説明

金属触媒による縮合反応

【課題】アミノカルコゲン化物とカルボン酸、カルボン酸エステル又はニトリル類とから高選択的でかつ効率良くアゾリン化合物を製造する新規な方法を提供すること。
【解決手段】周期表の第12族の金属元素を含む化合物の存在下、例えば、下記反応スキームで示されるオキサゾリン化合物の製造方法が例示される。


原料のエステル化合物としては、安息香酸メチルが例示される。エステル化合物と反応するアミノカルコゲン化合物を選択することにより、下記のアゾリン化合物が得られる。


(R,R〜Rはアルコキシ基あるいはアミノ基等を表す。ZはO,S,Seを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミノアルコール類、アミノチオール類又はアミノセレノール類(以下、これらの化合物を総称してアミノカルコゲン化物とする。)とカルボン酸又はカルボン酸エステルもしくはニトリル類とを周期表の第12族の金属元素を含む金属触媒により環化反応させオキサゾリン化合物、チアゾリン化合物又はセレナゾリン化合物(以下、これらの化合物を総称してアゾリン化合物とする。)を製造する方法に関する。また、本発明は1級アミン類とカルボン酸又はカルボン酸エステルとを前記金属触媒により縮合反応させ、アミド化合物を製造する方法にも関する。また、本発明は前記金属触媒によりアミノ酸類を重縮合させてペプチド類を製造する方法にも関する。
【0002】
本発明で得られるアゾリン化合物は、各種中間原料又は金属の配位子等として有用な化合物である。また、本発明により得られるアミド化合物又はペプチド類は、医薬中間体又は機能性材料及びそれらの中間体として有用である。
【0003】
さらに本発明の製造方法は、原料のアミノカルコゲン化物及びアミノ酸類として光学活性体を用いることにより、光学活性アゾリン化合物及び光学活性ペプチド類を製造することができる。
【背景技術】
【0004】
アゾリン化合物、その中でも例えばオキサゾリン化合物を製造する方法としてはアミドアルコールを触媒の存在下、加熱して脱水環化する方法が知られており触媒として種々の提案がされている。例えば、特許文献1ではスズのアルカノエートを、特許文献2では鉄塩を、そして特許文献3では亜鉛の有機酸塩をそれぞれ触媒として用いている。
しかし、これらアミドアルコールを用いる方法では、原料のアミドアルコールのアミノ基上のアシル基の種類により、生成物であるオキサゾリン化合物の2位の置換基が決定されてしまい、多様なオキサゾリン化合物を製造することが難しいという問題がある。
【0005】
また、特許文献4では酢酸亜鉛を触媒としてアルカノールアミンとニトリルを反応させる方法が提案されている。しかし、この方法では反応温度を高温(190℃程度)にしないと収率が低いという問題がある。
また、非特許文献1には、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛を用い、ジニトリルとアミノアルコールとからビスオキサゾリン化合物を製造する方法が記載されている。また、特許文献5には、塩基性酢酸亜鉛を触媒として用い、ニトリルとアミノアルコールとから環状イミノエーテル(オキサゾリン化合物)を製造する方法が記載されている。しかし原料のニトリルの入手が容易でないこともあることから、ニトリルの代わりに、ニトリルよりは比較的入手が容易なカルボン酸又はカルボン酸エステルを用いる方法も検討されている。
例えば非特許文献2には、カルボン酸とアミノアルコールとを、化学量論量のトリフェニルホスフィン/四塩化炭素を用いてオキサゾリン化合物を製造する方法が記載されている。さらに、非特許文献3には、3−ニトロフェニルボロン酸を触媒として用い、カルボン酸とアミノアルコールとからオキサゾリン化合物を製造する方法が記載されている。
また、カルボン酸エステルを原料として用いた方法として、例えば非特許文献4には、当量のn−ブチルリチウム及び触媒量の塩化サマリウム等のランタノイド化合物を用いて、オキサゾリン化合物を製造する方法が述べられている。さらに、非特許文献5には、マロン酸ジエチルとアミノアルコールとを脱水反応させた後に、塩化ジメチルスズを触媒として用い、オキサゾリン類を製造する方法が述べられている。
【0006】
アミド化合物及びペプチド類を製造する方法としては、種々の製造法が知られており、例えばカルボン酸又はカルボン酸エステルとアミン類を加熱して、生成する水又はアルコールを系外に除去する方法、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤を用いる方法及びルイス酸を用いる方法等が挙げられる(非特許文献1参照)。しかし、これらの方法では、高温加熱や過剰の縮合剤が必要である等の問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−246378号公報
【特許文献2】特開昭56−128772号公報
【特許文献3】米国特許4,354,029号
【特許文献4】特開昭59−21674号公報
【特許文献5】特開2002−275166号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Synlett,2005,15,2321
【非特許文献2】Org.Lett.,2002,4,3399
【非特許文献3】J.Comb.Chem.,2002,4,656
【非特許文献4】Tetrahedron Lett.,1997,38,7019
【非特許文献5】Tetrahedron Lett.,1990,31,6005
【非特許文献6】実験化学講座、第4版、22巻、丸善株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前述した問題点を解決し、アミノカルコゲン化物とカルボン酸、カルボン酸エステル又はニトリル類とから高選択的でかつ効率良くアゾリン化合物を製造する新規な方法を提供することにある。また、本発明の目的は1級アミン類とカルボン酸又はカルボン酸エステルとから効率良くアミド類を製造する新規な方法を提供すること、さらには、アミノ酸類からペプチド類を効率良く製造する新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題について鋭意検討した結果、周期表の第12属の金属化合物の存在下で、アミノカルコゲン化物とカルボン酸又はカルボン酸エステルとを、環化反応させることにより、高選択的にアゾリン化合物を製造し得ること、1級アミンとカルボン酸又はカルボン酸エステルとを反応させることによりアミド類を得ること、及びアミノ酸類を重縮合させることによりペプチド類を得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、以下の[1]〜[12]の内容を含むものである。
[1]周期表の第12族の金属元素を含む化合物の存在下、一般式(1)
CO (1)
(式(1)中、Rは置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は置換されていてもよい複素環基を表し、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表す。また、RとRとが結合して環を形成しても良い。)
で表されるカルボン酸又はカルボン酸誘導体と、一般式(2)
【化1】

(式(2)中、R、R、R及びRは同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は置換されていてもよい複素環基を表すか、又はR、R、R及びRから選ばれる任意の2つ基が結合して環を形成してもよく、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。)
で表されるアミノカルコゲン化物とを反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化2】

(式(3)中、R、R、R、R、R及びZは前記と同じ意味を表す。)
で表されるアゾリン化合物の製造方法、
[2]周期表の第12族の金属元素を含む化合物が、亜鉛化合物であることを特徴とする前記[1]に記載の製造方法、
[3]亜鉛化合物が一般式(4)
Zn(OCOR (4)
(式(4)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、aは1又は4を表し、bは2又は6を表し、cは0又は1を表す。ただし、aが1のときは、bが2でcが0であり、aが4のときは、bが6でcが1である。)
で表される化合物であることを特徴とする前記[2]に記載の製造方法、
[4]一般式(4)
Zn(OCOR (4)
(式(4)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、aは1又は4を表し、bは2又は6を表し、cは0又は1を表す。ただし、aが1のときは、bが2でcが0であり、aが4のときは、bが6でcが1である。)
で表される亜鉛化合物の存在下、一般式(8)
OCO−A−CO (8)
(式(8)中、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Aは単結合、2価の炭化水素基又は2価の複素環基を表す。)
で表される化合物と、一般式(2)
【化3】

