説明

金属粉末含有ポリウレタン発泡体とその製造方法

【課題】発泡体に含まれる金属粉末の粉落ちが無い金属粉末含有ポリウレタン発泡体の提供。
【解決手段】水に、ステンレス鋼、チタン、あるいはチタン化合物から選ばれた平均粒径30μm以下の金属粉末と、軟化点20℃〜100℃の樹脂を分散させた水エマルジョンとを樹脂の量が金属粉末の量の3〜10重量%となるようにして混合してなるスラリーと、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られたイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーとを反応させ、発泡させることにより、金属粉末の粉落ちが無い金属粉末含有ポリウレタン発泡体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末を含有させたポリウレタン原料を反応、発泡させて得られる金属粉末含有ポリウレタン発泡体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉末含有ポリウレタン発泡体は、制振性が求められる用途や導電性が求められる用途等、種々の用途に用いられる。
従来、金属粉末含有ポリウレタン発泡体の製造方法として、鉄粉や鉛粉などの高比重充填剤とイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーと発泡剤を混練して発泡性組成物を形成し、得られた発泡性組成物をロールプレスにより120℃でシート状にする方法がある。
【0003】
しかし、従来の製造方法で得られる金属粉末含有ポリウレタン発泡体は、発泡体から金属粉末が粉落ち(脱落)するおそれがある。金属粉末の粉落ちが発生すると、金属粉末含有ポリウレタン発泡体の使用中に発泡体の物性が変化したり、周囲を汚したりするなどの問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−124923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、金属粉末の粉落ちが無い金属粉末含有ポリウレタン発泡体とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
金属粉末含有ポリウレタン発泡体に係る発明は、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーと、水と、金属粉末とを含むポリウレタン原料を反応させて得られた金属粉末含有ポリウレタン発泡体であって、前記ポリウレタン原料には樹脂を分散させた水エマルジョンを含み、前記金属粉末はステンレス鋼、チタン、あるいはチタン化合物から選ばれたものであって、平均粒径が30μm以下であり、前記樹脂の軟化点が20℃〜100℃であることを特徴とする。
【0007】
金属粉末含有ポリウレタン発泡体の製造方法に係る発明は、水に、ステンレス鋼、チタン、あるいはチタン化合物から選ばれた平均粒径30μm以下の金属粉末と軟化点20〜100℃の樹脂を分散させた水エマルジョンとを混合してなるスラリーと、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーとを反応させ、発泡させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属粉末含有ポリウレタン発泡体によれば、ポリウレタン原料に含まれている樹脂によって金属粉末がポリウレタン発泡体の骨格から脱落し難くなり、金属粉末の粉落ちを防ぐことができる。さらに、樹脂は、樹脂を分散させた水エマルジョンとしてポリウレタン原料に含まれているため、樹脂がポリウレタン原料に均一に分散し易く、金属粉末をポリウレタン発泡体の骨格に樹脂で効果的に固定することができる。さらにまた、金属粉末は平均粒径が30μm以下からなるため、スラリー調整時に金属粉末が沈降し難く、ポリウレタン原料から分離し難く、発泡不良の無い良好なポリウレタン発泡体が得られる。また、金属粉末が、ステンレス鋼、チタン、あるいはチタン化合物から選ばれたものであるため、金属粉末含有ポリウレタン発泡体は、金属粉末が水分に対してイオン化や酸化などを生じない安定であり、変色や変質がなく、長期に亘って安定した物性を発揮することができる。
【0009】
一方、本発明の金属粉末含有ポリウレタン発泡体の製造方法によれば、水に、金属粉末と、樹脂を分散させた水エマルジョンとを混合してスラリーとしているため、金属粉末及び樹脂をスラリー中に均一に分散させることができる。さらに、本発明の製造方法では、前記スラリーとイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーとを反応させ、発泡させているため、金属粉末と樹脂が均一に分散し、しかも、ポリウレタン原料の発泡時の発熱により樹脂が軟化し、その後のウレタン発泡体の冷却と共に樹脂が硬化してバインダーとして作用し、ウレタン骨格に金属粉末が樹脂で確実に固定されることから、ポリウレタン発泡体から金属粉末が脱落(粉落ち)するのを防ぐことができる。