説明

金属管の引抜装置及び引抜方法

【課題】引抜時における管の内面に十分に潤滑油を付着できて焼付を防止することのできる金属管の引抜装置を提供する。
【解決手段】金属製素管2を、外面を成形するダイス10と内面を成形するプラグ11との間に通すことで引抜加工する引抜装置において、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、この計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には金属製素管2の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する制御手段31を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置におけるOPC感光ドラム用基体として好適に用いられる、寸法精度に優れた引抜管を製造できる金属管の引抜装置及び引抜方法に関する。
【0002】
なお、本明細書の記載において、引抜方法及び引抜装置における「後方」とは引抜管に対して素管側の方向を表し、「前方」とは素管に対して引抜管側の方向を表す。
【背景技術】
【0003】
近年、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置におけるOPC感光ドラム用基体として、大量生産に適した無切削管が多用されるようになっている。無切削管の一つに、アルミニウム押出素管を引抜加工したED管があり、複数の製品管を1回の引抜きで生産できる点で大量生産に向いており、市場拡大に伴う大量消費に応える製法として注目されている。
【0004】
このED管は、まずアルミニウム製のビレットを押出してアルミニウム押出素管を得、該押出素管を所定長さに切断した後、ダイスとプラグによる1パスまたは2パス以上の引抜加工を行って、所定形状(外径、内径、肉厚)に規定されたアルミニウム管を得た後、切断、端部の面取り加工、洗浄を行い、寸法と外観を検査することによって製造されている。
【0005】
かかる感光ドラム用基体用アルミニウム管の引抜加工において、素管の外面への潤滑油供給は予め塗布しておくことも引抜加工中に潤滑油を随時流下させることも容易である。しかし、素管の内面への潤滑油供給、特に素管を高速で2パス以上の連続引抜きをするED管の場合には、素管の内面に予め潤滑油を流入させておくことは困難であるため、プラグに潤滑油を塗布して素管内に挿入し、そのまま引抜かざるを得なかった。このため、随時潤滑油を供給できる素管外面に対し、素管内面は引抜途中で潤滑油が不足して焼付きが発生し、引抜管フレ精度が低下することがあった。
【0006】
このような問題に対し、本出願人は、プラグを支持する中空のロッドの周壁に開口部を設け、ロッドの後端部から内部に供給した潤滑油を前記開口部から吐出させ、素管の内面に随時潤滑油を供給できる引抜装置を提案した。これらの引抜装置では、素管の内面に付着させた潤滑油を均等に塗り拡げるための中子が、ロッド棒に取り付けられている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−22982号公報
【特許文献2】特開2009−45663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の技術では、素管の内面に潤滑油を供給するに際しプラグ以外の部分(中子等)にも潤滑油が多く付着し、このために内部に残留する潤滑油量が増加するので、潤滑油の消費量が増加する等の問題があった。
【0009】
また、上述したとおり、潤滑油を塗布したプラグを素管内に挿入して引抜加工を行う方法では、素管内面の潤滑油不足により焼付きが発生することがあり、このように焼付きが発生するとキズが発生するだけでなく、加工熱によって寸法精度を低下させる原因となる。潤滑油切れは、素管の長さが長いほど、また引抜速度が速いほど生じやすいため、長い素管を高速で引抜いてED管の生産性を高めるには内面の焼付きを克服することが課題となっている。なお、プラグに潤滑油を塗布する場合における素管内面の潤滑油不足は、水平方向に引き抜く場合において特に顕著である(即ち水平方向に引き抜く場合には、素管内面の上側における潤滑油が特に不足しやすい)。
【0010】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、引抜時における管の内面に十分に潤滑油を付着できて焼付を防止することのできる金属管の引抜装置及び引抜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する制御手段を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0013】
[2]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する制御手段を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0014】
[3]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が前記第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するように制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの第2経過時間も計測し、前記計測された第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御するものであることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0015】
[4]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が前記第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するように制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、第2経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御するものであることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0016】
[5]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から第1経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するように制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの第2経過時間も計測し、前記計測された第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御するものであることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0017】
[6]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から第1経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するように制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、第2経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御するものであることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0018】
[7]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【0019】
[8]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【0020】
[9]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が前記第1許容時間内である場合には装置の運転を継続し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの第2経過時間を計測し、前記計測された第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【0021】
