説明

金属酸化物固溶体、その製造および用途

ナノサイズの金属酸化物固溶体の製造方法を開示する。金属酸化物固溶体は、水および少なくとも2種の水溶性金属化合物を含む反応混合物を200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることによって製造され、ここで、前記反応混合物は合計0.01〜30重量%の量の金属化合物を含み、かつ前記固溶体は1〜1,000nmの結晶子サイズを有する。金属酸化物固溶体は、特に紫外線遮断剤または酸素貯蔵成分として適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ナノサイズの金属酸化物固溶体に関する。より詳しくは、本発明は、紫外線遮断効果に優れ、触媒活性が欠けており、または高温にさらされた後であっても結晶サイズの増加を少ししか示さず、その比表面積が高水準に維持される、ナノサイズの金属酸化物固溶体に関する。
【0002】
背景技術
金属酸化物による固溶体の形成は、金属酸化物の新たな応用分野を広げることができる。すなわち、金属酸化物固溶体は個々の金属酸化物より広範囲な分野に適用することができる。例えば、ナノサイズの(nano-sized)金属酸化物固溶体は、紫外線遮断、化学触媒反応、光学装置などの様々な産業分野において用途が見出されている。
【0003】
金属酸化物固溶体の製造は、材料が処理される相によって、気相法、液相法および固相法に分類され得る。
【0004】
火炎燃焼熱分解法(flame combustion pyrolysis)、レーザ気化法、プラズマ気化法、およびスプレー熱分解法を例とする気相法は、一般に金属または金属前駆体を気化させた後、酸化することを含む。
【0005】
米国特許公開第2002/018741Alには、火炎燃焼熱分解法の使用による、様々な金属酸化物とチタニアの固溶体の製造が開示されており、チタニアは、Al23、PtO2、MgOおよび/またはZnOと固溶体を形成すると、光触媒活性の改善を示し得ると記載されている。発熱性(pyrogenic)工程は、個々の金属酸化物を製造するときと同様に簡単であり、均一な微細粒子を製造することができるという利点がある。しかし、この工程は、エネルギー消費が多く、設備が高価であり、生産性が低いという欠点がある。
【0006】
典型的な固相法は、焼成合成および機械化学的合成である。焼成法は、無機粒子の製造のために伝統的に用いられており、前駆体を炉において高温で長時間、酸素存在下で熱分解して金属酸化物を製造し、その金属酸化物を結晶化した後、微粒子に粉砕することを含む。焼成法は、簡単であるが、生成物中に不純物が入りやすく、高温で長時間反応させることを要するという欠点がある。
【0007】
Nature Materials, Vol.1,123-128(2002)では、リチウム二次電池の陽極材料であるLiFePO4の電気伝導度を向上させるために、Mg2+、Al3+、Ti4+、Nb5+および/またはW6+)のような様々な金属をドープする、機械化学的合成法が紹介されている。このような機械化学的合成法は、金属前駆体の表面を、その上で反応が起こるのに十分なほど活性化するための機械的刺激(高速ボールミリング(milling))を特徴とする。しかし、ミリング工程では、バイアルから不純物が入ることがある。更に、機械化学的合成は、長い反応時間および別の焼成工程を要する。
【0008】
液相法は、熱水合成(hydrothermal synthesis)技術またはゾル−ゲル技術等を含む。米国特許第5,269,972号は、ゾル−ゲル技術によるドープされた酸化亜鉛マイクロスフィア(microspheres)の製造方法を開示している。この方法は、均一な球状微粒子を製造することができるが、大量生産には適用できない。
【0009】
液相法の中で最も広く用いられている熱水合成技術は、熱的合成のための反応媒体または反応物として水を用いる。EP1,055,642A2には、熱水合成技術を使用する金属酸化物がドープされた酸化セリウムの製造が記載されている。この先行技術によると、ドーパント(dopants)としての金属イオンは、Ce4+よりイオン半径が大きいか、または原子価(valance)が低くなければならない。これら条件を満たす金属イオンには、Ca2+、Y3+、La3+、Nd3+、Eu3+、Tb3+、Sm3+、Mg2+、Sr2+、Ba2+およびCe3+が含まれる。金属酸化物がドープされた酸化セリウムは、高い紫外線遮断性、低い触媒活性および優れた透明性を持っているため、紫外線遮断化粧品材料として適し得る。
【0010】
ZnOがドープされたCeO2は、優れた紫外線遮断効果を示すが、酸化触媒活性が低いと報告されている(Ruxing Li et al., Materials Chemistry and Physics,75,39−44(2002))。熱水合成技術により、比較的低い温度および圧力において、ナノサイズの粒子を製造することができる。しかし、熱水合成技術は、高価な酸化剤の使用、副産物の生成、および廃酸処理のための後工程という、厄介な欠点を有する。更に、熱水合成のためには、長期の反応時間および生成された粒子の焼結が必要とされる。
【0011】
紫外線は、波長によってUV−AおよびUV−Bに更に分類される。これら紫外線の両方は、肌に対して非常に有害である。例えば、肌は、UV−Aに過度にさらされると、黒くなり(日焼け(sub-tan))、UV−Bの場合は赤くなる(ひどい日焼け(sub-burn))。よって、有機または無機紫外線遮断材料の開発は、UV−AとUV−Bの両方に対する保護を目的としてきた。
【0012】
今まで開発されてきた有機紫外線遮断材料の中で、効果的なUV−A遮断性を有するものは稀である。また、有機紫外線遮断材料は、除去困難な皮膚刺激を引き起こすことがわかっている。よって、そのような開発研究は、無機紫外線遮断材料、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛等に注目している。しかし、無機紫外線遮断材料は、それらの触媒活性のため、併用される有機材料、および/または皮膚表面上の脂質成分を分解し得る。よって、触媒活性を低下させるとともに紫外線遮断効果を向上することが重要である。無機材料は、粒子サイズが小さいほど紫外線遮断能はより効果的になる。更に、60nm以下の無機粒子は透明であり、かつ優れた紫外線遮断効果を示す。しかし、サイズ低減により触媒活性も増加する傾向がある。従って、これらの相反する機能特性を制御する必要がある。
【0013】
これに関連し、EP1,055,642A2は、優れた紫外線遮断効果および透明性を有し、触媒活性が低い、金属酸化物がドープされた酸化セリウムを開示している。しかし、ドープされた酸化セリウムの性質を改善するためにしなければならないことがたくさんある。
【0014】
酸化セリウム、 酸化ジルコニウムおよび酸化セリウム複合材料(composites)は、酸素貯蔵用途(oxygen storage application)に使用されてきた。自動車排気ガス用3元触媒(three-way catalysts)は、14.6程度の狭い空燃比(air/fuel ratio)範囲では、一酸化炭素(CO)、炭化水素および窒素酸化物(NOx)に対する転換効率に優れるが、その範囲外では効率は急激に低下する。Ce(III)からCe(IV)またはその逆の転換が速いので、酸化セリウムは、燃料が希薄な操作(fuel lean operation)では酸素を貯蔵するために、燃料が豊富な操作(fuel rich operation)では酸素を放出するために使用することができる。
【0015】
燃料希薄:Ce(III)23+1/2O2→Ce(IV)O2
