説明

金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法及び金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置

【課題】表面プラズモン共鳴(SPR)現象を応用して電場増強度を測定する方法に基づいて、金属薄膜上誘電体の光学特性を正確かつ容易に測定することができる金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法及び金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置を提供する。
【解決手段】金属薄膜に向かって、第1の励起光を照射し、金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させるとともに、金属薄膜に向かって、第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、金属薄膜表面に第2の光を発生させ、表面プラズモン光と第2の光とによる干渉縞を発生させ、干渉縞の干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定し、干渉縞ピッチ及び伝搬長に基づいて、金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に誘電体が形成された金属薄膜に対して励起光を照射することによって、金属薄膜表面に発生する表面プラズモン光を用いて、金属薄膜上に形成された誘電体の光学特性である誘電率εdを測定するための金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法及び金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜などの光学特性を測定するための方法としては、例えば、特許文献1や特許文献2などに開示されたエリプソメーターを用いた方法が知られている。
図18は、エリプソメーター100を用いて、薄膜102の光学特性を測定する原理を説明するための概略図である。
【0003】
エリプソメーター100では、薄膜102に対して、偏光した入射光104を入射角φで照射する。そして、薄膜102で反射された反射光106を検知することによって、反射光106の偏光状態を測定する。
【0004】
そして、入射光104と反射光106の偏光の変化として位相差Δと反射振幅比角ψを求める。この位相差Δと反射振幅比角ψ(通常は、(ψ,Δ)として表される。以下、本明細書においても(ψ,Δ)と記載する)は、入射光104の波長λ、入射角φ、薄膜102の膜厚d、そして、薄膜102の光学特性に依存している。
【0005】
薄膜の光学特性としては、数1で表される複素屈折率と、数2で表される複素誘電関数があげられる。
【0006】
【数1】

【0007】
【数2】

このように、測定によって求められた(ψ,Δ)を、薄膜のモデルから理論的に求められる(ψM,ΔM)と比較して、その差が最小となるように、例えば、最小二乗法などを用いて薄膜のモデルのパラメータを調整することによって、薄膜102の光学特性を求めることができる。
【0008】
一方で、極微小な物質の検出を行うための検体検出装置として、ナノメートルレベルなどの微細領域中で電子と光とが共鳴することにより、高い光出力を得る現象(表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)を応用した表面プラズモン共鳴装置(以下、「SPR装置」と言う)が知られている。
【0009】
また、表面プラズモン共鳴(SPR)現象を応用した表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS:Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy)の原理に基づき、SPR装置よりもさらに高精度に物質の検出を行えるようにした表面プラズモン増強蛍光分光測定装置(以下、「SPFS装置」と言う)もよく知られている。
【0010】
この表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)は、光源より照射したレーザー光などの励起光が、金属薄膜表面で全反射減衰(ATR:attenuated total reflectance)する条件において、金属薄膜表面に表面プラズモン光(疎密波)を発生させることによって、光源より照射した励起光が有するフォトン量を数十倍〜数百倍に増やして、表面プラズモン光の電場増強効果を得るようになっている。
【0011】
そして、この電場増強効果により、金属薄膜近傍の金属薄膜近傍に捕捉したアナライトと結合(標識)した蛍光物質を効率良く励起させ、この蛍光を観察することによって、極微量、極低濃度のアナライトを検出する方法である。
【0012】
ところで、このような表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を知ることは、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)を用いた、血液検査などの臨床試験のような、高精度の検出が要求される分野においては、電場増強度の絶対値を用いて、検出データを補正することにより、アナライトの検出の測定精度を向上するためには重要である。
【0013】
しかしながら、この増強電場は、非伝播光であるため、直接観察することは不可能であり、電場増強の可視化の検討が従来よりなされている。
例えば、非特許文献1(「Surface plasmons at single nanoholes in Au films」, Yin et al., Appl. Phys. Lett., vol. 85, No. 3, 19 July 2004, pp. 468-469)では、入射させた励起光によって発生したプラズモン光と励起光との干渉による干渉縞を、近接場プローブを用いて観察して、電場増強度を測定する試みがなされている。
【0014】
すなわち、この非特許文献1の方法では、図19に示したように、誘電体200の上面に金属薄膜(金膜)202を形成するとともに、この中央部分にピンホール204を形成している。そして、誘電体200の真下から、誘電体200を介して、誘電体200の上面に形成した金属薄膜(金膜)202に、励起光206を照射している。
【0015】
そして、この入射させた励起光206によって、ピンホール204のエッジ部分204aで発生したプラズモン光201と励起光206との干渉による干渉縞を、ピンホール204の直上に配置した近接場プローブ210によって観察している。
【0016】
その結果、図20に示したように、同心円状の干渉縞が観察され、これにより、電場増強度を測定(推定)するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10−038694号公報
【特許文献2】特開2001−296182号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】「Surface plasmons at single nanoholes in Au films」, Yin et al., Appl. Phys. Lett., vol. 85, No. 3, 19 July 2004, pp. 468-469
【非特許文献2】「Local excitation of surface plasmon polaritons at discontinuities of a metal film: Theoretical analysis and optical near-field measurements」, L Salomon et al., PHYSICAL REVIEW B. vol. B, 125409
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、上述するような干渉縞の干渉縞ピッチ(干渉縞の間隔)は、金属薄膜(金膜)202の光学特性だけに依存するわけではなく、金属薄膜上に存在する、例えば、空気、水、蛍光体などの金属薄膜上媒体の光学特性にも影響を受ける。
【0020】
すなわち、金属薄膜の光学特性が既知であれば、その金属薄膜上に存在する媒体の光学特性を測定することができる。
一方で、上述したエリプソメーターを用いた方法では、入射角変化や偏光変化、薄膜のモデルなどの設定が必要なパラメータが非常に多く、解析が複雑となり、測定に要する時間も多大となる。さらに、装置コストも大きくなるため、容易に薄膜の光学特性を測定することはできなかった。
【0021】
また、非特許文献1に開示される電場増強度を測定する方法では、図19に示したように、誘電体200の斜め下方から、入射角を変えて、誘電体200を介して、誘電体200の上面に形成した金属薄膜(金膜)202に、励起光208を照射した場合には、例えば、図21に示したように、干渉縞が同心円状とはならず、これにより、正確な電場増強度を測定(推定)することが困難な場合が生じてしまうことになる。
【0022】
また、非特許文献1の電場増強度を測定する方法では、ピンホール204のエッジ部分204aで発生したプラズモン光201と励起光206との干渉による干渉縞であるので、真の測定したい金属薄膜(金膜)202の平面上(平面方向)の電場増強度を測定することができない。
【0023】
さらに、ピンホール204のエッジ部分204aの形状の違いによって、電場増強度が変化してしまうので、電場増強度の絶対値の測定は、現実的に困難である。
また、金属薄膜(金膜)202にピンホール204を設けなければならず、例えば、マイクロチップなどの測定部材として使用する場合には、製造工程が煩雑となり、コストも高くつくことにもなる。
【0024】
本発明では、金属薄膜上に形成された誘電体の光学特性、特に、誘電体の誘電率を正確かつ容易に測定することができる金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法及び金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置を提供することを目的とする。
【0025】
さらに、従来のように、薄膜にピンホールやエッジを設ける必要がなく、真の測定したい薄膜の平面上(平面方向)の電場増強度を測定することができ、この測定した電場増強度に基づいて、金属薄膜の光学特性を正確かつ容易に測定することができる金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法及び金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法は、
金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させるとともに、
前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に第2の光を発生させ、
前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる干渉縞を発生させ、
前記干渉縞の干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定し、
前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜上誘電体の光学特性を算出することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法は、
金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させ、前記表面プラズモン光の伝搬長を測定し、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に前記表面プラズモン光を発生させるとともに、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に第2の光を発生させて、前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる干渉縞を発生させ、前記干渉縞の干渉縞ピッチを測定し、
前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜上誘電体の光学特性を算出することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置は、
金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、光源より第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させる第1の励起光発生装置と、
前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に第2の光を発生させる第2の励起光発生装置と、
前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる干渉縞を発生した際に、干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定し、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する光学特性測定装置とを備えることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置は、
金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、光源より第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させる第1の励起光発生装置と、
前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に第2の光を発生させる第2の励起光発生装置と、
前記表面プラズモン光を発生した際に、前記表面プラズモン光の伝搬長を測定するとともに、前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる干渉縞を発生した際に、前記干渉縞の干渉縞ピッチを測定し、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する光学特性演算装置とを備えることを特徴とする。
【0030】
また、本発明では、前記干渉縞ピッチλbeat及び前記伝搬長δを、下記式、すなわち、
【0031】
【数3】

