説明

金属酸化物ナノ粒子の製造方法、金属ナノ粒子、処理金属ナノ粒子およびその用途

【課題】本発明は、分散安定性に優れた金属酸化物ナノ粒子および/または金属酸化物ナノ粒子分散体を低コストかつ工業的規模で製造する技術を提供するものである。当該製造方法により合成した金属酸化物ナノ粒子または/および分散体は、粒子径が細かく、各種溶媒への分散性に優れているため、光学材料などの機能性材料用途に使用することができる。
【解決手段】本発明は、水層および金属酸化物前駆体を溶解させた有機層を含む液を1MPaG未満の反応圧力で反応させることを特徴とする20nm以下の平均粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20nm以下の平均粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子の製造方法に関し、優れた機能性を有する金属酸化物ナノ粒子粉体および当該粉体を有する分散体を大量にかつ安価に製造することが可能な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化物ナノ粒子は、電子部品材料、磁気記録材料、触媒材料、紫外線吸収材料など各種材料の高機能化、高性能化に寄与するものとして非常に着目されている材料である。
【0003】
一般に、粒子を合成する方法としては、Breaking−downプロセスとBuilding−upプロセスが知られている。Breaking−downプロセスとしては、機械的粉砕法が一般に使用されるが、粒子径が1μm以下の微粒子を効率よく製造することは困難であり、また粉砕工程で不純物が混入する可能性が高い。一方、Building−upプロセスは、気相や液相中の化学反応により、粒子を調製する方法であり生成条件の制御、原料物質の選定などによりナノオーダーの微細粒子を調製できる方法である。
【0004】
気相法の代表例としては、ガス中蒸発法や気相反応法(CVD)がある。ガス中蒸発法は、低圧の不活性ガス中で、抵抗加熱法や高周波誘導加熱法、プラズマ法、レーザー法などにより金属を加熱し蒸発させることにより粒子を生成させる方法である。これらは特殊な条件での反応であるため、装置コストが高くなり、コスト面で不利である。また、蒸気圧の低い酸化物粒子の製造には適さない方法である。さらに、CVDは、原料化合物の反応性が高いため、取扱い性、安全性で問題が多い。
【0005】
一方、液相法としては、共沈法、アルコキシド法、水熱合成法などが挙げられる。共沈法は、金属水酸化物等の金属酸化物前駆体を生成させた後、この前駆体を含む溶液を金属酸化物が生成する温度以上に加熱して、金属酸化物ナノ粒子を生成する方法である。しかしながら、生成した金属酸化物ナノ粒子が加熱工程において粒子成長してしまう問題があった。また、アルコキシド法は、金属アルコキシドを加水分解することにより金属酸化物微粒子を得る方法である(特開平06−287005号)。この方法は、低温での合成方法であるため、凝集が生じ難く、比較的容易に金属酸化物ナノ粒子を得ることができるが、一部の金属酸化物にしか適用できないこと、原料コストが高い問題点がある。また低温合成のため結晶性が十分でなく、本来保有する金属酸化物の特性が発揮できない問題点があった。更に、水熱合成法は、金属酸化物前駆体を圧力下で反応させるものであるが、結晶化のため加熱すると粒子が粗大化する問題がある。また短時間で核生成させるために亜臨界ないしは超臨界条件にて水熱反応させたりしているが(特開2005−255450号)、反応条件が厳しく多量のナノ粒子を安価に調製することが困難である問題があった。
【0006】
その他、溶液を小液滴として熱風中に噴霧し急速に乾燥させる噴霧乾燥法や、溶液を高温雰囲気中へ噴霧し、瞬間的に溶媒の蒸発と金属塩の熱分解を起こす噴霧熱分解法などが知られているが、溶媒の蒸発および金属塩の熱分解ガスの発生が急激に起こるため、生成粒子は一般に中空状になり易い問題点がある。また、微粒子が生成しても加熱工程で金属酸化物微粒子同士が融着する問題点があった。
【0007】
更に、上記方法で一次粒子径が小さい酸化物粒子を調製しても凝集や融着が生じることが多く、実際に機能性材料として使用するためには、粒子表面を処理することにより各種溶媒、モノマー、ポリマーへの分散を向上させることが必要であった。しかしながら、従来の金属酸化物粒子は、親水性であり、有機溶媒との親和性は低いため、有機性の表面処理剤などで表面処理を施そうとしても、凝集や融着が生じた粒子は、完全に分散する前に表面処理されることが多く、結果として均一な分散体ができないことがあった。また、表面処理の際に、表面処理剤と粒子との親和性を向上させる目的や、凝集や融着したものを再度分散させる目的に、高温高圧処理(特開2005−193237号)、ホモジナイザー処理、超音波処理、ミル処理(特開2005−220264号)などの処理を施しているが、特殊な装置が必要なこと、また上記処理を用いても凝集すると再分散が難しい問題点があるため、簡便で低コストな処理方法が望まれているものであった。
【0008】
【特許文献1】特開平06−287005
【特許文献2】特開2005−255450
【特許文献3】特開2005−193237
【特許文献4】特開2005−220264
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような現状を鑑み、分散安定性に優れた金属酸化物ナノ粒子を低コストかつ工業的規模で製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に本願発明を列挙する。
