説明

金属箔溶接方法、金属箔溶接装置、および可撓性樹脂金属箔積層体製造装置

【課題】互いに重ねられた金属箔間の隙間が解消された状態で溶接可能な金属箔溶接方法および金属箔溶接装置、その金属箔溶接装置を備えた可撓性樹脂金属箔積層体製造装置を提供する。
【解決手段】重ねて配置された複数枚の銅箔12上に向かって圧力気体を局所的に噴射しつつ一方向Yに相対移動することによりその圧力気体による圧迫される部位を一方向Yへ相対移動させ、前記銅箔12上において前記圧力気体の噴射により圧迫されている部位に向かってレーザ光Lを照射しつつそのレーザ光Lの照射位置を一方向Yへ移動させることにより複数枚の銅箔12を相互に溶接することから、圧力気体の噴射により圧迫されている互いに重ねられた銅箔12間が密着させられた状態でレーザ光Lが照射されるので、高い溶接品質が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔を互いに重ねられた状態で溶接するための金属箔溶接方法および金属箔溶接装置、その金属箔溶接装置を備えた可撓性樹脂金属箔積層体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに重ねられた複数の金属箔を相互に溶接するに際しては、金属箔間の隙間を可及的に少なくすることが、溶接強度を維持する上で重要な事項である。このため、特許文献1に示すように、被溶接物である重畳した金属箔の一方の面を所定の間隔で配設した2つの接触部材で押圧して金属箔の間を狭めながら、2つの接触部材の間に配設した光学ユニットの出力レンズからレーザ光を照射して金属箔を相互に溶接することが提案されている。また、特許文献2に示されるように、互いに重ねられた金属箔を下側ローラと上側ローラとの間に挟圧して金属箔の間の隙間を狭めながら、互いに重ねられた金属箔の上側ローラからはずれた位置に光学ユニットからレーザ光を照射して溶接することが提案されている。
【特許文献1】特開昭62−227591号公報
【特許文献2】実開平5−28578号公報
【0003】
上記従来の金属箔溶接装置によれば、互いに重ねられた金属箔に対して光学ユニットからのレーザ光の溶射位置を相対移動させつつ連続的に溶接を施すことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の金属箔溶接装置において、互いに重ねられた金属箔に対するレーザ光の照射位置は、接触部材による押圧位置或いは下側ローラと上側ローラとの間の挟圧位置から所定距離隔てた位置とせざるを得ないため、レーザ光の照射位置では必ずしも金属箔の間の隙間が解消されてはおらず、溶接品質が得られない場合があった。このような不都合は、金属箔が薄くなるほど顕著となる。
【0005】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、互いに重ねられた金属箔間の隙間が解消された状態で溶接可能な金属箔溶接方法および金属箔溶接装置、その金属箔溶接装置を備えた可撓性樹脂金属箔積層体製造装置を提供することにある。
【0006】
本発明者等は、上記事情を背景として種々検討を重ねた結果、互いに重ねられた金属箔に対して圧力気体を局所的に吹きつけることにより押圧し、その押圧部位に対してレーザ光を照射すると、互いに密着した状態の金属箔に対してレーザ光を集光させることになり、安定した品質の溶接が得られることを見いだした。本発明はこの知見に基づいて為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、溶接台上に重ねて配置された複数枚の金属箔をレーザ光を用いて相互に溶接する金属箔溶接方法であって、(a) 前記重ねて配置された複数枚の金属箔上に向かって圧力気体を局所的に噴射しつつ一方向に相対移動することにより該圧力気体による圧迫される部位を該一方向へ相対移動させる圧力気体圧迫工程と、(b) 前記複数枚の金属箔上において前記圧力気体の噴射により圧迫されている部位に向かって前記レーザ光を照射しつつ該レーザ光の照射位置を前記一方向へ移動させることにより該複数枚の金属箔を相互に溶接するレーザ光照射工程とを、含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記複数枚の金属箔の上において、前記レーザ光により照射される位置よりも上流側部位を押圧部材を用いて押圧しつつ該押圧部材を前記一方向に相対移動させる押圧工程を、さらに含むことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、溶接台上に重ねて配置された複数枚の金属箔をレーザ光を用いて相互に溶接する金属箔溶接装置であって、(a) 前記溶接台上において該溶接台の上面に平行な一方向に所定速度で移動させられる移動部材と、(b) 該移動部材に設けられ、前記重ねて配置された複数枚の金属箔の上から押圧する押圧部材と、(c) 前記移動部材に設けられ、前記複数枚の金属箔上の前記押圧部材から該押圧部材の移動方向の下流側に隣接する部位を圧迫するために該部位に向かって圧力気体を噴射する噴射ノズルと、(d) 前記移動部材に設けられ、前記複数枚の金属箔上の前記噴射ノズルからの圧力気体の噴射により圧迫されている部位を溶接するために該部位に向かって前記レーザ光を照射する光学ヘッドとを、含むことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3にかかる発明において、前記光学ヘッドは、前記押圧部材と噴射ノズルとの間から前記複数枚の金属箔に向かって前記レーザ光を照射することを特徴とする。
【0011】