(式(2)中、R、R、R及びRは同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は置換されていてもよい複素環基を表すか、又はR、R、R及びRから選ばれる任意の2つの基が結合して環を形成してもよく、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。)
で表されるアミノカルコゲン化物とを反応させることを特徴とする、一般式(9)
【化4】

(式(9)中、R、R、R、R、Z及びAは前記と同じ意味を表す。)
で表されるビスアゾリン化合物の製造方法、
[5]一般式(4)
Zn(OCOR (4)
(式(4)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。aは1又は4を表し、bは2又は6を表し、cは0又は1を表す。ただし、aが1のときは、bが2でcが0であり、aが4のときは、bが6でcが1である。)
で表される亜鉛化合物の存在下、一般式(8−2)
NC−A−CO (8−2)
(式(8−2)中、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Aは単結合、2価の炭化水素基又は2価の複素環基を表す。)
で表されるシアノカルボン酸類と一般式(2)
【化5】

(式(2)中、R、R、R及びRは同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は置換されていてもよい複素環基を表すか、又はR、R、R及びRから選ばれる任意の2つの基が結合して環を形成してもよい。Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。)
で表されるアミノカルコゲン化物とを反応させる、一般式(5)
【化6】

(式(5)中、R、R、R、R、A及びZは前記と同じ意味を表す。)
で表されるアゾリン化合物の製造方法、
[6]一般式(4)
Zn(OCOR (4)
(式(4)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、aは1又は4を表し、bは2又は6を表し、cは0又は1を表す。ただし、aが1のときは、bが2でcが0であり、aが4のときは、bが6でcが1である。)
で表される亜鉛化合物の存在下、一般式(8−3)
OCO−A−X (8−3)
(式(8−3)中、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Aは単結合、2価の炭化水素基又は2価の複素環基を表し、Xはシアノ基又はカルボキシル基を表す。)
で表される化合物に、一般式(2)
【化7】

(式(2)中、R、R、R及びRは同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は置換されていてもよい複素環基を表すか、又はR、R、R及びRから選ばれる任意の2つの基が結合して環を形成してもよく、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。)
で表されるアミノカルコゲン化物とを反応させ、次いで該反応生成物と一般式(2−2)
【化8】

(式(2−2)中、R3’、R4’、R5’及びR6’は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は置換されていてもよい複素環基を表すか、又はR3’、R4’、R5’及びR6’から選ばれる任意の2つの基が結合して環を形成してもよく、Z1’は酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。)
で表されるアミノカルコゲン化物とを反応させることを特徴とする、一般式(9−2)
【化9】

(式(9−2)中、R3、R4、R5、R6、R3’、R4’、R5’、R6’、A2、Z1及びZ1’は前記と同じ意味を表す。)
で表される非対称ビスアゾリン化合物の製造方法、
[7]一般式(4)
Zn(OCOR (4)
(式(4)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、aは1又は4を表し、bは2又は6を表し、cは0又は1を表す。ただし、aが1のときは、bが2でcが0であり、aが4のときは、bが6でcが1である。)
で表される亜鉛化合物の存在下、一般式(1)
CO (1)
(式(1)中、Rは置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は置換されていてもよい複素環基を表し、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表す。また、RとRとが結合して環を形成しても良い。)
で表されるカルボン酸又はカルボン酸誘導体と、一般式(6)
NH (6)
(式(6)中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基を表す。)
で表されるアミン類とを反応させることを特徴とする、一般式(7)
CONHR (7)
(式(7)中、R及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表されるアミド類の製造方法、
[8]一般式(4)
Zn(OCOR (4)
(式(4)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、aは1又は4を表し、bは2又は6を表し、cは0又は1を表す。ただし、aが1のときは、bが2でcが0であり、aが4のときは、bが6でcが1である。)
で表される亜鉛化合物の存在下、一般式(8−4)
2OCO−A3−CO22’ (8−4)
(式(8−4)中、R2及びR2’は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、A3は単結合、2価の炭化水素基又は2価の複素環基を表す。)
で表されるジカルボン酸類と、一般式(6)
NH (6)
(式(6)中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基を表す。)
で表されるアミン類とを反応させることを特徴とする、一般式(7−2)
NHCO−A−CONHR (7−2)
(式(7−2)中、R及びAは前記と同じ意味を表す。)
で表されるビスアミド類の製造方法、
[9]一般式(4)
Zn(OCOR (4)
(式(4)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、aは1又は4を表し、bは2又は6を表し、cは0又は1を表す。ただし、aが1のときは、bが2でcが0であり、aが4のときは、bが6でcが1である。)
で表される亜鉛化合物の存在下、一般式(8−2)
NC−A−CO (8−2)
(式(8−2)中、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Aは単結合、2価の炭化水素基又は2価の複素環基を表す。)
で表されるシアノカルボン酸類と、一般式(6)
NH (6)
(式(6)中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基を表す。)
で表されるアミン類とを反応させることを特徴とする、一般式(7−3)
NHCO−A−CN (7−3)
(式(7−3)中、R及びAは前記と同じ意味を表す。)
で表されるシアノアミド類の製造方法、
[10]一般式(4)
Zn(OCOR (4)
(式(4)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、aは1又は4を表し、bは2又は6を表し、cは0又は1を表す。ただし、aが1のときは、bが2でcが0であり、aが4のときは、bが6でcが1である。)
で表される亜鉛化合物の存在下、同一又は異なる一般式(10)
【化10】

(式(10)中、R、R10、R11及びR12は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は置換されていてもよい複素環基を表し、R13は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、nは整数を表す。)
で表されるアミノ酸類を分子間同士で縮合させることを特徴とする、一般式(11)
【化11】

(式(11)中、R、R10、R11及びR12は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は置換されていてもよい複素環基を表し、複数存在するR、R10、R11又はR12はそれぞれ同一又は異なってもよく、mは1以上の整数を表し、R13及びnは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるペプチド類の製造方法、
[11]式(12)
Zn(OCOCFO (12)
で表される亜鉛化合物、及び
[12]一般式(13)で表されるアゾリン化合物。
【化12】

