説明

金属製容器蓋及びその製造方法

【課題】マット剤や発泡剤を使用せずに塗装を行うことにより、スカート壁の外面、特に螺子形成部分の外面が選択的に粗面化された塗装層が形成されており、開栓に際して滑り難く、開栓性が向上した金属製容器蓋を提供する。
【解決手段】金属製シェルの外面に形成された塗装層70が、紫外線硬化型インキの硬化物からなる印刷インキ層105とオーバーコート層109とからなり、天面壁7の塗装層の表面は、平滑な光沢面となっており、スカート壁の外面に形成された塗装層は、印刷インキ層105の表面に微細な凹凸が形成されており、オーバーコート層109の表面が微細な凹凸が反映されて光沢度の低い粗面となっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製シェルからなる金属製容器蓋及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、金属製シェルの外面に、天面壁部分が平滑な面からなる光沢面であり且つスカート壁の螺子形成部分が光沢度の低い粗面となっている塗装層が形成された金属製容器蓋及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製容器蓋は、円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下している円筒形スカート壁とを有する金属製シェルからなるものであり、この金属製シェルの天面壁の内面に樹脂製ライナーを設け、これを容器の口部に被せ、適当な巻締め機を用いて、スカート壁に容器口部の外面に形成されている螺条と係合する螺子を形成することにより使用に供されている。
【0003】
上記のような金属製容器蓋は、古くから種々の用途に使用されており、例えば特許文献1には、代表的な形状の金属製容器蓋が開示されている。
【0004】
一方、従来公知の金属製容器蓋は、一般に、金属シェルの外表面に印刷塗装が施され、塗装層の形成により、表面保護と同時に装飾性を付与している。このような塗装層が表面に形成されている金属製容器蓋は、例えば、予め所定の位置に印刷塗装がされた塗装金属板を用い、これを打ち抜き、絞り成形などの成形工程を経て製造されている。
【特許文献1】特開2005−297981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に代表される金属製容器蓋は、スカート壁の外面を握って開栓方向に旋回することにより、容器口部との螺子係合を解除して容器口部から取り除かれるが、この開栓トルクが大きく、開け難いという問題がある。特に、外面に形成されている塗装層は、印刷インキ層の上に、ツヤニス層とも呼ばれるオーバーコート層が形成された層構造を有しており、オーバーコート層により、表面平滑性を確保し、金属板や印刷インキ層の表面保護と同時に表面光沢性が与えられている。このため、スカート壁の外面を握って開栓方向に旋回する際に滑りやすく、この結果、開栓がより困難となっている。
【0006】
開栓性を高めるために、塗装層の表面に微細な凹凸を形成して粗面とすることが考えられる。このような粗面化は、塗装に際して、印刷インキ層の形成に用いるインキやオーバーコート層の形成に用いるツヤニスに、マット剤(ツヤひけ剤、シリカ等の無機粉末)や発泡剤を添加することにより行うことができる。
【0007】
しかしながら、マット剤や発泡剤が配合されたツヤニスを用いて粗面化を行う場合には、スカート壁のみならず、天面壁の外面も粗面化されてしまう。即ち、粗面化されている場合には、表面の光沢が失われてしまい、特に容器蓋の天面壁の光沢が失われていると、見映えが悪く、容器蓋の商品価値が低下してしまう。また、マット剤や発泡剤が配合されたインキを用いた場合には、スカート壁の外面のみを選択的に粗面にし、天面壁の表面は光沢面にするという要求には応えられるものの、特殊なインキを使用しなければならず、また、光沢性の表面を形成する天面壁の塗装とは異なるインキを使用しなければならないという問題があり、塗装工程が煩雑になるという問題もある。さらに、発泡剤を用いて粗面化を行う場合には、塗装層中に気泡(空間)が形成されるため、容器蓋の製造過程や供給過程等でダストが発生するという問題もある。
【0008】
従って、本発明の目的は、マット剤や発泡剤を使用せずに塗装を行うことにより、スカート壁の外面、特に螺子形成部分の外面が選択的に粗面化された塗装層が形成されており、開栓に際して滑り難く、開栓性が向上した金属製容器蓋及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下している円筒形スカート壁とを有しており、且つ外面に塗装層が形成された金属製シェルからなり、該スカート壁に螺子が形成される金属製容器蓋において、
前記塗装層は、前記金属製シェルの外表面に形成され且つ紫外線硬化型インキの硬化物からなる印刷インキ層と、該印刷インキ層の表面に形成されたオーバーコート層とから形成されており、
前記スカート壁の少なくとも螺子形成部分の外面に形成された塗装層においては、前記印刷インキ層の表面に微細な凹凸が形成されており、前記オーバーコート層の表面に該印刷インキ層に形成された微細な凹凸が反映されており、該凹凸によって、該塗装層の表面が光沢度の低い粗面となっていることを特徴とする金属製容器蓋が提供される。
【0010】
本発明の金属製容器蓋においては、
(1)前記円形天面壁の外面に形成された前記塗装層の表面は、実質上平滑な面からなる光沢面となっていること、
(2)前記スカート壁の外面の実質上全体にわたって塗装層の表面が前記粗面となっていること、
(3)前記オーバーコート層は、前記紫外線硬化型インキと親和性を有する溶剤を含有するオーバーコート材を用いての塗布及び焼付けにより形成されたものであること、
(4)前記スカート壁の下端に、破断可能なブリッジを介してタンパーエビデントバンドが形成されており、該バンドの外面に形成された前記塗装層の表面は、実質上平滑な面からなる光沢面となっていること、
(5)前記粗面の表面粗さRaが0.5μm以上であり、前記光沢面の表面粗さRaが0.2μm以下であること、
(6)表面が粗面となっている領域の塗装層は、表面が光沢面となっている領域の塗装層に比して、前記印刷インキ層が厚く形成されていること、
が好適である。
【0011】
本発明によれば、また、円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下している円筒形スカート壁とを有しており、且つ外面に塗装層が形成された金属製シェルからなり、該スカート壁に螺子が形成される金属製容器蓋を製造する方法において、
前記金属製シェル形成用の金属基板の一方の表面に塗装層を形成し、該金属基板を円板形状に打ち抜き、次いで絞り加工することにより、円形天面壁と円筒形スカート壁とを有する金属製シェルを成形することからなり、
前記金属基板表面の塗装層は、
(a)前記金属基板の表面に紫外線硬化型インキをコーティングして未硬化のインキコーティング層を形成する工程;