【0016】
燃料豊富:Ce(IV)O2→Ce(III)23+1/2O2
【0017】
空燃比の変化が小さくても三元触媒の転換効率が大きく減少するという問題を防ぐことができるので、酸化セリウムは、1990年代初めから、三元触媒とともに使用されてきた。自動車排気ガス用三元触媒は、必然的に高温にさらされる。一般に、酸化セリウムの耐熱性は高くない。従って、高温にさらされると、酸化セリウムは、細孔充填(pore filling)および結晶子の焼結が起こり、その結果、表面積が大きく減少し、結晶子サイズが大きく増加し、酸素貯蔵能および酸素移動性 (mobility)が低下する。
【0018】
これらの問題を克服するため、様々な試みがなされてきた。
【0019】
酸化ジルコニウムと混合すると、特に酸化ジルコニウムと固溶体を形成すると、酸化セリウムの耐熱性ならびに酸素を貯蔵および放出する能力が向上することがわかったので、酸化ジルコニウム−酸化セリウム混合酸化物は、自動車排気ガス用三元触媒に適用されてきた。第三成分の添加が、酸化セリウム/酸化ジルコニウム複合材料の耐熱性および酸素貯蔵能の向上をもたらし得ること、ならびに、製造方法および/または組成が、得られる複合材料の性能に対して大きな効果を有することも知られている。
【0020】
酸化セリウム/酸化ジルコニウム複合材料は、それらの前駆体を共沈させ、共沈物を500〜900℃で焼成することにより簡単に製造することができる(特開平4−55315号公報)。共沈では、pHによってセリウム前駆体の溶解度はジルコニウム前駆体の溶解度と大きく異なるので、共沈物の組成は不均一である。更に、固溶体は共沈段階では形成されないので、焼成工程を行わなければならない。
【0021】
酸化セリウムにジルコニウム水溶液を含浸させた後、含浸物を700〜1200℃で焼成することにより、酸化セリウム/酸化ジルコニウム複合材料が製造される(特開平4−284847号公報)。しかし、これら複合材料は、一次粒子サイズが粗く、組成が不均一である。
【0022】
上記2つの方法は、いずれも固溶度(solid solubilities)が、それぞれ約40%、20%と不十分であり、約100%の十分な固溶度を得るためには、高温、好ましくは1600℃程度での焼成工程が必要となる。しかし、それら固溶体は、結晶子サイズが例えば1,000nm以上と大きく、比表面積が例えば1m2/g以下と小さいため、自動車排気ガス用酸素貯蔵材料としては不適当である。
【0023】
韓国特許第0313409号は、セリウム/ジルコニウム原子比が1以上であり、任意にイットリウム、スカンジウムまたは希土類金属(原子番号57〜71の元素)酸化物が添加される、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムに基づく組成物であって、900℃で6時間焼成した後35m2/g以上の比表面積を有する組成物を開示している。この組成物は、液体媒体中でセリウム化合物、ジルコニウム化合物、および必要に応じてイットリウム、スカンジウムまたは希土類金属化合物を混合および加熱し、こうして生成された沈殿物を焼成することによって製造される。前述のように、沈殿物の結晶化度を高めるために行われる焼成は、結晶子のサイズを過度に増加させる原因となり得る、
【0024】
米国特許第5,908,800号には、Ce(III)およびジルコニウムを含む液体混合物を製造する段階、その液体混合物を炭酸塩および重炭酸塩と接触させて反応中に中性または塩基性pHを示す反応媒体を形成する段階、炭酸セリウムを含む沈殿物を回収する段階、およびその沈殿物を焼成する段階を含む、単一立方相の混合セリウムジルコニウム系組成物の製造方法が記載されている。800℃で6時間焼成した後、組成物の比表面積が20m2/g以上となることがわかっているが、これは依然として実用的適用には不十分である。
【0025】
日本特許第3341973号には、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、および必要に応じてアルカリ土類金属元素またはセリウム以外の希土類元素から選ばれる少なくとも一つを含む混合物の固溶度を70%以上、好ましくは90%以上に高めることにより、酸素貯蔵能を高めると共に、平均直径が100nm以下、好ましくは12nm以下であり、比表面積が20m2/g以上、好ましくは50m2/g以上である結晶子を含む、酸化物固溶体粒子の製造技術が開示されている。その固溶体粒子は、セリウム化合物およびジルコニウム化合物の水溶液に界面活性剤とアルカリ性材料または過酸化水素を添加して沈殿物を得る第1工程、ならびにその沈澱物を250℃で加熱して酸化セリウムへの酸化ジルコニウムの溶解を促進させることにより酸化物固溶体粒子を得る第2工程によって製造される。実施例19には、固溶体粒子は、比表面積が80m2/gであり、結晶子の平均直径が6nmであると記載されている。その粒子を300〜1200℃で5時間熱処理すると、比表面積が75m2/gから5m2/gに減少し、結晶子の平均直径は6nmから22nmに増加する。この事実から、その粒子は依然として耐熱性が不十分であると考えられる。
【特許文献1】米国特許公開第2002/018741Al
【特許文献2】米国特許第5,269,972号
【特許文献3】EP1,055,642A2
【特許文献4】特開平4−55315号公報
【特許文献5】特開平4−284847号公報
【特許文献6】韓国特許第0313409号
【特許文献7】米国特許第5,908,800号
【特許文献8】日本特許第3341973号
【非特許文献1】Nature Materials, Vol.1,123-128(2002)
【非特許文献2】Ruxing Li et al., Materials Chemistry and Physics,75,39−44(2002)
【0026】
発明の開示
技術的課題
本発明のために、本発明者らは、長い反応時間および副産物の処理のための後工程などの経済的問題を克服することを目的として、ナノサイズの金属酸化物固溶体粒子を製造するために徹底的な(intensive and thorough)研究を行った結果、亜臨界(subcritical)または超臨界(supercritical)条件下で少なくとも2種の金属塩を含む水性金属塩溶液を水と連続的に反応させることにより、焼結工程を行うことなく、金属酸化物固溶体の微粒子を製造することができることを見出した。
【0027】
従って、本発明の目的は、単一金属酸化物よりも有利な物性を有し、かつ経済的に有利な金属酸化物固溶体の製造方法を提供することにある。
【0028】
本発明の他の目的は、紫外線遮断効果に優れ、触媒活性が欠けており、または、高温にさらされた後であっても結晶子サイズの増加を少ししか示さず、その比表面積が高水準に維持される、ナノサイズの金属酸化物固溶体を提供することにある。
【0029】
本発明の更なる目的は、金属酸化物固溶体の用途を提供することにある。
【0030】
技術的解決手段
本発明の第一の態様によれば、水および少なくとも2種の水溶性金属化合物を含む反応混合物を200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることを含む金属酸化物固溶体の製造方法であって、前記反応混合物は合計0.01〜30重量%の量の金属化合物を含み、かつ前記固溶体は1〜1,000nmの結晶子サイズを有する、金属酸化物固溶体の製造方法が提供される。第一の態様の好ましい態様において、前記反応混合物は、水を予備加熱および予備加圧し、これとは別途に、金属化合物を含む水性混合金属溶液またはスラリーを製造し、ならびに前記予備加熱および予備加圧された水を前記混合金属溶液またはスラリーと混合することにより提供される。