請求項5にかかる発明は、請求項3または4に係る発明において、前記押圧部材は、前記一方向に直交する方向の軸心まわりに回転可能に支持されて該軸心の方向の中央部がその両端部よりも大径とされた円筒状のものであることを特徴とする。
【0012】
請求項6にかかる発明は、請求項3乃至5のいずれか1に係る発明において、(a) 前記溶接台の両側において前記移動部材の移動方向に平行に設けられた一対の長手状固定部材と、(b) 該長手状固定部材と平行な軸心まわりに回転可能に支持されて該長手状固定部材に対して接近離隔可能に設けられた一対の挟みローラとを、含み、(c) 前記複数枚の金属箔は、前記レーザ光の溶接に先立って前記長手状固定部材と一対の挟みローラとにより前記溶接台の両側においてそれぞれ挟持されることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、可撓性樹脂金属箔積層体製造装置であって、(a) 樹脂前躯体が一面に塗布された金属箔が所定のロールから巻き出されて連続的に送られる過程で該金属箔に熱処理を施すことにより、一面に樹脂が生成された可撓性樹脂金属箔積層体を送出する熱処理装置と、(b) 前記金属箔の後端部と新たなロールから巻き出された樹脂前躯体が一面に塗布された金属箔の前端部とを重ねた状態で溶接する請求項3乃至6のいずれか1の金属箔溶接装置と、(c) 該金属箔溶接装置と前記熱処理装置との間に配設され、該金属箔溶接装置による溶接中は、前記熱処理装置への連続的な送りを継続しつつ該金属溶接装置からの引き込みを停止するアキュムレータとを、含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の金属箔溶接方法によれば、重ねて配置された複数枚の金属箔上に向かって圧力気体を局所的に噴射しつつ一方向に相対移動することにより該圧力気体による圧迫される部位を該一方向へ相対移動させ、前記複数枚の金属箔上において前記圧力気体の噴射により圧迫されている部位に向かって前記レーザ光を照射しつつ該レーザ光の照射位置を前記一方向へ移動させることにより該複数枚の金属箔を相互に溶接することから、圧力気体の噴射により圧迫されている互いに重ねられた金属箔間が密着させられた状態でレーザ光が照射されるので、高い溶接品質が得られる。
【0015】
請求項2に係る発明の金属箔溶接方法によれば、前記複数枚の金属箔の上において、前記レーザ光により照射される位置よりも上流側部位を押圧部材を用いて押圧しつつ該押圧部材を前記一方向に相対移動させる押圧工程がさらに含まれているので、互いに重ねられた金属箔間が一層好適に連続溶接される。
【0016】
請求項3に係る発明の金属箔溶接装置によれば、(a) 前記溶接台上において該溶接台の上面に平行な一方向に所定速度で移動させられる移動部材と、(b) 該移動部材に設けられ、前記重ねて配置された複数枚の金属箔の上から押圧する押圧部材と、(c) 前記移動部材に設けられ、前記複数枚の金属箔上の前記押圧部材から該押圧部材の移動方向の下流側に隣接する部位を圧迫するために該部位に向かって圧力気体を噴射する噴射ノズルと、(d) 前記移動部材に設けられ、前記複数枚の金属箔上の前記噴射ノズルからの圧力気体の噴射により圧迫されている部位を溶接するために該部位に向かって前記レーザ光を照射する光学ヘッドとを、含むことから、圧力気体の噴射により圧迫されている互いに重ねられた金属箔間が押圧部材および圧力気体による局所的噴射により互いに密着させられた状態でレーザ光が照射されるので、高い溶接品質が得られる。
【0017】
請求項4に係る発明の金属箔溶接装置によれば、前記光学ヘッドは、前記押圧部材と噴射ノズルとの間から前記複数枚の金属箔に向かって前記レーザ光を照射することから、レーザ光の照射角度は上記噴射ノズルの噴射角度よりも大きくなるので、一層好適にレーザ溶接が行われる利点がある。
【0018】
請求項5にかかる発明の金属箔溶接装置によれば、前記押圧部材は、前記一方向に直交する方向の軸心まわりに回転可能に支持されて該軸心の方向の中央部がその両端部よりも大径とされた円筒状のものであることから、前記レーザ光が照射される部位を含んだ前記一方向に直交する方向の所定の幅の互いに重ねられた金属箔間が、押圧部材による部分的押圧および圧力気体による局所的噴射により互いに一層確実に密着させられるので、一層好適にレーザ溶接が行われる利点がある。
【0019】
請求項6にかかる発明の金属箔溶接装置によれば、(a) 前記溶接台の両側において前記移動部材の移動方向に平行に設けられた一対の長手状固定部材と、(b) 該長手状固定部材と平行な軸心まわりに回転可能に支持されて該長手状固定部材に対して接近離隔可能に設けられた一対の挟みローラとを、含み、(c) 前記複数枚の金属箔は、前記レーザ光の溶接に先立って前記長手状固定部材と一対の挟みローラとにより前記溶接台の両側においてそれぞれ挟持されることから、互いに重ねられた金属箔がレーザ光照射部位を中心にして広範囲に固定されるので、一層好適にレーザ溶接が行われる利点がある。
【0020】
請求項7に係る発明の可撓性樹脂金属箔積層体製造装置によれば、(a) 樹脂前躯体が一面に塗布された金属箔が所定のロールから巻き出されて連続的に送られる過程で該金属箔に熱処理を施すことにより、一面に樹脂が生成された可撓性樹脂金属箔積層体を送出する熱処理装置と、(b) 前記金属箔の後端部と新たなロールから巻き出された樹脂前躯体が一面に塗布された金属箔の前端部とを重ねた状態で溶接する請求項3乃至5のいずれか1の金属箔溶接装置と、(c) 該金属箔溶接装置と前記熱処理装置との間に配設され、該金属箔溶接装置による溶接中は、前記熱処理装置への連続的な送りを継続しつつ該金属溶接装置からの引き込みを停止するアキュムレータとを、含むことから、他のロールに切り換えるときにロールに巻回された金属箔の前端部および後端部を無駄にすることなく、効率的に長期間にわたって連続的に可撓性樹脂金属箔積層体を製造することができる。
