説明

金属表面、ガラス表面、及びセラミック表面上の微細干渉顔料含有ガラス層、及びその製造方法

【課題】金属表面、ガラス表面、又はセラミック表面を有す基板であって、干渉顔料を含有するガラス状の層を付与された基板を製造する方法、該基板、及びその使用を提供する。
【解決手段】本発明は、金属表面、ガラス表面、又はセラミック表面を有し、且つ、干渉顔料を含むガラス状層が付与された基板を製造する方法に関し、誘電干渉層を有する該干渉顔料は湿式細砕により、好ましくは粒径が6μm以下になるまで、細砕され、粉砕された干渉顔料は珪酸塩含有懸濁液に分散され、該懸濁液は塗工組成物として前記金属表面、前記ガラス表面、又は前記セラミック表面に塗布され、前記粉砕干渉顔料を含む前記ガラス状層を形成するため650℃以下の温度で高密化される。前記干渉顔料の前記湿式細砕により、前記干渉顔料が達成しえる光学的効果を粉砕により損なうことなく高品質のガラス状層を金属表面、ガラス表面、又はセラミック表面上に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面、ガラス表面、又はセラミック表面を有する基板であって、干渉顔料を含有するガラス状の層を付与された基板を製造する方法、該基板、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2にナノガラス層について記載がされている。該ナノガラス層は比較的高い温度、但し、使用されているガラスの変態点よりかなり低い温度で、スチール、アルミニウム、黄色銅等の金属基板上に固化される。これら特許文献に記載の温度より低い固化温度は、液相で塗布された層のナノスケールの構造によって起因し、このナノスケールの構造が高い内部の熱力学エネルギーを引き起こし、よって、固化温度が低下する。この低固化温度により、非常に薄い(例えば、3μmから10μm)透明なガラス状の層を上述の金属表面、ガラス表面、及びセラミック表面上に得ることができる。これらの層は緻密で機械的に安定であるが、溶融ガラスとは対照的に、ある程度の可塑性がある。
【0003】
また、原理的には、耐熱安定顔料を有する液体塗工材料を提供することも可能である。この場合、透明ではなくなり、やや濁ったガラス層が形成され、該ガラス層が前記顔料のマトリックスの役割を果たす。
【0004】
輪郭がはっきりとした層を形成するため、顔料の径は、通常、層厚の1/10を超えてはならない。顔料の径が膜厚の1/10を超えると、平滑な層を得ることができず、また、顔料が表面から突出するためである。これは、完全なナノガラス層を作製するためには、層厚により、顔料の径が2μmから5μmを超えてはならないことを意味する。しかしながら、一般的な顔料は通常ミクロオーダーの径でしか得ることができない。これは、次の理由による。
・粒径1μm以下への顔料の粉砕は追加的で極めて複雑であり、殆どの場合不可能である。
・極めて微細な顔料は、通常、粒径1μmを超えると、顔料と異なる色彩効果(増白化)が起きる。
【0005】
原理的には、この知見は全種類の顔料に当てはまる。即ち、電磁スペクトルの箇所の電子吸収にのみ基づくものではなく、互いに異なる屈折率を有する複数の誘電層の干渉に基づき、これらに選択的に吸収作用も組み合わせた顔料にも該当する。しかし、そのような干渉顔料の場合、従来の顔料に比べ、更なる問題がある。それは、機械的粉砕の場合、顔料の干渉層が損傷を受け、又は破壊され、色彩効果が損なわれるか、更には通常完全に破壊される。現在市販されている干渉顔料は、通常、10μmを遥かに超える粒径を有する。上述の理由から、干渉顔料の製造者はこれら顔料を粉砕するのは不可能であると言っている。
【0006】
原理的にはそのような干渉顔料を有する上述のナノガラス層を形成するのは可能であるが、これら干渉顔料の相対的なサイズにより、得られる層は上述の理由により粗くなり、亀裂が入るものもあり、層は通常不完全であり、及び/又は顔料に起因する固化不良による孔を含む。一方、干渉顔料を含むそのようなナノガラス層は、それら光沢顔料を有するナノガラスに基づく層を初めて提供することができ、用途を広げることができるため、装飾的理由から非常に注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/066388号パンフレット
【特許文献2】国際公開第98/45502号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、層特性に関連する上述の不都合がなく、市販されている通常の干渉顔料が原材料として使用できる、干渉に基づく顔料を有するナノガラス層を形成することを目的とする。同時に、干渉顔料が、ガラス表面及びセラミック表面等の他の無機表面上に低粗度の層を得るのにどの程度適しているかについても考察される。
【0009】
本発明の目的は、湿式細砕、特に、湿式ボール細砕の使用、更には回転子及び固定子を有する高速回転ボールミルの使用により、第一に干渉効果が殆ど完全に保たれ、第二に干渉顔料を有する高品質のナノガラス層が得られるように粒径を低減させるように顔料を十分に優しく細砕することにより驚くほどに達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、金属表面、ガラス表面、又はセラミック表面を有し、干渉顔料を含むガラス状層が付与された基板の製造方法に関し、該方法は以下の工程を含む。
a)湿式細砕により、少なくとも1つの誘電干渉層を有する顔料を粉砕する、好ましくは粒径が6μm以下になるまで粉砕する工程、
b)前記粉砕された干渉顔料を珪酸塩含有懸濁液に分散させ、塗工組成物を得る工程、
c)湿式塗布により前記塗工組成物を前記金属表面、ガラス表面、又はセラミック表面に塗布する工程、及び
d)650℃以下の温度で前記塗工組成物を高密化させ、前記粉砕干渉顔料を含む前記ガラス状層を形成する工程
【0011】
更に、本発明は、本発明の方法により得られ、干渉顔料を含むガラス状層が付与された金属表面、ガラス表面、又はセラミック表面を有する基板及び該基板の使用に関する。以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
