説明

金属製床束

【課題】押圧部材が目視できない状態で異常な向きになっていても、それを作業者が容易に発見することができる金属製床束を提供する。
【解決手段】床束本体2は、高さ調整部22と結合部とを備え、連続した開口部12を有し、上記開口部12に、対向するよう内側に折込まれて上端に長手方向に延びる受圧部14bが形成された鋼製大引1を支持するもので、結合部は、受圧部14bに合致する押圧部材31と、鋼製大引1の受け部材33と、開口部12を挟み付ける結合部材24で構成され、押圧部材31の両端部を折り曲げて受圧部14bに沿うよう形成した位置決め用の折り曲げ片31aが設けられ、折り曲げ片の下端に鋼製大引1の長手方向に対して上下方向に傾斜している傾斜縁部が設けられている。これにより、押圧部材31が異常組み付けになると、結合部材24が傾いて異常を確実に発見できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製大引に結合される床束本体の異常組み付けを防止することのできる金属製床束に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造住宅や工業化住宅の1階床は、束石または土間コンクリート等の基礎の上に床束本体を起立させて鋼製大引を支持し、その上に直交するように根太をのせて床板を張る構造が採用されている。床束本体は、高さ調整の容易なものが普及し、また、大引も鋼板製の内部が中空とされた鋼製大引が採用されている。そして、上記鋼製大引と床束本体を結合する結合部が配置され、この結合部を鋼製大引の下部に組み付けて、鋼製大引が床束本体で支持されるようになっている。
【0003】
上記鋼製大引の下部には鋼製大引の長手方向に延びる開口部が形成され、上記結合部をこの開口部を通過させて鋼製大引の奥の方に差し入れて、鋼製大引が床束本体で支持されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−294981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように鋼製大引の奥の方へ差し入れられた結合部の可動部品を、外部から目視することができないので、この可動部品が異常な向きになっていた場合に、この異常を見逃す恐れがある。このような可動部品の異常の詳細については、図12の説明において後述する。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、可動部品が異常な向きになっていても、それを作業者が容易に発見することができる金属製床束を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の金属製床束は、床束本体は、基礎から起立している高さ調整部とこの高さ調整部を鋼製大引に対して結合する結合部とを備え、内部が中空で長手方向に向って連続した開口部を有し、上記開口部に、対向するよう内側に折込まれて上端に長手方向に延びる受圧部が形成された鋼製大引を支持するように構成され、上記結合部は、上記受圧部に合致する押圧部材と、鋼製大引の下部を受入れる受け部材と、上記押圧部材と上記受け部材に貫通して押圧部材と受け部材との間で上記開口部を挟み付ける結合部材とを含んで構成され、上記押圧部材の両端部に、当該両端部を折り曲げて上記受圧部に沿うよう形成した位置決め用の折り曲げ片が設けられ、上記折り曲げ片の下端に鋼製大引の長手方向に対して上下方向に傾斜している傾斜縁部が設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、上記押圧部材の両端部に、当該両端部を折り曲げて上記受圧部に沿うよう形成した位置決め用の折り曲げ片が設けられ、上記折り曲げ片の下端に鋼製大引の長手方向に対して上下方向に傾斜している傾斜縁部が設けられている。よって、押圧部材が斜め向きになって傾斜縁部が受圧部と交差し、押圧部材の押圧機能が正常に果たされない状態になっても、上記傾斜縁部が受圧部に当接することにより、傾斜縁部の傾斜に応じた角度の傾きが上記結合部材に現われる。したがって、作業者は押圧部材が目視できない状態で組み付け作業をしていても、鋼製大引から突き出ている結合部材の傾きによって、押圧部材の異常組み付けを容易にしかも確実に発見することができる。
【0008】