【0021】
ここで、前記金属箔溶接装置による溶接は、たとえば、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、スズ箔、銀箔、金箔などの金属箔に好適に適用されるが、これに限らず、その他の金属箔にも適用可能である。
【0022】
また、可撓性樹脂金属箔積層体製造装置において、前記金属箔の一面に生成される樹脂は、たとえば、ポリイミド樹脂、リキッドクリスタルポリマー(LCP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル系樹脂、アラミド系樹脂などである。また、これに限らず、その他の樹脂であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の一実施例の可撓性ポリイミド金属箔積層体製造装置10を示す正面図である。その可撓性ポリイミド金属箔積層体製造装置10は、ポリイミド樹脂前駆体Pが一面に塗布された金属箔たとえば9乃至35μm程度の厚みの銅箔12をその銅箔12が巻かれたロール14から所定の速度で巻き出す巻出装置16と、上記銅箔12がロール14から巻き出されて連続的に送られる過程でその銅箔12に熱処理を施すことにより、一面にポリイミド樹脂18が生成された可撓性ポリイミド金属箔積層体20を送出する熱処理装置22と、巻出装置16から巻き出された銅箔12を熱処理装置22を通して所定の張力を維持しつつ巻き取ってロール24とする巻取装置26とを、備えている。本実施例では、巻出装置16および巻取装置26が銅箔12の搬送装置を構成している。
【0025】
上記熱処理装置22は、通過させられる銅箔12の一面に塗着されたポリイミド樹脂前駆体Pを350乃至400℃程度に所定時間加熱するトンネル状の炉本体28と、その炉本体28を通過させられた銅箔12を冷却する冷却装置30とを備えている。上記炉本体28内には、炉壁31で囲まれた空間内において一直線に沿って水平方向に搬送される銅箔12の上面側および下面側に所定距離隔てて位置し且つその銅箔12の送り方向Xに沿って僅かな隙間を隔てて互いに隣接する複数個の平板状の加熱プレート(遠赤外線ヒータ)32が配置されている。この熱処理装置22では、加熱プレート32の銅箔12と対向する側の放射面全体に固着された遠赤外線放射体層から銅箔12の一面に向かって放射される熱輻射と、加熱プレート32に設けられた図示しない噴射孔から銅箔12の一面に向かって噴射される不活性ガスとを用いて、銅箔12の一面に塗布されたポリイミド樹脂前駆体Pが加熱されるようになっている。
【0026】
上記炉本体28内では、複数個の平板状の加熱プレート32が互いに隣接して配置されていることにより、炉壁31と複数個の加熱プレート32とで囲まれた排気空間33が形成され、炉本体28に接続された排気管34がその排気空間33と連通させられている。これにより、ポリイミド樹脂前駆体Pから発生して加熱プレート32とその銅箔12の一面との間に滞留する揮発物等は銅箔12の間の隙間を通して上記排気空間33側へ送られ、排気管34を通して除去されるようになっている。なお、熱処理装置22の詳細は、本発明と同一出願人に係る文献の特開2006−192861号に開示がなされている。
【0027】
さらに、可撓性ポリイミド金属箔積層体製造装置10は、ロール14の銅箔12の後端部40と新たなロールである引継ぎロール42から巻き出されたポリイミド樹脂前躯体Pが一面に塗布された銅箔12の前端部44とを重ねた状態で溶接する金属箔溶接装置46と、金属箔溶接装置46と熱処理装置22との間に配設され、ロール14と引継ぎロール42との接合中すなわち金属箔溶接装置46による溶接中は熱処理装置22への銅箔12の連続的な送りを継続しつつ金属溶接装置46からの引き込みを停止するアキュムレータ48と、熱処理装置22と巻取装置26との間に配設され、ロール24の搬出中に熱処理装置22からの可撓性ポリイミド金属箔積層体20の連続的な引き込みを継続しつつ巻取装置26への銅箔12の送りを停止するアキュムレータ50とを、備えている。
【0028】
アキュムレータ48、50は、銅箔12の送り方向に直交し且つ水平な方向に略平行な軸心まわりに回転可能に支持された複数(本実施例では4つ)の円筒状の固定ローラ52と、その複数の固定ローラ52に対して接近離隔可能に設けられた移動フレーム54に固定ローラ52の軸心と略平行な軸心周りに回転可能に支持された複数(本実施例では3つ)の円筒状の移動ローラ56とを、備えている。また、アキュムレータ48の入口側には、互いに接近離隔可能に設けられた一対のクランプローラ55が設けられており、その一対のクランプローラ55は、互いに接近することにより銅箔12をそれらの間にて挟持できるようになっている。
【0029】