第一の発明は、水層および金属酸化物前駆体を含む有機層とを含む液を1MPaG未満で反応させることを特徴とする平均粒子径が20nm以下の金属酸化物ナノ粒子の製造方法である。好ましくは、(水層の仕込み体積)/(有機層の仕込み体積)が、0.3以上4未満である。また、当該有機層に含まれる溶媒Aの沸点が120℃以上であることが好ましい。当該金属酸化物ナノ粒子が、Al、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Hf、La、Ce、Nd、Smから選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物であることが好ましい。
【0011】
第二の発明は、上記方法により得られることを特徴とする平均粒子径が20nm以下の金属酸化物ナノ粒子である。当該ナノ粒子を溶媒Bに分散させ金属酸化物ナノ粒子分散体とすることもできる。
【0012】
第三の発明は、当該金属酸化物ナノ粒子を、アミノ基、チオール基、ビニル基、カルボキシル基、エポキシ基、OR基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物で処理することを特徴とする処理金属酸化物ナノ粒子である。当該金属酸化物ナノ粒子を溶媒Cに分散させ金属酸化物ナノ粒子分散体とすることもできる。
【0013】
第四の発明は、当該金属酸化物ナノ粒子または当該処理金属酸化物ナノ粒子を用いることを特徴とする光学材料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明を用いることで、分散安定性に優れた金属酸化物ナノ粒子および金属酸化物分散体を低コストかつ工業的規模で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、まず本発明第一の発明について説明する。本発明に係る水層および金属酸化物前駆体を含む有機層とを含む液とは、水層と有機層があれば良く、場合によっては水層と有機層が「懸濁」状態であっても良いし、無機物が含まれていても良い。水層と有機層は、(水層の仕込み体積)/(有機層の仕込み体積)で0.3以上4未満の範囲が好ましく、更に好ましくは0.5以上2未満である。0.3未満の場合、前駆体から酸化物への反応が進行し難く、酸化物ナノ粒子が合成されないことや、合成するためには長時間の反応が必要となり好ましくない。一方、4以上の場合は、水の量が多くなるため、一回の反応における粉体回収量が少なくなる問題がある。なお、水層の仕込み体積とは、反応容器に仕込む前の常圧、室温下での水層単独での体積のことである。一方、有機層の仕込み体積とは、金属酸化物前駆体と有機溶媒を混合した溶液の常圧、室温下における、反応前の体積のことである。
【0016】
第一の発明に係る水層は、水を含むものであればよく、好ましくは純水である。水層には、pHの調整のため、酸、アルカリなどを適宜加えることができる。水層のpHは4以上9未満であることが好ましい。
【0017】
第一の発明に係る有機層は、少なくとも金属酸化物前駆体が含まれていれば足りるが、好ましくは当該前駆体と溶媒Aを含むものである。場合によっては、保護剤となりうるカルボン酸、アミン化合物、アルコール、界面活性剤等を含ませることもできる。当該前駆体と溶媒Aを含む場合は当該前駆体の量は有機層に対して2〜95質量%、好ましくは5〜90質量%である。2質量%未満であるときは、収率が少なくなるため好ましくはなく、95質量%を超えるときは前駆体が多くなるために反応生成物が増加するが、容器中の固形物量が増加し均一な反応が起こり難くなるため好ましくはない。
【0018】
当該有機層に含まれる溶媒Aは通常溶媒として用いられるものであれば良く、好ましくは当該溶媒Aの沸点が120℃以上のものである。更に好ましくは180℃、より好ましくは210℃以上である。溶媒Aの沸点が120℃未満では、溶媒Aの蒸気圧も高くなるため、結果的に反応圧が高くなり、粒子の凝集や融着が生じ易くなる問題がある。溶媒の種類としては、金属酸化物前駆体を均一に溶解させるものであれば良く、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコール、アミン、カルボン酸などが一般的に利用できる。例えば、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカン、ドデカン、テトラデカン、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸などを利用できる。
【0019】
当該金属酸化物ナノ粒子に用いられる金属元素は、Mg、Al、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Hf、La、Ce、Nd、Smから選ばれる少なくとも一種の元素を用いることができる。更に、2種類以上の金属酸化物前駆体を組み合わせることにより、2以上成分が混合した金属酸化物ナノ粒子も調製することが可能である。
【0020】