本発明の金属製床束において、上記押圧部材が受圧部に対して異常な向きになっているとき、上記傾斜縁部が受圧部と交差した状態で受圧部上に接触するよう上記両折り曲げ片の間隔が設定されている場合には、押圧部材が異常な向きになったときには、傾斜縁部が受圧部と交差した状態で受圧部上に接触する。したがって、押圧部材に傾斜が付与され鋼製大引から突出している結合部材に異常を示す傾きが確実に現われ、作業者は異常を見落とすことがない。
【0009】
本発明の金属製床束において、上記両傾斜縁部の傾斜方向が、同方向である場合には、押圧部材が異常な向きのときに押圧部材は必ず一定の方向に傾斜する。そのため、異常時には確実に結合部材に傾斜が現われ、異常を見落とすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の金属製床束を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図10は、本発明の金属製床束の一実施例を示す。
【0012】
本実施例に係る金属製床束(以下「床束本体」という)2によって支持される大引は鋼板製であり、この鋼製大引1は、図1に示すように、基礎7上に起立させた床束本体2によって支持されている。上記鋼製大引1の上に根太1aが固定され、その上に床板1bがはり付けてある。
【0013】
上記鋼製大引1は、図2に示すように、鋼板をプレス成形またはロール成形することにより、断面形状が長方形の中空状に形成されたもので、下面11の中央部には、鋼板大引1の長手方向線に沿って延びる開口部12が形成されている。この開口部12の両側には、鋼板の幅方向の両縁部が下面11から内側に(上面13に向かって)略直角に折り曲げられて形成された一次折込部14aと、この一次折込部14aの先端からさらに開口部12から離れる方向に(側面15,15に向かって)折り曲げられて形成された二次折込部14bとからなる折込部14が設けられている。
【0014】
上記一次折込部14aは折込み壁板を形成し、左右の折込み壁板は対向している。また、上記二次折込部14bは、折込み壁板の上端に形成され鋼製大引1の長手方向に細長く延びている受圧部を形成している。以下の説明においては、必要に応じて「折込み壁板14a」および「受圧部14b」と表現する。なお、上記受圧部14bは折り曲げ構造ではなく、折込み壁板14aの上端を切断した真直ぐな切断面であってもよい。
【0015】
一方、上記床束本体2は、図3に示すように、ベースプレート21と、高さ調整部22とを備え、さらに、上記高さ調整部22の上側に結合部30が設けられている。
【0016】
上記高さ調整部22は、ターンバックル23の上下にそれぞれ、上部ボルト24および下部ボルト25がねじ込まれ、上部ボルト24および下部ボルト25にそれぞればね座金26およびナット27が装着されている。下部ボルト25とこれに螺合されているナット27は逆ねじになっている。ターンバックル23を回すことにより、床束本体2の高さが上下する。床束本体2の高さを調整した後、上部ボルト24および下部ボルト25にそれぞれ螺合されているナット27,27をターンバックル23側に締め込むことにより、床束本体2の高さ(長さ)が固定される。下部ボルト25の下端に、ベースプレート21が溶接されて固定されている。
【0017】
図5および図6は、上記結合部30の細部構造を詳しく示している。すなわち、上部ボルト24と、この上部ボルト24の頭部24aの下面に固定された押圧部材31と、上部ボルト24に螺合された大引固定用ナット32と、このナット32と押圧部材31との間において上部ボルト24に挿入された受け部材33と、この受け部材33とナット32との間において上部ボルト24に装着されたばね座金34とを備えている。なお、上記押圧部材31と受け部材33を貫通している上部ボルト24が、結合部材である。
【0018】
上記押圧部材31は鋼板製であり、後述のように、受圧部14bに対する押え機能を果たしている。また、上記受け部材33は鋼板製であり、後述のように、鋼製大引1の下部を受け止める機能を果たしている。
【0019】
上記押圧部材31は、上記のように長方形の鋼板が折り曲げられて形成されたもので、両端に下方に直角に折り曲げられて形成された折り曲げ片31a,31aを備えている。この両折り曲げ片31a,31aの間隔は、両受圧部14b,14bの間隔よりもわずかに大きく設定され、両折り曲げ片31a,31aの内側において受圧部14b,14bの側部が沿うように形成されている。押圧部材31は、中央部の孔(図示せず)に上部ボルト24が貫通されて、上部ボルト24の頭部24aにかしめまたは溶接等により固定されている。押圧部材31の幅は鋼製大引1の開口部12の幅よりも狭く設定されている。
