説明

金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟の連結構造

【課題】 作業の工数が少なく簡易な金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟の連結構造を提供する。
【解決手段】下側に連結する前記金属製縦桟の上端から、断面中空状で長手方向中間部から外側へ突出した係止爪を有する金属製の連結用柱状部材の一端側が前記係止爪が前記金属製縦桟の上端に係止されるまで嵌挿され、前記連結用柱状部材の他端側の上端から前記係止爪に係止されるまで上側に連結する前記金属製縦桟が嵌挿され、且つ、前記上下の金属製縦桟が前記連結用柱状部材から抜脱しないように金属製縦桟と連結用柱状部材の重合部分を固定具により夫々固定することにより前記上下の金属製内壁枠の金属製縦桟同士を開口部用金属製縦桟を介して上下に連結したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内壁部に配設される内壁枠、特に上下に連結される金属製縦桟の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の内壁部は躯体に断熱内壁パネルが順次取り付けられ、該断熱内壁パネルに内壁ボード、壁紙等が設けられて構成されている。図6に示すように、前記断熱内壁パネル1は、縦桟2Tと横桟2Yとからなる矩形の内壁枠2に断熱材3が充填され、内壁枠2の内壁側には防湿シート4が貼付されてなるものである。また、前記内壁枠2の矩形構造を補強するために横桟2Yは縦桟2T間に複数架設されている。前記縦桟2T及び横桟2Yは各々木製のものであり、内壁枠2の外側から内側にビスや釘等の固定具で夫々接合されている。断熱材3は、グラスウール、ロックウール等を用いたもので、内壁枠2との固定には、タッカー5等が用いられている。防湿シート4には、アルミと合成樹脂とのラミネートシートが使用され、内壁枠2へ貼付する手段として接着剤等が用いられる。また、図7、8に示すように、窓等が設けられる開口部を有する場合は、開口部の上方に配置される窓上内壁枠6と開口部用の縦桟8及び開口部の下方に配置される窓下内壁枠7と前記縦桟8が接続金具9で連結され、ビスや釘等の固定具10で夫々固定され、また、窓上内壁枠6の縦桟6Tと横桟6Y及び窓下内壁枠7の縦桟7Tと横桟7Yとは、内壁枠2の外側から内壁枠2の内側にビスや釘等の固定具10で夫々接合されている。
【0003】
なお、他の建築物の部材同士の連結構造に関する先行技術としては、木造の建築物等において、基礎や柱等の下部部材と柱間に取り付ける水平材である胴差しや柱等の上部部材を継手部材金物で連結させる構造があり、これは筒体で挿通孔を有する前記継手部材金物を前記上部部材及び下部部材に嵌挿し、前記上部部材及び下部部材と継手部材金物に夫々対応するように形成された挿通孔にボルトを挿通し、固定して連結するものである。(特許文献1参照)。また、近年、防火性、寸法精度、加工容易性などに優れ、加工時に排出される切クズが完全にリサイクルされる等の理由により木製の内壁枠に代って金属製内壁枠が普及してきている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−129022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図7、8に示すように、窓等が設けられる開口部の窓上内壁枠6の縦桟6Tと開口部用の縦桟8及び窓下内壁枠7の縦桟7Tと前記開口部用の縦桟8を連結する際に用いる前記接続金具9は、それぞれビスを6本ずつ必要とするため1つの開口部につき最大24本が必要となり、施工の手間が大きく、作業効率も悪い。また、断面形状が略L字型である前記開口部用の縦桟8の6面の内3面のみが固定されており、接続金具9を接続してから建て込む際に接合部材間で捩れる恐れがある。そのために前記開口部用の縦桟8から横桟6Y及び横桟7Yに開口部の内側からビス10を斜め打ちし、捩れを防止すると、更に必要となるビスの数が増え、作業量が多くなる。
【0006】
また、内壁枠の縦桟及び横桟の素材を木製から防火性、寸法精度、加工容易性などに優れた金属製へと変更しても、内壁枠の縦桟の連結構造に関しては、前記接続金具9を使用してビスで固定すると、連結時の作業量に関しては木製の場合と同じであり作業効率の改善には繋がらない。
【0007】
また、前記継手部材金物で連結させる構造は、木造の建築物の柱や土台等の軸組の連結において利用されているものであり、内壁枠の連結構造においては、前記継手部材金物は用いられていなかった。
【0008】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟とを連結させ、窓等の開口部を形成する際の金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟の連結構造であって、作業の工数が少なく簡易な金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟の連結構造は、断面中空状の左右一対の金属製縦桟と、これら金属製縦桟の間に架設された金属製横桟と、を備える金属製内壁枠の金属製縦桟を開口部用金属製縦桟の上下に連結して開口部を形成するものであって、下側に連結する前記金属製縦桟の上端から、断面中空状で長手方向中間部から外側へ突出した係止爪を有する金属製の連結用柱状部材の一端側が前記係止爪が前記金属製縦桟の上端に係止されるまで