[10]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が前記第1許容時間内である場合には装置の運転を継続し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、第2経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【0022】
[11]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から第1経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間内である場合には装置の運転を継続し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの第2経過時間を計測し、前記計測された第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【0023】
[12]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から第1経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間内である場合には装置の運転を継続し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、第2経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【0024】
[13]前記塗布工程、前記挿通工程、前記セット工程をこの順に実施することを特徴とする前項7〜12のいずれか1項に記載の金属管の引抜方法。
【0025】
[14]金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工することによって金属管を製造する製造方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の製造方法。
【0026】
[15]前記塗布工程、前記挿通工程、前記セット工程をこの順に実施することを特徴とする前項14に記載の金属管の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
以下の発明の効果の説明では、効果の理解の容易化のために、金属製素管を水平方向に引抜いて引抜加工する場合における効果を説明している(即ち素管内面の上側における潤滑油量が十分であるか否かに着目して効果の説明を行っている)が、本発明は、このように水平方向に引抜いて引抜加工するものに特に限定されるものではない。
【0028】
[1]の発明では、プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する制御手段を備えているから、引抜可能になるまでに時間がかかって(許容時間を超えて)素管内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管に対しては引き抜きを行わないように制御できると共に、引抜可能になるまでの経過時間が許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うように制御できるので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0029】
[2]の発明では、プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から経過時間の計測を開始し、この計測開始から、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する制御手段を備えているから、引抜可能になるまでの間に又は引抜可能になった時に、許容時間を超えると装置の運転を停止すると共に、引抜可能になるまでの経過時間が許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0030】
[3]の発明では、プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、プラグを金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するように制御する制御手段を備えるから、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できていない場合には装置の運転を停止させることができるし、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置の運転を継続させることができる。
【0031】
更に、制御手段は、プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又はプラグを金属製素管内に挿通した時から、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの第2経過時間も計測し、前記計測された第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超える場合には金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御するものであるから、引抜可能になるまでに時間がかかって(第2許容時間を超えて)素管内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管に対しては引き抜きを行わないように制御できると共に、引抜可能になるまでの第2経過時間が第2許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油量が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うように制御できるので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0032】
[4]の発明では、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できていない場合には装置の運転を停止させることができるし、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置の運転を継続させることができる。
【0033】
更に、引抜可能になるまでの間に又は引抜可能になった時に第2許容時間を超えた場合、素管内面の上側における潤滑油量が不十分になっているので、装置の運転を停止して該素管に対しては引き抜きを行わないようにすると共に、引抜可能になるまでの第2経過時間が第2許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油量が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0034】
[5]の発明では、プラグを素管内に挿通するまでの間に又は挿通した時に第1許容時間を超えてしまい、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できない場合には装置の運転を停止させることができるし、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置の運転を継続させることができる。
【0035】
更に、引抜可能になるまでに時間がかかって(第2許容時間を超えて)素管内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管に対しては引き抜きを行わないように制御できると共に、引抜可能になるまでの第2経過時間が第2許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油量が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うように制御できるので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0036】