(式(13)中、R14は、炭素数4〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基、又はアルキル基の炭素数が2〜10であるフェニルアルキル基を表し、R15は炭素数2〜6のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はアルキル基の炭素数が1〜6であるフェニルアルキル基を表し、R16及びR17は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。また、R15とR16又はR17とで環を形成してもよい。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アミノカルコゲン化物とカルボン酸、カルボン酸エステル及びニトリル類とから高選択的でかつ効率良くアゾリン化合物を製造する方法を提供でき、さらには1級アミン類とカルボン酸又はカルボン酸エステルとから効率良くアミド類を製造する方法、及びアミノ酸類を縮合させることによりペプチド類を効率良く製造する方法が提供される。本発明により得られるアゾリン類は、金属錯体の配位子、医農薬中間体等として有用であり、アミド類及びペプチド類は各種化合物の中間体等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明の製造方法におけるアミノカルコゲン化物とは、アミノアルコール類、アミノチオール類及びアミノセレノール類をいう。また、本発明の製造方法におけるアゾリン化合物とは、オキサゾリン化合物、チアゾリン化合物及びセレナゾリン化合物をいう。
【0014】
一般式(1)〜(11)で表される本発明の目的化合物及び各反応で使用される化合物において、R1、R3、R4、R5、R6、R3'、R4'、R5'、R6'、R8、R9、R10、R11及びR12で表される炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基等が挙げられる。
【0015】
アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよいアルキル基が挙げられる。これらアルキル基としては、例えば炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基又はステアリル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基又はシクロオクチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0016】
アルケニル基としては、特に限定されないが、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよいアルケニル基が挙げられ、具体的には、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−シクロヘキセニル基及び3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0017】
アルキニル基としては、特に限定されないが、直鎖又は分岐していてもよいアルキニル基が挙げられ、具体的には、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、4−ヘキシニル基及び5−ヘキシニル基等が挙げられる。
【0018】
アリール基としては、特に限定されないが、例えば炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基又はターフェニル基等が挙げられる。
【0019】
これら炭化水素基が有していてもよい置換基としては、炭化水素基、複素環基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、ヘテロアリールチオ基、置換アミノ基、ニトロ基、三置換シリルオキシ基又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0020】
炭化水素基の置換基としての炭化水素基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアラルキル基等が挙げられる。
アルキル基の置換基としてのアルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜20の直鎖又は分岐もしくは環状のアルキル基が好ましく、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基又はステアリル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロオクチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0021】
炭化水素基の置換基としてのアルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、具体的には、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、ペンテニル基又はヘキセニル基等が挙げられる。
【0022】
炭化水素基の置換基としてのアルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられ、具体的には、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基又はヘキシニル基等が挙げられる。
【0023】
炭化水素基の置換基としてのアリール基としては、例えば炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基又はターフェニル基等が挙げられる。
【0024】
炭化水素基の置換基としてのアラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記アリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、具体的には、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基又は3−ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0025】
炭化水素基の置換基としての複素環基としては、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環の脂肪族複素環基、或いは多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基又はテトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
【0026】
炭化水素基の置換基としての芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式ヘテロアリール基、或いは多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基又はベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0027】
炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、5−メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシメトキシ基、2−エトキシエトキシ基又は2−メトキシエトキシメトキシ基等が挙げられる。
【0028】
炭化水素基の置換基としてのアルキレンジオキシ基としては、例えば、炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基又はイソプロピリデンジオキシ基等が挙げられる。
【0029】
炭化水素基の置換基としてのアリールオキシ基としては、例えば、炭素数6〜14のアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフトキシ基又はアントリルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
炭化水素基の置換基としてのアラルキルオキシ基としては、例えば、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、ベンジルオキシ基、4−メトキシフェニルメチル基、1−フェニルエトキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、1−フェニルブトキシ基、3−フェニルブトキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−フェニルペンチルオキシ基、2−フェニルペンチルオキシ基、3−フェニルペンチルオキシ基、4−フェニルペンチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、1−フェニルヘキシルオキシ基、2−フェニルヘキシルオキシ基、3−フェニルヘキシルオキシ基、4−フェニルヘキシルオキシ基、5−フェニルヘキシルオキシ基又は6−フェニルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0031】
炭化水素基の置換基としてのヘテロアリールオキシ基としては、例えば、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、炭素数2〜14のヘテロアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、2−ピリジルオキシ基、2−ピラジルオキシ基、2−ピリミジルオキシ基又は2−キノリルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
炭化水素基の置換基としてのアルキルチオ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば、炭素数1〜6のアルキルチオ基が挙げられ、具体的には、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基又はシクロヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0033】
炭化水素基の置換基としてのアリールチオ基としては、例えば、炭素数6〜14のアリールチオ基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基、キシリルチオ基又はナフチルチオ基等が挙げられる。
【0034】
炭化水素基の置換基としてのアラルキルチオ基としては、例えば、炭素数7〜12のアラルキルチオ基が挙げられ、具体的には、例えば、ベンジルチオ基又は2−フェネチルチオ基等が挙げられる。
【0035】
炭化水素基の置換基としてのヘテロアリールチオ基としては、例えば、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、炭素数2〜14のヘテロアリールチオ基が挙げられ、具体的には、例えば、4−ピリジルチオ基、2−ベンズイミダゾリルチオ基、2−ベンズオキサゾリルチオ基又は2−ベンズチアゾリルチオ基等が挙げられる。
【0036】
炭化水素基の置換基としての置換アミノ基としては、アミノ基の1個又は2個の水素原子がアルキル基、アリール基又はアラルキル基等の置換基で置換されたアミノ基が挙げられる。
【0037】
炭化水素基の置換基としてのアルキル基で置換されたアミノ基、即ちアルキル基置換アミノ基の具体例としては、例えば、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基又はN−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0038】
炭化水素基の置換基としてのアリール基で置換されたアミノ基、即ちアリール基置換アミノ基の具体例としては、例えば、N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジトリルアミノ基、N−ナフチルアミノ基又はN−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基が挙げられる。
【0039】
炭化水素基の置換基としてのアラルキル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキル基置換アミノ基の具体例としては、例えば、N−ベンジルアミノ基又はN,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基が挙げられる。
【0040】
炭化水素基の置換基としての三置換シリルオキシ基としては、例えば、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基又はトリフェニルシリルオキシ基等が挙げられる。
【0041】
炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0042】
炭化水素基で表されるアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、上記したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアラルキル基、複素環基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、置換アミノ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、三置換シリルオキシ基又はハロゲン原子等が挙げられる。炭化水素基で表されるアルケニル基が有していてもよい好ましい置換基としては、上記したアルキル基、ハロゲン原子、アリール基及び複素環基等が挙げられる。また、炭化水素基で表されるアルキニル基が有していてもよい好ましい置換基としては、上記したアルキル基、アリール基又は複素環基等が挙げられる。また、炭化水素基で表されるアリール基が有していてもよい好ましい置換基としては、上記したアルキル基、アリール基、複素環基又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0043】