干渉顔料は広く知られており、市販品も出回っている。市販品の例としては、Merck社のイリオジン(Iriodin(登録商標))顔料が挙げられる。全ての公知の干渉顔料が本発明に好適に用いられる。
【0013】
好ましい干渉顔料は、特に、顔料又は支持体に1つ以上の層を通常小板状に有するものである。通常、前記支持体は前記層により覆われている。使用される前記顔料は、全てが無機支持体を有する干渉顔料であってもよい。好ましい無機支持体としては、マイカ、SiOガラス、金属箔等が挙げられる。前記支持体上に存在する好ましい層としては、酸化層、特に酸化金属層が挙げられる。前記層は干渉効果を誘引する誘電層である。前記層に用いられる好ましい材料としては、シリコン、チタン、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、及びスズの酸化金属、又はそれらの組み合わせが挙げられ、MgF、ZnS等の材料も好ましく用いられる。2つ以上の層がある場合、使用される材料はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。支持体のタイプ、層の数、厚み、及び材料等により異なる効果が得られる。好ましい顔料としては、マイカベースの効果顔料(Effektpigmente)が挙げられ、例えば、Merck社のイリオジン(Iriodin(登録商標))顔料として知られている1つ以上の酸化金属層で覆われているマイカである。イリオジン(Iriodin(登録商標))顔料では、1,000を超える色合いが入手可能である。
【0014】
第1段階において、通常の干渉顔料は、該顔料を機械的に粉砕するため、湿式細砕される。このため、前記干渉顔料は、液相中で、即ち懸濁液として使用される。用いられる前記液相としては、処理される前記顔料粒子を溶解しない又は本質的に溶解しない限り、無機又は有機の分散溶媒又は溶剤でもよい。好ましい前記分散媒体は、処理される前記顔料粒子によるが、水、特に脱イオン化水などの無機溶剤、有機溶剤、及びこれらの組み合わせより選択される。前記分散溶媒は極性分散媒、非極性分散媒、又は非プロトン性分散媒であってもよい。
【0015】
有機分散溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコールエーテル類、グリコール類、アミド類及び他の窒素化合物、スルホキシド類及びスルホン類、脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、クロロフルオロカーボン類、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノール等の炭素数1から8のアルコール類が挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン等の炭素数1から8のケトン類が挙げられる。
前記エステル類としては、エチルアセテート及びグリコールエステル類が挙げられる。
前記エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びテトラヒドロピランが挙げられる。
前記グリコールエーテル類としては、モノグリコールエーテル、ジグリコールエーテル、トリグリコールエーテル、及びポリグリコールエーテルが挙げられる。
前記グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられる。
前記アミド類及び他の窒素化合物としては、ジメチルアセトアミド、ピリジン、及びアセトニトリルが挙げられる。
前記脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素類としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンジン、石油エーテル、メチルシクロヘキサン、デカリン、テルペン溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数5から15のものが挙げられる。
前記ハロゲン化炭水化物類としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、及び塩化エチレンが挙げられる。
好ましい溶剤としては、アルコール類、水、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
干渉顔料と分散溶媒とを混合して得られる懸濁液は、スラリー又はペーストを含んでいてもよい。干渉顔料を懸濁するために、更に、分散剤、流動助剤等の添加剤を加えることが出来るが、通常含んでいる必要はなく、好ましくは干渉顔料と分散媒体との混合物のみを前記粉砕のために用い、適宜必要に応じて分散剤を更に用いる。用いられる前記分散剤は、乳化剤又は界面活性剤とも呼ばれ、当業者に公知の全ての適切な分散剤であってよい。適切な分散剤は、顔料及び分散溶媒の種類によって、当業者に選択されてよい。分散剤の例としては、例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie,第4版, 界面活性剤の章(第22巻、455頁以降)及びエマルジョンの章(第10巻、449頁以降)の記載中から見つけることができる。好ましい例としては、Disperbyk(登録商標)101、トリエタノールアミンなどのアミン類、又はγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシラン類が挙げられる。
【0017】
