説明

金属酸化物の電気化学的還元

金属酸化物の粉末および/またはペレットを電気化学的に還元するための電解槽を開示する。当該電解槽には平板の形状で、金属酸化物の粉末および/またはペレットを載せるための上面を有しているカソード(25)が含まれる。当該平板は水平に配置されているか僅かに傾いており、前端と後端を有し、電解質中に浸漬されている。当該平板は当該平板の上面にある金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該平板の前端に向けて移動させるように動作するように支持されている。当該電解槽には金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該平板の上面上を当該カソードの前端に向けて移動させる手段も含まれ、その間の溶融電解質との接触により当該金属酸化物の金属への電気化学的還元が生じる。電解槽における金属酸化物の粉末および/またはペレットの連続的または半連続的還元の方法も開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物の電気化学的還元に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、詳しくはペレットの形状をした金属酸化物の連続的および半連続的電気化学的還元に関し、典型的には僅かに0.2重量%に過ぎない低酸素濃度を有する金属を製造する。
【0003】
本発明は、当該出願人によって行われている金属酸化物類の電気化学的還元について行っている研究課題の進行中になされた。当該研究課題はチタニア(TiO)の還元に焦点を絞っていた。
【0004】
当該研究課題の進行中に当該出願人は、溶融したCaClに基づく電解質、グラファイトで形成したアノードおよび一連のカソード類の集合を含んだ電解槽を用いてチタニアの還元について実験的研究を行った。
【0005】
当該CaClに基づく電解質はCaClの市販で入手可能な源で、即ち加熱で分解して非常に少量のCaOを生成した塩化カルシウム二水和物であった。
【0006】
当該出願人はCaOの分解電圧より高く、CaClの分解電圧より低い電圧で電解槽を操作した。
【0007】
当該出願人はこれらの電圧において当該電解槽がチタニアを低濃度の酸素、即ち0.2重量%未満を伴うチタンへ電気化学的還元できることを見出した。
【0008】
当該出願人はこの段階における電解槽の機構を完全に理解しているわけではない。
【0009】
そうは言うものの、本段落および以下の段落にある注釈にとらわれてしまうわけではないが、当該出願人は可能性のある電解槽機構の概要として以下のような注釈を提示する。
【0010】
当該出願人により行われた実験的研究はCa金属が電解質中に溶解していることを裏付けた。Ca金属は当該カソード上のCa金属としてCa++カチオンの電着の結果であると当該出願人は考える。
【0011】
上で述べたように、当該実験的研究はCaClの分解電圧未満の電解槽電位にてCaClに基づく電解質を用いて行った。当該出願人はカソードへのCa金属の最初の沈着は電解質中のCa++カチオンとCaOからのO2−アニオンが存在することに由来すると考える。CaOの分解電位はCaClの分解電位より低い。この電解槽機構では、当該電解槽操作はCaOの分解に依存し、Ca++カチオンが当該カソードに移動してCa金属として沈着し、O2−アニオンは当該アノードに移動してCOおよび/またはCOを形成し(当該アノードはグラファイトアノードである場合)、そしてCa金属の電着を促進する電子を当該アノード上で放出する。
【0012】
当該出願人は当該カソードへ直接的または間接的(Ca金属の電解質への溶解により)に沈着するCa金属はチタニアからO2−アニオンの放出を生じるチタニアの化学的還元に参加すると考えている。
【0013】
当該出願人はチタニアから一旦引き抜かれたO2−アニオンは当該アノードに移動し、当該アノード炭素と反応してCOおよび/またはCO(場合によりCaO)を生じ、当該カソード上にてCa金属の電着を促進する電子の放出をするとも考えている。
【0014】
当該出願人は電解槽を当該研究の初期はペレットおよび大きな固形塊の形のチタニアにつき、当該研究の後期にはチタニアの粉末についてバッチ基準で動かした。当該出願人は他の金属酸化物についてもバッチ基準で電解槽を動かした。
【0015】
当該実験研究はこのような電解槽ではチタニア(および他の金属酸化物)を電気化学的還元して低濃度の酸素を有する金属にできることを確立したが、当該出願人はバッチ基盤では当該電解槽を商業的に操業するのが甚だしく困難であることを知った。
【0016】
