金属錯体化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
【課題】短波長の発光で、色純度の高い青色発光が得られ、他の発光化合物と組み合わせて白色発光も可能な有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを実現する金属錯体化合物並びに有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を提供する。
【解決手段】2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有し、電子吸引性基を有する特定構造の金属錯体化合物、並びに、一対の電極間に少なくとも発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、前記金属錯体化合物を含有し、両極間に電圧を印加することにより発光する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【解決手段】2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有し、電子吸引性基を有する特定構造の金属錯体化合物、並びに、一対の電極間に少なくとも発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、前記金属錯体化合物を含有し、両極間に電圧を印加することにより発光する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な金属錯体化合物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、特に、短波長の発光で、色純度の高い青色発光が得られ、他の発光化合物と組み合わせて白色発光も可能な有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを実現する金属錯体化合物並びに有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を液晶に代わるカラーディスプレイ用表示装置として用いることが活発に検討されている。しかし、大画面化を実現するにはまだその発光素子性能は不足している。この有機EL素子の性能向上手段として、りん光発光材料としてオルソメタル化イリジウム錯体(fac-tris(2-phenylpyridine)iridium)を発光材料に用いた緑色発光素子が提案されている (非特許文献1; 非特許文献2) 。
りん光発光を利用した有機EL素子、現状では緑色発光や赤色発光に限られるために、カラーディスプレイとしての適用範囲は狭いため、他の色についても発光特性が改善された素子の開発が望まれていた。特に青色発光素子については、外部量子収率5%を超えるものは報告されておらず、青色発光素子の改善ができればフルカラー化及び白色化が可能となり、りん光EL素子の実用化に向けて大きく前進する。
【0003】
現状、りん光発光錯体として、Irを含む金属錯体化合物の開発が活発に行われており、緑色発光素子用としては下記化合物Aが知られている。一方、青色発光素子としては、下記化合物Bが知られているが、素子の寿命、効率の点で実用的でない。そこで、その他の青色発光素子用の錯体を開発する必要性があるが、現状では、化合物B以外には見出されていない。
【0004】
【化1】
【0005】
以上の化合物A及びBは、2座キレート配位子を用いた錯体であるが、類似の3座キレート配位子を用いた錯体は殆ど知られておらず、以下に示す化合物Cが知られている程度である(非特許文献3参照)。
【0006】
【化2】
【0007】
しかしながら、化合物Cより得られる発光波長は600nmの赤色領域発光であり、青色領域発光ではない。このような3座キレート配位子を用いた錯体で青色領域発光の錯体が実現できれば、新たな技術展開の可能性がある。
また、特許文献1及び2には、3座キレート配位子を有する金属錯体化合物が開示されているが、金属錯体化合物の特定部位に電子吸引性基を付加することで、より短い波長の光を発光させる技術については開示がない。
【0008】
【非特許文献1】D.F.O'Brien and M.A.Baldo et al "Improved energy transferin electrophosphorescent devices" Applied Physics letters Vol.74 No.3, pp442-444, January 18, 1999
【非特許文献2】M.A.Baldo et al "Very high-efficiencygreen organic light-emitting devices based on electrophosphorescence" Applied Physics letters Vol. 75 No.1, pp4-6, July 5, 1999
【非特許文献3】J-P. Collin et.al., J.Am.Chem.Soc., 121,5009(1999)
【特許文献1】国際公開第2006/051806号パンフレット
【特許文献2】特開2006−160724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、短波長の発光で、色純度の高い青色発光が得られ、他の発光化合物と組み合わせて白色発光も可能な有機EL素子及びそれを実現する金属錯体化合物並びに有機EL素子用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは下記一般式(I)で表されるような2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有する構造を持ち、電子吸引性基を有する金属錯体化合物を用いると、短波長の発光で、色純度の高い青色発光が得られるという青色化の新たな構造因子を明らかにし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有する下記一般式(I)で表される構造を有する金属錯体化合物を提供するものである。
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、環Aは、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基であり、
環Bは、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、Nは窒素原子、Yは炭素原子又は窒素原子であり、
L及びZは、それぞれ独立に、周期律表第14〜16族のいずれかの原子を含有する有機基であり、
Xは、周期律表第14〜17族のいずれかの原子を含有する一価の配位子であり、
