説明

金属錯体、発光材料及び発光素子

【課題】Irよりも産出量及び埋蔵量の多い金属を中心金属Mに用いた、発光効率、色純度等において優れた新規発光金属錯体、それを用いた光電素子の提供。
【解決手段】MがSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Cu、Zn、Y、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Pt、Au、及びHg等の群から選ばれる1つである金属錯体で、ハロゲン単座配位子を含まず、計算科学的手法により得られる最高占有分子軌道(HOMO)において、Mの最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和が、全原子軌道係数の2乗の和に対して占める割合が1/3以上であり、さらに計算科学的手法により得られる最低一重項励起エネルギー(S1)と、最低三重項励起エネルギー(T1)のエネルギー差(S1−T1)が0.1(eV)以上1.0(eV)以下であり振動子強度(f)が0.005以上1.0以下であることを特徴とする上記金属錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体、及び、金属錯体を含む発光材料、及び、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス発光素子の発光層に用いる発光材料として、三重項励起状態からの発光を示す金属錯体、又はこれを含む発光材料は、現在主に用いられている一重項励起状態からの発光を用いる蛍光材料よりも高い発光効率が期待できる。その理由は、理論的には、キャリアの再結合により生成される励起子の25%が一重項励起状態であり、残りの75%が三重項励起状態であるためである。すなわち、一重項励起状態からの発光(蛍光)を用いる場合、原理的には、25%が上限であるのに対し、三重項励起状態からの発光(燐光)を用いれば、原理的には3倍の発光効率が期待できる。さらに、エネルギーの相対関係から、25%の一重項励起状態から三重項励起状態への系間交差が効率良く起これば、原理的には4倍の効率が期待できる。
【0003】
一般に、三重項励起状態から一重項基底状態への遷移に伴う三重項励起状態からの発光(燐光発光)は、スピン反転を伴うため禁制遷移である。しかしながら、重原子金属を含む金属錯体においては、この禁制が重原子効果により解かれることにより発光する化合物が存在することがこれまでに知られている。例えば、三重項励起状態からの発光を示す金属錯体としては、イリジウムを中心金属とした、オルトメタル化錯体(Ir(ppy):Tris−Ortho−Metalated Complex of Iridium(III)with 2−Phenylpyridine)が高効率の緑色発光を示すことが知られており、この金属錯体を低分子系ホスト材料と組み合わせ、多層化したエレクトロルミネッセンス素子についても報告がなされている(非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】APPLIED PHYSICS LETTERS、Vol.75、No.1、p4、(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、イリジウムは産出量並びに埋蔵量の限られた金属である。したがって、これを用いる発光素子を大量に、かつ、安価に生産することは難しく、より産出量並びに埋蔵量の多い、より安価な金属を用いた、発光効率、安定性、色純度等に優れ得る燐光発光性金属錯体が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、イリジウムよりも産出量及び埋蔵量の多い金属を中心金属に用いた、発光効率、安定性、色純度等において優れ得る新規発光金属錯体を提供し、それを用いた光電素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、中心金属MがSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Pt、Au、及びHgからなる群から選ばれる1つである金属錯体であり、ハロゲン単座配位子を含まず、計算科学的手法により得られる最高占有分子軌道(HOMO)において、中心金属の最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和が、全原子軌道係数の2乗の和に対して占める割合が1/3以上であり、さらに計算科学的手法により得られる最低一重項励起エネルギー(S1)と、最低三重項励起エネルギー(T1)のエネルギー差(S1−T1)が0.1(eV)以上1.0(eV)以下であり最低一重項励起における振動子強度(f)が0.005以上1.0以下であることを特徴とする上記金属錯体を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属錯体は、イリジウムよりも産出量及び埋蔵量の多い金属を中心金属に用いた錯体であり、発光効率、安定性、色純度等に優れ得る。したがって、本発明の金属錯体を、エレクトロルミネッセンス素子等の光電素子に用いることにより、特性のより優れた素子を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、計算科学的手法により算出された最高占有分子軌道(HOMO)における中心金属の最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和が、全原子軌道係数の2乗の和において占める割合が、発光効率に強く相関することを見出し、本発明に至った。すなわち該割合が、1/3以上であることを特徴とする金属錯体において、発光効率・安定性に優れた特性が得られることを見出した。計算科学的手法により算出された最高占有分子軌道(HOMO)における中心金属の最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和が、全軌道の軌道係数の2乗の和において占める割合は、上述した通り1/3以上であることが好ましいが、1/3以上2/3以下であることが好ましく、7/20以上2/3以下であることがより好ましく、2/5以上2/3以下であることがさらに好ましく、1/2以上2/3以下であることが特に好ましい。
【0010】
中心金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Pt、Au、及びHgからなる群から選ばれる一つが挙げられるが、高効率を得るという観点からは、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、W、Re、Pt、及びAuが好ましく、より好ましくは、Ru、Rh、Pd、W、Re、Pt、及びAuであり、さらに好ましくはRe、及びPtであり、最も好ましくはPtである。
【0011】
上記した割合を算出するために用いる計算科学的手法としては、半経験的手法及び非経験的手法に基づいた分子軌道法や密度汎関数法等が知られている。例えば、構造最適化や励起エネルギーを求めるには、Hartree−Fock(HF)法、又は密度汎関数法を用いてもよい。本発明においては、量子化学計算プログラムGaussian03を用い、B3LYPレベルの密度汎関数法により、金属錯体の基底状態を構造最適化し、各軌道のポピュレーション解析を実施し、HOMOにおける中心金属の最外殻d軌道の占める割合を求めた。その際、基底関数としては、中心金属に対しては、LANL2DZを、それ以外の原子に対しては、6−31G*を用いて実施した。金属錯体におけるポピュレーション解析は次のとおりにして行った。即ち、上記した金属錯体のHOMOにおける、金属原子Mの最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和が全原子軌道係数の2乗の和に対して占める割合ρHOMO(%)は、下記式:
ρHOMO(%)=
Σid(CidHOMO/Σ(CHOMO×100(%)
に従って算出した。式中、id及びnは、それぞれ、上記計算手法及び基底関数にて考慮されるd軌道の数、及び全原子軌道の数を表す。CidHOMO、及びCHOMOは、それぞれ、HOMOのid及びnで表される原子軌道係数を表す。金属錯体におけるポピュレーション解析に関しては、例えばJOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY A 2002、Vol.106、p1634に記載がある。また、最低励起一重項エネルギー、最低励起三重項エネルギー、及び振動子強度については、構造最適化後、上記と同一の基底を用い、B3LYPレベルの時間依存密度汎関数法を用いて実施した。
【0012】
金属錯体からの発光を用いたエレクトロルミネッセンス素子における発光の劣化の原因は明らかにはなっていない。
【0013】
一般に、三重項励起状態から一重項基底状態への遷移に伴う三重項励起状態からの発光(燐光発光)は、禁制遷移であるため、三重項励起状態の寿命は、通常の一重項状態の寿命と比較して、一般に数桁以上長い。したがって、エネルギー的に高い不安定な状態である励起状態がより長い時間存在することになる。それゆえに、近傍に存在する化合物との反応を通じての失活過程や、三重項励起状態の金属錯体が多数存在し、飽和な状態になることにより、いわゆる三重項−三重項消滅として知られる現象が生じやすく、燐光発光の効率へも影響を与えてしまうと考えられる。
【0014】
すなわち、本発明者は、安定な高効率発光を実現するためには、禁制遷移を解きやすく三重項励起状態の寿命が短い金属錯体を用いることが好ましく、前述したHOMOにおける中心金属の最外殻d軌道の割合で発光効率の高低を説明できることを見出した。さらに、本発明者は、最低非占分子軌道(LUMO)には、配位子の非占有π*軌道の寄与が主であることが効率の観点から好ましいことを見出した。
【0015】
また、燐光発光を最大限利用する観点からは、最低一重項励起における振動子強度(f)がゼロ以外の値を有する必要があるが、一般的には下限は少なくとも0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.025以上がさらに好ましく、0.035以上が特に好ましい。fの上限は金属錯体の一般的な性質から1.0以下であるが、好ましくは0.5以下で、より好ましくは0.3以下で、特に好ましくは0.25以下である。また一重項励起状態から三重項励起状態への遷移(系間交差)を起こりやすくすることが好ましいので、すなわち最低三重項励起エネルギー(T1)のエネルギー差(S1−T1)は、小さい方が好ましく、その上限は一般的に1.0(eV)以下であり、0.8(eV)以下が好ましい。(S1−T1)の下限は一般的に0.1(eV)以上であるが、0.12(eV)以上が好ましく、0.15(eV)以上がさらに好ましい。
fと(S1−T1)には適切な均衡が好ましく、通常f≦0.24×(S1−T1)+0.06とf≧0.24×(S1−T1)−0.06で規定される範囲内にあることが好ましく、f≦0.24×(S1−T1)+0.05とf≧0.24×(S1−T1)−0.05で規定される範囲内にあることがより好ましく、f≦0.24×(S1−T1)+0.04とf≧0.24×(S1−T1)−0.04で規定される範囲内にあることがさらに好ましく、f≦0.24×(S1−T1)+0.03とf≧0.24×(S1−T1)−0.03で規定される範囲内にあることが特に好ましい。この均衡のさらに好ましい状態は(S1−T1)の範囲によって若干異なる。(S1−T1)が0.28(eV)より大きい範囲では、上記に加えてfがさらに0.035以上が好ましく、0.07以上0.3以下がより好ましく、0.09以上0.3以下がさらに好ましく、0.1以上0.25以下が特に好ましい。またこのとき(S1−T1)は0.8(eV)以下が好ましく、0.6(eV)以下がさらに好ましく、0.5(eV)以下が特に好ましい。一方、(S1−T1)が0.1(eV)以上0.28(eV)以下の範囲では、上記に加えてfがさらに0.015以上が好ましく、0.025以上がさらに好ましく、0.025以上0.05以下がより好ましい。またこのとき(S1−T1)は0.12(eV)以上0.28(eV)以下が好ましく、0.15(eV)以上0.28(eV)以下がより好ましく、0.15(eV)以上0.26(eV)以下がさらに好ましい。
【0016】
金属錯体には、イオン性の錯体と非イオン性の錯体が存在する。有機EL素子等に用いる場合、イオン性錯体に対しては、場合によっては、系全体を中性にするためにカウンターイオンが必要となり、カウンターイオンと金属錯体の相互作用による安定性の低下、発光波長の変化、色純度の低下等の問題が生じ易い傾向にある。そのため、金属錯体は、非イオン性(中性)であることが好ましい。
【0017】
次に、本発明の金属錯体が有する配位子について説明する。
配位子は、金属錯体の発光色や発光強度等に影響を与える。例えば、(1,10−フェナントロリン)Re(CO)(Cl)錯体のように、カルボニル基(CO)やハロゲン基(Cl)のような単座配位子を多く含む金属錯体の場合、単座配位子に起因するエネルギー失活過程や安定性により、発光効率の低下及び安定性の低下の可能性が考えられる。さらに、発光効率及び安定性の観点からは、中心金属を配位子により遮蔽する方が好ましく、置換基を持つことができないハロゲン単座配位子は含まないことが好ましい。
【0018】