当該実験的研究および当該技術の可能な商業化の結果を考慮してみて、当該出願人は金属酸化物粉末およびペレットを制御したやり方で当該電解槽を通して移送させ、還元された形で当該電解槽から取り出す連続的または半連続的な操作を達成することで商業的生産ができるであろうことに気が付いた。
【0017】
本出願人の名義で2003年12月12日に提出された国際出願PCT/AU03/001657では広義に溶融電解質、カソードおよびアノードの電解槽を含む電解槽中で固形状態のチタニアのような金属酸化物を化学的還元するための方法としてこの発明は記述されており、その方法には(a)溶融電解質浴に供給された金属酸化物を電気化学的に還元できる電解槽電圧を当該アノードと当該カソード間に印加する、(b)当該溶融電解質浴に粉状および/またはペレット状にて金属酸化物を連続的または半連続的に供与する、(c)当該溶融電解質浴内の経路に沿って当該粉末および/またはペレットを輸送し、当該金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該経路に沿って動かしている間に金属に還元する、(d)還元した金属酸化物を溶融電解質浴から連続的または半連続的に取り出す工程が含まれる。
【0018】
当該国際出願は用語“粉末および/またはペレット状”を3.5mm以下の球状サイズを有する粒子を意味すると定めている。この粒子サイズ範囲の上限は通常ペレットと表される。本明細書で使用される用語“粉末”および“ペレット”は特許保護の範囲につき当該粒子を製造するための特定の手順に制限する意図するものではない。
【0019】
用語“半連続的”は当該国際出願および当該明細書では当該製法には、(a)金属酸化物粉末およびペレットが当該電解槽に供給される期間および金属酸化物粉末およびペレットが当該電解槽へ供給されない期間、そして(b)当該電解槽から金属を取り出す期間および当該電解槽から金属をそのような取り出しをしない期間が含まれることを意味すると理解される。
【0020】
当該国際出願および本明細書における用語“連続的”および“半連続的”の使用の全体的意向はバッチ原理ではない電解槽操作を表す。
【0021】
本文では、当該国際出願および本明細書における用語“バッチ”には、国防大臣名義の国際出願WO01/62996で開示されているように金属酸化物を連続的に電解槽に供給し、還元された金属が電解槽周期の終わりまで電解槽中に蓄積される状態が含まれると理解される。
【0022】
当該国際出願での開示は本明細書中に相互参照で組入れてある。
【0023】
当該出願人は更に実験を行い、連続的または半連続的原理で電解槽を操業する商業的生産とし、当該電解槽は粉状および/またはペレット状の金属酸化物の粒子を載せるために水平に配置されているか僅かに傾いている(上方または下方に)平板のような部材形状を有しており、前端と後端を有し、電解質浴に浸漬していて、金属酸化物粉末および/またはペレットをカソードの前端に移動させるために好ましくは前方および後方への動作するように支持されている上面を有する電解槽カソードを含む必要があることに気が付いた。
【0024】
この配置により、使用するに当たって金属酸化物粉末および/またはペレットは当該カソードの上面、好ましくはその後部末端近辺に供給され、当該カソードの動きでより前方に移動させ、当該カソードの前方末端にて上面から落とし、最終的には当該電解槽から取り出す。当該金属酸化物粉末および/またはペレットは上面上を移動する間に還元される。
【0025】
用語“粉末および/またはペレット”は当明細書では長辺が5mm未満である粒子を意味する。
【0026】
従って、本発明はチタニア粉末および/またはペレットのような金属酸化物粉末を電解槽にて電気化学的に還元するための方法を提供するが、電解槽は溶融電解質の浴、カソードおよびアノードを含んでいて、当該カソードは平板のような部材形状で、水平または僅かに傾いていて金属酸化物粉末および/またはペレットを載せるための上面を有し、そして前端と後端を持ち、電解槽に浸漬されていて、当該カソードの上面上の金属酸化物粉末またはペレットを当該部材の前端方向に移動させるように支持されており、製法には:(a)当該アノードと当該カソードの間に当該溶融電解質浴に供給した金属酸化物の電気化学的還元を可能にする電解槽電圧をかけ、(b)当該カソードの上面に当該粉末および/またはペレットが堆積するように連続的または半連続的に金属酸化物を供与し、(c)金属酸化物粉末および/またはペレットを当該カソードの上面を当該カソードの前端方向に移動させる一方、当該粉末および/またはペレットが前端へと移動する間に当該金属酸化物の金属への電気化学的還元を生じ、そして(d)連続的または半連続的に当該溶融電解質浴から少なくとも部分的に電気化学的還元された金属酸化物を取り出す工程が含まれる。