(b)紫外線照射により、前記インキコーティング層を硬化せしめる工程であって、前記スカート壁の少なくとも螺子形成部分に対応する部分では、インキコーティング層の金属基板側の領域が未硬化乃至半硬化層となり且つ該未硬化乃至半硬化層の上の領域が硬化層となった2層構造が形成され、且つ該2層構造が形成される領域以外の領域では、インキコーティング層の全体が硬化層となるように、紫外線照射による光硬化が行われる光硬化工程;
(c)前記紫外線硬化型インキと親和性を有する溶剤を含有するオーバーコート材を用意し、前記インキコーティング層の表面に形成されている硬化層の全面にオーバーコート材を塗布してオーバーコーティング層を形成する工程;
(d)加熱により、前記インキコーティング層中の未硬化乃至半硬化層を完全硬化し且つオーバーコーティング層を焼付けることにより、前記インキコーティング層の全体が完全硬化してなる印刷インキ層と前記オーバーコーティング層が焼き付けられたオーバーコート層とからなる塗装層を形成する仕上げ硬化工程;
を含む工程により形成されることを特徴とする金属製容器蓋の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の製造方法においては、
(7)前記工程(a)において、前記スカート壁の少なくとも螺子形成部分に対応する部分でのインキコーティング層の厚みを選択的に他の部分よりも厚くすることにより、前記工程(b)での紫外線照射により、前記インキコーティング層に未硬化乃至半硬化層と硬化層との2層構造を選択的に形成すること、
或いは、
(8)前記工程(b)において、照射する紫外線の積算光量を調整することにより、前記インキコーティング層に未硬化乃至半硬化層と硬化層との2層構造を選択的に形成すること、
という手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、金属製シェルのスカート壁の少なくとも螺子形成部分に形成されている塗装層の表面が、微細な凹凸によって光沢度の低い粗面となっている。このため、容器口部に装着されたこの容器蓋を手で握って開栓するとき、滑り難く、この結果、容器蓋の開栓を容易に行うことができる。
【0014】
また、天面壁では、塗装層の表面を実質上平滑な面からなる光沢面とすることができる。このような場合には、良好な外観を維持することができ、上記のような粗面の形成による外観特性の低下を有効に回避することができる。しかも、天面壁の塗装層表面が平滑な面となっており、高い滑り性を有していると、容器蓋の生産工程での搬送性が良好であり、例えば搬送シュートなどの搬送部材により容器蓋の搬送を行うとき、容器蓋が搬送部材に引っ掛かったりしての搬送不良を有効に防止できるという利点もある。
【0015】
さらに、本発明において、スカート壁の螺子形成部分に形成されている塗装層表面の粗面は、印刷インキ層の表面(オーバーコート層との界面)が微細な凹凸面となっており、この表面形状がオーバーコート層の表面に反映されていることにより形成されているものである。従って、発泡剤を用いて形成しているものとは異なり、印刷インキ層やオーバーコート層は、内部に気泡などの空間部を有していない緻密な層となっている。このため、容器蓋の製造工程や供給過程で、気泡等の空間に由来するダストの発生を生じることがない。また、このような塗装層は、マット剤などが配合された特殊なインキを用いることなく製造できるため、スカート壁の螺子形成部分の塗装層表面を選択的に粗面とし、天面壁部分の塗装層表面を平滑な面、即ち光沢面とすることができる。
【0016】
また、本発明の製造方法によれば、塗装層の形成に際し、印刷インキ層の形成材料として紫外線硬化型インキを使用し、且つオーバーコート層は、紫外線硬化型インキに対して親和性の高い溶剤を含むオーバーコート材を用いて形成すればよく、それ以外は、紫外線硬化型インキの紫外線照射による硬化条件を調整することによって、前述した粗面と平滑面(光沢面)とを形成することができる。即ち、用いる紫外線硬化型インキやオーバーコート材は、格別の材料ではなく、何れも光沢性表面の形成にも使用できるものであるため、非光沢性の粗面と同時に平滑な光沢面を形成することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の金属製容器蓋の半断面側面図であり、
図2(1)および(2)は、図1の金属製容器蓋を容器口部に巻締める工程を説明するための図であり、
図3は、図1の金属製容器蓋を容器口部に巻締めた状態を示す側面図であり、
図4は、図1の金属製容器蓋の天面壁部分の塗装層の層構造を示す図であり、
図5は、図1の金属製容器蓋のスカート壁部分の塗装層の層構造を示す図であり、
図6は、本発明の金属製容器蓋の製造に用いる塗装金属板を作製する際の塗装プロセスを示す図であり、
図7は、図1の金属製容器蓋において、スカート壁部分の塗装層の層構造と他の部分の塗装層との層構造との一例を示す図であり、
図8は、本発明の金属製容器蓋を製造する際に用いる塗装金属板の平面図である。
【0018】
図1を参照して、全体として1で示す本発明の金属製容器蓋は、金属製シェル3からなっており、この金属製シェル3の内部には、合成樹脂製ライナー5が設けられている。
【0019】
金属製シェル3は、例えば厚さが0.22乃至0.26mm程度のアルミニウム系合金製であり、円形天面壁7とこの天面壁7の周縁から垂下する略円筒形状のスカート壁9とを有しており、スカート壁9の下端には、破断可能な複数のブリッジ11を介してタンパーエビデント(TE)バンド13が連なっている。
【0020】
上記のスカート壁9の略中央部は、後述する巻き締めによって螺子が形成される螺子形成部分Aとなっており、この螺子形成部分Aの上端部分には、凹部15が形成され、凹部15の上方に滑り止め用のローレット(凹凸)16及び周方向に延びているスリット17が複数形成されている。このスリット17は、例えば、この容器蓋1を炭酸飲料等の内容物が収容された容器に適用する場合にガス抜き機能を示すと同時に、また洗浄水の導入口としての機能をも示す。
【0021】
このような金属製容器蓋1は、図2に示されているように、容器口部50に被せられ、巻き締め工程によって容器口部50に巻き締められ、これにより、図3に示されているような形状で容器口部50に固定され、容器口部50が密封されることとなる。
【0022】
図1に戻って、ライナー5は、軟質ポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から形成されるものであり、上記のような形状に成形加工された天面壁7の内面に合成樹脂溶融物を供給し、この溶融物を所要形状に型押成形することによって好都合に形成することができる。図示の実施形態におけるライナー5は、比較的肉薄の円形中央部5aと比較的肉厚の環状周縁部5bとから構成されている。図1から理解されるように、環状周縁部5bの中央部分は若干凹んだ凹部となっており、図3に示されているように、この部分が容器口部50の上端部分に密着することにより、良好な密封性が確保される。また、このようなライナー5は、環状周縁部のみからなる形状のものであってもよいし、さらに、上記の容器蓋1とは全く別個に成形された中栓のようなものであってもよい。
