説明

金属溶湯攪拌体用フランジ継手

【課題】長時間又は長期間使用した際でもシャフトから容易に外すことができ、シャフトを破損させるおそれのない金属溶湯攪拌体用フランジ継手を提供する。
【解決手段】本発明の金属溶湯攪拌体用フランジ継手1は、金属溶湯撹拌体2のシャフト21の上端側周面を挟み込み可能な円筒状の支持部11と、支持部11の上端から外方に水平状に張り出した円形状の張出部12とを備えた、右側部1aと左側部1bとからなる左右二つ割り形状にしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムなどの金属溶湯の脱ガス処理をするために用いる金属溶湯攪拌体のシャフトと駆動部とを接続するフランジ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム、アルミニウム合金などの金属溶湯は、溶湯中のガスや不純物を取り除くために溶湯を撹拌しながら不活性ガスを吹き込むことにより脱ガス処理を行う。
例えば、特許文献1には、モーターに撹拌軸を接続し、その軸の下端に撹拌翼を設けたアルミニウム溶湯撹拌用治具が記載されており、モーターを駆動することにより、アルミニウム溶湯に浸漬した撹拌翼が回転し、溶湯を撹拌できるものである。
【0003】
また、特許文献2には、回転駆動機構の回転軸にシャフトを接続し、そのシャフトの下端にローターを設けた溶湯金属撹拌用回転体が記載されており、回転駆動機構を駆動することにより、溶湯金属に浸漬したローターが回転し、溶湯を撹拌できるものである。
【0004】
このような金属溶湯撹拌用回転体(アルミニウム溶湯撹拌用治具)は、シャフト(撹拌軸)と回転駆動機構(モーター)とをフランジ継手などを用いて接続することが行われている。そして、シャフトとフランジ継手は、例えば、双方にねじ加工をして締結することにより接続してある(特許文献2の段落[0024]など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−73700号公報
【特許文献2】特開2008−105084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シャフトは耐熱性、耐食性及び耐摩耗性を考慮してセラミックスで作製し、フランジ継手は耐久性を考慮して金属で作製することが多い。このような場合、シャフト及びフランジ継手をねじにより締結すると、長時間又は長期間使用した際、ローターの回転にともない双方のねじ部分が徐々に噛み込んでいき外すことができなくなることがあった。そのようになると、メンテナンスができなくなり、無理に外そうとすると破損に至っていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、長時間又は長期間使用した際でもシャフトから容易に外すことができ、シャフトを破損させるおそれのない金属溶湯攪拌体用フランジ継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属溶湯攪拌体用フランジ継手は、金属溶湯撹拌体のシャフトの上端側周面を挟み込み可能な円筒状の支持部と、支持部の上端から外方に水平状に張り出した張出部とを備えた左右二つ割り形状にしたことを特徴とする。
【0009】
本発明の金属溶湯攪拌体用フランジ継手は、シャフトを挟み込むことができる左右二つ割り形状にしたことにより、ねじ加工した場合のように、双方の熱膨張差によりねじ部分が噛み込むことがなく容易に取り外すことができる。また、取り外す際にシャフトに負荷がかからないのでシャフトが破損するおそれもないものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の金属溶湯攪拌体用フランジ継手を用いた脱ガス装置を示した断面図である。
【図2】図1のフランジ継手を示した分解斜視図である。
【図3】図1のフランジ継手の半分部分を示した斜視図である。
【図4】図1のフランジ継手付近を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、金属溶湯攪拌体用フランジ継手の一実施形態に基づいて説明する。
【0012】
本発明の一実施形態の金属溶湯攪拌体用フランジ継手1は、図1に示すように、金属溶湯撹拌体2と、それを回転させる駆動部3とを接続するものである。
【0013】