【0027】
好ましくは工程(b)には、当該粉末および/またはペレットが当該カソードの上面に1つか2つの粒子の深さで層を形成するように当該溶融電解質浴中に金属酸化物粉末および/またはペレットを供給することが含まれる。
【0028】
当該金属酸化物粉末および/またはペレットは当該カソードの上面上にペレットの山で堆積するであろうが、当該カソードが当該カソード前端へ当該粉末および/またはペレットを動かすときに揺すられて1つか2つの粒子の深さの層になるであろう。
【0029】
好ましくは、工程(c)には金属酸化物ペレットを当該カソードの上面上で当該カソードの前端方向に1つか2つの粒子の深さである粉末および/またはペレット層として移動させるような工程が含まれる。
【0030】
当該層は当該カソードを適切に形成させることで作られる。例えば、当該カソードは前端に立ち上がった縁を伴って作られ、その縁の後ろに粉末および/またはペレットを積み上げるようにする。それに代わるものとして、またはそれに加えて当該カソードは当該粉末および/またはペレットの細密充填を起こさせるように一連の横断的に拡がる溝を伴うように形成することができる。
【0031】
好ましくは工程(c)には、上面上の金属酸化物粉末および/またはペレットを当該カソードの前端方向へ移動を起こさせるような当該カソードの選択的動きが含まれる。
【0032】
当該カソードの上面にある粉末および/またはペレットの前方への動きを生じる当該カソードの運動に関しては広い範囲の選択対象がある。当該出願人は当該カソードが前方および後方の方向に動くのが好ましいことを見出した。当該出願人は粉末および/またはペレットについて制御された前方への動きを達成できる1つの選択肢には、短期間の前方と後方への周期的な振動運動および短い休止期間を含む繰り返しの連続による当該カソードの運動が含まれることを見出した。当該出願人はこの連続が当該カソードの上面にある粉末および/またはペレットを短工程の制御した一連にて電解槽の後端から前端に上面上を移動させることができることを見出した。当該出願人は同様に粉末および/またはペレットの制御された前方運動には粉末および/またはペレットの制御された前方運動の後方と前方の運動の要素が含まれ、最終的に前方運動を伴うことを見出した。
【0033】
その上、本発明は一定操作条件下での電解槽の操作に限定されず、当該カソード運動のような操作パラメータが当該電解槽の操作活動の間に変化させる場合まで拡大適用する。
【0034】
好ましくは工程(c)には粉末および/またはペレットを同一速度で当該カソードの幅全体を移動するように当該カソードを動かし、それにより当該粉末および/またはペレットは当該浴中に実質的同じ滞留時間であることが含まれる。
【0035】
好ましくは、当該方法は電気化学的に当該金属酸化物を還元して酸素濃度が0.5重量%にすぎない金属にする。
【0036】
より好ましくは酸素の濃度は0.2重量%にすぎない。
【0037】
当該製造方法は1個または1個より多い電解槽が関与する単一または多段階製法でありうる。
【0038】
1個より多い電解槽が関与する多段製法の場合、当該製法には最初の電解槽から1つまたは1つ以上の流れに沿った電解槽の中を還元および部分的還元した金属酸化物を連続的に通過させること、およびこれら電解槽中における当該金属酸化物の連続的還元が含まれるであろう。
【0039】
当該カソードが平板の形をしている場合、多段製法に関する他の選択肢には還元および部分的に還元した金属酸化物粒子を連続的に1個のカソード板から他のカソード板へ、または1個の電解槽内にてカソード板の連続へ次々に通過させることが含まれる。
【0040】
多段製法に関する他の選択肢には、同じ電解槽内で還元および部分的還元された金属酸化物を再循環することが含まれる。
【0041】
好ましくは、当該製法には当該電解槽から取り出される粉末および/またはペレットを洗浄して、当該粉末および/またはペレットと共に当該電解槽から運ばれる電解質を分離することが含まれる。
【0042】
当該製法は必然的に当該電解槽から電解質の損失が起こるので、当該電解槽には補充用電解質が必要となる。
【0043】
当該補充用電解質は当該粉末および/またはペレットから洗浄された電解質を回収し、当該電解槽へ当該電解質を再循環することで得ることができる。
【0044】
それに代わるものとして、或いはこれに加えて当該製法には新たな補充用電解質を当該電解槽に供給することも含んでよい。
【0045】
好ましくは当該製法には当該電解質の気化および/または分解温度未満に電解槽温度を維持することが含まれる。
【0046】
好ましくは当該製法には当該電解質の少なくとも1つの構成成分の分解電圧より高い電解槽電圧を印加することが含まれ、当該電解質中にカソード金属酸化物のカチオン以外の金属カチオンが存在するようにする。