[6]の発明では、プラグを素管内に挿通するまでの間に又は挿通した時に第1許容時間を超えてしまい、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できない場合には装置の運転を停止させることができるし、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置の運転を継続させることができる。
【0037】
更に、引抜可能になるまでの間に又は引抜可能になった時に第2許容時間を超えた場合、素管内面の上側における潤滑油量が不十分になっているので、装置の運転を停止して該素管に対しては引き抜きを行わないようにすると共に、引抜可能になるまでの第2経過時間が第2許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油量が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0038】
[7]の発明では、プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを行うものであり、引抜可能になるまでに時間がかかって(許容時間を超えて)素管内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管に対しては引き抜きを行わないようにできると共に、引抜可能になるまでの経過時間が許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0039】
[8]の発明では、プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から経過時間の計測を開始し、この計測開始から、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを行うものであり、引抜可能になるまでの間に又は引抜可能になった時に許容時間を超えると装置の運転を停止すると共に、引抜可能になるまでの経過時間が許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0040】
[9]の発明では、プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、プラグを金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するから、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できていない場合には装置の運転を停止させることができるし、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置の運転を継続させることができる。
【0041】
更に、引抜可能になるまでに時間がかかって(第2許容時間を超えて)素管内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管に対しては引き抜きを行わないようにできると共に、引抜可能になるまでの第2経過時間が第2許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油量が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0042】
[10]の発明では、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できていない場合には装置の運転を停止させることができるし、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置の運転を継続させることができる。
【0043】
更に、引抜可能になるまでの間に又は引抜可能になった時に、計測中の第2経過時間が第2許容時間を超えた場合、素管内面の上側における潤滑油量が不十分になっているので、装置の運転を停止して該素管に対しては引き抜きを行わないようにすると共に、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に、計測中の第2経過時間が第2許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油量が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0044】
[11]の発明では、プラグを素管内に挿通するまでの間に又は挿通した時に第1許容時間を超えてしまって、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できない場合には装置の運転を停止させることができるし、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置の運転を継続させることができる。
【0045】
更に、引抜可能になるまでに時間がかかって(第2許容時間を超えて)素管内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管に対しては引き抜きを行わないようにできると共に、引抜可能になるまでの第2経過時間が第2許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油量が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0046】
[12]の発明では、プラグを素管内に挿通するまでの間に又は挿通した時に第1許容時間を超えてしまって、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できない場合には装置の運転を停止させることができるし、プラグから金属製素管内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置の運転を継続させることができる。
【0047】
更に、引抜可能になるまでの間に又は引抜可能になった時に、計測中の第2経過時間が第2許容時間を超えた場合、素管内面の上側における潤滑油量が不十分になっているので、装置の運転を停止して該素管に対しては引き抜きを行わないようにすると共に、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に、計測中の第2経過時間が第2許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油量が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0048】
[13]の発明では、塗布工程、挿通工程、セット工程をこの順序で実施するから、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができて、焼付のない高品質の引抜管を製造することができる。
【0049】
[14]の発明では、プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを行って金属管を製造するものであり、引抜可能になるまでに時間がかかって(許容時間を超えて)素管内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管に対しては引き抜きを行わないようにできると共に、引抜可能になるまでの経過時間が許容時間内にあって素管内面の上側における潤滑油が十分に存在している素管に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管を製造することができる(焼付のある引抜管を製造することがない)。
【0050】
[15]の発明では、塗布工程、挿通工程、セット工程をこの順序で実施するから、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができて、焼付のない高品質の引抜管を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る引抜装置の一実施形態を一部を縦断面で示す正面図である。
【図2】(a)はプラグの表面に潤滑油を塗布している状態を示す断面図、(b)はプラグの表面への潤滑油の供給を停止した状態を示す断面図、(c)は金属製素管内へのプラグの挿通を開始した状態を示す断面図である。
【図3】(a)は金属製素管内へのプラグの挿通配置を終了した状態を示す断面図、(b)は金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして素管の先端をチャックして引抜可能になった状態を示す断面図である。