Rは、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルキニル基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基である。nは0〜4の整数であり、nが2以上である場合、それぞれのRは同一でも異なっていてもよく、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
ただし、3座キレート配位子及び/又は2座キレート配位子は電子吸引性基を含有する。)
また、本発明は、前記金属錯体化合物からなる有機EL素子用材料、並びに、一対の電極間に少なくとも発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、前記金属錯体化合物を含有し、両極間に電圧を印加することにより発光する有機EL素子を提供するものである。
さらに、前記金属錯体化合物と赤色発光材料とを発光層の発光性ドーパントとして同時に用いることにより、色純度の高い白色発光する有機EL素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、発光効率が高く、発光色が短波長で、色純度の高い青色発光が得られ、他の発光化合物と組み合わせて白色発光も可能な有機EL素子及びそれを実現する金属錯体化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の金属錯体化合物は、2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有する下記一般式(I)で表される構造を有するものである。
【化4】
【0015】
一般式(I)において、環Aは、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基であり、環Bは、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、Nは窒素原子、Yは炭素原子又は窒素原子である。
環Aの芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、フルオランテン等の残基が挙げられ、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基が好ましく、ベンゼンの残基がより好ましい。
環A及び環Bの複素環基としては、例えば、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾフラン等の残基が挙げられ、炭素数2〜5の複素環基が好ましく、ピリジン、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾフランの残基がより好ましい。環Bの複素環基としては、特にピリジンの残基が好ましい。
また、これら各基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のフッ素置換アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜12(好ましくは炭素数2〜8)のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜12(好ましくは炭素数5〜8)のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜5の複素環基、置換もしくは無置換のアリールアルキル基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等が挙げられる。
アミノ基としては、アミノ基の水素原子が炭素数1〜12のアルキル基で置換されたアルキルアミノ基;アミノ基の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアリールアミノ基が挙げられる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
複素環基としては、例えばイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジン等の残基が挙げられる。
アリールアルキル基としては、上記アルキル基に上記アリール基が置換したものであり、例えばベンジル基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、アリール基部位が上記アリール基であるものが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、アルコキシ基部位が上記アルコキシ基であるものが挙げられる。
【0016】
一般式(I)において、L及びZは、それぞれ独立に、周期律表第14〜16族のいずれかの原子を含有する有機基である。
このL及びZに含まれる周期律表第14〜16族の原子としては、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)、Si(ケイ素)、P(リン)、S(硫黄)、Ge(ゲルマニウム)、As(ヒ素)、Se(セレン)原子等が挙げられ、炭素、窒素、酸素原子が好ましい。
また、L及びZの示す有機基としては、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルキニル基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基であると好ましい。
【0017】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、フルオランテン等の残基が挙げられる。
前記複素環基としては、例えば、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジン等の残基が挙げられる。
前記アルキルアミノ基としては、アミノ基の水素原子が前記アルキル基で置換されたものが挙げられる。
前記アリールアミノ基としては、アミノ基の水素原子が前記芳香族炭化水素基で置換されたものが挙げられる。
前記アルコキシ基は−OY’と表され、Y’としては、前記アルキル基で挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記ハロゲン化アルコキシ基としては、前記アルコキシ基の水素原子が前記ハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。
前記アリールオキシ基は−OY''と表され、Y''としては、前記芳香族炭化水素基で挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記ハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子が前記ハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等が挙げられる。
前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、メチルエチニル基等が挙げられる。