図1のアキュムレータ48は、移動フレーム54が固定ローラ52に対して最も離間する最上位置まで移動させられた最上位置状態を示し、図1のアキュムレータ50は、移動フレーム54が固定ローラ52に最接近する最下位置まで移動させられた最下位置状態を示している。図1に示すように、金属箔溶接装置46から送り出された銅箔12は、アキュムレータ48の固定ローラ52と移動ローラ56とを交互に通って熱処理装置22へ送り出され、熱処理装置22から送り出された可撓性ポリイミド金属箔積層体20は、アキュムレータ50の固定ローラ52と移動ローラ56とを交互に通って巻取装置26へ送り出される。ここで、アキュムレータ48、50に収容される銅箔12の長手方向長さは、移動フレーム54を介して移動ローラ56が固定ローラ52に対して上下に相対移動させられることにより変化させられる。これにより、アキュムレータ48は、移動フレーム54の最上位置状態から最下位置状態に達するまで、熱処理装置22への銅箔12の連続的な送りを継続しつつ金属溶接装置46からの引き込みを停止することが可能である。また、アキュムレータ50は、移動フレーム54の最下位置状態から最上位置状態に達するまで、熱処理装置22からの銅箔12の連続的な引き込みを継続しつつ巻取装置26への銅箔12の送りを停止することが可能である。
【0030】
図2は、本発明の一実施例の金属箔溶接装置46を示す斜視図である。図2において、枠台57は、上面に矩形板状の天板58が設けられている金属製たとえばアルミニウム合金製のフレームから成る基台である。その天板58の上面には、搬送される銅箔12の下面に所定距離隔てて位置しその銅箔12の送り方向Xに直交する方向で長手状をなす方形面(上面)61を有する溶接台62が巻出装置16側に固定され、矩形板状の第1支持板64の両端部を支持する断面矩形の一対の支柱66が熱処理装置22側に送り方向Xに直交する方向に所定間隔を隔てて立設されている。その支柱66の一方には、作業者等によって操作される起動押釦68などが備えられた入力操作装置70が外向きに固定されている。
【0031】
図3は、溶接台62上に重ねて配置された複数枚の銅箔12をレーザ光Lを用いて相互に溶接している金属箔溶接装置46を示す斜視図である。図4は、金属箔溶接装置46の天板58より下方を切り欠いて示した側面図であり、図5は、図4のV−V矢視図の一部を示す金属箔溶接装置46の正面図である。図3乃至図5に示すように、溶接台62の方形面61に平行な一方向Yに移動させられるスライドブロック72が嵌め込まれたスライドレール74が複数のボルト76によって第1支持板64の巻出装置16側の側面78に取り付けられている。また、上記一方向Yに軸心を有し電気駆動式のサーボモータ80によりその軸心まわりに回転させられるねじ軸82を内包するケーシング84がボルト86により側面78に取り付けられている。そのケーシング84の側面78に対する反対側には、矩形板状の板部88とその板部88のケーシング84に対向する面から突き出してねじ軸82に螺合させられている突部90とを有するスライド部材92が隣接して設けられている。スライド部材92は、サーボモータ80によってねじ軸82がその軸心まわりに回転させられることにより一方向Yへ移動させられるものである。
【0032】
上記スライドブロック72およびスライド部材92には、溶接台62の方形面61に垂直な方向に長手状をなしスライドブロック72に対して突き出した形状を有する移動部材94がボルト96、98によってそれぞれ固定されている。上記構成により、移動部材94は、上記スライド部材92の移動に伴って溶接台62上において方形面61に平行な一方向Yに所定速度で移動させられるようになっている。
【0033】
上記移動部材94には、図4のスライド部材92に対する反対方向すなわち図4の左方向側に、シリンダロッド先端に設けられた第1取付ステイ100がエア駆動により方形面61に直交する方向に往復移動可能となっている切替シリンダ102がボルト104により固定されている。その第1取付ステイ100には、図4の左方向側に矩形板状の第2支持板106がボルト108により固定されている。その第2支持板106には、図4の左方向側下部に、図4の左方向に延び出す延出部110を有する一対の第2取付ステイ112が水平方向すなわち図5の左右方向に所定間隔を隔てて固定され、図4の左方向側中央部に、矩形板状の固定ベース114を介して図4の左方向に延び出す一対の延出部116が互いに水平方向の所定間隔を隔てて設けられた第3取付ステイ118が固定されている。
【0034】
図6は、図4のVI−VI視断面図である。図5及び図6において、一方すなわち図5の左側の第2取付ステイ112の延出部110には、一方向Yに直交する送り方向Xに平行且つ方形面61に平行な軸心まわりに回転可能に支持される押圧ローラ(押圧部材)120が、一対の第4取付ステイ122および固定ブロック124を介して設けられている。押圧ローラ120は、上記軸心の方向の中央部がその両端部よりも大径とされた円筒状のものであり、第1取付ステイ100が切替シリンダ102により下降させられている場合には、上記押圧ローラ120の軸心方向の中央部にて溶接台61を押圧するようになっている。つまり、押圧ローラ120は、第4取付ステイ122等を介して移動部材94に設けられ、重ねて配置された複数枚の銅箔12を上から押圧するものである。
【0035】
図5及び図6において、他方すなわち図5の右側の第2取付ステイ112の延出部110には、エア配管126を通じて供給される圧力気体を先端に有する複数の孔128から噴射する噴射ノズル130が、一対の第4取付ステイ131および固定ブロック133を介して設けられている。噴射ノズル130は、第1取付ステイ100が切替シリンダ102により下降させられている場合には、噴射ノズル130と押圧ローラ120との間に位置する溶接台62の方形面61上の所望の部位を局所的に上記圧力気体にて圧迫するようになっている。つまり、噴射ノズル130は、第4取付ステイ131等を介して移動部材94に設けられ、複数枚の銅箔12上の前記押圧ローラ120からその押圧ローラ120の移動方向の下流側に隣接する部位を圧迫するためにその部位に向かって圧縮空気等の圧力気体を噴射するものである。
【0036】