【0032】
【数4】

【0033】
【数5】

【0034】
【数6】

【0035】
【数7】

に基づいて演算することによって、前記金属薄膜上誘電体の光学特性である前記金属薄膜上誘電体の誘電率εdを算出することを特徴とする。
【0036】
このように構成することによって、誘電体部材を介して、誘電体部材上に形成された金属薄膜に向かって、光源より第1の励起光である下側励起光を照射し、金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させるとともに、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜に向かって、第1の励起光とは別の第2の励起光、例えば、外部より、上側励起光を直接照射して、金属薄膜表面に伝播光を発生させることができる。
【0037】
そして、表面プラズモン光と第2の光との、表面プラズモン光が走る方向である金属薄膜の平面に平行な方向の波数成分が異なることに起因して、干渉光の干渉縞が発生する。
この際、第2の励起光である、例えば、上側励起光の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定することによって、金属薄膜上誘電体の光学特性(金属薄膜上誘電体の誘電率εd)を測定(推定)することができる。
【0038】
従って、従来のように、金属薄膜にピンホールやエッジを設ける必要がなく、真の測定したい金属薄膜の平面上(平面方向)の電場増強度を測定することができ、この時に生じる干渉縞の干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定するだけで、金属薄膜上誘電体の光学特性(金属薄膜上誘電体の誘電率εd)を測定(推定)することができる。
【0039】
また、本発明では、前記第2の励起光が、前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって照射され、前記金属薄膜表面に前記第2の光を発生させる励起光であることを特徴とする。
【0040】
また、本発明では、前記第2の励起光が、前記誘電体部材を介さずに、前記金属薄膜の上側から直接照射して、前記金属薄膜表面に前記第2の光を発生させる励起光であることを特徴とする。
【0041】
また、本発明では、前記第2の励起光が、前記第1の励起光と同一の光源から分光された励起光であることを特徴とする。
このように構成することによって、例えば、ハーフミラーなどの分光手段を備えるだけでよいので、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0042】
しかも、第2の励起光である、例えば、上側励起光を、第1の励起光である下側励起光と同一の光源から分光するので、下側励起光と正確に、同じ位相の上側励起光を誘電体部材の上面に形成された金属薄膜に向かって直接照射することができ、正確な光学特性(金属薄膜上誘電体の誘電率εd)を測定(推定)することができる。
【0043】
また、本発明では、前記第2の励起光が、前記第1の励起光の光源とは別の光源に由来する励起光であることを特徴とする。
このように構成することによって、第2の励起光である、例えば、上側励起光が、第1の励起光である下側励起光の光源とは別の光源に由来する上側励起光とすることができ、容易に上側励起光の光量を変えることができ、干渉縞のコントラストが最大となる時の干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定することによって、金属薄膜上誘電体の光学特性(金属薄膜上誘電体の誘電率εd)を測定(推定)することができる。
【0044】
また、本発明では、前記第1の励起光を、前記誘電体部材に入射する前に、所定のビーム形状に整形することを特徴とする。
このように構成することによって、第1の励起光を、例えば、矩形光線や集束光線など、ビームプロファイルが急峻な形状に整形することができ、伝搬長の測定精度を向上させることができる。
【0045】
また、本発明では、前記金属薄膜上誘電体中に、電場増強度測定用部材を配置して、
前記電場増強度測定用部材を、前記表面プラズモン光と前記第2の光との干渉光によって励起させ、前記電場増強度測定用部材に現れる干渉縞の前記干渉縞ピッチ、または、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長を測定することを特徴とする。
【0046】
また、本発明では、前記電場増強度測定用部材が、蛍光物質であることを特徴とする。
また、本発明では、前記電場増強度測定用部材が、光散乱物質であることを特徴とする。
【0047】
このように構成することによって、蛍光物質や光散乱物質が表面プラズモン光と第2の光との干渉光によって励起され、蛍光や散乱光として干渉縞が生じるため、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの素子を用いた光検出手段によって干渉縞を測定することができる。
【0048】
また、本発明では、前記表面プラズモン光と前記第2の光との干渉光を、近接場プローブを用いて検出し、
前記近接場プローブによって検出された干渉光の干渉縞の前記干渉縞ピッチ、または、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長を測定することを特徴とする。
【0049】
このように構成することによって、例えば、近接場プローブの先端に蛍光物質を付着して近接場プローブの高さ位置を変えることにより、所定の高さ位置で、蛍光物質を励起させることができ、これにより、増強された蛍光を近接場プローブによって検出することができ、蛍光として検出された干渉光の干渉縞の前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長を測定することができる。
【0050】
また、本発明では、前記干渉縞ピッチの測定、または、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長の測定は、前記第2の励起光の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となった時に測定することを特徴とする。
【0051】
このように構成することによって、干渉縞ピッチ及び伝搬長の測定精度を向上することができる。
また、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法では、前記金属薄膜上に光学特性が既知の電場増強度測定用部材を形成した状態で、
前記金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に前記表面プラズモン光を発生させるとともに、
前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の前記第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に前記第2の光を発生させ、
前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる前記干渉縞を発生させ、
前記干渉縞の前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長を測定し、
前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜の光学特性を算出した後、
前記金属薄膜上に形成された電場増強度測定用部材を除去し、被測定部材である金属薄膜上誘電体を金属薄膜上に配置して、金属薄膜上誘電体の光学特性を測定することを特徴とする。
【0052】
このように、金属薄膜の光学特性が未知の場合であっても、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置と同様な構成の装置を用いて、光学特性が既知の電場増強度測定用部材を金属薄膜上に形成することによって、容易に金属薄膜の光学特性(金属薄膜の屈折率n及び消衰係数k)を測定(推定)することができる。
【0053】
このため、同一の装置を用いて、金属薄膜の光学特性を測定した後、金属薄膜上の電場増強度測定用部材を除去し、被測定部材である金属薄膜上誘電体を金属薄膜上に配置して金属薄膜上誘電体の光学特性を測定することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、表面プラズモン共鳴(SPR)現象や表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいて、電場増強度を測定することによって、エリプソメーターのように複雑なパラメータ設定や解析をすることなく、金属薄膜上誘電体の光学特性である誘電率εdを正確かつ容易に測定(推定)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図2】図2は、図1の部分拡大図である。
【図3】図3は、金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する流れを説明するフローチャートである。
【図4】図4は、光検出手段42によって検出された蛍光発光干渉パターンの模式図である。
【図5】図5(a)は、金属薄膜14の屈折率nと、干渉膜ピッチλbeatの関係を示すグラフ、図5(b)は、金属薄膜14の消衰係数kと、伝搬長δの関係を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の金属薄膜の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の金属薄膜の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図8】図8は、本発明の金属薄膜の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施例の金属薄膜の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図10】図10は、図9の部分拡大図である。
【図11】図11は、金属薄膜の光学特性を算出する流れを説明するフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の別の実施例の金属薄膜の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図13】図13は、図12の部分拡大図である。
【図14】図14は、金属薄膜の光学特性を算出する流れを説明するフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の別の実施例の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図16】図16は、図15の部分拡大図である。
【図17】図17は、金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する流れを説明するフローチャートである。
【図18】図18は、従来のエリプソメーターを用いて、金属薄膜の光学特性を測定する原理を説明するための概略図である。
【図19】図19は、従来の電場増強度を測定する方法を説明する概略図である。
【図20】図20は、図19の従来の電場増強度を測定する方法において観察される干渉縞を模式的に示した概略図である。
【図21】図21は、図19の従来の電場増強度を測定する方法において観察される干渉縞を模式的に示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0057】
1.電場増強度測定用部材として、蛍光物質を用いた実施例
図1は、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図、図2は、図1の部分拡大図、図3は、金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する流れを説明するフローチャートである。
【0058】
1−1.金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の構成
図1において、符号10は、全体で本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置を示している。
図1、図2に示したように、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10は、略三角形のプリズム形状の誘電体部材12を備えており、この誘電体部材12の水平な上面12aに、光学特性(屈折率n及び消衰係数k、もしくは、誘電率εm)が既知の金属薄膜14が形成されている。そして、この金属薄膜14の上面に、測定対象である誘電体15が形成されており、この誘電体15の中に、電場増強度測定用部材として、蛍光物質層17が形成されている。
【0059】
また、誘電体部材12の一方の側面12bの側には、光源20が配置されており、この光源20からの光22の一部を透過して、残りの光を反射させる、例えば、ハーフミラーから構成される分光器24が設けられている。
【0060】
この分光器24を透過した第1の励起光である下側励起光26は、可変減光(ND)フィルター28を介して、その光量が一定量となるように調整された後、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射して、誘電体部材12を介して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、所定の入射角(共鳴角)α1で照射されるようになっている。
【0061】