1、R3、R4、R5、R6、R3'、R4'、R5'、R6'、R9、R10、R11及びR12で表される複素環基としては、脂肪族又は芳香族複素環基が挙げられ、具体的には前記炭化水素基の置換基としての複素環基等と同様のものが挙げられる。また、これら複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アリール基又は複素環基等が挙げられ、各置換基の具体例としては前記炭化水素基における各置換基に記載したものが挙げられる。
【0044】
1、R3、R4、R5、R6、R3'、R4'、R5'、R6'、R9、R10、R11及びR12で表されるアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられ、その具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、5−メチルペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシメトキシ基又はベンジルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、複素環基又はアルコキシ基等が挙げられる。各置換基の具体例としては前記炭化水素基における各置換基に記載したものが挙げられる。
【0045】
1、R3、R4、R5、R6、R3'、R4'、R5'、R6'、R9、R10、R11及びR12で表されるアルコキシカルボニル基としては、アルコキシ部分が、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよいアルコキシカルボニル基が好ましく、特に限定されないが、例えば、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が挙げられ、その具体例としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ラウリルオキシカルボニル基、ステアリルオキシカルボニル基又はシクロヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、複素環基又はアルコキシ基等が挙げられる。各置換基の具体例としては前記炭化水素基における各置換基に記載したものが挙げられる。
【0046】
1、R3、R4、R5、R6、R3'、R4'、R5'、R6'、R9、R10、R11及びR12で表される置換アミノ基としては、アミノ基の1個又は2個の水素原子が置換基で置換されたアミノ基が挙げられる。置換アミノ基の置換基の具体例としては、例えば、炭化水素基(例えば、アルキル基等)、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0047】
アルキル基で置換されたアミノ基、即ちアルキル基置換アミノ基の具体例としては、例えば、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−メチル−N−イソプロピルアミノ基又はN−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0048】
アリール基で置換されたアミノ基、即ちアリール基置換アミノ基の具体例としては、例えば、N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基又はN−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基が挙げられる。
【0049】
アラルキル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキル基置換アミノ基の具体例としては、例えば、N−ベンジルアミノ基又はN,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基が挙げられる。また、N−ベンジル−N−メチルアミノ基等のジ置換アミノ基が挙げられる。
【0050】
アシル基で置換されたアミノ基、即ちアシルアミノ基の具体例としては、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ヘキサノイルアミノ基又はベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
【0051】
アルコキシカルボニル基で置換されたアミノ基、即ちアルコキシカルボニルアミノ基の具体例としては、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、n−ブトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ペンチルオキシカルボニルアミノ基又はヘキシルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0052】
アリールオキシカルボニル基で置換されたアミノ基、即ちアリールオキシカルボニルアミノ基の具体例としては、アミノ基の1個の水素原子が前記したアリールオキシカルボニル基で置換されたアミノ基が挙げられ、その具体例として、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基又はナフチルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0053】
アラルキルオキシカルボニル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキルオキシカルボニルアミノ基の具体例としては、例えば、ベンジルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0054】
一般式(1)〜(11)の化合物においてR3、R4、R5及びR6又はR3'、R4'、R5'及びR6'から選ばれる任意の2つの基で形成される環としては、R3とR4、R3とR5、R3とR6、R4とR5、R4とR6又はRとR6の組合せ、或いはR3'とR4'、R3'とR5'、R3'とR6'、R4'とR5'、R4'とR6'又はR5'とR6'の組合せが挙げられる。形成される環としては、1又は2個の酸素原子又は窒素原子等のヘテロ原子を環の構成原子として含んでいてもよい5〜20員環が挙げられる。形成される好ましい環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、シクロテトラデカン環、シクロペンタデカン環、シクロヘキサデカン環又はシクロヘプタデカン環等の単環;ジヒドロナフタレン環、インデン環、インダン環、ジヒドロキノリン環又はジヒドロイソキノリン環等の縮合環が挙げられる。これらの環は、炭化水素基、複素環基、アルコキシ基又は置換アミノ基等で置換されていてもよい。各置換基の具体例としては前記炭化水素基又は複素環基及び前記置換アミノ基等が挙げられる。
【0055】
1、R3、R4、R5、R6、R3'、R4'、R5'、R6'、R9、R10、R11及びR12で表される置換カルバモイル基としては、特に限定されないが、例えば、メチルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基又はヘプチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0056】
2、R7及びR13で表されるアルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましく、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基又はステアリル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロオクチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0057】
2、R7及びR13で表されるアリール基としては、例えば、炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基又はターフェニル基等が挙げられる。
【0058】
1、R3、R4、R5、R6、R3'、R4'、R5'、R6'、R9、R10、R11及びR12で表されるハロゲン原子としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。
【0059】
1、A2及びA3で表される2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基又はアリレン基等が挙げられる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2−エチル−1,4−ブタンジイル基、2−エチル−1,6−ヘキサンジイル基、1,1,3,3−テトラメチル−1,4−ブタンジイル基又はメトキシエチレン基等が挙げられる。アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、エトキシビニレン基等が挙げられる。アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、3−ペンチニレン基又はプロピニレン基等が挙げられる。アリレン基としては、例えば、フェニレン基、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、プロピルフェニレン基、ブチルフェニレン基、メトキシフェニレン基、ナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基又はビナフタレンジイル基等が挙げられる。
【0060】
1、A2及びA3で表される2価の複素環基としては、異種原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子等の異種原子を少なくとも1個含んでいる2価の複素環基(脂肪族複素環でも芳香族複素環でもよく、また単環式でも縮合環式でもよい。)である。2価の複素環基の好ましい具体例としては、例えば、ピリジンジイル基、ジベンゾチオフェンジイル基、フランジイル基、チオフェンジイル基、イミダゾールジイル基、ベンゾキノリンジイル基又はベンゾチアゾールジイル基等が挙げられる。
【0061】
本発明の製造方法において使用される金属化合物の金属元素は、周期表の第12族に属する金属元素である。好ましい該金属元素としては、例えば、亜鉛又はカドミウム等が挙げられ、より好ましくは亜鉛である。該金属元素を含む具体的な金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、酢酸亜鉛、トリフルオロ酢酸亜鉛、アセトアセテート亜鉛又はアセチルアセトナート亜鉛等の亜鉛有機酸塩;トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛又はp−トルエンスルホン酸亜鉛等の亜鉛スルホン酸塩;塩化亜鉛、臭化亜鉛、硝酸亜鉛又は酸化亜鉛等の亜鉛無機物;酢酸カドミウム、ステアリン酸カドミウム、アセトアセテートカドミウム又はアセチルアセトナートカドミウム等のカドミウム有機酸塩;塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム又は硝酸カドミウム等のカドミウム無機塩;酢酸水銀、安息香酸水銀又はトリフルオロ酢酸水銀等の水銀有機酸塩;トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛等の水銀スルホン酸塩;塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀又は硝酸水銀等の水銀無機塩等が挙げられる。また、これら金属化合物について水和物が存在する場合には、該水和物も本発明の製造方法に使用され得る。
【0062】
また、本発明の製造方法においては、亜鉛有機酸塩を加熱して得られる亜鉛複核クラスターも使用することができる。
【0063】
本発明で用いられる亜鉛複核クラスターとしては、一般式(4)で表される化合物において、aが4、bが6、c又はc’が1である化合物が挙げられる。一般式(4)で表される化合物において、好ましいR7としては、例えば、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基又はフェニル基等が挙げられる。
【0064】
具体的な亜鉛複核クラスターとしては、特に限定されないが、例えば、Zn4(OAc)6O、Zn4(OCOEt)6O、Zn4(OPv)6O、Zn4{OCO(CH216CH36O、Zn4(OCOPh)6O又はZn4(OCOCF36O等の化合物が好ましく挙げられる。(例示中、Acはアセチル基、Etはエチル基、Pvはピバロイル基、Phはフェニル基を表す。)
【0065】
本発明に用いられる一般式(4)で表される亜鉛複核クラスターは、公知の方法により得ることができ、例えば、新実験化学講座8−II,986頁に記載の方法等により得ることができる。すなわち、具体的には、酢酸亜鉛又はトリフルオロ酢酸亜鉛等の亜鉛カルボン酸塩を真空中で約270℃以上に加熱することにより得ることができる。
【0066】
なお、上記した本発明の製造方法において使用される亜鉛複核クラスターを含む金属化合物は、単独で用いることができ、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0067】
本発明のアゾリン化合物[例えば、一般式(3)又は(5)で表される化合物]の製造方法は、例えば、周期表の第12族の金属(好ましくは亜鉛)元素を含む化合物(以下、金属化合物と略記する;好ましくは、一般式(4)で表される化合物)の存在下、一般式(1)で表されるカルボン酸又はカルボン酸誘導体、或いは一般式(8−2)で表されるニトリルと、一般式(2)で表されるアミノカルコゲン化物とを反応させることにより実施できる。
【0068】
本発明のビスアゾリン化合物[例えば、一般式(9)又は(9−2)で表される化合物]の製造方法は、例えば、金属化合物(好ましくは、一般式(4)で表される化合物)の存在下、一般式(8)又は(8−2)で表される化合物と、一般式(2)又は(2−2)で表されるアミノカルコゲン化物とを反応させることにより実施できる。
【0069】
本発明のアミド類[例えば、一般式(7)で表される化合物]の製造方法は、例えば、金属化合物(好ましくは、一般式(4)で表される化合物)の存在下、一般式(1)で表されるカルボン酸又はカルボン酸誘導体と、一般式(6)で表されるアミン類とを反応させることにより実施できる。
【0070】
本発明のビスアミド類[例えば、一般式(7−2)で表される化合物]の製造方法は、例えば、金属化合物(好ましくは、一般式(4)で表される化合物)の存在下、一般式(8−4)で表されるジカルボン酸類と、一般式(6)で表されるアミン類とを反応させることにより実施できる。
【0071】
本発明のシアノアミド類[例えば、一般式(7−3)で表される化合物]の製造方法は、例えば、金属化合物(好ましくは、一般式(4)で表される化合物)の存在下、一般式(8−2)で表されるシアノカルボン酸類と、一般式(6)で表されるアミン類とを反応させることにより実施できる。
【0072】
本発明の製造方法において、金属化合物は、触媒として作用し得る。
【0073】
一般式(1)で表される好ましいカルボン酸類又はカルボン酸誘導体としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、2−ビフェニルカルボン酸、桂皮酸、3−フェニルプロピオン酸、ピリジン−2−カルボン酸、2−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸等のカルボン酸及びそれらのメチルエステル又はエチルエステル等のカルボン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。ジカルボン酸類としては、一般式(8)又は一般式(8−4)で表される化合物等が挙げられる。ジカルボン酸類の具体的化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ジメチルマロン酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビナフチルジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、2−ヒドロキシイソフタル酸等のジカルボン酸及びそれらのジメチルエステル又はジエチルエステル等のジカルボン酸ジエステル等が挙げられるが、これらに限定されない。一般式(8−2)で表されるシアノカルボン酸類としては、例えば、シアノ酢酸、2−シアノ−2−メチルプロピオン酸、2−シアノ安息香酸、3−シアノ安息香酸、4−シアノ安息香酸、2−シアノピリジンカルボン酸、3−シアノピリジンカルボン酸、3−シアノ−2−ヒドロキシ安息香酸等のシアノカルボン酸及びそれらのメチルエステル又はエチルエステル等が挙げられるが、これらに限定されない。一般式(1)においてR1とR2とが結合して環を形成した場合のカルボン酸誘導体としては、ラクトン類が挙げられ、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、2−オキセタノン、4−メチル−2−オキセタノン、γ−エチル−γ−ブチロラクトン、γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、δ−メチル−δ−バレロラクトン、δ−エチル−δ−バレロラクトン、δ−プロピル−δ−バレロラクトン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
一般式(2)で表されるアミノカルコゲン化物及び一般式(6)で表されるアミン類として好ましい例としては、例えば、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−フェニルエタノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−1,1−ジメチルプロパノール、2−アミノ−3−フェニルプロパノール、2−アミノ−1,1−ジフェニルプロパノール、2−アミノ−1,1−ジ(4−メチルフェニル)プロパノール、2−アミノ−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)プロパノール、2−アミノ−1,1−ジベンジルプロパノール、1−(1−アミノエチル)シクロヘキサノール、2−アミノ−3−メチルブタノール(バリノール)、2−アミノ−3−メチル−1,1−ジメチルブタノール、2−アミノ−3−メチル−1,1−ジフェニルブタノール、2−アミノ−3−メチル−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)ブタノール、1−(1−アミノ−2−メチルプロピル)シクロペンタノール、1−(1−アミノ−2−メチルプロピル)シクロヘキサノール、2−アミノ−3−メチルペンタノール、2−アミノ−4−メチルペンタノール、2−アミノ−4−メチル−1,1−ジメチルペンタノール、2−アミノ−4−メチル−1,1−ジフェニルペンタノール、2−アミノ−4−メチル−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)ペンタノール、2−アミノ−4−メチル−1,1−ジベンジルペンタノール、1−(1−アミノ−3−メチルブチル)シクロペンタノール、1−(1−アミノ−3−メチルブチル)シクロヘキサノール、2−アミノ−3,3−ジメチルブタノール、2−アミノ−3,3−ジメチル−1,1−ジメチルブタノール、2−アミノ−3,3−ジメチル−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)ブタノール、1−(1−アミノ−2,2−ジメチルプロピル)シクロヘキサノール、2−アミノ−2−フェニル−1,1−ジメチルエタノール、2−アミノ−2−フェニル−1,1−ジフェニルエタノール、2−アミノ−2−フェニル−1,1−ジ(4−メチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−フェニル−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−フェニル−1,1−ジベンジルエタノール、2−アミノ−2−(2−ナフチル)エタノール、2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジエチルエタノール、2−アミノ−2−(2−ナフチル)−1,1−ジ−(4−メチルフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(1−ナフチル)−1,1−ジ−(4−メトキシフェニル)エタノール、2−アミノ−2−(2−ナフチル)−1,1−ジ−ベンジルエタノール、1−アミノ−1−(2−ナフチル)メチル)シクロペンタノール、1−アミノ−1−(1−ナフチル)メチル)シクロヘキサノール、2−アミノ−3−フェニル−1,1−ジエチルプロパノール、2−アミノ−3−フェニル−1,1−ジフェニルプロパノール、2−アミノ−3−フェニル−1,1−ジ(4−メチルフェニル)プロパノール、2−アミノ−3−フェニル−1,1−ジ(4−メトキシフェニル)プロパノール、1−(1−アミノ−2−フェニルエチル)シクロペンタノール、1−(1−アミノ−2−フェニルエチル)シクロヘキサノール、2−アミノ−3−(3−インドリル)プロパノール、2−アミノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノール、1−アミノ−2−インダノール、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、1−フェニルエチルアミン、1−フェニル−2−ナフチルアミン、アリルアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらアミノカルコゲン化物及びアミン類は、ラセミ体でも光学活性体でも良い。
【0075】
前記アゾリン化合物、ビスアゾリン化合物、アミド類、ビスアミド類又はシアノアミド類の製造方法における前記の金属化合物の使用量は、特に限定されないが、通常、原料のカルボン酸又はカルボン酸誘導体1モルに対して、金属原子が約0.001〜0.5モルの割合が好ましく、約0.01〜0.3モルの割合がより好ましい。
【0076】
本発明のアゾリン化合物又はビスアゾリン化合物(以下、アゾリン類と総称することもある。)の製造方法において、原料のカルボン酸、カルボン酸誘導体、ジカルボン酸、ジカルボン酸誘導体又はニトリル類とアミノカルコゲン化物との使用割合は、特に限定されないが、通常、以下の通りである。原料のカルボン酸、カルボン酸誘導体及びニトリル類が、モノカルボン酸、モノカルボン酸誘導体及びニトリルの場合は、アミノカルコゲン化物1モルに対して、モノカルボン酸、モノカルボン酸誘導体又はニトリルが、約0.5〜2.0モルが好ましく、約0.7〜1.5モルがより好ましい。
原料のカルボン酸、カルボン酸誘導体及びニトリル類が、ジカルボン酸及びジカルボン酸誘導体の場合は、当然ながら上記モノ体の場合に比べて、アミノカルコゲン化物の使用割合を、モノカルボン酸又はモノカルボン酸誘導体の2倍にすればよい。
【0077】
本発明のアミド類、ビスアミド類又はシアノアミド類(以下、アミド化合物と総称することもある。)の製造方法において、原料のカルボン酸及びカルボン酸誘導体、ジカルボン酸類又はシアノカルボン酸類とアミン類[例えば、一般式(6)で表される化合物]との使用割合は、カルボン酸及びカルボン酸誘導体がモノカルボン酸及びモノカルボン酸誘導体の場合には、原料のカルボン酸及びカルボン酸誘導体又はシアノカルボン酸類、或いはアミン類のいずれか一方が、他方に対して等量以上であればよく、反応後の後処理時に系内に残存する過剰分を除去しやすいほうを多めに使用するのが好ましい。カルボン酸及びカルボン酸誘導体がジカルボン酸及びジカルボン酸誘導体の場合には、当然ながら、アミン類の使用割合をモノカルボン酸の場合に比べて2倍にすればよい。
【0078】
本発明のアゾリン類又はアミド化合物の製造方法における反応は通常溶媒中で行われ、溶媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン又は塩化ベンゼン等の芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタン又はオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。この中でも芳香族系溶媒が好ましい。
【0079】
本発明のアゾリン類又はアミド化合物の製造方法における反応は大気下又は窒素ガス若しくはアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。反応時間は、特に限定されないが、通常約1〜45時間、好ましくは6〜18時間程度であり、反応温度は、特に限定されないが、通常室温〜約150℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは約80〜130℃程度で行われるが、これらの条件は使用される原料等の種類及び量により適宜変更されうる。
【0080】
本発明のアゾリン類又はアミド化合物の製造方法における反応後は通常用いられる後処理(例えば、濃縮、転溶、クロマトグラフィー又は結晶化等)を行うことにより、目的とするアゾリン類又はアミド化合物を得ることができる。また、原料であるアミノカルコゲン化物又はアミン類がラセミ体あるいは光学活性体である場合には、該原料に対応したラセミあるいは光学活性なアゾリン類又はアミド化合物が得られることはいうまでもない。
【0081】
本発明のペプチド類[例えば、一般式(11)で表される化合物]の製造方法は、亜鉛化合物(好ましくは、一般式(4)であらわされる化合物)の存在下、好ましくは反応に不活性な溶媒中で、同一又は異なる一般式(10)で表されるアミノ酸類を分子間同士で縮合させることにより行われる。
なお、一般式(10)及び(11)で表されるアミノ酸類及びペプチド類において、nで表される整数は、0乃至10が好ましく、1乃至6がより好ましい。
また、一般式(11)で表されるペプチド類において、mで表される1以上の整数は、1乃至10が好ましい。
一般式(11)で表されるペプチド類において、R9又はR10はnが0乃至10のとき、R11又はR12はnが1乃至10のとき複数存在するが、複数存在するR9、R10、R11又はR12はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、mが1である場合、例えばR9は2つ存在し、その一方のR9が例えば水素原子であるとき、他方のR9は、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換カルバモイル基又は複素環基のいずれをもとりうる。R10、R11又はR12においても同様であり、mが2以上のときにおいても同様である。
【0082】
ここで、「分子間同士で縮合させる」とは、一方のアミノ酸分子のカルボキシル基と他方のアミノ酸分子のアミノ基とを脱水縮合させペプチド結合を形成させることをいう。より詳しくは、同一又は異なる一般式(10)で表される複数のアミノ酸をペプチド結合させることをいう。
【0083】
前記反応に不活性な溶媒としては、例えばトルエン、キシレン又は塩化ベンゼン等の芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタン又はオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。この中でも芳香族系溶媒が好ましい。反応時間は、特に限定されないが、通常約1〜45時間、好ましくは6〜18時間程度であり、反応温度は、特に限定されないが、通常室温〜約150℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは約80〜130℃程度で行われ、これらの条件は使用される原料等の種類及び量により適宜変更されうる。
本発明のペプチド類の製造方法に用いられるアミノ酸類は、一種類又は二種類以上のアミノ酸類が用いられ、二種類以上のアミノ酸類が用いられた場合は、レギュラー状、ランダム状又はブロック状に縮合したペプチド類が得られる。
【0084】
本発明の製造方法において、原料として使用される上記したカルボン酸、カルボン酸誘導体、ビスカルボン酸類、ニトリル及びアミノカルコゲン化物、アミン類は、市販の化合物を用いることができ、また、公知の方法により製造することもできる。
【0085】
本発明の化合物
本発明の下記一般式(13)で表されるオキサゾリン化合物は文献未記載の新規化合物である。
【化13】