図4及び図5において、第3取付ステイ118の一対の延出部116間には、光学ヘッド132がボルト134により固定されている。図7は、図5のVII−VII視断面図である。図6及び図7において、光学ヘッド132は、方形面61に対して垂直に設けられた筒状のホルダー136と、そのホルダー136の下部先端に嵌め入れられストッパー138により固定された集光レンズ140と、ホルダー136側部に設けられ図示しないたとえば出力30WのYAGレーザ発振器により発振された30P/secのパルス状レーザ光Lを光ファイバー142を介して受け取り第1ハーフミラー144および集光レンズ140を介して銅箔12へ放射するレーザヘッド146と、ホルダー136側部に設けられ第2ハーフミラー148を介して得られた溶接部位の画像を図示しない画像表示装置に送信するCCDカメラ150と、溶接部位周辺に集光レンズ140を介して照明光を投射する光源ランプ152とを、備えている。上記放射されたレーザ光Lは、集光レンズ140により第1取付ステイ100が下降させられている状態にて銅箔12の上記圧力気体にて圧迫させられている部位に集光させられる。つまり、光学ヘッド132は、第3取付ステイ118等を介して移動部材94に設けられ、複数枚(本実施例では2枚)の銅箔12上の前記噴射ノズル130からの圧力気体の噴射により圧迫されている部位を溶接するためにその部位に向かってレーザ光Lを集光して照射するものである。なお、前記光学ヘッド132は、押圧ローラ120と噴射ノズル130との間から複数枚の銅箔12に向かってレーザ光Lを照射するようになっている。
【0037】
さらに、金属箔溶接装置46は、図2、図3、および図4に示すように、溶接台62の送り方向Xの両側において移動部材94の移動方向である一方向Yに平行に設けられた一対の長手状固定部材154と、その長手状固定部材154と平行な軸心まわりに回転可能に支持されて長手状固定部材154に対してたとえば枠台57に固定されたエア駆動式の挟みシリンダ156により接近離隔可能に設けられた一対の挟みローラ158とを、備えている。これにより、複数枚の銅箔12は、前記レーザ光Lの溶接(照射)に先立って長手状固定部材154と一対の挟みローラ158とにより溶接台62の両側においてそれぞれ挟持されることにより、溶接台62の方形面61上に配置させられるようになっている。
【0038】
図8は、溶接台62上に重ねて配置された複数枚の銅箔12をレーザ光Lを用いて相互に溶接するための金属箔溶接装置46の制御系統を説明するブロック線図である。電子制御装置160は、所謂マイクロコンピュータであって、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェイス等を備え、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、制御信号を出力する。金属箔溶接装置46の各種アクチュエータの作動状態は、電子制御装置160によって上記制御信号が対応する各種回路に供給されることにより制御される。たとえば、エア駆動式のアクチュエータたとえば切替シリンダ102や挟みシリンダ156等は、エア制御回路162に含まれるそれぞれの図示しない電磁弁に対して所定の制御信号が供給されることでエア回路が切り換わりそれぞれ作動させられる。また、電気駆動式のサーボモータ80は、サーボモータ駆動制御回路164に対して所定の制御信号が供給されることで所定角度回転させられる。また、レーザ発振器、光源ランプ152、およびCCDカメラ150は、レーザ発振器制御回路166、光源制御回路168、およびCCDカメラ制御回路170に対してそれぞれ所定の制御信号が供給されることでそれぞれ作動させられる。なお、電子制御装置160には、作業者により操作される入力操作装置70や図示しない各部の作動状態たとえば切替シリンダ102が移動端に達した状態等を検出するセンサ,リミットスイッチ等からの前記入力信号に対応する各種の信号が供給されるようになっている。
【0039】
図9は、上記電子制御装置160による制御作動の内容、すなわち金属箔溶接装置46の作動であって溶接台62上に重ねて配置された複数枚の銅箔12をレーザ光Lを用いて相互に溶接する金属箔溶接方法を説明するフローチャートである。本処理は、たとえば作業者に押される起動押釦68からの入力信号が電子制御装置160に入力されてから実行される。なお、上記起動押釦68が押される前に、引継ぎロール42の銅箔12の前端部44は、予め、所定の手順に沿って図3に示すような所定位置に移動させられているものとする。上記所定の手順とは、具体的には、先ず、作業者によりクランプスイッチのクランプ側が選択されることによって、電子制御装置160により自動で、アキュムレータ48の入口側で一対のクランプローラ55により銅箔12がクランプされ、最上位状態にあるアキュムレータ48の上下フレーム54の下降が開始される。続いて、作業者により第1押えスイッチの押え側が選択されることによって、電子制御装置160により自動で、下流側すなわちアキュムレータ48側の挟みシリンダ156が作動させられ、下流側の挟みローラ158と長手状固定部材154とにより銅箔12が挟持される。続いて、作業者により、カッター等が用いられて銅箔12が図3に示すような位置にてカットされ、引継ぎロール42の前端部44が金属箔溶接装置46の所定位置まで引き出され載置される。続いて、作業者により第2押えスイッチの押え側が選択されることによって、電子制御装置160により自動で、上流側すなわち巻出装置16側の挟みシリンダ156が作動させられ、上流側の挟みローラ158と長手状固定部材154とにより引継ぎロール42の銅箔12の前端部44付近が挟持される。以上の所定の手順によって、ロール14の銅箔12の後端部40と引継ぎロール42の銅箔12の前端部44とが溶接台62上にて重なった状態で、長手状固定部材154と一対の挟みローラ158とにより溶接台62の両側においてそれぞれ挟持される。このとき、金属箔溶接装置46からは銅箔12の送り出しが停止されるが、アキュムレータ48からはその内に収容された銅箔12が移動ローラ56の下降とともに熱処理装置22に送り出される。