この金属薄膜14に照射された下側励起光26により、図2の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおいて、金属薄膜14の表面14aに平行な方向に、表面プラズモン光(疎密波)30が発生することになる。
【0062】
一方、光源20からの光22のうち、分光器24で分光された残りの光32は、位相シフト板36を透過した後、ミラー37で反射され、可変減光(ND)フィルター35を介して、誘電体部材12の外側上方から、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14の表面14aに向かって、所定の入射角α2(臨界角以下の角度)で照射されるようになっている。
【0063】
また、誘電体部材12の下方の他方の側面12cの側には、下側励起光26が、金属薄膜14によって反射された金属薄膜反射光38を受光する受光手段40が備えられている。
【0064】
さらに、測定部材18の上方には、後述するように、蛍光物質層17で励起された蛍光による干渉縞のコントラストを検出するために、蛍光物質層17からの蛍光の発光強度を検出する、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの素子を用いた光検出手段42が備えられている。
【0065】
なお、光源20、分光器24、可変減光(ND)フィルター28によって、第1の励起光発生装置として、下側励起光発生装置46が構成されるとともに、位相シフト板36、可変減光(ND)フィルター35、ミラー37で、第2の励起光発生装置として、上側励起光発生装置48が構成されている。
【0066】
さらに、上記の光検出手段42は、コンピュータのCPUなどの光学特性演算装置50に接続されており、後述するように、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定する演算処理が行われるようになっている。
【0067】
この場合、光源20から照射される励起光としては、特に限定されるものではないが、レーザー光が好ましく、波長200〜900nm、0.001〜1000mWのLDレーザー、または、波長230〜800nm、0.01〜100mWの半導体レーザーが好適である。
【0068】
また、誘電体部材12としては、特に限定されるものではないが、光学的に透明な、例えば、ガラス、セラミックスなどの各種の無機物、天然ポリマー、合成ポリマーなどを用いることができ、化学的安定性、製造安定性、光学的透明性の観点から、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)を含むものが好ましい。
【0069】
また、この実施例では、略三角形のプリズム形状の誘電体部材12を用いたが、半円形状、楕円形状にするなど誘電体部材12の形状は、適宜変更が可能である。
なお、金属薄膜14としては、特に限定されるものではないが、例えば、金、銀、アルミニウム、銅、および白金や、これらの金属の合金とすることができる。
【0070】
特に、金のように酸化に対して安定であり、かつ、後述するように、表面プラズモン光(疎密波)による電場増強が大きくなる金属に関しては、より精度よく誘電体15の光学特性を測定することができる。
【0071】
また、金属薄膜14の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スパッタリング法、蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法など)、電解メッキ、無電解メッキ法などが挙げられる。好ましくは、スパッタリング法、蒸着法を使用するのが、薄膜形成条件の調整が容易であるので望ましい。
【0072】
さらに、金属薄膜14の厚さとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、金:5〜500nm、銀:5〜500nm、アルミニウム:5〜500nm、銅:5〜500nm、白金:5〜500nm、および、それらの合金:5〜500nmの範囲内であるのが望ましい。
【0073】
なお、電場増強効果の観点からは、より好ましくは、金:20〜70nm、銀:20〜70nm、アルミニウム:10〜50nm、銅:20〜70nm、白金:20〜70nm、および、それらの合金:10〜70nmの範囲内の金属薄膜であれば、より正確に誘電体15の計測を行うことができる。
【0074】
金属薄膜14の厚さが上記範囲内であれば、表面プラズモン光(疎密波)が発生し易くより精度よく誘電体15の光学特性を測定することができる。また、このような厚さを有する金属薄膜14であれば、大きさ(縦×横)の寸法、形状は、特に限定されない。
【0075】
一方、蛍光物質層17を構成する蛍光物質としては、所定の励起光を照射するか、または電界効果を利用することで励起し、蛍光を発する物質であれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「蛍光」とは、燐光など各種の発光も含まれる。
【0076】
このような蛍光物質を単独で、または、基材中に含ませた状態で、金属薄膜14の上面の誘電体15中に、蛍光物質層17が所定の厚さに形成されている。
この場合、金属薄膜14の上面の誘電体15中に、蛍光物質層17を所定の厚さに形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下に挙げるような方法を用いることができる。
【0077】
すなわち、誘電体15として用いられる光透過性樹脂(ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルブチラールなど)と蛍光色素とを溶媒(ケトン類、芳香族類、エステル類、含ハロゲン系炭化水素類など)中で混合することにより、誘電体15中に、蛍光物質層17を形成することができる。なお、上記の樹脂はタンパク質等が非特異的に吸着しにくいという利点も有する。
【0078】
または、誘電体15がヒドロキシ基を有する誘電体(ポリマー、または酸化チタン、二酸化ケイ素など)である場合、シランカップリング剤を誘電体に反応させ、必要であれば、カルボキシメチルデキストラン等の蛍光色素を担持できる分子を介して、蛍光色素をアミンカップリング法等の公知の手法に従って結合させる方法や、誘電体15に蛍光色素を蒸着させる方法により、蛍光色素を含有する(蛍光色素からなる)薄層を積層させることができる。
【0079】
もしくは、あらかじめ蛍光色素を蒸着させたり配合したりした材料で薄層(例えば、樹脂、ゼラチン等を用いたプレート、シートもしくはフィルム)を調製しておき、これを積層することによって誘電体15を形成してもよい。
【0080】
1−2.金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法について
このように構成される本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10を用いた、金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法について、図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0081】
先ず、光源20から、光22を照射して分光器24を透過した第1の励起光である下側励起光26を、可変減光(ND)フィルター28を介して、その光量が一定量となるように調整された後、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射させる。そして、誘電体部材12を介して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、所定の入射角(共鳴角)α1で照射される。
【0082】
これにより、図2の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおいて、金属薄膜14の表面14aに平行な方向に、表面プラズモン光(疎密波)30が発生する。
なお、この場合、所定の入射角(共鳴角)α1を決定するには、以下の方法を用いることができる。
【0083】
すなわち、金属薄膜14上に表面プラズモン光(疎密波)30が生じる際には、第1の下側励起光26と金属薄膜14中の電子振動とがカップリングし、金属薄膜反射光38のシグナルが変化(光量が減少)することとなるため、受光手段40で受光される金属薄膜反射光38のシグナルが変化(光量が減少)する地点を見つければよい。
【0084】
一方、光源20からの光22のうち、分光器24で分光された残りの光32は、位相シフト板36を透過した後、所定の角度で配置されたミラー37で反射され、可変減光(ND)フィルター35を介して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14の表面14aに向かって、所定の入射角α2(臨界角以下の角度)で照射されるようになっている。
【0085】
すなわち、上側励起光34は、位相シフト板36、可変減光(ND)フィルター35を介して、図2の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aに、所定の入射角α2で別の第2の励起光として照射されるようになっている。
【0086】
なお、この場合、上側励起光34は、下側励起光26と同じ位相の上側励起光34を、金属薄膜14の表面14aに照射するようになっている。
これにより、図2の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおける電場増強度測定用部材の所定高さ位置において、第2の光として伝播光44を発生させるようになっている。
【0087】
なお、この場合、上側励起光34の位相が、下側励起光26の位相と同じ位相となるように、位相シフト板36を調整するようになっている。
さらに、位相シフト板36を光軸と直交する方向に移動することで、ある測定点1箇所での干渉縞の明暗の変化をみることができる。
【0088】
なお、所定の入射角α2の角度は、金属薄膜14の表面14aにおける電場増強度測定用部材の所定高さ位置において伝播光44を発生させる臨界角以下の角度であればよく、特に限定されるものではない。
【0089】
そして、図2の拡大図に示したように、上側励起光34による伝播光44と表面プラズモン光(疎密波)30による干渉縞(干渉光)が発生する。
ところで、このような伝播光44と表面プラズモン光の干渉光は、近接場光なので、そのままでは直接見ることができない。このため、金属薄膜14上の誘電体15中に電場増強度測定用部材として蛍光物質層17を設けている。
【0090】
この誘電体15中の蛍光物質層17の蛍光物質が、伝播光44と表面プラズモン光(疎密波)30による干渉光によって効率良く励起されることになり、蛍光として干渉縞を観察することができるようになる。
【0091】
この原理を用いて、上側励起光34の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定することによって、金属薄膜上誘電体15の光学特性(誘電体の誘電率εd)を測定(推定)するようになっている。
【0092】
なお、上側励起光34の光量を変えながら干渉縞ピッチ等を推定することは必須ではないが、干渉縞のコントラストが最大となる時に測定した方が干渉縞ピッチ及び伝搬長の測定精度を向上することができ好ましい。
【0093】
具体的には、可変減光(ND)フィルター35によって、上側励起光34の光量を変えることによって、誘電体15中の蛍光物質層17による蛍光の発光強度を、例えば、CCDやCMOSなどの素子を用いた光検出手段42によって検出する。
【0094】
この光検出手段42によって検出された蛍光発光干渉パターン49は、図4の模式図に示したようになる。
なお、図4の模式図において、蛍光発光干渉パターン49の高さは、蛍光物質層17による蛍光の発光強度を示している。また、金属薄膜14の下方には誘電体部材12(屈折率n2)が配置されているが、図4の模式図では省略している。
【0095】
このように検出された蛍光発光干渉パターン49から、干渉縞のピッチλbeat及び伝搬長δを計測する。
ここで、干渉縞のピッチλbeatは、図4に示したように、蛍光発光干渉パターンのA点からB点までの距離、すなわち、干渉縞のうち明るい縞の中心から、その隣の明るい縞の中心までの距離である。
【0096】
また、伝搬長δは、図4に示したように、下側励起光26の端部Cから蛍光発光干渉パターンの発光強度が最大値の1/e倍(eはネイピア数)となった点Dまでの距離である。
【0097】
なお、本実施例においては、伝搬長δの測定を上述するように、干渉光の干渉縞を用いて測定しているが、第2の励起光としての上側励起光34を照射することなく、第1の励起光である下側励起光26のみを、誘電体部材12を介して金属薄膜14に照射して、金属薄膜14の表面14aに表面プラズモン光30を発生させ、この状態で表面プラズモン光30の伝搬長δを測定することもできる。
【0098】
この場合も、伝搬長δは上述する干渉光の場合と同様に、下側励起光26の端部Cから表面プラズモン光30の発光強度が最大値の1/e(eはネイピア数)となった点までの距離を求めることにより測定することができる。
【0099】
実際に伝搬長δを測定する際には、第1の励起光である下側励起光26の端部Cの位置などの検出精度が干渉光の干渉縞ピッチに影響されることなく、容易に精度の高い測定ができることから、このように干渉光を発生させることなく伝搬長δを測定することが実用上は好ましい。
【0100】
このように、干渉縞ピッチλbeat及び伝搬長δを計測することによって、以下の数8及び数9の関係式から、表面プラズモン波数ベクトルの実数値Kspp’及び虚数値Kspp’’を算出することができる。
【0101】
【数8】