前記湿式細砕は、粉砕、混練又は細砕装置等の慣例及び公知の装置によって行うことができる。好ましい湿式細砕としては、分散機、ターボミキサー、ノズルジェット分散機、ロールミル、ミル、及び混練機が挙げられる。ミル及び混練機としては、ボールミル、ロッドミル、ドラムミル、コニカルミル、チューブミル、自生ミル、遊星ミル、振動ミル、攪拌ミル等の緩いミリング手段を有するミル、せん断ロールニーダ、モルタルミル、及びコロイドミル等が挙げられる。好ましく用いられる装置としては、ホモジナイザー、ターボミキサー、ボールミル、ロッドミル、遊星ミル、振動ミル、攪拌ミル、ロールミル、コロイドミル、及び混練機である。前記湿式細砕装置として特に好ましいのは、回転子及び固定子を有する回転ボールミルであって、該回転ボールミルは好ましくは回転子及び固定子を有する高速回転ボールミルである。
【0018】
前記顔料を粉砕するための前記湿式細砕の適切な温度は、当業者によって設定できる。例えば、室温又は常温(例えば15℃から30℃)で粉砕を行うことができる。前記粉砕工程では熱が発生する。これは望ましいが、必要であれば、通常の冷却手段によって冷却することもできる。湿式細砕中、適切な温度に設定する手段としては、当業者に公知のものが用いられる。
【0019】
前記湿式細砕の時間は、もちろん、使用される装置、印加されるエネルギー、使用される分散溶媒及び干渉顔料、それらの特性、及び所望の粉砕の程度を含む要因による。よって、前記湿式細砕の時間は広範囲で異なっていてもよく、例えば、数分から数日であってもよい。例えば、回転ボールミルの場合、好ましい粉砕としては、1時間から6時間の期間に亘る粉砕が適当である。前記粉砕は2段階又は多段階で行うことができる。多段階の場合、それぞれの段階において、例えば、印加されるエネルギー、又は使用される粉砕体が異なってもよい。
【0020】
同様に、前記湿式細砕の懸濁液における前記干渉顔料の含有量は、広範囲で異なっていてもよく、使用される装置、用いられる材料等の要因により、当業者によって適宜決定することができる。前記湿式細砕のプロセスはシングルパス操作、マルチパス操作(シャトル法)又は循環プロセスにより継続的に行うことができ、又はバッチ操作により回分式に行うことができる。
【0021】
好ましい態様では、干渉顔料は分散溶媒、好ましくはアルコールに分散され、回転子及び固定子を有する高せん断回転ボールミルで数時間に亘って、好ましくは1時間から6時間に亘って粉砕され、該粉砕のプロセスにおいて、粉砕される材料は循環される。
【0022】
上述したように、前記干渉顔料に用いられる原材料はいかなるサイズの通常の干渉顔料であってもよい。現在市販されている干渉顔料は、通常、10μmをかなり超える粒径を有している。例えば、平均粒径が5μmから25μmの干渉顔料を用いることができる。製造業者のデータによると、前記平均粒径は、マルバーンレーザー回折により測定された存在する粒子径範囲である。
【0023】
原材料として用いられる前記干渉顔料は、上述の湿式細砕法により粉砕される。即ち、前記原材料の粒径は前記湿式細砕法により減少される。前記干渉顔料は、好ましくは粒径が6μm以下になるように、好ましくは5μm以下、例えば1μmから5μmになるように前記湿式細砕により粉砕される。
【0024】
ここでいう6μm以下の粒径とは、大半の粒子、好ましくは実質的に全ての粒子が粒径6μm以下であり、全ての粒子に対して粒径6μm以下の粒子数が、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも99%、特に好ましくは少なくとも99.5%又は100%である。前記粒径は光学顕微鏡を用い、画像の視覚評価により測定される。他の測定法も知られており、例えば、マルバーンレーザー回折が挙げられる。前記粒子は実質的に小板状粒子であるため、前記粒径としては、側面の径、又は安定した粒子位置での投影面積と等しい円の相当径が用いられる。
【0025】
製造業者からの粉砕により顔料の色が失われるとの警告にもかかわらず、平均粒径が5μmから25μmの干渉顔料を平均粒径が2μmから5μmになるように粉砕しても、色彩効果の変化は肉眼では全く確認されなかった。
【0026】
前記湿式細砕後、前記粉砕された干渉顔料の懸濁液が得られる。その後、顔料は、従来の方法により粉砕に使用された前記液相から取り除かれ、乾燥される。結果得られた粉末は、塗工組成物を得るため、珪酸塩含有懸濁液と混合することができる。もちろん、前記珪酸塩含有懸濁液に添加する前に、前記液相から取り除かれた前記干渉顔料の粉末を他の分散溶媒に混合することもできる(溶媒交換)。
【0027】
或いは、塗工組成物を得るため、前記湿式細砕により得られた粉砕された干渉顔料の懸濁液を、直接、珪酸塩含有懸濁液と混合することができる。これは、粉砕に用いられる前記液相(例えば、アルコール)がゾルと化学的に相溶な場合、有利である。もちろんここでも、例えば、前記液相の部分的除去及び/又は添加、又は他の分散溶媒の添加により湿式細砕により得られた懸濁液の濃度又は希釈等は、目的に合わせて変更可能である。行われる部分又は完全交換に用いられる分散溶媒は、上述と同様の分散溶媒を含む。
【0028】
粉末状の又は懸濁液としての前記粉砕干渉顔料は、珪酸塩含有懸濁液、好ましくは珪酸塩ゾルに分散される。前記珪酸塩含有懸濁液は珪酸塩組成物を含む。前記珪酸塩含有懸濁液は、好ましくは有機基で変性された珪酸塩粒子を含むゾルである。好ましく用いられる珪酸塩含有懸濁液は、国際公開第2005/066388号パンフレットに記載されている塗工ゾルであり、該記載は本明細書に参照として包含される。
【0029】
用いられる前記珪酸塩組成物は、好ましくは、アルカリ酸化金属、アルカリ水酸化金属、アルカリ土類酸化金属、アルカリ土類水酸化金属、ナノスケールのSiO粒子の少なくもといずれかの存在下で、少なくとも1つの有機的に変性された加水分解性シランを加水分解及び重縮合することにより得られる組成物である。
【0030】
このような組成物又は懸濁液は、例えば、a)アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びアルカリ土類金属の水酸化物から選択される少なくとも1つの化合物、及びb)ナノスケールのSiO粒子の少なくともいずれかの存在下で、少なくとも1つの一般式(I)で示されるシラン、又は該シランから誘導される少なくとも1つのオリゴマーを加水分解及び重縮合することにより得られる。