【図4】引抜方法の一例を示すフロー図である。
【図5】引抜方法の他の例を示すフロー図である。
【図6】引抜方法のさらに他の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、本発明の金属管の引抜方法を実施するための引抜装置1の一例(第1実施形態)をその一部を縦断面で示す概略図(管の引抜途中状態で示す概略図)である。本実施形態に係る引抜方法および引抜装置1は、金属製素管2を水平方向に引き抜いて引抜加工するものであるが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば、鉛直方向に引き抜いて引抜加工するものであってもよい。
【0053】
前記引抜装置1は、金属製素管2の外面を成形するダイス10と、金属製素管2の内面を成形するプラグ11と、潤滑油Lを塗布するノズル部18と、金属製素管2の先端部を保持するチャック手段21と、該チャック手段21を牽引する牽引手段24と、制御手段31とからなる(図1参照)。
【0054】
前記ダイス10は、ダイスケース12内に嵌合されたダイス本体13を備え、前記ダイス本体13は、中央のダイス孔の内周面にアプローチ部14とこれの前方側に続くベアリング部15とを有している。
【0055】
前記プラグ11は、中空管からなるロッド20の先端に取り付けられて支持されている。前記プラグ11は、外周面にアプローチ部16とこれの前方側に続くベアリング部17とを有している。
【0056】
前記チャック手段21は、金属製素管2の先端部(口付け部)を互いに協働してチャックする一対のチャック指22、22と、これらチャック指22、22を保持するチャック指ホルダ23とからなる。前記チャック手段21は、引抜加工の際には、牽引手段24により図面右方向に牽引され、これにより金属製素管2の引き抜きが行われる。即ち、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間に通して水平方向に引き抜くことにより、管の外面がダイス本体13のベアリング部15によって成形されるとともに、管の内面がプラグ11のベアリング部17によって成形され、引抜管3が製作される。
【0057】
前記ノズル部18は、前記ダイス10の後方の上部位置に配置されている(図1参照)。前記ノズル部18から潤滑油Lが吐出されるものとなされている。前記ノズル部18は、プラグ11の表面に潤滑油Lを供給(塗布)したり、金属製素管2の外面に潤滑油Lを供給(塗布)するのに用いられる。
【0058】
前記制御手段31は、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットし更にチャック手段21で金属製素管2の先端部を保持して引抜可能になるまでの経過時間Tを計測し、前記計測された経過時間Tが予め設定された許容時間を超える場合には金属製素管2の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間Tが予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する(図4参照)。
【0059】
前記予め設定された許容時間Tとしては、特に限定されるものではないが、例えば120秒などが挙げられる。
【0060】
前記制御手段31は、引き抜きを行わない場合には牽引手段24を移動させないように制御(停止制御)し、引き抜きを開始する場合には牽引手段24を移動させるように制御する。
【0061】
次に、前記引抜装置1を用いた金属管の引抜方法について図4のフロー図を参照しつつ説明する。なお、図4〜6のフロー図では、「ステップ」を簡略のために「S」と略記している。
【0062】
まず、図2(a)に示すように、プラグ11をノズル部18の下方位置に配置せしめて、ノズル部18からプラグ11の表面への潤滑油Lの供給(塗布)を開始する(S01)。
【0063】
プラグ11の表面に潤滑油Lを所定時間(所定量)塗布した後、図2(b)に示すように、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給(塗布)を停止する(S02)。停止すると同時に経過時間Tの計測を開始する。即ち、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から、経過時間Tの計測を開始する。なお、プラグ11の外面の上部に付着した潤滑油Lは、外面を伝ってプラグ11の外面の全周に供給され、過剰な潤滑油Lは、時間の経過とともに流れ落ちる。
【0064】
しかる後、図2(c)に示すように、潤滑油Lが塗布されたプラグ11の金属製素管2内への挿通を開始し、図3(a)に示すように、潤滑油Lが塗布されたプラグ11を金属製素管2内(の所定位置)に挿通配置せしめる(S03)。
【0065】
次いで、図3(b)に示すように、これらプラグ11及び金属製素管2をダイス10内に挿通して引き抜き位置にセットする(配置する)。即ち、金属製素管2をダイス10とプラグ11の間の引き抜き位置にセットする(S04)。引き抜き位置にセットする(配置する)と同時にノズル部18から金属製素管2の外面への潤滑油Lの塗布を開始する(図3(b)参照)。
【0066】
次に、図3(b)に示すように、金属製素管2の先端部(口付け部)を一対のチャック指22、22でチャックする(挟み込み固定する)(S05)。このチャック手段21による素管2の挟み込み固定の完了により引抜可能状態になった時に前記経過時間Tの計測を終了する。
【0067】
この経過時間T(プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から引抜可能になるまでの経過時間T)が予め設定された許容時間内であるか否か制御装置31において判定する(S06)。
【0068】
計測された経過時間Tが予め設定された許容時間を超える場合(判定結果がNOである場合)には金属製素管2の引き抜きを開始しない(引き抜きを行わない)ものとすると共に警報音を鳴らす(S10)。次いで、プラグ11を後方に移動(ダイス10から離れる方向に後退)させる(S11)。しかる後、前記引き抜き位置にセットされている金属製素管2を抜き取り(取り除き)(S12)、次の新たな金属製素管2の引き抜き加工に備える。
【0069】
一方、計測された経過時間Tが予め設定された許容時間内である場合(判定結果がYESである場合)には引き抜きを開始する(S07)。即ち、図1に示すように、ノズル部18から金属製素管2の外面に潤滑油Lを塗布しながら、素管2の先端部をチャック手段21で牽引して金属製素管2をダイス10とプラグ11の間に通すことによって引抜加工を行って引抜管3を得て、引き抜きを終了する(S08)。しかる後、プラグ11を後方に移動させて(ダイス10から離れる方向に後退させて)(S09)、次の新たな金属製素管2の引き抜き加工に備える。
【0070】
上記引抜方法では、引抜可能状態になるまでに時間がかかって(許容時間を超えて)素管2内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管2に対しては引き抜きを行わないようにできる(引き抜き操作を中止できる)と共に、引抜可能状態になるまでの経過時間Tが許容時間内にあって素管2内面の上側における潤滑油が十分な量で存在している素管2に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管3を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0071】
なお、上記第1実施形態において、制御手段31の構成(制御手法)を次のような構成としてもよい。即ち、第1実施形態において、制御手段31は、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から経過時間の計測を開始し、この計測開始から、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットし(配置し)更にチャック手段21で金属製素管2の先端部を保持して引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の経過時間Tが予め設定された許容時間を超えた場合には超えた段階で装置1の運転を停止するように制御する一方、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットし(配置し)更にチャック手段21で金属製素管2の先端部を保持して引抜可能になった時に前記計測中の経過時間Tが予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する構成(制御手法)であってもよい。