【0102】
【数9】

ここで、Kn1は、誘電体15(上側励起光側媒体)中の第2の励起光(上側励起光34)の波数を表している。
【0103】
すなわち、表面プラズモン波数ベクトルは数10のように表すことができる。
【0104】
【数10】

一方で、表面プラズモン波数ベクトルは、数11のように近似することができる。
【0105】
【数11】

ここで、εdは誘電体15の誘電率(実数値となる)、εmは金属薄膜14の誘電率(複素数となる)、ωは光の角振動数、cは真空中の光速を表している。
【0106】
この数10及び数11により、数12のように、誘電体15の誘電率εdを算出することができる。
【0107】
【数12】

このような計算を、光学特性演算装置50によって行うことによって、金属薄膜14上の誘電体15の光学特性を正確かつ容易に測定(推定)することができる。
【0108】
1−3.干渉縞ピッチλbeat及び伝搬長δの測定方法
上述した、干渉縞ピッチλbeat及び伝搬長δの測定方法としては、特に限定されず、公知の様々な方法を用いることができるが、以下のような方法を用いることによって、より精度よく測定を行うことができる。
【0109】
本実施例において、励起光22の波長λ0が633nm、誘電体15の屈折率n1が1.33、上記励起光の入射角α2が45°とした場合、蛍光発光干渉パターンの干渉縞ピッチλbeatの平均値はおよそ1.28μm、伝搬長δの平均値は3.2μmとなる。
【0110】
このとき、図5に示すように、誘電体15の光学特性(誘電率εd)が変化した場合の干渉縞ピッチλbeatの変化は、およそ0.001μmオーダー、伝搬長δの変化は、およそ0.1μmオーダーである。
【0111】
このため、光検出手段42の光学倍率を、例えば、100〜200倍に増加させるとともに、光検出手段42で測定する範囲を、例えば、1mmとして複数の干渉縞を測定することによって、干渉縞ピッチλbeatの変化量を積算させる。
【0112】
このように、測定範囲を1mmとすることによって、干渉縞ピッチλbeatの変化量は、数13のように、0.78μmに増加することになる。
【0113】
【数13】