第一の発明に係る当該金属前駆体については、有機層に溶解する前駆体であれば特に限定されたものではなく、水酸化物、塩化物、硫化物、カルボン酸塩、アミン化合物、アルコキシドなどを使用することができる。この中でも、カルボン酸塩を利用すると、粒子径が細かく、更に低コストに粒子を合成できるため好ましい。カルボン酸塩としては、具体的には、分子内にカルボキシル基の水素原子が金属原子に置換された結合を少なくとも一つ有する化合物であり、カルボキシル基としては、例えば、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸、不飽和多価カルボン酸などの鎖式カルボン酸;環式飽和カルボン酸;芳香族カルボン酸;更に分子内にヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシ基、スルホン基の官能基または原子団を有する金属塩などを用いることができる。更に、金属カルボン酸塩またはカルボン酸残基の一部が水酸基やアルコキシ基で置換されたものなども好適に用いることができる。カルボン酸の種類に関しては、カルボキシル基の炭素数が6〜12のカルボン酸塩を好適に使用できる。例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクタン酸、ネオデカン酸、サリチル酸などのカルボン酸化合物を挙げることができる。中でも、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸の化合物が好適に用いられる。炭素数が6より小さい場合は、結晶化した酸化物ナノ粒子の調製が困難となり、機能性材料として利用できないことが多い。炭素数が12以上となると溶媒への溶解度が悪くなることが多く、生産性が低くなり好ましくない。なお、カルボン酸の塩の調製に関しては、Mg塩などの前駆体を調製した後、その他金属化合物の水溶液と接触させることにより、Mgと金属化合物の金属成分との交換反応により調製することもできる。
【0021】
反応に際しては、溶媒A、金属酸化物前駆体を含む有機層,水層の他に、分散剤を添加しても良い。分散剤としては、水層、有機層のいずれか一方以上の層で分散性能を有するものであれば良い。分散剤としては、カルボン酸、アミン化合物、アルコキシド、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤などが挙げられる。分散剤の量としては、金属酸化物に対して0.01倍モル以2倍モル未満であることが好ましい。
【0022】
水層と金属酸化物ナノ粒子を有する有機層とを反応させる反応圧力は、1MPaG(メガパスカルゲージ)未満である。1MPaG以上となると、粒子の凝集が生じ易くなることや装置コストが高くなる問題があるため好ましくない。また常圧では、結晶形成に高温を要し、熱的な凝集が促進されるため、0.1MPaGより大きい方が好ましい。特に好ましくは、0.2MPaG以上である。
【0023】
また、反応温度については、容器内の圧力が1MPaG未満となるように設定すればよいが、水の飽和水蒸気圧を考慮すれば、180℃未満の反応温度で反応させることが好ましい。
【0024】
反応時間に関しては、特に限定されないが、0.1hr以上10hr未満が好ましく、0.5hr以上6hr未満が好適である。
【0025】
反応系雰囲気は、空気、酸素、水素、窒素、アルゴン、COなど特に限定されるものではないが、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気にて反応させることが、安全面および凝集抑制面から好ましい。一方、空気、酸素雰囲気下にて反応させることは、安全面、凝集の促進面から好ましくない。
【0026】
上記の方法により、本発明に係る第二の発明である金属酸化物ナノ粒子を得ることができる。本発明により製造した粒子の平均粒子径は1nm以上20nm以下であり、好ましくは2nm以上19nm以下である。20nmを超える場合は、分散液としたときに透明性が低くなるため、機能性材料としての利用価値が小さくなる。粒子径の測定方法は、一般的な粒子の測定方法を用いることができる。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM),電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM),電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等を適宜使用することができる。平均粒子径の値は、定方向径(定方向の平行線で粒子をはさんだときの距離で表される径)で測定された100個の粒子の平均値から導出される値である。
【0027】
本発明の粒子の形状は、特に限定されない。形状の具体例としては、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状の薄片状などが例示される。
【0028】
本発明により製造した粒子のBET比表面積は、40m/g以上、更に好ましくは80m/g以上である。40m/g未満では、表面積が小さく機能性材料としての利用価値が小さくなる。
【0029】
また、水層および金属酸化物前駆体を含有する有機層の二層からなる液を1MPaG未満の反応温度で反応させた後、得られた当該金属ナノ粒子を精製することもできる。当該精製は、反応時において当該粒子の凝集体、析出したカーボンを除くためである。精製の例を示すと反応後の溶液は、上層に有機層、下層に水層に分離した形となっており、金属酸化物ナノ粒子は、水層の下部で沈殿物として存在する。したがって、有機層および水層と沈殿物をろ過など一般的な方法で分離することにより容易に回収することができる。次に、凝集粒子やカーボンを除去するために、回収した沈殿物にトルエンを加え、フィルターでろ過し、凝集粒子やカーボンはなどの大粒子と当該ナノ粒子を分離する。続いて、ろ液から溶媒を除去することにより不純物が少なく、均一な粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子粉末を製造することができる。
【0030】