また、金属粉末を平均粒径が30μm以下としたことにより、金属粉末がスラリー調整時に沈降せず、また、ポリウレタン原料から分離し難く、発泡不良の無い良好なポリウレタン発泡体が得られる。さらに、金属粉末が、ステンレス鋼、チタン、あるいはチタン化合物から選ばれたものであるため、水分に対して安定であり、ポリウレタン原料の発泡時に水分と反応して発熱や変色等を生じるなどの不具合がなく、良好なポリウレタン発泡体を得ることができる。また、得られる金属粉末含有ポリウレタン発泡体は、金属粉末が水分の影響を受けることなく長期に亘って安定した物性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における製造工程の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において使用されるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートを化学量論的に過剰量にしてポリオールと反応させて得られるものである。前記イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの生成に用いられるポリイソシアネートは、特に制限されるものではなく、芳香族系、脂環式、脂肪族系の何れでもよく、また、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネート、あるいは1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートであってもよく、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
【0012】
例えば、2官能のポリイソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート(2,6−TDI)、m−フェニレンジイソシネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジアネート(2,4’−MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネートなどの芳香族系のもの、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式のもの、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの芳香族系のものを挙げることができる。
【0013】
また、3官能以上のポリイソシアネートとしては、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。本発明においてイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの生成に使用されるポリイソシアネートとして特に好ましいものは、トルエンジイソシアネート(TDI)である。
【0014】
また、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの生成に使用されるポリオールは、特に制限されるものではなく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールの何れか一方、あるいはそれらの二種以上を用いることができる。ポリウレタン発泡体に用いられる公知のエーテル系ポリオールまたはエステル系ポリオールの何れか一方又は両方が用いられる。
【0015】
エーテル系ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、またはその多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。また、エステル系ポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
【0016】
前記イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーのNCO基含有率は5〜30%が好ましく、より好ましくは8〜20%である。NCO基含有率が5%未満の場合、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの粘度が高くなり過ぎ、反応性や作業性が悪化する。また、反応可能なNCO基の残存量が少なく、良好な発泡体が得られなくなる。一方、NCO基含有率が30%を超える場合、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの粘度が低過ぎ、発泡不良により、発泡体自体が得られなかったり、良好な物性を持つ発泡体が得られなくなる。
【0017】
本発明においてポリウレタン原料に含まれる水は、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーが有するNCO基に対して化学当量以上とされる。また、ポリウレタン原料に含まれる水には、金属粉末及び水エマルジョン樹脂(樹脂を分散させた水エマルジョン)を分散させる際に使用される水と、前記水エマルジョン樹脂を構成する水とで構成される。水は、水道水、イオン交換水、蒸留水等何でもよい。なお、ポリウレタン原料においてイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーとの反応に使用されなかった余剰の水は、金属粉末含有ポリウレタン発泡体を形成した後に金属粉末含有ポリウレタン発泡体を乾燥することにより、金属粉末含有ポリウレタン発泡体から除去される。