したがって、上記発光効率及び安定性の低下を防ぐためには、単座配位子の数を減らす方が好ましく、一個以上の芳香環を含む多座キレート配位子を少なくとも一つ以上有する金属錯体が好ましい。ここで多座キレート配位子は、2座配位子であっても、3座配位子であっても、4座以上の配位子であってもよい。
【0019】
本発明の金属錯体が単座配位子を有する場合、該単座配位子としては、アルキニル基、アリールオキシ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アルケニル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エノラート基、アミド基、アルキル基、アリール基、複素環配位子、カルボキシル基、アミド基、イミド基、アルコキシ基、アルキルメルカプト基、カルボニル配位子、アルケン配位子、アルキン配位子、アミン配位子、イミン配位子、ニトリル配位子、イソニトリル配位子、ホスフィン配位子、ホスフィンオキシド配位子、ホスファイト配位子、エーテル配位子、スルホン配位子、スルホキシド配位子又はスルフィド配位子などが例として挙げられる。いずれの配位子もフッ素や塩素などのハロゲン原子が置換していてもよい。
単座配位子としては、芳香環を有していることが好ましく、さらには芳香環中の配位原子が炭素又は窒素であるか、芳香環が縮合環であることが好ましい。
【0020】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基などが例示され、アリール基としてはフェニル基、トリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示され、複素環配位子としては、0価でも1価でもよく、0価のものとしては例えば、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、2−(4−チオフェン−2−イル)ピリジン、2−(ベンゾチオフェン−2−イル)ピリジンなどが例示され、1価のものとしては例えば、フェニルピリジン、2−(パラフェニルフェニル)ピリジン、7−ブロモベンゾ[h]キノリン、2−(4−フェニルチオフェン−2−イル)ピリジン、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−(パラフェニルフェニル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、2−(パラフェニルフェニル)ベンゾチアゾールなどが例示される。
【0021】
カルボキシル基としては特に限定されるものではないが、例えば、アセトキシ基、ナフテネート基又は2−エチルヘキサノエート基等が挙げられる。アミド基としては特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基、ジオクチルアミド基、ジデシルアミド基、ジドデシルアミド基、ビス(トリメチルシリル)アミド基、ジフェニルアミド基、N−メチルアニリド又はアニリド基等が挙げられる。イミド基としては特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾフェノンイミド等が挙げられる。アルコキシ基としては特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基又はフェノキシ基等が挙げられる。アルキルメルカプト基としては特に限定されるものではないが、例えば、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基、ブチルメルカプト基又はフェニルメルカプト基等が挙げられる。カルボニル配位子としては、一酸化炭素やアセトン、べンゾフェノンなどのケトン類、アセチルアセトン、アセナフトキノンなどのジケトン類、アセチルアセトナート、ジベンゾメチラート、テノイルトリフルオロアセトナートなどのアセトナート配位子などが例示される。アルケン配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン又はデセン等が挙げられる。アルキン配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、アセチレン、フェニルアセチレン又はジフェニルアセチレン等が挙げられる。アミン配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン又はトリブチルアミン等が挙げられる。イミン配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾフェノンイミン又はメチルエチルケトンイミン等が挙げられる。ニトリル配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、アセトニトリル又はベンゾニトリル等が挙げられる。イソニトリル配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、t−ブチルイソニトリル又はフェニルイソニトリル等が挙げられる。ホスフィン配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン又はトリブチルホスフィン等が挙げられる。ホスフィンオキシド配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、トリブチルホスフィンオキシド又はトリフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。ホスファイト配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルホスファイト、トリトリルホスファイト、トリブチルホスファイト又はトリエチルホスファイト等が挙げられる。エーテル配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル又はテトラヒドロフラン等が挙げられる。スルホン配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルスルホン又はジブチルスルホン等が挙げられる。スルホキシド配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルスルホキシド又はジブチルスルホキシド等が挙げられる。スルフィド配位子としては特に限定されるものではないが、例えば、エチルスルフィド又はブチルスルフィド等が挙げられる。
【0022】
本発明の金属錯体は、1個以上の芳香環を含む多座キレート配位子を少なくとも一つ以上有することが好ましい。ここで、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭化水素環、ピリジン等の芳香族複素環が挙げられる。
【0023】
本発明の金属錯体が多座キレート配位子を有する場合、該多座キレート配位子としては、芳香環を含むことが好ましい。該芳香環は置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、置換カルボキシル基、シアノ基等が挙げられる。芳香環上に置換基が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
ここに、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
【0025】
アルキル基としては、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。炭素数は通常1〜10程度であり、好ましくは炭素数3〜10である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基などが挙げられ、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0026】
アルキルオキシ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。炭素数は通常1〜10程度であり、好ましくは炭素数3〜10である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基などが挙げられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。
【0027】
アルキルチオ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。炭素数は通常1〜10程度であり、好ましくは炭素数3〜10である。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基などが挙げられ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基が好ましい。
【0028】
アリール基は、炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは7〜48である。具体的には、フェニル基、C〜C12アルコキシフェニル基(C〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル基、C〜C12アルキルフェニル基が好ましい。ここに、アリール基とは、芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団である。ここに芳香族炭化水素としては、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものが含まれる。
〜C12アルコキシとして具体的には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、ラウリルオキシなどが例示される。
〜C12アルキルフェニル基として具体的にはメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基などが例示される。
【0029】
アリールオキシ基としては、炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは7〜48である。具体的には、フェノキシ基、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
〜C12アルコキシとして具体的には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、ラウリルオキシなどが例示される。
〜C12アルキルフェノキシ基として具体的にはメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基などが例示される。
【0030】
アリールチオ基としては、炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは炭素数7〜48である。具体的には、フェニルチオ基、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基が好ましい。
【0031】
アリールアルキル基は、炭素数は通常7〜60程度であり、好ましくは7〜48である。具体的には、フェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基、1−ナフチル−C〜C12アルキル基、2−ナフチル−C〜C12アルキル基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基が好ましい。
【0032】
アリールアルキルオキシ基は、炭素数は通常7〜60程度であり、好ましくは炭素数7〜48である。具体的には、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチロキシ基、フェニルヘキシロキシ基、フェニルヘプチロキシ基、フェニルオクチロキシ基などのフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C〜C12アルコキシ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基が好ましい。
【0033】
アリールアルキルチオ基は、炭素数は通常7〜60程度であり、好ましくは炭素数7〜48である。具体的には、フェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基が好ましい。
【0034】
アシル基は、炭素数は通常2〜20程度であり、好ましくは炭素数2〜18である。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基などが例示される。
【0035】
アシルオキシ基は、炭素数は通常2〜20程度であり、好ましくは炭素数2〜18である。具体的には、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基などが例示される。
【0036】
アミド基は、炭素数は通常2〜20程度であり、好ましくは炭素数2〜18である。具体的には、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基、などが例示される。
【0037】
酸イミド基としては、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基が挙げられ、通常炭素数2〜60程度であり、好ましくは炭素数2〜48である。具体的には以下に示す基が例示される。
【化1】