(式(13)中、R14は、炭素数4〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基、又はアルキル基の炭素数が2〜10であるフェニルアルキル基を表し、R15は炭素数2〜6のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はアルキル基の炭素数が1〜6であるフェニルアルキル基を表し、R16及びR17は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。また、R15とR16又はR17とで環を形成してもよい。)
【0086】
上記の通り、R14は炭素数4〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であってよい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基又はステアリル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基又はシクロオクチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。中でも、炭素数6〜17のアルキル基が好ましい。
【0087】
また上記の通り、R14は例えば1〜3個の置換基を有していてもよいフェニル基であってもよい。置換基としては、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基など)、水酸基、シアノ基などが挙げられる。また、ヒドロキシアルキル基と水酸基は保護基で保護されていてもよく、保護基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
また上記の通り、R14は、炭素数2〜6、好ましくは炭素数3〜6個、より好ましくは炭素数3〜5個の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基であってよい。
また上記の通り、R14は、アルキル基の炭素数が2〜10であるフェニルアルキル基であってよい。中でも、ベンジル基、フェネチル基が好ましく、フェネチル基がより好ましい。
【0088】
上記の通り、R15は炭素数2〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であってよい。このようなアルキル基としてはR14について説明したものが挙げられる。中でも分岐鎖状のアルキル基が好ましく、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基がより好ましく、sec−ブチル基、tert−ブチル基がさらにより好ましい。
また上記の通り、R15は、例えば1〜3個の置換基を有していてもよいフェニル基であってもよい。置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
【0089】
また上記の通り、R15は、アルキル基の炭素数が1〜6であるフェニルアルキル基であってよい。中でも、ベンジル基、フェネチル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0090】
また上記の通り、R16及びR17は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。中でも、水素原子またはメチル基が好ましい。また、R15とR16又はR17とで環を形成してもよい。
上記化合物の中では、R14が炭素数4〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基であり、R15が炭素数2〜 6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、R16及びR17が水素原子である化合物が好ましい。
【0091】
また、R14がアルキル基の炭素数が2〜10であるフェニルアルキル基であり、R15が例えば1〜3個の置換基を有していてもよいフェニル基、又はアルキル基の炭素数が1〜6であるフェニルアルキル基であり、R16及びR17がそれぞれ独立して水素原子又はメチル基である化合物が好ましい。
一般式(13)の化合物は、いずれかの不斉炭素原子について光学活性体であってよい。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
各実施例で化合物の分析に使用した機器は、以下の通りである。
1H NMR(300MHz)、13C NMR(75Hz)、19F NMR(282Hz):Varian MERCURY300
・MS(EI)、HRMS(EI):JEOL JMS-700.
・IR: Jasco FT/IR-230 及び Jasco FT/IR-410
・元素分析:Perkin-Elmer 2400II.
・融点(mp):Yanaco micro melting point apparatus.
・旋光度: Jasco DIP-370 digital polarimeter.
・ガスクロマトグラフィー(GC) : Shimadzu Gas Chromatograph GC-14A
キャピラリーカラム: DB-5
各化合物の収率は、ガスクロマトグラフィー(GC)により、n−ドデカン又はn−ノナデカンを内部標準物質として用いて測定した。
また、物性データが記載されていない化合物は、既知の物性データと比較して同定した。
【0093】
実施例1(オキサゾリン類の製造)
アルゴン雰囲気下、安息香酸メチル(1.5mmol)、(L)−バリノール(1.8mmol)、Zn(OCOCFO(亜鉛原子のモル数換算で0.15mmol、以下の実施例においても同様に、使用した亜鉛化合物のモル数は、亜鉛原子のモル数に換算して示す。)及び塩化ベンゼン(2.5mL)の混合物を12時間加熱還流した。得られた溶液からエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1(V/V))で精製することによって、(S)−4−イソプロピル−2−フェニル−1,3−オキサゾリンを83%の収率で得た。
【0094】
得られた化合物の分析データ、及びそれにより同定される化合物の構造式は以下の通りである。