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、これら各基が有していてもよい置換基としては、環A及びBが有していてもよい置換基として例示したものと同様の置換基が挙げられる。
【0018】
一般式(I)において、Xは、周期律表第14〜17族のいずれかの原子を含有する一価の配位子である。
このXに含まれる周期律表第14〜17族の原子としては、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)、F(フッ素)、Si(ケイ素)、P(リン)、S(硫黄)、Cl(塩素)、Ge(ゲルマニウム)、As(ヒ素)、Se(セレン)、Br(臭素)、I(ヨウ素)原子等が挙げられ、炭素、窒素、塩素、臭素、ヨウ素原子が好ましい。
また、Xの示す配位子としては、シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、水素原子、Si(R’)3(R’は下記Rと同様の基を示す)、置換もしくは無置換のフェニル基及び下記の基
【化5】
が挙げられ、シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、水素原子、Si(R’)3又は置換フェニル基が好ましく挙げられる。
【0019】
一般式(I)において、Rは、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルキニル基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、これら各基の具体例としては、L及びZと同様の例が挙げられる。
これらの中でも、水素原子、イソプルピル基、t−ブチル基、メチル基が好ましい。
また、nは0〜4の整数であり、nが2以上の場合、それぞれのRは同一でも異なっていてもよく、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。nは0又は1が好ましい。
この環状構造としては、例えば、シクロアルカン(例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロプロパン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等)、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、フルオランテン等)及び複素環(例えば、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、ジフェニルアントラセン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジン等)が挙げられる。
また、これら各基が有していてもよい置換基としては、環A及びBが有していてもよい置換基として例示したものと同様の置換基が挙げられる。
【0020】
本発明の金属錯体化合物は、一般式(I)において、3座キレート配位子及び/又は2座キレート配位子は電子吸引性基を含有する。また、3座キレート配位子及び2座キレート配位子の両方が電子吸引性基を含有すると、より短波長の発光が得られる、或いはより高い量子収率が得られるため好ましい。
前記電子吸引性基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子含有アルキル基又はエステル基、アルデヒド基等が挙げられ、ハロゲン原子、ハロゲン原子含有アルキル基が好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル基がより好ましい。
本発明の金属錯体化合物は、このように電子吸引性基を導入することにより、金属錯体化合物のHOMOを安定化し、HOMOとLUMOのエネルギー差が広がるように作用するため、より短波長の青色発光が得られる。この作用は、電子吸引性基として特にフッ素原子を用いると強い。また、フッ素原子を導入した金属錯体化合物は、昇華性に優れるので、蒸着により有機EL素子を製造する場合に効率が良い。
また、本発明の金属錯体化合物は、三座キレート配位子がピリジン環を必須構造として有することにより、化合物の安定性が向上し、量子収率も向上する。
【0021】
前記一般式(I)において、前記3座キレート配位子が下記一般式(1)又は(2)で表されると好ましく、(3)〜(16)のいずれかで表される化合物であると好ましい。
【化6】
(式中、環B、Y、R及びnは、前記と同じ。)
【0022】
【化7】
【0023】
(式中、R1 〜R23は、それぞれ前記Rと同じであり、またR1〜R23のうち隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。具体例もRと同様のものが挙げられる。)
さらに、前記3座キレート配位子として、下記のような例が挙げられる。
【0024】
【化8】
【0025】
【化9】
【0026】
【化10】
【0027】
【化11】
【0028】
【化12】
【0029】
【化13】
【0030】
【化14】
【0031】
【化15】
【0032】
【化16】
【0033】
前記一般式(I)において、L−Zで形成される2座キレート配位子が下記一般式(17)〜(22)のいずれかで表される化合物であると好ましい。
【0034】
【化17】
(式中、R24〜R45は、それぞれ前記Rと同じであり、またR24〜R45のうち隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。具体例もRと同様のものが挙げられる。)
さらに、前記2座キレート配位子として、下記のような例が挙げられる。
【0035】
【化18】
【0036】
【化19】
【0037】
【化20】
【0038】
本発明の金属錯体化合物は、下記一般式(I−1)〜(I−12)及び(I−13)〜(I−24)のいずれかで表されるものであると好ましい。
【化21】
【0039】
【化22】
【0040】
(式(I−1)〜(I−12)中、R46〜R58は、それぞれ前記Rと同じである。l及びl'は0〜2の整数であり、m及びm'は0〜3の整数であり、n、n'、n''及びn'''は0〜4の整数である。l、l'、m、m'、n、n'、n''又はn'''が2以上である場合、R46〜R58のうち2以上となるものはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。具体例もRと同様のものが挙げられる。ただし、R46〜R58において、いずれか1以上は電子吸引性基である必要がある。
式(I−13)〜(I−24)中、R46及びR48〜R59は、それぞれ前記Rと同じである。l、l'及びl''は0〜2の整数であり、mは0〜3の整数であり、n、n'、n''及びn'''は0〜4の整数である。l、l'、l''、m、n、n'、n''又はn'''が2以上である場合、R46及びR48〜R59のうち2以上となるものはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。具体例もRと同様のものが挙げられる。ただし、R48〜R59において、いずれか1以上は電子吸引性基である必要がある。)
