説明

金属酸化物ポリマー被覆微粒子およびその製造方法

【課題】例えば、塗料組成物に配合した場合に、塗膜の劣化を防止し、塗膜の耐候性が著しく向上する添加剤として有用な金属酸化物ポリマー被覆微粒子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆してなる金属酸化物ポリマー被覆微粒子であって、該被覆ポリマーがヒンダードアミン系光安定剤を含有することを特徴とする。このような金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、水性媒体中、数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーおよびラジカル開始剤を用いた乳化重合を行うにあたり、反応系内にヒンダードアミン系光安定剤を存在させることにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物ポリマー被覆微粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物は、例えば、紫外線遮断能に優れていることから、紫外線遮断剤として、塗料組成物などに用いられてきた。紫外線遮断剤は、例えば、塗料組成物に配合する場合には、塗膜の透明性を要求されることがあるが、これらの金属酸化物は、一般に、屈折率が高いので、塗膜の透明性を確保するためには、粒子径が150nm以下の微粒子として塗料組成物中に分散していることが必要となる。
【0003】
ところが、酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物は、粒子径が小さくなると、表面積が大きくなり、光触媒活性が高くなるので、塗膜の劣化を引き起こす。そこで、例えば、特許文献1には、酸化亜鉛の表面をシランカップリング剤で被覆処理することが提案されている。また、特許文献2には、酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物の表面をシリカで被覆処理することが提案されている。しかし、これらの手法では、光触媒活性を有する金属酸化物の活性点を完全に遮断することが困難であるので、塗膜の劣化を防止する効果は低い。
【0004】
他方、塗膜の劣化を防止するために、例えば、特許文献3には、塗料組成物のバインダー成分にヒンダードアミン系光安定剤を共重合させることが提案されている。確かに、この手法は、塗料組成物に紫外線遮断剤を配合しない場合には、塗膜の劣化を効果的に防止することができる。しかし、塗料組成物に、紫外線遮断剤として、酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物の微粒子を配合した場合には、塗膜の劣化を充分に防止することはできない。
【特許文献1】特許第3485643号公報
【特許文献2】特開2004−115541号公報
【特許文献3】特許第2637574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、例えば、塗料組成物に配合した場合に、塗膜の劣化を防止し、塗膜の耐候性が著しく向上する添加剤として有用な金属酸化物ポリマー被覆微粒子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々検討の結果、数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆してなる金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、該被覆ポリマーにヒンダードアミン系光安定剤を共重合させるか、および/または、該被覆ポリマーにヒンダードアミン系光安定剤を分散させれば、上記課題が解決されることを見出して、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆してなる金属酸化物ポリマー被覆微粒子であって、該被覆ポリマーがヒンダードアミン系光安定剤を含有することを特徴とする金属酸化物ポリマー被覆微粒子を提供する。
【0008】
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、さらに詳しくは、前記ヒンダードアミン系光安定剤は、前記被覆ポリマーに共重合されているか、および/または、前記被覆ポリマーに分散している。
【0009】
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、前記ヒンダードアミン系光安定剤は、好ましくは、下記式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、Rは水素原子またはシアノ基、Xは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、または下記式(2):
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基を表す]
で示される置換基を表す]
で示される4−ピペリジニル基を有する。
【0014】
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、前記金属酸化物微粒子は、好ましくは、酸化亜鉛系微粒子、酸化チタン微粒子、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子およびシリカ被覆酸化チタン微粒子よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0015】
また、本発明は、上記のような金属酸化物ポリマー被覆微粒子を含むことを特徴とする塗料組成物、ならびに、上記のような金属酸化物ポリマー被覆微粒子を含む樹脂組成物を、板、シート、フィルムおよび繊維から選択されるいずれかの形状に成形してなることを特徴とする樹脂成形品を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、上記のような金属酸化物ポリマー被覆微粒子を製造する方法であって、水性媒体中、数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーおよびラジカル開始剤を用いた乳化重合を行うにあたり、反応系内にヒンダードアミン系光安定剤を存在させることを特徴とする製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子によれば、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーがヒンダードアミン系光安定剤を含有するので、光触媒活性を有する金属酸化物の近傍にヒンダードアミン系光安定剤が局在化し、金属酸化物の光触媒作用により発生するフリーラジカルや活性酸素を捕捉して不活性化することから、光触媒活性を有する金属酸化物が本来発揮する紫外線遮断効果と相俟って、塗膜の劣化が防止されることにより、塗膜の耐候性が著しく向上した塗料組成物、ならびに、耐候性に優れた樹脂成形品を与える樹脂組成物を得ることができる。また、本発明による金属酸化物ポリマー被覆微粒子の製造方法によれば、水性媒体中、金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーおよびラジカル開始剤を用いた乳化重合を行うにあたり、反応系内にヒンダードアミン系光安定剤を存在させるだけであるので、上記のように優れた性能を有する金属酸化物ポリマー被覆微粒子を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
≪金属酸化物ポリマー被覆微粒子≫
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆してなる金属酸化物ポリマー被覆微粒子であって、該被覆ポリマーがヒンダードアミン系光安定剤(以下「HALS」ということがある。)を含有することを特徴とする。
【0019】
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、金属酸化物微粒子の表面がポリマーで被覆されている。ここで、「ポリマーで被覆されている」とは、金属酸化物微粒子の表面全体がポリマーで実質的に切れ目なく覆われていることを意味する。
【0020】
被覆ポリマーとしては、下記の製造方法に関する説明で述べるように、水性媒体中、金属酸化物微粒子、好ましくはカップリング剤で処理した金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーを乳化重合することにより、金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆することができるものである限り、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、これらの共重合体などが挙げられる。これらのポリマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのポリマーのうち、上記のような重合反応が容易に行えることから、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、これらの共重合体が好適である。
【0021】
金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、単一のポリマーで被覆されていても2種以上のポリマーで被覆されていてもよく、また、被覆ポリマーが同じ1種類の微粒子から構成されていても被覆ポリマーが異なる2種類以上の微粒子から構成されていてもよい。
【0022】
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、HALSは、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーに含有されている。さらに詳しくは、HALSは、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーに共重合されているか、および/または、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーに分散されている。HALSが重合性の不飽和二重結合を有する場合(以下「共重合タイプ」ということがある。)には、HALSは被覆ポリマーに共重合されているが、HALSが重合性の不飽和二重結合を有しない場合(以下「添加タイプ」ということがある。)には、HALSは被覆ポリマーに分散している。金属酸化物微粒子の被覆ポリマーにHALSを含有させるには、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を製造するにあたり、水性媒体中、HALSの存在下で乳化重合を行えばよい。この場合、共重合タイプのHALSを用いれば、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーにHALSが共重合され、また、添加タイプのHALSを用いれば、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーにHALSが分散されることになる。
【0023】
乳化重合に先立ってカップリング剤で処理した金属酸化物微粒子を用いる場合には、得られた金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、被覆ポリマーは、カップリング剤を介して、金属酸化物微粒子の表面に化学結合している。ここで、「化学結合」とは、主として共有結合を意味するが、例えば、異なる原子間の共有結合は多少ともイオン結合の性格を帯びることがあるので、本発明でいう「化学結合」は、共有結合とイオン結合とが共鳴している場合を包含する。しかし、本発明でいう「化学結合」は、例えば、静電引力、分散力、水素結合、電荷移動力などの分子間に働く弱い結合は包含しない。また、「カップリング剤を介して・・・化学結合している」とは、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基とカップリング剤とが化学結合し、前記カップリング剤と被覆ポリマーとが化学結合していることを意味する。
【0024】
乳化重合に先立ってカップリング剤で処理した金属酸化物微粒子を用いる場合には、金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、被覆ポリマーがカップリング剤を介して金属酸化物微粒子の表面に化学結合しているので、金属酸化物微粒子と被覆ポリマーとが強固に接合されており、金属酸化物微粒子と被覆ポリマーとの間に雨水などが侵入することがなく、優れた耐水性を発揮する。
【0025】
一般に、樹脂は、紫外線により発生するフリーラジカルや活性酸素などにより劣化するが、HALSは、このようなフリーラジカルや活性酸素を捕捉して不活性化する能力を有する。それゆえ、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーがHALSを含有するので、光触媒活性を有する金属酸化物の近傍にHALSが局在化し、金属酸化物の光触媒作用により発生するフリーラジカルや活性酸素を捕捉して不活性化することから、バインダー成分にHALSを共重合させたり、HALSを添加したりする従来技術の場合に比べて、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物に配合した場合には、塗膜の耐候性が著しく向上し、また、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を樹脂組成物に配合した場合には、耐候性に優れた樹脂成形品を得ることができる。
【0026】
金属酸化物ポリマー被覆微粒子の数平均粒子径は、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物や樹脂組成物に配合する場合に、透明性が要求されるのであれば、その下限が好ましくは10nm、より好ましくは15nm、さらに好ましくは20nmであり、また、その上限が好ましくは300nm、より好ましくは250nm、さらに好ましくは200nmである。金属酸化物ポリマー被覆微粒子の数平均粒子径が10nm未満であると、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物に配合した場合に、塗膜の耐候性を向上させる効果が小さいことがある。逆に、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の数平均粒子径が300nmを超えると、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物や樹脂組成物に配合した場合に、基材樹脂の透明性を損なうことがある。
【0027】
また、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の数平均粒子径は、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物や樹脂組成物に配合する場合に、隠蔽性が要求されるのであれば、その下限が好ましくは300nm、より好ましくは250nm、さらに好ましくは200nmであり、また、その上限が好ましくは1,000nm、より好ましくは800nm、さらに好ましくは600nmである。この場合、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の数平均粒子径が300nm未満であると、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物や樹脂組成物に配合した場合に、充分な隠蔽性が得られないことがある。逆に、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の数平均粒子径が1,000nmを超えると、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物や樹脂組成物に配合した場合に、塗膜や樹脂成形品の表面平滑性が損なわれることがある。
【0028】
なお、本発明において、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の数平均粒子径は、下記の実施例に記載する方法で測定した値であるが、「一次粒子径」とは、特に断らない限り、金属酸化物微粒子の場合と同様に定義される意味を有する。ただし、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子には、金属酸化物微粒子の一次粒子(すなわち、単一の微粒子)がポリマーで被覆されている場合と、金属酸化物微粒子の二次粒子(すなわち、2個以上の微粒子が凝集した微粒子集団)がポリマーで被覆されている場合とがあるが、いずれの金属酸化物ポリマー被覆粒子も一次粒子である。
【0029】
<ヒンダードアミン系光安定剤>