【0038】
イミン残基としては、イミン化合物(分子内に、−N=C−を持つ有機化合物のことをいう。その例として、アルジミン、ケチミン及びこれらのN上の水素原子が、アルキル基等で置換された化合物が挙げられる)から水素原子1個を除いた残基が挙げられ、通常炭素数2〜20程度であり、好ましくは炭素数2〜18である。具体的には、以下の構造式で示される基などが例示される。
【化2】

【0039】
置換アミノ基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基から選ばれる1又は2個の基で置換されたアミノ基をいい、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は置換基を有していてもよい。炭素数は該置換基の炭素数を含めないで通常1〜60程度であり、好ましくは炭素数2〜48である。
具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基フェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基などが例示される。
【0040】
置換シリル基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基から選ばれる1、2又は3個の基で置換されたシリル基をいい、炭素数は通常1〜60程度であり、好ましくは炭素数3〜48である。なお該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は置換基を有していてもよい。
具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピリシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基などが例示される。
【0041】
置換シリルオキシ基は、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基又は1価の複素環オキシ基から選ばれる1、2又は3個の基で置換されたシリルオキシ基をいい、炭素数は通常1〜60程度であり、好ましくは炭素数3〜48である。なお該アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基又は1価の複素環オキシ基は置換基を有していてもよい。
具体的には、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリプロピルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジメチルイソプロピリシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリルオキシ基、ヘキシルジメチルシリルオキシ基、ヘプチルジメチルシリルオキシ基、オクチルジメチルシリルオキシ基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリルオキシ基、ノニルジメチルシリルオキシ基、デシルジメチルシリルオキシ基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリルオキシ基、ラウリルジメチルシリルオキシ基、フェニル−C〜C12アルキルシリルオキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルシリルオキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルシリルオキシ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルシリルオキシ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルシリルオキシ基、フェニル−C〜C12アルキルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、ジメチルフェニルシリルオキシ基などが例示される。
【0042】
置換シリルチオ基は、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基又は1価の複素環チオ基から選ばれる1、2又は3個の基で置換されたシリルチオ基をいい、炭素数は通常1〜60程度であり、好ましくは炭素数3〜48である。なお該アルキルオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基又は1価の複素環チオ基は置換基を有していてもよい。
具体的には、トリメチルシリルチオ基、トリエチルシリルチオ基、トリプロピルシリルチオ基、トリイソプロピルシリルチオ基、ジメチルイソプロピリシリルチオ基、ジエチルイソプロピルシリルチオ基、t−ブチルシリルジメチルシリルチオ基、ペンチルジメチルシリルチオ基、ヘキシルジメチルシリルチオ基、ヘプチルジメチルシリルチオ基、オクチルジメチルシリルチオ基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリルチオ基、ノニルジメチルシリルオチオ基、デシルジメチルシリルチオ基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリルチオ基、ラウリルジメチルシリルチオ基、フェニル−C〜C12アルキルシリルオキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルシリルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルシリルチオ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルシリルチオ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルシリルチオ基、フェニル−C〜C12アルキルジメチルシリルチオ基、トリフェニルシリルチオ基、トリ−p−キシリルシリルチオ基、トリベンジルシリルチオ基、ジフェニルメチルシリルチオ基、t−ブチルジフェニルシリルオチオ基、ジメチルフェニルシリルチオ基などが例示される。
【0043】
置換シリルアミノ基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基又は1価の複素環アミノ基から選ばれる1、2又は3個の基で置換されたシリルアミノ基をいい、炭素数は通常1〜60程度であり、好ましくは炭素数3〜48である。なお該アルキルオキシ基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基又は1価の複素環アミノ基は置換基を有していてもよい。
具体的には、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリプロピルシリルアミノ基、トリイソプロピルシリルアミノ基、ジメチルイソプロピリシリルアミノ基、ジエチルイソプロピルシリルアミノ基、t−ブチルシリルジメチルシリルアミノ基、ペンチルジメチルシリルアミノ基、ヘキシルジメチルシリルアミノ基、ヘプチルジメチルシリルアミノ基、オクチルジメチルシリルアミノ基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリルアミノ基、ノニルジメチルシリルオアミノ基、デシルジメチルシリルアミノ基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリルアミノ基、ラウリルジメチルシリルアミノ基、フェニル−C〜C12アルキルシリルオキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルシリルアミノ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルシリルアミノ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルシリルアミノ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルシリルアミノ基、フェニル−C〜C12アルキルジメチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、トリ−p−キシリルシリルアミノ基、トリベンジルシリルアミノ基、ジフェニルメチルシリルアミノ基、t−ブチルジフェニルシリルオアミノ基、ジメチルフェニルシリルアミノ基などが例示される。
【0044】
1価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は通常4〜60程度であり、好ましくは4〜20である。なお、複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。ここに複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、燐、硼素などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。具体的には、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基などが例示され、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0045】
ヘテロアリールオキシ基としては、炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは7〜48である。具体的には、チエニルオキシ基、C〜C12アルコキシチエニルオキシ基、C〜C12アルキルチエニルオキシ基、ピリジルオキシ基、イソキノリルオキシ基などが例示され、C〜C12アルコキシピリジルオキシ基、C〜C12アルキルピリジルオキシ基が好ましい。
〜C12アルコキシピリジルオキシ基等におけるC〜C12アルコキシとして具体的には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、ラウリルオキシなどが例示される。
〜C12アルキルピリジルオキシ基として具体的には、メチルピリジルオキシ基、エチルピリジルオキシ基、ジメチルピリジルオキシ基、プロピルピリジルオキシ基、1,3,5−トリメチルピリジルオキシ基、メチルエチルピリジルオキシ基、イソプロピルピリジルオキシ基、ブチルピリジルオキシ基、イソブチルピリジルオキシ基、t−ブチルピリジルオキシ基、ペンチルピリジルオキシ基、イソアミルピリジルオキシ基、ヘキシルピリジルオキシ基、ヘプチルピリジルオキシ基、オクチルピリジルオキシ基、ノニルピリジルオキシ基、デシルピリジルオキシ基、ドデシルピリジルオキシ基などが例示される。
【0046】
ヘテロアリールチオ基としては、炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは炭素数7〜48である。具体的には、ピリジルチオ基、C〜C12アルコキシピリジルチオ基、C〜C12アルキルピリジルチオ基、イソキノリルチオ基などが例示され、C〜C12アルコキシピリジルチオ基、C〜C12アルキルピリジルチオ基が好ましい。
【0047】
アリールアルケニル基は、炭素数は通常7〜60程度であり、好ましくは炭素数7〜48である。具体的には、フェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C〜C12アルケニル基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基が好ましい。
【0048】
アリールエチニル基は、炭素数は通常7〜60程度であり、好ましくは炭素数7〜48である。具体的には、フェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C〜C12アルキニル基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基が好ましい。
【0049】
置換カルボキシル基は、通常炭素数2〜60程度であり、好ましくは炭素数2〜48である。アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基で置換されたカルボキシル基をいい、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基、などが挙げられる。なお該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は置換基を有していてもよい。置換カルボキシル基の炭素数には該置換基の炭素数は含まれない。
【0050】
2座配位子としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキル基やハロゲン基で置換されていてもよいフェニルピリジン、フェナントロリン、フェニルキノリンや特表2003−515897に記載の2座配位子等が挙げられる。具体的には、以下の構造が例示される。
【化3】


上記構造式中のRは、水素原子、又は置換基を表し、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、置換カルボキシル基又はシアノ基が例示される。複数個のRは同一であっても異なっていてもよい。
また構造式中*は中心金属Mと結合する部位を示す。
【0051】
3座配位子としては、以下に示す構造が例示される。
【化4】

【0052】
【化5】

【0053】
【化6】

【0054】
【化7】

【0055】
【化8】


上記構造式中のRは、水素原子、又は置換基を表し、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、置換カルボキシル基又はシアノ基が例示される。複数個のRは同一であっても異なっていてもよい。
また構造式中*は中心金属Mと結合する部位を示す。
【0056】
4座配位子としては、以下に示すような構造が例示される。
【化9】


上記構造式中のRは、水素原子、又は置換基を表し、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、置換カルボキシル基又はシアノ基が例示される。複数個のRは同一であっても異なっていてもよい。
また構造式中*は中心金属Mと結合する部位を示す。
【0057】
本発明の金属錯体は、下記一般式(7)、(8)、(9)、又は(10)で表される構造を部分構造として有する金属錯体であることが好ましい。
【化10】


上記式(7)において、Mは上記中心金属を表し、A1環及びA2環はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を表し、各々の環構造内に存在しているX1及びX2は、それぞれ独立に中心金属Mへの配位原子を表す。
【化11】


上記式(8)において、Mは上記中心金属を表し、B1環、B2環及びB3環はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を表し、各々の環構造内に存在しているY1、Y2及びY3は、それぞれ独立に中心金属Mへの配位原子を表す。f及びgはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルケニレン基又は炭素数1〜6のアルキニレン基を表し、該アルキレン基、該アルケニレン基及び該アルキニレン基の炭素原子がそれぞれ酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。m及びnはそれぞれ独立に0又は1を表す。
【化12】


上記式(9)中、Mは上記中心金属を表し、B4環及びB5環はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を表し、各々の環構造内に存在しているY4、Y5及びY6は、それぞれ独立に中心金属Mへの配位原子を表し、hは炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルケニレン基又は炭素数1〜6のアルキニレン基を表し、該アルキレン基、該アルケニレン基及び該アルキニレン基の炭素原子がそれぞれ酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよく、oは0又は1を表す。
【化13】


上記式(10)中、Mは上記中心金属を表し、B6環は置換基を有していてもよい芳香環を表し、環構造内に存在するY7,Y8及びY9は、それぞれ独立に金属Mへの配位原子を表す。
【0058】
上記式(7)、(8)、(9)、及び(10)における中心金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Pt、Au、及びHgが挙げられるが、高効率を得るという観点からは、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、W、Re、Pt、及びAuが好ましく、より好ましくは、Ru、Rh、Pd、W、Re、Pt、及びAuであり、さらに好ましくはRe、及びPtであり、最も好ましくはPtである。
【0059】
上記式(7)、(8)、(9)、及び(10)における配位原子Xi(i=1、2)、及び、Yj(j=1〜9)としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、珪素原子、硫黄原子、リン原子、ヒ素原子、セレン原子が挙げられ、炭素原子、窒素原子、酸素原子、珪素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子がさらに好ましい。
【0060】
本発明の金属錯体が4座配位子を有する場合、下記一般式(4)で表される部分構造を有することが好ましい。
【化14】


上記式(4)中、Mは上記中心金属を表し、C1環、C2環、C3環、及びC4環はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を表し、各々の環構造内に存在しているZ1、Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立に中心金属Mへの配位原子を表す。i、j、k、及びlはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルケニレン基又は炭素数1〜6のアルキニレン基を表し、該アルキレン基、該アルケニレン基及び該アルキニレン基の炭素原子がそれぞれ酸素原子、硫黄原子、窒素原子、又はリン原子で置換されていてもよい。p、q、r、及びsはそれぞれ独立に0又は1を表し、好ましくはp、q、r、及びsはそれぞれ1である。配位原子Zk(k=1〜4)としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、珪素原子、硫黄原子、リン原子、ヒ素原子、セレン原子が挙げられ、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子がさらに好ましい。
【0061】
上記式(4)における中心金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Pt、Au、及びHgが挙げられるが、高効率を得るという観点からは、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、W、Re、Pt、及びAuが好ましく、より好ましくは、Ru、Rh、Pd、W、Re、Pt、及びAuであり、さらに好ましくはRe、Pt、及びAuであり、最も好ましくはPtである。
【0062】
4座配位子を有する本発明の金属錯体の好ましい構造の一つは、下記一般式(4−1)で表される構造を有する金属錯体である。
【化15】


(上記一般式(4−1)において、Mは前記中心金属を表し、Xは、−C(R)(R)−、−Si(R)(R)−、−N(R)−、−P(R)−、−O−、−S−を表す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は置換基を表し、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、置換カルボキシル基又はシアノ基が例示される。複数個のR及びRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0063】
本発明の金属錯体の好ましい構造の一つは、下記一般式(1-1)又は(1−2)で表される部分構造を有することを特徴する金属錯体である。
【化16】