SiX4−n (I)

前記一般式(I)において、X基はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、それぞれ加水分解性基又は水酸基であり、R基はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素、炭素数4までのアルキル基、炭素数4までのアルケニル基、炭素数4までのアルキニル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数6から10のアラルキル基、及び炭素数6から10のアルカリル基であり、nは0、1、又は2であって、nが1又は2のシランが少なくとも1つ用いられる。
【0031】
少なくとも2つの前記一般式(I)で示されるシランを組み合わせで用いるのが好ましい。前記一般式(I)のシラン原料のn(モル基準)の平均価は、好ましくは0.2から1.5であり、より好ましくは0.5から1.0である。
【0032】
前記一般式(I)において、それぞれ同じでも異なっていてもよいX基は加水分解性基又は水酸基である。加水分解性X基の具体例としては、ハロゲン原子(特に塩素及び臭素)、アルコキシ基、及び炭素数6までのアシルオキシ基が挙げられる。特に好ましいのはアルコキシ基であり、更に、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、及びi−プロポキシ等の炭素数1から4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基が特に好ましい。
【0033】
前記一般式(I)におけるR基は、nが2の場合、それぞれ同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素、炭素数4までのアルキル基、炭素数4までのアルケニル基、炭素数4までのアルキニル基、炭素数6から10までのアリール基、炭素数6から10までのアラルキル基、及び炭素数6から10までのアルカリル基である。それら基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、フェニル基、トリル基、及びベンジル基が挙げられる。好ましいR基は炭素数1から4のアルキル基であり、メチル基、エチル基及びフェニル基が特に好ましい。
【0034】
本発明において、少なくとも2つの前記一般式(I)のシランが用いられる場合、1つのシランにおいてnが0であり、他のシランにおいてnが1であるのが好ましい。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の少なくとも1つのアルキルトリアルコキシシランと、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の少なくとも1つのテトラアルコキシシランとの混合物が好ましい。
ナノスケールのSiO粒子は、平均粒径が100nm以下のSiO粒子であると解釈されるのが好ましく、より好ましくは平均粒径が50nm以下のSiO粒子、更に好ましくは平均粒径が30nm以下のSiO粒子である。明記されていない限り、本明細書中において、前記平均粒径は体積平均粒径(d50価)を意味し、該体積平均粒径は超微粒子分析装置UPA(Ultrafine Particle Analyzer, Leeds Northrup社製(レーザー光学系、動的光散乱))により測定することができる。例えば、市販品のシリカを用いることができる。該市販品としては、Levasils(登録商標)、Bayer AG製のシリカゾル等のシリカゾル、デグサ製のエアロジル(Aerosil)製品等のヒュームドシリカが挙げられる。ナノスケールのSiO粒子が添加される場合、前記一般式(I)のシランにおける全てのSi原子と、該ナノスケールのSiO粒子における全てのSi原子との比は、5:1から1:2の範囲であるのが好ましく、3:1から1:1の範囲であるのがより好ましい。
【0035】
前記ナノスケールのSiO粒子の代わりに、又は前記ナノスケールのSiO粒子に追加して、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びアルカリ土類金属の水酸化物から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で、前記一般式(I)のシランを加水分解及び重縮合することができる。これらの酸化物及び水酸化物は、好ましくはLi、Na、K、Mg、Ca及びBaの少なくともいずれかの酸化物及び水酸化物である。アルカリ金属の水酸化物、特にNaOH及びKOHを用いるのが好ましい。アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、又はアルカリ土類金属の水酸化物が用いられる場合、Si原子:アルカリ金属又はアルカリ土類金属の比は20:1から7:1の範囲であるのが好ましく、15:1から10:1の範囲であるのが特に好ましい。珪素とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との原子比は、得られる塗工膜が水溶性とならない程度に十分に大きくなるように選択される。
【0036】
前記アルカリ金属及び前記アルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物が用いられる場合、加水分解及び重縮合はもちろんアルカリ溶媒中で行われる。これは、仮に酸からの攻撃がある場合、酸の攻撃に低い耐性しか有していない金属表面(例えばスチール表面)に本発明の方法によりガラス様の塗工膜が付与される場合に特に有利である。シランの加水分解及び重縮合がナノスケールSiO粒子のみの存在下で行われる場合、通常無機酸で通常、酸触媒作用を起こす。
【0037】