ここで、光検出手段42の光学倍率を、200倍に増加させると、0.78μm×200=156μmと、干渉縞ピッチλbeatの変化量は拡大されて光検出手段42で検出することができる。
【0114】
例えば、光検出手段42を、画素サイズ14μm角のCCDカメラとすると、156μmは、約11画素分に相当するため、十分な測定分解能を得ることができ、精度よく干渉縞ピッチλbeatを測定することができる。
【0115】
一方で、励起光22の波長λ0を長くすることで、伝搬長δを増加させることができる。
例えば、励起光22の波長λ0を633nmから780nmとすることによって、伝搬長δの平均値は3.2μmから13μmに増加する(実測値)。
【0116】
このため、伝搬長δの変化はおよそ0.1μmオーダーからおよそ0.5μmオーダーに増加することになる。
上述したように、光検出手段42の光学倍率を、200倍に増加させると、0.5μm×200=100μmと、伝搬長δの変化量は拡大されて光検出手段42で検出することができる。
【0117】
例えば、光検出手段42を、画素サイズ14μm角のCCDカメラとすると、100μmは、約7画素分に相当するため、十分な測定分解能を得ることができ、精度よく伝搬長δを測定することができる。
【実施例2】
【0118】
2.電場増強度測定用部材として、蛍光物質を用いた変更例
図6は、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【0119】
この変形例の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10は、図1〜図5に示した金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10と基本的には同様な構成であり、また、原理も同様であるので、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0120】
2−1.金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の構成
この変形例では、図6に示すように、上側励起光34を、下側励起光26の光源20とは別の光源52によって照射するように構成している。このように構成することによって、下側励起光26の光源20とは別の光源52に由来する上側励起光34とすることができるため、容易に上側励起光34の光量を変えることができ、実施例1と同様な測定方法を実施することによって、精度よくかつ容易に誘電体15の光学特性を測定(推定)することができる。
【0121】
なお、図示しないが、他の実施例の場合にも、上側励起光34を、下側励起光26の光源20とは別の光源52によって照射するように構成することもできる。
【実施例3】
【0122】
3.電場増強度測定用部材として、蛍光物質を用いた変更例
図7は、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【0123】
3−1.金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の構成
この変形例では、図7に示すように、分光器24を透過した第1の下側励起光26は、減光(ND)フィルター28を介して、その光量が一定量となるように調整された後、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射して、誘電体部材12を介して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、所定の入射角(共鳴角)α1で照射されるようになっている。
【0124】
一方、光源20からの光22のうち、分光器24で分光された残りの光32は、ミラー37で反射され、可変減光(ND)フィルター35、位相シフト板36を介して、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射して、誘電体部材12を介して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14の表面14aに向かって、所定の入射角α2(臨界角以下の角度)で照射されるようになっている。
【0125】
すなわち、可変減光(ND)フィルター35、位相シフト板36を介して、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射した光は、第2の下側励起光33として、金属薄膜14の表面14aに、所定の入射角α2で照射されるようになっている。
【0126】
このように2つの励起光26、34を、両方とも、誘電体部材12の側面12bに入射して、金属薄膜14の下方から照射するように構成した場合にも、実施例1と同様に、干渉光の干渉縞を測定することができる。
【0127】
このような構成の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10を用いて、実施例1と同様な測定方法を実施することによって、精度よくかつ容易に誘電体15の光学特性を測定(推定)することができる。
【0128】
なお、図示しないが、他の実施例の場合にも、2つの励起光26、34を、両方とも、誘電体部材12の側面12bに入射して、金属薄膜14の下方から照射するように構成することもできる。
【実施例4】
【0129】
4.電場増強度測定用部材として、蛍光物質を用いた変形例
図8は、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【0130】
この変形例の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10は、図1〜図5に示した金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10と基本的には同様な構成であり、また、原理も同様であるので、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0131】
4−1.金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の構成
この変形例では、可変減光(ND)フィルター28を透過した下側励起光26が、誘電体部材12の側面12bに入射する前に、ビーム整形レンズ29を透過して、下側励起光26を所定のビーム形状に整形するように構成されている。
【0132】
このように、ビーム整形レンズ29を用いて、ビーム形状を、例えば、矩形ビームや集束ビームなど、ビームプロファイルが急峻な所定のビーム形状に整形することによって、伝搬長δの測定精度を向上させることができる。
【0133】
このような構成の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10を用いて、実施例1と同様な測定方法を実施することによって、精度よくかつ容易に誘電体15の光学特性を測定(推定)することができる。
【実施例5】
【0134】
5.電場増強度測定用部材として、光散乱物質を用いた実施例
図9は、本発明の別の実施例の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図、図10は、図9の部分拡大図、図11は、金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する流れを説明するフローチャートである。
【0135】
この実施例の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10は、図1〜図5に示した金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10と基本的には同様な構成であり、また、原理も同様であるので、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0136】
5−1.金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の構成
実施例1では、金属薄膜14の上面にある誘電体15中に、電場増強度測定用部材として、蛍光物質層17が形成されていたが、この実施例では、誘電体15中に、蛍光物質層17の代わりに、電場増強度測定用部材として、光散乱物質層57が形成されている。
【0137】
そして、光散乱物質層57の光散乱物質を励起させ、これにより増強された散乱光を光検出手段42によって検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の干渉縞のピッチλbeat及び伝搬長δを測定するように構成されている。
【0138】
この場合、光散乱物質としては、例えば、金コロイド、酸化チタン、シリコン、SiO2(ガラス)などの微粒子を用いることができる。
【0139】
5−2.金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法について
このように構成される本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10を用いた、金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法について、図11に示すフローチャートに沿って説明する。
【0140】
実施例1と同様にして、図9に示したように、先ず、光源20から、光22を照射して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、所定の入射角(共鳴角)α1で照射して、図10の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおいて、金属薄膜14の表面14aに平行な方向に、表面プラズモン光(疎密波)30を発生させる。
【0141】
一方、上側励起光34を、図9、図10に示したように、金属薄膜14の表面14aに、所定の入射角α2(臨界角以下の角度)で照射して、金属薄膜14の表面14aにおける電場増強度測定用部材の所定高さ位置において、伝播光44を発生させる。
【0142】
そして、図10の拡大図に示したように、上側励起光34による伝播光44と表面プラズモン光30の、表面プラズモン光30が走る方向である金属薄膜14の表面14aに平行な方向の波数成分が異なることに起因して、干渉光の干渉縞を発生させる。
【0143】