(上記一般式(1−1)において、Mは前記中心金属を表し、R及びR、及びRa〜Rfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。但し、R及びRの少なくとも一つは、下記式(2)で表される基である。
式(2)において、R11〜R19は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。また、波線の位置は、結合位置を表す。
【化17】


【化18】


(一般式(1−2)において、Mは前記中心金属を表し、R2が下記一般式(3)で表される基であり、Ra〜Rgは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。一般式(3)において、R21及びR22は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R23〜R27はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。また、波線の位置は結合位置を表す。)
【化19】

【0064】
具体的な構造例としては、以下の構造が挙げられる。
【化20−1】


【化20−2】


【化21】

【0065】
−錯体の製造方法−
次に、本発明の金属錯体の合成法を説明する。
【0066】
本発明の金属錯体は、例えば、以下の方法で製造することができる。例えば、2−フェニルピリジン配位子の合成の場合、ピリジン環を含む部分を有する化合物と、フェニル環を含む部分を有する化合物とを、例えば、Suzukiカップリング、ニッケル触媒を用いたGrignardカップリング、Stilleカップリングなどにより反応させ、配位子となる化合物を合成し、これを所望の金属塩と溶液中で反応させることにより錯体化し、本発明の金属錯体を合成することができる。
【0067】
前記配位子となる化合物の合成は、具体的には、ピリジン環を含む部分を有する化合物と、フェニル環を含む部分を有する化合物とを、必要に応じて有機溶媒に溶解し、例えば、アルカリ、適当な触媒等を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下の温度で反応させることにより行うことができる。例えば、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”、第14巻、270−490頁、ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.)、1965年;“オルガニック シンセシス(Organic Syntheses)”、コレクティブ第6巻(Collective Volume VI)、407−411頁、ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.)、1988年;ケミカル レビュー(Chem.Rev.)、第95巻、2457頁(1995年);ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organomet.Chem.)、第576巻、147頁(1999年);ジャーナル オブ プラクティカル ケミストリー(J.Prakt.Chem.)、第336巻、247頁(1994年);マクロモレキュラー ケミストリー マクロモレキュラー シンポジウム(Makromol.Chem.,Macromol.Symp.)、第12巻、229頁(1987年)などに記載の方法を用いることができる。
【0068】
前記配位子となる化合物の合成に用いられる有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、一般に副反応を抑制するために、十分に脱酸素処理を施したものが用いられる。そして、不活性雰囲気化で反応を進行させることが好ましい。また、前記有機溶媒には、予め脱水処理を行うことが好ましい。但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない。
【0069】
前記配位子となる化合物の合成において、反応を進行させるために、適宜、アルカリ、適当な触媒等を添加する。これらのアルカリ、適当な触媒は、用いる反応に応じて選択すればよいが、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリ、適当な触媒を基質と混合する方法としては、反応液(即ち、基質を有機溶媒に溶解又は分散させたもの)をアルゴン、窒素などの不活性雰囲気下で攪拌しながら、ゆっくりとアルカリ、触媒を添加するか、逆にアルカリ、触媒に該反応液をゆっくりと添加する方法が例示される。
【0070】
前記配位子となる化合物の合成において、反応温度は特に限定されないが、通常、−100〜350℃程度であり、好ましくは、0℃〜溶媒の沸点である。反応時間は特に限定されないが、通常30分〜30時間程度である。
【0071】
前記配位子となる化合物の合成において、上述の反応終了後、反応混合液からの目的物(配位子となる化合物)の取り出しと精製の方法としては、得られた配位子となる化合物によって異なり、例えば、再結晶、昇華、クロマトグラフィー等、通常の有機化合物精製の手法が使われる。
【0072】
錯体化の方法(即ち、配位子となる化合物を金属塩と溶液中で反応させる方法)としては、例えば、白金錯体の場合、Inorg.Chem.,1984,23,4249;Chem.Mater.1999,11,3709;Organometallics,1999,18,1801;Inorg.Chem.2002,41,3055などに記載の方法が例示され、パラジウム錯体の場合、J.Org.Chem.,1987,52,73などに記載の方法が例示される。
【0073】
錯体化の反応温度は、特に限定されないが、通常溶媒の融点から沸点の間で反応させることができ、−78℃〜溶媒の沸点が好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常30分間から30時間程度である。但し、錯体化反応においてマイクロウェーブ反応装置を使用する場合、溶媒の沸点以上で反応させることもでき、反応時間も特に限定されないが、数分から数時間程度である。
【0074】
錯体化の反応における合成操作は、フラスコ内に溶媒を入れ、これを撹拌しながら、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスでバブリングすること等により脱気した後、金属塩と配位子となる化合物を添加する。こうして得られた溶液を撹拌しながら不活性ガス雰囲気下で配位子交換される温度まで昇温し、保温しながら撹拌する。反応の終点は、TLCモニターや高速液体クロマトグラフィーにより原料の減少が停止すること、或いはどちらかの原料の消失をもって決定することができる。
【0075】
以上の反応により得られた反応混合液からの目的物(金属錯体)の取り出しと精製としては、金属錯体によって異なるが、例えば、再結晶、昇華、クロマトグラフィー等、通常の錯体精製の手法が使われる。具体的には、例えば、反応混合液の溶媒を留去した後に、残渣をジクロロメタンなどの有機溶媒に溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物の分画溶液を集める。この溶液を濃縮し、例えば、メタノール(貧溶媒)を適量加えて再結晶法により目的物である金属錯体を析出させ、これをろ過して乾燥させ金属錯体を得る。
【0076】
化合物の同定・分析は、CHN元素分析、NMR分析及びMS分析により行うことができる。
【0077】
例えば、下記式(A)
【0078】
【化22】


で示される本発明の錯体は、以下の合成ルートで合成することができる。
【0079】
【化23】

【0080】
本発明の組成物は、上記本発明の金属錯体を含み、好ましくは、該金属錯体と電荷輸送性材料を含むものである。
【0081】
本発明における電荷輸送性材料としては、有機化合物(低分子有機化合物又は高分子)が用いられ、正孔輸送材料及び電子輸送材料に分類される。正孔輸送材料としては、芳香族アミン、カルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体など、これまで有機EL素子に正孔輸送材料として公知のものが挙げられ、電子輸送材料としても、同様にこれまで有機EL素子に電子輸送材料として公知の、オキサジアゾール誘導体アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体が挙げられる。電荷輸送材料の低分子有機化合物とは、低分子有機EL素子に用いられるホスト化合物、電荷注入輸送化合物を表し、具体的には、例えば「有機ELディスプレイ」(時任静士、安達千波矢、村田英幸共著、オーム社)107頁、月刊ティスプレイ、vol9、No9、2003年26−30頁、特開2004−244400、特開2004−277377等に記載の化合物を挙げることができる。これら電荷輸送性材料の種類にもよるが、一般には、金属錯体からの良好な発光を得るためには、これら電荷輸送性材料のT1エネルギーが、金属錯体のT1エネルギーよりも大きいことが好ましい。
【0082】
低分子有機化合物(低分子ホスト化合物)としては、具体的には、下記化合物を挙げることができる。
【化24】


【化25−1】


【化25−2】

【0083】
また、電荷輸送性材料としては高分子も用いることができる。高分子としては、非共役系高分子、共役系高分子が挙げられる。非共役系高分子としては、ポリビニルカルバゾールなどが挙げられる。共役系高分子としては、主鎖に芳香環を含むポリマーが例として挙げられ、例えば置換基を有していてもよいフェニレン基、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾシロールなどを繰り返し単位として主鎖に含むものや、それらのユニットとの共重合体が例示される。具体的には、置換基を有していてもよいベンゼン環及び/又は下記一般式(2)を部分構造として有することを特徴とする高分子化合物が挙げられる。さらに具体的には、たとえば特開2003−231741、2004−059899、204−002654、2004−292546、US5708130、WO9954385、WO0046321、WO02077060、「有機ELディスプレイ」(時任静士、安達千波矢、村田英幸 共著、オーム社)111頁、月刊ティスプレイ、vol9、No9、2002年47−51頁等に記載の高分子が挙げられる。
【0084】
高分子(高分子ホスト化合物)としては、具体的には、下記一般式(6)で表される繰り返し単位を含む高分子を挙げることができる。
【化26】


