説明

金属積層形ガスケット

【課題】シリンダブロック内にシリンダライナーを嵌着することにより構成したエンジンのための金属積層形ガスケットを、エンジンの高性能化に伴うシリンダライナーの複雑な動きに追従できるように構成する。
【解決手段】シリンダブロック20内にシリンダライナー21を嵌着したエンジンのための金属積層形ガスケット1であって、複数の金属板11,12を積層することにより形成され、シリンダブロック20とヘッドブロック22との間に挟持される第1の積層部2と、シリンダライナーとヘッドブロックとの間に挟持される第2の積層部3との間に、それらの積層部よりも薄厚の連接部4を設け、該連接部に、上記第2の積層部をシリンダライナー21の動きに追従させるためのダンパービード5を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロック内にシリンダライナーを嵌着することにより構成したエンジンのための金属積層形ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンダブロック内にシリンダライナーを嵌着することにより構成したエンジンにおいては、エンジンの高性能化に伴ってシリンダライナーが複雑な動きを行い、ヘッドブロックもその影響を受けるため、シリンダヘッドガスケットもその複雑な動きにできるだけ追従させる必要が生じている。
【0003】
更に具体的に説明すると、例えば、特許文献1に開示されているようなガスケット、即ち、図2に示すように、第1の金属板31を燃焼室穴35の穴縁で折返してシール部42を形成すると共に、上記第1の金属板31に、第2の金属板32を積層したガスケットにおいては、上記シール部42と第1及び第2の金属板31,32の積層部41との間に、第1の金属板31だけによって形成される連接部44が存在し、この連接部44をシリンダブロックとシリンダライナーとの間に位置させて該ガスケットをシリンダブロックとヘッドブロックとの間に装着すると、シリンダライナーの複雑な動きにある程度追従させることができる。
【0004】
しかしながら、シリンダブロックに対してシリンダライナーがその軸線方向に複雑な動きを行うと、上記連接部44にはそれを図2の左右方向に伸縮させる力が作用し、図示したように第1の金属板31におけるシール部42にビード31aを設けていても、該ビード31aはシールのためにシリンダライナーとシリンダヘッドとの間で強圧されているので、上記力に対して緩衝的に作用できず、また、それが緩衝的な作用を行った場合にはシール部42におけるシール機能を低下させることになる。
【0005】
【特許文献1】特許第3113642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、シリンダブロック内にシリンダライナーを嵌着することにより構成したエンジンのための金属積層形ガスケットを、エンジンの高性能化に伴うシリンダライナーの複雑な動きに追従できるように構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の金属積層形ガスケットは、シリンダブロック内にシリンダライナーを嵌着することにより構成したエンジンのための金属積層形ガスケットであって、複数の金属板を積層することにより形成され、シリンダブロックとヘッドブロックとの間に挟持される第1の積層部と、シリンダライナーとヘッドブロックとの間に挟持される第2の積層部との間に、それらの積層部よりも薄厚の連接部が形成され、該連接部に、上記第2の積層部をシリンダライナーの動きに追従させるためのダンパービードを形成したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る金属積層形ガスケットの好ましい実施形態においては、第1の金属板を燃焼室穴の穴縁で折返すことにより上記第2の積層部を形成すると共に、上記第1の金属板に、上記第2の積層部との間に上記連接部を介在させて少なくとも1枚の第2の金属板を積層することにより第1の積層部を形成し、また、上記第1の金属板における燃焼室穴の穴縁での折返し部分に、厚さ調整用のシムが挟着される。
【0009】
本発明に係る金属積層形ガスケットの他の好ましい実施形態においては、上記連接部におけるダンパービードが、シリンダライナーを含むシリンダブロックとヘッドブロックとの間においてそれらの締付け力が作用しない形状のビードによって形成され、また、第1の金属板の上記連接部に設けるダンパービードが、該第1の金属板に積層する第2の金属板側に突出し、且つ、該第2の金属板の厚さよりも低いビードによって形成される。
【0010】
上記構成を有する金属積層形ガスケットにおいては、上記連接部にダンパービードを設け、該ダンパービードが、シリンダライナーを含むシリンダブロックとヘッドブロックとの締付け時に、それらの間で圧縮されないようにしているので、該ダンパービードの動きが上記締付けにより拘束されるようなことがなく、そのため、シリンダライナーが複雑な動きを行うことがあっても、該シリンダライナーに挟持された第2の積層部が該シリンダライナーの動きによく追従し、シール機能が低下するようなこともない。
また、上記第1の金属板におけるダンパービードは、シリンダブロックとヘッドブロックとの締付け時にそれらで圧縮されないため、上記ダンパービードを設けても、ガスケットの締付け時に、それを設けていない場合と同様の締付けを行えばよく、該ダンパービードの有無によって締付け力を調整したりする必要もない。
【発明の効果】
【0011】
以上に詳述した本発明の金属積層形ガスケットによれば、シリンダブロック内にシリンダライナーを嵌着することにより構成したエンジンのための金属積層形ガスケットを、エンジンの高性能化に伴うシリンダライナーの複雑な動きに対しても追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る金属積層形ガスケットの実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る金属積層形ガスケットをエンジンに装着する態様を模式的に示すもので、シリンダボアに近接する位置を拡大断面によって示している。
この金属積層形ガスケット1は、シリンダブロック20内にシリンダライナー21を嵌着することにより構成されるエンジンのための金属積層形ガスケットであって、一般的には、複数の金属板を積層することにより形成されるが、ここでは、第1の金属板11、第2の金属板12及び厚さ調整用のシム13によって構成する場合を例示している。
【0013】
上記金属積層形ガスケット1においては、シリンダブロック20とヘッドブロック22との間に挟持される第1の積層部2と、シリンダライナー21とヘッドブロック22との間に挟持される第2の積層部3との間に、それらの積層部2,3よりも薄厚の連接部4が形成され、該連接部4に、上記第2の積層部3をシリンダライナー21の動きに追従させるためのダンパービード5を形成している。
【0014】
更に具体的に説明すると、上記金属積層形ガスケット1は、第1の金属板11を燃焼室穴15の穴縁で折返すことにより上記第2の積層部3を形成すると共に、上記第1の金属板11に、上記第2の積層部3との間に上記連接部4を介在させて少なくとも1枚の第2の金属板12を積層することにより、第1の積層部2を形成し、また、上記第1の金属板11における燃焼室穴15の穴縁での折返し部分11aに、厚さ調整用のシム13が挟着されている。なお、13aはシム13に設けたシールビードを示している。
【0015】
上記連接部4におけるダンパービード5は、シリンダライナー21を含むシリンダブロック20とヘッドブロック22との間において、それらの締付け力が作用しない形状のビードによって形成され、具体的に、該ダンパービード5は、第1の金属板11に、それに積層する第2の金属板12側に突出し、且つ、該第2の金属板12の厚さよりも低いビードによって形成され、結果的に、ヘッドブロック22の締付け時に他の金属板やシリンダブロック20、シリンダライナー21等に接触しないようにしている。
【0016】
上記構成を有する金属積層形ガスケット1においては、上記連接部4にダンパービード5を設け、該ダンパービード5が、シリンダライナー21を含むシリンダブロック20とヘッドブロック22との締付け時に、それらの間で圧縮されないようにしているので、該ダンパービード5の動きが上記締付けにより拘束されるようなことがなく、そのため、シリンダライナー21が複雑な動きを行うことがあっても、該シリンダライナー21に挟持された第2の積層部3が該シリンダライナー21の動きによく追従し、シール機能が低下するようなこともない。
【0017】
また、上記第1の金属板11におけるダンパービード5は、シリンダブロック20とヘッドブロック22との締付け時にそれらで圧縮されないため、上記ダンパービード5を設けても、ガスケットの締付け時に、それを設けていない場合と同様の力で締付けを行えばよく、該ダンパービード5の有無によって締付け力を調整したりする必要もなく、ヘッドブロック22が締付け不足になることもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る金属積層形ガスケットをエンジンに装着する態様(ヘッドブロックの未圧縮状態)を模式的に示す要部拡大縦断面図である。
【図2】公知の金属積層形ガスケットの要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 金属積層形ガスケット
2 第1の積層部
3 第2の積層部
4 連接部
5 ダンパービード
11 第1の金属板11
12 第2の金属板
13 シム
15 燃焼室穴
20 シリンダブロック
21 シリンダライナー
22 ヘッドブロック