【0023】
図2及び図3を参照して、容器は、金属、ガラス、硬質樹脂等からなるものであり、この容器の口部50の側面には、螺子53が形成され、螺子53の下方には顎部55が形成されている。
【0024】
容器蓋1を容器口部50に巻き締めるためには、図2(1)に示されているように容器蓋1を容器口部50に被せるが、この状態では、容器口部50の上端に前述したライナー5の環状周縁部5bの凹部が対面し、また、容器蓋1のTEバンド13の下端が容器口部50の顎部55の下側に位置する。
【0025】
上記の状態で、図2(2)に示すようにして巻き締めが行われる。即ち、容器口部50に被せられた容器蓋1を、中心押圧具56で容器口頸部50の上端に押さえ付けながら、外側押圧具57で肩部を変形させ、この状態で、容器蓋1のスカート壁9に螺子形成用ローラ59を押し付けながら且つ容器口部50の螺子53に沿って回転させていくことにより、スカート壁9の螺子形成部分Aに、容器口頸部50の螺子53と螺子係合する螺子23を形成する。このとき、螺子形成用ローラ59は、前述した凹部15がガイドとなって凹部21から容器口頸部50の螺子53に沿って速やかに回転して螺子23を形成することとなる。一方、容器蓋1のTE裾部13の下端は、裾部巻き締めローラ60によって容器口部50の顎部55の下側に押し付けられ、顎部55の下側に沿って変形する。
【0026】
上記の巻き締め工程により、容器蓋1は、容器口部50に巻き締め固定され、容器口部70の上端及び外周部に前述したライナー5の環状周縁部5bが密着することにより、容器口部70が密封されることとなる(図3)。この状態において、容器蓋1のスカート壁9は容器口部50の外面に螺子係合しており、且つ容器蓋1のTEバンド13の下端は、容器口部50の顎部55の下側に固定されている。
【0027】
容器口部50に巻き締め固定されている図3の容器蓋1は、これを開栓方向に回転させていくことにより、スカート壁9が上昇して容器口部50から取り除かれるが、この際、TEバンド13は、その下端が容器口部50の顎部55の下側に係合するために、その上昇が制限され、この結果、ブリッジ11が破断し、TEバンド13がスカート壁9から切り離される。従って、容器口部70から除去された容器蓋1ではTEバンド13が切り離されており、これにより、開封の事実を認識することができる。
尚、前述したように、スカート壁9の上部に形成されているローレット16は、容器蓋1を回転させる際の滑り止めとして機能する。
【0028】
本発明の金属製容器蓋1においては、前述した金属製シェル3の外面に塗装層が形成されており、天面壁7の部分では、その塗膜層の表面は実質上平滑な面からなる光沢面となっており、スカート壁9の外面の塗装層では、少なくとも螺子形成部分Aにおいて、その表面が粗面となっている。即ち、少なくとも螺子形成部分Aの塗装層表面が選択的に粗面となっているため、前述した図2の巻締め加工によって形成される螺子23の凸面は粗面となり、この結果、容器蓋1のスカート壁9を握って開栓方向に回転させるときの滑りを抑制し、開栓を容易に行うことが可能となる。また、天面壁7の塗装層表面が平滑な光沢面となっているため、外観特性が良好であるばかりか、この面は滑り性が高いため、該天面壁7を所定の搬送部材上に載置しての搬送性も良好である。
【0029】
かかる本発明において、天面壁7の塗装層の表面が平滑な光沢面となっており、且つスカート壁9の螺子形成部分Aが上記のような粗面となっている限り、他の部分の塗膜層の表面の形態はどのようになっていてもよいが、容器蓋1を開栓する際には、スカート壁9の全体を握って回転せしめるものであるため、スカート壁9の外面に形成されている塗装層の全面が、上記のような粗面となっており、且つ天面壁7及びTEバンド13の外面に形成されている塗装層の表面が、上記のような平滑な光沢面となっていることが好適である。
【0030】
<塗装層の層構造>
本発明において、上記のような塗装層の表面形態は、マット剤や発泡剤などを用いたインキ等を用いることなく実現でき、図4には、天面壁7の外表面に形成された塗装層の層構造を示し、図5には、スカート壁9の螺子形成領域Aの外表面に形成された塗装層の層構造を示した。
【0031】
即ち、図4及び図5から理解されるように、天面壁7或いはスカート壁9の螺子形成領域A上に形成された塗装層70は、印刷インキ層105と、印刷インキ層105を覆うように形成されたオーバーコート層109とからなる層構造を有している。
【0032】
図4において、天面壁7上に形成された塗装層70においては、印刷インキ層105の表面(オーバーコート層109との界面)は平滑な表面となっており、この結果、オーバーコート層109の表面、即ち、塗装層70の表面は、平滑面であり、光沢面となっている。一般に、このような光沢面の表面粗さRa(平均表面粗さ:JIS B 0601−1994)は0.2μm以下である。
【0033】
一方、図5において、スカート壁9の螺子形成領域A上に形成された塗装層70においては、印刷インキ層105自体が波打っており、その表面(オーバーコート層109との界面)105aが微細な凹凸面となっており、この微細な凹凸面がオーバーコート層109の表面にも反映されており、その表面109a(即ち、塗装層70の表面)も微細な凹凸により粗面となっており、光沢度の低い非光沢面となっていることが理解されよう。本発明において、オーバーコート層109の表面109aの粗面の程度は、通常、十分な滑り止め性を得るために、表面粗さRa(平均表面粗さ:JIS B 0601−1994)が0.5μm以上、特に2.0μm以上であるのがよい。また、このような塗装層70は、後述する塗装方法により形成されるため、一般に、表面粗さRaの上限は8μm程度である。
【0034】
尚、図4及び図5には示されていないが、金属製シェル3の内面側(天面壁9及びスカート壁9の内面側)には、1乃至5μm程度の厚みの有機樹脂保護層が形成されていてもよい。この有機樹脂被覆層は、熱可塑性樹脂で形成されていてもよいし、熱硬化性樹脂で形成されていてもよい。
【0035】
本発明において、上記のような印刷インキ層105は、後述する製造方法に関連して、紫外線硬化型インキの硬化物からなるものであり、その組成等は、製造方法の項で説明する。また、オーバーコート層109は、仕上げワニス層とも呼ばれる透明な層であり、各種熱可塑性樹脂やセルロースなどを含むラッカー等からなるオーバーコート材を塗布し、硬化乃至焼き付けることによって形成されるものである。また、印刷インキ層105の厚みは、特に制限されず、一般的には、1乃至6μm程度であるが、後述する塗装方法によっては、塗装層70の表面を粗面とする領域(図5参照)と平滑面とする領域(図4参照)とで、印刷インキ層105の厚みに差がある。また、オーバーコート層109の厚みは、塗装層70の表面形態にかかわらず、1乃至20μm、特に4乃至10μm程度の範囲にあることが好適である。即ち、この厚みが過度に厚いと、塗装層70の表面を粗面とする場合、印刷インキ層105の表面105aの凹凸がオーバーコート層109の表面に十分に反映されず、滑り止め性を示すに十分な程度の粗面とすることが困難となってしまうおそれがある。また、この厚みが薄すぎると、印刷インキ層105の保護機能など、オーバーコート層109の本来の機能が失われてしまうおそれがある。
【0036】
上述した図4及び図5における本発明の金属製容器蓋1の金属製シェル3の外表面に形成される塗装層70(印刷インキ層105やオーバーコート層109)は、気泡などを含まない緻密な層であり、従って、前述した図2に示す巻締め加工などを行った際に、ダストの発生などを生じることがない。
【0037】
上述した本発明の金属製容器蓋1塗装金属板は、以下に述べるような塗装方法によってシェル3となる塗装金属基板を作成し、これを打ち抜き、キャップ形状に絞り加工することによって製造される。
【0038】
<塗装金属板の製造>
本発明の金属製容器蓋の製造に用いる塗装金属板を製造するにあたっては、先ず、前述した印刷インキ層105の表面105a、ひいてはオーバーコート層109の表面109aを粗面とするために、印刷インキ層105を形成するためのインキとして、紫外線硬化型インキを使用し、且つオーバーコート層109を形成するためのオーバーコート材として、紫外線硬化型インキと親和性を有する溶剤を含有するものを使用する。
【0039】
(1)紫外線硬化型インキ;
紫外線硬化型インキは、それ自体公知の紫外線硬化型樹脂組成物に目的とする色を発現するための着色剤、及びその他、公知の塗料用添加剤が配合されたものであり、紫外線硬化型樹脂組成物には、大別して、カチオン硬化型と紫外線ラジカル硬化型のものがある。
【0040】
(1−a)カチオン硬化型の樹脂組成物
カチオン硬化型のものでは、樹脂成分として紫外線硬化型エポキシ樹脂と、光重合開始剤として、カチオン性紫外線重合開始剤とを含むものを代表的なものとして例示することができる。
【0041】
紫外線硬化型エポキシ樹脂は、分子内に脂環族基を有しており且つ脂環族基の隣接炭素原子がオキシラン環を形成しているエポキシ樹脂成分を含有しているものであり、例えば分子内に少なくとも1個のエポキシシクロアルカン基、例えばエポキシシクロヘキサン環、エポキシシクロペンタン環等を有するエポキシ化合物等が単独或いは組み合わせで使用される。その適当な例は、これに限定されないが、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサン・カーボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、リモネンジオキサイド等である。
【0042】
また、上記エポキシ樹脂と組み合わせで用いるカチオン性紫外線重合開始剤とは、紫外線によって分解し、ルイス酸を放出し、このルイス酸がエポキシ基を重合する作用を有するものであり、その例として、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族セレニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩等が挙げられる。
【0043】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムクロライド、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウム等のジアリルヨードニウム塩を挙げることができる。
【0044】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩を挙げることができる。
【0045】
芳香族セレニウム塩としては、例えば、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロアンチモネート等のトリアリールセレニウム塩を挙げることができる。
【0046】
また、その他のカチオン性紫外線重合開始剤として、(2,4−シクロペンタジェン−1−イル)[(1−メトキシチエチル)−ベンゼン]−アイロン−ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルスルホニウムヘキサフルロアンチモネート、ジアルキルフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジアルキルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモーネート、4,4−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート等を使用することもできる。
【0047】
また、上述したカチオン性紫外線重合開始剤は、一般に、紫外線硬化型エポキシ樹脂100重量部当り、0.5乃至10重量部の量で使用される。また、必要により、それ自体公知のカチオン重合性ビニル単量体、希釈剤、他のエポキシ樹脂、増感剤、架橋剤等が配合されていてもよい。
【0048】
(1−b)紫外線ラジカル硬化型の樹脂組成物
このタイプの紫外線硬化型樹脂組成物は、紫外線硬化型モノマー乃至プレポリマーと光ラジカル重合開始剤とを含むものである。
【0049】
紫外線硬化型モノマー乃至プレポリマーとしては、分子内に複数のエチレン系不飽和基を有するモノマー乃至プレポリマー或いはそれらの混合物が使用される。その適当な例はエポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型ポリエステル樹脂等である。
【0050】
エポキシアクリレート樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂とエチレン系不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタアクリル酸との付加物、或いはこの付加物とエチレン系不飽和多価カルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等との反応物等が使用される。
【0051】
ウレタンアクリレート樹脂としては、イソシアネート末端ポリエステル或いはイソシアネート末端ポリオールと官能基含有アクリル単量体、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等とを反応させて得られたウレタンアクリレート樹脂が使用される。
【0052】
熱硬化型アクリル樹脂としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGMA)、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、N,N,N’,N’−テトラキス(β−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンのアクリル酸エステル、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン等が使用される。
【0053】