【0040】
上記所定の手順が終了し、起動押釦68が押されて処理が開始されると、先ず、ステップP1(以下、ステップを省略)では、光学ヘッド132が図3に示される銅箔12の幅方向一端の内側付近である所定の位置Aの真上に移動される。次いで、P2では、光学ヘッド132が下降され、これにより、銅箔12が押圧ローラ120によって押圧される。次いで、P3では、位置Aの重ねて配置された複数枚の銅箔12上に向かって噴射ノズル130から噴射される圧力気体が局所的に噴射される。次いで、P4では、複数枚の銅箔12上において上記圧力気体の噴射により圧迫されている部位に向かって光学ヘッド132からレーザ光Lが照射されつつ、光学ヘッド132が位置Aから銅箔12の幅方向他端の内側付近である所定の位置Bへ移動すなわち上記レーザ光Lの照射位置をたとえば15乃至30mm/sec程度の速度で一方向へ移動されることにより、複数枚の銅箔12の上記レーザ光Lが照射させられた部位が相互に溶接される。また、上記光学ヘッド132の移動に伴って、重ねて配置された複数枚の銅箔12上に向かって圧力気体が局所的に噴射されつつ噴射ノズルが上記一方向に相対移動させられることにより、その圧力気体により圧迫される部位が上記一方向へ相対移動され、さらに、複数枚の銅箔12の上において、レーザ光Lにより照射される位置よりも上流側部位が押圧ローラを用いて押圧されつつ、その押圧ローラが上記一方向に相対移動される。次いで、P5では、レーザ光Lの照射および圧力気体の噴射が停止され、光学ヘッド132が上昇される。次いで、P6では、光学ヘッド132が原位置に戻される。
【0041】
上記処理後、所定の手順に沿って金属箔溶接装置46からの銅箔12の送り出しが再開される。上記所定の手順とは、具体的には、先ず、作業者により第1押えスイッチおよび第2押えスイッチの開放側が選択されることによって、電子制御装置160により自動で、下流側および上流側の挟みシリンダ156が作動させられ、一対の挟みローラ158と長手状固定部材154とによる銅箔12の挟持状態が解除される。続いて、作業者によりクランプスイッチの開放側が選択されることによって、電子制御装置160により自動で、一対のクランプローラ55による銅箔12のクランプ状態が解除される。以上の所定の手順により銅箔12の送り出しが再開されるが、この後、アキュムレータ48の上下フレーム54が最上位状態まで上昇させられる。
【0042】
本実施例では、電子制御装置160によって行われる上記一連の作動のうち、P3,P4が圧力気体圧迫工程で、P4がレーザ光照射工程で、P2〜P4が押圧工程である。
【0043】
上述のように、本実施例の金属箔溶接方法によれば、重ねて配置された複数枚の銅箔(金属箔)12上に向かって圧力気体を局所的に噴射しつつ一方向に相対移動することによりその圧力気体による圧迫される部位を一方向Yへ相対移動させ、前記複数枚の銅箔12上において前記圧力気体の噴射により圧迫されている部位に向かってレーザ光Lを照射しつつそのレーザ光Lの照射位置を前記一方向Yへ移動させることにより複数枚の銅箔12を相互に溶接することから、圧力気体の噴射により圧迫されている互いに重ねられた銅箔12間が密着させられた状態でレーザ光Lが照射されるので、高い溶接品質が得られる。
【0044】
また、本実施例の金属箔溶接方法によれば、前記複数枚の銅箔12の上において、レーザ光Lにより照射される位置よりも上流側部位を押圧ローラ(押圧部材)120を用いて押圧しつつその押圧ローラ120を前記一方向Yに相対移動させる押圧工程がさらに含まれているので、互いに重ねられた銅箔12間が一層好適に連続溶接される。
【0045】
また、本実施例の金属箔溶接装置46によれば、溶接台62上においてその溶接台62の方形めん(上面)61に平行な一方向Yに所定速度で移動させられる移動部材94と、その移動部材94に設けられ、前記重ねて配置された複数枚の銅箔12の上から押圧する押圧ローラ(押圧部材)120と、移動部材94に設けられ、前記複数枚の銅箔12上の押圧ローラ120からその押圧ローラ120の移動方向の下流側に隣接する部位を圧迫するためにその部位に向かって圧力気体を噴射する噴射ノズル130と、移動部材94に設けられ、前記複数枚の銅箔12上の前記噴射ノズルからの圧力気体の噴射により圧迫されている部位を溶接するためにその部位に向かってレーザ光Lを照射する光学ヘッド132とを、含むことから、圧力気体の噴射により圧迫されている互いに重ねられた銅箔12間が押圧ローラ120および圧力気体による局所的噴射により互いに密着させられた状態でレーザ光Lが照射されるので、高い溶接品質が得られる。
【0046】
また、本実施例の金属箔溶接装置46によれば、光学ヘッド132は、押圧ローラ120と噴射ノズル130との間から前記複数枚の銅箔12に向かってレーザ光Lを照射することから、レーザ光Lの照射角度は上記噴射ノズルの噴射角度よりも大きくなるので、一層好適にレーザ溶接が行われる利点がある。
【0047】