【0047】
当該金属酸化物がチタニアの場合、当該電解質は当該構成成分の1つとしてCaOを含むCaClに基づく電解質であることが好ましい。
【0048】
そのような場合、当該製法に当該電解槽電圧をCaOの分解電圧より高く維持することが含まれるのが好ましい。
【0049】
好ましくは、当該粉末および/またはペレットの粒子サイズが0.5〜4mmの範囲である。
【0050】
より好ましくは、当該ペレットの粒子サイズは1〜2mmの範囲である。
【0051】
本発明によれば、金属酸化物粉末および/またはペレットを電気化学的に還元するための電解槽も備えていて、電解槽には(a)融解電解質の浴、(b)金属酸化物の粉末および/またはペレットを載せるための上面を有する平板のような部材形状のカソードで、それは水平に配置されるか僅かに傾いていて前端と後端を有しており、電解質浴に浸漬されていて当該カソード上面上の金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該カソードの前端方向に動かせるような運動をするように支えられているカソード、(c)アノード、(d)当該アノードおよび当該カソードへ電圧を印加するための手段、(e)金属酸化物の粉末および/またはペレットを電解槽に供給して当該金属酸化物の粉末および/ペレットが当該カソードの上面に堆積できるような手段、(f)金属酸化物の粉末および/ペレットを当該カソードの上面で当該カソードの前端まで動かし、その間に溶融電解質と接触させて当該粉末および/またはペレットが前端まで移動する間に当該金属酸化物を金属へと電気化学的還元をする手段および(g)少なくとも部分的に還元された金属酸化物を電解槽から取り出すための手段が含まれる。
【0052】
好ましくは、当該カソードは平板である。
【0053】
好ましくは、当該カソードの上面上で金属酸化物の粉末および/ペレットを移動させるための方法には、当該金属酸化物の粉末および/またはペレットの運動をおこすために当該カソードを動かす方法が含まれる。
【0054】
好ましくは、当該カソードの上面上で金属酸化物の粉末および/ペレットを移動させるための方法には当該カソードを前および後の方向に動かす方法が含まれる。
【0055】
好ましくは、当該カソードは金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該カソードの上面上を1つまたは2つの粒子深さである層にて当該カソードの前端に向けて移動するように形づくられる。
【0056】
例えば、当該カソードは前方に直立した縁を有するように形づくられ、ペレットが当該縁の後で積み重なるようにする。それに代わるものとして、またはそれに加えて当該カソードの上面には当該ペレットの細密充填を促進するように一連の横断的に拡がる溝が付けられている。
【0057】
好ましくは、当該アノードおよび当該カソードの間に電圧を印加するための方法には電源が当該カソードの前端に結合されている電気回路が含まれる。当該出願人はこの配置が当該電解槽の前端から短い距離内でチタニア粉末および/またはペレットの充分な還元が生じることを見出した。
【0058】
好ましくは、当該アノードは電解浴中まで下方に拡がり、当該カソードの上面の上で所定の距離に位置する。
【0059】
当該アノードが例えばグラファイトから形成される消耗可能アノードである場合、当該アノードが消耗するので好ましくは当該電解槽には当該アノードと当該カソードの間を所定距離に維持するために当該アノードを電解質浴中まで下方に移動させる手段が含まれる。
【0060】
より好ましくは、当該アノードは当該電解槽中に拡がっている1つ以上のグラファイトブロックの形状をしている。
【0061】
好ましくは当該電解槽には当該電解槽から放出されるガス類を処理する手段が含まれる。
【0062】
当該ガス処理手段には当該ガス類から一酸化炭素、二酸化炭素、ホスゲンのような塩素含有ガス類のいずれか1種以上を除去する方法を含むことができる。
【0063】
当該ガス処理手段には当該ガス類中の一酸化炭素を燃焼するための手段も含むことができる。
【0064】
当該金属酸化物がチタニアである場合、当該電解質はCaClに基づく電解質が好ましく、それは構成成分の1つとしてCaOを含む。
【0065】
好ましくは、当該粉末および/またはペレットの粒子サイズは0.5〜4mmの範囲である。
【0066】
より好ましくは、当該粉末および/またはペレットの粒子サイズは1〜2mmの範囲である。
【0067】
本発明は更に添付図を参照にした例により説明するが、添付図は本発明に従った電気化学的製法および電解槽の1つの実施形態を表す概略図である。
【0068】