熱硬化型ポリエステル樹脂としては、分子中にエチレン系不飽和結合を含むポリエステル、例えば、エチレン系不飽和多価カルボン酸、例えばマレイン酸、フマール酸、イタコン酸、テトラヒドロフタール酸等と、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、重合脂肪酸等の他の酸成分との組み合わせと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノール類等の多価アルコールとを縮合させて得られるポリエステル樹脂が使用される。
【0054】
また、上記以外にも、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート(DAP)、ジアリルイソフタレート、ジアリルアジペート、ジアリルグリコレート、ジアリルマレエート、ジアリルセバケート、トリアリルフオスフエート、トリアリルアコニテート、トリメリット酸アリルエステル、ピロメリット酸アリルエステル等の他の多官能性モノマーも使用しうる。
【0055】
上記の多官能性モノマー乃至プレポリマーは、通常1官能性モノマーと組み合わせで使用するのが普通であり、このようなモノマーとして、アクリロイルモルフォリン、グリシジルアクリレート(GA)、グリシジルメタクリレート(GMA)、カルビトールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリルアミド(AAm)、メタクリルアミド(MAm)、N−メチロールアクリルアミド(N−MAM)、N−ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、N−ビニルピロリドン、マレイン酸、イタコン酸、メチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル(VAc)、ビニルトルエン等を例示することができる。
【0056】
紫外線硬化型モノマー乃至プレポリマーと組み合わせで使用される光ラジカル重合開始剤の代表的なものとしては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン及びそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはキサントン類;などある。
【0057】
かかる光ラジカル重合開始剤は、一般に、上述した紫外線硬化性樹脂成分100重量部当り0.1〜30重量部、特に1〜25重量部となる割合で使用される。また、光ラジカル重合開始剤と共に、安息香酸系又は第三級アミン系など公知慣用の光重合促進剤の少なくとも1種を併用することもできる。
【0058】
(1−c)着色剤
着色剤としては、顔料が使用されるが、このような顔料の具体例としては、以下のものを挙げることができる。
【0059】
黒色顔料:カーボンブラック、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック。
黄色顔料:亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマンネントイエローNCG、タートラジンレーキ。
橙色顔料:赤口黄鉛、モリブテンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料:ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B。
紫色顔料:マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ。
青色顔料:紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC。
緑色顔料:クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG。
白色顔料:亜鉛華、二酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛。
体質顔料:バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト。
【0060】
上述した顔料の内、紫外線硬化阻害を起こすおそれのあるものについては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂等で被覆して使用することができる。このような顔料は、一般に、インキ中に、10乃至60重量%の量で使用される。
【0061】
(1−d)その他の配合剤
上述した成分を含有する紫外線硬化型インキには、それ自体公知の配合剤を公知の処方で配合することができ、このような配合剤としては、シリコーンオイル等の消泡剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アクリル共重合体等のレベリング剤、増粘剤、減粘剤等を例示することができる。
【0062】
本発明においては、上述した紫外線硬化型インキとして、特に紫外線ラジカル重合硬化型の樹脂組成物を含有するものが好適である。即ち、本発明では、オーバーコート材として、紫外線硬化型インキと親和性を有する溶剤を含有するものを使用する必要があるが、カチオン硬化型のものはエポキシ樹脂を主体とするものであるため、このような溶剤が著しく制限されるのに対して、紫外線ラジカル硬化型の樹脂組成物を含有するものでは、溶剤選択の幅が非常に広いからである。また、後述する製造工程において、熱処理による仕上げ硬化を有効に行うためには、紫外線ラジカル硬化型の樹脂組成物の中でも特に、熱硬化型アクリル樹脂や熱硬化型ポリエステル樹脂を樹脂成分として含有しているものが好適である。
【0063】
(2)オーバーコート材
オーバーコート層109の形成に用いるオーバーコート材としては、透明な膜形成成分とともに、前述した紫外線硬化型インキと親和性を有する溶剤を含有するものが使用される。
【0064】
透明な膜形成成分としては、環状オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル;及びこれらのブレンド物;などを使用することができる。また、ニトロセルロース、アセチルセルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等のセルロースエステルや、エチルセルロース、ベンジルセルロース等のセルロースエーテルなどのセルロース誘導体(即ち、ラッカー成分)を使用することもできる。特に、非光沢面と同時に光沢面を形成する場合には、熱可塑性ポリエステルと尿素或いはメラミン等のアミノ樹脂とのブレンド物やアクリル樹脂、ビニル樹脂が好適である。
【0065】
また、上記の透明な膜形成成分の溶剤には、メタノール、エタノール、i−ブタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、i−オクタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類、t−ブチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−nブチル等のエステル類などがあるが、本発明においては、これらの溶剤の内、使用する紫外線硬化型インキの種類に応じて、該インキと親和性を有するものが選択的に使用される。