好ましい態様において、前記シランの加水分解及び重縮合は、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、任意で選択されるナノスケールのSiO粒子との存在下で行われる。前記加水分解及び重縮合は溶剤の存在下であっても、不存在下であっても行うことができる。溶剤としては、例えば、上述の分散溶媒が挙げられる。好ましい溶剤としては、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類等の水溶性有機溶剤であり、特に好ましいのはアルコール類である。通常、前記加水分解及び重縮合においてSiO粒子を使用しなくとも、前記加水分解性化合物からナノスケール粒子が形成される。よって、好ましい態様においては、前記珪酸塩含有組成物は、ナノスケール粒子を含み、例えば、該ナノスケール粒子は平均粒径が200nm以下のものであり、特に、SiO粒子又は珪酸塩粒子であるのが好ましい。
【0038】
前記加水分解性シランは、通常、ゾルゲル法により加水分解及び重縮合される。ゾルゲル法において、任意の酸性又は塩基性触媒の存在下で、加水分解性化合物は通常加水分解され、少なくとも部分的に水と縮合されることがある。化学量論量の水を用いることができるが、該化学量論量より少ない量又は多い量でも用いることができる。形成されるゾルは、縮合度、溶媒の種類、pH値等パラメーターを所望のものに調整することにより前記塗工組成物に望まれる粘性に調整することができる。前記ゾルゲル法の詳細は、例えば、C.J. Brinker, G.W. Scherer: “Sol−Gel Science − The Physics and Chemistry of Sol−Gel−Processing“, Academic Press, Boston, San Diego, New York, Sydney (1990)に記載されている。
【0039】
前記塗工組成物を得るために、干渉顔料は珪酸塩含有懸濁液に分散される。通常、単純な添加攪拌で十分である。前記珪酸塩含有懸濁液に添加される粉砕干渉顔料の割合は、最終用途によって大きく異なる。例えば、上述の粉砕法により粉砕された干渉顔料は、塗工される塗工組成物の総重量(分散溶媒も含む)に対し、0.1重量%から15重量%、好ましくは1重量%から6重量%、より好ましくは1.5重量%から3重量%の含有量で分散することができる。前記顔料含量を調節することで、塗工膜の粗さ、金属基板の被覆程度、超微細干渉顔料を含む層の引掻き及び磨耗耐性の調整できる。
【0040】
必要により、通常の塗料用添加剤を前記塗工組成物に添加することができる。前記添加物としては、例えば、レオロジー及び乾燥特性を調整する添加剤、濡れ補助剤、平滑化補助剤、消泡剤等が挙げられる。また、指紋の付着を防止する特性を有するマット層を得るため、マイクロスケールのSiO粒子又はセラミック粉末などの従来の艶消し剤を添加することもできる。
【0041】
前記基板は、金属表面、ガラス表面又はセラミック表面を有し、好ましくは、金属表面の塗工膜である。前記基板は、金属、ガラス、又はセラミックにより全体が構成されていてもよく、一部が構成されていてもよい。例えば、金属、ガラス、又はセラミックの塗工膜が、他の金属の基板に塗工されて該金属基板の表面となっていてもよい。
【0042】
ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸塩ガラス、鉛結晶及びシリカガラスが挙げられる。例えば、ガラスは板ガラスであってもよく、容器ガラス、実験用ガラス器等の中空ガラスであってもよい。セラミックは、例えば、SiO、Al、ZrO、MgO等の酸化物、又はこれらの混合酸化物によるものが挙げられる。
【0043】
本発明により塗工される、金属表面を有する好ましい基板は、少なくとも1つの金属又は合金表面を有する金属又は合金からなる未完成品、完成品、又はそれらの一部等、全ての物品である。金属表面としては、例えば、アルミニウム、スズ、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、亜鉛めっき、クロムめっき、又はエナメル表面、ステンレス鋼等のスチール、アルミニウム合金、マグネシウム合金、黄銅及び青銅等の銅合金が挙げられる。特に好ましいのは、ステンレス鋼、アルミニウム、及び黄銅の金属表面である。本発明のガラス様塗工膜は変形可能であるため、低温加工により実質的に形成される物品の塗工膜に特に有益である。
【0044】
前記塗工組成物を塗布する前に、前記金属表面は、洗浄、油脂及び塵の除去、及び/又はコロナ放電等で表面加工することができる。金属表面又は金属基板は、表面として、平面を有していても、形状表面を有していてもよい。前記表面は、例えば、エンボス加工又はエッチング加工されて得られた規則的なものでもよく、又は、粗面加工されて得られた不規則なものでもよい。前記金属表面の粗面加工は、サンドブラスト、ガラスビーズブラスト、又はブラッシングにより行うことができる。金属表面の規則化は公知である。規則化により、例えば、装飾的効果を得ることができる。特に適している金属表面、ガラス表面、又はセラミック表面としては、例えば、ブラッシング加工された金属基板、特に、ブラッシング加工されたステンレス鋼基板である。
【0045】
前記干渉顔料を含む得られた塗工組成物は、特に塗工ゾルとして、被塗工金属部に全ての一般的な湿式塗工法により塗布することができる。前記塗布は、未乾燥膜の厚みが4μmから20μm、好ましくは6μmから15μm、より好ましくは10μmから12μmになるように行われる。
【0046】
前記塗工組成物の塗布に使用可能な方法としては、例えば、浸漬、キャスティング、フローコーティング、スピニング、スプレー、塗装、スクリーン印刷等が挙げられる。スプレー法が特に好ましい。希釈には、塗工分野で一般的な通常の溶剤を用いることができる。
【0047】