【0031】
本発明の第二の態様によれば、(i)水、(ii)水溶性セリウム化合物、ならびに(iii)亜鉛化合物、イットリウム化合物、スカンジウム化合物、セリウムを除くランタニド(Lanthanides)の化合物およびアルカリ土類金属化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる水溶性金属化合物を含む反応混合物を、200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることを含む金属酸化物固溶体の製造方法であって、前記反応混合物は合計0.01〜30重量%の量の金属化合物を含み、かつ前記固溶体は1〜100nmの結晶子サイズを有する、金属酸化物固溶体の製造方法が提供される。第二の態様の好ましい態様において、前記反応混合物は、水を予備加熱および予備加圧し、これとは別途に、水溶性セリウム化合物および水溶性金属化合物を含む水性混合金属溶液またはスラリーを製造し、ならびに前記予備加熱および予備加圧された水を前記混合金属溶液またはスラリーと混合することにより提供される。上記で製造された金属酸化物固溶体は、紫外線遮断分野に適用され得る。
【0032】
本発明の第三の態様によれば、(i)水、(ii)水溶性セリウム化合物、および(iii)水溶性ジルコニウム化合物を含む反応混合物を、200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることを含む金属酸化物固溶体の製造方法であって、前記反応混合物は、前記セリウム化合物および前記ジルコニウム化合物を、合計0.01〜30重量%の量で含み、かつ前記固溶体は1〜10nmの結晶子サイズおよび少なくとも100m2/gの比表面積を有する、金属酸化物固溶体の製造方法が提供される。第三の態様の好ましい態様において、前記反応混合物は、水を予備加熱および予備加圧し、これとは別途に、水溶性セリウム化合物および水溶性ジルコニウム化合物を含む水性混合金属溶液またはスラリーを製造し、ならびに前記予備加熱および予備加圧された水を前記混合金属溶液またはスラリーと混合することにより提供される。別の態様では、前記反応混合物は、スカンジウム化合物、イットリウム化合物およびセリウムを除くランタニド金属の化合物から選ばれる少なくとも1種の水溶性金属化合物を更に含む。上記で製造された金属酸化物固溶体は、酸素貯蔵に適用され得る。
【0033】
有利な効果
以下に記載するように、少なくとも2種の水性金属塩溶液を、亜臨界または超臨界条件下で連続的に反応させる本発明の方法により、ナノサイズの金属酸化物固溶体粒子を、焼結工程を行うことなく、短時間で製造することができる。
【0034】
また、本発明により製造される金属酸化物固溶体は、紫外線遮断効果に優れるとともに触媒活性がなく肌に優しいので(being friendly to the skin)、紫外線遮断剤として適している。更に、前記固溶体は、高温にさらされても結晶子サイズの増加を少ししか示さず、その比表面積は高水準に維持されるので、酸素貯蔵成分として効果的に作用し得る。更に、本発明により、亜臨界または超臨界水を用いる方法により製造される金属酸化物固溶体は、ナノサイズに合成される(in nano size on synthesis)とともに、体の上で(over body)高い固溶度を示し、かつ組成均一性に優れる。
【0035】
図面の説明
本発明の前記および他の目的、特徴ならびに利点は、以下の詳細な説明および添付図面から明確に理解されるであろう。図中:
【0036】
図1は、実施例2において製造された酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体粒子、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび対照の時間による電気伝導度を示すグラフである;
【0037】
図2は、実施例2において製造された酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体のUV−VIS透過率スペクトルである;ならびに、
【0038】
図3は、(実施例3において製造された)酸化セリウム−酸化ジルコニウム固溶体および(実施例12において製造された)酸化セリウム−酸化ジルコニウム−酸化ランタニム(lanthana)固溶体のTPRを、温度に対してプロットしたグラフである。
【0039】
最良の形態
本発明の第一の態様によれば、金属酸化物固溶体は、水および少なくとも2種の水溶性金属化合物を含む反応混合物を200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることによって製造される。
【0040】
水は、脱イオン水(deionized water)が好ましい。金属化合物は、水溶性であれば特に制限なく使用され得る。IA族、IB族、IIA族、IIB族、IIIA族、IIIB族、IVA族、IVB族、IA族、I族B、VIA族、VIB族、VIIA族、VII
B族、VIIIB族、ランタニドおよびアクチニド(Actinides)を含む遷移金属ランタニドの元素から選ばれる金属ならびにそれらの組み合わせが有用である。本発明において有用な金属元素の具体例としては、Al、Sc、Ga、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Nb、La、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Cd、Ce、Pr、Nd、Sm、EuおよびGdが挙げられる。
【0041】
本発明において、固溶体中の2種以上の金属の比は、金属酸化物の適用分野および使用技術によって異なり得る。
【0042】
本発明において有用な金属化合物は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、その例としては、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、有機酸塩、および金属錯体が挙げられ、水への溶解度、設備の腐食、および経済性の観点から、硝酸塩およびヨウ化物が好ましい。
【0043】
本発明によれば、金属化合物は、水溶液またはスラリーとして使用され得る。実現可能性(feasibility)および連続装置への正確な量の供給を考慮すると、水溶液がより好ましい。使用される2種以上の金属化合物の総重量は、反応混合物の総重量に基づき、約0.01〜30%、より好ましくは約0.05〜15%である。金属化合物の使用量が少なすぎると、工程の生産性が低すぎる。他方、金属化合物の使用量が多すぎると、得られる混合酸化物組成物の粘性が高すぎて装置から連続的に流すことができない。
【0044】
本発明によれば、連続的な反応は、200℃以上および180bar以上、好ましくは200〜700℃および180〜550bar、より好ましくは300〜550℃および200〜400barの亜臨界または超臨界条件下で行われる。例えば、反応温度が200℃未満(below 200℃)、または反応圧力が180bar未満では(below 180 bar)、結晶化度が不十分な大きな粒子が形成される。他方、温度または圧力が過度に高いと、そのような条件での使用に適した装置および材料を提供することが困難となる。
【0045】