【0020】
上記折り曲げ片31a,31aは、押圧部材31が正しい向きで受圧部14b,14bを押圧するための位置決め機能を果たしている。そして、両折り曲げ片31a,31aの下端に鋼製大引1の長手方向線に対して上下方向に傾斜した傾斜縁部31b,31bが形成されている。すなわち、図9(B)に示すように、同図の左右方向である鋼製大引1の長手方向線に対して傾斜している。また、同図(A)に示すように、押圧部材31の頂面31cに対して傾斜縁部31b,31bが傾斜していることになる。さらに、両傾斜縁部31b,31bは同方向に傾斜している。
【0021】
上記受け部材33は、長方形の鋼板が折り曲げられて形成されたもので、底壁部33aと、この底壁部33aの長手方向の両端に上方に直角に折り曲げられて形成された側壁部33b,33bと、底壁部33aの幅方向の両端の中央部が切り起こされて形成された起立部33c,33cとを備えている。上記底壁部33aの中央部には、上部ボルト24のボルト径よりやや大きな孔33e(図5(B),図10(B)参照)が形成されており、この孔に上部ボルト24が空隙をもって貫通されているが、固定はされていない。そして、受け部材33の底壁部33aに下方に膨らんだ形状の膨出部33dが形成されている。図5(B)に示すように、結合部30が鋼製大引1に組み付けられていないときに、押圧部材31が膨出部33dの内側に格納されるようになっており、こうすることにより結合部30がコンパクトにまとまるという効果がある。
【0022】
上記両側壁部33b,33bの間に略隙間のない状態で挿入された鋼製大引1は、これらの両側壁部33b,33bと底壁部33aとにより、その下端部が抱えられる。また、両起立部33c,33cの幅は、鋼製大引1の開口部12の幅より若干小さく設定されており、これにより両起立部33c,33cは、鋼製大引1の開口部12に嵌入されるようになっている。
【0023】
鋼製大引1と床束本体2とは、次のようにして結合されている。すなわち、図3に示すように、鋼製大引1の下端部が受け部材33に挿入されて、受け部材33の底壁部33aと両側壁部33b,33bとにより抱えられているとともに、鋼製大引1の開口部12内に受け部材33の両起立部33c、33cが嵌入されている。押圧部材31は鋼製大引1の開口部12内に、例えば開口部12の幅方向と押圧部材31の幅方向とを合わせて挿入された後、鉛直軸の回りに90°回転されて、折込部14の受圧部14b,14b間に掛け渡され、押圧部材31と受け部材33の底壁部33aとの間に、折込部14すなわち開口部12が挟み込まれ、ナット32により締め付けられることにより、鋼製大引1と床束本体2とが結合されている。
【0024】
上記のように押圧部材31が正しい向きで受圧部14b,14b間に掛け渡されているときに、折り曲げ片31a,31aが受圧部14b,14bの側部に接近して沿った状態になり、これによって折り曲げ片31a,31aが押圧部材31の位置決め機能を果たすようになっている。すなわち、押圧部材31が回動しようとしても、折り曲げ片31a,31aが受圧部14b,14bの側部に当って回動が抑制される。
【0025】
通常、床束本体2を使用する場合の鋼製大引1の施工は、図7に示すように、土間の上に鋼製大引1を上下逆さまに置き、上から床束本体2を逆さまに全て固定した後、全体を上下反転して所定の位置に設置し、その後、図3に示すように、各床束本体2のベースプレート21と基礎(束石または土間コンクリート)7とを、接着剤とコンクリート釘8で固定し、その後、床束本体2の高さをターンバックル23により調整する。
【0026】
次に、鋼製大引1と床束本体2とを結合する手順について説明する。
【0027】
先ず、図8(A)に示すように、押圧部材31とナット32との距離が十分あることを確認した後、床束本体2を逆さまに保持した状態で、開口部12の幅方向と押圧部材31の幅方向とを合わせて、押圧部材31を鋼製大引1の開口部12から中空部に挿入する。このとき、受け部材33の底壁部33aが鋼製大引1の下面に当接されるとともに、鋼製大引1の底壁部33aの端部が、受け部材33の底壁部33aと両側壁部33b,33bとにより抱えられるように、かつ鋼製大引1の開口部12内に両起立部33c、33cが嵌入されるようにして、受け部材33を鋼製大引1の上に載せる。
【0028】