本発明において、酸化物ナノ粒子の沈殿物を回収した後の溶液は、有機層のみを分別ロート等で分離することにより、再度繰り返し利用すること好ましい。再利用することにより、廃液の削減、原料コストの低減に結びつくことができため、低コストに酸化物ナノ粒子を調製することができる。
【0031】
第二の発明とは、当該金属酸化物ナノ粒子を溶媒Bに分散させた金属酸化物ナノ粒子分散体である。本発明に用いる溶媒Bとは、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、アミド類を用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができ、これらの溶媒が1種または2種以上利用することができる。特に、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの無極性溶媒に分散させることが好ましい。その他の極性溶媒に関しては、分散性が低く、白濁が生じるため実際には使用できない場合が多いからである。かかる場合には当該金属酸化物ナノ粒子に疎水処理を施すことで上記弊害をかい解消することができる。
【0032】
また、当該分散体中の金属酸化物ナノ粒子の濃度は、用途に応じて適宜設定することができる。当該分散体に対して金属酸化物ナノ粒子含有量は1質量%以上70質量%未満であり、好ましくは、5質量%以上60質量%未満、更に好ましくは12質量%以上50質量%未満である。金属酸化物ナノ粒子の濃度が1質量%未満では、金属酸化物ナノ粒子濃度が低く、実用に向かない。一方、70質量%以上の場合、均一に分散するのが難しく、白濁する傾向があるため好ましくない。
【0033】
なお、当該金属酸化物ナノ粒子は、平均粒子径が20nm以下と非常に細かいため、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの無極性溶媒に均一に分散させることができ透明性を保持することができる。例えば、本発明の方法により調製した酸化ジルコニウムナノ粒子粉体をトルエン中に30質量%含有するように分散させたところ、透明の酸化ジルコニウムナノ粒子−トルエン分散液を調製することができる。
【0034】
当該分散体に更に、金属酸化物ナノ粒子を含み、可塑剤をさらに含有するものである。可塑剤(可塑剤Bと称する)を添加することもできる。可塑剤Bとしては、特に限定されるものではないが、例えば、リン酸トリブチル、リン酸2−エチルヘキシル等のリン酸エステル系可塑剤、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル系可塑剤、オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪族−塩基性エステル系可塑剤、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなどの二価アルコールエステル系可塑剤;アセチルリシノール酸メチル、アセチルクエン酸トリブチルなどオキシ酸エステル系可塑剤等の従来公知の可塑剤を挙げることができる。
【0035】
当該分散体にはモノマーを添加することができる。用いられるモノマーとしては、特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系モノマーなど、従来公知のモノマーを挙げることができる。
【0036】
第三の発明は、当該金属酸化物ナノ粒子を、アミノ基、チオール基、ビニル基、カルボキシル基、エポキシ基、OR基(但し、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基である。)から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物(「表面処理剤」と称する)と溶液中で加熱させることで得られる表面処理された金属酸化物ナノ粒子(「処理金属酸化物ナノ粒子」と称する)及び当該製造方法である。当該処理を金属酸化物ナノ粒子に施すことにより、当該粒子の各種溶剤、モノマーへの分散性を向上させることができる。
【0037】
表面処理剤としては、アミノ基、チオール基、ビニル基、カルボキシル基、エポキシ基、OR基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物であれば、特に限定されるものでないが、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド、モノsecブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリエトキシエトキシエトキシド、アルミニウムフェノキシド等のアルミニウムアルコキシドや、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、アルミニウムステアレートオキサイドトリマー、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテートモノ(ジオクチルホスフェート)等の各種アルミニウム系カップリング剤等;チタニウムn−ブトキシド、チタニウムテトラ−tert−ブトキシド、チタニウムテトラ−sec−ブトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ2−エチルヘキソキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウムラクテート、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラ(メトキシプロポキシド)、チタニウムテトラ(メチルフェノキシド)、チタニウムテトラn−ノニロキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、チタニウムテトラステアリロキシド、チタニウムビス(トリエタノールアミン)−ジイソプロポキシド等のチタニウムアルコキシドや、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、テトラオクニルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等の各種チタン系カップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトルエトキシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシランザン等の各種シランカップリング剤;ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラtert−ブトキシド、ジルコニウムテトラ2−エチルヘキソキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトラ(2−メチル−2−ブトキシド)等のジルコニウムアルコキシドや、ジルコニウムジn−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムトリn−ブトキシドペンタンジオネート、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシド等の各種ジルコニウム化合物等ヒドロキシステアリン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸などのエーテルカルボン酸、カルボキシル化ポリブタジエン、カルボキシル化ポリイソプレンなどのカルボン酸系カップリング剤、マレイン酸変性ポリプロピレンなどが好ましい。更に好ましくは、シランカップリング剤、ヒドロキシカルボン酸、エーテルカルボン酸である。
【0038】
加熱処理の方法に関しては、金属酸化物ナノ粒子と表面処理剤を含む混合物を加熱処理すればよい。例えば、金属酸化物ナノ粒子を溶媒に分散させた後、表面処理剤を適宜添加し、加熱処理すればよい。加熱温度に関しては、0℃以上180℃未満であり、好ましくは10℃以上120℃未満である。更に好ましくは、20℃以上100℃未満である。0℃未満では、反応が進行しない。一方180℃以上は、安全面、コスト面からも好ましくない。また、反応時間に関しては、0.1hr以上10hr未満、好ましくは0.3hr以上3hr未満である。
【0039】
表面処理時に使用する溶媒としては、金属酸化物ナノ粒子を均一に分散させる溶媒であればよく、好ましくはトルエン、キシレン、シクロヘキサンである。溶液における金属酸化物ナノ粒子の割合は、0.1質量%以上50質量%未満であることが好ましい。本発明の粒子は、トルエン、キシレンへの分散性が非常に良好であり、その均一に分散された状態で表面処理剤と反応させることができるため、特殊な装置も必要なく、かつ温和な条件下にて短時間で処理できることから、非常に優れた表面処理方法である。一方、従来方法にあるような水、炭素数が4以下のアルコール類やケトン類を添加すると金属酸化物ナノ粒子の2次凝集が生じるため、表面処理が均一に行えないため好ましくない。本処理を施すことにより、もともと無極性の溶媒に親和性を有する粒子が、極性の高い溶媒への親和性も有するようになる。これは、親水性の高い酸化物ナノ粒子を疎水性に変化させる従来の表面処理方法とは全く異なるものである。
【0040】
表面処理剤は、当該金属酸化物ナノ粒子に対して1質量%以上40質量%未満であり、好ましくは、3質量%以上30質量%未満である。更に好ましくは、5質量%以上25質量%未満である。3質量%未満のときは、表面処理の効果が少なくトルエン、キシレン、シクロヘキサン以外の溶媒への分散性は向上しない。一方、40質量%以上であると金属酸化物ナノ粒子に対する表面処理剤の割合が多くなる。その結果、表面処理金属酸化物ナノ粒子を分散させた有機マトリックス材料において、本来、処理金属酸化物ナノ粒子が有する高屈折能や紫外線遮断能を発現させるためには、相当量の金属酸化物ナノ粒子の混合が必要となるため好ましくない。
【0041】
当該処理金属酸化物ナノ粒子を溶媒Cに分散させ処理金属酸化物ナノ粒子分散体を得ることができる。溶媒Cは、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、アミド類を用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができ、これらの溶媒が1種または2種以上利用することができる。
【0042】
当該処理金属酸化物ナノ粒子は、上記各種溶媒に適宜分散し透明分散体が得られる。当該分散体中の酸化物ナノ粒子の濃度は、用途に応じて適宜設定することができる。当該分散体に対して当該処理金属酸化物ナノ粒子は1質量%以上60質量%未満であり、好ましくは、5質量%以上55質量%未満、更に好ましくは12質量%以上50質量%未満である。酸化物ナノ粒子の濃度が1質量%未満では、余分な分散媒が必要となるだけである。一方、60質量%以上の場合、均一に分散するのが難しく、白濁する傾向があるため好ましくない。なお、本発明による製造した粒子は、平均粒子径が20nm以下と非常に細かいため、上記溶媒に均一に分散させると透明性を保持することができる。
【0043】