嵌挿され、前記連結用柱状部材の他端側の上端から前記係止爪に係止されるまで上側に連結する前記金属製縦桟が嵌挿され、且つ、前記上下の金属製縦桟が前記連結用柱状部材から抜脱しないように金属製縦桟と連結用柱状部材の重合部分を固定具により夫々固定することにより前記上下の金属製内壁枠の金属製縦桟同士を開口部用金属製縦桟を介して上下に連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟の連結構造によれば、前記上下の金属製縦桟の相向い合う端部の開口から連結用柱状部材の両端を嵌挿させ、その重合部分をビスで固定した連結構造とすることにより、図7、8に示す従来の木製の縦桟の場合の連結構造に比べて使用するビスの本数を減らすことができるため、簡易で作業効率が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、金属製内壁枠20、21は屋外側から断熱材101が充填され、屋内側から防湿シート102が貼付された断熱内壁パネル100、110として、住宅等の軸組に取付けられるものであり、本発明は、開口部用金属製縦桟(以下、単に「開口部用縦桟」という。)32Tの上下に金属製縦桟(以下、単に「縦桟」という。)20Tを有する金属製内壁枠20からなる断熱内壁パネル100と金属製縦桟21Tを有する金属製内壁枠21からなる断熱内壁パネル110とを連結させて、開口部を形成する際の開口部用金属製縦桟32Tと金属製縦桟20T及び21Tとの連結構造である。
【0012】
以下、各部材の説明を行うが、前記金属製内壁枠20、21は同形状のものであるため、各部材の説明は、前記金属製内壁枠20を例に行う。
金属製内壁枠20は、図1に示すように、左右一対の縦桟20Tの間に複数の横桟20Yが架設されて全体として略矩形に形成された枠体である。
【0013】
前記金属製内壁枠20を構成する縦桟20T及び横桟20Yは、各々アルミ等の金属からなり、管状である前記縦桟20Tは、図1、3に示すように、左右一対に向かい合い、断面は中空状であり、縦桟20T同士の対向面の屋内側に前記横桟20Yの端部厚さに対応する凹状溝22がそれぞれ長手方向に沿って形成されたものである。該凹状溝22は、横桟20Yの端部側面が固定される横桟被固定面23と、該面23と略直交し横桟20Yの端縁が当接する横桟当接面24とで形成されており、前記横桟被固定面23と縦桟20Tの屋内側の面の段差が横桟20Yの端部厚さと略同じになっている。前述したことによって、ビス等の固定具33を用いて縦桟20Tと横桟20Yを連結した際に、屋内側の面が面一になるように連結することができる。
【0014】
また、前記縦桟20Tの対向面と相反する側にも凹状溝25がそれぞれ長手方向に沿って形成されている。なお、前記凹状溝25は前記金属製内壁枠20を固定する金具の取り付けスペースとして形成されている。このことによって、釘やビス等を用いて夫々固着し連結した際に、接合箇所が突設することなく、金属製内壁枠20を軸組に固定した際に、屋内側の面が面一になるように連結することができる。
【0015】
横桟20Yは、図1、図3及び図4に示すように、本実施の形態では、細長で断面形状が略S字状のものが使用されている。前記横桟20Yと縦桟20Tとの固定は、縦桟20Tの凹状溝22の横桟被固定面23に横桟20Yの端部の屋外側の面を当接しつつ、屋内側から横桟20Yの横桟固定面を貫通して縦桟20Tの横桟被固定面23にビス等の固定具33を打ち込むことにより行う。前記固定具33としては、打設時間をコンスタントに短縮化するために、先端部にキリ刃(ドリル)が形成され、リセス形状がヘクサロビュラ穴型となったものを使用することが望ましい。
【0016】
なお、本実施の形態においては、前記金属製内壁枠20を構成する縦桟20T及び横桟20Yは、各々アルミ等の金属を用いるものとしているが、勿論、材質はこれに限定されず、内壁枠として必要な強度を確保できるものであれば、硬質樹脂等の他の縦桟及び横桟を採用してもよい。また、本実施の形態では、前記金属製内壁枠20は、金属製内壁枠20の強度を増加させるために矩形の枠体に前記横桟20Yを架設しているが、これに代えて金属製の縦桟を架設して金属製内壁枠20を形成してもよい。
【0017】
このような形状の縦桟20T及び横桟20Yを用いることにより、向かい合う2本の縦桟20Tの間に横桟20Yが架設された後は、前記縦桟20Tの屋内側の面と横桟20Yの屋内側の面とが面一となるため、枠体形成後に屋内側の面に貼付される防湿シート102を損傷することがない。
【0018】
開口部用縦桟32Tは、図1に示すように、上下の金属製内壁枠20、21の間に連結され窓等の開口部となるものであり、素材、断面形状に関しては縦桟20T及び21Tと同じものである。また、開口部用縦桟32Tの長さは開口部の大きさにあわせればよく、特に限定するものではない。
【0019】
連結用柱状部材30は、図1及び図2及に示すように、上下に連結される縦桟20Tと開口部用縦桟32T及び縦桟21Tと開口部用縦桟32Tの中空部に嵌挿されている。図5に示すように、前記連結用柱状部材30は断面が中空状でありアルミやスチール等からなる金属製のものであり、長手方向の中間部に係止爪31を具備してなるものである。前記係止爪31は、中間部から長手方向外側に突出して設けられたものであり、この実施例では前記連結用柱状部材30を切り欠いて折曲し形成されているが、別途設けたものでもよい。また、前記連結用柱状部材30は前記縦桟20T、21T及び開口部用縦桟32Tに嵌挿した際に係止爪31により、連結用柱状部材30がそのままつき抜けることなく係止されるようになっている。なお、係止爪31の形状は、前記連結用柱状部材30の縦桟20T、21T及び開口部用縦桟32Tへの嵌挿を途中で係止することができるものであればよく、上述した形状に限定されるものではない。