(式中、P環及びQ環はそれぞれ独立に芳香環を示すが、P環は存在してもしなくてもよい。2つの結合手は、P環が存在する場合は、それぞれP環及び/又はQ環上に存在し、P環が存在しない場合は、それぞれYを含む5員環若しくは6員環上及び/又はQ環上に存在する。また、芳香環上及び/又はYを含む5員環若しくは6員環上に置換基を有していてもよい。Yは−O−、−S−、−Se−、−B(R31)−、−N(R35)−、−C(R)(R)−、−Si(R)(R)−、−P(R)−、−PR(=O)−、−C(R51)(R52)−C(R53)(R54)−、−O−C(R55)(R56)−、−S−C(R57)(R58)−、−N−C(R59)(R60)−、−Si(R61)(R62)−C(R63)(R64)−、−Si(R65)(R66)−Si(R67)(R68)−、−C(R69)=C(R70)−、−N=C(R71)−又は−Si(R72)=C(R73)−を表し、R〜R、R31、R35、及びR51〜R73は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。この中では、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基がより好ましく、アルキル基、アリール基が特に好ましい。
なお、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基又はハロゲン原子の具体例としては、各々前記の例示を挙げることができる。
【0085】
電荷輸送性材料は、上記構造を含む共重合体や高分子組成物でもよい。
【0086】
ホスト化合物の基底状態のエネルギー(ESH)、ホスト化合物の最低励起三重項状態のエネルギー(ETH)、金属錯体の基底状態のエネルギー(ESMC)、及び、金属錯体の最低励起三重項状態のエネルギー(ETMC)が、
ETH − ESH > ETMC − ESMC − 0.2(eV)
の関係を満たすことが好ましい。
【0087】
本発明の組成物に高分子を用いる場合、該高分子のポリスチレン換算の数平均分子量は好ましくは10〜10、さらに好ましくは10〜10である。ポリスチレン換算の重量平均分子量は好ましくは10〜10であり、さらに好ましくは5×10〜5×10である。
【0088】
また、本発明の高分子は、本発明の金属錯体を部分構造として分子内に含むものである。例えば、上記一般式(4)、(7)、(8)、(9)、又は(10)で示される構造を部分構造として有する金属錯体が、高分子内に部分構造として組み込まれているものである。さらに、本発明の金属錯体を部分構造として分子内に含む高分子が、共役系高分子であることが好ましい。
金属錯体が組み込まれる高分子としては、本発明の組成物として用いる高分子として上記に記載した高分子が同様に例示される。
本発明の金属錯体が高分子内に部分構造として組み込まれている場合、高分子(A)の構造と、金属錯体(B)の構造とを同一分子内に有する高分子の例としては、
高分子(A)の主鎖に金属錯体(B)の構造を有する高分子;
高分子(A)の末端に金属錯体(B)の構造を有する高分子;
高分子(A)の側鎖に金属錯体(B)の構造を有する高分子;
が挙げられる。
上記高分子の例としては、一般式(6)で示される部分構造(繰り返し単位)を含み、ポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10であり、その側鎖、主鎖、及び/又は末端に燐光性発光分子(金属錯体)の構造を有するものが挙げられる。
【0089】
本発明の組成物、又は高分子中の金属錯体の量は、組み合わせる有機化合物の種類や、最適化したい特性により異なるので、特に限定されないが、有機化合物の量を100重量部としたとき、通常0.01〜80重量部、好ましくは0.1〜60重量部である。また、金属錯体を2種類以上含んでいてもよい。
【0090】
本発明の組成物、又は高分子は、さらに正孔輸送性材料、電子輸送性材料、及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類の材料を含んでいてもよい。
【0091】
電荷輸送性材料としては前記した電荷輸送性材料を用いることができる。発光材料としては、公知のものが使用できる。低分子化合物では、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、又はテトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体などを用いることができる。
【0092】
本発明のインク組成物は、上記本発明の金属錯体、組成物、又は高分子を含有することを特徴とする。
インク組成物としては、少なくとも1種類の本発明の金属錯体が含有されていればよく、また本発明の金属錯体以外に、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、溶媒、安定剤などの添加剤を含んでいてもよい。
該インク組成物中における本発明の金属錯体を含む固形物の割合は、溶媒を除いた組成物の全重量に対して通常は20wt%〜100wt%であり、好ましくは40wt%〜100wt%である。
またインク組成物中に溶媒が含まれる場合の溶媒の割合は、組成物の全重量に対して1wt%〜99.9wt%であり、好ましくは60wt%〜99.5wt%であり、さらに好ましく80wt%〜99.0wt%である。
インク組成物の粘度は印刷法によって異なるが、インクジェットプリント法などインク組成物が吐出装置を経由する場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために、粘度が25℃において1〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0093】
本発明のインク組成物(以下単に溶液又は本発明の溶液ともいう)は、本発明の金属錯体又は組成物の他に、粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤を含有していてもよい。該添加剤としては、粘度を高めるための高分子量の高分子化合物(増粘剤)や貧溶媒、粘度を下げるための低分子量の化合物、表面張力を下げるための界面活性剤などを適宜組み合わせて使用すればよい。
【0094】
前記の高分子量の高分子化合物(増粘剤)としては、本発明の金属錯体又は組成物と同じ溶媒に可溶性で、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよい。例えば、高分子量のポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどを用いることができる。重量平均分子量が50万以上が好ましく、100万以上がより好ましい。
貧溶媒を増粘剤として用いることもできる。すなわち、溶液中の固形分に対する貧溶媒を少量添加することで、粘度を高めることができる。この目的で貧溶媒を添加する場合、溶液中の固形分が析出しない範囲で、溶媒の種類と添加量を選択すればよい。保存時の安定性も考慮すると、貧溶媒の量は、溶液全体に対して50wt%以下であることが好ましく、30wt%以下であることが更に好ましい。
【0095】
また、本発明のインク組成物は、保存安定性を改善するために、さらに酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、本発明の金属錯体又は組成物と同じ溶媒に可溶性で、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよい。
【0096】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、本発明の組成物等の成分を溶解又は均一に分散できるものが好ましい。該溶媒としてクロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。また、これらの有機溶媒は、単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。上記溶媒のうち、ベンゼン環を少なくとも1個以上含む構造を有し、かつ融点が0℃以下、沸点が100℃以上である有機溶媒を1種類以上含むことが好ましい。
【0097】
溶媒の種類としては、有機溶媒への溶解性、成膜時の均一性、粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、1−メチルナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトンが好ましく、キシレン、アニソール、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシルのうち少なくとも1種類を含むことがより好ましい。
【0098】
溶液中の溶媒の種類は、成膜性の観点や素子特性等の観点から、2種類以上であることが好ましく、2〜3種類であることがより好ましく、2種類であることがさらに好ましい。
【0099】
溶液中に2種類以上の溶媒が含まれる場合、粘度及び成膜性の観点から、最も沸点が高い溶媒が、溶液中の全溶媒の重量の40〜90wt%であることが好ましく、50〜90wt%であることがより好ましく、65〜85wt%であることがさらに好ましい。
【0100】
本発明のインク組成物は、粘度が25℃において1〜100mPa・sであることが好ましい。
【0101】
本発明における金属錯体を含む高分子又は組成物は、発光材料として用いることができるだけでなく、有機半導体材料、光学材料、又はドーピングにより導電性材料として用いることもできる。したがって、該金属錯体、該高分子、又は該組成物を用いて、発光性薄膜、導電性薄膜、又は有機半導体薄膜等の膜を作成することができる。
【0102】
次に、本発明の光電素子について説明する。本発明の光電素子は、陽極及び陰極からなる電極間に、本発明の金属錯体又は本発明の組成物を含む層を有することを特徴とし、例えば、発光素子、スイッチング素子、光電変換素子として用いることができる。該素子が発光素子の場合は、本発明の金属錯体を含む層が、発光層であることが好ましい。
【0103】
また、本発明の光電素子としては、陽極及び陰極からなる電極間に、さらに電荷輸送層又は電荷阻止層を含んでいてもよい。電荷輸送層とは、正孔輸送層又は電子輸送層を意味し、電荷阻止層とは、ホール阻止層又は電子阻止層を意味する。陰極と光電層との間に、電子輸送層又はホール阻止層を設けた発光素子、陽極と光電層との間に、正孔輸送層又は電子阻止層を設けた発光素子、陰極と光電層との間に、電子輸送層又はホール阻止層を設け、かつ陽極と光電層との間に、正孔輸送層又は電子阻止層を設けた発光素子等が挙げられる。ここで、電子輸送層とホール阻止層は、「有機ELのすべて」162頁(城戸淳二著、日本実業出版)に記載されているように、同じ機能を持ち、たとえば電子輸送層とホール阻止層を構成する材料は同じものを用いることができ、材料の特性により、どちらかの機能がより強く反映される場合がある。正孔輸送層と電子阻止層も同様である。本発明の発光素子には、例えば特許文献(Journal of the SID 11/1,161−166,2003)記載の素子構造が例に挙げられる。
また、上記少なくとも一方の電極と光電層との間に該電極に隣接して導電性高分子を含む層を設けた発光素子;少なくとも一方の電極と光電層との間に該電極に隣接して平均膜厚2nm以下のバッファー層を設けた発光素子が挙げられる。
【0104】
具体的には、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/光電層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/光電層/陰極
c)陽極/光電層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0105】
ここで、光電層とは、光電機能を有する層、すなわち発光性、導電性、光電変換機能を有する薄膜であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。光電層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
【0106】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
【0107】
また、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や光電層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0108】
さらに、電子を輸送し、かつ正孔を閉じ込めるために光電層との界面に正孔阻止層を挿入してもよい。
【0109】
積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0110】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた発光素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた発光素子が挙げられる。
【0111】
例えば、具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/光電層/陰極
f)陽極/光電層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/光電層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/光電層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/光電層/電荷輸送層/陰極
l)陽極/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/電荷輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0112】
電荷注入層の具体的な例としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層などが例示される。
【0113】
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10−5S/cm以上10S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10−5S/cm以上10S/cm以下がより好ましく、10−5S/cm以上10S/cm以下がさらに好ましい。
【0114】
通常は該導電性高分子の電気伝導度を10−5S/cm以上10S/cm以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0115】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンなどが例示され、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが例示される。
【0116】
電荷注入層の膜厚としては、例えば1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0117】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニンなど)、カーボンなどが例示される。
【0118】
膜厚2nm以下の絶縁層は電荷注入を容易にする機能を有するものである。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。膜厚2nm以下の絶縁層を設けた発光素子としては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた発光素子、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた発光素子が挙げられる。
【0119】
具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
q)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/陰極
r)陽極/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
s)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
t)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
v)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
w)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/電子輸送層/陰極
x)陽極/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
y)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
z)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
ab)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
【0120】
正孔阻止層は、電子を輸送し、かつ、陽極から輸送された正孔を閉じ込める働きを有するものであり、光電層の陰極側の界面に設けられ、光電層のイオン化ポテンシャルよりも大きなイオン化ポテンシャルを有する材料、例えば、バソクプロイン、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体などから構成される。
【0121】
正孔阻止層の膜厚としては、例えば1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0122】
具体的には、例えば、以下のac)〜an)の構造が挙げられる。
ac)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/陰極
ad)陽極/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ae)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
af)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/陰極
ag)陽極/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ah)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ai)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/電荷輸送層/陰極
aj)陽極/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
ak)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
al)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電荷輸送層/陰極
am)陽極/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
an)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0123】
本発明の光電素子を作製する際に、電荷輸送材料を含めた光電材料を溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法が適用でき、製造上非常に有利である。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。また電荷輸送材料を含めた発光材料が比較的低分子の場合は、光電層を真空蒸着法を用いて製膜してもよい。
【0124】
本発明の発光素子においては、光電層、即ち発光層に本発明の光電材料以外の発光材料を混合して使用してもよい。また、本発明の光電素子においては、本発明以外の発光材料を含む発光層が、本発明の発光材料を含む光電層と積層されていてもよい。
【0125】
該発光材料としては、公知のものが使用できる。低分子化合物では、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、又はテトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体などを用いることができる。
【0126】
具体的には、例えば特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されているもの等、公知のものが使用可能である。
【0127】
本発明の光電素子が正孔輸送層を有する場合、使用される正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリアミノフェン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などが例示される。
【0128】
具体的には、該正孔輸送材料として、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0129】
これらの中で、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料として、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリアミノフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0130】
ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体は、例えばビニルモノマーからカチオン重合又はラジカル重合によって得られる。
【0131】
ポリシラン若しくはその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0132】
ポリシロキサン若しくはその誘導体は、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖又は主鎖に上記低分子正孔輸送材料の構造を有するものが好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖又は主鎖に有するものが例示される。
【0133】
正孔輸送層の成膜の方法に制限はないが、低分子正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が例示される。また、高分子正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0134】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0135】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0136】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0137】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0138】
本発明の光電素子が電子輸送層を有する場合、使用される電子輸送材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体等が例示される。
【0139】
具体的には、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0140】
これらのうち、アミノキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0141】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、又は溶液若しくは溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液又は溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液又は溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0142】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0143】
溶液又は溶融状態からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0144】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリアミノフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリシロキサンなどが例示される。
【0145】
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0146】
本発明の光電素子を形成する基板は、電極を形成し、該光電素子の各層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板などが例示される。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0147】
通常、陽極及び陰極からなる電極のうち少なくとも一方が透明又は半透明であり、陽極側が透明又は半透明であることが好ましい。
該陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリアミノフェン若しくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0148】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0149】
また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボンなどからなる層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0150】
本発明の発光素子で用いる陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0151】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0152】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよく、陰極作製後、該発光素子を保護する保護層を装着していてもよい。該発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを装着することが好ましい。
【0153】
該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、該カバーを熱効果樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子が傷付くのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にダメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0154】
本発明の発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス、液晶表示装置のバックライト又は照明に用いることができる。
【0155】
本発明の発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極又は陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる発光材料を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は発光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFTなどと組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
【0156】
さらに、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、あるいは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【0157】
次に本発明の別の様態として、光電素子について説明する。
光電素子としては、たとえば光電変換素子があり、少なくとも一方が透明又は半透明な二組の電極間に本発明の金属錯体又は組成物を含む層を挟持させた素子や、基板上に製膜した本発明の高分子化合物又は高分子組成物を含む層上に形成した櫛型電極を有する素子が例示される。特性を向上するために、フラーレンやカーボンナノチューブ等を混合してもよい。
光電変換素子の製造方法としては、特許第3146296号公報に記載の方法が例示される。具体的には、第一の電極を有する基板上に高分子薄膜を形成し、その上に第二の電極を形成する方法、基板上に形成した一組の櫛型電極の上に高分子薄膜を形成する方法が例示される。第一又は第二の電極のうち一方が透明又は半透明である。
高分子薄膜の形成方法やフラーレンやカーボンナノチューブを混合する方法については特に制限はないが、発光素子で例示したものが好適に利用できる。
【実施例】
【0158】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0159】
(合成例1)
化合物(L−1)の合成
【化27】