撹拌体2は、シャフト21と撹拌羽根22を備えており、従来からあるものを用いることができる。本実施形態では、シャフト21を円筒状に形成し、その下端側に円盤状の撹拌羽根22を設けてあるものを用いている。これらは、特に限定するものではないが、窒化珪素系セラミックス、サイアロン系セラミックス、炭化珪素系セラミックス、カーボンセラミックス、カーボン、チタン酸アルミなどの材質から形成したものを用いることができる。
【0014】
フランジ継手1は、SUS304等のステンレスあるいはS25C等の炭素鋼などの金属からなり、図2に示すように、右側部1aと左側部1bとの左右に二つ割りできるように形成してあり、これらを結合してフランジ継手1にすることができる。本実施形態では、右側部1aと左側部1bとは、同一形状に形成してある。
【0015】
右側部1a(左側部1b)は、図3に示すように、縦方向に伸びる半円筒状部分11a(11b)と、その上端部から外方に水平状に張り出した半円状部分12a(12b)と、半円筒状部分11a(11b)の両長手端部から外方に半円状部分12a(12b)の端部に沿い張り出した矩形板状部分13a(13b)と、を備えた形状としてある。
右側部1aの矩形板状部分13aと左側部1bの矩形板状部分13bとを重ね合わせて結合して、図2又は図4に示すように、フランジ継手1を形成することができ、半円筒状部分11a(11b)が円筒状の支持部11となり、半円状部分12a(12b)が円形状の張出部12となり、矩形板状部分13a(13b)が矩形板状の結合部13となる。
【0016】
支持部11は、図2に示すように、その中にシャフト21の上端側周面を挟み込み、シャフト21を固定できるようにしてある。そのため、支持部11の内径は、シャフト21の外径と略同じ或いはそれよりも大に形成するのが好ましい。
【0017】
張出部12の面上には、周方向に円孔14が複数設けてあり、駆動部3のフランジ継手31と接続できるようにしてある。
【0018】
結合部13の面上には、縦方向に円孔15が複数設けてあり、右側部1aと左側部1bとを向かい合わせ、矩形板状部分13a(13b)同士を重ね、この円孔15にねじやボルトなどの締結部材を挿し通して締結し、これらを結合できるようにしてある。
【0019】
駆動部3は、図1又は図4に示すように、撹拌体2を回転させることができるようにモーターなどを備えたものであり、その下部に張出部12と重ね合わせて接続する円形状のフランジ継手31が形成してある。フランジ継手31の面上には張出部12の円孔14と対応する位置に円孔32が設けてあり、この円孔32を、張出部12の円孔14とを連通するように向かい合わせ、ここにねじやボルトなどの締結部材を挿し通して締結し、フランジ継手1,31同士を接合できるようにしてある。
【0020】
金属溶湯攪拌体用フランジ継手1は、金属溶湯の脱ガス処理を長時間又は長期間行っても、ねじ加工を施した場合のように熱膨張差によりねじ部分が噛み込み外れなくなるおそれがなく、また、取り外す際にシャフト21に負荷がかからないのでシャフト21が破損するおそれもない。
【0021】
上記実施形態では、右側部1aと左側部1bとを同一形状としてあるが、これに限定するものではなく、左右対称形状にしてもよく、左右が非対称の形状でもよい。
【0022】
上記実施形態の構成態様は、本発明を限定するものとして挙げたものではなく、技術目的を共通にするかぎり変更は可能であり、本発明はそのような変更を含むものである。
【符号の説明】
【0023】
1金属溶湯攪拌体用フランジ
1a右側部
1b左側部
11支持部
12張出部
13結合部
2撹拌体
21シャフト
22攪拌羽根
3駆動部
31フランジ継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯撹拌体のシャフトの上端側周面を挟み込み可能な円筒状の支持部と、支持部の上端から外方に水平状に張り出した張出部とを備えた、左右二つ割り形状にした金属溶湯撹拌体用フランジ継手。
【請求項2】
左右を同一形状にした請求項1に記載の金属溶湯撹拌体用フランジ継手。
【請求項3】
半分の形状を、半円筒状部分と、その上端部から外方に水平状に張り出した半円状部分と、半円筒状部分の両長手端部から外方に半円状部分の端部に沿い張り出した矩形板状部分と、を備えた形状とした請求項2に記載の金属溶湯撹拌体用フランジ継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−86262(P2012−86262A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237332(P2010−237332)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】