当該分散体に更に可塑剤(「可塑剤C」と称する)を添加することができる。可塑剤Cとしては、特に限定はなく、例えば、リン酸トリブチル、リン酸2−エチルヘキシル等のリン酸エステル系可塑剤、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル系可塑剤、オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪族−塩基性エステル系可塑剤、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなどの二価アルコールエステル系可塑剤;アセチルリシノール酸メチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのオキシ酸エステル系可塑剤等の従来公知の可塑剤を挙げることができる。
【0044】
当該分散体は更にモノマーを添加することができる。モノマーとしては、特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系モノマーなど、従来公知のモノマーを挙げることができる。
【0045】
モノマー分散体における、無機ナノ微粒子の含有量については、特に限定はないが、好ましくは、モノマー分散体全体の2〜80重量%、さらに好ましくは5〜60重量%であり、この程度の含有量であれば、粘度等が低く取扱い易い。モノマー分散体は、無機ナノ粒子を分散含有してなる樹脂組成物、樹脂成形体等の用途に有用である。モノマー分散体の製造方法としては、たとえば、金属酸化物ナノ粒子をモノマーに添加して分散させる方法等を挙げることができる。
【0046】
第四の発明は、当該金属酸化物ナノ粒子、当該処理金属酸化物ナノ粒子を用いた光学材料である。当該粒子は粒子径が20nm以下であり、溶媒への分散性が優れている。この効果により導電性材料、紫外線遮断材料、透明膜、電磁波吸収体、光学材料、触媒材料など各種用途に幅広く用いることが可能である。特に酸化ジルコニウムナノ粒子は、正方晶の結晶構造を有し、平均粒子径が20nm以下、かつ各種溶媒への分散性に優れているため、光学材料用の屈折率制御材として好適に利用できる。
なお、使用する高分子バインダーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等を構成単位とするホモポリマー又は2つ以上のモノマーからなるコポリマー、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ラジカル重合性樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。モノマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニルモノマー等が挙げられる。
バインダーと酸化ジルコニウムナノ粒子および/または処理酸化ジルコニウムナノ粒子の分散方法としては、例えば、熱可塑性樹脂をバインダーとして酸化ジルコニウムナノ粒子および/または処理酸化ジルコニウムナノ粒子と混合する場合、具体的には、熱可塑性樹脂が溶解した溶液と、酸化ジルコニウムナノ粒子および/または処理酸化ジルコニウムナノ粒子が均一に分散した分散液の二液を均一に混合し、溶媒を減圧加熱除去する方法や、熱可塑性樹脂を溶融した状態で酸化ジルコニウムナノ粒子および/または処理酸化ジルコニウムナノ粒子粉末をそのまま配合して溶融混練する方法、熱可塑性樹脂を溶融した状態で酸化ジルコニウムナノ粒子および/または処理酸化ジルコニウムナノ粒子が均一に分散した分散液を配合して溶融混練後に溶媒を減圧加熱除去する方法等が挙げられる。
光学材料用途として、例えば、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズ、OHP用レンズ等)、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光学用接着剤、光ディスク基盤、ディスプレー基盤、コーティング材、プリズム等の用途に好適である。
なお本発明における分散の定義とは、10質量%となるように秤量した金属酸化物ナノ粒子粉体または処理金属酸化物ナノ粒子を試料溶媒に混合し、10分間の攪拌後、定量濾紙(アドバンテック東洋株式会社製 No.5C)により回収される粉体の量が、仕込み粉体量の3%未満となるものであり、平均粒子径20nm以下の粒子が凝集していないため、溶媒中において透明性を保持できるものである。
【実施例】
【0047】
実施例における各物性の測定は、次のように実施した。
【0048】
(BET比表面積)
酸化ジルコニウムの比表面積は、全自動BET比表面積測定装置(Mountech製 Macsorb Model1210)を使用し測定した。尚、吸着工程では液体窒素による冷却を行った。
【0049】
(定性分析)
金属酸化物の結晶状態の同定は、XRD(スペクトリス株式会社 全自動多目的X線回折装置 XPert Pro)を使用して行った。
【0050】
(粒子径)
金属酸化物ナノ粒子の粒子径測定は、FE−SEM(日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4800)を使用して行った。
【0051】
(実施例1)
テトラデカンとネオデカン酸を混合し、40質量%ネオデカン酸−テトラデカン溶液を調製した。次に、水を等量添加し、更にオキシ塩化ジルコニウムの試薬を溶媒に添加し、良く攪拌させながら60℃で1時間反応させた後、水層を分離することで、ネオデカン酸ジルコニウム溶液を調製する。
