金属製リング状素材の接合方法

【課題】ローリングミルを利用した転造により大径のリング状素材と小径のリング状素材とを強固に接合し得る方法を提供する。
【解決手段】金属製の大径リング状素材１の内側に金属製の小径リング状素材２を配置すると共に、該小径リング状素材の内側にマンドレル１１を貫挿し該大径リング状素材と小径リング状素材とをローリングミル３により加圧挟着し転造することにより、該大径リング状素材と小径リング状素材とを接合する。大径リング状素材と小径リング状素材とは異種金属からなるものとする。また、大径リング状素材の内周面および／または小径リング状素材の外周面に凹凸１ａ，２ａを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は金属製のリング状素材をローリングミルを利用した転造により接合する方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
小径リング状素材の外周に異種金属からなる大径リング状素材を嵌着し一体的に接合する手段として従来から、「焼きばめ」、「冷やしばめ」、「拡散接合」、「接着剤による接合」等が知られている。
【０００３】
また、下記特許文献１には、成形ロールと受ロールとマンドレル（心棒）とからなるローリングミルにリング状素材を装填し、冷間転造によりリング状製品を製造する方法が開示され、下記特許文献２には、難加工性の特殊鋼からなるリング状素材をクラックを発生させることなく冷間転造しベアリングレース等のリング状製品を成形する方法が開示され、下記特許文献３には、リング状素材をパンチによりサイジングする方法が開示されている。
【特許文献１】特開平３−２６８８３３号公報
【特許文献２】特開２００１−９５５２号公報
【特許文献３】特開２００３−１３６５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
ところで、上記従来のリング状素材の接合手段のうち、「焼きばめ」、「冷やしばめ」或いは「接着剤による接合」は、接合強度が十分に得られないという問題があり、「拡散接合」は金属の材質によって接合できない場合があった。また、これらの接合手段では、加熱により母材の強度を低下させるという問題があった。
そこで本発明は、ローリングミルを利用した転造によりリング状素材を強固に接合し得る方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
そのため請求項１に記載した金属製リング状素材の接合方法は、金属製の大径リング状素材の内側に金属製の小径リング状素材を配置すると共に、該小径リング状素材の内側にマンドレルを貫挿し該大径リング状素材と小径リング状素材とをローリングミルにより挟着加圧し転造することにより、該大径リング状素材と小径リング状素材とを接合することを特徴とする。
【０００６】
また請求項２の発明は上記接合方法において、大径リング状素材と小径リング状素材とは異種金属からなるものであることを特徴とする。
また請求項３の発明は上記接合方法において、大径リング状素材の内周面および／または小径リング状素材の外周面に凹凸を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【０００７】
大径リング状素材と小径リング状素材とを転造によって強固に接合することができる。また、接合のための所要時間、コストが軽減されるとともに、大径リング状素材と小径リング状素材とが異種金属であっても強固な接合が可能となる。
【実施例１】
【０００８】
次に本発明の実施例を図面とともに説明する。図１に示した大径リング状素材１は例えば硬質の軸受鋼（ＳＵＪ２）からなり、小径リング状素材２は靭性に富む砲金（銅・錫合金）からなるもので、該大径リング状素材１内に小径リング状素材２を遊嵌し得るように、該大径リング状素材１の内径ａと該小径リング状素材２の外径ｂとの差は３〜５ｍｍ程度に設定される。一方、図２，図３はこの転造に使用されるローリングミルの概略を示すものである。このローリングミル３はモータ４の回転軸５に一対の受ロール６，６が適宜間隔を離して設けられ、シリンダ７によって該回転軸５と直交する方向に進退動自在なるようにハウジング８を設け、該ハウジングにモータ９により回転動する成形ロール１０を設けている。なお、１１はシリンダ１２を作動させることにより受ロール６，６と成形ロール１０の間に進退動するように設けられたマンドレルである。また、１３は上方から吊下状に設けられた移動アームで、該移動アームの下端にグリップ１４が設けられている。