【0018】
本発明において使用される金属粉末は、ステンレス鋼、チタン、あるいはチタン化合物から選ばれたものであり、平均粒径30μm以下のものが用いられる。ステンレス鋼は、含有されるクロム(Cr)が空気中で酸素と結合して表面に不動被膜が形成された鋼であり、さらにニッケル(Ni)を含み、非酸化性の酸にも耐蝕性を高めたものでもよい。金属粉末を、ステンレス鋼、チタン、あるいはチタン化合物から選ばれたものとすることによって、金属粉末含有ポリウレタン発泡体における金属粉末が水に対してイオン化や酸化せず、長期に亘って安定した物性を発揮することができる。金属粉末は、一種類に限られず、複数種類を使用してもよい。また、金属粉末の平均粒径が30μmを超えると、スラリー調整時に沈降したり、ポリウレタン原料中に金属粉末が良好に分散し難くなったりして発泡状態の良好なポリウレタン発泡体を得難くなる。なお、金属粉末は、粒径が小さくなり過ぎると増粘により、良好な発泡体が得られなくなり、また、使用時に金属粉体が飛散し、作業性および作業環境が悪化するため、好ましい粒径範囲は30μm〜1μmである。また、金属粉末の比重は、10以下、好ましくは8〜3である。
【0019】
本発明で使用される水エマルジョンに含まれる樹脂は、軟化点が20℃〜100℃のものが好ましい。軟化点がこの温度範囲の樹脂を用いることにより、ポリウレタン原料の発泡時の発熱で樹脂が軟化し、その後のウレタン発泡体の冷却と共に樹脂が硬化してバインダーとして作用し、ウレタン骨格に金属粉末を樹脂で確実に固定することができるため、ポリウレタン発泡体から金属粉末が脱落(粉落ち)するのを防ぐことができる。一方、樹脂の軟化点が、ポリウレタン原料の発泡時の発熱温度よりも高過ぎると、バインダーとしての効果が期待できなくなり、ポリウレタン発泡体から金属粉末の粉落ちを生じるようになる。
【0020】
水エマルジョンに含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂の何れでもよい。熱可塑性樹脂は、ポリウレタン原料の反応熱により可逆的に溶融固化することから、より好ましいものである。また、反応型ホットメルトタイプの熱硬化性樹脂は、ポリウレタン原料の発泡時の発熱で硬化してバインダー効果を発揮するために好ましいものであり、特にウレタン骨格との接着性を高めるには、ウレタン系熱硬化性樹脂がより好ましい。なお、軟化点は、ビカット軟化点(JIS K 7206)に従って測定される。
【0021】
水エマルジョンに含まれる樹脂としては、具体的にはアクリル酸エステル重合体、ポリエステル、ポリエチレン等を挙げることができる。特に、アクリル酸エステル重合体は、水エマルジョンに含まれる樹脂として好適なものである。水エマルジョンにおける樹脂の含有率は、特に限定されないが、低すぎると、ポリウレタン原料に大量に水エマルジョンを添加しなければ樹脂が適量にならず、ポリウレタン発泡体の発泡性が損なわれるようになる、一方、水エマルジョンにおける樹脂の含有率が高すぎると、粘度が高く、作業性が悪くなる。このため、水エマルジョンにおける樹脂の含有率は、水エマルジョンの重量に対して20〜50重量%が好ましい。
【0022】
前記樹脂が含まれる水エマルジョン(すなわち水エマルジョン樹脂)は、金属粉末に対する樹脂の量の比率、すなわち[樹脂の量(g)/金属粉末の量(g)×100]で計算される値が3〜10重量%となるように、ポリウレタン原料に添加される。樹脂の量が金属粉末の量の3重量%未満の場合、樹脂によるバインダー効果が小さくなり、ポリウレタン発泡体からの金属粉末の粉落ち防止性能が十分とは言い難い。一方、樹脂の量を金属粉末の量の10重量%を超えるようにしても、格段の効果を得難く、コストが嵩むようになる。特にコスト面からは、樹脂の量が金属粉末の量の3〜7重量%となるようにするのが、より好ましい。
【0023】
金属粉末含有ポリウレタン発泡体の製造は、図1に示すように、まず、分散媒としての水(ポリウレタン原料発泡時の発泡剤としても作用する)に、金属粉末と、樹脂を分散させた水エマルジョン(水エマルジョン樹脂)とを所要量添加して混合、撹拌し、スラリーを形成する。その際、分散媒としての水に金属粉末を混合撹拌するため、金属粉末が分散し易い。また、分散媒としての水に樹脂を単独で添加して混合、撹拌するのとは異なり、本発明の製造方法では、樹脂が分散した水エマルジョンを、分散媒としての水に金属粉末と共に添加して混合、撹拌によりスラリーを形成するため、得られるスラリーに樹脂が金属粉末と共に均一に分散し易い。
【0024】