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、ヒンダードアミン系光安定剤、すなわちHALSは、好ましくは、下記式(1):
【0030】
【化3】

【0031】
[式中、Rは水素原子またはシアノ基、Xは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、または下記式(2):
【0032】
【化4】

【0033】
[式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基を表す]
で示される置換基を表す]
で示される4−ピペリジニル基を有する。HALSは、上記式(1)で示される4−ピペリジニル基を有することにより、紫外線により発生するフリーラジカルや活性酸素などを不活性化することができる。HALSにおいて、上記式(1)で示される4−ピペリジニル基以外の部分は、光安定剤としての性能を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、様々な有機残基であり得る。
【0034】
上記式(1)において、Xで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、へプチル基、オクチル基などで代表される直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。
【0035】
上記式(1)において、Xで表される炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などで代表される直鎖状、分岐状または環状のアルコキシ基が挙げられる。
【0036】
上記式(2)において、RまたはRで示される炭素数1〜2のアルキル基とは、メチル基またはエチル基である。
【0037】
本発明において、HALSは、上記式(1)で示される4−ピペリジニル基が結合する有機残基が重合性の二重結合を有するか、および/または、上記式(1)で示される4−ピペリジニル基において、Xが上記式(2)で示される置換基である場合には、共重合タイプといい、上記式(1)で示される4−ピペリジニル基が結合する有機残基が重合性の二重結合を有せず、かつ、上記式(1)で示される4−ピペリジニル基において、Xが上記式(2)で示される置換基でない場合には、添加タイプということがある。
【0038】
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、HALSは、共重合タイプまたは添加タイプのいずれを用いてもよく、また、共重合体タイプおよび添加タイプを併用してもよい。被覆ポリマーにHALSを共重合させた方が、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物に配合した場合に、塗膜の耐候性を向上させる効果が高いので、共重合タイプを用いることが好ましい。
【0039】
具体的な化合物名を挙げて例示的に説明するならば、共重合体タイプのHALSとしては、例えば、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(アデカスタブLA−87、(株)ADEKA製)、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(アデカスタブLA−82、(株)ADEKA製)、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。これらのHALSは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
具体的な化合物名を挙げて例示的に説明するならば、添加タイプのHALSとしては、例えば、デカン二酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)エステル(TINUVIN(登録商標)123、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、2−ブチル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)マロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(TINUVIN(登録商標)144、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(TINUVIN(登録商標)152、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)とセバシン酸1−メチル−8−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)との混合物(TINUVIN(登録商標)292、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。これらのHALSは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記したように、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、HALSは、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーに含有されている。この場合、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の製造時に使用したHALSは、実質的にすべてが金属酸化物微粒子の被覆ポリマーに含有され、溶媒中には、実質的に残存しない。それゆえ、被覆ポリマー中のHALS含有量は、式:[HALSの使用量/重合性モノマーの使用量とHALSの使用量の合計]×100を用いて算出される値(単位は質量%)として定義され、その下限が好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.5質量%、さらに好ましくは1質量%であり、また、その上限は好ましくは20質量%、より好ましくは15質量%、さらに好ましくは10質量%である。被覆ポリマー中のHALS含有量が0.1質量%未満であると、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物に配合した場合に、塗膜の耐候性を向上させる効果が小さいことがある。逆に、被覆ポリマー中のHALS含有量が20質量%を超えると、必要以上にHALSを使用することになり、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物に配合した場合に、塗膜の耐候性を向上させる効果が飽和すると共に、製造コストが上昇することがある。
【0042】
<金属酸化物微粒子>
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子において、金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、三酸化タングステン、酸化セリウムなどの金属酸化物;酸化亜鉛/酸化チタン複合酸化物などの複合金属酸化物;シリカ被覆酸化亜鉛、シリカ被覆酸化チタンなどのシリカ被覆金属酸化物;などの微粒子が挙げられる。これらの金属酸化物微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの金属酸化物微粒子のうち、酸化亜鉛系微粒子、酸化チタン微粒子、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子、および、シリカ被覆酸化チタン微粒子が好適である。
【0043】
これらの金属酸化物微粒子は、従来公知の方法により、自ら調製してもよいし、市販品を利用してもよい。自ら調製する場合、酸化亜鉛系微粒子は、後述する方法で調製することができる。シリカ被覆酸化亜鉛微粒子およびシリカ被覆酸化チタンは、下記の実施例に記載する方法、あるいは、例えば、特開平11−302015号公報や特開2003−252916号公報に記載された方法を用いて調製することができる。他方、市販品を利用する場合、酸化亜鉛系微粒子としては、例えば、堺化学工業(株)製の「FINEX−25」、「FINEX−50」、「FINEX−75」、本荘ケミカル(株)製の「ナノジンク60」、ハクスイテック(株)製の「ZINCOX SUPER F2」などが挙げられる。また、酸化チタン微粒子としては、例えば、昭和電工(株)製の「NTBナノチタニア(登録商標)」、石原産業(株)製の「超微粒子酸化チタンTTO−Vシリーズ」、堺化学工業(株)製の「STR−100C」などが挙げられる。シリカ被覆酸化亜鉛微粒子としては、例えば、堺化学工業(株)製の「NANOFINE−50A」、昭和電工(株)製の「マックスライト(登録商標)ZS−032」、住友大阪セメント(株)製の「SIH−20 ZnO−350」などが挙げられる。シリカ被覆酸化チタン微粒子としては、例えば、昭和電工(株)製の「マックスライト(登録商標)TS−01」、「マックスライト(登録商標)TS−04」、「マックスライト(登録商標)TS−043」、「マックスライト(登録商標)F−TS20」などが挙げられる。
【0044】
本発明において、「酸化亜鉛系微粒子」とは、酸化亜鉛を主成分とし、必要に応じて、長周期型周期表の13族金属元素および14族金属元素よりなる群から選択された少なくとも1種の金属元素を含有する微粒子であって、X線結晶学的に見て酸化亜鉛(ZnO)の結晶構造を有する微粒子を意味する。ここで、「X線結晶学的に見て」とは、微粒子のX線回折パターンが酸化亜鉛(ZnO)粉末の回折パターンと実質的に同一であることを意味する。酸化亜鉛(ZnO)の結晶構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、六方晶系のウルツ鉱構造、立方晶系の食塩構造、立方晶面心構造などが知られており、いずれの結晶構造であってもよい。
【0045】
酸化亜鉛系微粒子における亜鉛原子の含有量は、全ての金属原子数に対する亜鉛原子数の割合で、その下限が好ましくは80%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%であり、また、その上限が好ましくは100%、より好ましくは99.9%、さらに好ましくは99.5%である。亜鉛原子の含有量が80%未満であると、粒子形状や粒子径などが制御された均一な微粒子になりにくいことがある。
【0046】
必要に応じて、酸化亜鉛に添加される長周期型周期表の13族金属元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムが挙げられ、また、14族金属元素としては、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛が挙げられる。なお、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウムは、一般的には、金属元素ではなく半金属元素と呼ばれるが、本発明においては、金属元素の範疇に含める。これらの金属元素は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの金属元素のうち、アルミニウム、インジウムが好適である。
【0047】
酸化亜鉛は、紫外線を有効に遮断するが、近赤外線を遮断することはできない。他方、長周期型周期表の13族金属元素や14族金属元素の酸化物も近赤外線を遮断することはできない。しかし、長周期型周期表の13族金属元素や14族金属元素を添加して酸化亜鉛とこれらの金属元素とを含有する結晶性共沈物を形成すると、亜鉛と添加した金属元素との相乗作用により、近赤外線を有効に遮断することができるようになる。ここで、「紫外線を有効に遮断する」とは、紫外線のうち、360nm以上の波長に吸収端を有する吸収性を意味し、「近赤外線を有効に遮断する」とは、赤外線のうち、2.0μm以下にカットオフ波長を有する遮断性を意味する。
【0048】
上記の場合、酸化亜鉛系微粒子は、結晶性共沈物であることが重要である。非結晶性であれば共沈物であっても近赤外線を遮断することはできず、また、非結晶性共沈殿物を焼成して結晶化した酸化亜鉛系微粒子は、結晶性であるが近赤外線を遮断することはできない。また、酸化亜鉛に長周期型周期表の13族金属元素や14族金属元素を添加すると、酸化亜鉛に導電性を付与することができるので、得られた酸化亜鉛系微粒子は、帯電防止性を有するようになる。
【0049】
金属酸化物微粒子の形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、球状、楕円体状、多角体状などの粒状;鱗片状、(六角)板状などの薄片状;針状、柱状、棒状、筒状;などが挙げられる。これらの形状は、単独で存在していても2種以上が混在していてもよい。これらの形状のうち、球状、楕円体状、多角体状などの粒状が好適である。
【0050】
金属酸化物微粒子の数平均粒子径は、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物や樹脂組成物に配合する場合に、透明性が要求されるのであれば、その下限が通常は1nm、好ましくは5nm、より好ましくは8nm、さらに好ましくは10nmであり、また、その上限が通常は150nm、好ましくは100nm、より好ましくは80nm、さらに好ましくは50nmである。この場合、金属酸化物微粒子の数平均粒子径が1nm未満であると、金属酸化物微粒子が凝集して高次構造を形成するので、所定の数平均粒子径を有する金属酸化物ポリマー被覆微粒子を得るのが困難になることがある。逆に、金属酸化物微粒子の数平均粒子径が150nmを超えると、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の数平均粒子径が大きくなり、例えば、水分散体を塗料組成物や樹脂組成物に配合した場合に、基材樹脂の透明性を損なうことがある。
【0051】
また、金属酸化物微粒子の数平均粒子径は、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物や樹脂組成物に配合する場合に、隠蔽性が要求されるのであれば、その下限が通常は150nm、好ましくは170nm、より好ましくは200nmであり、また、その上限が通所は500nm、好ましくは400nm、より好ましくは300nmである。この場合、金属酸化物微粒子の数平均粒子径が150nm未満であると、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物や樹脂組成物に配合した場合に、充分な隠蔽性が得られないことがある。逆に、金属酸化物微粒子の数平均粒子径が500nmを超えると、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物や樹脂組成物に配合した場合に、塗膜や樹脂成形品の表面平滑性が損なわれることがある。
【0052】
なお、本発明において、金属酸化物微粒子の数平均粒子径は、下記の実施例に記載する方法で測定した値であるが、「一次粒子径」とは、特に断らない限り、一次粒子の最短部の粒子径を意味し、「最短部の粒子径」とは、一次粒子の中心を通る最短の長さを意味する。例えば、金属酸化物微粒子の形状が球状であれば、球の直径を意味し、形状が楕円体状であれば、短径および長径のうち、短径を意味し、形状が多角体状であれば、一次粒子の中心を通る最短の長さを意味し、形状が鱗片状、(六角)板状などの薄片状であれば、板面方向に垂直な方向(すなわち、厚さ方向)において、一次粒子の中心を通る最短の長さ(=厚さ)を意味し、形状が針状、柱状、棒状、筒状などであれば、長さ方向に対して垂直方向に測定される一次粒子の中心を通る最短の長さを意味する。
【0053】
一般に、上記のような金属酸化物微粒子は、数平均粒子径が小さくなるほど、表面積が大きくなり、光触媒活性が高くなるので、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物に配合した場合に、塗膜の劣化に大きい影響を及ぼす。それゆえ、光触媒活性を有する金属酸化物の近傍にHALSを局在化させる本発明の手法は、特に、金属酸化物微粒子の数平均粒子径が1nm以上、150nm以下である場合に、非常に大きい効果を発揮する。
【0054】
<金属酸化物ポリマー被覆微粒子水分散体>
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、例えば、水性塗料組成物に配合する場合には、水分散体(以下「本発明の水分散体」ということがある。)の形態であることが好ましい。本発明の水分散体を得るには、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を水性媒体中に分散させてもよいが、より簡便には、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を製造するにあたり、水性媒体中、HALSの存在下で乳化重合を行えば、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子が水分散体の形態で得られる。