金属表面に塗布された塗工組成物は、通常、室温(約20℃)又は、例えば100℃まで、特に80℃までのやや昇温された温度で乾燥される。塗工膜は、通常、室温で約2分間指触乾燥される。次に、おおよそ乾燥した層は、粉砕干渉顔料を含むガラス様層を得るために、650℃以下の温度で熱固化される。熱固化工程は、原則的には、国際公開第2005/066388号パンフレットに記載の方法にそのまま従って行うことができる。このため、特に凝集の条件の詳細については、明示的に上記特許明細書を参照し、その内容を参照することにより本願に援用する。通常、一般的な乾燥器を固化するための加熱に使い、IR又はレーザ照射により加熱を行うこともできる。
【0048】
最大固化温度は、好ましくは300℃から650℃の範囲であり、より好ましくは400℃から560℃、更に好ましくは475℃から530℃である。熱凝集は酸素含有雰囲気、不活性雰囲気、又は、還元雰囲気中で行うことができ、数工程により行うことができる。
【0049】
雰囲気、昇温率、温度の最大上限値、時間、冷却率等の固化に用いられるパラメーターは当業者であれば直ぐに決定することができる。特に、上述の国際公開第2005/066388号パンフレットを参照することができる。凝集は1つ以上の工程により行うことができる。例えば、国際公開第2005/066388号パンフレットで説明されているように、2段階の熱処理が好ましい。
【0050】
第一の熱処理工程においては、例えば、一つの態様では、加熱は酸素含有量が例えば15体積%から90体積%、好ましくは19体積%から20体積%の酸素雰囲気内で上限温度約200℃までの温度で行われ、他の態様Bにおいては、残圧が15mbar以下、好ましくは5mbar以下、より好ましくは約2.5mbarの減圧下で、約500℃まで、好ましくは約200℃まで、より好ましくは上限温度約180℃までの温度で行われる。第二の熱処理工程においては、更なる凝集化が行われ、ガラス状層が形成される。第二の熱処理工程は、例えば、酸素含有量が0.5体積%以下の低酸素雰囲気中で、好ましくは上限温度400℃から600℃の範囲までの温度で行われる。用いられる前記低酸素雰囲気は、好ましくは窒素、アルゴン等の不活性ガス、フォーミングガス等の還元ガス、又は空気圧が10mbar以下の減圧雰囲気である。最大温度での滞留時間は、通常5分間から75分間、好ましくは20分間から60分間、より好ましくは45分間から60分間である。約400℃から約500℃の範囲から下降する冷却段階は、低酸素雰囲気又は酸素雰囲気中で行われる。適切な冷却率は、例えば、1K/minから10K/min、好ましくは2K/minから7K/minである。
【0051】
温度と同時に、又は特定の温度範囲と同時に加熱器の雰囲気の選択は、管理された方法で塗工膜の特性に影響を与える。これは、例えば金属基板の種類によって、起こりえる変色に関係し、変色は、超微細干渉顔料を含む塗工膜の不完全な被覆である場合、被覆された金属部の全体的な視覚像に影響する。更に、層特性としては、引掻き耐性、空隙率、加水分解安定性、及び塗工膜の疎水性又は親水性である。本明細書で超微細干渉顔料とも称される粉砕干渉顔料を添加されることにより得られる視覚効果は、通常、処理されていない顔料により得られる効果とは、驚くほど視覚的に見分けがつかない。
【0052】
金属表面上のガラス様層は亀裂を形成することなく得られる。前記塗工組成物は比較的低い温度(通常400℃から)で高密度の珪酸塩又はSiO層に変わることができる。前記高密化によりガラス状層又はガラス層が得られる。上述のように、前記好ましい態様において、ナノスケールの粒子が前記塗工組成物中に得られる。よって、該塗工組成物から得られる層はナノガラス層とも称される。“ガラス状層”、“ガラス層”及び“ナノガラス層”の用語は、本明細書中ではそれぞれ互いに同じ意味で使用されている。
【0053】
得られる前記ガラス状層は好ましくは10μm以下の厚みを有する。例えば、該厚みは1μmから6μmであり、好ましくは1.5μmから5μmであり、特に好ましくは2.5μmから4.5μmである。
【0054】
粉砕干渉顔料を含むガラス様層を有する本発明の金属表面、ガラス表面又はセラミック表面を有する基板は、さまざまな用途に使用することができ、特に装飾目的、又は視覚的区別化に使用することができ、もし適切であれば、高腐食防止、引掻き防止、磨耗防止、高温での変色防止、指紋付着防止、またこれらの組み合わせと共に使用することができる。
【0055】
本発明の上述の層を有することができる基板としては、例えば、全種類の乗物の金属部、特に排気装置、また、船及び飛行機の部;家庭用品の部、金属製の電気スイッチ、全種類の金属家具;携帯電話、ビデオカメラ、パソコン、ノートパソコン、MP3又はiPod(登録商標)等の音楽プレーヤー、及び他の電子機器の金属ケーシングのための金属部、医療分野における機械及びシステムの部、また、機械類及びプラント建設の部、建築金属外面上の装飾的腐食防止、特にアルミニウムの建築金属外面、また、金属壁及び床構成要素、全種類のスポーツ及びレジャー用品が挙げられる。また、本発明の基板はエロキザル(eloxal)の代替としても適している。更なる用途例は、国際公開第2005/066388号パンフレットを参照できる。
【0056】
珪酸塩組成物と、湿式細砕により粒径が6μm以下になるように粉砕された干渉顔料とを含む上述の塗工組成物は、印刷インクとしても適当に用いられる。この場合、適切な粘性は分散溶媒を除去又は添加することにより任意に得られ、印刷インクに対して一般的な添加物が任意で添加される。塗工組成物は、例えば、ガラス、金属、セラミック、ガラス−セラミック等の無機基板を印刷するのに適している。好ましい印刷法としては、特に極めて薄い印刷が可能なもの、例えば、厚みが20μm未満又は30μm未満の印刷が可能なものである。薄い印刷が可能な印刷法としては、例えば、パッド転写、フレキソ印刷、また、極めて細かいスクリーンを用いたスクリーン印刷が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0058】
実施例1
(珪酸塩含有塗工ゾルの製造)
珪酸ナトリウム含有ゾルが国際公開第2005/066388号パンフレットに記載されている方法と同様に製造された。このため、25mL(124.8mmol)のメチルトリエトキシシラン(MTEOS)を7mL(31.4mmol)のテトラエトキシシラン(TEOS)及び0.8g(20mmol)の水酸化ナトリウムと共に、全ての水酸化ナトリウムが溶解し、且つ、溶液が透明黄色になるまで、一晩中(少なくとも12時間)室温で攪拌した。