この干渉縞は近接場光なので、そのままでは直接見ることができないため、本実施例においては、金属薄膜14の上面の誘電体15中に、電場増強度測定用部材として、光散乱物質層57が形成されており、上側励起光34による伝播光44と、下側励起光26による表面プラズモン光(疎密波)30による干渉縞(干渉光)によって、誘電体15中の光散乱物質層57を励起させる。
【0144】
この原理を用いて、上側励起光34の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の干渉縞ピッチλbeat及び伝搬長δを測定することによって、誘電体15の光学特性を測定(推定)するようになっている。
【0145】
そして、実施例1と同様にして、干渉縞のピッチλbeat及び伝搬長δから、誘電体15の光学特性(誘電体15の誘電率εd)を測定(推定)することができる。
【実施例6】
【0146】
6.誘電体中に電場増強度測定用部材を形成しない場合の実施例
図12は、本発明の別の実施例の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図、図13は、図12の部分拡大図、図14は、金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する流れを説明するフローチャートである。
【0147】
この実施例の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10は、図1〜図5に示した金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10と基本的には同様な構成であり、また、原理も同様であるので、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0148】
6−1.金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の装置構成
実施例1では、金属薄膜14の上面にある誘電体15中に、電場増強度測定用部材として、蛍光物質層17が形成され、蛍光物質層17からの蛍光の発光強度を、例えば、CCDやCMOSなどの素子を用いた光検出手段42によって検出していたが、この実施例では、誘電体15中には、蛍光物質層17が形成されておらず、電場増強度測定手段として、近接場プローブ54を用いている。
【0149】
例えば、近接場プローブ54の先端に電場増強度測定用部材として蛍光物質55を付着して、近接場プローブ54の高さ位置を変えることにより、所定の高さ位置で、蛍光物質を励起させることができ、これにより、増強された蛍光を近接場プローブ54によって検出することができる。
【0150】
このため、実施例1と同様な原理を用いて、干渉縞のコントラストが最大となる時の干渉縞ピッチλbeat及び伝搬長δを測定することによって、誘電体15の光学特性(誘電体の誘電率εd)を測定(推定)するようになっている。
【0151】
6−2.金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法について
このように構成される本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10を用いた、金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法について、図14に示すフローチャートに沿って説明する。
【0152】
実施例1と同様にして、図12に示したように、先ず、光源20から、光22を照射して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、所定の入射角(共鳴角)α1で照射して、図13の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおいて、金属薄膜14の表面14aに平行な方向に、表面プラズモン光(疎密波)30を発生させる。
【0153】
一方、上側励起光34を、図12、図13に示したように、金属薄膜14の表面14aに、所定の入射角α2(臨界角以下の角度)で照射して、金属薄膜14の表面14aにおける所定の高さ位置において伝播光44を発生させる。
【0154】
そして、図13の拡大図に示したように、上側励起光34による伝播光44と表面プラズモン光30の、表面プラズモン光30が走る方向である金属薄膜14の表面14aに平行な方向の波数成分が異なることに起因して、干渉光の干渉縞を発生させる。
【0155】
この干渉縞は近接場光なので、そのままでは直接見ることができないため、本実施例においては、近接場プローブ54の先端に蛍光物質55を付着して、近接場プローブ54を所定の高さ位置まで接近させることによって、上側励起光34による伝播光44と、下側励起光26による表面プラズモン光(疎密波)30による干渉縞(干渉光)によって、近接場プローブ54の先端に付着した蛍光物質55を励起させる。
【0156】
この原理を用いて、上側励起光34の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の干渉縞のピッチλbeat及び伝搬長δを測定することによって、誘電体15の光学特性を測定(推定)するようになっている。
【0157】
そして、実施例1と同様にして、干渉縞のピッチλbeat及び伝搬長δから、誘電体15の光学特性(誘電体の誘電率εd)を測定(推定)することができる。
【実施例7】
【0158】
7.金属薄膜の光学特性が未知の場合の実施例
図15は、本発明の別の実施例の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法を説明するための、金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の概略を模式的に示す概略図、図16は、図15の部分拡大図、図17は、金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する流れを説明するフローチャートである。
【0159】
この実施例の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10は、図1〜図5に示した金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10と基本的には同様な構成であり、また、原理も同様であるので、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0160】
実施例1では、金属薄膜14の光学特性(金属薄膜の屈折率n及び消衰係数k)が既知であったが、この実施例では、金属薄膜14の光学特性が未知の場合において、本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置を用いて、金属薄膜14の光学特性を測定(推定)した後、金属薄膜14の上面に形成した誘電体15の光学特性を測定(推定)する。
【0161】
7−1.金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置の装置構成
この実施例においては、基本的には実施例1の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10と同じ構成の装置を用いることができる。
【0162】
なお、この実施例では、先ず、金属薄膜14の光学特性を測定するため、金属薄膜14の上面には、電場増強度測定用部材として、光学特性が既知の蛍光物質層16が形成されている。
【0163】
そして、実施例1と同様な原理を用いて、干渉縞のコントラストが最大となる時の干渉縞ピッチλbeat及び伝搬長δを測定することによって、金属薄膜14の光学特性(金属薄膜の屈折率n及び消衰係数k)を測定(推定)するようになっている。
【0164】
7−2.金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法について
このように構成される本発明の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置10を用いた、金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法について、図17に示すフローチャートに沿って説明する。
【0165】
実施例1と同様にして、図15に示したように、先ず、光源20から、光22を照射して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、所定の入射角(共鳴角)α1で照射して、図16の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおいて、金属薄膜14の表面14aに平行な方向に、表面プラズモン光(疎密波)30を発生させる。
【0166】
一方、上側励起光34を、図15、図16に示したように、金属薄膜14の表面14aに、所定の入射角α2(臨界角以下の角度)で照射して、金属薄膜14の表面14aにおける所定高さ位置において伝播光44を発生させる。
【0167】
そして、図16の拡大図に示したように、上側励起光34による伝播光44と表面プラズモン光30の、表面プラズモン光30が走る方向である金属薄膜14の表面14aに平行な方向の波数成分が異なることに起因して、干渉光の干渉縞を発生させる。
【0168】
この干渉縞は近接場光なので、そのままでは直接見ることができないため、金属薄膜14上に電場増強度測定用部材として光学特性が既知の蛍光物質層16を設けている。
この金属薄膜14上の蛍光物質層16の蛍光物質が、伝播光44と表面プラズモン光(疎密波)30による干渉光によって効率良く励起されることになり、蛍光として干渉縞を観察することができるようになる。
【0169】
この原理を用いて、上側励起光34の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の干渉縞のピッチλbeat及び伝搬長δを測定することによって、金属薄膜14の光学特性(金属薄膜の屈折率n及び消衰係数k)を測定(推定)するようになっている。
【0170】
具体的には、実施例1と同様にして、干渉縞ピッチλbeat及び伝搬長δを計測することによって、上記の数8及び数9の関係式から、表面プラズモン波数ベクトルの実数値Kspp’及び虚数値Kspp’’を算出することができる。
【0171】
そして、表面プラズモン波数ベクトルは、数14のように近似することができる。
【0172】
【数14】