次に、攪拌機付きオートレーブ内に、ネオデカン酸ジルコニウム−テトラデカン溶液500ccと水500ccを混合したものを仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにて置換する。その後、175℃まで加熱し、3Hr反応させることにより、酸化物微粒子の合成を行った。昇温終了時の圧力は、0.9MPaGであった。
【0052】
反応後の溶液を取り出し、底部にたまった沈殿物をろ過により回収した。沈殿物をアセトンで洗浄し乾燥させた後、トルエンに分散させたところ、白濁の溶液となった。次に、精製工程として定量濾紙(アドバンテック東洋株式会社製 No.5C)にて再度ろ過を施し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。次に、ろ液中のトルエンを減圧乾燥させたところ、白色の粉体を回収することができた。
回収した粉体の粒子径をFE−SEMにて分析を実施したところ、平均粒子径5nmの酸化ジルコニウムナノ粒子を確認することができた。
また、白色粉体の結晶構造を確認するため、XRDにて確認したところ、正方晶の構造を有することが確認された。
合成後の酸化ジルコニウムナノ粒子10gをトルエン90gに分散させたところ、透明の分散液が得られた。
【0053】
(実施例2)
ドデカンと2−エチルヘキサン酸を混合し、40質量%エチルヘキサン酸−ドデカン溶液を調製する。次に、水を等量添加し、更に酢酸亜鉛の試薬を溶媒に添加し、良く攪拌させながら60℃で1時間反応させた後、水層を分離することで、2−ヘキサン酸亜鉛を調製する。
【0054】
次に、攪拌機付きオートレーブ内に、2−エチルヘキサン酸亜鉛−ドデカン溶液500ccと水500ccを混合したものを仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにて置換する。その後、150℃まで加熱し、3Hr反応させることにより、酸化物微粒子の合成を行った。そのときの反応圧力は、0.5MPaGであった。実施例1と同様に反応後の溶液に含まれる沈殿物を回収後、トルエンに分散させたところ、白濁の溶液となった。
次に、定量濾紙(アドバンテック東洋株式会社製 No.5C)を通過したろ過液からトルエンを減圧乾燥させたところ、白い色の粉体を回収することができた。
回収した粉体の粒子径をFE−SEMにて分析を実施したところ、平均粒子径10nmのナノ粒子を確認することができた。
【0055】
(実施例3)
テトラデカンとネオデカン酸を混合し、40質量%エチルヘキサン酸−テトラデカン溶液を調製する。次に、水を等量添加し、更に酢酸銅の試薬を溶媒に添加し、良く攪拌させながら40℃で1時間反応させた後、水層を分離することで、2−ヘキサン酸銅を調製する。
【0056】
次に、攪拌機付きオートレーブ内に、2−エチルヘキサン酸銅−テトラデカン溶液500ccと水500ccを混合したものを仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにて置換する。その後、120℃まで加熱し、3Hr反応させることにより、酸化物微粒子の合成を行った。そのときの反応圧力は、0.2MPaGであった。反応後の溶液に含まれる沈殿物を回収後、トルエンに分散させたところ、赤褐色の溶液となった。
次に、定量濾紙(アドバンテック東洋株式会社製 No.5C)を通過したろ過液からトルエンを減圧乾燥させたところ、赤茶色の粉体を回収することができた。
回収した粉体の粒子径をFE−SEMにて分析を実施したところ、平均粒子径15nmのナノ粒子を確認することができた。
【0057】
(実施例4)
テトラデカンとネオデカン酸を混合し、40質量%ネオデカン酸−テトラデカン溶液を調製した。次に、水を添加し、更にオキシ塩化ジルコニウムの試薬を溶媒に添加し、良く攪拌させながら60℃で1時間反応させた後、水層を分離することで、ネオデカン酸ジルコニウム溶液を調製する。次に、攪拌機付きオートレーブ内に、表1に示す割合で、ネオデカン酸ジルコニウム−テトラデカン溶液500ccと水を100cc混合したものを仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにて置換する。その後、175℃まで加熱し、3Hr反応させることにより、酸化物微粒子の合成を試みた。実施例1と同様の方法により粒子を回収した。平均粒子径は7nmとほぼ実施例と同等の結果であったが、粒子の合成量は、実施例1の1/5倍量と少なく、かつ正方晶と単斜晶の混在する酸化ジルコニウム粒子であった。
【0058】
(比較例1)
テトラデカンとネオデカン酸を混合し、40質量%ネオデカン酸−テトラデカン溶液を調製した。次に、水を添加し、更にオキシ塩化ジルコニウムの試薬を溶媒に添加し、良く攪拌させながら60℃で1時間反応させた後、水層を分離することで、ネオデカン酸ジルコニウム溶液を調製する。次に、攪拌機付きオートレーブ内に、ネオデカン酸ジルコニウム−テトラデカン溶液500ccを仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにて置換する。その後、175℃まで加熱し、3Hr反応させることにより、酸化物微粒子の合成を試みた。水を全く加えないで反応させたものは、粒子状物質の生成は確認されなかった。
【0059】
(実施例5)
金属酸化物ナノ粒子の表面を処理する工程である。実施例1で合成後の酸化ジルコニウムナノ粒子10gをトルエン90gに分散させた溶液に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−503)を1.5g添加した。上記溶液を80℃で1hr還流した後、減圧雰囲気下にて溶媒を除去し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理を施した酸化ジルコニウムナノ粒子を調製した。