【0059】
次に、前記溶液を加熱しながら3.2mL(177.8mmol)の水を室温でゆっくりと滴下した。水の滴下終了後、前記透明黄色溶液は、再び冷却するまで室温で攪拌し、その後、孔径が0.8μmのフィルターで濾過した。
【0060】
(金色塗工材料の製造)
250gの真珠光沢顔料の混合物(イリオジン(Iriodin(登録商標))323及びイリオジン(Iriodin(登録商標))120、混合比率=1:1)を3Lのエタノールに添加し及び懸濁させ、回転ボールミルを用いて1,500rpmで3時間循環しながら粉砕した。湿式細砕は、DISPERBYK101、トリエタノールアミン、又はγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等の一般的な分散剤を2g更に加えて懸濁にも行うことができる。次に、事前にエタノールを取り除くことなく、粉砕された顔料混合物を上述で調整された珪酸塩塗工ゾルに添加した。顔料の含有量は前記塗工ゾルの質量に対して3重量%であった。
【0061】
(金属表面の塗工)
この顔料含有塗工ゾルはステンレス鋼板(10×10cm)に手動のスプレー法により塗布され、室温で溶剤を蒸発させた後、また、475℃で30分待った後、塗工層を酸素雰囲気中で熱密度化させた。加熱速度は2K/min.であり、475℃での保留時間は1時間であり、290℃までの冷却は圧縮空気をオーブン内に吹きこみ、2.5時間以内で行った。オーブンから取り出された後、前記板は室温まで冷却された。輝くシャンパンカラーの塗工膜が得られ、該塗工膜は、粗面性及びスライド特性の点では、同様に製造された顔料含有していない塗工膜と変わらなかった。
【0062】
実施例2
(直角の角を有すプレス加工されたステンレス鋼成形体上の干渉顔料含有塗工膜)
実施例1の顔料含有塗工ゾルを用い、該顔料含有塗工ゾルは直角の角を有すプレス加工されたステンレス鋼成形体に手動のスプレー法により塗布し、室温で溶剤を蒸発させた後、また、400℃で30分待った後、塗工層を酸素雰囲気中で熱固化させた。加熱速度は2K/min.であり、400℃での保留時間は1時間であり、290℃までの冷却は圧縮空気をオーブン内に吹きこみ、2.5時間以内で行った。その後、塗工されたステンレス鋼成形体はオーブンから取り出され、45分以内で室温まで冷却された。輝くシャンパンカラーの塗工膜が得られ、該塗工膜は、触感及び耐指紋付着特性の点では、同様に製造された顔料含有していない塗工膜と変わらなかった。
【0063】
比較例
原料顔料の懸濁液の粒径は5μmから25μmであった。この干渉顔料の懸濁液は湿式細砕により、平均粒径が約2μmから5μmになるように粉砕された。肉眼では、原料サンプルと粉砕サンプルとの間に色彩効果における違いは確認されなかった。
【0064】
原材料の光学マイクロ写真と、粉砕物の光学マイクロ写真とから、粉砕干渉顔料が未処理の顔料より格段に微細であり、平均粒径が2μmから5μmであることがわかる。粉砕後も干渉色がほとんど完全に保たれているのは驚くべきことである。
【0065】
上述の実施例において、ブラッシングされたステンレス鋼板が上述の通り珪酸塩含有塗工懸濁液で被覆された。比較のため、粉砕干渉顔料を有す塗工膜と共に、上記の最初の粒径のままの顔料を有する塗工膜も形成された。膜厚は、それぞれ、約5μmであった。粉砕顔料を含む層が極めて平滑な表面(算術平均粗さRa=約1μm、凹凸(peak−to−valley)粗さRz=約7μm)を有したのに対し、未粉砕の顔料を含む他のサンプルは高い粗度の表面(算術平均粗さRa=約2μm、凹凸(peak−to−valley)粗さRz=約11μm)であることを示した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面、ガラス表面、又はセラミック表面を有し、且つ、干渉顔料含有ガラス状層が付与された基板の製造方法であって、該方法が、
a)湿式細砕により、少なくとも1つの誘電干渉層を有する顔料を粉砕する工程、
b)前記粉砕された干渉顔料を珪酸塩含有懸濁液に分散させ、塗工組成物を得る工程、
c)湿式塗布により前記塗工組成物を前記金属表面、前記ガラス表面、又は前記セラミック表面に塗布する工程、及び
d)650℃以下の温度で前記塗工組成物を高密化させ、前記粉砕干渉顔料を含む前記ガラス状層を形成する工程、を含むことを特徴とする基板の製造方法。
【請求項2】
a)の工程において、少なくとも1つの誘電干渉層を有する顔料が湿式細砕により粒径6μm以下になるまで粉砕される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
干渉顔料がボールミルにより粉砕され、該ボールミルが好ましくは回転ボールミルである、請求項1及び2のいずれかに記載の製造方法。
【請求項4】
誘電干渉層を有する顔料が無機支持体を有する顔料である、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
無機支持体が、マイカ、SiOガラス、及び金属箔のいずれかである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
誘電干渉層を有する顔料がイリオジン(Iriodin(登録商標))顔料である、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
干渉顔料を粉砕するため、該干渉顔料を含む懸濁液が回転ボールミルで1時間から6時間に亘り処理される、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
湿式細砕後、干渉顔料が懸濁液の状態で珪酸塩含有懸濁液に直接添加される、又は、粉砕に用いられた液相から取り除かれ、乾燥され、粉体の状態で珪酸塩含有懸濁液に添加される、請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