【0095】
実施例2〜32(オキサゾリン類の製造)
以下のスキーム:
【化14】

(上記式中、R及びR’は後掲の表1に示す官能基を表す。)
にしたがって、実施例1における安息香酸メチルを表1に示すエステル及びカルボン酸に代え、Zn(OCOCFOを表1に示す金属化合物に代えたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、得られたオキサゾリン類の収率を以下の表1に示す。
ただし、実施例16〜32で用いられた基質(エステル及びカルボン酸)のモル数は3mmolである。
なお、表中の記号はPhはフェニル基、Cyはシクロヘキシル基、Buはブチル基、Meはメチル基、Etはエチル基、Bocはt−ブトキシカルボニル基、Bnはベンジル基を、Acはアセチル基を、MEMはメトキシエトキシメチルを、TBDMSはt−ブチルジメチルシリル基を表す。(以下、同様。)
【表1】

表1に示す実施例2〜32で得られた化合物の分析データ、およびそれにより同定される化合物の構造式は以下の通りである。
【0096】
<実施例1−11:(S)−4−イソプロピル−2−フェニルオキサゾリン>
【化15】


【0097】
<実施例16−19:(S)−2−ブチル−4−イソプロピルオキサゾリン>
【化16】


【0098】
<実施例20:(S)−2−ヘプタデシル−4−イソプロピルオキサゾリン>
【化17】


【0099】
<実施例22:(S)−2−(3−シアノフェニル)−4−イソプロピルオキサゾリン>
【化18】


【0100】
<実施例23:(S)−2−(4−シアノフェニル)−4−イソプロピルオキサゾリン>
【化19】



【0101】
<実施例24−25:(S)−2−(4−ブロモフェニル)−4−イソプロピルオキサゾリン>
【化20】


【0102】
<実施例26−27:(S)−4−イソプロピル−2−(4−ニトロフェニル)オキサゾリン>
【化21】


【0103】
<実施例28:(4S)−2−(1−N−Boc−アミノ−2−フェニルエチル)−4−イソプロピルオキサゾリン>
【化22】


【0104】
<実施例29:(S)−4−イソプロピル−2−[p−(メトキシエトキシメトキシメチル)フェニル]オキサゾリン>
【化23】


【0105】
<実施例30:(S)−4−イソプロピル−2−[p−(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フェニル]オキサゾリン>
【化24】


【0106】
<実施例31:(S)−4−イソプロピル−2−[p−(メトキシエトキシメトキシ)フェニル]オキサゾリン>
【化25】


【0107】
<実施例32:(S)−4−イソプロピル−2−[p−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)フェニル]オキサゾリン>
【化26】


なお、表1中の実施例12〜15、21の各化合物は、各化合物の既知の物性データとの比較により確認した。
【0108】
実施例33(オキサゾリン類の製造)
アルゴン雰囲気下、3−フェニルプロピオン酸(3.0mmol)、(L)−バリノール(3.6mmol)、Zn(OCOCFO(0.15 mmol)及び塩化ベンゼン(5mL)の混合物を12時間加熱還流した。得られた溶液からエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1(V/V))で精製することによって、(S)−4−イソプロピル−2−(2−フェニルエチル)−1,3−オキサゾリンを86%の収率で得た。
得られた化合物の分析データ、及びそれにより同定される化合物の構造式は後述する。
【0109】
実施例34〜45(オキサゾリン類の製造)
実施例33における3−フェニルプロピオン酸を後掲の表2に示す基質に代え、(L)−バリノールを表2に示すアミノアルコールに代えたこと以外は、実施例33と同様に反応を行った。その結果、得られたオキサゾリン類の収率を以下の表2に示す。なお、表2中において、Aは3−フェニルプロピオン酸を、Eは3−フェニルプロピオン酸メチルをそれぞれ表す。
ただし、3−フェニルプロピオン酸メチルを用いた場合の反応時間は18時間とした。
【表2】

得られた化合物の分析データ、及びそれにより同定される化合物の構造式は以下の通りである。
【0110】
<実施例33、34:(S)−4−イソプロピル−2−(2−フェニルエチル)オキサゾリン>
【化27】


【0111】
<実施例35、36:(R)−4−フェニル−2−(2−フェニルエチル)オキサゾリン>
【化28】


【0112】
<実施例37、38:(S)−4−ベンジル−2−(2−フェニルエチル)オキサゾリン>
【化29】


【0113】
<実施例39、40:4,4−ジメチル−2−(2−フェニルエチル)オキサゾリン>
【化30】


【0114】
<実施例41、42:(3aS,8aR)−2−(2−フェニルエチル)−8,8a−ジヒドロ−3aH−インデノ[1,2−d]オキサゾール>
【化31】


【0115】
<実施例43、44:(S)−4−tert−ブチル−2−(2−フェニルエチル)オキサゾリン>
【化32】


【0116】
<実施例45:(S)−5,5−ジメチル−2−(2−フェニルエチル)−4−ベンジルオキサゾリン>
【化33】


【0117】
実施例46〜51(オキサゾリン類の製造)
アルゴン雰囲気下、ジヒドロ桂皮酸エステル(1.0mmol)、L−バリノール(1.2mmol)、Zn(OCOCFO(0.05mmol)及び塩化ベンゼン(2.5mL)の混合物を18時間加熱還流した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果、得られたオキサゾリン類の収率を以下の表3に示す。
【表3】

実施例46〜51で得られた化合物は、実施例34と同じ分析データが得られたことから、下記の構造式を有する(S)−4−イソプロピル−2−(2−フェニルエチル)−1,3−オキサゾリンと同定された。
【化34】

【0118】
実施例52(オキサゾリン類の製造)
アルゴン雰囲気下、4−シアノ安息香酸(7.2mmol)、L−tert−ロイシノール(6.0mmol)、Zn(OCOCFO(0.3mmol)及び塩化ベンゼン(10mL)の混合物を18時間加熱還流した。得られた溶液からエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1(V/V))で精製することによって、(S)−4−tert−ブチル−2−(4−シアノフェニル)−1,3−オキサゾリンを78%の収率で得た。
また、ビスオキサゾリン類である1,4−ビス[(S)−4−t−ブチルオキサゾリン−2−イル]ベンゼンを19%の収率で得た。
得られた化合物の分析データ、及びそれにより同定される化合物の構造式は以下の通りである。
【化35】


【0119】
実施例53(オキサゾリン類の製造)
実施例52と同様にして、4−シアノ安息香酸の代わりに、3−シアノ安息香酸を用いて(S)−4−tert−ブチル−2−(3−シアノフェニル)−1,3−オキサゾリンを78%の収率で得た。
得られた化合物の分析データ、及びそれにより同定される化合物の構造式は以下の通りである。
【化36】


【0120】
実施例54(オキサゾリン類の製造)
実施例52と同様に、4−シアノ安息香酸の代わりに、テレフタル酸モノメチルエステルを用いて4−{(S)−4−tert−ブチルオキサゾリン−2−イル}安息香酸メチルを90%の収率で得た。
得られた化合物の分析データ、及びそれにより同定される化合物の構造式は以下の通りである。
【化37】


【0121】
実施例55(ビスオキサゾリン類の製造)
【化38】

アルゴン雰囲気下、アジピン酸ジメチル(3mmol)、(L)−バリノール(7.2mmol)、Zn(OCOCFO(0.3mmol)及び塩化ベンゼン5mLの混合物を6時間還流後濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、1,4−ビス((S)−4−イソプロピル−1,3−オキサゾリン−2−イル)ブタンを収率64.8%で得た。
得られた化合物は、既知の化合物の物性データとの比較により同定した。
【0122】
実施例56(非対称ビスオキサゾリン類の製造)
【化39】