【0072】
本発明の引抜装置1の他の実施形態(第2実施形態)について説明する。この第2実施形態の引抜装置1の構成は、図1に示すとおりであり、制御手段31の構成(制御手法)が前記第1実施形態と異なるが、他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0073】
即ち、この第2実施形態において、制御手段31は、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から、プラグ11を金属製素管2内に挿通するまでの第1経過時間T1を計測し、前記計測された第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間を超える場合には超えた段階で引抜装置1の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間T1が前記第1許容時間内である場合には引抜装置1の運転を継続するように制御する(図5参照)。
【0074】
更に、前記制御手段31は、プラグ11を金属製素管2内に挿通した時から、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットし更にチャック手段21で金属製素管2の先端部を保持して引抜可能になるまでの第2経過時間T2を計測し、前記計測された第2経過時間T2が予め設定された第2許容時間を超える場合には金属製素管2の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間T2が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する(図5参照)。
【0075】
この第2実施形態において、前記予め設定された第1許容時間T1としては、特に限定されるものではないが、例えば30秒などが挙げられる。また、前記予め設定された第2許容時間T2としては、特に限定されるものではないが、例えば90秒などが挙げられる。
【0076】
次に、前記第2実施形態に係る引抜装置1を用いた金属管の引抜方法について図5のフロー図を参照しつつ説明する。
【0077】
まず、図2(a)に示すように、プラグ11をノズル部18の下方位置に配置せしめて、ノズル部18からプラグ11の表面への潤滑油Lの供給(塗布)を開始する(S21)。
【0078】
プラグ11の表面に潤滑油Lを所定時間(所定量)塗布した後、図2(b)に示すように、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給(塗布)を停止する(S22)。停止すると同時に第1経過時間T1の計測を開始する。即ち、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から、第1経過時間T1の計測を開始する。なお、プラグ11の外面の上部に付着した潤滑油Lは、外面を伝ってプラグ11の外面の全周に供給され、過剰な潤滑油Lは、時間の経過とともに流れ落ちる。
【0079】
しかる後、図2(c)に示すように、潤滑油Lが塗布されたプラグ11の金属製素管2内への挿通を開始し、図3(a)に示すように潤滑油Lが塗布されたプラグ11を金属製素管2内(の所定位置)に配置せしめる(S23)。この時、図2(c)に示すようにプラグ11が金属製素管2内に入った段階で第1経過時間T1の計測を終了すると同時に第2経過時間T2の計測を開始する(図5参照)。
【0080】
計測された第1経過時間T1(プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時からプラグが金属製素管2内に入るまでの第1経過時間T)が予め設定された第1許容時間内であるか否か制御装置31において判定する(S24)。
【0081】
計測された第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間を超える場合(判定結果がNOである場合)には引抜装置1の運転を停止すると共に警報音を鳴らす(S34)。
【0082】
一方、計測された第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間内である場合(判定結果がYESである場合)には、図3(b)に示すように、プラグ11及び金属製素管2をダイス10内に挿通して引き抜き位置にセットする(配置する)。即ち、金属製素管2をダイス10とプラグ11の間の引き抜き位置にセットする(S25)。引き抜き位置にセットする(配置する)と同時にノズル部18から金属製素管2の外面への潤滑油Lの塗布を開始する(図3(b)参照)。
【0083】
次に、図3(b)に示すように、金属製素管2の先端部(口付け部)を一対のチャック指22、22でチャックする(挟み込み固定する)(S26)。このチャック手段21による素管2の挟み込み固定の完了により引抜可能状態になった時に前記第2経過時間T2の計測を終了する(図5参照)。
【0084】
計測された第2経過時間T2(プラグ11が金属製素管2内に入った時から引抜可能になるまでの経過時間T2)が予め設定された第2許容時間内であるか否か制御装置31において判定する(S27)。
【0085】
計測された第2経過時間T2が予め設定された第2許容時間を超える場合(判定結果がNOである場合)には金属製素管2の引き抜きを開始しない(引き抜きを行わない)ものとすると共に警報音を鳴らす(S31)。次いで、プラグ11を後方に移動(ダイス10から離れる方向に後退)させる(S32)。しかる後、前記引き抜き位置にセットされている金属製素管2を抜き取り(取り除き)(S33)、次の新たな金属製素管2の引き抜き加工に備える。
【0086】
一方、計測された第2経過時間T2が予め設定された第2許容時間内である場合(判定結果がYESである場合)には引き抜きを開始する(S28)。即ち、図1に示すように、ノズル部18から金属製素管2の外面に潤滑油Lを塗布しながら、素管2の先端部をチャック手段21で牽引して金属製素管2をダイス10とプラグ11の間に通すことによって引抜加工を行って引抜管3を得て、引き抜きを終了する(S29)。しかる後、プラグ11を後方に移動させて(ダイス10から離れる方向に後退させて)(S30)、次の新たな金属製素管2の引き抜き加工に備える。
【0087】
上記引抜方法では、S24での判定において、計測された第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間を超えていてプラグ11から金属製素管2内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できていない場合には装置1の運転を停止させることができるし、計測された第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間内であってプラグ11から金属製素管2内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置1の運転を継続させることができる。更に、S27での判定を経ることにより、引抜可能になるまでに時間がかかって(第2経過時間T2が第2許容時間を超えていて)素管内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管に対しては引き抜きを行わないようにできると共に、引抜可能になるまでの第2経過時間T2が第2許容時間内にあって素管2内面の上側における潤滑油が十分な量で存在している素管2に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管3を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0088】