以下の説明は0.3重量%未満の酸素濃度を有するチタン金属へのチタニアペレットの電気化学的還元に関連する。しかしながら、本発明はこの金属酸化物に限ったものではなく、他の金属酸化物にまで拡大されることに注目される。
【0069】
図に示した電解槽1は平面図では長方形の囲まれた室で、底面3、向い合った端壁の対5、向い合った側壁の対7および上蓋9を有している。
【0070】
当該電解槽には図に見られるように当該電解槽の左手端近くの上蓋9にチタニアペレット用の導入口がある。当該電解槽のこの端は今後当該電解槽の“後端”と称する。当該ペレットはピン攪拌機51において“未成熟”状態で形成され、焼結炉53にて焼結され、その後に貯蔵容器55に貯蔵される。当該貯蔵容器55からのペレットは振動性供給器57を経由して電解槽入口11に供給される。
【0071】
当該電解槽には、更に図で見られるように当該電解槽の右手端の近くの底面3にチタン金属用の排出口13がある。当該電解槽のこの端は今後当該電解槽の“前端”と称する。当該排出口13は下方に集中するような側面15で輪郭が構成された排液槽および当該排液槽の底部端からチタンペレットを受けるように配置した上方に傾斜したオーガー35の形をとり、当該ペレットを当該電解槽から移送する。
【0072】
当該電解槽は溶融電解質の浴21が入っている。好ましい電解質は少なくとも幾分かのCaOを含んだCaClである。
【0073】
当該電解槽には更に当該浴21中に伸びているグラファイトブロックの形をしたアノード23が含まれ、当該アノードにおける電池反応により当該アノードグラファイトの下の部分が消耗するので当該ブロックが徐々に当該浴21中に下がっていけるように支持されている。
【0074】
当該電解槽には更に、当該浴21に浸漬されている平板の形状で、当該底部3の上に僅かに離れて位置しているカソード25が含まれている。当該カソード板25は当該電解槽中で、当該カソード板25の上面が水平または当該電解槽の後端から前端へと僅かに傾けられて支持されている。当該カソード板25の長さの寸法は当該浴中のペレットに必要とされる滞留時間を考慮して選択される。当該カソード板25の幅の寸法は必要とされる全生産量を考慮して選択される。当該カソード板25は前および後の方向に振動運動で動かすように支持されている。
【0075】
当該出願人は短い間の振動運動と短い間の休止期間を含む繰り返しの連続である当該カソード板25の動きで、当該カソード板25の上面にあるペレットを当該上面上で当該電解槽の後端から前端に一連の短い工程で動かすことができることを見出した。
【0076】
その上、当該出願人は上記した動きの形式はペレットを当該カソード板25の幅方向に一定の速度で動かすので、当該ペレットは当該浴21内で大体同じ滞留時間を有することになることを見出した。
【0077】
より詳しくは、当該導入口11を経由して供給されたチタンペレットが当該電解槽後端近くのカソード板25の上面上へと落し込まれ、当該カソード板25の上面上を前方に動かされて当該カソード板25の前端で落ちて排出口13に入るように当該電解槽は配置されてある。より詳しくは、当該電解槽は使用に際して、当該ペレットが細密充填単層として当該カソード板25の上面上を前方に動くように配置されている。当該ペレットの細密充填を達成するために当該カソード板25の長さに沿った縁の後にペレットが積み重なるように、当該カソード板25にはその前端に直立の縁(示してはない)が含まれる。
【0078】
当該出願人は、当該チタンペレットはこれらのペレットがより角張ったペレットでできるより、より予測可能な方式で当該カソード板25の上面上を動かせることができるので、実質的に円形であるのが好ましいことを見出した。
【0079】
加えて、当該出願人は当該ペレットの前方への動きを阻害するような程度に当該ペレットが当該平板の上面に“張り付く”こと、および当該ペレットがお互いに“張り付く”のは好ましくないことを見出した。これら考慮すべき事柄は円形ペレットが好ましいことを支持する。このことは当該カソード板25の振動性運動がペレットの張り付きを最小限化するということに気がつくことと関連性がある。加えて、当該平板は張り付きを最小限にするためにチタンおよび二臭化チタンのような物質で被覆するのがよい。
【0080】
当該出願人は、当該ペレットの大きさおよび重量は当該ペレットが当該カソード板25の上面で素早く落ち着き、当該溶融浴21中の電解質中で懸濁することがないように選択すべきであることも見出した。
【0081】
全般的な条件では、当該カソード板25の上を当該電解槽の質量処理量を適正化するための効果的な手法で、即ち当該平板に張り付かせることなしに動かせる最小可能なペレットサイズを選択するのが好ましい。
【0082】
