し、給電用電極面形成のため上記で形成したパターンとは異なる部分である基板端5mm角程度の範囲で炭酸ガスレーザおよびファイバレーザを照射することで、樹脂層22の一部を除去した。この後、アルコールにて炭化物残渣を取り除いた。
【0077】
次に、図15に示すように、樹脂型のパターンを覆うように金属層13を形成した。詳細には、給電電極面にめっき用配線をクリップにて取り付け、金属構造体とする20mm角以外の範囲にテフロン(登録商標)テープでマスキングを行った。スルファミン酸ニッケルを主成分とするニッケルめっき液に図14の試料を入れ、電界めっきにて金属層13が厚さ3mm程度になるまでめっき成長を行なった。めっき後、めっき部分(金属層13)が20mm角×3mm高さになるように、切断および研磨にて成形した。
【0078】
次に、図16に示すように、水酸化カリウム水溶液を用いて基板11をエッチングにより除去した。これにより、膜21も同時に除去した。
【0079】
ここで、ラミネート樹脂等を用いることで樹脂層22がパターン形成面とは反対の基板11にも形成されている場合には、基板11のエッチング前に樹脂層を剥離するか、炭酸ガスレーザの照射などにより除去しておく。
【0080】
次に、図17に示すように、炭酸ガスレーザを照射することにより、樹脂型としてのパターニングされたラミネータ樹脂を除去した。
【0081】
以上の工程を実施することにより、図1に示す金属構造体10を製造した。実施例1の金属構造体10は、Niよりなり、板状部10aと、柱状の複数の突起部10bとを備えていた。板状部10aは、3インチの直径L1と、100μmの高さL2とを有していた。突起部10bは、34μmの直径L3と、100μmの高さL4とを有していた。隣り合う突起部10bの間隔L5は52μmであった。実施例1の金属構造体10は、加工性が向上されており、内視鏡などに好適に用いられることがわかった。
【0082】
(実施例2)
実施例2の金属構造体の製造方法は、基本的には実施例1の金属構造体の製造方法と同様の構成を備えていたが、ステンシルマスクのパターンおよび金属層を形成する工程において異なっていた。
【0083】
詳細には、ステンシルマスクのパターンは、幅が100μmの微細ピン形状とした。
金属層を形成する工程では、給電電極面にめっき用配線をクリップにて取り付けた後、スルファミン酸ニッケルを主成分とするニッケルめっき液に試料を入れ、電界めっきにて厚さ150μm程度になるまでめっき成長を行った。めっき後、めっき厚さが100μmになるまで研磨にて成形した。
【0084】
このように製造された実施例2の金属構造体10は、Niよりなり、板状部10aと、針状の複数の突起部10bとを備えていた。板状部10aは、3インチの直径L1と、100μmの高さL2とを有していた。突起部10bは、180μmの直径L3と、150μmの高さL4とを有していた。隣り合う突起部10bの間隔L5は60μmであった。実施例2の金属構造体10は、加工性が向上されており、コンタクトプローブなどに好適に用いられることがわかった。
【0085】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
10 金属構造体、10a 板状部、10b 突起部、11 基板、12 レジスト、12a、14a、22a、23a パターン、13 金属層、13a 表面、21 膜、14、23 マスク、22 樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にパターンを有する樹脂型を形成する工程と、
前記樹脂型の前記パターンを覆うように金属層を形成する工程と、
炭酸ガスレーザを照射することにより、前記樹脂型を除去する工程とを備えた、金属構造体の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂型を形成する工程は、
前記基板を被覆するように樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層上に、パターンを有するマスクを配置し、前記マスクのパターンを介してレーザを照射することにより、前記樹脂層の一部を除去する工程とを含む、請求項1に記載の金属構造体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層の一部を除去する工程では、前記レーザとして炭酸ガスレーザを用いる、請求項2に記載の金属構造体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層の一部を除去する工程は、
炭酸ガスレーザを照射する工程と、
前記炭酸ガスレーザを照射する工程後に、ファイバレーザ、YAGレーザおよびYVO4レーザの少なくとも1つのレーザを照射する工程とを含む、請求項3に記載の金属構造体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層の一部を除去する工程では、テレセントリックレンズを用いる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の金属構造体の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂層の一部を除去する工程は、
前記マスクとなるべき材料を準備する工程と、
前記マスクとなるべき材料にレーザを照射することにより、前記パターンを有するマスクを形成する工程とを含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の金属構造体の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂層の一部を除去する工程では、前記レーザを照射する際に、圧縮空気または酸素ガスを前記レーザの照射領域に向けて吹き付ける、請求項2〜6のいずれか1項に記載の金属構造体の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂型を除去する工程では、前記炭酸ガスレーザを照射する際に、圧縮空気または酸素ガスを前記炭酸ガスレーザの照射領域に向けて吹き付ける、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属構造体の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂層を形成する工程では、前記樹脂層としてラミネートフィルムを形成する、請求項2〜8のいずれか1項に記載の金属構造体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の金属構造体の製造方法により製造された、金属構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−91443(P2012−91443A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241997(P2010−241997)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】