次に、前記スラリーにイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを所要量添加してポリウレタン原料とする。ポリウレタン原料における各成文の配合重量比率は、水:イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー:金属粉末:水エマルジョン樹脂=100:100:30〜750:5〜500が好ましい。前記イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの添加後にポリウレタン原料を撹拌して反応、発泡させ、金属粉末含有ポリウレタン発泡体を形成する。これにより得られた金属粉末含有ポリウレタン発泡体には、ポリウレタン原料中の余剰の水分が含まれている。その後、乾燥炉等を用いて金属粉末含有ポリウレタン発泡体を乾燥させ、余剰の水分を除去し、製品としての金属粉末含有ポリウレタン発泡体を得る。
【実施例】
【0025】
ポリエーテルポリオール(OHV56、品番:GP−3050NS、三洋化成工業(株)製)70重量部と、トルエンジイソシアネート(品番:T−80、日本ポリウレタン工業(株)製)30重量部と、触媒(オクチル酸スズ、品番:MRH110、城北化学工業(株)製)0.1重量部を、50℃で2時間混合し、NCO%が11.5%のイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを作成した。このイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを用いて、表1の配合でポリウレタン原料を構成し、図1に示した工程により金属粉末含有ポリウレタン発泡体(含水品)を製造し、さらに乾燥させて実施例の金属粉末含有ポリウレタン発泡体(乾燥品)を製造した。なお、ポリウレタン発泡体の発泡は、実施例1〜15については、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー添加後のポリウレタン原料1000gを混合撹拌し、幅170mm、長さ170mm、高さ170mmの容器に充填し、上方を開放した状態で、常温、大気圧下で反応させることにより行った(フリーライズ製法という)。一方、実施例16については、ポリウレタン原料1000gを混合撹拌し、幅170mm、長さ170mm、高さ170mmの容器に充填したのち、この容器の上面に蓋をして、容器(成形型)内で、ポリウレタン発泡体の発泡、硬化を行った(モールド成形法という)。また、金属粉末含有ポリウレタン発泡体(含水品)の乾燥は、金属粉末含有ポリウレタン発泡体(含水品)を80℃の乾燥炉に24時間収容することにより行った。
【0026】
【表1】

【0027】
一方、水エマルジョン樹脂及び金属粉末の両方を含まない比較例1、水エマルジョン樹脂を含まない比較例2、樹脂の軟化点が185℃の水エマルジョン樹脂を用いた比較例3、金属粉末として粒径30μmの鉄粉を用いた比較例4、金属粉末として20μmの亜鉛粉を用いた比較例5、金属粉末として20μmのアルミニウム粉を用いた比較例6、金属粉末として粒径50μmの鉄粉を用いた比較例7のポリウレタン発泡体を同様にして製造した。
【0028】
【表2】

【0029】
表1及び表2における各成分の内容は以下のとおりである。
・水エマルジョン樹脂1:品番;LX852、日本ゼオン(株)製、樹脂の種類;アクリル酸エステル共重合体(熱可塑性樹脂)、樹脂の軟化点;50℃、樹脂成分の量;40重量%
・水エマルジョン樹脂2:品番;ポリオン、中京油脂(株)製、樹脂の種類;ポリエチレン(熱可塑性樹脂)、樹脂の軟化点;30℃、樹脂成分の量;40重量%
・水エマルジョン樹脂3:品番;バイロナール MD、東洋紡(株)製、樹脂の種類;ポリエステル(熱可塑性樹脂)、樹脂の軟化点;40℃、樹脂成分の量;30重量%
・水エマルジョン樹脂4:品番;ハイドラン、大日本インキ化学(株)製、樹脂の種類;ポリエステル系ポリウレタン(熱硬化性樹脂)、樹脂の軟化点;74℃、樹脂成分の量;40重量%
・水エマルジョン樹脂5:ボンテック、大日本インキ化学(株)製、樹脂の種類;ポリエステル系ポリウレタン(熱硬化性樹脂)、樹脂の軟化点;185℃、樹脂成分の量;45重量%
【0030】
・金属粉末1:金属の種類;ステンレス鋼、SUS316L、金属の構成成分;Fe/Ni/Cr/Mo、平均粒径;10μm、比重;7.9
・金属粉末2:金属の種類;ステンレス鋼、SUS316L、金属の構成成分;Fe/Ni/Cr/Mo、平均粒径;4μm、比重;7.9
・金属粉末3:金属の種類;ステンレス鋼、HK−30、金属の構成成分;Fe/Ni/Cr、平均粒径;6.1μm、比重;7.9
・金属粉末4:金属の種類;チタン、金属の構成成分;Ti、平均粒径;5μm、比重;4.5
・金属粉末5:金属の種類;鉄、金属の構成成分;Fe、平均粒径;30μm、比重;7.8
・金属粉末6:金属の種類;亜鉛、金属の構成成分;Ze、平均粒径;20μm、比重;7.1
・金属粉末7:金属の種類;アルミニウム、金属の構成成分;Al、平均粒径;20μm、比重;2.7
・金属粉末8:金属の種類;鉄、金属の構成成分;Fe、平均粒径;50μm、比重;7.8
【0031】