【0055】
本発明の水分散体は、水性媒体中に、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を含有する。本発明の水分散体における金属酸化物ポリマー被覆微粒子の含有量は、水分散体の全質量に対して、例えば、その下限が好ましくは1質量%、より好ましくは5質量%、さらに好ましくは10質量%であり、また、その上限が好ましくは80質量%、より好ましくは70質量%、さらに好ましくは60質量%である。金属酸化物ポリマー被覆微粒子の含有量が1質量%未満であると、必要以上に分散媒を用いることになり、製造コストが上昇することがある。逆に、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の含有量が80質量%を超えると、金属酸化物ポリマー被覆微粒子が凝集して高次構造を形成するので、分散性が低下することがある。
【0056】
本発明の水分散体は、使用目的に応じて、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、分散剤などの添加剤を通常の添加量で含有することができる。
【0057】
≪金属酸化物ポリマー被覆微粒子の製造方法≫
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を製造する方法(以下、単に「本発明の製造方法」ということがある。)は、水性媒体中、数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーおよびラジカル開始剤を用いた乳化重合を行うにあたり、反応系内にHALSを存在させることを特徴とする。なお、前記金属酸化物微粒子は、好ましくは、乳化重合に先立ってカップリング剤で処理されている。
【0058】
本発明の製造方法に用いる金属酸化物微粒子は、上記したように、従来公知の方法により、自ら調製してもよいし、市販品を利用してもよい。ここでは、酸化亜鉛系微粒子の調製法について、以下に詳しく説明する。
【0059】
<酸化亜鉛系微粒子の調製>
酸化亜鉛系微粒子は、亜鉛成分とモノカルボン酸とを少なくともアルコールを含有する媒体中に溶解または分散した混合物を100℃以上、300℃以下の温度で保持することにより、結晶性共沈物として調製することができる。なお、長周期型周期表の13族金属元素および14族金属元素よりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を添加する場合には、前記混合物を100℃以上、300℃以下の温度で保持するにあたり、前記金属元素を含む金属成分、例えば、金属単体、合金、金属化合物など(以下、これらを一括して「金属化合物」ということがある。)を共存させればよい。亜鉛成分は、モノカルボン酸とアルコールとを含む前記混合物を加熱することにより、結晶性酸化亜鉛の微粒子に変換されるが、このとき、前記混合物中に金属化合物を共存させれば、前記金属元素を含有するが、X線結晶学的に見て酸化亜鉛の結晶構造を有する微粒子が得られる。
【0060】
亜鉛成分としては、例えば、亜鉛末などの金属亜鉛;亜鉛華などの酸化亜鉛;水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などの無機;酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、乳酸亜鉛、酒石酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛などのモノ−またはジ−カルボン酸塩;などが挙げられる。これらの亜鉛成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの亜鉛成分のうち、安価で取り扱いが容易であることから、亜鉛末などの金属亜鉛、亜鉛華などの酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、酢酸亜鉛が好適であり、結晶性共沈物の生成反応を阻害するような不純物を実質的に含有せず、しかも酸化亜鉛系微粒子の大きさと形状とを制御しやすいことから、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛が特に好適である。
【0061】
亜鉛成分の使用量は、亜鉛成分、モノカルボン酸、および少なくともアルコールを含む媒体の合計量に対して、酸化亜鉛に換算して、その下限が好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.5質量%、さらに好ましくは1質量%であり、また、その上限が好ましくは95質量%、より好ましくは50質量%、さらに好ましくは30質量%である。亜鉛成分の使用量が0.1質量%未満であると、生産性が低下することがある。逆に、亜鉛成分の使用量が95質量%を超えると、微粒子の凝集が起こりやすく、分散性が良好で粒度分布が狭い微粒子が得られないことがある。
【0062】
モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸(飽和モノカルボン酸);アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸(不飽和モノカルボン酸);シクロヘキサンカルボン酸などの環式飽和モノカルボン酸;安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸などの芳香族モノカルボン酸;無水酢酸などの前記モノカルボン酸無水物;トリフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、o−クロロ安息香酸などのハロゲン含有モノカルボン酸;乳酸などの水酸基含有モノカルボン酸;などである。これらのモノカルボン酸は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのモノカルボン酸のうち、酸化亜鉛系微粒子の析出反応を厳密に制御し易いことから、1気圧で200℃以下の沸点を有する飽和脂肪酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸が好適である。
【0063】
媒体に用いられるアルコールは、脂肪族1価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール)、脂肪族不飽和1価アルコール(例えば、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール)、脂環式1価アルコール(例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール)、芳香族1価アルコール(例えば、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール)、複素環式1価アルコール(例えば、フルフリルアルコール)などの1価アルコール類;アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール)、芳香環を有する脂肪族グリコール類(例えば、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール)、脂環式グリコール類(例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール)、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)などのグリコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテートなどの前記グリコール類のモノエーテルおよびモノエステル;ヒドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオールならびにこれらのモノエーテルおよびモノエステル;グリセリンなどの3価アルコールならびにこれらのモノエーテル、モノエステル、ジエーテルおよびジエステル;などが挙げられる。これらのアルコールは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0064】
媒体におけるアルコールの使用量は、特に限定されるものではないが、酸化亜鉛系微粒子の生成反応を短時間で行わせるためには、亜鉛成分に由来する亜鉛原子に対するアルコールのモル比で、その下限が好ましくは1、より好ましくは5、さらに好ましくは10であり、また、その上限が好ましくは100、より好ましくは80、さらに好ましくは50である。アルコールの使用量が前記モル比で1未満であると、結晶性が良好な酸化亜鉛系微粒子が得られず、形状および粒子径の均一性、分散性に優れる微粒子が得られないことがある。逆に、アルコールの使用量が前記モル比で100を超えると、必要以上にアルコールを用いることになり、製造コストが上昇することがある。
【0065】
少なくともアルコールを含む媒体としては、アルコールのみからなる媒体;アルコールと水との混合溶媒;アルコールと、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、エーテル類などの、アルコール以外の有機溶剤との混合溶媒;などが挙げられる。アルコールの含有量は、媒体の全質量に対して、その下限が好ましくは5質量%、より好ましくは30質量%、さらに好ましくは60質量%であり、また、その上限が好ましくは100重量%である。アルコールの含有量が5質量%未満であると、結晶性、形状および粒子径の均一性、分散性に優れる微粒子が得られないことがある。
【0066】
添加される金属元素を含む金属化合物としては、例えば、金属単体、合金などの金属;酸化物;水酸化物;(塩基性)炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物(例えば、フッ化物、塩化物)などの無機塩類;酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ラウリン酸塩などのカルボン酸塩;金属アルコキシド類;β−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ケトエステル、ケトアルコール、アミノアルコール、グリコール、キノリンなどを配位子とする金属キレート化合物;などの3価または4価の金属元素を含む化合物が挙げられる。なお、インジウム、タリウムなどのように、複数の原子価を取りうる金属元素の場合には、酸化亜鉛系微粒子が生成する過程で、最終的に3価または4価に変化し得る低原子価の金属を含む金属化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物が用いられる。
【0067】
長周期型周期表の13族金属元素として、ホウ素を用いる場合には、ホウ素を含む金属化合物として、例えば、ボロントリオキシド、ホウ酸、シュウ化ホウ素、ボロントリフルオライドジエチルエーテル錯体、ボロントリフルオライドモノエチルアミン錯体、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリエトキシボラン、トリ−n−ブチルボラートなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0068】
長周期型周期表の13族金属元素として、アルミニウムを用いる場合には、アルミニウムを含む金属化合物として、例えば、アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムラウレート、アルミニウムステアレート、ジイソプロポキシアルミニウムステアレート、エチルアセトアセテ−トアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0069】
長周期型周期表の13族金属元素として、ガリウムを用いる場合には、ガリウムを含む金属化合物として、例えば、ガリウム、水酸化ガリウム(III)、酸化ガリウム(III)、塩化ガリウム(III)、臭化ガリウム(III)、硝酸ガリウム(III)、硫酸ガリウム(III)、硫酸ガリウムアンモニウム、トリエトキシガリウム、トリ−n−ブトキシガリウムなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0070】
長周期型周期表の13族金属元素として、インジウムを用いる場合には、インジウムを含む金属化合物として、例えば、インジウム、酸化インジウム(III)、水酸化インジウム(III)、硫酸インジウム(III)、塩化インジウム(III)、フッ化インジウム(III)、ヨウ化インジウム(III)、インジウムイソプロポキシド、酢酸インジウム(III)、トリエトキシインジウム、トリ−n−ブトキシインジウムなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0071】
長周期型周期表の13族金属元素として、タリウムを用いる場合には、タリウムを含む金属化合物として、例えば、タリウム、酸化タリウム(I)、酸化タリウム(III)、塩基性水酸化タリウム(I)、塩化タリウム(I)、ヨウ化タリウム(I)、硝酸タリウム(I)、硫酸タリウム(I)、硫酸水素タリウム(I)、塩基性硫酸タリウム(I)、酢酸タリウム(I)、ギ酸タリウム(I)、マロン酸タリウム(I)、塩化タリウム(III)、硝酸タリウム(III)、炭酸タリウム(III)、硫酸タリウム(III)、硫酸水素タリウム(III)などが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0072】
長周期型周期表の14族金属元素として、ケイ素を用いる場合には、ケイ素を含む金属化合物として、例えば、ケイ素;二酸化ケイ素;テトラメトキシシラン、テトラエトキキシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ステアリルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン類;テトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシランなどのクロロシラン類;トリアセトキシシランなどのアセトキシシラン類;などが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0073】
長周期型周期表の14族金属元素として、ゲルマニウムを用いる場合には、ゲルマニウムを含む金属化合物として、例えば、ゲルマニウム、酸化ゲルマニウム(IV)、塩化ゲルマニウム(IV)、ヨウ化ゲルマニウム(IV)、酢酸ゲルマニウム(IV)、塩化ゲルマニウム(IV)ビビリジル錯体、β−カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシドなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0074】
長周期型周期表の14族金属元素として、スズを用いる場合には、スズを含む金属化合物として、例えば、スズ、酸化スズ(IV)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(IV)、ジ−n−ブチルスズジクロライド、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズマレート(重合体)、ジ−n−ブチルスズオキシド、ジ−n−メチルスズジクロライド、ジ−n−オクチルスズマレート(重合体)、ジ−n−オクチルスズオキシド、ジフェニルスズジクロライド、モノ−n−ブチルスズオキシド、テトラ−n−ブチルスズ、シュウ酸スズ(II)、トリ−n−ブチルスズアセテート、トリ−n−ブチルスズエトキシド、トリメチルスズクロライド、トリフェニルスズアセテート、トリフェニルスズヒドロキシド、テトラエトキシスズ、テトラ−n−ブトキシスズなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0075】
長周期型周期表の14族金属元素として、鉛を用いる場合には、鉛を含む金属化合物として、例えば、鉛、酢酸鉛(IV)、塩化鉛(IV)、フッ化鉛(IV)、酸化鉛(IV)、酸化鉛(II+IV)、シュウ酸鉛(II)などが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0076】
なお、添加される金属元素の酸化物や水酸化物としては、粉末状でもよいが、アルミナゾル、シリカゾルなどのコロイダル状の金属酸化物や金属水酸化物の水性ゾルやアルコールゾルなどを用いることもできる。
【0077】