本発明の好ましい態様によれば、水(好ましくは、脱イオン水)は、短時間で所望の反応温度および圧力に達するように、予め予備加熱および予備加圧され、水性混合金属塩溶液またはスラリーと連続的に混合される。予備加圧は、180bar以上の圧力で行われることが好ましい。予備加熱については、温度は金属酸化物の種類に依存し、室温のように、金属塩の加水分解を引き起こさない程度の低温であることが好ましい。上記のように、短時間で所望の反応条件に達することにより、昇温および昇圧時間が長くなると発生し得る結晶子サイズまたは結晶子サイズ分布の過度の上昇が防止される。
【0046】
固溶効率(solid dissolution efficiencies)、粒子サイズ、金属酸化物の固溶体の形状および物性の制御ならびにそれらの製造速度の制御のために、本発明の反応の前または後に、アンモニアのようなアルカリ溶液または硫酸のような酸性溶液が、全金属化合物1モル当たり0.1〜20モルの量で添加され得る。更に、反応の前または後に、水素のような還元剤または酸素もしくは過酸化水素のような酸化剤が、全金属化合物1モル当たり0.1〜20モルの量で添加され得る。
【0047】
アルカリもしくは酸性溶液、および/または還元剤もしくは酸化剤を添加すると、金属酸化物の固溶度が向上するだけではなく、得られる粒子のサイズが小さくなる。また、アルカリもしくは酸性溶液、および/または還元剤もしくは酸化剤の添加量と添加技術によって、球状、角状、板状等の所望の形状の金属酸化物粒子を製造することができる。更に、固溶度、粒子サイズおよび形状により、金属酸化物の物性を制御することができる。
【0048】
前述のように、水性金属化合物溶液またはスラリーは、加水分解反応を促進するために、まずアルカリ溶液、好ましくはアンモニア水と混合され、次いで、脱水条件を達成するために、予備加熱および予備加圧された水(好ましくは脱イオン水)と混合される。加水分解により、水酸化物が生成され得、それらの溶解度は、酸性度および温度によって大きく変化するので、溶液の酸性度および温度は、生成された金属水酸化物の種類によって適切に調整すべきである。
【0049】
金属酸化物固溶体の微粒子を特定の目的に適用するために、本発明は、金属酸化物固溶体の微粒子のスラリーを冷却する工程、そのスラリーから微粒子を濃縮し単離する工程、およびそれらを乾燥させる工程を更に含み得る。冷却は、熱交換器を使用して行うことができる。濃縮および単離のためには、遠心分離および/またはろ過技術が採用され得る。乾燥技術の具体例としては、オーブン乾燥、凍結乾燥、およびスプレー乾燥が挙げられる。高温および高圧で噴霧することにより、単離と乾燥を同時に行うことができる。必要があれば、洗浄工程を更に行うことができる。
【0050】
本発明の第一の態様によって製造された金属酸化物固溶体の微粒子の結晶子サイズは、1〜1,000nm、より好ましくは1〜500nmの範囲である。例えば、結晶子サイズが1nm未満(below 1nm)では、取り扱い難く、粒子間で過度の凝集(aggregation)が起こり、1次または2次粒子のサイズの増加が引き起こされる。他方、結晶子サイズが1000nmを超えると、微粒子の物性が有利ではない。
【0051】
結晶子サイズは、XRDピークの(hkl)面の半値幅(full width at half maximum)からシェラー(Scherrer)式を用いて計算される:
【0052】
hkl=Kλ/(βcosθ)
【0053】
この式において、Dhklは(hkl)格子面の結晶子サイズ、Kはシェラー(Scherrer)定数(ここでは0.9)、λはX線(CuXα)の波長、βは試料の回折ピークの半値幅(補正値)であり、θはX線の(hkl)面に対する入射角である。
【0054】
本発明の第二の態様によれば、紫外線遮断効果に優れ、かつ従来の金属酸化物溶液より触媒活性がはるかに低い、紫外線遮断性であり肌に優しい(skin-friendly)、ナノサイズの金属酸化物固溶体粒子が提供される。
【0055】
本発明の第二の態様の金属酸化物固溶体は、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、セリウムを除くランタニドの酸化物、アルカリ土類金属酸化物、およびそれらの組み合わせから選ばれる金属酸化物を含む酸化セリウム固溶体であり、それは、(i)水、(ii)水溶性セリウム化合物、ならびに(iii)亜鉛化合物、イットリウム化合物、スカンジウム化合物、セリウムを除くランタニドの化合物およびアルカリ土類金属化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる水溶性金属化合物を含む反応混合物を、200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることによって製造される。使用される全金属化合物の総量は、反応混合物の重量に基づき、約0.01〜30%、好ましくは約0.05〜15%である。前述のように、短時間で所望の反応温度および圧力条件を達成できるように、水(好ましくは、脱イオン水)を、水性混合金属溶液またはスラリーと混合する前に、予備加熱および予備加圧することが好ましい。水性混合金属溶液またはスラリーも、予備加圧および予備加熱した水と混合する前に、予備加圧することが更に好ましい。
【0056】
第二の態様で使用される水溶性セリウム化合物および他の金属化合物は、塩の形であることが好ましい。セリウムおよび他の金属に適する塩は、同一でも異なってもよく、それらの例としては、水酸化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩および有機酸塩が挙げられ、硝酸塩、炭酸塩および水酸化物が好ましい。セリウム化合物以外は、亜鉛化合物、イットリウム化合物およびカルシウム化合物がより好ましく、単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0057】
紫外線遮断効果を向上させるためには、最終生成物の固溶体中の酸化セリウムに対する他の金属酸化物のモル比は、約0.01〜0.6、好ましくは約0.03〜0.5である。この範囲内で、反応混合物中のセリウム化合物および他の金属化合物の量を調整することができる。
【0058】
本発明の第二の態様の好ましい態様において、水性混合金属溶液またはスラリーは、加水分解反応を促進するためにアルカリ溶液、好ましくはアンモニア水と混合され、その後、脱水条件を達成するために、得られた混合物が予備加熱および予備加圧した水(好ましくは脱イオン水)と混合される。水酸化物は、加水分解によって生成することができ、それらの溶解度は、水溶液またはスラリーの酸性度および温度によって大きく変化する。従って、水酸化物の溶解による過度の流出を防ぐために、アンモニア水の濃度は、得られる溶液またはスラリーの酸性度がpH4以上、好ましくはpH7以上に維持されるようにする。また、アンモニア−混合溶液またはスラリーの温度は、脱水反応が起こらない程度の低温、例えば200℃以下に維持することが好ましい。
【0059】
本発明の第二の態様によって製造される金属酸化物−酸化セリウム固溶体は、結晶子サイズが1〜100nm、好ましくは1〜60nmの範囲である。例えば、結晶子サイズが100nmを超えると、酸化セリウム物固溶体は、十分な紫外線遮断効果を示すことができず、かつ透明性が低下する。他方、結晶子サイズが1nm未満では、酸化セリウム固溶体粒子は、皮膚に不快な感触を与え、かつ取り扱いが困難である。特に、結晶子サイズ1〜100nmの酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体粒子は、紫外線遮断効果に優れるとともに触媒活性が低い。これら性質を利用し、本発明によるナノサイズの金属酸化物−酸化セリウム固溶体は、効果的な紫外線遮断剤として使用され得る。
【0060】