ここで、εDは金属薄膜上媒体としての上側励起光側媒体(蛍光物質層)の誘電率(実数値となる)、εmは金属薄膜14の誘電率(複素数となる)、ωは光の角振動数、cは真空中の光速を表している。
【0173】
数14より、数15の関係式が得られる。
【0174】
【数15】

そして、数15の関係式より、金属薄膜14の光学特性である屈折率n及び消衰係数kを算出することができる。
【0175】
【数16】

このような計算を、光学特性測定装置50によって行うことによって、金属薄膜14の光学特性を正確かつ容易に測定(推定)することができる。
【0176】
なお、上記において、「金属薄膜上媒体」とは、表面プラズモン光及び伝播光が発生する金属薄膜上の媒体であって、上述するように金属薄膜上に上側励起光側媒体として蛍光物質層が形成されている場合には、その蛍光物質層が該当し、表面プラズモン光及び伝播光が発生する領域である金属薄膜上に、蛍光物質層などが形成されていない場合(例えば、実施例6の場合など)には、例えば、空気や水が金属薄膜上媒体に該当する。
【0177】
このようにして、金属薄膜14の光学特性が測定できた後に、金属薄膜14上の光学特性が既知の蛍光物質層16を除去し、実際に光学特性を測定したい誘電体15を金属薄膜14上に配置する。
【0178】
この状態(すなわち、図1と同じ状態)において、実施例1と同様にして、干渉縞ピッチλbeat及び伝搬長δから、誘電体15の光学特性(誘電体の誘電率εd)を測定(推定)することができる。
【0179】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、本実施例では、電場増強度測定用部材として蛍光物質や光散乱物質を用いて光検出手段や近接場プローブによって干渉縞を検出しているが、干渉縞を検出し、干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定することができるものであれば構わないなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、例えば、金膜や銀膜などの金属薄膜の上面に配置される蛍光体などの誘電体の誘電率εdを、エリプソメーターのように複雑なパラメータ設定や解析をすることなく、正確かつ容易に測定(推定)することができる。
【符号の説明】
【0181】
10 光学特性測定装置
12 誘電体部材
12a 上面
12b 側面
12c 側面
14 金属薄膜
14a 表面
15 金属薄膜上誘電体
16 蛍光物質層
17 蛍光物質層
18 測定部材
20 光源
22 光
24 分光器
26 下側励起光
28 フィルター
29 ビーム整形レンズ
30 表面プラズモン光
32 光
33 第2の下側励起光
34 上側励起光
35 フィルター
36 位相シフト板
37 ミラー
38 金属薄膜反射光
40 受光手段
42 光検出手段
44 伝播光
46 下側励起光発生装置
48 上側励起光発生装置
49 蛍光発光干渉パターン
50 光学特性演算装置
52 光源
54 近接場プローブ
55 蛍光物質
57 光散乱物質層
100 エリプソメーター
102 金属薄膜
104 入射光
106 反射光
200 誘電体
201 プラズモン光
204 ピンホール
204a エッジ部分
206 励起光
208 励起光
210 近接場プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄膜上に形成された金属薄膜上誘電体の光学特性を測定するための光学特性測定方法であって、
前記金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させるとともに、
前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に第2の光を発生させ、
前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる干渉縞を発生させ、
前記干渉縞の干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定し、
前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜上誘電体の光学特性を算出することを特徴とする金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項2】
金属薄膜上に形成された金属薄膜上誘電体の光学特性を測定するための光学特性測定方法であって、
前記金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させ、前記表面プラズモン光の伝搬長を測定し、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に前記表面プラズモン光を発生させるとともに、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に第2の光を発生させて、前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる干渉縞を発生させ、前記干渉縞の干渉縞ピッチを測定し、
前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜上誘電体の光学特性を算出することを特徴とする金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項3】
前記干渉縞ピッチλbeat及び前記伝搬長δを、下記式、すなわち、
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