【0066】
尚、紫外線硬化型インキに対して親和性の高い溶剤とは、該インキの硬化物に対して濡れ性の高いもの、例えば25℃での液滴接触角が70度以下のものを意味する。
【0067】
上記のような溶剤は、紫外線硬化型インキに対する親和性の程度によっても多少異なるが、一般に、前記膜形成成分100重量部当り、20乃至80重量部、特に40乃至60重量部の量で使用することが好ましい。
【0068】
本発明においては、上記のような紫外線硬化型インキ及びオーバーコート材を用いて、紫外線硬化型インキのコーティング、紫外線照射による光硬化、オーバーコート材のコーティング及び仕上げ硬化の各工程を経て、目的とする塗装金属板を製造する。
【0069】
上記の塗装プロセスの概要を図6に示した。
即ち、図6を参照して、先ず、金属基板100(金属製シェル3となる)の表面に、紫外線硬化型インキをコーティングして、インキコーティング層101を形成する(図6(a))。このコーティングは、スクリーン印刷、グラビア印刷など、それ自体公知の方法により行うことができ、この段階では、インキコーティング層101は未硬化の状態にある。この場合、金属基板100の裏面(シェル3の内面に対応)には、必要により、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂により有機樹脂被覆層を形成しておく。また、インキコーティング層101を形成する金属基板100の表面にも、必要により、上記のような有機樹脂被覆層を下地塗膜として形成しておくこともできる。
【0070】
次いで、インキコーティング層101に紫外線を照射して光硬化を行うが、この場合、粗面とする領域X(即ち、スカート壁9或いは螺子形成部分Aに対応する領域)では、該コーティング層101を部分的に硬化せしめることにより、印刷インキ前駆体層103を形成し、他の領域Y(天面壁7やTEバンド13に対応する領域)では、コーティング層101を完全に硬化させて印刷インキ層105とする(図6(b))。即ち、図6(b)に示されているように、部分硬化によって形成される印刷インキ前駆体層103は、金属基板100側の領域が未硬化乃至半硬化層103aとなり且つ該層の上の表面領域が硬化層103bとなった二層構造を有している。このような紫外線照射により、粗面とすべき領域に対応する部分を選択的に部分硬化せしめて、二層構造を有する印刷インキ前駆体層103を形成することが、粗面を形成する上で重要である。
【0071】
本発明においては、粗面とすべき領域Xを選択的に印刷インキ前駆体層103とした後、印刷インキ前駆体層103及び印刷インキ層105の全体を覆うように、前述した溶剤含有のオーバーコート材をコーティングして、硬化後の厚みが前述した範囲となるような厚みのオーバーコーティング層107を形成する(図6(c))。
【0072】
このように、オーバーコーティング層107を形成した後、熱処理によって仕上げ硬化を行うことにより、図6(d)に示されるように、領域Xでは、印刷インキ前駆体層103中の未硬化乃至半硬化層103aが完全硬化し、上面が微細な凹凸面105aとなった印刷インキ層105となり、さらに、オーバーコーティング層107が焼き付けられて硬化し、上面が粗面109aとなったオーバーコート層109が形成される。また、他の領域Yでは、平滑な上面を有する印刷インキ層105の上に形成されたオーバーコーティング層107が焼き付けられて硬化し、上面が平滑面109bとなったオーバーコート層109が形成される。このようにして、図4及び図5に示されている表面を有する塗装層70を備えた塗装金属板が得られるのである。
【0073】
本発明においては、上記の熱処理によって、領域Xでは、オーバーコート層109側の表面105aが微細な凹凸面(粗面)となった印刷インキ層105が形成され、この表面105aがオーバーコート層109の表面109aに反映されるのであるが、このような凹凸面(粗面)の形成は、現象として見出されたものであり、何故、このような粗面が形成されるかの正確な理由は解明されていない。しかるに、本発明者は、次のように推定している。
【0074】
即ち、図6(c)に示されているように、印刷インキ前駆体層103上にオーバーコーティング層107を形成すると、該層107には、紫外線硬化型インキに対して親和性を有する溶剤が含まれている。このため、該溶剤が、印刷インキ前駆体層103の上部領域の硬化層103bを通って、下方領域の未硬化乃至半硬化層103aにまで浸透する。この結果、この未硬化乃至半硬化層103aの流動性が増大し、この状態で、その後の加熱によって、溶剤が除去されると同時に硬化するため、硬化収縮が大きく、この硬化収縮が上部の硬化層103bに反映され、この結果、この領域Xの印刷インキ層105の上面105aが微細な凹凸面となり、印刷インキ層105の凹凸面105aがオーバーコーティング層107の硬化によって形成されるオーバーコート層109の上面109aに反映するものと考えられるのである。例えば、後述する比較例の実験結果から理解されるように、前記溶剤として、紫外線硬化型インキに親和性を有していないものを用いた場合には、硬化層103bを介しての未硬化乃至半硬化層103aへの溶剤の浸透が生じないため、形成される印刷インキ層105の上面は微細な凹凸面とはならず、従って、オーバーコート層109の表面を粗面とすることができない。
【0075】
上述した塗装プロセスにおいて、インキコーティング層101の部分硬化によって形成される印刷インキ前駆体層103中の硬化層103bの厚みは、通常、0.5乃至2μm程度の範囲にあることが好ましい。即ち、この硬化層103bの厚みが、必要以上に厚いと、未硬化乃至半硬化層103aへの浸透が不十分となり、硬化収縮が不満足となったり或いは硬化収縮が硬化層103bの上面(印刷インキ層105の上面105a)に有効に反映されず、結局、オーバーコート層109の上面が粗面化されず、滑り防止性が不十分となるおそれがある。また、硬化層103bの厚みがあまり薄いと、オーバーコーティング層107と印刷インキ前駆体層103とが一体化してしまい、この場合にも、オーバーコート層109の上面を粗面化することが困難となってしまうおそれがある。
【0076】
また、本発明において、上記印刷インキ前駆体層103の下側の未硬化乃至半硬化層103aの厚みは、通常、1.0乃至8μmの範囲にあることが好ましい。即ち、この厚みが、あまり薄いと、仕上げ硬化のための熱処理に際しての硬化収縮が不十分となり、微細な凹凸面が印刷インキ層105の上面105aに形成されず、また、この厚みが必要以上に厚いと、格別の効果が得られるわけではなく、むしろ、仕上げ硬化のための熱処理時間が必要以上に長くなってしまい、生産性が大きく低下してしまう。
【0077】
上述した方法において、領域Y(天面壁7やTEバンド13に対応する領域)では、オーバーコート層109の表面が平滑面とされ、領域X(スカート壁9或いは螺子形成部分Aに対応する領域)について、オーバーコート層109の表面が選択的に粗面化されるわけであるが、このような選択的な粗面化は、インキコーティング層101の厚み調整により、或いは紫外線照射に際して、紫外線の照度や照射時間によって紫外線の積算光量を調整することにより、領域Xについてのみ、選択的に二層構造の印刷インキ前駆体層103が形成されるように紫外線照射による光硬化を行うことにより実現できる。