本発明の第三の態様によれば、優れた耐熱性を有する酸素貯蔵用のナノサイズの酸化セリウム−酸化ジルコニウム固溶体が提供され、これにより、従来の三元触媒が酸素貯蔵成分とともに高温にさらされると、細孔の融着および結晶粒子の焼結により、比表面積が大きく減少し、結晶子サイズが大きく増加することに起因する不十分な耐熱性の問題が克服される。
【0061】
本発明の第三の態様による酸化セリウム−酸化ジルコニウム固溶体は、(i)水、(ii)水溶性セリウム化合物、および(iii)水溶性ジルコニウム化合物を含む反応混合物を、200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることによって製造され、ここで、使用される全金属化合物の総量は、反応混合物の重量の約0.01〜30%、好ましくは約0.05〜15%である。前述のように、所望の反応温度および圧力条件を短時間で達成できるように、水(好ましくは、脱イオン水)を、水性混合金属化合物溶液またはスラリーとの反応前に、予備加熱および予備加圧することが好ましい。水性混合金属化合物溶液またはスラリーも、予備加圧および予備加熱した水との混合前に、予備加圧することが更に好ましい。特に、固溶体は、最終固溶体中の酸化セリウムに対する酸化ジルコニウムのモル比が約0.1〜0.9の範囲の場合、酸素貯蔵用に有利に適用され得る。この範囲内で。反応混合物中のセリウム化合物およびジルコニウム化合物の量を調整することができる。
【0062】
必要に応じて、反応混合物は、(iv)イットリウム化合物、スカンジウム化合物、およびセリウムを除くランタニド金属の化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を更に含み得る。好ましくは、イットリウム化合物、ランタン化合物、プラセオジム化合物およびネオジム化合物からなる群から選ばれる金属化合物である。この場合、この金属酸化物は、最終固溶体中にモル基準で0.001〜0.2の量で存在することが好ましい。
【0063】
本発明において使用されるセリウム、ジルコニウム、および他の金属化合物は、塩の形であることが好ましい。セリウム、ジルコニウムおよび他の金属に適した塩は、同一でも異なってもよく、それらの例としては、水酸化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩および有機酸塩が挙げられ、硝酸塩、炭酸塩および水酸化物が好ましい。ランタニド金属の中では、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、およびサマリウム(Sm)が好ましい。
【0064】
本発明の第三の態様の好ましい態様において、水性混合金属溶液またはスラリーは、加水分解反応を促進するため、アルカリ溶液、好ましくはアンモニア水と混合され、その後、脱水条件を達成するために、得られた混合物は予備加熱および予備加圧した水(好ましくは脱イオン水)と混合される。水酸化物は、加水分解によって製造することができ、それらの溶解度は、水溶液またはスラリーの酸性度および温度によって大きく変化する。よって、水酸化物の溶解による過度の流出を防ぐために、アンモニア水の濃度は、得られる溶液またはスラリーの酸性度がpH4以上、好ましくはpH7以上に維持されるようにする。また、アンモニア混合溶液の温度は、脱水反応が起こらない程度の低温、例えば200℃以下に維持することが好ましい。
【0065】
本発明の第三の態様によって製造された酸化セリウム−酸化ジルコニウム固溶体粒子は、好ましくは、結晶子サイズが1〜10nmの範囲であり、比表面積が100m2/g以上、好ましくは130m2/g以上である。結晶のサイズは結晶子のサイズに比例するので、結晶子サイズが小さいほど結晶のサイズは小さい。従って、結晶子サイズが小さければ、結晶表面に存在する酸素分子の数(population)を多くすることができるだけでなく、触媒活性成分として含浸させた貴金属の分散を促進することができ、それにより酸素貯蔵能を高めることができる。しかし、結晶子サイズが小さすぎると、結晶の凝集が起こり、高温にさらされたときの微細孔の融着が増加し、酸素貯蔵性が劣化する。比表面積は、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法に基づくASTM D3663−92による窒素吸着によって測定される。比表面積が大きいほど、より多くの割合の酸素分子が複合材料の表面に回収され、かつ酸素の移動度が向上し、それにより酸素貯蔵能がより高くなると考えられる。更に、比表面積が大きいほど、触媒活性成分として含浸された貴金属元素の分散に有利なので、優れた触媒活性を有する自動車排気ガス用触媒を製造することができる。
【0066】
1,000℃で6時間焼成される場合、本発明の第三の態様による酸化セリウム−酸化ジルコニウム固溶体は、20nm以下、好ましくは15nm以下の結晶子サイズおよび20m2/g以上、好ましくは30m2/g以上の比表面積を維持する。また、900℃での6時間の焼成では、比表面積は50m2/g以下にて低下しない。
【0067】
一般に、高温にさらされたときの比表面積の低下により、結晶表面上に存在する酸素分子の割合は低減され、含浸された貴金属の埋没(burial)、焼結または合金化が引き起こされ、それにより酸素貯蔵能および触媒性能は大きく劣化する。従って、高温にさらされたとしても比表面積が大きいほど好ましい。
【0068】
従来の共沈法または含浸法によって製造された混合酸化セリウム−酸化ジルコニウム(2成分系)、または酸化セリウム−酸化ジルコニウム−第3金属酸化物(3成分系)を含む粒子は、結晶子サイズは20nm以下に維持され得るが、900℃で6時間焼成した後には35m2/g以上の比表面積を維持することは困難であり、1000℃で6時間焼成した後には10m2/g以上の比表面積を維持することは難しい。
【0069】
一方、本発明の酸化セリウム−酸化ジルコニウム固溶体は、高温での結晶子サイズの増加はごくわずかであり、かつ焼成後であっても比較的大きな比表面積を有する。酸化セリウム−酸化ジルコニウム組成物を含む粒子は、優れた耐熱性を示し、それは、本発明の製造方法により、高い固溶度で形成された固溶体の非常に均一な相を有する、結晶性の高いナノサイズの粒子が得られるという事実に起因すると考えられる。
【0070】
優れた熱的性質を利用して、本発明の酸化セリウム−酸化ジルコニウム固溶体は、自動車浄化触媒、化学反応触媒、固体電解質、電極材料、セラミック分散強化剤、紫外線遮蔽剤、酸素センサー等を含む様々な分野に適用され得る。最も有望な分野の1つは、自動車排気ガス用三元触媒用の酸素貯蔵/放出能に関する。三元触媒は、一酸化炭素(CO)、炭化水素および窒素酸化物(NOx)を、酸化または還元により、二酸化炭素および窒素のような環境負荷または毒性の低い材料に転換する。典型的には、三原触媒は、Pt、Pd、およびRhのような貴金属、アルミナおよび酸素貯蔵/放出材料を、多孔質ハニカム上にウォッシュコーティング(washcoating)することによって製造される。
【0071】
発明の態様
実施例1
脱イオン水を、1分当たり80gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、550℃に予備加熱し、250barに予備加圧した。それとは別途に、硝酸イットリウム0.99重量%および硝酸ジルコニウム11.0重量%を含む水性混合金属溶液を、1分当たり8gの速度で外径1/4インチの各チューブを通してポンピングした。アンモニア水36.1重量%を、1分当たり8gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、250barに加圧した。硝酸イットリウムと硝酸ジルコニウムとを含む水性混合金属溶液を、アンモニア水と1次混合器中で混合(1次混合)し、次いで予備加熱および予備加圧された脱イオン水と、加圧条件で2次混合器中で混合(2次混合)した後、400℃で0.2秒間反応させた。金属硝酸塩の濃度は、合計1.0重量%であった。こうして生成されたスラリーを冷却し、遠心分離して粒子を単離した。