【0060】
次に、表面処理した酸化ジルコニウム粒子5gをメチルイソブチルケトン50gに混合し攪拌したところ、処理酸化ジルコニウムナノ粒子分散液は透明であった。
表面処理を施した後の酸化ジルコニウム粒子をFT−IRにて分析したところ、表面処理前に認められたC−Hの結合(2800〜3000cm−1)と併せて、シランカップリング剤由来のSi−O−C(1000〜1130cm−1)が確認できた。
【0061】
(実施例6)
実施例1で合成後の酸化ジルコニウムナノ粒子10gをトルエン90gに分散させた溶液に、ヒドロキシステアリン酸を1.5g添加した。上記溶液を100℃で1hr還流した後、反応後の溶液は、透明であったが、アセトンを200g添加すると白濁した。凝集し白濁した粒子を濾紙にて分離回収後、50℃にて1hr乾燥し、ヒドロキシステアリン酸処理した酸化ジルコニウム粒子を調製した。次に、表面処理した酸化ジルコニウム粒子5gをエタノール50gに混合し攪拌したところ、処理酸化ジルコニウムナノ粒子分散液は透明であった。
【0062】
同様の調製方法で調製した処理酸化ジルコニウムナノ粒子をMMAモノマー、酢酸ブチル、MIBKに分散させたところ、処理酸化ジルコニウム粒子分散液は透明であった。
【0063】
(実施例7)
実施例1で合成後の酸化ジルコニウムナノ粒子10gをトルエン90gに分散させた溶液に、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸を1.5g添加した。
上記溶液を80℃で1hr還流した後、減圧雰囲気下にて溶媒を除去し、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸にて表面処理を施した処理酸化ジルコニウムナノ粒子を調製した。
【0064】
次に、処理酸化ジルコニウムナノ粒子5gをMMAモノマー50gに混合し攪拌したところ、処理酸化ジルコニウムナノ粒子分散液は透明であった。同様に処理酸化ジルコニウムナノ粒子5gをシクロヘキサノンに混合し攪拌したところ、処理酸化ジルコニウムナノ粒子分散液は透明であった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、分散安定性に優れた金属酸化物ナノ粒子および/または金属酸化物ナノ粒子分散体を低コストかつ工業的規模で製造することができるものであり、当該ナノ粒子または/および分散体を用いた光学材料に使用する技術である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水層および金属酸化物前駆体を含む有機層とを含む液を1MPaG未満で反応させることを特徴とする平均粒子径が20nm以下の金属酸化物ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
(水層の仕込み体積)/(有機層の仕込み体積)が、0.3以上4未満であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
有機層に含まれる溶媒Aの沸点が、120℃以上であることを特徴とする請求項1〜2に記載の金属酸化物ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜4に記載金属酸化物ナノ粒子が、Al、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Hf、La、Ce、Nd、Smから選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物であることを特徴とする金属酸化物ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
平均粒子径が20nm以下、結晶状態が正方晶及び/または単斜晶である金属酸化物ナノ粒子
【請求項6】
金属酸化物ナノ粒子を、アミノ基、チオール基、ビニル基、カルボキシル基、エポキシ基、OR基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物で処理することを特徴とする処理金属酸化物ナノ粒子。
【請求項7】
請求項1〜4記載の方法により得られることを特徴とする平均粒子径が20nm以下の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の金属酸化物ナノ粒子を溶媒Bに分散させたことを特徴とする金属酸化物ナノ粒子分散体。
【請求項9】
請求項7に記載の金属酸化物ナノ粒子を、アミノ基、チオール基、ビニル基、カルボキシル基、エポキシ基、OR基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する化合物で処理することを特徴とする処理金属酸化物ナノ粒子。
【請求項10】
請求項9に記載の処理金属酸化物ナノ粒子を溶媒Cに分散させたことを特徴とする処理金属酸化物ナノ粒子分散体。
【請求項11】
請求項7記載の金属酸化物ナノ粒子または請求項9記載の処理金属酸化物ナノ粒子を用いることを特徴とする光学材料。

【公開番号】特開2008−24524(P2008−24524A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195215(P2006−195215)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】