酸化亜鉛系微粒子の調製は、具体的には、(1)亜鉛成分とモノカルボン酸とを含有する混合物を調製する工程、(2)得られた混合物を少なくともアルコールを含有する媒体と混合することにより、亜鉛成分とモノカルボン酸とが少なくともアルコールを含有する媒体中に溶解または分散している混合物を調製する工程、(3)得られた混合物を100℃以上、300℃以下の温度に保持することにより、酸化亜鉛の結晶性共沈物からなる酸化亜鉛系微粒子を得る工程を包含する。長周期型周期表の13族金属元素および14族金属元素よりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を添加する場合には、上記の工程(1)、工程(2)および工程(3)のうちのいずれか1つまたは2つ以上の工程において、前記金属元素を含む金属化合物を前記混合物に添加すればよい。
【0078】
得られた酸化亜鉛系微粒子は、少なくともアルコールを含有する媒体中に分散してなる分散体の形態であるが、必要に応じて、媒体から分離し、溶媒で洗浄した後、乾燥することにより、粉体の形態に変換してもよい。酸化亜鉛系微粒子を分離する方法としては、従来公知の分離方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、濾過、傾瀉、遠心分離などが挙げられる。酸化亜鉛系微粒子を洗浄する溶媒としては、洗浄後の乾燥時に容易に除去することが可能な溶媒である限り、特に限定されるものではないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ジエチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトンなどのケトン類;ベンゼン、ヘキサンなどの炭化水素類;などが挙げられる。酸化亜鉛系微粒子を乾燥させる方法としては、従来公知の乾燥方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥などが挙げられる。
【0079】
かくして得られた酸化亜鉛系微粒子は、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子の製造に用いることができる。
【0080】
<金属酸化物ポリマー被覆微粒子の製造>
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、水性媒体中、金属酸化物微粒子、好ましくはカップリング剤で処理した金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーを乳化重合するにあたり、反応系内にHALSを存在させることにより、製造することができる。
【0081】
反応系内に存在させるHALSとしては、金属酸化物ポリマー被覆微粒子について説明した際に列挙した上記のようなHALSを使用することができる。上記したように、HALSは、共重合タイプまたは添加タイプのいずれを用いてもよく、また、共重合体タイプおよび添加タイプを併用してもよい。被覆ポリマーにHALSを共重合させた方が、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物に配合した場合に、塗膜の耐候性を向上させる効果が高いので、共重合タイプを用いることが好ましい。
【0082】
HALSの使用量は、重合性モノマーの合計量に対して、その下限が好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.5質量%、さらに好ましくは1質量%であり、また、その上限が好ましくは20質量%、より好ましくは15質量%、さらに好ましくは10質量%である。HALSの使用量が0.1質量%未満であると、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーに充分な量のHALSが含有されず、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物に配合した場合に、塗膜の耐候性を向上させる効果が小さいことがある。逆に、HALSの使用量が20質量%を超えると、必要以上にHALSを使用することになり、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を塗料組成物に配合した場合に、塗膜の耐候性を向上させる効果が飽和すると共に、製造コストが上昇することがある。
【0083】
金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理することにより、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基とカップリング剤とを反応させて、前記金属酸化物微粒子の表面に化学結合を介して官能基を導入することができる。金属酸化物微粒子の表面に官能基を導入した後、前記官能基と反応しうる反応性基を有する重合性モノマーを反応させて、金属酸化物微粒子の表面において前記重合性モノマーからポリマーを合成することにより、前記金属酸化物微粒子の表面を前記ポリマーで実質的に切れ目なく被覆することができる。
【0084】
カップリング剤としては、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基と反応する反応性部位と、反応性基を有する重合性モノマーの前記反応性基と反応する官能基とを有する化合物である限り、特に限定されるものではないが、例えば、様々な官能基を有するシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤を用いた場合には、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基と反応して、−O−Si−結合を介して、前記金属酸化物微粒子の表面に様々な官能基が導入される。また、チタネート系カップリング剤を用いた場合には、−O−Ti−結合を介して、前記金属酸化物微粒子の表面に様々な官能基が導入される。カップリング剤としては、様々な官能基を有するものが市販されており、入手し易いことから、シランカップリング剤が好適である。カップリング剤が有する官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などが挙げられる。
【0085】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などを含有するシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシランなどのビニル基含有シランカップリング剤;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤;γ―メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのシランカップリング剤のうち、金属酸化物微粒子の表面からポリマー合成を効率よく行えることから、ビニル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤が好適である。
【0086】
金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理するには、例えば、水性媒体中で、金属酸化物微粒子とカップリング剤とを混合して攪拌すればよい。その際、金属酸化物微粒子とカップリング剤との反応を促進させるために、必要に応じて、下限が好ましくは30℃、より好ましくは40℃であり、また、上限が好ましくは100℃、より好ましくは80℃である温度に加温または加熱することができる。カップリング剤の使用量は、金属酸化物微粒子に対して、その下限が好ましくは0.05質量%、より好ましくは0.1質量%、さらに好ましくは0.5質量%であり、また、その上限が好ましくは20質量%、より好ましくは15質量%、さらに好ましくは10質量%である。カップリング剤の使用量が0.05質量%未満であると、金属酸化物微粒子の表面をポリマーで充分に被覆できないことがある。逆に、カップリング剤の使用量が20質量%を超えると、反応液の粘度が上昇したり、反応液がゲル化を起こしたりすることがある。
【0087】
金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理する際に用いる水性媒体は、下記で説明する重合反応に用いる水性媒体と同様であるが、重合反応に用いる水性媒体と同一であっても異なっていてもよい。
【0088】
金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理する際には、水性媒体中に金属酸化物微粒子を分散させることが好ましいので、必要に応じて、分散安定剤を用いることができる。分散安定剤としては、例えば、従来公知の界面活性剤や、ポバールなどの高分子分散安定剤などが挙げられる。これらの分散安定剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。分散安定剤の使用量は、水性媒体に対して、その下限が好ましくは0質量%であり、また、その上限が好ましくは5質量%、より好ましくは4質量%、さらに好ましくは3質量%である。分散安定剤の使用量が5質量%を超えると、金属酸化物微粒子をカップリング剤で効率よく処理できないことがある。
【0089】
重合性反応基を有するカップリング剤の場合、金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理した後、未反応のカップリング剤が存在すると、重合工程で架橋剤として作用し、被覆ポリマーが架橋構造を有するようになり、溶媒や樹脂などに対する分散性が低下することがある。それゆえ、金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理した後、未反応のカップリング剤を除去するために、カップリング剤で処理した金属酸化物微粒子を洗浄することができる。カップリング剤で処理された金属酸化物微粒子を洗浄するには、例えば、適当な溶媒に再分散させ、遠心分離し、上澄み液は捨てて沈降物のみを回収すればよい。この再分散、遠心分離および沈降物のみの回収という操作は、経済的観点からは必ずしも行う必要はないが、この操作を行う場合には、1回だけ行っても複数回行ってもよいが、3回またはそれ以上繰り返すことが好適である。
【0090】
重合反応は、水性媒体中、金属酸化物微粒子、好ましくはカップリング剤で処理した金属酸化物微粒子の存在下で行われる。重合反応をカップリング剤で処理した金属酸化物微粒子の存在下で行う場合には、重合反応には、金属酸化物微粒子をカップリング剤で処理して得られた分散体をそのまま用いてもよいし、カップリング剤で処理した後で洗浄した金属酸化物微粒子を水性媒体に再分散させて得られた分散体を用いてもよい。
【0091】
重合反応に用いる重合性モノマーは、金属酸化物微粒子の表面に導入された官能基と反応しうる反応性基を有する重合性モノマーから前記官能基に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などの官能基と反応しうる反応性基を含有する重合性モノマー、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基などを含有する重合性モノマーが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0092】
ビニル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合体モノマーのうち、スチレンなどのスチレン誘導体が好適である。
【0093】
(メタ)アクリロイル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0094】
アミノ基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン類;アリルアミン、α−メチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミンなどのアリルアミン類;(メタ)アクリルアミド,N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;p−アミノスチレンなどのアミノスチレン類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0095】
エポキシ基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステル類;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステル類が好適である。
【0096】
カルボキシル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸;これらの不飽和ジカルボン酸のモノエステル化物;これらの不飽和ジカルボン酸の無水物;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸が好適である。
【0097】
水酸基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリカプロラクトン変性の(メタ)アクリル酸エステル類;ポリオキシエチレン変性やポリオキシプロピレン変性の(メタ)アクリル酸エステル類;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が好適である。
【0098】
重合性モノマーの使用量は、金属酸化物微粒子の使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物微粒子100質量部に対して、その下限が好ましくは1質量部、より好ましくは2質量部、さらに好ましくは5質量部であり、また、その上限が好ましくは500質量部、より好ましくは300質量部、さらに好ましくは200質量部である。重合性モノマーの使用量が1質量部未満であると、重合反応が速やかに進行せず、金属酸化物微粒子の表面をポリマーで効率的に被覆できないことがある。逆に、重合性モノマーの使用量が500質量部を超えると、金属酸化物微粒子を含まないポリマー粒子が多く生成することがある。
【0099】
ラジカル開始剤としては、水溶性のラジカル開始剤である限り、特に限定されるものではないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物;2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(V−50、和光純薬工業(株)製)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物(VA−057、和光純薬工業(株)製)、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩(VA−067、和光純薬工業(株)製)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}(VA−085、和光純薬工業(株)製)などのアゾ系化合物;などが挙げられる。これらのラジカル開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0100】
ラジカル開始剤の使用量は、重合性モノマーの使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、重合性モノマーに対して、その下限が好ましくは0.001質量%、より好ましくは0.005質量%、さらに好ましくは0.01質量%であり、また、その上限が好ましくは3質量%、より好ましくは2質量%、さらに好ましくは1質量%である。
【0101】
モノマー成分の重合反応は、水性媒体中で行われる。ここで、「水性媒体」とは、水、または、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を意味する。水性媒体として、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を用いると、界面活性剤などの分散安定剤を使用しなくても、原料の金属酸化物微粒子や生成する金属酸化物ポリマー被覆微粒子の単分散状態を充分良好に保持することができる。しかし、有機溶媒が金属酸化物ポリマー被覆微粒子水分散体や塗料組成物に混入することが望ましくない場合は、分散安定剤を用いることにより、原料の金属酸化物微粒子や生成する金属酸化物ポリマー被覆微粒子の単分散状態を充分良好に保持することができる。
【0102】
水性媒体として、水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、水に対する水混和性の有機溶媒の割合は、その下限が好ましくは0質量%であり、また、その上限が好ましくは40質量%、より好ましくは20質量%である。
【0103】
水と併用しうる水混和性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、モノマー成分から合成されるポリマーに対して貧溶媒となる有機溶媒、すなわちモノマー成分は溶解するが、モノマー成分から合成されるポリマーは溶解しない有機溶媒が好適である。