次に、鋼製大引1の開口部12に指等を入れて、図8(B)に示すように、押圧部材31を鉛直軸を中心に90°回転させてから、図8(C)に示すように、床束本体2を引き上げて押圧部材31を鋼製大引1の折込部14の受圧部14b,14bに密着させる。最後に、図8(D)に示すように、ナット32を受け部材33側に締め込む。このようにすると、鋼製大引1の折込部14(開口部12)が押圧部材31と受け部材33の底壁部33aとの間に挟み込まれて、鋼製大引1と床束本体2とが結合される。なお、鋼製大引1と床束本体2とを解体するには、逆の手順によればよい。
【0029】
このような鋼製大引1と床束本体2との結合部30にあっては、押圧部材31を鋼製大引1の開口部12から中空部に挿入するとともに、受け部材33を鋼製大引1の上に載せた後、押圧部材31を回転させ、その後床束本体2を引き上げて押圧部材31を折込部14の受圧部14b,14bに密着させてから、ナット32を締め付けることにより、鋼製大引1と床束本体2とを結合することができる。したがって、簡単かつ確実に結合作業を行うことができる。またこれらの解体作業も簡単に行うことができるので、これらの部材を容易に再利用することができる。
【0030】
次に、押圧部材31の向きが異常になっていることを確認する要領を説明する。
【0031】
図10は、押圧部材31が斜め向きになっていて、傾斜縁部31b,31bが受圧部14b,14bに交差している状態を示している。このように押圧部材31が異常な方向を向くのは、図8に示すように、作業者は受け部材33を上方から目視しているので、押圧部材31が受け部材33の影になって、押圧部材31がどのような方向を向いているかが確認できないために発生する。
【0032】
図10(A)に示すような状態で作業者が上部ボルト24を引っ張ると、同図(B)および(C)に示すように、傾斜縁部31b,31bが受圧部14b,14bに略密着するので、上部ボルト24は傾斜縁部31b,31bの傾斜角度に応じた角度θだけ傾斜した状態になる。つまり、鉛直線に対して角度θの傾きが発生している。このように上部ボルト24が傾いた状態になるので、作業者は押圧部材31の向きが異常であることを直ちに確認することができる。このようにして異常に気付いた作業者は、開口部12から手または工具を差し込んで押圧部材31の向きを正しい向き、すなわち図8(B)に示す向きにしてから、同図(C)および(D)に示す順序で組み付けを完了する。
【0033】
本発明においては、折り曲げ片31a,31aに傾斜縁部31b,31bが形成されているので、上記のようにして押圧部材31の向きが異常であることを確実に発見することができる。しかし、上記傾斜縁部31b,31bは形成されていない場合には、このような異常が見落とされて、床束本体2と鋼製大引1との結合が異常な状態になる。
【0034】
図12は、このような異常が発生している状態を示す図である。図12(B)および(C)に示すように、押圧部材31の折り曲げ片31a,31aには上述のような傾斜縁部がなく、折り曲げ片31a,31aの高さはその全長にわたって不変である。したがって、同図(A)に示すように、押圧部材31が斜め向きになっていて折り曲げ片31a,31aの下縁が受圧部14b,14bに密着した状態で接触し、押圧部材31は傾斜しない。このため、作業者が上部ボルト24を引っ張っても、上部ボルト24は真直ぐ(鉛直方向)な状態なので、異常に気付かないまま床束本体2と鋼製大引1との結合作業を完了してしまう。図12(B)や(C)に見られるように、ナット32が締め付けられると折り曲げ片31a,31aの下縁が強く受圧部14b,14bに押しつけられるので、折り曲げ片31a,31aの折り曲げ部が座屈したりして、床束本体2と鋼製大引1との結合強度が所定の値にならず、床板1bの撓みや床鳴りの原因になる。
【0035】
また、この鋼製大引1と床束本体2との結合部30にあっては、鋼製大引1として開口部12を有するものを使用するので、従来のように閉断面にするためのカシメ加工等を必要としないため、鋼製大引の製造コストを低減することができる。また、鋼製大引1として開口部12を有するものを使用するので、2本の鋼製大引1の互いの下面11および側面15を、相手の開口部12に突っ込むことにより、運搬の荷姿を小さくすることができ、運搬効率を高めることができる。また、鋼製大引1が開断面でありながら、鋼板の縁部が内側に折り曲げられており、鋼板の縁が外部に露出していないので、素手で取り扱っても安全である。また、受け部材33に、鋼製大引1の開口部12に嵌入される起立部33cが形成されているので、受け部材33と鋼製大引1との間のがたつきを防止することができる。また、鋼製大引1に二次折込部(受圧部)14b,14bが形成されているので、押圧部材31を所定の向きに固定しやすい上に、押圧部材31からの圧縮力に対する補強の役割を果たすことができる。