アルゴン雰囲気下、4−シアノ安息香酸(7.2mmol)、L−tert−ロイシノール(6.0mmol)、Zn(OCOCFO(0.3mmol)および塩化ベンゼン(10mL)を18時間加熱還流後濃縮し、精製することでモノオキサゾリンを得た。続いて得られたモノオキサゾリン(3.0mmol)と(1S,2R)−1−アミノインダノール(3.6mmol)、Zn(OCOCFO(0.15mmol)および塩化ベンゼン(5mL)を18時間加熱還流後、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、標題化合物を二段階の反応で収率78%(一段階目78%, 二段階目>99%)で得た。
得られた化合物の分析データ、それにより同定される化合物の構造式と名称を以下に示す。
1−{(3aS,8aR)−8,8a−ジヒドロ−3aH−インデノ[1,2−d]オキサゾール−2−イル}−4−{(S)−4−tert−ブチルオキサゾリン−2−イル}ベンゼン
【化40】


【0123】
実施例57(非対称ビスオキサゾリン類の製造)
【化41】

3−シアノ安息香酸についても実施例56と同様の反応を行う事で二段階で収率78%(一段階目78%, 二段階目>99%)で、スキームに示すように1,3二置換の非対称ビスオキサゾリンを得た。
得られた化合物の分析データ、それにより同定される化合物の構造式と名称を以下に示す。
1−{(3aS,8aR)−8,8a−ジヒドロ−3aH−インデノ[1,2−d]オキサゾール−2−イル}−3−{(S)−4−tert−ブチルオキサゾリン−2−イル}ベンゼン
【化42】


【0124】
実施例58(アミド類の製造)
アルゴン雰囲気下、安息香酸メチル(3.0mmol)、2−アミノエタノール(3.6mmol)、Zn(OCOCFO(0.15mmol)及び塩化メチレン2.5mLの混合物を室温で3日間撹拌した結果、N−(2−ヒドロキシエチル)ベンズアミドを11%の収率で得た。得られた化合物の同定は、既知の化合物の物性データとの比較により行った。
【0125】
実施例59(アミド類の製造)
アルゴン雰囲気下、フェニルプロピオン酸メチル(3.0mmol)、ベンジルアミン(3.6mmol)、Zn(OCOCFO(0.15mmol)及び塩化メチレン(5mL)の混合物を18時間加熱還流した結果、N−ベンジル−3−フェニルプロパンアミドを21%の収率で得た。得られた化合物の同定は、既知の化合物の物性データとの比較により行った。
【0126】
実施例60(アミド類の製造)
【化43】

アルゴン雰囲気下、2−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸メチル(3.0mmol)、(L)−バリノール(3.6mmol)、Zn(OCOCFO(0.15mmol)及び塩化メチレン(5mL)の混合物を12時間還流した結果、対応するアミドを90%の収率で得た。得られた化合物の同定は、既知の化合物の物性データとの比較により行った。
【0127】
実施例61(オキサゾリン類の製造)
アルゴン雰囲気下、γ−ブチロラクトン(3.0mmol)、(L)−バリノール(3.6mmol)、Zn(OCOCFO(0.15mmol)及び塩化ベンゼン5mLの混合物を18時間加熱還流した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、(S)−2−(3−ヒドロキシプロピル)−4−イソプロピルオキサゾリンを68%の収率で得た。
得られた化合物の分析データ、それにより同定される化合物の構造式を以下に示す。
【化44】


【0128】
実施例62〜64(オキサゾリン類の製造)
実施例62において、基質のラクトンとして以下の表4に示すものを用いた他は実施例61と同様の操作を行った。結果を以下の表4に示す。ただし、実施例64の反応時間は36時間である。
【表4】

得られた化合物の分析データ、それにより同定される化合物の名称を以下に示す。
【0129】
<実施例62:(S)−2−(4−ヒドロキシブチル)−4−イソプロピルオキサゾリン>

【0130】
<実施例63:(S)−2−(5−ヒドロキシペンチル)−4−イソプロピルオキサゾリン>

【0131】
<実施例64:(4S)−2−(3−ヒドロキシペンチル)−4−イソプロピルオキサゾリン>

【0132】
実施例65(β−アミノ酸の縮合によるペプチド類の製造)
アルゴン雰囲気下、Zn(OAc)O(0.25mmol)及び3−アミノ酪酸メチル(5.0mmol)の混合物を130℃で6時間撹拌した。得られた生成物を液体クロマトグラフ質量分析計で分析したところ、3−アミノ酪酸メチルの転化率が100%であり、二量体:三量体=75:25の比率で生成していることが確認された。
【0133】
実施例66(オキサゾリン類の合成)
アルゴン雰囲気下、3−フェニルプロピオン酸ベンジル(1.5mmol)、(L)−バリノール(1.8mmol)、Zn(OCOCFO(0.15mmol)及び塩化ベンゼン(2.5mL)の混合物を18時間加熱還流した。得られた溶液からエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、(S)−4−イソプロピル−2−(2−フェニルエチル)−1,3−オキサゾリンを74%の収率で得た。化合物の同定は、既知の化合物の物性データとの比較により行った。
【0134】
実施例67(オキサゾリン類の合成)
【化45】

アルゴン雰囲気下、3−フェニルプロピオン酸ベンジル(1.5mmol)、(S)−2−(N−メチルインドール−3−イルメチル)−2−アミノエタノール(1.5mmol)、Zn(OCOCFO(0.15mmol)及び塩化ベンゼン(2.5mL)の混合物を18時間加熱還流した。得られた溶液からエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、(S)−4−(N−メチルインドール−3−イルメチル)−2−(2−フェニルエチル)−1,3−オキサゾリンを76%の収率で得た。化合物の同定は、既知の化合物の物性データとの比較により行った。
【0135】
実施例68(オキサゾリン類の合成)
アルゴン雰囲気下、4−ヒドロキシメチル安息香酸メチル(1.5mmol)、(L)−バリノール(1.8mmol)、Zn(OCOCFO(0.15mmol)及び塩化ベンゼン(2.5mL)の混合物を12時間加熱還流した。得られた溶液からエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、(S)−4−イソプロピル−2−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−1,3−オキサゾリンを66%の収率で得た。化合物の同定は、既知の化合物の物性データとの比較により行った。
【0136】
実施例69(オキサゾリン類の合成)
アルゴン雰囲気下、4−ヒドロキシ安息香酸メチル(1.5mmol)、(L)−バリノール(1.8mmol)、Zn(OCOCFO(0.15mmol)及び塩化ベンゼン(2.5mL)の混合物を12時間加熱還流した。得られた溶液からエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、(S)−4−イソプロピル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−オキサゾリンを58%の収率で得た。化合物の同定は、既知の化合物の物性データとの比較により行った。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明によれば、アミノカルコゲン化物とカルボン酸、カルボン酸エステル及びニトリル類とから高選択的でかつ効率良くアゾリン化合物を製造する方法を提供でき、さらには1級アミン類とカルボン酸又はカルボン酸エステルとから効率良くアミド化合物を製造する方法、及びアミノ酸類を縮合させることによりペプチド類を効率良く製造する方法が提供される。本発明により得られるアゾリン類は、金属錯体の配位子、医農薬中間体等として有用であり、アミド化合物及びペプチド類は各種化合物の中間体等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(12)
Zn(OCOCFO (12)
で表される亜鉛化合物。

【公開番号】特開2009−185033(P2009−185033A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55544(P2009−55544)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【分割の表示】特願2007−549114(P2007−549114)の分割
【原出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】