反応容器中に2−ヨード−5−ブロモピリジン2.84g(0.01mol)、フェニルホウ酸1.52g(0.0125mol)トルエン50mLを量り取り、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.69g(0.0006mol)と2M炭酸ナトリウム水溶液(10mL)を加えて、窒素気流下80℃で10時間加熱撹拌した。反応溶液の有機層を回収した後に、炭酸ナトリウム水溶液(80mL)、飽和食塩水(20mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)で精製し、溶媒を留去して化合物(L−1)2.02g(0.0086mol)を得た。収率86%。
LC−MS(positive)m/z:234([M+H]
H NMR(300MHz,CDCl
δ 7.46(m,3H),δ 7.63(d,J=8.7Hz,1H),δ 7.87(m,1H),δ 7.96(m,2H),δ 8.74(s,1H).
【0160】
(合成例2)
化合物(L−2)の合成
【化28】


反応容器中にp−ジブロモベンゼン29.49g(0.125mol)、トリ(n−ブチル)(2−ピリジル)すず18.78g(0.05mol)塩化リチウム6.36g(0.15mol)、トルエン200mLを量り取り、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド1.75g(0.0025mol)を加えて、窒素気流下で7時間環流した。空冷した後にフッ化カリウム飽和水溶液(150mL)を加え、反応溶液を濾過した。トルエンを留去した後に残渣をクロロホルム(500mL)で抽出し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄した。溶媒を留去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン1/1)で精製し、溶媒を留去して化合物(L−2)4.15g(0.0177mol)を得た。収率36%。
LC−MS(positive)m/z:234([M+H]
H NMR(300MHz,CDCl
δ 7.24(m,1H),δ 7.60(d,2H),δ 7.72(m,2H),δ 7.88(d,2H),δ 8.69(m,1H).
【0161】
(合成例3)
化合物(L−3)の合成
【化29】


反応容器中に化合物(L−1)1.17g(0.005mol)、4−ベンゾイルフェニルホウ酸1.41g(0.00625mol)、炭酸ナトリウム1.06g(0.01mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.35g(0.0003mol)を量り取り、ジメチルホルムアミド/エタノール混合溶液(35mL/5mL)を加えて、窒素気流下で7時間還流した。反応混合物を水(100mL)にあけ、酢酸エチル/ヘキサン(1/1)溶液(100mL)で抽出した後に、有機層を水(100mL)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)、飽和食塩水(100mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/クロロホルム)で精製し、溶媒を留去して化合物(L−3)0.28g(0.00083mol)を得た。収率17%。
LC−MS(positive)m/z:336([M+H]
H NMR(300MHz,CDCl
d 7.46 (m, 1H), d 7.52 (dd,J = 7.5, 7.9 Hz, 4 H), d 7.61 (m, 1 H), d 7.77 (d, J= 8.3 Hz, 2 H), d 7.85 (m, 3 H), d 7.95 (d, J= 8.1 Hz, 2 H), d 8.02 (dd, J = 2.4, 8.5 Hz, 1 H), d 8.07 (m, 2 H), d 9.00 (s, 1 H).
【0162】
(合成例4)
化合物(L−4)の合成
【化30】


反応容器中に化合物(L−1)1.17g(0.005mol)、trans−2−フェニルビニルホウ酸0.76g(0.00625mol)、炭酸ナトリウム1.06g(0.01mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.35g(0.0003mol)を量り取り、ジメチルホルムアミド/エタノール混合溶液(35mL/5mL)を加えて、窒素気流下で10時間還流した。反応混合物を水(100mL)にあけ、酢酸エチル/ヘキサン(1/1)溶液(100mL)で抽出した後に、有機層を水(100mL)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)、飽和食塩水(100mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/クロロホルム)で精製し、溶媒を留去して化合物(L−4)0.28g(0.00083mol)を得た。収率17%。
LC−MS(positive)m/z:258([M+H]
H NMR(300MHz,CDCl
δ 7.15(s,1H),δ 7.19(s,1H),δ 7.31(d,J=7.5Hz,1H),δ 7.39(m,3H),δ 7.49(m,2H),δ 7.56(d,J=7.5Hz,2H),δ 7.75(d,J=8.4Hz,1H),δ 7.93(dd,J=2.3,8.3Hz,1H),δ 8.03(d,J=8.4Hz,2H),δ 8.79(s,1H).
【0163】
(合成例5)
化合物(L−5)の合成
【化31】


反応容器中に化合物(L−2)1.64g(0.007mol)、4−ベンゾイルフェニルホウ酸1.98g(0.00875mol)、炭酸ナトリウム1.48g(0.014mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.49g(0.00042mol)を量り取り、ジメチルホルムアミド/エタノール混合溶液(50mL/5mL)を加えて、窒素気流下で9時間還流した。反応混合物を水(150mL)にあけ、酢酸エチル/ヘキサン(1/1)溶液(200mL)で抽出した後に、有機層を水(150mL)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)、飽和食塩水(100mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/クロロホルム)で精製し、溶媒を留去して化合物(L−5)0.69g(0.00206mol)を得た。収率29%。
LC−MS(positive)m/z:336([M+H]
H NMR(300MHz,CDCl
δ 7.26(m,1H),δ 7.51(m,2H),δ 7.61(m,1H),δ 7.80(m,6H),δ 7.86(d,J=8.2Hz,2H),δ 7.92(d,J=7.5Hz,2H),δ 8.13(d,J=7.5Hz,2H),δ 8.73(m,1H).
【0164】
(合成例6)
化合物(L−6)の合成
【化32】


反応容器中に化合物(L−2)1.17g(0.005mol)、trans−2−フェニルビニルホウ酸0.76(0.00625mol)、炭酸ナトリウム1.06g(0.01mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.35g(0.0003mol)を量り取り、ジメチルホルムアミド/エタノール混合溶液(35mL/5mL)を加えて、窒素気流下で10時間還流した。反応混合物を水(100mL)にあけ、酢酸エチル/ヘキサン(1/1)溶液(100mL)で抽出した後に、有機層を水(100mL)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)、飽和食塩水(100mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/クロロホルム)で精製し、溶媒を留去して化合物(L−6)0.73g(0.00284mol)を得た。収率57%。
LC−MS(positive)m/z:258([M+H]
H NMR(300MHz,CDCl
δ 7.17(s,1H),δ 7.18(s,1H),δ 7.27(m,2H),δ 7.38(dd,J=7.2,7.9Hz,2H),δ 7.55(d,J=7.7Hz,2H),δ 7.63(d,J=8.3Hz,2H),δ 7.76(m,2H),δ 8.02(d,J=8.3Hz,2H),δ 8.70(d,J=4.8Hz,1H).
【0165】
(比較例1)
金属錯体(M−3)の合成
【化33】