に基づいて演算することによって、前記金属薄膜上誘電体の光学特性である前記金属薄膜上誘電体の誘電率εdを算出することを特徴とする請求項1または2に記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項4】
前記第2の励起光が、前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって照射され、前記金属薄膜表面に前記第2の光を発生させる励起光であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項5】
前記第2の励起光が、前記誘電体部材を介さずに、前記金属薄膜の上側から直接照射して、前記金属薄膜表面に前記第2の光を発生させる励起光であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項6】
前記第2の励起光が、前記第1の励起光と同一の光源から分光された励起光であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項7】
前記第2の励起光が、前記第1の励起光の光源とは別の光源に由来する励起光であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項8】
前記第1の励起光を、前記誘電体部材に入射する前に、所定のビーム形状に整形することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項9】
前記金属薄膜上誘電体中に、電場増強度測定用部材を配置して、
前記電場増強度測定用部材を、前記表面プラズモン光と前記第2の光との干渉光によって励起させ、前記電場増強度測定用部材に現れる干渉縞の前記干渉縞ピッチ、または、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長を測定することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項10】
前記電場増強度測定用部材が、蛍光物質であることを特徴とする請求項9に記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項11】
前記電場増強度測定用部材が、光散乱物質であることを特徴とする請求項9に記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項12】
前記表面プラズモン光と前記第2の光との干渉光を、近接場プローブを用いて検出し、
前記近接場プローブによって検出された干渉光の干渉縞の前記干渉縞ピッチ、または、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長を測定することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項13】
前記干渉縞ピッチの測定、または、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長の測定は、前記第2の励起光の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となった時に測定することを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項14】
前記金属薄膜上に光学特性が既知の電場増強度測定用部材を形成した状態で、
前記金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に前記表面プラズモン光を発生させるとともに、
前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の前記第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に前記第2の光を発生させ、
前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる前記干渉縞を発生させ、
前記干渉縞の前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長を測定し、
前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜の光学特性を算出した後、
前記金属薄膜上に形成された電場増強度測定用部材を除去し、被測定部材である金属薄膜上誘電体を金属薄膜上に配置して、金属薄膜上誘電体の光学特性を測定することを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定方法。
【請求項15】
金属薄膜上に形成された金属薄膜上誘電体の光学特性を測定するための光学特性測定装置であって、
前記金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、光源より第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させる第1の励起光発生装置と、
前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に第2の光を発生させる第2の励起光発生装置と、
前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる干渉縞を発生した際に、干渉縞ピッチ及び伝搬長を測定し、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する光学特性測定装置とを備えることを特徴とする金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項16】
金属薄膜上に形成された金属薄膜上誘電体の光学特性を測定するための光学特性測定装置であって、
前記金属薄膜の下方に配置された誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、光源より第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させる第1の励起光発生装置と、
前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に第2の光を発生させる第2の励起光発生装置と、
前記表面プラズモン光を発生した際に、前記表面プラズモン光の伝搬長を測定するとともに、前記表面プラズモン光と前記第2の光とによる干渉縞を発生した際に、前記干渉縞の干渉縞ピッチを測定し、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長に基づいて、前記金属薄膜上誘電体の光学特性を算出する光学特性演算装置とを備えることを特徴とする金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項17】
前記光学特性演算装置において、前記干渉縞ピッチλbeat及び前記伝搬長δを、下記式、すなわち、
【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

に基づいて演算することによって、前記金属薄膜上誘電体の光学特性である前記金属薄膜上誘電体の誘電率εdを算出することを特徴とする請求項15または16に記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項18】
前記第2の励起光が、前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって照射され、前記金属薄膜表面に前記第2の光を発生させる励起光であることを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項19】
前記第2の励起光が、前記誘電体部材を介さずに、前記金属薄膜の上側から直接照射して、前記金属薄膜表面に前記第2の光を発生させる励起光であることを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項20】
前記光学特性測定装置が、光源からの光を分光する分光器をさらに備え、
前記第2の励起光が、前記第1の励起光と同一の光源からの光が前記分光器によって分光された励起光であることを特徴とする請求項15から19のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項21】
前記第2の励起光が、前記第1の励起光の光源とは別の光源に由来する励起光であることを特徴とする請求項15から19のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項22】
前記第1の励起光発生装置が、ビーム整形レンズをさらに備え、
前記第1の励起光を、前記誘電体部材に入射する前に、前記ビーム整形レンズによってビーム形状に整形することを特徴とする請求項15から21のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項23】
前記光学特性演算装置が、光検出手段をさらに備えるとともに、
前記金属薄膜上誘電体中に、電場増強度測定用部材を配置して、
前記電場増強度測定用部材を、前記表面プラズモン光と前記第2の光との干渉光によって励起させ、前記電場増強度測定用部材に現れる干渉縞を前記光検出手段によって検出して、
前記光学特性演算装置において、前記干渉縞の前記干渉縞ピッチ、または、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長を測定することを特徴とする請求項15から22のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項24】
前記電場増強度測定用部材が、蛍光物質であることを特徴とする請求項22に記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項25】
前記電場増強度測定用部材が、光散乱物質であることを特徴とする請求項22に記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。
【請求項26】
前記光学特性演算装置が、近接場プローブをさらに備え、
前記表面プラズモン光と前記第2の光との干渉光を、前記近接場プローブを用いて検出し、
前記光学特性演算装置において、前記近接場プローブによって検出された干渉光の干渉縞の前記干渉縞ピッチ、または、前記干渉縞ピッチ及び前記伝搬長を測定することを特徴とする請求項14から21のいずれかに記載の金属薄膜上誘電体の光学特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−132886(P2012−132886A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287612(P2010−287612)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】