【0020】
以下、本実施の形態に係る金属製縦桟20T、21Tと開口部用金属製縦桟32Tの連結方法の一例を説明する。まず、下側に連結する前記縦桟21Tの上端から、連結用柱状部材30の一端側が前記係止爪31が前記縦桟21Tの上端に係止されるまで嵌挿し、前記縦桟21と前記連結用柱状部材30の重合部分に固定具33を留め付ける。
【0021】
次に、前記開口部用縦桟32Tを前記連結用柱状部材30に嵌挿し、前記開口部用縦桟32Tと前記連結用柱状部材30の重合部分に固定具33を留め付ける。前記両端の縦桟21Tについてこのようにすることによって、金属製縦桟21Tと開口部用縦桟32Tとを連結固定できる。
【0022】
次に、前記開口部用縦桟32T上端から連結用柱状部材30を係止爪31が前記開口部用縦桟32Tの上端に係止されるまで嵌挿し、前記開口部用縦桟32Tと前記連結用柱状部材30の重合部分に固定具33を留め付ける。
【0023】
次に、前記縦桟20Tを前記連結用柱状部材30に嵌挿し、前記縦桟20Tと前記連結用柱状部材の重合部分に固定具33を留め付ける。このようにすることによって、断熱内壁パネル100、110の間に開口部を形成することができる。上下に配置された断熱内壁パネル100、110及び開口部用縦桟32Tは前記連結用柱状部材30との重合部分を夫々ビス等の固定具33で留め付けられることで、脱抜することなく連結固定される。この際、縦桟20Tと連結用柱状部材30、縦桟21Tと連結用柱状部材30、開口部用縦桟32Tと連結柱状部材30の接合箇所にビスで各2本ずつ、1箇所の連結につき合計4本のビスで固定する。このようにすることで1つの開口部毎に使用するビスの本数は合計で16本となる。
【0024】
このように構成された本発明による金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟の連結構造においては、断面形状が略L字型である開口部用の縦桟8を開口部毎に24本のビスを用いて連結したときと比べ、施工時における作業数を減少させることができる。また、前記縦桟8を連結する際の捩れを防止するために使用し、対向する前記縦桟8の内側から横桟7Yに向けて斜め打ちするビスも不必要になるため、施工時における作業数を更に減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、例えば、住宅等の建築物の内壁部に配設される内壁枠であって、開口部の縦桟を挟んで上下に設置される金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟を連結する際に適用することができる。また、それ以外であっても、断面が中空状である部材同士の連結構造に関しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る金属製内壁枠の金属製縦桟20T及び21Tと開口部用金属製縦桟32Tの連結構造を示す斜視図である。
【図2】図1の連結部分を示す部分拡大図である。
【図3】図1のA−Aの一部省略拡大断面図である。
【図4】図1のB−Bの拡大断面図である。
【図5】連結用柱状部材30を示す斜視図である。
【図6】従来の内壁断熱パネル1を示す斜視図である。
【図7】従来の木製内壁枠の縦桟の連結構造を示す正面図である。
【図8】図7の連結部分を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0027】
100、110 断熱内壁パネル
101 断熱材
102 防湿シート
20、21 金属製内壁枠
20T、21T 金属製縦桟
20Y、21Y 金属製横桟
30 連結用柱状部材
32T 開口部用金属製縦桟
33 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面中空状の左右一対の金属製縦桟と、これら金属製縦桟の間に架設された金属製横桟と、を備える金属製内壁枠の金属製縦桟を開口部用金属製縦桟の上下に連結して開口部を形成する際の金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟の連結構造であって、
下側に連結する前記金属製縦桟の上端から、断面中空状で長手方向中間部から外側へ突出した係止爪を有する金属製の連結用柱状部材の一端側が前記係止爪が前記金属製縦桟の上端に係止されるまで嵌挿され、前記連結用柱状部材の他端側の上端から前記係止爪に係止されるまで上側に連結する前記金属製縦桟が嵌挿され、且つ、前記上下の金属製縦桟が前記連結用柱状部材から抜脱しないように金属製縦桟と連結用柱状部材の重合部分を固定具により夫々固定することにより前記上下の金属製内壁枠の金属製縦桟同士を開口部用金属製縦桟を介して上下に連結したことを特徴とする金属製内壁枠の金属製縦桟と開口部用金属製縦桟の連結構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−63690(P2006−63690A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248980(P2004−248980)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】