当該電解槽には更に、当該アノードブロック23および当該カソード板25の間に電圧を印加するための電源31、および当該電源31、当該アノードブロック23及び当該カソード板25を電気的に相互に連結させる電気回路が含まれる。当該電気回路は当該電源31が当該カソード板25の後端に接続するように配線されている。
【0083】
当該電解槽を使用する際、チタニアペレットは当該電解槽の後端で当該カソード板25の上面に当該カソード板25の上でペレット単層を形成するように供給され、そして当該平板を上で説明したように動かして当該ペレットが当該電解槽の前端へ当該平板の表面を前進させ、最後に当該平板の前端から落下させる。当該ペレットは当該電解槽の中を当該カソード板25の表面で動かされる間に徐々に電気化学的還元を受ける。当該カソード板25の操作パラメータは当該チタニアペレットの還元に必要なレベルを達成するのに充分な当該電解槽中滞留時間を選択する。典型的には電解槽操作電圧3Vにて2〜4mmのチタニアペレットを0.3重量%の酸素の濃度であるチタンに還元するのに必要な滞留時間は4時間である。
【0084】
当該出願人は上記処理により当該電解槽の前端から少しの距離内でチタニアペレットの実質的還元が生じることを見出した。
【0085】
当該出願人は当該電解槽の全体の操作に影響する多くの因子があることを見出した。これらの因子の幾つか、即ちペレットサイズおよび当該カソード板25の形状と動きは前に検討している。他の関連する因子は当該カソード板25および当該アノードブロック23の上面に露出している表面の面積である。これまでの研究に基づいて、当該出願人は当該アノードブロック23の露出した表面積と比較してカソード板25が大きいほうが小さいより好ましいと考えている。言い換えれば、当該出願人はアノード電流密度が小さいより大きいほうが好ましいと考えている。
【0086】
当該電解槽を使用していると、当該アノードブロック23は当該アノードブロックでの炭素および当該カソード板25で発生するO2−アニオンの間の反応で徐々に消費され、当該反応は当該アノードブロック23の下縁で顕著に起こる。
【0087】
当該カソード板25の上面および当該アノードブロック23の下縁の距離は、製法の他の操作パラメータが要求する変動の最小化をするため実質的に一定に保つのが好ましい。結果として当該電解槽には当該アノードブロックを電解浴21に徐々に下げて、当該カソード板25の上面と当該アノードブロック23下縁の間の距離を実質的一定に維持する手段(ここには示していない)が含まれる。
【0088】
好ましくは、当該カソード板25の上面と当該アノードブロック23下縁の間の距離は、当該浴21を必要な操作温度で維持するのに充分な発生する抵抗熱が発生するように選ぶ。
【0089】
好ましくは、当該電解槽はCaOの分解電圧より高い電圧で操作する。状況によるが、当該電圧は4〜5V程度がよい。上記機構に従い、CaOの分解電圧より高い電圧での操作はCa++カチオンの存在により当該カソード板25上へのCa金属の沈着、および当該印加電場と当該アノードブロック23の炭素とO2−アニオンで一酸化炭素と二酸化炭素を生成して電子を放つ反応の結果として当該アノードブロック23へのO2−アニオンの移行を促進する。加えて、上記機構に従えば、Ca金属の沈着は上記機構によりチタニアの化学的還元を生じ、当該印加電場と更なる電子の放出の結果として当該アノードブロック23へ移転するO2−アニオンを生成する。CaClの分解電圧より下で電解槽を操作すると塩素ガスの生成を最小化するので、これによりこれは利点である。
【0090】
上にて述べたように、当該電解槽の操作は当該アノードにおいて一酸化炭素及び二酸化炭素および場合によって塩素含有ガス類を生じ、当該電解槽からこれらのガス類を取除くのは重要なことである。当該電解槽には更に当該電解槽の上蓋9に排気口41および当該排気を処理するガス処理装置43が含まれていて、大気中に当該処理ガス類を放出する前に処理をする。当該ガス処理には二酸化炭素およびいずれの塩素系ガス類の除去が含まれ、更に製法用に熱を生成させるための一酸化炭素の燃焼が含まれる。
【0091】
チタンペレットを当該チタンペレットの孔中に保持されている電解質と共に当該電解槽から連続的または半連続的に当該排出口13で取り出す。排出された物質はオーガー35を経由して散水室37に送られ、当該電解質の固化温度より下の温度まで冷却され、それにより当該電解質は当該金属の直接露出を防いで、その結果当該金属の酸化を抑制する。当該排出された物質はその後洗浄し、保持されている電解質を当該金属粉末から分離する。当該金属粉末はその後に最終製品を製造するのに必要な処理が行われる。
【0092】