【0078】
即ち、インキコーティング層101の厚み調整による場合には、紫外線照射条件に応じて、インキコーティング層101の厚みを、領域Xの方が領域Yよりも厚く設定すればよい。具体的には、前述した厚みの硬化層103bが形成されるように、照射する紫外線の照度や照射時間を設定しておき、ここで設定された硬化層203bの厚みに、形成すべき未硬化乃至半硬化層103aの厚みを加えた厚みを、領域Xにおけるインキコーティング層101の厚みとし、領域Yでは、硬化層103bに相当する厚みを、インキコーティング層101の厚みとし、この状態で、所定の照度の紫外線を所定時間、領域X及び領域Yを含めた全面に照射すればよいのである。この場合、最終的に得られる塗装金属板の概略断面構造は、図7に示されるように、領域Xの部分の塗装層70の厚みは、領域Yの部分の塗装層70に比して、未硬化乃至半硬化層103aの厚み分だけ厚く形成されることとなる。
【0079】
紫外線照射条件により選択的粗面化を行う場合は、例えば、形成するインキコーティング層101の厚みに応じて、領域Xでは、インキコーティング層101の全体厚みが硬化しない程度に、紫外線の照度や照射時間(積算光量)を設定しておけばよいのである。即ち、領域X及び領域Yとで、照射する紫外線の照度或いは照射時間を変えればよいのである。
【0080】
具体的には、金属基板100の表面に一様に紫外線硬化型インキを塗布して均一な厚みのインキコーティング層101を形成し、全面に紫外線を所定時間照射して部分硬化を行った後、粗面化すべき領域X上に紫外線遮断性のマスクを設け、さらに紫外線照射を続行することにより、領域Xについてのみ、印刷インキ前駆体層103が形成され、他の領域Y(平滑面とすべき部分)で印刷インキ層105を直ちに形成することができる。また、粗面化すべき領域X上に、紫外線吸収能を有する半透明のマスクを配置し、この状態で全面に高照度の紫外線を照射することにより、領域Xに照射される紫外線照度を低下させ、これにより、領域Xについてのみ、印刷インキ前駆体層103を形成することができる。このようにして紫外線照射による光硬化が行われた場合には、最終的に得られる塗装金属板では、領域X及び領域Yにおいて、塗装層70の厚みは同じとなる。
【0081】
上記のようにして領域Xについて選択的に印刷インキ前駆体層103が形成され、次いでオーバーコーティング層107を全面に形成した後に行われる熱処理による仕上げ硬化は、用いた溶剤や紫外線硬化型インキの種類に応じて、印刷インキ前駆体層103中の未硬化乃至半硬化層103aが完全に硬化し、且つオーバーコーティング層107中の溶剤が完全に揮散し、オーバーコーティング層107の焼付けにより硬化したオーバーコート層109が形成される程度の温度及び時間で行えばよい。一般的には、オーバーコーティング材中の透明な膜形成成分の融点以下及び溶剤の沸点以上(通常、80乃至200℃程度)で5乃至15分程度加熱を行えばよい。
【0082】
本発明によれば、上記のようにして金属基板の全面(シェルとしたときに外面となる表面)に塗装層を形成するが、かかる塗装層において、粗面化されている領域Xは、図8に示されるようなパターンでスカート壁9に対応する部分に形成されており(領域Xはハッチングで示されている部分である)、この領域X以外の部分は、平滑な光沢面となっている領域である。また、図8において、200で示される円で囲まれる領域が金属製シェル3となる部分であり、この円8と領域Xとの間の環状部分がTEバンド13となる部分であり、領域Xで囲まれている部分が天面壁7となる部分である。
【0083】
即ち、上記の塗装金属板について、円200で囲まれる部分を打ち抜き、次いで絞り加工して、キャップ形状の金属製シェル3を得、さらに、ブリッジ11を残すようにしてのカッティング加工によりスカート壁9とTEバンド13とを形成し、さらなるカッティング加工によりスリット15を形成し、且つローレット加工によってローレット17を形成し、また前述した手段でライナー5を設けることにより、図1に示す形態を有する本発明の金属製容器蓋1を得ることができる。
【0084】
上記の金属製容器蓋1は、図2[(1)及び(2)]に示すように容器口部50に被せられての巻締め加工により、スカート壁9の螺子形成領域Aに容器口部の螺子53と係合する螺子23が形成され、容器蓋としての使用に供される。
【0085】
上述した本発明の金属製容器蓋1は、天面壁7の表面が平滑な光沢面となっており、外観が良好であり且つ生産ラインの搬送性が優れているばかりか、少なくとも螺子23の突部外面が粗面となっているため、スカート壁9を手で握っての開栓方向への回転を行う際の滑りが有効に抑制され、開栓を容易に行うことができる。
尚、ローレット16は、螺子形成部分Aの上方の領域に形成されているが、かかるローレット16は、螺子形成部分Aにまで延びていてもよく、これにより、容器蓋1の開栓性を高めることができる。
【0086】
また、本発明の方法によれば、発泡剤やマット剤が配合された格別のインキを使用せずに、粗面と平滑な光沢面とを有する金属製容器蓋1を製造することができるため、煩雑な生産ラインを必要とせず、また生産工程でのダストの発生も生じることがない。
【実施例】
【0087】
本発明を、以下、実験例により説明する。
尚、以下の実験例において、容器蓋或いは塗装金属板の形成に用いた材料、並びに評価試験方法は、以下の通りである。
【0088】
金属基板:厚さ0.2mmの表面処理アルミニウム板
紫外線硬化型インキ:
マツイカガク社製金属印刷用紫外線硬化型インキ「CPUVーOL シリーズ」
オーバーコート材A:
ポリエステル樹脂塗料(溶剤;ケトン、エステル、エーテル)
紫外線照射ランプ:
高圧水銀ランプ、120W/cm、2灯
【0089】
表面粗さRa:
JIS B 0601−1994に準拠した算術平均粗さで示した。
測定は(カットオフ値0.8mm 評価長さ4mm)で表示。
開栓性:
アルミニウム製ネジ付壜に70℃の温水を充填し、窒素封入下で試料キャッ
プを巻締めた後、冷蔵庫内で冷却し、開栓官能評価試料とした。
試料キャップを冷蔵庫より取り出し、30秒放置させて表面を結露させた状
態で開栓を行い、掌のグリップ感により、下記の基準で評価した。
△:手触りはよいが開栓時にスリップ感がある。
○:開栓時のスリップ感はないが、手触りが悪い。
◎:手触りがよく、開栓時のスリップ感もない。
【0090】
<実験例1>
金属基板の片側表面にポリエステル白色塗料を厚み0.7μに塗装・加熱乾燥した後、反対側表面にエポキシ塗料を厚み0.7μに塗装・加熱乾燥し、片側白色下地塗膜を持つ両面塗装板を調製した。
前記塗装板の白色下地塗膜面に表1に示した厚みにて、紫外線硬化型インキを塗布・印刷した(領域Y)。
また、上記のインキ層の上に、外径が59mm、内径が37mmの大きさで、さらにインキ層の厚みが表1に示した厚みとなるように、上記紫外線硬化型インキを厚塗りした。