【0104】
重合反応を行う際の反応温度は、特に限定されるものではないが、例えば、その下限が好ましくは40℃、より好ましくは50℃であり、また、その上限が好ましくは90℃、より好ましくは80℃である。また、反応時間も、金属酸化物微粒子や重合性モノマーの使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されることはないが、例えば、その下限が好ましくは1時間、より好ましくは3時間であり、また、その上限が好ましくは24時間、より好ましくは12時間である。
【0105】
重合反応後、金属酸化物微粒子の表面がポリマーで被覆されてなる金属酸化物ポリマー被覆微粒子の水分散体が得られる。得られた水分散体は、そのまま使用しもよいし、例えば、重合反応液から金属酸化物ポリマー被覆微粒子を単離して、粉体として使用してもよい。なお、重合反応液から金属酸化物ポリマー被覆微粒子を分離する方法としては、従来公知の分離方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、濾過、遠心沈降、遠心分離、傾瀉などが挙げられる。また、分離した金属酸化物ポリマー被覆微粒子を乾燥すれば、水分含有量が低い金属酸化物ポリマー被覆微粒子を得ることができる。金属酸化物ポリマー被覆微粒子を乾燥させる方法としては、従来公知の乾燥方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥、温風乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥などが挙げられる。得られた金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、粉体のままで用いてもよいし、適当な溶媒に再分散させた分散体として用いてもよい。
【0106】
金属酸化物ポリマー被覆微粒子を分散媒に再分散させる方法としては、従来公知の分散方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、攪拌機、ボールミル、サンドミル、超音波ホモジナイザーなどを用いた方法が挙げられる。
【0107】
また、金属酸化物ポリマー被覆微粒子が分散体の形態であり、前記金属酸化物ポリマー被覆微粒子を異なる分散媒に分散させる場合には、例えば、分散体を濾過、遠心分離、分散媒の蒸発などにより、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を分離した後、置換したい分散媒に混合した後、上記のような方法を用いて分散させるか、あるいは、分散体を加熱することにより、分散体を構成する分散媒の一部または全部を蒸発させて留去しながら、置換したい分散媒を混合する、いわゆる加熱溶媒置換法などを採用することができる。
【0108】
≪金属酸化物ポリマー被覆微粒子の用途≫
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、例えば、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子と、該金属酸化物ポリマー被覆微粒子が分散した塗膜を形成しうるバインダー成分とを含有することを特徴とする塗料組成物;本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子と、該金属酸化物ポリマー被覆微粒子が分散した連続相を形成しうる樹脂成分とを含有することを特徴とする樹脂組成物;および、該樹脂組成物を、板、シート、フィルムおよび繊維から選択されるいずれかの形状に成形してなることを特徴とする樹脂成形品;などに用いることができる。
【0109】
<塗料組成物>
本発明の塗料組成物は、金属酸化物ポリマー被覆微粒子と、該金属酸化物ポリマー被覆微粒子が分散した塗膜を形成しうるバインダー成分とを含有することを特徴とする。
【0110】
バインダー成分としては、塗料組成物の使用目的、基材の種類、塗膜に対する耐熱性、耐擦傷性や耐摩耗性などの要求性能などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂などの熱可塑性または熱硬化性樹脂;紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル−シリコーン樹脂などの紫外線硬化樹脂;エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの合成ゴムまたは天然ゴム;などの有機系バインダーや、シリカゾル、アルカリケイ酸塩、シリコンアルコキシドおよびそれらの加水分解縮合物、リン酸塩などの無機系バインダーなどが挙げられる。これらのバインダー成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0111】
本発明の塗料組成物における金属酸化物ポリマー被覆微粒子の含有量は、塗料組成物中の固形分の合計質量に対して、例えば、その上限が好ましくは1質量%、より好ましくは3質量%、さらに好ましくは5質量%であり、また、その上限が好ましくは99質量%、より好ましくは90質量%、さらに好ましくは80質量%である。金属酸化物ポリマー被覆微粒子の含有量が1質量%未満であると、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を添加する効果が得られないことがある。逆に、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の含有量が99質量%を超えると、塗料組成物を塗布する基材に対する塗膜の密着性、塗膜の耐擦傷性、耐摩耗性などが低下することがある。本発明の塗料組成物におけるバインダー成分の含有量は、塗料組成物中の固形分の合計質量に対して、例えば、その下限が好ましくは1質量%、より好ましくは10質量%、さらに好ましくは20質量%であり、また、その上限が99.9質量%、より好ましくは99質量%、さらに好ましくは95質量%である。なお、本発明の塗料組成物における金属酸化物ポリマー被覆微粒子とバインダー成分との合計量は、塗料組成物の全質量に対して、その上限が好ましくは1質量%、より好ましくは5質量%、さらに好ましくは10質量%であり、また、その上限が好ましくは80質量%、より好ましくは70質量%、さらに好ましくは60質量%であり、使用目的、作業性などに応じて適宜選択される。塗料組成物の残部は、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を分散し、バインダー成分を溶解または分散する溶剤、塗料組成物の使用目的に応じて用いられる顔料、可塑剤、乾燥促進剤、分散剤、消泡剤などの添加剤である。
【0112】
本発明の塗料組成物において、バインダー成分は、溶剤に溶解または分散していればよい。バインダー成分を溶解または分散する溶剤としては、塗料組成物の使用目的、バインダー成分の種類などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、アルコール類、脂肪族および芳香族カルボン酸エステル類、ケトン類、エーテル類、エーテルエステル類、脂肪族および芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などの有機溶媒;水;鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油;などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0113】
本発明の塗料組成物を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子(またはその水分散体)を、バインダー成分を含む溶剤に添加して混合する方法;金属酸化物ポリマー被覆微粒子(またはその水分散体)に、バインダー成分を含む溶剤を添加して混合する方法;金属酸化物ポリマー被覆微粒子(またはその水分散体)に、溶剤と共に、バインダー成分を添加して混合する方法;などが挙げられる。分散方法としては、従来公知の分散方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、攪拌機、ボールミル、サンドミル、超音波ホモジナイザーなどを用いた方法が挙げられる。
【0114】
本発明の塗料組成物は、基材に塗布して乾燥させることにより、前記基材の表面に金属酸化物ポリマー被覆微粒子を含有する塗膜を形成する。配合するバインダー成分の種類によっては、塗膜を硬化させるために、基材の変形温度以下の温度で加熱してもよい。本発明の塗料組成物を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、刷毛塗り法、ロールコーター法、スプレー法などが挙げられる。塗膜を乾燥させる方法としては、従来公知の乾燥方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、自然乾燥、温風乾燥、赤外線照射などが挙げられる。塗膜を加熱する方法としては、従来公知の加熱方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、温風加熱、赤外線照射などが挙げられる。
【0115】
本発明の塗料組成物を用いれば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を含有することから、塗膜が硬くなり、耐久性を有すると共に、低汚染性に優れるので、汚れが付着しにくく、また、耐水性や耐候性に優れるので、屋外においては、雨水に耐えうる塗膜が得られる。
【0116】
<樹脂組成物および樹脂成形品>
本発明の樹脂組成物は、金属酸化物ポリマー被覆微粒子と、該金属酸化物ポリマー被覆微粒子が分散した連続相を形成しうる樹脂成分とを含有することを特徴とする。
【0117】
樹脂成分としては、樹脂組成物の使用目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂;スチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;フェノール系樹脂;ユリア系樹脂;メラミン系樹脂;不飽和ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;エポキシ系樹脂などの熱可塑性または熱硬化性樹脂や、エチレンープロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの合成ゴムまたは天然ゴム;などが挙げられる。これらの樹脂成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0118】
本発明の樹脂組成物における金属酸化物ポリマー被覆微粒子の含有量は、固形分の合計質量に対して、例えば、その下限が好ましくは1質量%、より好ましくは3質量%、さらに好ましくは5質量%であり、また、その上限が好ましくは99質量%、より好ましくは80質量%、さらに好ましくは50質量%である。金属酸化物ポリマー被覆微粒子の含有量が1質量%未満であると、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を添加する効果が得られないことがある。逆に、金属酸化物ポリマー被覆微粒子の含有量が99質量%を超えると、樹脂組成物から得られる樹脂成形品の機械的強度などが低下することがある。本発明の樹脂組成物における樹脂成分の含有量は、固形分の合計質量に対して、例えば、その下限が好ましくは1質量%、より好ましくは20質量%、さらに好ましくは50質量%であり、また、その上限が好ましくは99.9質量%、より好ましくは99.5質量%、さらに好ましくは99質量%以下である。
【0119】
本発明の樹脂組成物は、成形加工時の加工性を向上させたり、可撓性を付与したりする必要がある場合には、可塑剤を添加することができる。可塑剤の添加量は、樹脂成分の種類、加工条件、使用目的などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の全質量に対して、例えば、その下限が好ましくは0質量%、より好ましくは1質量%であり、また、その上限が好ましくは20質量%、より好ましくは15質量%である。可塑剤の添加量が20質量%を超えると、樹脂組成物から得られる樹脂成形品が安定した物性を有しないことがある。
【0120】
さらに、本発明の樹脂組成物は、使用目的に応じて、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、防かび剤、染料、顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を通常の添加量で含有することができる。
【0121】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペレット状または粉末状の樹脂成分を溶融して混練する際に、金属酸化物ポリマー被覆微粒子(またはその水分散体)を添加して混合する方法;樹脂成分を溶解した溶液に金属酸化物ポリマー被覆微粒子(またはその水分散体)を混合した後に溶媒を除去する方法;樹脂成分を製造する過程で、金属酸化物ポリマー被覆微粒子(またはその水分散体)を混合する方法;などが挙げられる。
【0122】
上記のような方法によれば、金属酸化物ポリマー被覆微粒子が樹脂成分中に分散して含有される樹脂組成物が得られる。前記樹脂組成物は、粉末状、ペレット状など、通常の成形材料の形態のうち、いかなる形態であってもよい。得られた樹脂組成物を、板状、シート状、フィルム状、繊維状などに成形することにより、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を含有し、紫外線を有効に遮断することにより、耐候性に優れると共に、帯電防止性および耐水性を有する樹脂成形品が得られる。
【0123】
本発明の樹脂成形品は、前記樹脂組成物を、板、シート、フィルムおよび繊維から選択されるいずれかの形状に成形してなることを特徴とする。
【0124】
本発明の樹脂成形品を製造する方法は、従来公知の成形方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、以下に具体例を挙げて説明する。
【0125】
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を分散して含有する熱可塑性樹脂板を製造する場合には、例えば、熱可塑性樹脂のペレットまたは粉末と、所定量の金属酸化物ポリマー被覆微粒子の粉末とを溶融混練することにより、熱可塑性樹脂中に金属酸化物ポリマー被覆微粒子が均一に混合された樹脂組成物を得た後、そのまま連続的に、あるいは、いったんペレット化した後、射出成形、押出成形、圧縮成形などにより、平面状または曲面状の熱可塑性樹脂板に加工する方法が採用される。なお、平面状の熱可塑性樹脂板をさらに後加工することにより、波板状などの任意の形状に成形することもできる。
【0126】
また、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を分散して含有する熱可塑性樹脂シート、フィルムまたは繊維を製造する場合には、例えば、熱可塑性樹脂のペレットまたは粉末と、所定量の金属酸化物ポリマー被覆微粒子の粉末とを溶融混練することにより、熱可塑性樹脂中に金属酸化物ポリマー被覆微粒子が均一に混合された樹脂組成物を得た後、そのまま連続的に、あるいは、いったんペレット化した後、押出成形によりシート状またはフィルム状に成形してから、必要に応じて、一軸または二軸方向に延伸するという従来公知のシートまたは(延伸)フィルムの製法を採用するか、あるいは、溶融紡糸などの従来公知の繊維化方法を採用すればよい。なお、基材となるシートまたはフィルムを押出成形する際に、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子の粉末と熱可塑性樹脂のペレットまたは粉末とを原料として用いるか、あるいは、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を予め分散して含有する熱可塑性樹脂のペレットまたは粉末を原料として用いて、共押出することにより、積層シートまたは積層フィルムを得ることもできる。
【0127】
さらに、特に、本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を分散して含有するポリエステル系樹脂のシート、フィルムまたは繊維を製造するには、従来公知の以下の別法を採用することもできる。すなわち、ポリエステル系樹脂の製造工程における任意の段階で、例えば、エステル交換反応から重合反応に至る一連の工程における任意の段階で、金属酸化物ポリマー被覆微粒子を、例えば、0.1質量%以上、50質量%以下の割合で、ジカルボン酸またはグリコールに分散させてなる分散体を添加して混合し、ポリエステル系樹脂の重合反応を完結させることにより、金属酸化物ポリマー被覆粒子を分散して含有するポリエステル系樹脂を得た後、例えば、押出成形によりシート状またはフィルム状に成形してから、必要に応じて、一軸または二軸方向に延伸するという従来公知のシートまたは(延伸)フィルムの製法を採用するか、あるいは、溶融紡糸などの従来公知の繊維化方法を採用すればよい。