【0072】
それら粒子は、ICP−MSによって分析したところ、酸化イットリウムを3モル%含有する酸化ジルコニウムであり、SEMによって測定したところ、3〜20nmの範囲の直径を有する球状であることがわかった。酸化イットリウム特性を示すピークではなく、酸化ジルコニウム特性を示すピークが現れたXRD分析に基づき、それら粒子は酸化イットリウム−酸化ジルコニウム固溶体と確認された。それら粒子は、BET法によって測定したところ、比表面積は141m2/gであることがわかった。上記データにより、本発明の方法によって従来法より短時間(1秒以下)で合成されたにもかかわらず、酸化イットリウム−酸化ジルコニウム固溶体は、焼成を行うことなく高い結晶性を有することが示された。
【0073】
実施例2
脱イオン水を、1分当たり35gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、510℃に予備加熱し、300barに予備加圧した。それとは別途に、硝酸セリウム8.97重量%と硝酸亜鉛1.54重量%を含む水性混合金属溶液を、1分当たり4gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、300barに加圧した。その水性混合金属溶液とは別に、アンモニア水6.43重量%を、1分当たり3gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、300barに加圧した。加圧条件下で、硝酸セリウムおよび硝酸亜鉛を含む水溶液、アンモニア水ならびに予備加熱および予備加圧された脱イオン水を混合器中で混合した後、385℃で0.8秒間反応させた。金属硝酸塩の濃度は、合計1.0重量%であった。こうして生成されたスラリーを冷却し、遠心分離して粒子を単離した。
【0074】
それら粒子は、ICP−MSによって分析したところ、酸化亜鉛を20モル%含有する酸化セリウムであり、SEMによって測定したところ、10〜40nmの範囲のサイズを有する八面体状であることがわかった。酸化セリウム特性を示すピークは現れたが酸化亜鉛特性を示すピークは現れなかったXRD分析に基づき、それら粒子は酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体と確認された。XRDピークの半値幅からシェラー式を用いて計算したところ、結晶子サイズが10.3nmであることが示された。BET法によって測定したところ、それら粒子の比表面積は90m2/gであることがわかった。
【0075】
酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体1gとヒマシ油10gの混合物に、120℃で416ml/minの速度で空気を通し、その混合物から放出された空気を脱イオン水に通した後、伝導度を測定した。
【0076】
図1に示すように、酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体粒子は、触媒活性が大幅に低下した。図1中、比較材料として使用した酸化セリウムおよび酸化亜鉛は、それぞれ実施例1と類似の方法により、単一金属元素の硝酸塩から製造した。SEM分析により、酸化セリウムは20〜80nmのサイズの八面体状であり、酸化亜鉛は50〜200nmのサイズの球状であることがわかった。
【0077】
前記酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体2gを、4gのメチルセルロース、10gの酢酸エチル、および9gの酢酸ブチルと混合した後、酸化ジルコニウムボール(直径2.7mm)によってペイントシェーカーで48時間混合した。得られた混合物を、UV試験管の一面に薄くコートし、UV透過率を測定した。図2に示すように、UV A/B領域(400〜290nm)において透過率が減少したことにより、前記酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体が優れた紫外線遮断効果を有することが示された。
【0078】
上記データにより、本発明の方法によって従来法より短時間(1秒以下)で合成されたとしても、10nm以下のサイズの酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体は紫外線遮断能および皮膚への親和性に優れることが示された。
【0079】
実施例3
脱イオン水を、1分当たり80gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、550℃に予備加熱し、250barに予備加圧した。それとは別途に、硝酸ジルコニウム13.95重量%および硝酸セリウム4.05重量%を含む水性混合金属溶液を、1分当たり8gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、250barに加圧した。アンモニア水18重量%を、1分当たり8gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、250barに加圧した。加圧条件下で、硝酸ジルコニウムおよび硝酸セリウムを含む水溶液、アンモニア水ならびに予備加熱および予備加圧された脱イオン水を、混合器中で混合した後、380℃で0.2秒間反応させた。これら粒子を、オーブン中で100℃で乾燥させた後、900℃および1,000℃の炉内で6時間焼成した。900℃および1,000℃での焼成前後の粒子は、BET法によって測定したところ、それぞれ175、51および33m2/gの比表面積を有し、XRD半値幅からシェラーの式により計算したところ、それぞれ5.1、8.1および9.9nmの結晶子サイズを有することがわかった。
【0080】
実施例4
脱イオン水を、1分当たり80gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、550℃に予備加熱し、250barに予備加圧した。それとは別途に、硝酸ジルコニウム1.575重量%と硝酸セリウム16.425重量%を含む水性混合金属溶液を、1分当たり8gの速度で外径1/4インチの各チューブを通してポンピングしながら、250barに加圧した。アンモニア水10.8重量%を、1分当たり8gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、250barに加圧した。 加圧条件下で、硝酸ジルコニウムおよび硝酸セリウムを含む水溶液、アンモニア水ならびに予備加熱および予備加圧された脱イオン水を 混合器中で混合した後、400℃で0.2秒間反応させた。こうして生成されたスラリーを冷却して使用し、そこから粒子を単離した。これら粒子をオーブン中で100℃で乾燥させた後、900℃および1,0000℃の炉内で6時間焼成した。900℃および1000℃での焼成前後の粒子は、BET法によって測定したところ、それぞれ170、48および30m2/gの比表面積を有し、XRD半値幅からシェラーの式により計算したところ、それぞれ4.8、7.9および9.3nmの結晶子サイズを有することがわかった。
【0081】
実施例5〜12