【０００９】
そして、大径リング状素材１内に小径リング状素材２を遊嵌した状態にてグリップ１４により該素材１，２を把持して該素材１，２を受ロール６，６の間に搬入し、その状態でシリンダ１２を作動させマンドレル１１を進出させることにより該素材１，２にマンドレル１１を貫挿する。そして、シリンダ７を作動させ成形ロール１０を該素材１の外周面に押圧し、該マンドレル１１を受ロール６，６により支えることにより、該素材１，２をマンドレル１１と成形ロール１０により挟着し、モータ４，９により受ロール６，６および成形ロール１０を回転動させる。これにより該素材１，２はマンドレル１１と成形ロール１０により加圧挟着され、図４に示したように、小径リング状素材２が大径リング状素材１の内周面に一体的に接合し、所期のサイズのリング状製品１５を転造することができる。なお、この転造に要する時間は十数秒である。この場合、小径リング状素材２が転造により拡径すると同時に大径リング状素材１も拡径するが、靭性に富む砲金からなる小径リング状素材２のみを拡径させてもよい。また、図５にリング状製品の断面図を示したように、大径リング状素材１の内周面に予め溝を形成するなど凹凸１ａを形成しておくで、該凹凸１ａに内側の小径リング状素材２が延展して密着させることができるので、大径リング状素材１と該小径リング状素材２との一体的接合強度をより強固なものにすることができる。
【００１０】
また、成形ロール１０の外周面に所期の周溝等を予め形成しておくことにより、大径リング状素材１の外周面をこの形状に倣って付形することもできる。このためこれによって、プーリ等のリング状機能部品を成形することができる。なお上記の場合、内側の砲金は軸受ブッシュメタル（ドライメタル）として機能する。
また、マンドレル１１の外周面に同様の形状を設けておくことにより、小径リング状素材２の内周面に同様に付形することができる。このためこの転造によれば、大径リング状素材１と小径リング状素材２とを接合すると同時に種々の形状のリング状製品を短時間で成形することができ、生産性および歩留まりを大幅に向上させる。
【００１１】
また例えば、機械構造用炭素鋼（Ｓ４５Ｃ）からなる大径リング状素材１とジュラルミンからなる小径リング状素材２とを上記転造により接合することにより軽量歯車を製品化したり、ステンレス鋼からなる大径リング状素材１とチタン合金からなる小径リング状素材２とを上記転造により接合することにより耐腐食性配管継ぎ手を製品化することができる。このように大径リング状素材１および小径リング状素材２の材料は、上記実施例の他、用途に応じた種々の組み合わせが考えられ、転造により種々の異種金属を容易に接合することができる。また、図６に示したように小径リング状素材２の外周に凹凸２ａを形成することで接合強度をさらに向上することも可能である。また、材料、用途に合わせて冷間、温間、熱間等、適切な環境で転造をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】本発明に係る大径リング状素材と小径リング状素材の斜視図。
【図２】本発明に係るローリングミルの概略を示す正面図。
【図３】本発明に係るローリングミルの概略を示す平面図。
【図４】図２の作動状態図。
【図５】図４のリング状製品の縦断面図。
【図６】本発明により転造されたリング状製品の縦断面図。
【符号の説明】
【００１３】
１大径リング状素材
２小径リング状素材
３ローリングミル
６受ロール
１０成形ロール
１１マンドレル
１ａ，２ａ凹凸
１５リング状製品

【特許請求の範囲】
【請求項１】
金属製の大径リング状素材の内側に金属製の小径リング状素材を配置すると共に、該小径リング状素材の内側にマンドレルを貫挿し該大径リング状素材と小径リング状素材とをローリングミルにより加圧挟着し転造することにより、該大径リング状素材と小径リング状素材とを接合することを特徴とした金属製リング状素材の接合方法。
【請求項２】
大径リング状素材と小径リング状素材とは異種金属からなるものである請求項１に記載の金属製リング状素材の接合方法。
【請求項３】
大径リング状素材の内周面および／または小径リング状素材の外周面に凹凸を形成した請求項１または２に記載の金属製リング状素材の接合方法。

【図１】