実施例及び比較例の各ポリウレタン発泡体に対して密度(kg/m、JIS K 7222準拠)、粉落ち、体積抵抗率(Ωcm、JIS K 6911準拠)の各項目を測定、判断した。なお、粉落ちについては、ポリウレタン発泡体の表面をティッシュペーパーで10回擦り、ティッシュペーパー表面の金属粉末付着状態を目視で確認し、金属粉末の付着が見られない場合「◎」、付着が僅かな場合「○」、付着が明らかな場合「×」とした。また、体積抵抗率の判断は体積抵抗率が2×10未満の場合「◎」、2×1012〜2×10の場合「○」、2×1012より大の場合「×」とした。測定及び判断結果を表1及び表2に示す。
【0032】
さらに、使用した金属粉末に関し、水に対する安定性、スラリー中の沈降性、ポリウレタン発泡体の発泡安定性について判断した。測定及び判断結果を表1及び表2の下部に示す。なお、水に対する安定性の判断は、100gの水に金属粉末5gを1時間投入し、金属粉末の表面変色を目視で判断すると共に金属粉末の発熱の有無を温度計により判断し、変色・発熱が認められない場合「◎」、変色・発熱が一部又は全体に認められる場合「×」とした。沈降性については、各実施例及び比較例において、水と、金属粉末と、水エマルジョン樹脂を混合したスラリー(イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー添加前のポリウレタン原料)について、1時間後に金属粉末の沈降有無を目視により確認し、沈降が認められない場合「◎」、沈降が認められる場合「×」とした。発泡判定性については、金属粉末含有ポリウレタン発泡体を良好に発泡できた場合「◎」、一部または全体に発泡不良部分があった場合「×」とした。
【0033】
測定結果から明らかなように、フリーライズ製法による実施例1〜15及びモールド成形法による実施例16の金属粉末含有ポリウレタン発泡体は、全ての測定及び判断項目が良好な結果であり、粉落ちが無く、体積抵抗率の低いものであった。それに対して、金属粉末を含まない比較例1は体積抵抗率が高く、水エマルジョン樹脂を含まない比較例2と、水エマルジョン樹脂の樹脂として軟化点185℃の樹脂を用いた比較例3は、粉落ちが発生した。また、金属粉末として粒径30μmの鉄粉を用いた比較例4、金属粉末として20μmの亜鉛粉を用いた比較例5、金属粉末として20μmのアルミニウム粉を用いた比較例6、金属粉末として粒径50μmの鉄粉を用いた比較例7は、何れも水に対する安定性に劣っていた。さらに、金属粉末として20μmの亜鉛粉を用いた比較例5、金属粉末として20μmのアルミニウム粉を用いた比較例6については、発泡安定性に劣っていた。金属粉末として粒径50μmの鉄粉を用いた比較例7は発泡体が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーと、水と、金属粉末とを含むポリウレタン原料を反応させて得られた金属粉末含有ポリウレタン発泡体であって、
前記ポリウレタン原料には樹脂を分散させた水エマルジョンを含み、
前記金属粉末はステンレス鋼、チタン、あるいはチタン化合物から選ばれたものであって、平均粒径が30μm以下であり、
前記樹脂の軟化点が20℃〜100℃であることを特徴とする金属粉末含有ポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記樹脂が、アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル、ポリエチレンから選択された少なくとも1種類からなることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末含有ポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記樹脂の量が前記金属粉末の量の3〜10重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属粉末を含有ポリウレタン発泡体。
【請求項4】
金属粉末含有ポリウレタン発泡体の製造方法において、
水に、ステンレス鋼、チタン、あるいはチタン化合物から選ばれた平均粒径30μm以下の金属粉末と、軟化点20℃〜100℃の樹脂を分散させた水エマルジョンとを混合してなるスラリーと、
イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーとを反応させ、発泡させることを特徴とする金属粉末含有ポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂が、アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル、ポリエチレンから選択された少なくとも1種類からなることを特徴とする請求項4に記載の金属粉末含有ポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂の量が前記金属粉末の量の3〜10重量%であることを特徴とする請求項4又は5に記載の金属粉末含有ポリウレタン発泡体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−189493(P2010−189493A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33453(P2009−33453)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】