反応容器に化合物(L-6) 591 mg (0.00225 mol), テトラクロロ白金(II)酸カリウム623 mg (0.0015 mol), 2-エトキシエタノール180 mL及び水60 mLを量り取り、これを80 ℃で8時間加熱撹拌した。空冷後、水(150 mL)を加えて反応物を濾別し、水、メタノール、少量の塩化メチレンの順で洗浄して黄色固体を得た。
反応容器に黄色固体,アセチルアセトン207 mg(0.00207 mol)及び 2-エトキシエタノール50 mLを量り取り、これに炭酸ナトリウム731 mg(0.0069 mol) を加え、100 ℃ で10時間加熱撹拌した。溶媒を留去し、残渣を塩化メチレンに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(展開溶媒:塩化メチレン)。濃縮後にメタノールを加え、生じた黄色結晶をろ別回収して化合物(M-3) 253 mg(0.000460 mol)を得た。収率61%。
LC-MS (positive) m/z : 551 ([M+H]+)
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)
d 2.01 (s, 3 H), d 2.04 (s, 3 H), d 5.55 (s, 1 H), d 7.28 (m, 1 H), d 7.39 (m, 6 H), d 7.66 (m, 4 H), d 8.02 (m, 2 H), d 8.89 (d, J = 5.7 Hz, 1 H).
【0166】
上記金属錯体(M−3)とポリメチルメタクリレート樹脂(以下PMMAと記載)を重量比で2:98の比率で混合したものの、10wt%トルエン溶液を調製した。この溶液を石英基板上に滴下、乾燥し、石英基板上に金属錯体(M−3)ドープのPMMA膜を製膜した。PMMAはアルドリッチ社製を用いた。
上記基板を用い、フォトルミネッセンス測定し、量子効率を求めた。
フォトルミネッセンス量子効率は、(株)オプテル社製有機EL発光特性評価装置IES−150を用い、励起波長は350nmにて測定した。
【0167】
上記金属錯体(M−3)に対して計算を実施した結果、HOMOにおける中心金属Mの最外殻d軌道の占める割合Φは、Φ=9.9(%)と小さい値であった。最低一重項励起エネルギー(S1)と最低励起三重項エネルギー(T1)のエネルギー差ΔE=S1−T1は、ΔE=0.91(eV)、及び、最低一重項励起における振動子強度fは、f=0.256であった。
【0168】
計算は、発明の詳細な説明に記載してある方法にて実施した。
具体的には、量子化学計算プログラムGaussian03を用い、B3LYPレベルの密度汎関数法により、金属錯体(M−3)の基底状態における構造最適化し、各軌道のポピュレーション解析より、HOMOにおける中心金属の最外殻d軌道の占める割合Φを算出した。その際、基底関数としては、中心金属に対してはLANL2DZを、それ以外の原子に対しては、6−31G*を用いた。その後、同一の基底を用い、B3LYPレベルの時間依存密度汎関数法により、最低一重項励起エネルギー(S1)及び最低三重項励起エネルギー(T1)を求め、エネルギー差ΔE=S1−T1、及び最低一重項励起における振動子強度fを算出した。
【0169】
(実施例1)
金属錯体(M−1)の合成
【化34】


反応容器に化合物(L-3) 268 mg (0.0008 mol), テトラクロロ白金(II)酸カリウム166 mg (0.0004 mol), 2-エトキシエタノール45 mL及び水15mLを量り取り、これを80 ℃で11時間加熱撹拌した。空冷後、水(50 mL)を加えて反応物を濾別し、水、メタノール、少量の塩化メチレンの順で洗浄して黄色固体を得た。
反応容器に黄色固体、アセチルアセトン60mg(0.0006 mol)及び 2−エトキシエタノール15 mLを量り取り、これに炭酸ナトリウム212 mg (0.002 mol) を加え、100 ℃ で5時間加熱撹拌した。溶媒を留去し、残渣を塩化メチレンに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(展開溶媒:塩化メチレン)。濃縮後にメタノールを加え、生じた黄色結晶をろ別回収して化合物(M-1) 72 mg(0.000114 mol)を得た。収率28%。
LC-MS (positive) m/z : 629 ([M+H]+)
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)
d 1.96 (s, 3 H), d 2.01 (s, 3 H), d 5.60 (s, 1 H), d 7.11 (m, 2 H), d 7.43 (d, J = 7.3 Hz, 1 H), d 7.59 (t, J = 7.4 Hz, 2 H), d 7.71 (m, 2 H), d 7.79 (d, J = 7.5 Hz, 2 H), d 7.93 (m, 4 H), d 8.12 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), d 8.46 (d, J = 7.4 Hz, 1 H), d 9.22 (s, 1 H).
【0170】
上記金属錯体(M−1)を用いて、比較例1と同様にして金属錯体(M−1)ドープのPMMA膜を製膜し、フォトルミネッセンスを測定した。545nm、583nmにピークをもつ発光が観測され、その量子効率は、比較例1の72.9倍であった。
【0171】
下記化合物(CBP)と、上記金属錯体(M−1)を97.5:2.5の比率(重量比)で混合した混合物の、0.8wt%クロロホルム溶液を調製し、EL素子を作製した。なお、CBPは同仁化学研究所より購入したものを用いた。
(CBP)
【化35】


スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社、BaytronP)を用いてスピンコートにより50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥した。次に、上記調製したクロロホルム溶液を用いてスピンコートにより2500rpmの回転速度で成膜した。さらに、これを窒素ガス雰囲気下130℃で1時間乾燥した後、陰極としてバリウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、EL素子を作製した。なお真空度が、1×10-4Pa以下に到達したのち、金属の蒸着を開始した。
得られた素子に電圧を印加することにより、540nmに最大ピークを有するEL発光が観測された。該素子は、18.5Vで約100cd/mの高輝度が得られた。
【0172】
比較例1と同様の手法により、上記金属錯体(M−1)に対して計算を実施した結果、HOMOにおける中心金属Mの最外殻d軌道の占める割合Φは、Φ=41.4(%)、最低一重項励起エネルギー(S1)と最低励起三重項エネルギー(T1)のエネルギー差ΔE=S1−T1は、ΔE=0.42(eV)、及び、最低一重項励起における振動子強度fは、f=0.122であった。
【0173】
(実施例2)
金属錯体(M−2)の合成
【化36】


反応容器に化合物(L-4) 412 mg (0.0016 mol), テトラクロロ白金(II)酸カリウム332 mg (0.0008 mol), 2-エトキシエタノール90 mL及び水30 mLを量り取り、これを80 ℃で10時間加熱撹拌した。空冷後、水(100 mL)を加えて反応物を濾別し、水、メタノール、少量の塩化メチレンの順で洗浄して黄色固体を得た。
反応容器に黄色固体,アセチルアセトン120mg(0.0012 mol)及び 2-エトキシエタノール30 mLを量り取り、これに炭酸ナトリウム424 mg(0.004 mol) を加え、100 ℃ で9時間加熱撹拌した。溶媒を留去し、残渣を塩化メチレンに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(展開溶媒:塩化メチレン)。濃縮後にメタノールを加え、生じた黄色結晶をろ別回収して化合物(M-2) 62 mg(0.000113 mol)を得た。収率14%。
LC-MS (positive) m/z : 551 ([M+H]+)
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)
d 1.97 (s, 3 H), d 2.07 (s, 3 H), d 5.61 (s, 1 H), d 7.10 (m, 2 H), d 7.34 (m, 1 H), d 7.43 (m, 5 H), d 7.68 (m, 3 H), d 8.01 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), d 8.39 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), d 8.98 (s, 1 H).
【0174】
金属錯体(M−2)を用いて、実施例1と同様にして金属錯体(M−2)ドープのPMMA膜を製膜し、フォトルミネッセンスを測定した。その量子効率は、比較例1の1.3倍であった。
【0175】
実施例1と同様の手法により、上記金属錯体(M−2)に対して計算を実施した結果、HOMOにおける中心金属Mの最外殻d軌道の占める割合Φは、Φ=34.7(%)、最低一重項励起エネルギー(S1)と最低励起三重項エネルギー(T1)のエネルギー差ΔE=S1−T1は、ΔE=0.74(eV)、及び、最低一重項励起における振動子強度fは、f=0.223であった。
【0176】
(実施例3)
金属錯体(M−4)の合成
【化37】


反応容器に化合物(L-4) 587 mg (0.00175 mol), テトラクロロ白金(II)酸カリウム581 mg (0.0014 mol), 2-エトキシエタノール120 mL及び水40mLを量り取り、これを80 ℃で10時間加熱撹拌した。空冷後、水(200 mL)を加えて反応物を濾別し、水、メタノール、少量の塩化メチレンの順で洗浄して黄色固体を得た。
反応容器に黄色固体,アセチルアセトン120 mg(0.0012 mol)及び 2-エトキシエタノール30 mLを量り取り、これに炭酸ナトリウム424 mg (0.004 mol) を加え、100 ℃ で10時間加熱撹拌した。溶媒を留去し、残渣を塩化メチレンに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(展開溶媒:塩化メチレン)。濃縮後にメタノールを加え、生じた黄色結晶をろ別回収して化合物(M-4) 145 mg(0.000231 mol)を得た。収率29%。
LC-MS (positive) m/z : 629 ([M+H]+)
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)
d 2.00 (s, 3 H), d 2.02 (s, 3 H), d 5.62 (s, 1 H), d 7.46 (m, 2 H), d 7.60 (m, 2 H), d 7.70 (m, 2 H), d 7.80 (m, 3 H), d 7.88 (m, 4 H), d 8.08 (m, 2 H), d 8.93 (d, J = 6.1 Hz, 1 H).
【0177】
上記金属錯体(M−4)を用いて、実施例1と同様にして金属錯体(M−4)ドープのPMMA膜を製膜し、フォトルミネッセンスを測定した。544nm、581nmにピークをもつ発光が観測され、その量子効率は、比較例1の48.6倍であった。
【0178】
実施例1と同様の手法により、上記金属錯体(M−4)に対して計算を実施した結果、HOMOにおける中心金属Mの最外殻d軌道の占める割合Φは、Φ=39.1(%)、最低一重項励起エネルギー(S1)と最低励起三重項エネルギー(T1)のエネルギー差ΔE=S1−T1は、ΔE=0.56(eV)、及び、最低一重項励起における振動子強度fは、f=0.093であった。
【0179】
(実施例4)
金属錯体(M−1)と同様の手法により、下記金属錯体(M−5)及び(M−6)に対して計算を実施した結果、HOMOにおける中心金属Mの最外殻d軌道の占める割合Φ、最低一重項励起エネルギー(S1)と最低励起三重項エネルギー(T1)のエネルギー差ΔE=S1−T1、及び、最低一重項励起における振動子強度fは、以下表1のようになった。
比較例である金属錯体(M−5)と比較して、本発明の金属錯体(M−6)は、Φ及びfが大きくなっており、より優れる。
【表1】