印刷後、紫外線照射ランプを用い、1秒間紫外線を全面に照射し、光硬化を行い、次いでオーバーコート材としてポリエステル樹脂塗料を乾燥後の塗布量が40mg/dmとなるように塗装印刷板全面に塗布し、電気オーブンにて180℃10分間加熱乾燥を施し、塗装基板を得た。
【0091】
上記の塗装基板について、領域X及び領域Yでの塗装層表面(オーバーコート層表面)の表面粗さRaを測定し、その結果を表1に示した。
【0092】
また、上記で得られた塗装基板を、領域Xの環状部分を含む同心円の円板形状(67mm径)に打ち抜き、次いで絞り加工を行い、ハイトが17mmのキャップ形状の金属製シェルを作製した。この金属製シェルの天板の内面にライナー材を施し、図1に示す形状の金属製容器蓋を得た。
【0093】
上記で得られた金属製容器蓋を、口径が38mmで口部外面に螺子を備えた金属容器に被せ、巻締め加工を行い、金属製容器に装着した。
この状態で、この容器蓋の開栓性の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0094】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の金属製容器蓋の半断面側面図。
【図2】図1の金属製容器蓋を容器口部に巻締める工程を説明するための図。
【図3】図1の金属製容器蓋を容器口部に巻締めた状態を示す側面図。
【図4】図1の金属製容器蓋の天面壁部分の塗装層の層構造を示す図。
【図5】図1の金属製容器蓋のスカート壁部分の塗装層の層構造を示す図。
【図6】本発明の金属製容器蓋の製造に用いる塗装金属板を作製する際の塗装プロセスを示す図。
【図7】図1の金属製容器蓋において、スカート壁部分の塗装層の層構造と他の部分の塗装層との層構造との一例を示す図。
【図8】本発明の金属製容器蓋を製造する際に用いる塗装金属板の平面図。
【符号の説明】
【0096】
1:金属製容器蓋
3:金属製シェル
7:天面壁
9:スカート壁
13:タンパーエビデント(TE)バンド
70:塗装層
100:金属基板
101:インキコーティング層
103:印刷インキ前駆体層
105:印刷インキ層
107:オーバーコーティング層
109:オーバーコート層
X:粗面領域
Y:平滑面領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下している円筒形スカート壁とを有しており、且つ外面に塗装層が形成された金属製シェルからなり、該スカート壁に螺子が形成される金属製容器蓋において、
前記塗装層は、前記金属製シェルの外表面に形成され且つ紫外線硬化型インキの硬化物からなる印刷インキ層と、該印刷インキ層の表面に形成されたオーバーコート層とから形成されており、
前記スカート壁の少なくとも螺子形成部分の外面に形成された塗装層においては、前記印刷インキ層の表面に微細な凹凸が形成されており、前記オーバーコート層の表面に該印刷インキ層に形成された微細な凹凸が反映されており、該凹凸によって、該塗装層の表面が光沢度の低い粗面となっていることを特徴とする金属製容器蓋。
【請求項2】
前記円形天面壁の外面に形成された前記塗装層の表面は、実質上平滑な面からなる光沢面となっている請求項1に記載の金属製容器蓋。
【請求項3】
前記スカート壁の外面の実質上全体にわたって塗装層の表面が前記粗面となっている請求項1または2に記載の金属製容器蓋。
【請求項4】
前記オーバーコート層は、前記紫外線硬化型インキと親和性を有する溶剤を含有するオーバーコート材を用いての塗布及び焼付けにより形成されたものである請求項1乃至3の何れかに記載の金属製容器蓋。
【請求項5】
前記スカート壁の下端に、破断可能なブリッジを介してタンパーエビデントバンドが形成されており、該バンドの外面に形成された前記塗装層の表面は、実質上平滑な面からなる光沢面となっている請求項1乃至4の何れかに記載の金属製容器蓋。
【請求項6】
前記粗面の表面粗さRaが0.5μm以上であり、前記光沢面の表面粗さRaが0.2μm以下である請求項2に記載の金属製容器蓋。
【請求項7】
表面が粗面となっている領域の塗装層は、表面が光沢面となっている領域の塗装層に比して、前記印刷インキ層が厚く形成されている請求項2に記載の金属製容器蓋。
【請求項8】
円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下している円筒形スカート壁とを有しており、且つ外面に塗装層が形成された金属製シェルからなり、該スカート壁に螺子が形成される金属製容器蓋を製造する方法において、
前記金属製シェル形成用の金属基板の一方の表面に塗装層を形成し、該金属基板を円板形状に打ち抜き、次いで絞り加工することにより、円形天面壁と円筒形スカート壁とを有する金属製シェルを成形することからなり、
前記金属基板表面の塗装層は、
(a)前記金属基板の表面に紫外線硬化型インキをコーティングして未硬化のインキコーティング層を形成する工程;
(b)紫外線照射により、前記インキコーティング層を硬化せしめる工程であって、前記スカート壁の少なくとも螺子形成部分に対応する部分では、インキコーティング層の金属基板側の領域が未硬化乃至半硬化層となり且つ該未硬化乃至半硬化層の上の領域が硬化層となった2層構造が形成され、且つ該2層構造が形成される領域以外の領域では、インキコーティング層の全体が硬化層となるように、紫外線照射による光硬化が行われる光硬化工程;
(c)前記紫外線硬化型インキと親和性を有する溶剤を含有するオーバーコート材を用意し、前記インキコーティング層の表面に形成されている硬化層の全面にオーバーコート材を塗布してオーバーコーティング層を形成する工程;
(d)加熱により、前記インキコーティング層中の未硬化乃至半硬化層を完全硬化し且つオーバーコーティング層を焼付けることにより、前記インキコーティング層の全体が完全硬化してなる印刷インキ層と前記オーバーコーティング層が焼き付けられたオーバーコート層とからなる塗装層を形成する仕上げ硬化工程;
を含む工程により形成されることを特徴とする金属製容器蓋の製造方法。
【請求項9】
前記工程(a)において、前記スカート壁の少なくとも螺子形成部分に対応する部分でのインキコーティング層の厚みを選択的に他の部分よりも厚くすることにより、前記工程(b)での紫外線照射により、前記インキコーティング層に未硬化乃至半硬化層と硬化層との2層構造を選択的に形成する請求項8に記載の塗装金属板の製造方法。
【請求項10】
前記工程(b)において、照射する紫外線の積算光量を調整することにより、前記インキコーティング層に未硬化乃至半硬化層と硬化層との2層構造を選択的に形成する請求項9に記載の塗装金属板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−230678(P2008−230678A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75061(P2007−75061)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】