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック内にシリンダライナーを嵌着することにより構成したエンジンのための金属積層形ガスケットであって、
複数の金属板を積層することにより形成され、シリンダブロックとヘッドブロックとの間に挟持される第1の積層部と、シリンダライナーとヘッドブロックとの間に挟持される第2の積層部との間に、それらの積層部よりも薄厚の連接部が形成され、
該連接部に、上記第2の積層部をシリンダライナーの動きに追従させるためのダンパービードを形成した、
ことを特徴とする金属積層形ガスケット。
【請求項2】
第1の金属板を、燃焼室穴の穴縁で折返すことにより上記第2の積層部を形成すると共に、上記第1の金属板に、上記第2の積層部との間に上記連接部を介在させて少なくとも1枚の第2の金属板を積層することにより第1の積層部を形成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の金属積層形ガスケット。
【請求項3】
第1の金属板における燃焼室穴の穴縁での折返し部分に、厚さ調整用のシムを挟着させた、
ことを特徴とする請求項2に記載の金属積層形ガスケット。
【請求項4】
上記連接部におけるダンパービードを、シリンダライナーを含むシリンダブロックとヘッドブロックとの間においてそれらの締付け力が作用しない形状のビードによって形成した、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属積層形ガスケット。
【請求項5】
第1の金属板の上記連接部に設けるダンパービードを、該第1の金属板に積層する第2の金属板側に突出し、且つ、該第2の金属板の厚さよりも低いビードによって形成した、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の金属積層形ガスケット。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−92532(P2007−92532A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279293(P2005−279293)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000198237)石川ガスケット株式会社 (57)
【Fターム(参考)】