【化38】

【0180】
(実施例5)
金属錯体(M−1)と同様の手法により、下記金属錯体(M−7)に対して計算を実施した結果、HOMOにおける中心金属Mの最外殻d軌道の占める割合Φは、Φ=37.2(%)、最低一重項励起エネルギー(S1)と最低励起三重項エネルギー(T1)のエネルギー差ΔE=S1−T1は、ΔE=0.24(eV)、及び、最低一重項励起における振動子強度fは、f=0.033であった。
【化39】

【0181】
(実施例6)
金属錯体(M−1)と同様の手法により、下記金属錯体(M−8)に対して計算を実施した結果、HOMOにおける中心金属Mの最外殻d軌道の占める割合Φは、Φ=45.7(%)、最低一重項励起エネルギー(S1)と最低励起三重項エネルギー(T1)のエネルギー差ΔE=S1−T1は、ΔE=0.22(eV)、及び、最低一重項励起における振動子強度fは、f=0.026であった。
【化40】

【0182】
(実施例7)
金属錯体(M−1)と同様の手法により、下記金属錯体(M−9)に対して計算を実施した結果、HOMOにおける中心金属Mの最外殻d軌道の占める割合Φは、Φ=36.6(%)、最低一重項励起エネルギー(S1)と最低励起三重項エネルギー(T1)のエネルギー差ΔE=S1−T1は、ΔE=0.24(eV)、及び、最低一重項励起における振動子強度fは、f=0.038であった。
【化41】

【0183】
(実施例8)
金属錯体(M−1)と同様の手法により、下記金属錯体(M−10)に対して計算を実施した結果、HOMOにおける中心金属Mの最外殻d軌道の占める割合Φは、Φ=41.8(%)、最低一重項励起エネルギー(S1)と最低励起三重項エネルギー(T1)のエネルギー差ΔE=S1−T1は、ΔE=0.24(eV)、及び、最低一重項励起における振動子強度fは、f=0.023であった。
【化42】

【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の金属錯体は、イリジウムよりも産出量及び埋蔵量の多い金属を中心金属に用いた錯体であり、発光効率、安定性、色純度等に優れ得る。したがって、本発明の金属錯体を、エレクトロルミネッセンス素子等の光電素子に用いることにより、特性のより優れた素子を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明に従う実施例1〜3、及び比較例1における量子効率とd軌道の割合(%)の相関を示す図。ここで、相対量子効率は、比較例1の量子効率を1とした時の各々の相対値を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心金属MがSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Pt、Au、及びHgからなる群から選ばれる1つである金属錯体であり、ハロゲン単座配位子を含まず、計算科学的手法により得られる最高占有分子軌道(HOMO)において、中心金属の最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和が、全原子軌道係数の2乗の和に対して占める割合が1/3以上であり、さらに計算科学的手法により得られる最低一重項励起エネルギー(S1)と、最低三重項励起エネルギー(T1)のエネルギー差(S1−T1)が0.1(eV)以上1.0(eV)以下であり最低一重項励起における振動子強度(f)が0.005以上1.0以下であることを特徴とする上記金属錯体。
【請求項2】
上記fと(S1−T1)が、f≦0.24×(S1−T1)+0.06及びf≧0.24×(S1−T1)−0.06で規定される範囲内にある、請求項1記載の金属錯体。
【請求項3】
(S1−T1)が0.1(eV)以上0.28(eV)以下であり、かつ振動子強度(f)が0.005以上である、請求項2記載の金属錯体。
【請求項4】
(S1−T1)が0.28(eV)より大きく1(eV)以下であり、かつ振動子強度(f)が0.035以上である、請求項2記載の金属錯体。
【請求項5】
(S1−T1)が0.15(eV)以上0.28(eV)以下であり、かつ振動子強度(f)が0.025以上0.05以下である、請求項1〜3のいずれか一項記載の金属錯体。
【請求項6】
(S1−T1)が0.28(eV)より大きく1.0(eV)以下であり、かつ振動子強度(f)が0.07以上0.3以下である、請求項2又は4記載の金属錯体。
【請求項7】
(S1−T1)が0.28(eV)より大きく1.0(eV)以下であり、かつ振動子強度(f)が0.09以上0.3以下である、請求項2又は4記載の金属錯体。
【請求項8】
(S1−T1)が0.28(eV)より大きく1.0(eV)以下であり、かつ振動子強度(f)が0.10以上0.25以下である、請求項2又は4記載の金属錯体。
【請求項9】
非イオン性である、請求項1〜8のいずれか一項記載の金属錯体。
【請求項10】
一個以上の芳香環を含む多座キレート配位子を少なくとも一つ以上有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の金属錯体。
【請求項11】
下記一般式(1-1)で表される部分構造を有することを特徴とする金属錯体。
【化1】


(上記一般式(1−1)において、Mは前記中心金属を表し、R〜R、及びRa〜Rfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。但し、R及びRの少なくとも一つは、下記式(2)で表される基である。式(2)において、R11〜R19は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。また、波線の位置は、結合位置を表す。)
【化2】

【請求項12】
上記一般式(1−1)で表される部分構造を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項記載の金属錯体。
【請求項13】
下記一般式(1−2)で表される部分構造を有する請求項1〜10のいずれか一項記載の金属錯体。
(上記一般式(1−2)において、Mは前記中心金属を表し、Ra〜Rgは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。
は下記一般式(3)で示される基を表す。
一般式(3)において、R21及びR22は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R23〜R27はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。また、波線の位置は、結合位置を表す。)
【化3】


【化4】

【請求項14】
下記一般式(4)で表される構造を部分構造として有することを特徴とする金属錯体。
【化5】


(上記式(4)中、Mは前記中心金属を表し、C1環、C2環、C3環、及びC4環はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を表し、各々の環構造内に存在しているZ1、Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立に中心金属Mへの配位原子を表す。i、j、k、及びlはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルケニレン基又は炭素数1〜6のアルキニレン基を表し、該アルキレン基、該アルケニレン基及び該アルキニレン基の炭素原子がそれぞれ酸素原子、硫黄原子、窒素原子、又はリン原子で置換されていてもよい。p、q、r、及びsはそれぞれ独立に0又は1を表す。
【請求項15】
上記一般式(4)で表される構造を部分構造として有する、請求項1〜10のいずれか一項記載の金属錯体。
【請求項16】
下記一般式(M−6)で表される金属錯体。
【化6】

【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項記載の金属錯体と電荷輸送性材料とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項18】
前記電荷輸送性材料が有機化合物である、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記有機化合物が低分子有機化合物である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記有機化合物が高分子である、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
前記高分子が共役系高分子である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記高分子が下記一般式(6)で表される繰り返し単位を含む、請求項21記載の組成物。
【化6】


(式中、P環及びQ環はそれぞれ独立に芳香環を示すが、P環は存在してもしなくてもよい。2つの結合手は、P環が存在する場合は、それぞれP環及び/又はQ環上に存在し、P環が存在しない場合は、それぞれYを含む5員環若しくは6員環上及び/又はQ環上に存在する。また、芳香環上及び/又はYを含む5員環若しくは6員環上に置換基を有していてもよい。Yは−O−、−S−、−Se−、−B(R31)−、−N(R35)−、−C(R)(R)−、−Si(R)(R)−、−P(R)−、−PR(=O)−、−C(R51)(R52)−C(R53)(R54)−、−O−C(R55)(R56)−、−S−C(R57)(R58)−、−N−C(R59)(R60)−、−Si(R61)(R62)−C(R63)(R64)−、−Si(R65)(R66)−Si(R67)(R68)−、−C(R69)=C(R70)−、−N=C(R71)−又は−Si(R72)=C(R73)−を表し、R〜R、R31、R35、及びR51〜R73は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項23】
請求項1〜16のいずれか一項記載の金属錯体を部分構造として分子内に含むことを特徴とする高分子。
【請求項24】
共役系高分子である、請求項23記載の高分子。
【請求項25】
請求項17〜24のいずれか一項記載の組成物又は高分子と、さらに正孔輸送材料、電子輸送材料、及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類の材料を含むことを特徴とする組成物。
【請求項26】
請求項1〜25記載の金属錯体、組成物又は高分子を含有することを特徴とするインク組成物。
【請求項27】
粘度が25℃において1〜100mPa・sである、請求項26記載のインク組成物。
【請求項28】
請求項1〜25記載の金属錯体、組成物又は高分子を含有することを特徴とする発光性薄膜。
【請求項29】
請求項1〜25記載の金属錯体、組成物又は高分子を含有することを特徴とする光電素子。
【請求項30】
陽極及び陰極からなる電極間に、請求項17〜25のいずれか一項記載の組成物又は高分子を含む層を有することを特徴とする光電素子。
【請求項31】
陽極及び陰極からなる電極間に、さらに電荷輸送層又は電荷阻止層を含む、請求項30記載の光電素子。
【請求項32】
光電素子が発光素子である、請求項29〜31のいずれか一項記載の光電素子。
【請求項33】
請求項32に記載の発光素子を用いたことを特徴とする面状光源。
【請求項34】
請求項32に記載の発光素子を用いたことを特徴とするセグメント表示装置
【請求項35】
請求項32に記載の発光素子を用いたことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
【請求項36】
請求項32に記載の発光素子をバックライトとすることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項37】
請求項32に記載の発光素子を用いることを特徴とする照明。

【図1】
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【公開番号】特開2007−99765(P2007−99765A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244180(P2006−244180)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】