なお、上記第2実施形態において、制御手段31の構成(制御手法)を次のような構成に変更してもよい。即ち、第2実施形態において、第1経過時間T1の計測及びS24での判定に関して、制御手段31は、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から第1経過時間T1の計測を開始し、この計測開始から、プラグ11を金属製素管2内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間を超えた場合には超えた時点で装置1の運転を停止するように制御する一方、プラグ11を金属製素管2内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間内である場合には装置1の運転を継続するように制御する構成(制御手法)であってもよい。また、第2実施形態において、第2経過時間T2の計測及びS27での判定に関して、制御手段31は、プラグ11を金属製素管2内に挿通した時から、第2経過時間T2の計測を開始し、この計測開始から、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットし(配置し)更にチャック手段21で金属製素管2の先端部を保持して引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間T2が予め設定された第2許容時間を超えた場合には超えた時点で装置1の運転を停止するように制御する一方、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットし(配置し)更にチャック手段21で金属製素管2の先端部を保持して引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間T2が予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する構成(制御手法)であってもよい。
【0089】
本発明の引抜装置1のさらに他の実施形態(第3実施形態)について説明する。この第3実施形態の引抜装置1の構成は、図1に示すとおりであり、制御手段31の構成(制御手法)が前記第1実施形態と異なるが、他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0090】
即ち、この第3実施形態において、制御手段31は、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から、プラグ11を金属製素管2内に挿通するまでの第1経過時間T1を計測し、前記計測された第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間を超える場合には引抜装置1の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間T1が前記第1許容時間内である場合には引抜装置1の運転を継続するように制御する(図6参照)。
【0091】
更に、前記制御手段31は、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットし(配置し)更にチャック手段21で金属製素管2の先端部を保持して引抜可能になるまでの第2経過時間Tを計測し、前記計測された第2経過時間Tが予め設定された第2許容時間を超える場合には金属製素管2の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間Tが前記第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する(図6参照)。
【0092】
この第3実施形態において、前記予め設定された第1許容時間T1としては、特に限定されるものではないが、例えば30秒などが挙げられる。また、前記予め設定された第2許容時間Tとしては、特に限定されるものではないが、例えば90秒等が挙げられる。
【0093】
次に、前記第3実施形態に係る引抜装置1を用いた金属管の引抜方法のフロー図を図6に示す。前述した第2実施形態に係る引抜装置1を用いた金属管の引抜方法(図5参照)と相違する点は、制御手段31における第2経過時間Tの計測開始点を「プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時」に設定した点であり、他の手法等は、前記第2実施形態と同様である。
【0094】
この第3実施形態に係る引抜方法では、S24での判定において、計測された第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間を超えていてプラグ11から金属製素管2内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できていない場合には装置1の運転を停止させることができるし、計測された第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間内であってプラグ11から金属製素管2内に持ち込まれる潤滑油量を十分に確保できている場合にはそのまま装置1の運転を継続させることができる。更に、S27での判定を経ることにより、引抜可能になるまでに時間がかかって(第2経過時間Tが第2許容時間を超えていて)素管内面の上側における潤滑油量が少なくなった状態の素管に対しては引き抜きを行わないようにできるとともに、引抜可能になるまでの第2経過時間Tが第2許容時間内にあって素管2内面の上側における潤滑油量が十分に存在している素管2に対しては引き抜きを行うので、焼付のない引抜管3を製造することができる(焼付のある引抜管が生じることがない)。
【0095】
なお、上記第3実施形態において、制御手段31の構成(制御手法)を次のような構成に変更してもよい。即ち、第3実施形態において、第1経過時間T1の計測及びS24での判定に関して、制御手段31は、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から第1経過時間T1の計測を開始し、この計測開始から、プラグ11を金属製素管2内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間を超えた場合には超えた時点で装置1の運転を停止するように制御する一方、プラグ11を金属製素管2内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間T1が予め設定された第1許容時間内である場合には装置1の運転を継続するように制御する構成(制御手法)であってもよい。また、第3実施形態において、第2経過時間Tの計測及びS27での判定に関して、制御手段31は、プラグ11の表面への潤滑油Lの供給を停止した時から、第2経過時間Tの計測を開始し、この計測開始から、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットし(配置し)更にチャック手段21で金属製素管2の先端部を保持して引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間Tが予め設定された第2許容時間を超えた場合には超えた時点で装置1の運転を停止するように制御する一方、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間の引き抜き位置にセットし(配置し)更にチャック手段21で金属製素管2の先端部を保持して引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間Tが予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する構成(制御手法)であってもよい。
【0096】
なお、第1実施形態では、経過時間Tの計測開始点を「プラグ表面への潤滑油の供給停止」とし(図4参照)、第2実施形態では、第1経過時間T1の計測開始点を「プラグ表面への潤滑油の供給停止」とし(図5参照)、第3実施形態では、第1経過時間T1及び第2経過時間Tの計測開始点を「プラグ表面への潤滑油の供給停止」とし(図6参照)ているが、例えば、潤滑油Lの供給時間(塗布時間)を一定に設定するのであれば、これらの計測開始点を「プラグ表面への潤滑油の供給開始」としてもよい(実質的には同じである)。
【0097】
また、上記第1〜3実施形態では、S06、S24、S27において判定結果がNOである場合に警報音を鳴らして作業員に報知するものとしているが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば、判定結果がNOである場合に回転灯(赤色等)を点灯又は点滅させて報知するようにしても良い。