珪酸塩含有懸濁液が、有機基で変性された珪酸塩粒子を含む塗工ゾルである、請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
珪酸塩含有懸濁液が、a)アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びアルカリ土類金属の水酸化物から選択される少なくとも1つの化合物、及びb)ナノスケールのSiO粒子の少なくともいずれかの存在下で、少なくとも1つの一般式(I)で示されるシラン、又は該シランから誘導される少なくとも1つのオリゴマーを加水分解及び重縮合することにより得られた塗工ゾルである、請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。

SiX4−n (I)

(前記一般式(I)において、X基はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、それぞれ加水分解性基又は水酸基であり、R基はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素、炭素数4までのアルキル基、炭素数4までのアルケニル基、炭素数4までのアルキニル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数6から10のアラルキル基、及び炭素数6から10のアルカリル基であり、nは0、1、又は2であり、但し、nが1又は2のシランが少なくとも1つ用いられる。)
【請求項11】
アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物のいずれかが、Siに対するアルカリ金属及びアルカリ土類金属のいずれかの原子比で20:1から7:1の範囲になる量で使用される、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
一般式(I)で示されるシラン原料におけるnの平均価が0.2から1.5である、請求項10及び11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
塗布される塗工組成物の全重量に占める干渉顔料の割合が0.1重量%から15重量%である、請求項1から12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
塗工組成物が金属表面、ガラス表面、及びセラミック表面のいずれかに未乾燥膜厚4μmから20μmで塗布される、請求項1から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
塗布された塗工組成物が300℃から650℃の範囲の最大高密化温度で固化される、請求項1から14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
熱固化が酸素雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、及び還元雰囲気下のいずれかで行われ、且つ、雰囲気及び温度条件の少なくともいずれかが異なる複数の段階を設けてもよい、請求項1から15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
高密化が2段階の熱処理により行われ、該熱処理において、第1段階が、(A)酸素雰囲気下又は(B)残圧が5mbarから15mbarの真空下で行われ、第2段階が、高密化が完了しガラス状層を形成するまで低酸素雰囲気下で行われる、請求項1から16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
熱処理された基板の冷却が酸素雰囲気下、及び低酸素雰囲気下のいずれかで行われる、請求項1から17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
金属表面、ガラス表面、及びセラミック表面のいずれかを有し、且つ、湿式細砕により粉砕され、粒径が6μm以下の干渉顔料を含むガラス状珪酸塩層を有することを特徴とする基板。
【請求項20】
基板が、スチール、ステンレス鋼、アルミニウム、及び黄銅のいずれかからなる金属部であるか、該金属部を含む、請求項19に記載の基板。
【請求項21】
基板が、輸送手段の金属部であり、特に、陸上輸送手段、水上及び水中のいずれかの輸送手段、空中輸送手段、及び宇宙輸送手段の金属部であり、特に、排気システム、家庭用品及びオフィス用品のいずれか、容器、電気スイッチ、家具、電子器具及び電気器具のいずれかの筐体、メディカルテクノロジーの機械及びシステムのいずれか、機械類及び工場建設の機械及びシステムのいずれか、建物、建築外面、建築外面外装材、手摺、壁及び床のいずれかの構成要素、スポーツ用品及びレジャー用品のいずれか、又はエロキザルの代替である請求項19及び20のいずれかに記載の基板。
【請求項22】
請求項19から21のいずれかに記載の金属表面、ガラス表面、及びセラミック表面のいずれかを有する基板の、装飾目的又は視覚識別目的での使用。
【請求項23】
珪酸塩組成物と、湿式細砕により粉砕され、粒径が6μm以下である干渉顔料とを含有することを特徴とする印刷インク組成物。

【公表番号】特表2010−518261(P2010−518261A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549834(P2009−549834)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051869
【国際公開番号】WO2008/099008
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(507202600)イーピージー (エンジニアード ナノプロダクツ ジャーマニー) アーゲー (9)
【Fターム(参考)】