また、本実施例の金属箔溶接装置46によれば、押圧ローラ120は、一方向Yに直交する方向の軸心まわりに回転可能に支持されてその軸心の方向の中央部がその両端部よりも大径とされた円筒状のものであることから、レーザ光Lが照射される部位を含んだ一方向Yに直交する方向の所定の幅の互いに重ねられた銅箔12間が、押圧ローラ120による部分的押圧および圧力気体による局所的噴射により互いに一層確実に密着させられるので、一層好適にレーザ溶接が行われる利点がある。
【0048】
また、本実施例の金属箔溶接装置46によれば、溶接台62の両側において移動部材94の移動方向に平行に設けられた一対の長手状固定部材154と、その長手状固定部材154と平行な軸心まわりに回転可能に支持されて長手状固定部材154に対して接近離隔可能に設けられた一対の挟みローラ158とを、含み、前記複数枚の銅箔12は、レーザ光Lの溶接に先立って長手状固定部材154と一対の挟みローラ158とにより溶接台62の両側においてそれぞれ挟持されることから、互いに重ねられた金銅箔12がレーザ光照射部位を中心にして広範囲に固定されるので、一層好適にレーザ溶接が行われる利点がある。
【0049】
また、本実施例の可撓性ポリイミド金属箔積層体製造装置10によれば、ポリイミド樹脂前躯体Pが一面に塗布された銅箔12が所定のロール14から巻き出されて連続的に送られる過程でその銅箔12に熱処理を施すことにより、一面にポリイミド樹脂18が生成された可撓性ポリイミド金属箔積層体20を送出する熱処理装置22と、前記銅箔12の後端部40と引継ぎロール(新たなロール)42から巻き出されたポリイミド樹脂前躯体Pが一面に塗布された銅箔12の前端部44とを重ねた状態で溶接する金属箔溶接装置46と、その金属箔溶接装置46と熱処理装置22との間に配設され、金属箔溶接装置46による溶接中は、熱処理装置22への連続的な送りを継続しつつ金属溶接装置46からの引き込みを停止するアキュムレータ48とを、含むことから、他のロールすなわち引継ぎロール42に切り換えるときにロール14に巻回された銅箔12の端部を無駄にすることなく、効率的に長期間にわたって連続的にポリイミド金属箔積層体(可撓性ポリイミド金属箔積層体)20を製造することができる。
【0050】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0051】
たとえば、前述の実施例において、噴射ノズル130は、複数の孔128を有してその孔128から圧力気体が噴射されるものであったが、少なくとも1つ以上の孔128を有するものであればよく、また、金属箔溶接装置46には、その噴射ノズル130が少なくとも1つ以上設けられていればよい。要するに、レーザ光が照射される部位の重ねられた複数枚の銅箔12間を十分に密着させるために必要な数であればよい。
【0052】
また、前述の実施例において、押圧ローラ120は、長手方向中央部の外径が長手方向両端の外径よりも大きい円筒状であったが、必ずしもその長手方向中央部の外径が長手方向両端の外径よりも大きい必要はなく、同じであってもよい。また、金属箔溶接装置46には、その押圧ローラ120が必ずしも設けられる必要はない。
【0053】
また、前述の実施例において、移動部材94を一方向Yに移動させるための機械的構成は、その一例が開示されたものであり、その他の機械的構成でも実現されることができる。たとえば、エア駆動式のシリンダとそのシリンダのロッドの前進を止める複数の可動式のストッパーとが設けられ、そのロッド先端に取り付けられた移動部材94が複数の位置に位置決めさせられるようにしてもよい。しかし、好適には、実施例のようにサーボモータ80およびねじ軸82が用いられる。さらに一層好適には、上記ねじ軸82はボールねじ軸である。この構成によれば、移動させられる移動部材94の位置は、サーボモータ80に送られる信号を適宜変更することにより迅速に微調整可能であり、また、容易に移動させられる位置の数を変更することが可能である。
【0054】
また、前述の実施例において、移動部材94は、所定速度で移動させられるものであったが、たとえば、位置Aから位置Bへの移動速度V1は、高い溶接品質が得られる所望の速度に設定され、原位置から位置Aへの移動速度V2および位置Bから原位置への移動速度V3は、V1に比較して速く設定される。このように、V1、V2、およびV3を適宜変更することで、高い溶接品質を得たり、また溶接作業にかかる時間を調整したりすることが可能である。
【0055】
また、前述の実施例において、金属箔溶接装置46には、長手状固定部材154と平行な軸心まわりに回転可能に支持されて長手状固定部材154に対してたとえば枠台57に固定されたエア駆動式の挟みシリンダ156により接近離隔可能に設けられた一対の挟みローラ158が備えられていたが、一対の挟みローラ158は、必ずしも上記軸心まわりに回転可能に支持される必要はなく、回転不能であってもよい。また、ローラすなわち円筒状である必要はなく、たとえば板状であってもよい。要するに、複数枚の銅箔12を長手状固定部材154との間にて挟持できればよいのである。また、金属箔溶接装置46には、長手状固定部材154、挟みシリンダ156、および一対の挟みローラ158が必ずしも設けられる必要はない。それでも一応の効果は得られる。
【0056】
また、前述の実施例において、熱処理装置22には、加熱プレート(遠赤外線ヒータ)32が備えられていたが、これに限らず、たとえば熱風機等であってもよい。要するに、熱源として機能するものであればよい。
【0057】
また、前述の実施例において、図1に示すアキュムレータ48、50の移動フレーム54は、複数の固定ローラ52の上方に位置しており、その移動フレーム54が下降することにより複数の固定ローラ52に接近するようになっていたが、複数の固定ローラ52の下方に位置する移動フレーム54が上昇することにより複数の固定ローラ52に接近するように構成されてもよい。