【0098】
また、上記第1〜3実施形態では、引抜開始をしなかった場合(S10、S31)には、その後に、セットされている素管を抜き取る(排出させる)操作を行っている(S11、S32)が、この素管の排出操作は、手動により行ってもよいし、排出装置により自動的に行われるようにしてもよい。また、このようにして排出させた素管は、廃棄してもよいし、本引抜方法において再利用してもよい。
【0099】
本発明では、引抜対象の金属製素管2の長さを限定するものではないが、潤滑油切れは、金属製素管の長さが長いほど生じやすいため、本発明は、長い素管の引抜きに適している。具体的には、2m以上、特に2.5m以上の素管に対して顕著な効果が得られるものである。
【0100】
本発明において、引抜対象の金属製素管2の素材(金属種)は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、鉄、銅、或いはこれらの合金等が挙げられる。本発明は、長い素管を引抜く場合に顕著な効果が得られることから、感光ドラム基体用アルミニウム管の製造に適している。
【実施例】
【0101】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0102】
<実施例1>
図1に示す構成を備えた第1実施形態の引抜装置1を用いて金属製素管2の引抜加工を行った(図4のフロー図参照)。アルミニウム合金(Mn:1.12質量%、Si:0.11質量%、Fe:0.39質量%、Cu:0.16質量%、Zn:0.01質量%、Mg:0.02質量%を含み、残部アルミニウムおよび不可避不純物)からなるビレットを、押出温度520℃、押出速度5m/分の条件で押出し、外径32mm、肉厚1.5mmの円筒管を得、これを2.2mに切断したものを金属製素管2として用いた。
【0103】
前記引抜装置1において、ダイス10のアプローチ部14のアプローチ角は15°であり、ダイス10のベアリング部15のベアリング長さは15mmであり、プラグ11のアプローチ部16のアプローチ角は7°であり、プラグ11のベアリング部17のベアリング長さは2mmである。
【0104】
図2(a)に示すようにノズル部18から吐出された潤滑油Lのプラグ11の表面への塗布を開始し(S01)、10秒間塗布した後、この塗布を停止し(S02)(図2(b)参照)、この停止時から経過時間Tの計測を開始した。次に、図3(a)に示すように、前記潤滑油Lが塗布されたプラグ11を金属製素管2内に挿通配置せしめ(S03)、次いで図3(b)に示すように、金属製素管2をダイス10とプラグ11の間の引き抜き位置にセットし(S04)、引き抜き位置にセットすると同時にノズル部18から金属製素管2の外面への潤滑油Lの塗布を開始した。次に、図3(b)に示すように、金属製素管2の先端部(口付け部)を一対のチャック指22、22でチャックした(引抜可能状態になった)(S05)。このようにチャック手段21による素管2の挟み込み固定の完了により引抜可能状態になった時に前記経過時間Tの計測を終了した。
【0105】
この経過時間T(プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から引抜可能になるまでの経過時間T)が、予め設定した許容時間(200秒)内であるか否かを制御手段31において判定した(S06)。本実施例1では、経過時間Tが60秒であり、許容時間(200秒)内であったから、判定結果はYESであり、従ってそのまま引き抜きを開始した(S07)。即ち、図1に示すように、ノズル部18から金属製素管2の外面に潤滑油Lを塗布しながら、素管2の先端部をチャック手段21で牽引して金属製素管2をダイス10とプラグ11の間に通すことによって引抜加工を行って引抜管3を得て、引き抜きを終了した(S08)。引抜速度30m/分、外径減少率16%、断面積減少率32%で引抜加工を行って、引抜管3を得た。なお、潤滑油Lとして、共栄油化株式会社製「ストロールES150」を用いた。
【0106】
得られた引抜管3を、引抜装置1から搬送コンベアに移載して室温(約25℃)まで放冷し、長さ260mmに切断した。
【0107】
<実施例2>
実施例1と同様にしてS06まで進行させ、S06で判定を行ったところ、本実施例2では、経過時間Tが120秒であり、許容時間(200秒)内であったから、判定結果はYESであり、従ってそのまま引き抜きを開始した(S07)。即ち、実施例1と同様にして引抜加工を行って引抜管3を得た。
【0108】
<実施例3>
実施例1と同様にしてS06まで進行させ、S06で判定を行ったところ、本実施例3では、経過時間Tが180秒であり、許容時間(200秒)内であったから、判定結果はYESであり、従ってそのまま引き抜きを開始した(S07)。即ち、実施例1と同様にして引抜加工を行って引抜管3を得た。
【0109】
<実施例4>
実施例1と同様にしてS06まで進行させ、S06で判定を行ったところ、本実施例4では、経過時間Tが240秒であり、許容時間(200秒)を超えていたから、判定結果はNOであり、従って引き抜きを開始しなかった(引き抜きを行わなかった)(S10)。プラグ11を後方に移動(ダイス10から離れる方向に後退)させた(S11)後、引き抜き位置にセットされている金属製素管2を抜き取り(S12)、次の新たな金属製素管2の引き抜き加工に備えた。
【0110】
<実施例5>
実施例1と同様にしてS06まで進行させ、S06で判定を行ったところ、本実施例5では、経過時間Tが300秒であり、許容時間(200秒)を超えているから、判定結果はNOであり、従って引き抜きを開始しなかった(引き抜きを行わなかった)(S10)。プラグ11を後方に移動(ダイス10から離れる方向に後退)させた(S11)後、引き抜き位置にセットされている金属製素管2を抜き取り(S12)、次の新たな金属製素管2の引き抜き加工に備えた。
【0111】
<比較例1>
実施例1と同様にしてS06まで進行させ、S06で判定を行ったところ、本実施例4では、経過時間Tが240秒であり、許容時間(200秒)を超えていて判定結果はNOであったが、この判定を無視して、実施例1と同様にして引抜加工を行って引抜管3を得た。
【0112】
<比較例2>
実施例1と同様にしてS06まで進行させ、S06で判定を行ったところ、本実施例4では、経過時間Tが300秒であり、許容時間(200秒)を超えていて判定結果はNOであったが、この判定を無視して、実施例1と同様にして引抜加工を行って引抜管3を得た。
【0113】
【表1】

【0114】
上記のようにして得られた実施例1〜3、比較例1、2の引抜管3における焼付発生の有無、状態を調べ、下記判定基準に基づいて焼付防止性を評価した。これらの評価結果を表1に示す。
(判定基準)
「○」…引抜管に焼付が全く発生しなかった
「△」…引抜管の後半部領域で焼付が発生した
「×」…引抜管の長さ方向の全領域で焼付が発生した。
【0115】
表1から明らかなように、本発明の引抜方法(実施例1〜3)によれば、焼付が発生していない引抜管を製造することができた。また、本発明の引抜方法(実施例4、5)によれば、S06での判定(NO判定)を踏まえて引き抜きを行わなかったことにより、焼付のある引抜管の製造を回避することができた。
【0116】
これに対し、比較例1、2では、得られた引抜管に焼付が生じていた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る金属管の引抜装置及び引抜方法は、複数本の金属製素管の連続引抜加工において素管の内面にも十分に潤滑油を付着させることができるので、感光ドラム基体用アルミニウム管の量産に適している。
【符号の説明】
【0118】
1…引抜装置
2…金属製素管
3…引抜管
10…ダイス
11…プラグ
18…ノズル部
21…チャック手段
24…牽引手段
31…制御手段