【実施例】
【0128】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0129】
下記の製造例、実施例、比較例および塗膜試験では、質量%を「%」、質量部を「部」で表すことがある。
【0130】
下記の製造例で得られた金属酸化物微粒子、あるいは、下記の実施例および比較例で得られた金属酸化物ポリマー被覆微粒子およびその水分散体について、含有される微粒子の形状や数平均粒子径、水分散体の不揮発分は、以下の方法により判定または測定した。判定および測定に先立って粉末化する必要がある場合には、特に断りがない限り、以下に記載の方法に従って、粉末化した後、得られた粉末を測定試料とした。また、粉体化したものについては、そのまま測定試料とした。
【0131】
<形状>
微粒子の形状は、微粒子を走査型または透過型電子顕微鏡(倍率:1万倍)で観察することにより判定した。
【0132】
<数平均粒子径>
微粒子を走査型または透過型電子顕微鏡(倍率:1万倍)で観察して得られた撮影像に含まれる任意の微粒子100個の1次粒子径を測定して、下記の数式により算出した。なお、走査型電子顕微鏡で観察する場合、観察に先立って微粒子に貴金属合金の蒸着処理を行うので、蒸着層の厚さの分だけ補正して、数平均粒子径を求めた。
【0133】
【数1】

【0134】
[式中、dは数平均粒子径、Dはi番目の微粒子の一次粒子径、nは微粒子数を表す]
【0135】
<不揮発分の測定>
水分散体を約1g秤量し、熱風乾燥機を用いて、105℃で1時間乾燥し、乾燥前の質量に対する乾燥後の質量の割合を質量%で表した値を不揮発分とした。
【0136】
まず、金属酸化物微粒子を調製する製造例1〜5について説明する。
【0137】
≪製造例1≫
攪拌機、滴下口、温度計、還流冷却器を備えた容量10Lのガラス製反応器中で、酢酸1.6kgとイオン交換水1.6kgとの混合溶媒に、酸化亜鉛粉末0.3kgを添加混合した後、攪拌しながら100℃まで昇温することにより、亜鉛含有溶液(A1)を均一溶液として得た。
【0138】
次いで、外部から熱媒で加熱し得る、攪拌機、滴下口、温度計、留出ガス出口を備えた容量20Lのガラス製反応器に、2−ブトキシエタノール12kgを仕込み、内温を153℃まで昇温して保持した。これに、100℃に保持した亜鉛含有溶液(A1)全量を、定量ポンプにより、30分間かけて滴下した。内容物の温度は153℃から131℃まで変化した。滴下終了後、内温を168℃まで昇温した時点で、ラウリン酸36.9gを溶解した2−ブトキシエタノール溶液400gを1分間かけて添加し、さらに同温度で5時間保持することにより、分散体(Z−1)7.89kgを得た。分散体(Z−1)は、数平均粒子径が20nmである粒状の微粒子が分散媒中に濃度3.7質量%で分散したものであった。
【0139】
分散体(Z−1)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、酸化亜鉛系微粒子(DZ−1)を得た。
【0140】
得られた酸化亜鉛系微粒子(DZ−1)は、数平均粒子径が20nmであった。
【0141】
≪製造例2≫
攪拌機、滴下口、窒素導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中で、酸化亜鉛系微粒子(DZ−1)180gを脱イオン水1,020gに添加混合した。次いで、テトラエトキシシラン28.6g、エタノール100gを滴下ロート(1)に入れ、また、25%アンモニア水14.5g、脱イオン水14.5gを滴下ロート(2)に入れた。反応器を50℃に昇温後、滴下ロート(1)および(2)の内容物を1時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、50℃で5時間保持した後、室温まで冷却することにより、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子分散体(SZ−1)を得た。
【0142】
分散体(SZ−1)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子(DSZ−1)を得た。
【0143】
得られたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子(DSZ−1)は、数平均粒子径が60nmであった。
【0144】
≪製造例3≫
攪拌機、滴下口、窒素導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中で、酸化亜鉛系微粒子(DZ−1)50gを脱イオン水950gに添加混合した。これを80℃に昇温し、攪拌下、酸化亜鉛に対して、SiOとして10質量%のケイ酸ナトリウムの水溶液を添加した。10分間熟成した後、攪拌下、60分間かけて硫酸を加えて、pH6.5に中和した。30分間熟成した後、室温まで冷却することにより、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子分散体(SZ−2)を得た。
【0145】
分散体(SZ−2)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子(DSZ−2)を得た。
【0146】
得られたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子(DSZ−2)は、数平均粒子径が45nmであった。
【0147】
≪製造例4≫
製造例2において、酸化亜鉛系微粒子(DZ−1)180gおよび脱イオン水1,020gに代えて、超微粒子酸化チタンゾル(NTBナノチタニア(登録商標)、昭和電工(株)製;数平均粒子径10〜20nm)1,200gを用いたこと以外は、製造例2と同様にして、シリカ被覆酸化チタン微粒子分散体(ST−1)を得た。
【0148】
分散体(ST−1)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタン微粒子(DST−1)を得た。
【0149】
得られたシリカ被覆酸化チタン微粒子(DST−1)は、数平均粒子径が55nmであった。
【0150】
≪製造例5≫
製造例3において、酸化亜鉛系微粒子(DZ−1)50gおよび脱イオン水950gに代えて、超微粒子酸化チタンゾル(NTBナノチタニア(登録商標)、昭和電工(株)製;数平均粒子径10〜20nm)1,000gを用いたこと以外は、製造例3と同様にして、シリカ被覆酸化チタン微粒子分散体(ST−2)を得た。
【0151】
分散体(ST−2)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタン微粒子(DST−2)を得た。
【0152】
得られたシリカ被覆酸化チタン微粒子(DST−2)は、数平均粒子径が45nmであった。
【0153】
次に、金属酸化物ポリマー被覆微粒子およびその水分散体を製造する実施例1〜7および比較例1〜2について説明する。
【0154】
≪実施例1≫
攪拌機、滴下口、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子(DSZ−1;数平均粒子径60nm)200g、脱イオン水800g、エマール0(分散安定剤、花王(株)製)の20%水溶液10gを添加混合した後、ディスパーを用いて分散させた。その後、90°パドル翼で攪拌しながら、50℃まで昇温した。次いで、攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液20g、KBM−503(化学名:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)10gを30分間かけて滴下し、50℃で5時間保持した。
【0155】
また、別途、容量200mLの容器中で、メタクリル酸メチル19.5g、ヒンダートアミン系安定剤として、HALSとして、アデカスタブLA−82(化学名:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、(株)ADEKA製)0.5g、エマール0(分散安定剤、花王(株)製)の20%水溶液5g、脱イオン水8gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。このプレエマルション組成物の10%(3.3g)を上記のガラス製反応器に添加した後に、反応槽を70℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液1gを添加した。30分間熟成した後に、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌下で5時間保持することにより、シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−1)を得た。
【0156】
得られたシリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−1)は、不揮発分が21.5%、総回収量が1,071g、不揮発分中のHALS含有量が0.217%であった。ここで、不揮発分中のHALS含有量は、式:[HALSの使用量/(水分散体の総回収量×不揮発分)]×100を用いて算出した(以下同様)。このシリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−1)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで実質的に切れ目なく被覆されていることが確認された。
【0157】
シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−1)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子(PCP−1)を得た。シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子(PCP−1)は、数平均粒子径が80nmであり、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、12.6%の質量減少が観察された。なお、被覆ポリマー中のHALS含有量は、2.50%であった。ここで、被覆ポリマー中のHALS含有量は、式:[HALSの使用量/重合性モノマーの使用量とHALSの使用量の合計]×100を用いて算出した(以下同様)。
【0158】
≪実施例2≫
攪拌機、滴下口、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子(DSZ−2;数平均粒子径45nm)200g、脱イオン水800g、NIKKOL SBL−3N―27(分散安定剤、日光ケミカルズ(株)製)の20%水溶液10gを添加混合した後、ディスパーを用いて分散させた。その後、90°パドル翼で攪拌しながら、50℃まで昇温した。次いで、攪拌しながら、25%アンモニア水15g、KBE−503(化学名:3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製)10gを30分間かけて滴下し、50℃で5時間保持した。
【0159】
また、別途、容量200mLの容器で、メタクリル酸メチル10g、アクリル酸ブチル9.5g、HALSとして、アデカスタブLA−82(化学名:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、(株)ADEKA製)0.5g、NIKKOL SBL−3N―27(分散安定剤、日光ケミカルズ(株)製)の20%水溶液5g、脱イオン水8gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。このプレエマルション組成物の10%(3.3g)を上記のガラス製反応器に添加した後に、反応槽を70℃まで昇温し、5%過硫酸ナトリウム水溶液1gを添加した。30分間熟成した後に、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌下で5時間保持することにより、シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−2)を得た。
【0160】
得られたシリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−2)は、不揮発分が21.3%、総回収量が1,064g、不揮発分中のHALS含有量が0.221%であった。このシリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−2)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで実質的に切れ目なく被覆されていることが確認された。
【0161】
シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−2)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子(PCP−2)を得た。シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子(PCP−2)は、数平均粒子径が65nmであり、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、12.6%の質量減少が観察された。なお、被覆ポリマー中のHALS含有量は、2.50%であった。
【0162】
≪実施例3≫
攪拌機、滴下口、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化チタン微粒子(DST−1;数平均粒子径55nm)200g、脱イオン水800g、アデカリアソープSR−10(分散安定剤、(株)ADEKA製)の20%水溶液5g、アデカリアソープER−20(分散安定剤、(株)ADEKA製)の20%水溶液5gを添加混合した後、ディスパーを用いて分散させた。その後、90°パドル翼で攪拌しながら、50℃まで昇温した。次いで、攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液20g、KBE−503(化学名:3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製)10gを30分間かけて滴下し、50℃で5時間保持した。
【0163】
また、別途、容量500mLの容器で、メタクリル酸メチル15g、アクリル酸2−エチルヘキシル15g、メタクリル酸シクロヘキシル19g、HALSとして、アデカスタブLA−82(化学名:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、(株)ADEKA製)1g、アデカリアソープSR−10(分散安定剤、(株)ADEKA製)の20%水溶液3g、アデカリアソープER−20(分散安定剤、(株)ADEKA製)の20%水溶液3g、脱イオン水14gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。このプレエマルション組成物の10%(7.0g)を上記のガラス製反応器に添加した後に、反応槽を70℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液2gを添加した。30分間熟成した後に、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌下で5時間保持することにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−3)を得た。
【0164】
得られたシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−3)は、不揮発分が23.5%、総回収量が1,110g、不揮発分中のHALS含有量が0.383%であった。このシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−3)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで実質的に切れ目なく被覆されていることが確認された。
【0165】
シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−3)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(PCP−3)を得た。シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(PCP−3)は、数平均粒子径が85nmであり、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、22.6%の質量減少が観察された。なお、被覆ポリマー中のHALS含有量は、2.00%であった。