【0036】
なお、上記実施例では、鋼製大引1は断面形状が長方形の中空状に形成されているが、これに限らず、鋼製大引1は、下面に開口部12が形成されていれば、上辺と下辺の長さが異なる台形の断面形状やその他の多角形の断面形状の中空状に形成してもよい。また、鋼製大引1は、補強等のために、各面に溝を設けたり、あるいは波型の加工を施してもよい。また、上記実施例では、開口部12が鋼製大引1に長手方向に沿って延びるように形成されているが、開口部は連続的に形成されていなくともよい。また、上記実施例では、床束本体2の押圧部材31を鋼製大引1の開口部12から中空部に挿入し、その後図8(B)に示すように、鋼製大引1の開口部12から押圧部材31が抜けないようにしたが、これに代えて、押圧部材31を鋼製大引1の端部から鋼製大引1の中空部に挿入し、その後鋼製大引1との結合位置までずらすようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施例では、鋼製大引1の折込部14が、一次折込部14aと二次折込部14bとから構成されているが、これに限らず、折込部14は鋼製大引1の内側に折り込まれて、押圧部材31を当接させて受けることができるものであればよく、形状は問わない。
【0038】
さらに、上記実施例では、床束本体2の高さ調整部22としてターンバックル23を使用したが、これに限らず、他の高さ調整機構を用いることもできる。また、ターンバックル形式の場合は、ターンバックル23にねじ込まれる上部ボルト24が、結合部30のボルトを兼用しているが、他の高さ調整機構を用いる場合には、結合部30のボルトを別に用意すればよい。
【0039】
図13〜図20は結合部30の外観形状および断面形状の図であり、図13は平面図,図14は正面図,図15は右側面図,図16は左側面図,図17は背面図,図18は底面図,図19断面図,図20は斜視図である。
【0040】
上記実施例の作用効果を列記すると、つぎのとおりである。
【0041】
上記押圧部材31の両端部に、当該両端部を折り曲げて上記受圧部14b,14bに沿うよう形成した位置決め用の折り曲げ片31a,31aが設けられ、上記折り曲げ片31a,31aの下端に鋼製大引1の長手方向に対して上下方向に傾斜している傾斜縁部31b,31bが設けられている。よって、押圧部材31が斜め向きになって傾斜縁部31b,31bが受圧部14b,14bと交差し、押圧部材31の押圧機能が正常に果たされない状態になっても、上記傾斜縁部31b,31bが受圧部14b,14bに当接することにより、傾斜縁部31b,31bの傾斜に応じた角度の傾きが上記上部ボルト24に現われる。したがって、作業者は押圧部材31が目視できない状態で組み付け作業をしていても、鋼製大引1から突き出ている上部ボルト24の傾きによって、押圧部材31の異常組み付けを容易にしかも確実に発見することができる。
【0042】
上記押圧部材31が受圧部14b,14bに対して異常な向きになっているとき、上記傾斜縁部31b,31bが受圧部14b,14bと交差した状態で受圧部14b,14b上に接触するよう上記両折り曲げ片31a,31aの間隔が設定されているため、押圧部材31が異常な向きになったときには、傾斜縁部31b,31bが受圧部14b,14bと交差した状態で受圧部14b,14b上に接触する。したがって、押圧部材31に傾斜が付与され鋼製大引1から突出している上部ボルト24に異常を示す傾きが確実に現われ、作業者は異常を見落とすことがない。
【0043】
上記両傾斜縁部31b,31bの傾斜方向が、同方向である場合には、押圧部材31が異常な向きのときに押圧部材31は必ず一定の方向に傾斜する。そのため、異常時には確実に上部ボルト24に傾斜が現われ、異常を見落とすことがない。
【実施例2】
【0044】
図11は、本発明の金属製床束の第2の実施例を示す。
【0045】
この実施例は、両折り曲げ片31a,31aの傾斜縁部31b,31bの傾斜方向が逆になっているものである。それ以外は、上記実施例と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0046】