L…潤滑油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する制御手段を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項2】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御する制御手段を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項3】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が前記第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するように制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの第2経過時間も計測し、前記計測された第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御するものであることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項4】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が前記第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するように制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、第2経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御するものであることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項5】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から第1経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するように制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの第2経過時間も計測し、前記計測された第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御するものであることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項6】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する引抜装置において、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から第1経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間内である場合には装置の運転を継続するように制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、第2経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを開始するように制御するものであることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項7】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【請求項8】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【請求項9】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が前記第1許容時間内である場合には装置の運転を継続し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの第2経過時間を計測し、前記計測された第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【請求項10】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの第1経過時間を計測し、前記計測された第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超える場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記計測された第1経過時間が前記第1許容時間内である場合には装置の運転を継続し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、第2経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【請求項11】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から第1経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間内である場合には装置の運転を継続し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの第2経過時間を計測し、前記計測された第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された第2経過時間が前記第2許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【請求項12】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工する金属管の引抜方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から第1経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記プラグを前記金属製素管内に挿通するまでの間に、又は挿通した時に、前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時に前記計測中の第1経過時間が予め設定された第1許容時間内である場合には装置の運転を継続し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、又は前記プラグを前記金属製素管内に挿通した時から、第2経過時間の計測を開始し、この計測開始から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの間に、又は引抜可能になった時に、前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間を超えた場合には装置の運転を停止するように制御する一方、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になった時に前記計測中の第2経過時間が予め設定された第2許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の引抜方法。
【請求項13】
前記塗布工程、前記挿通工程、前記セット工程をこの順に実施することを特徴とする請求項7〜12のいずれか1項に記載の金属管の引抜方法。
【請求項14】
金属製素管を、外面を成形するダイスと内面を成形するプラグとの間に通すことで引抜加工することによって金属管を製造する製造方法において、
プラグの表面に潤滑油を塗布した後、該潤滑油の供給を停止する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管をダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットするセット工程と、を包含し、
前記プラグの表面への潤滑油の供給を停止した時から、前記金属製素管を前記ダイスと前記プラグとの間の引き抜き位置にセットして引抜可能になるまでの経過時間を計測し、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間を超える場合には前記金属製素管の引き抜きを行わないように制御する一方、前記計測された経過時間が予め設定された許容時間内である場合には引き抜きを行うことを特徴とする金属管の製造方法。
【請求項15】
前記塗布工程、前記挿通工程、前記セット工程をこの順に実施することを特徴とする請求項14に記載の金属管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−49062(P2013−49062A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186790(P2011−186790)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】