上記電解槽および製法はペレット状の金属酸化物を連続的および半連続的に還元して低酸素濃度の金属を製造する効率的で効果的な方法である。
【0093】
厳密に言えば、図に示した電解槽は、本発明の範囲内である多くの可能な電解槽の構成の単なる1つの例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に従った電気化学的製法および電解槽の1つの実施形態を表す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した電解質の浴、カソードおよびアノードを含む電解槽中で金属酸化物粉末および/またはペレットを電気化学的に還元するための製法に関し、当該カソードは金属酸化物粉末および/またはペレットを支えるための上面を有する部材の形状をなし、それは水平に配置されているか僅かに傾いており、前端と後端を持ち、当該電解質浴に浸漬されており、当該カソードの上面上を金属酸化物粉末および/またはペレットを当該部材の前端に向けて当該カソードの上面を動かすような動作をするように支えられていて、その製法には:(a)当該溶融電解質に供給した金属酸化物の電気化学的還元を行える電解槽電圧を当該アノードと当該カソードの間にかけ、(b)当該溶融電解質浴中に連続的または半連続的に供給して金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該粉末および/またはペレットが当該カソードの上面に堆積するようにして、(c)金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該カソードの上面上を当該カソードの前端方向へ動かし、その間に溶融電解質と接触させ、それにより当該粉末および/またはペレットが前方端に向かって動く間に当該金属酸化物の金属への電気化学的還元を起こし、そして(d)少なくとも部分的電気化学的に還元された金属酸化物粉末および/またはペレットを当該溶融電解槽から連続的または半連続的に取り出す工程が含まれる、電解槽中で金属酸化物の粉末および/またはペレットを電気化学的還元するための製法。
【請求項2】
工程(b)には当該金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該溶融電解質浴に、当該粉末および/またはペレットが当該カソードの上面上で深さが1粒子または2粒子になる層を形成するように供給することが含まれる、請求項1記載の製法。
【請求項3】
工程(b)には当該金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該溶融電解質浴に供給することで当該カソードの上面上に粉末および/またはペレットを積重ねで堆積させることが含まれ、工程(c)は積重なった粉末および/またはペレットを振ることで広げ、深さが1つまたは2つの粒子層として当該カソードの上面上を当該カソードの前方端に向けて動くようにする、請求項1記載の製法。
【請求項4】
工程(c)には深さが1つまたは2つの粒子である粉末および/またはペレットの層として当該カソードの前端に向けて当該カソードの上面上の金属酸化物の粉末および/またはペレットを移動させることが含まれる、請求項1記載の製法。
【請求項5】
工程(c)には当該カソードの上面上にある金属酸化物の粉末および/ペレットを当該カソードの前端に向けて移動させるように当該カソードを選択的に動かすことが含まれる、先行請求項のいずれかに記載の製法。
【請求項6】
工程(c)には当該カソードの上面にある金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該カソードの前端に向けて移動させるように当該カソードを前方および後方に動かすことが含まれる、請求項5記載の製法。
【請求項7】
前方および後方の短い期間の振動運動および短い期間の休止期を含む繰り返し連続的に当該カソードを動かすことを含む、請求項6記載の製法。
【請求項8】
工程(c)には当該カソードの幅を粉末および/またはペレットが同じ速度で移動し、当該粉末および/ペレットが浴中に大体同じ滞留時間になるように当該カソードを動かすことが含まれる、先行請求項のいずれかに記載の製法。
【請求項9】
当該電解槽から取り出された粉末および/またはペレットの洗浄および当該電解槽から当該ペレットと共に運ばれた電解質を分離することが含まれる、先行請求項のいずれかに記載の製法。
【請求項10】
当該粉末および/またはペレットから洗浄された電解質を回収することおよび当該電解槽に当該電解質を再循環することが含まれる、請求項9に記載の製法。
【請求項11】
当該電解質の構成分の少なくとも1つの分解電圧より大きい電解槽電圧を加えて当該電解質中に当該カソード金属酸化物の構成成分以外の金属のカチオンが存在するようにすることが含まれる、先行請求項のいずれかに記載の製法。