【0166】
≪実施例4≫
攪拌機、滴下口、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化チタン微粒子(DST−2;数平均粒子径45nm)200g、脱イオン水800g、アデカリアソープSR−10(分散安定剤、(株)ADEKA製)の20%水溶液10gを添加混合した後、ディスパーを用いて分散させた。その後、90°パドル翼で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、攪拌しながら、25%アンモニア水15g、KBE−503(化学名:3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製)10gを30分間かけて滴下し、50℃で5時間保持した。
【0167】
また、別途、容量500mLの容器で、メタクリル酸メチル30g、アクリル酸ブチル30g、メタクリル酸シクロヘキシル38g、HALSとして、アデカスタブLA−82(化学名:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、(株)ADEKA製)2g、アデカリアソープSR−10(分散安定剤、(株)ADEKA製)の20%水溶液20g、脱イオン水35gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。このプレエマルション組成物の10%(15.5g)を上記のガラス製反応器に添加した後に、反応槽を70℃まで昇温し、5%過硫酸ナトリウム水溶液4gを添加した。30分間熟成した後に、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌下で5時間保持することにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−4)を得た。
【0168】
得られたシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−4)は、不揮発分が26.1%、総回収量が1,191g、不揮発分中のHALS含有量が0.643%であった。このシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−4)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで実質的に切れ目なく被覆されていることが確認された。
【0169】
シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−4)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(PCP−4)を得た。シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(PCP−4)は、数平均粒子径が90nmであり、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、35.7%の質量減少が観察された。なお、被覆ポリマー中のHALS含有量は、2.00%であった。
【0170】
≪実施例5≫
攪拌機、滴下口、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化チタン微粒子(DST−2;数平均粒子径45nm)200g、脱イオン水800g、NIKKOL SBL−3N−27(分散安定剤、日光ケミカルズ(株)製)の20%水溶液10gを添加混合した後、ディスパーを用いて分散させた。その後、90°パドル翼で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液20g、KBM−503(化学名:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)10gを30分間かけて滴下し、50℃で5時間保持した。
【0171】
また、別途、容量500mLの容器で、アクリル酸ブチル20g、メタクリル酸シクロヘキシル30g、HALSとして、アデカスタブLA−82(化学名:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、(株)ADEKA製)1.5g、NIKKOL SBL−3N−27(分散安定剤、日光ケミカルズ(株)製)の20%水溶液10g、脱イオン水16gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。このプレエマルション組成物の10%(7.75g)を上記のガラス製反応器に添加した後に、70℃まで加熱し、5%過硫酸カリウム水溶液1gを添加した。30分間熟成した後に、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌下で5時間保持することにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−5)を得た。
【0172】
得られたシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−5)は、不揮発分が23.6%、総回収量が1,114g、不揮発分中のHALS含有量が0.571%であった。このシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−5)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで実質的に切れ目なく被覆されていることが確認された。
【0173】
シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−5)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(PCP−5)を得た。シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(PCP−5)は、数平均粒子径が70nmであり、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、23.3%の質量減少が観察された。なお、被覆ポリマー中のHALS含有量は、2.91%であった。
【0174】
≪実施例6≫
攪拌機、滴下口、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子(DSZ−2;数平均粒子径45nm)200g、脱イオン水800g、エマール0(分散安定剤、花王(株)製)の20%水溶液10gを添加混合した後、ディスパーを用いて分散させた。その後、90°パドル翼で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液10g、KBM−503(化学名:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)10gを30分間かけて滴下し、50℃で5時間保持した。
【0175】
また、別途、容量200mLの容器で、メタクリル酸メチル10g、アクリル酸ブチル10g、分散安定剤として、エマール0(化学名:ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、花王(株)製)の20%水溶液5g、脱イオン水8gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。このプレエマルション組成物の10%(3.3g)を上記のガラス製反応器に添加した後に、反応槽を70℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液1gを添加した。30分間熟成した後に、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌下で5時間保持した後、HALSとして、TINUVIN(登録商標)292(組成:セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)およびセバシン酸1−(メチル)−8−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)の混合物、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)2gを添加し、さらに1時間熟成を行うことにより、シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−6)を得た。
【0176】
得られたシリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−6)は、不揮発分が21.5%、総回収量が1,073g、不揮発分中のHALS含有量が0.867%であった。このシリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−6)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで実質的に切れ目なく被覆されていることが確認された。
【0177】
シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−6)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子(PCP−6)を得た。シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子(PCP−6)は、数平均粒子径が60nmであり、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、12.6%の質量減少が観察された。なお、被覆ポリマー中のHALS含有量は、9.09%であった。
【0178】
≪実施例7≫
攪拌機、滴下口、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化チタン微粒子(DST−2;数平均粒子径45nm)200g、脱イオン水800g、エマール0(分散安定剤、花王(株)製)の20%水溶液10gを添加混合した後、ディスパーを用いて分散させた。その後、90°パドル翼で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液20g、KBM−503(化学名:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製)10gを30分間かけて滴下し、50℃で5時間保持した。
【0179】
また、別途、容量200mLの容器で、メタクリル酸メチル5g、メタクリル酸シクロヘキシル15g、エマール0(分散安定剤、花王(株)製)の20%水溶液5g、脱イオン水8gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。このプレエマルション組成物の10%(3.3g)を上記のガラス製反応器に添加した後に、反応槽を70℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液1gを添加した。30分間熟成した後に、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌下で5時間保持した後、HALSとして、TINUVIN(登録商標)292(組成:セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)およびセバシン酸1−(メチル)−8−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)の混合物、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)2gを添加し、さらに1時間熟成を行うことにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−7)を得た。
【0180】
得られたシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−7)は、不揮発分が21.5%、総回収量が1,070g、不揮発分中のHALS含有量が0.869%であった。このシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−7)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで実質的に切れ目なく被覆されていることが確認された。
【0181】
シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(PC−7)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(PCP−7)を得た。シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(PCP−7)は、数平均粒子径が60nmであり、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、12.6%の質量減少が観察された。なお、被覆ポリマー中のHALS含有量は、9.09%であった。
【0182】
≪比較例1≫
攪拌機、滴下口、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子(DSZ−1;数平均粒子径60nm)200g、脱イオン水800g、エマール0(分散安定剤、花王(株)製)の20%水溶液10gを添加混合した後、ディスパーを用いて分散させた。その後、90°パドル翼で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液20g、KBM−503(化学名:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)10gを30分間かけて滴下し、50℃で5時間保持した。
【0183】
また、別途、容量200mLの容器で、メタクリル酸メチル20g、エマール0(分散安定剤、花王(株)製)の20%水溶液5g、脱イオン水8gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。このプレエマルション組成物の10%(3.3g)を上記のガラス製反応器に添加した後に、反応槽を70℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液1gを添加した。30分間熟成した後に、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌下で5時間保持することにより、シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(NPC−1)を得た。
【0184】
得られたシリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(NPC−1)は、不揮発分が21.4%、総回収量が1,069gであった。このシリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(NPC−1)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで実質的に切れ目なく被覆されていることが確認された。
【0185】
シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(NPC−1)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子(NCP−1)を得た。シリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子(NCP−1)は、数平均粒子径が75nmであり、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、12.6%の質量減少が観察された。
【0186】
≪比較例2≫
攪拌機、滴下口、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのガラス製反応器中に、窒素ガスを吹き込みながら、シリカ被覆酸化チタン微粒子(DST−2;数平均粒子径45nm)200g、脱イオン水800g、アデカリアソープSR−10(分散安定剤、(株)ADEKA製)の20%水溶液5g、アデカリアソープER−20(分散安定剤、(株)ADEKA製)の20%水溶液5gを添加混合した後、ディスパーを用いて分散させた。その後、90°パドル翼で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、攪拌しながら、25%アンモニア水15g、KBE−503(化学名:3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製)10gを30分間かけて滴下し、50℃で5時間保持した。