脱イオン水を、1分当たり96gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、所定の温度に予備加熱し、所定の圧力に予備加圧した。それとは別途に、硝酸ジルコニウム7.35重量%、硝酸セリウム11.96重量%および硝酸ランタン1.67重量%を含む水性混合金属溶液を、1分当たり8gの速度で外径1/4インチの各チューブを通してポンピングしながら、所定の圧力に加圧した。アンモニア水4.32重量%を、1分当たり8gの速度で外径1/4インチのチューブを通してポンピングしながら、所定の圧力に加圧した。加圧条件下で、硝酸ジルコニウム、硝酸セリウムおよび硝酸ランタンを含む水溶液を、アンモニア水と所定の温度で1次混合器中で混合(1次混合)し、次いで所定の温度および所定の圧力において2次混合器中で混合(2次混合)した後、0.2秒間反応させた。こうして生成されたスラリーを冷却して使用し、そこから粒子を単離した、これら粒子をオーブン中で110℃で12時間以上乾燥させた後、900℃および1000℃の炉内で6時間焼成した。900℃および1000℃での焼成前後の粒子の結晶子サイズを、XRD半値幅からシェラーの式によって計算した。結果を下記表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1から、合成時5〜7nmの範囲である結晶子サイズは、1,000℃で6時間焼成した後であってもほとんど変わらず維持される(6〜8nm)ことがわかる。また、比表面積(合成時130m2/g以上)は、900℃および1,000℃での6時間の焼成後、それぞれ適当な水準(50および30m2/g)に維持された。
【0084】
比較例1
酸化セリウム、酸化ジルコニウムおよび酸化ランタンを含む組成物(モル比:実施例5〜12と同様にCeO2:ZrO2:La23=0.4825:0.4825:0.035)を、従来の共沈法で製造した。硝酸セリウム水溶液、硝酸ジルコニウム水溶液および硝酸ランタン水溶液を、前記モル比となるような化学量論的量で混合した。金属元素の酸化物を使用し、得られた溶液の濃度を172g/lに調整した。この混合溶液を、アンモニア水と過酸化水素を含む水溶液にゆっくり加えた。アンモニア濃度は、金属硝酸塩の溶液に含まれる硝酸イオンの1.7倍に、過酸化水素濃度は、金属塩の溶液中に含まれる金属イオンの1/2に調整した。こうして形成された沈殿物を、濾過、洗浄し、300℃で乾燥させた。乾燥させた粒子を、900℃および1000℃で6時間焼成させた。300℃で乾燥させた試料、900℃および1,000℃で焼成させた試料は、XRD半値幅から計算したところ、結晶子サイズは、それぞれ6nm、20nmおよび32nmであり、BET法によって測定したところ、比表面積は、それぞれ50、10および2m2/gであることがわかった。
【0085】
[酸素貯蔵/放出能の評価]
TPR(Temperature Programmed Reduction)試験を行い、1,000℃で6時間焼成した実施例3および12の試料の酸素貯蔵/放出能を評価した。試料をTPR反応器の石英バイアル(quart vials)中に入れた。空気を反応器に導入しながら1時間500℃に維持し、徐々に室温に冷却した。次いで、空気をヘリウムガスに置換した。その後、ヘリウムの代わりに、1分当たり10℃の速度で昇温しながら水素とアルゴンの混合ガスを導入しつつ、酸素の還元による水素消費を、TCD(thermal conductivity detector)によって記録した。900℃で30分間維持した後、温度を徐々に冷却した。図3において、水素消費量を、温度に対して任意の単位 (arbitrary unit)でプロットした。図3ではグラフ下の面積(the area under the graph)が大きいほど、水素消費が多い。従って、図3のデータは、酸化セリウム−酸化ジルコニウム固溶体および酸化セリウム−酸化ジルコニウム−酸化ランタン固溶体が酸素貯蔵能に優れることを示す。
【0086】
実施例13〜16
硝酸ランタンの代わりに表2の金属硝酸塩を使用し、1次混合温度を25℃、2次混合温度を400℃、 圧力を250barにした以外は、実施例5〜12の工程を行った。実施例5〜12の組成物と同じモル比が得られるように、金属硝酸塩の濃度を調整した。金属化合物の種類および生成物の性質を、下記表2に示す。
【0087】
表2より、合成時の結晶子サイズ(10nm未満(below 10nm))は、1,000℃での6時間の焼成後にもほぼ変わらないことがわかる。また、比表面積(合成時130m2/g以上)は、900℃および1,000℃での6時間の焼成後、それぞれ適当な水準(50および30m2/g)に維持された。
【0088】
【表2】

【0089】
実施例17
実施例5〜12の硝酸ランタンの代わりに、硝酸イットリウムと硝酸ランタンの混合物を使用した。各硝酸塩の濃度は、生成物中の各金属のモル量が、実施例5〜12のランタンのモル量の1/2になるように、即ちY23=La23=0.0175となるように調整した。残りの条件は、実施例13〜16と同様であった。生成物の物性を下記表3に示す。
【0090】
表3より、1,000℃での6時間の焼成後であっても合成時の結晶子サイズ(10nm未満(below 10 nm))が維持されることがわかる。また、比表面積(合成時130m2/g以上)は、900℃および1,000℃での6時間の焼成後、それぞれ適当な水準(50および30m2/g)に維持された。
【0091】
【表3】

【0092】
産業上の利用可能性
以上説明したように、少なくとも2種の水性金属塩溶液を、亜臨界または超臨界条件下で連続的に反応させる本発明の方法によって、ナノサイズの金属酸化物固溶体粒子を、焼結工程を行うことなく短時間で製造することができる。
【0093】
また、本発明によって製造された金属酸化物固溶体は、紫外線遮断効果に優れるとともに触媒活性がないため肌に優しいので、紫外線遮断剤として適している。更に、前記固溶体は、高温にさらされたとき結晶子サイズの増加を少ししか示さず、比表面積は高水準に維持されるので、酸素貯蔵成分として効果的に作用し得る。更に、本発明により亜臨界または超臨界水を利用する方法によって製造される金属酸化物固溶体は、合成時ナノサイズであるとともに、体の上で高い固溶度および優れた組成均一性を示す。
【0094】
本発明の好ましい態様を説明のために記載したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に開示した発明の範囲および精神を逸脱することなく、様々な変更、付加および置換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、実施例2において製造された酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体粒子、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび対照の時間による電気伝導度を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例2において製造された酸化亜鉛−酸化セリウム固溶体のUV−VIS透過率スペクトルである。
【図3】図3は、(実施例3において製造された)酸化セリウム−酸化ジルコニウム固溶体および(実施例12において製造された)酸化セリウム−酸化ジルコニウム−酸化ランタニム(lanthana)固溶体のTPRを、温度に対してプロットしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水および少なくとも2種の水溶性金属化合物を含む反応混合物を200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることを含む金属酸化物固溶体の製造方法であって、前記反応混合物は合計0.01〜30重量%の量の金属化合物を含み、かつ前記固溶体は1〜1,000nmの結晶子サイズを有する、金属酸化物固溶体の製造方法。