【0058】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例の可撓性ポリイミド金属箔積層体製造装置を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施例の金属箔溶接装置を示す斜視図である。
【図3】図2の金属箔溶接装置であって、溶接台上に重ねて配置された複数枚の銅箔をレーザ光を用いて相互に溶接している状態を示す斜視図である。
【図4】図3の金属箔溶接装置の天板より下方を切り欠いて示した側面図である。
【図5】図4のV−V矢視図の一部を示す金属箔溶接装置の正面図である。
【図6】図4のVI−VI視断面図である。
【図7】図5のVII−VII視断面図である。
【図8】図2の金属箔溶接装置の制御系統を説明するブロック線図である。
【図9】電子制御装置による信号処理の内容、すなわち金属箔溶接装置の作動を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
10:可撓性ポリイミド金属箔積層体製造装置(可撓性樹脂金属箔積層体製造装置)
12:銅箔(金属箔)
14:ロール
16:巻出装置
18:ポリイミド樹脂(樹脂)
20:可撓性ポリイミド金属箔積層体(可撓性樹脂金属箔積層体)
22:熱処理装置
40:後端部
42:引継ぎロール(新たなロール)
44:前端部
46:金属箔溶接装置
48、50:アキュムレータ
62:溶接台
94:移動部材
120:押圧ローラ(押圧部材)
130:噴射ノズル
132:光学ヘッド
154:長手状固定部材
158:挟みローラ
L:レーザ光
P:ポリイミド樹脂前駆体(樹脂前駆体)
P3、P4:圧力気体圧迫工程
P4:レーザ光照射工程
P2〜P4:押圧工程
X:送り方向
Y:一方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接台上に重ねて配置された複数枚の金属箔をレーザ光を用いて相互に溶接する金属箔溶接方法であって、
前記重ねて配置された複数枚の金属箔上に向かって圧力気体を局所的に噴射しつつ一方向に相対移動することにより該圧力気体による圧迫される部位を該一方向へ相対移動させる圧力気体圧迫工程と、
前記複数枚の金属箔上において前記圧力気体の噴射により圧迫されている部位に向かって前記レーザ光を照射しつつ該レーザ光の照射位置を前記一方向へ移動させることにより該複数枚の金属箔を相互に溶接するレーザ光照射工程と
を、含むことを特徴とする金属箔溶接方法。
【請求項2】
前記複数枚の金属箔の上において、前記レーザ光により照射される位置よりも上流側部位を押圧部材を用いて押圧しつつ該押圧部材を前記一方向に相対移動させる押圧工程を、さらに含むことを特徴とする請求項1の金属箔溶接方法。
【請求項3】
溶接台上に重ねて配置された複数枚の金属箔をレーザ光を用いて相互に溶接する金属箔溶接装置であって、
前記溶接台上において該溶接台の上面に平行な一方向に所定速度で移動させられる移動部材と、
該移動部材に設けられ、前記重ねて配置された複数枚の金属箔の上から押圧する押圧部材と、
前記移動部材に設けられ、前記複数枚の金属箔上の前記押圧部材から該押圧部材の移動方向の下流側に隣接する部位を圧迫するために該部位に向かって圧力気体を噴射する噴射ノズルと、
前記移動部材に設けられ、前記複数枚の金属箔上の前記噴射ノズルからの圧力気体の噴射により圧迫されている部位を溶接するために該部位に向かって前記レーザ光を照射する光学ヘッドと
を、含むことを特徴とする金属箔溶接装置。
【請求項4】
前記光学ヘッドは、前記押圧部材と噴射ノズルとの間から前記複数枚の金属箔に向かって前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項3の金属箔溶接装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、前記一方向に直交する方向の軸心まわりに回転可能に支持されて該軸心の方向の中央部がその両端部よりも大径とされた円筒状のものであることを特徴とする請求項3または4の金属箔溶接装置。
【請求項6】
前記溶接台の両側において前記移動部材の移動方向に平行に設けられた一対の長手状固定部材と、該長手状固定部材と平行な軸心まわりに回転可能に支持されて該長手状固定部材に対して接近離隔可能に設けられた一対の挟みローラとを、含み、
前記複数枚の金属箔は、前記レーザ光の溶接に先立って前記長手状固定部材と一対の挟みローラとにより前記溶接台の両側においてそれぞれ挟持されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1の金属箔溶接装置。
【請求項7】
樹脂前躯体が一面に塗布された金属箔が所定のロールから巻き出されて連続的に送られる過程で該金属箔に熱処理を施すことにより、一面に樹脂が生成された可撓性樹脂金属箔積層体を送出する熱処理装置と、
前記金属箔の後端部と新たなロールから巻き出された樹脂前躯体が一面に塗布された金属箔の前端部とを重ねた状態で溶接する請求項3乃至5のいずれか1の金属箔溶接装置と、
該金属箔溶接装置と前記熱処理装置との間に配設され、該金属箔溶接装置による溶接中は、前記熱処理装置への連続的な送りを継続しつつ該金属溶接装置からの引き込みを停止するアキュムレータと
を、含むことを特徴とする可撓性樹脂金属箔積層体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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