【0187】
また、別途、容量500mLの容器で、メタクリル酸メチル30g、アクリル酸ブチル30g、メタクリル酸シクロヘキシル40g、アデカリアソープSR−10(分散安定剤、(株)ADEKA製)の20%水溶液20g、脱イオン水35gを乳化し、プレエマルション組成物を調製しておいた。このプレエマルション組成物の10%(15.5g)を上記のガラス製反応器に添加した後に、反応槽を70℃まで昇温し、5%過硫酸ナトリウム水溶液4gを添加した。30分間熟成した後に、残りのプレエマルション組成物を30分間かけて滴下し、攪拌下で5時間保持することにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(NPC−2)を得た。
【0188】
得られたシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(NPC−2)は、不揮発分が26.1%、総回収量が1,185gであった。このシリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(NPC−2)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ被覆酸化チタン微粒子の表面が重合により形成されたポリマーで実質的に切れ目なく被覆されていることが確認された。
【0189】
シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子水分散体(NPC−2)に含有される微粒子を遠心分離操作により分散媒から分離し、得られた微粒子をイソプロピルアルコールで洗浄した後、50℃で24時間真空乾燥(1.33×10Pa)することにより、シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(NCP−2)を得た。シリカ被覆酸化チタンポリマー被覆微粒子(NCP−2)は、数平均粒子径が90nmであり、100℃から500℃までの昇温条件で熱質量減少を測定したところ、35.7%の質量減少が観察された。
【0190】
次に、実施例1〜7および比較例1〜2で得られた金属酸化物ポリマー被覆微粒子水分散体を用いて行った塗膜試験について説明する。
【0191】
≪塗膜試験≫
<アクリル系樹脂エマルション(1)>
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた容量2Lのフラスコに脱イオン水375.0gを仕込んだ。
【0192】
また、滴下ロート内に、アクアロン(登録商標)HS−10(乳化重合用乳化剤、第一工業製薬(株)製)の25%水溶液16.0g、アクアロン(登録商標)RN−20(乳化重合用乳化剤、第一工業製薬(株)製)の25%水溶液16.0g、脱イオン水32.0g、アクリル酸2−エチルヘキシルアクリレート40.0g、メタクリル酸メチル116.0g、アクリル酸4.0gからなる一段目のプレエマルションを調製し、そのうち一段目プレエマルション量の10%にあたる22.4gをフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら攪拌下、75℃まで昇温した。
【0193】
昇温後、5%過硫酸カリウム水溶液24.0gを添加し、重合反応を開始した。この時に反応系内を80℃まで昇温し、10分間維持した。ここまでを初期反応とした。
【0194】
初期反応終了後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの一段目プレエマルションを90分間にわたって均一に滴下した。滴下後、脱イオン水5gで滴下ロートを洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。その後も80℃で30分間維持し、次いで、25%アンモニア水3.6gを添加し、同温度で10分間攪拌した。
【0195】
次いで、滴下ロート内に、アクアロン(登録商標)HS−10(乳化重合用乳化剤、第一工業製薬(株)製)の25%水溶液8.0g、アクアロン(登録商標)RN−20(乳化重合用乳化剤、第一工業製薬(株)製)の25%水溶液8.0g、脱イオン水68.0g、アクリル酸2−エチルヘキシル100.0g、メタクリル酸メチル139.0g、HALSとして、アデカスタブLA−82(化学名:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、(株)ADEKA製)1.0gからなる二段目プレエマルションを調製し、130分間にわたって均一に滴下した。滴下後、脱イオン水5gで滴下ロートを洗浄し、洗浄液をフラスコに添加した。その後も80℃で60分間維持し、重合反応を終了した。
【0196】
得られた反応液を室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過して、固形分43.0%、粘度120mPa・s、pH8.9、固形分中のHALS含有量0.24%のアクリル系樹脂エマルション(1)を得た。
【0197】
ここで、アクリル系樹脂エマルションの固形分は、エマルション約1gを秤量し、熱風乾燥機を用いて、105℃で1時間乾燥させ、乾燥前の質量に対する乾燥後の質量の割合を質量%で表した値である。
【0198】
アクリル系樹脂エマルションの粘度は、BM型粘度計(東京計器(株)製)を用いて、30rpmの条件下、25℃で測定した。なお、粘度測定時には、粘度に応じたロータを選定した。
【0199】
アクリル系樹脂エマルションのpHは、pHメータ(F−23、(株)堀場製作所製)を用いて、25℃で測定した。
【0200】
アクリル系樹脂エマルションの固形分中のHALS含有量は、式:[HALSの使用量/アクリル系樹脂エマルションの製造に使用した原料の固形分の合計質量]×100を用いて算出した。
【0201】
<アクリル系樹脂エマルション(2)>
アクリル系樹脂エマルション(1)の調製に用いた二段目プレエマルションのうち、HALSとして用いたアデカスタブLA−82(化学名:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、(株)ADEKA製)をメタクリル酸メチルに置き換えたこと以外は、アクリル系樹脂エマルション(1)の調製と同様にして、固形分42.9%、粘度130mPa・s、pH8.7のアクリル系樹脂エマルション(2)を得た。なお、アクリル系樹脂エマルション(2)は、HALSを含有しない。
【0202】
<下地塗料組成物>
まず、デモールEP(分散剤、花王(株)製)60g、ディスコートN−14(分散剤、第一工業製薬(株)製)50g、エマルゲン909(湿潤剤、花王(株)製)10g、脱イオン水210g、エチレングリコール60g、酸化チタン(CR−95、石原産業(株)製)1,000g、ノプコ8034−L(抑泡剤、サンノプコ(株)製)10gを配合し、ガラスビーズ(平均粒子径2mm)500gを添加し、ホモディスパーを用いて、3,000rpmで60分間攪拌して、ガーゼを用いてガラスビーズを取り除き、白色ペースト1,900gを調製した。
【0203】
次いで、アクリセット(登録商標)EX−41(スチレン・アクリル系樹脂エマルション、(株)日本触媒製)300g、上記白色ペースト135g、ユニラント88(黒色ペースト、(株)ユニラント製)10g、ノプコ8034−L(抑泡剤、サンノプコ(株)製)1.5g、ブチルセロソルブ15g、CS−12(成膜助剤、チッソ(株)製)15gを配合して、下地塗料組成物を得た。
【0204】
<基材>
スレート板(ノザワフレキシブルシート(JIS K5410)、(株)ノザワ製)上に、溶剤シーラー(DAN透明シーラー、日本ペイント(株)製)を乾燥質量が20g/mになるようにエアスプレーで塗装した。その後、下地塗料組成物を10milのアプリケーターで塗工し、3分間のセッティングを行った後に、100℃で10分間の強制乾燥を行って、基材を作製した。乾燥後の塗膜(下地塗料組成物による塗膜)の厚さは100μmであった。
【0205】
<クリア塗料組成物>
実施例1で得られたシリカ被覆酸化亜鉛ポリマー被覆微粒子水分散体(PC−1)100部、アクリル系樹脂エマルション(2)200部、ノプコ8034−L(消泡剤、サンノプコ(株)製)1.5部、ブチルセロソルブ10部、CS−12(成膜助剤、チッソ(株)製)10部を配合して、クリア塗料組成物(CR−1)を調製した。
【0206】
また、実施例1で得られた水分散体(PC−1)に代えて、実施例2〜7で得られた水分散体(PC−2)〜(PC−7)をそれぞれ用いたこと以外は、上記と同様にして、クリア塗料組成物(CR−2)〜(CR−7)を調製した。さらに、実施例1で得られた水分散体(PC−1)に代えて、比較例1〜2で得られた比較用水分散体(NPC−1)〜(NPC−2)をそれぞれ用い、かつ、アクリル系樹脂エマルション(2)に代えて、アクリル系樹脂エマルション(1)を用いたこと以外は、上記と同様にして、比較用クリア塗料組成物(NR−1)〜(NR−2)を調製した。
【0207】
<塗膜耐候性試験>
クリア塗料組成物(CR−1)を10milのアプリケーターで基材に塗装し、室温で3分間のセッティングを行った後、100℃で10分間の強制乾燥を行って、耐候性試験板(WCR−1)を得た。乾燥後の塗膜(クリア塗料組成物による塗膜)の厚さは40μmであった。
【0208】
また、クリア塗料組成物(CR−1)に代えて、クリア塗料組成物(CR−2)〜(CR−7)、比較用クリア塗料組成物(NR−1)〜(NR−2)をそれぞれ用いたこと以外は、上記と同様にして、耐候性試験板(WCR−2)〜(WCR−7)、比較用耐候性試験板(NCR−1)〜(NCR−2)を得た。乾燥後の塗膜(クリア塗料組成物または比較用クリア塗料組成物による塗膜)の厚さは40μmであった。
【0209】
得られた耐候性試験板(WCR−1)〜(WCR−7)、比較用耐候性試験板(NCR−1)〜(NCR−2)について、耐候試験機(サンシャインスーパーロングライフウェザーメーターWEL−SUN−HC・B型、スガ試験機(株)製)を用いた促進耐候性試験を行い、試験開始前および2,000時間経過後における塗膜の60°鏡面光沢値を測定し、式:
GR=(A/B)×100
[式中、GRは塗膜の光沢保持率、Aは促進耐候性試験2,000時間経過後における塗膜の60°鏡面光沢値、Bは促進耐候性試験開始前における塗膜の60°鏡面光沢値を表す]
により光沢保持率(%)を算出して、塗膜の耐候性を評価した。結果を表1に示す。なお、光沢保持率(%)の値が高いほど、塗膜の耐候性が高いことを示す。
【0210】
なお、促進耐候性試験は、1995年発行のJIS A1415の4.(促進曝露試験装置)に規定するサンシャインカーボンアーク灯(WS形)を用いて、5.(試験方法)に規定する試験方法により試験した。また、塗膜の鏡面光沢値は、JIS K5400に準拠して、光沢計(VZ−2000、日本電色工業(株)製)を用いて、光源の入射角を60°として測定した。
【0211】
【表1】

【0212】
なお、表1において、HALSとは、ヒンダードアミン系光安定剤を意味し、TINUVINは、チバ・スペシャリティ・ケミカルズの登録商標である。また、被覆ポリマー中のHALS含有量は、式:[HALSの使用量/重合性モノマーの使用量とHALSの使用量の合計]×100を用いて計算した。アクリル系樹脂エマルションの固形分中のHALS含有量は、式:[HALSの使用量/アクリル系樹脂エマルションの製造に使用した原料の固形分の合計質量]×100を用いて算出した。クリア塗料組成物中のHALS含有量は、式:[{(水分散体の不揮発分×水分散体の不揮発分中のHALS含有量/水分散体総量)×クリア塗料組成物に用いた水分散体量+(アクリル系樹脂エマルションの固形分×アクリル系樹脂エマルションの固形分中のHALS含有量/アクリル系樹脂エマルション総量)×クリア塗料組成物に用いたアクリル系樹脂エマルション量}/クリア塗料組成物総量]×100を用いて算出した。乾燥塗膜中のHALS含有量は、式:[(クリア塗料組成物に用いた水分散体量×水分散体の不揮発分×水分散体の不揮発分中のHALS含有量)+(クリア塗料組成物に用いたアクリル系樹脂エマルション量×アクリル系樹脂エマルションの固形分×アクリル系樹脂エマルションの固形分中のHALS含有量)]/[(クリア塗料組成物に用いた水分散体量×水分散体の不揮発分)+(クリア塗料組成物に用いたアクリル系樹脂エマルション量×アクリル系樹脂エマルションの固形分)+クリア塗料組成物に用いた消泡剤量]×100を用いて算出した。
【0213】
表1から明らかなように、実施例1〜7の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーがヒンダードアミン系光安定剤を含有するので、塗料組成物に配合すれば、少ない含有量で、耐候性に優れた塗膜を与える。
【0214】
これに対し、比較例1および2の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、金属酸化物微粒子の被覆ポリマーがヒンダードアミン系光安定剤を含有するのではなく、バインダー成分であるアクリル系樹脂エマルションがヒンダードアミン系光安定剤を含有するので、塗料組成物に配合すれば、含有量が多くても、耐候性に劣った塗膜しか与えない。
【0215】
かくして、本発明によれば、所定の数平均粒子径を有する金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆してなる金属酸化物ポリマー被覆微粒子を製造するにあたり、ヒンダードアミン系光安定剤の存在下で乳化重合を行うことにより、得られた金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、塗料組成物に配合すれば、耐候性に優れた塗膜を与え、また、樹脂組成物に配合すれば、耐候性に優れた樹脂成形品を与えることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明の金属酸化物ポリマー被覆微粒子は、金属酸化物が有する優れた性質を保持しながら、耐候性が著しく向上した塗膜や樹脂成形品などを与えるので、建築物の外壁や橋梁の塗装の塗り替えサイクルを長くしてメンテナンスのコストを低減し、また、樹脂成形品の寿命を長くして商品価値を高めることができ、建築外装や樹脂成形品の分野で多大の貢献をなすものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である金属酸化物微粒子の表面をポリマーで被覆してなる金属酸化物ポリマー被覆微粒子であって、該被覆ポリマーがヒンダードアミン系光安定剤を含有することを特徴とする金属酸化物ポリマー被覆微粒子。
【請求項2】
前記ヒンダードアミン系光安定剤が、前記被覆ポリマーに共重合されているか、および/または、前記被覆ポリマーに分散している請求項1記載の金属酸化物ポリマー被覆微粒子。
【請求項3】
前記ヒンダードアミン系光安定剤が下記式(1):
【化1】

[式中、Rは水素原子またはシアノ基、Xは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、または下記式(2):
【化2】

[式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基を表す]
で示される置換基を表す]
で示される4−ピペリジニル基を有する請求項1または2記載の金属酸化物ポリマー被覆微粒子。
【請求項4】
前記金属酸化物微粒子が酸化亜鉛系微粒子、酸化チタン微粒子、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子およびシリカ被覆酸化チタン微粒子よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載の金属酸化物ポリマー被覆微粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を含む樹脂組成物を、板、シート、フィルムおよび繊維から選択されるいずれかの形状に成形してなることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項7】
請求項1記載の金属酸化物ポリマー被覆微粒子を製造する方法であって、水性媒体中、数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である金属酸化物微粒子の存在下で、重合性モノマーおよびラジカル開始剤を用いた乳化重合を行うにあたり、反応系内にヒンダードアミン系光安定剤を存在させることを特徴とする製造方法。

【公開番号】特開2008−266472(P2008−266472A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112107(P2007−112107)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】