【請求項12】
当該金属酸化物がチタニアであり当該電解質はCaOを当該構成成分の1つとして含んだCaClに基づく電解質である場合、当該製法にはCaOに対する分解電圧より当該電解槽電圧を高く維持することが含まれる、請求項11記載の製法。
【請求項13】
当該粉末および/またはペレットの粒子サイズが0.5〜4mmの範囲である、先行請求項のいずれかに記載の製法。
【請求項14】
金属酸化物の粉末および/またはペレットを電気化学的還元するための電解槽に関し、電解槽には(a)溶融電解質の浴、(b)金属酸化物の粉末および/またはペレットを支えるための上面を有する部材の形状をしていて、水平に配置されるか僅かに傾いていて、前端と後端を持ち、当該電解槽中に浸漬されていて、当該カソードの上面にある金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該カソードの前端に向けて移動させるように支持されているカソード、(c)アノード、(d)当該アノードと当該カソードの間に電圧を印加する手段、(e)金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該電解槽に供給して当該金属酸化物の粉末および/ペレットが当該カソードの上面上に堆積できるようにする手段、(f)当該カソードの上面上を当該カソードの前端に向けて金属酸化物の粉末および/またはペレットが移動させ、溶融電解質と接触させて、それにより当該粉末および/またはペレットが前方端に向けて移動しているときに当該金属酸化物の金属への電気化学的還元を起こすことができる手段、(g)少なくとも部分的に電気化学的に還元された金属酸化物を当該電解槽浴から取り出すための手段が含まれる、金属酸化物の粉末および/またはペレットを電気化学的還元するための電解槽。
【請求項15】
当該カソードが平面である請求項14記載の電解槽。
【請求項16】
金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該カソードの上面上を動かすための手段には、金属酸化物の粉末および/またはペレットの移動を起こさせるように当該カソードを動かすための手段が含まれる、請求項14または請求項15記載の電解槽。
【請求項17】
金属酸化物の粉末および/またはペレットを当該カソードの上面上を移動させるための手段には、当該カソードを前および後の方向に動かす手段が含まれる、請求項16記載の電解槽。
【請求項18】
当該カソードは、金属酸化物の粉末および/またはペレットを深さが1粒子または2粒子である粉末および/またはペレットの層として当該カソードの上面上を当該カソードの前端に向けて移動させるように形作られている、請求項14から17のいずれかひとつに記載された電解槽。
【請求項19】
当該カソードは前端に直立の縁を伴って形作られており、それが当該縁の後に粉末および/またはペレットを積重ねる、請求項18記載の電解槽。
【請求項20】
当該カソードの上面は当該粉末および/またはペレットの細密充填を促進させる一連の横断的に拡がる溝を伴って形つくられている、請求項18または請求項19記載の電解槽。
【請求項21】
当該アノードと当該カソードの間に電圧を印加するための手段には、電源が当該カソードの前端に接続されている電気回路が含まれる、請求項14から20までのいずれか1つに記載の電解槽。
【請求項22】
当該アノードが当該電解浴中まで下方に拡がっていて当該カソードの上面の上に所与の距離を置いている、請求項14から21までのいずれか1つに記載の電解槽。
【請求項23】
当該アノードが当該アノードと当該カソードの間の所定の距離を維持するために消費されたとき、当該アノードを当該電解浴中まで下方に移動させる手段を含んだ、請求項22記載の電解槽。


【図1】
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【公表番号】特表2007−520627(P2007−520627A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515548(P2006−515548)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000809
【国際公開番号】WO2004/113593
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(504000269)ビーエイチピー ビリトン イノベーション プロプライアタリー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】