【請求項2】
前記反応混合物は、水を予備加熱および予備加圧し;これとは別途に、水溶性金属化合物を含む水性混合金属溶液またはスラリーを製造し;ならびに前記予備加熱および予備加圧された水を前記混合金属溶液またはスラリーと混合することにより提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性金属化合物のそれぞれは、同一または異なり、かつ水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、有機酸塩または金属錯体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶性金属化合物中の各金属成分は、Al、Sc、Ga、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、y、Nb、La、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Cd、Ce、Pr、Nd、Sm、EuおよびGdからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水は、脱イオン水である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応前または反応中に、全金属化合物1モルに対し0.1〜20モルの量のアルカリまたは酸性溶液が添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応前または反応中に、全金属化合物1モルに対し0.1〜20モルの量の還元剤または酸化剤が添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ溶液は、アンモニア水である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記水性混合金属溶液またはスラリーを、アンモニア水とまず混合し、次いで前記予備加熱および予備加圧された水と混合する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(i)水、(ii)水溶性セリウム化合物、ならびに(iii)亜鉛化合物、イットリウム化合物、スカンジウム化合物、セリウムを除くランタニドの化合物およびアルカリ土類金属化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる水溶性金属化合物を含む反応混合物を、200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることを含む金属酸化物固溶体の製造方法であって、前記反応混合物は合計0.01〜30重量%の量の金属化合物を含み、かつ前記固溶体は1〜100nmの結晶子サイズを有する、金属酸化物固溶体の製造方法。
【請求項11】
前記反応混合物は、(i)水を予備加熱および予備加圧し;これとは別途に、(ii)水溶性セリウム化合物および(iii)水溶性金属化合物を含む水性混合金属溶液またはスラリーを製造し;ならびに前記予備加熱および予備加圧された水を前記混合金属溶液またはスラリーと混合することにより提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(iii)前記水溶性金属化合物は、水溶性亜鉛化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
(iii)前記水溶性金属化合物は、水溶性カルシウム化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記金属酸化物固溶体中の酸化セリウムに対する他の金属酸化物のモル比は、0.01〜0.6の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
請求項10によって製造された金属酸化物固溶体を含む紫外線遮断剤。
【請求項16】
(i)水、(ii)水溶性セリウム化合物、および(iii)水溶性ジルコニウム化合物を含む反応混合物を、200〜700℃で、180〜550barの圧力下で連続的に反応させることを含む金属酸化物固溶体の製造方法であって、前記反応混合物は、前記セリウム化合物および前記ジルコニウム化合物を、合計0.01〜30重量%の量で含み、かつ前記固溶体は1〜10nmの結晶子サイズおよび少なくとも100m2/gの比表面積を有する、金属酸化物固溶体の製造方法。
【請求項17】
前記反応混合物は、(i)水を予備加熱および予備加圧し;(ii)水溶性セリウム化合物および(iii)水溶性ジルコニウム化合物を含む水性混合金属溶液またはスラリーを製造し;ならびに前記予備加熱および予備加圧された水を前記混合金属溶液またはスラリーと混合することにより提供される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応混合物は、(iv)スカンジウム化合物、イットリウム化合物およびセリウムを除くランタニド金属の化合物から選ばれる少なくとも1種の水溶性金属化合物を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記金属酸化物固溶体中の酸化セリウムに対する酸化ジルコニウムのモル比は、0.1〜0.9の範囲である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
(iv)前記水溶性金属化合物からの金属酸化物は、前記金属酸化物固溶体中に、モル基準で0.001〜0.2の量で存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
(iv)前記水溶性金属化合物は、水溶性イットリウム化合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
(iv)前記水溶性金属化合物は、水溶性ランタン化合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記金属酸化物固溶体は、空気中で1000℃で6時間焼成した後、20nm以下の結晶子サイズおよび少なくとも20m2/gの比表面積を有する、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記金属酸化物固溶体は、空気中で1000℃で6時間焼成した後、15nm以下の結晶子サイズおよび少なくとも30m2/gの比表面積を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法によって製造された金属酸化物固溶体を含む酸素貯蔵成分。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504091(P2007−504091A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532058(P2006−532058)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001221
【国際公開番号】WO2004/103907
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(501242664)ハンファ ケミカル コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】