上記構成により、押圧部材31が斜め向きの異常な向きになった場合には、傾斜縁部31b,31bが安定性よく受圧部14b,14bに接触せず、そのために上部ボルト24は揺動しやすい状態になる。そのような状態により作業者は異常に直ちに気付き、異常組み付けを回避することができる。それ以外は、上記実施例と同様の作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上記のように本発明によれば、金属製床束の結合部に押圧部材の異常組み付けを確実に発見することのできる傾斜縁部が設けられているので、鋼製大引と床束本体との結合異常が確実に発見できる。そのため、住宅品質が向上し市場ニーズの高い金属製床束が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の金属製床束の設置状態を示す側面図である。
【図2】鋼製大引の横断面図である。
【図3】鋼製大引と金属製床束との結合状態を示す正面図である。
【図4】金属製床束の平面図である。
【図5】結合部の正面図である。
【図6】結合部の側面図と断面図である。
【図7】鋼製大引の施工方法を示す側面図である。
【図8】鋼製大引に金属製床束を結合する順序を示す正面図である。
【図9】押圧部材の折り曲げ片を示す側面図である。
【図10】押圧部材の異常組み付け状態を示す平面図と断面図である。
【図11】他の押圧部材を示す側面図である。
【図12】本発明を適用していない状態を示す平面図と断面図である。
【図13】結合部の平面図である。
【図14】結合部の正面図である。
【図15】結合部の右側面図である。
【図16】結合部の左側面図である。
【図17】結合部の背面図である。
【図18】結合部の底面図である。
【図19】結合部の断面図である。
【図20】結合部の斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 鋼製大引
1a 根太
1b 床板
2 金属製床束,床束本体
7 基礎
8 コンクリート釘
11 下面
12 開口部
13 上面
14 折込部
14a 一次折込部,折込み壁板
14b 二次折込部,受圧部
15 側面
21 ベースプレート
22 高さ調整部
23 ターンバックル
24 上部ボルト,結合部材
24a 頭部
25 下部ボルト
26 ばね座金
27 ナット
30 結合部
31 押圧部材
31a 折り曲げ片
31b 傾斜縁部
31c 頂面
32 ナット
33 受け部材
33a 底壁部
33b 側壁部
33c 起立部
33d 膨出部
33e 孔
34 ばね座金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床束本体は、基礎から起立している高さ調整部とこの高さ調整部を鋼製大引に対して結合する結合部とを備え、
内部が中空で長手方向に向って連続した開口部を有し、上記開口部に、対向するよう内側に折込まれて上端に長手方向に延びる受圧部が形成された鋼製大引を支持するように構成され、
上記結合部は、上記受圧部に合致する押圧部材と、鋼製大引の下部を受入れる受け部材と、上記押圧部材と上記受け部材に貫通して押圧部材と受け部材との間で上記開口部を挟み付ける結合部材とを含んで構成され、
上記押圧部材の両端部に、当該両端部を折り曲げて上記受圧部に沿うよう形成した位置決め用の折り曲げ片が設けられ、上記折り曲げ片の下端に鋼製大引の長手方向に対して上下方向に傾斜している傾斜縁部が設けられていることを特徴とする金属製床束。
【請求項2】
上記押圧部材が受圧部に対して異常な向きになっているとき、上記傾斜縁部が受圧部と交差した状態で受圧部上に接触するよう上記両折り曲げ片の間隔が設定されている請求項1記載の金属製床束。
【請求項3】
上記両傾斜縁部の傾斜方向は、同方向である請求項1または2記載の金属製床束。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−70524(P2006−70524A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253811(P2004−253811)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(594102452)株式会社マイヅル (5)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】