これらの中でも、それぞれ、nが0又は1であることが好ましい。特に、金属錯体化合物(I−5)、(I−9)、(I−13)、(I−17)、(I−21)においては、nが1の場合に、R46及びR46は炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、イソプロピル基、t−ブチル基がさらに好ましい。
【0041】
また、本発明の金属錯体化合物の具体例としては、下記表1に示すような部分構造の組み合わせからなるものが好ましい。これら例示化合物に限定されるものではない。
【表1】
【0042】
本発明の有機EL素子用材料は、本発明の金属錯体化合物を含有するものである。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極からなる一対の電極間に少なくとも発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、本発明の金属錯体化合物を含有し、両極間に電圧を印加することにより発光するものである。
本発明の有機EL素子は、前記発光層が、本発明の金属錯体化合物を含有すると好ましく、本発明の金属錯体化合物を発光層全質量に対して1〜30質量%含有すると好ましい。
また、通常、前記発光層は真空蒸着又は塗布により薄膜化するが、塗布の方が製造プロセスが簡略化できることから、本発明の金属錯体化合物を含有する層が、塗布により成膜されてなると好ましい。
【0043】
本発明における有機EL素子の素子構造は、電極間に有機層を1層又は2層以上積層した構造であり、その例としては、(i)陽極、発光層、陰極、(ii)陽極、正孔注入・輸送層、発光層、電子注入・輸送層、陰極、(iii)陽極、正孔注入・輸送層、発光層、陰極、(iv)陽極、発光層、電子注入・輸送層、陰極等の構造が挙げられる。
本発明における金属錯体化合物は上記のどの有機層に用いられてもよく、他の正孔輸送材料、発光材料、電子 輸送材料にドープさせることも可能である。有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されないが、蒸着法のほか,本発明の発光組成物を溶解し、又は組成物を形成する化合物をそれぞれ溶解した後、この溶液を用い各種の湿式方法により発光媒体又は発光層を形成できる。溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法、インクジェット法などによる公知の方法で形成することができる。本発明の有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0044】
発光層を形成する発光溶液調製時に用いる溶媒例としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、ハロゲン系炭化水素系溶媒や炭化水素系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。なお、使用可能な溶媒はこれらに限定されるものではない。また、発光溶液にはドーパントとして本発明の金属錯体化合物をあらかじめ溶解させておいてもよい。
【0045】
また、本発明の金属錯体化合物をドーパントとして用いる場合、他の発光性ドーパントと組み合わせて発光層に用いることにより、白色発光可能な有機EL素子が得られる。上記他の発光性ドーパントは、蛍光発光材料でもりん光発光材料でもよく、特に限定はないが、好ましくは最大発光波長が黄色〜赤色領域にあるものが望ましい。
【0046】
本発明に用いられる電子注入・輸送材料は特に限定されず、通常電子注入・輸送材料として使用されている化合物であれば何を使用してもよい。含窒素環誘導体や、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ビス{2−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール}−m−フェニレン等のオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キノリノール系の金属錯体が挙げられる。また電子注入・輸送層を構成する無機化合物として、絶縁体又は半導体を使用することが好ましい。
また、本発明の有機EL素子は、前記発光層と陰極との間に電子注入層及び/又は電子輸送層を有する場合、含窒素環誘導体を主成分として含有すると好ましい。
含窒素環誘導体としては、分子内にヘテロ原子を有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましい。
【0047】
この含窒素環誘導体としては、例えば、一般式(A)で表されるものが好ましい。
【化23】
【0048】
RA1〜RA6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、オキシ基、アミノ基、又は炭素数1〜40の炭化水素基であり、これらは置換されていてもよい。
このハロゲン原子の例としては、前記と同様のものが挙げられる。また、置換されていてもよいアミノ基の例としては、前記アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基(アリールアルキルは、前記芳香族炭化水素基、アルキル基と同様)と同様のものが挙げられる。
前記炭素数1〜40の炭化水素基としては、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基(芳香族炭化水素基)、複素環基、アラルキル基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。このアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アラルキル基、アリールオキシ基の例としては、前記と同様のものが挙げられ、アルコキシカルボニル基は−COOY’と表され、Y’の例としては前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0049】
Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)であり、Inであると好ましい。
一般式(A)のLAは、下記一般式(A’)又は(A'')で表される基である。
【化24】
【0050】
(式中、RA7〜RA11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。また、RA12〜RA26は、それぞれ独立に、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。)
一般式(A’)及び(A'')のRA7〜RA11及びRA12〜RA26が示す炭素数1〜40の炭化水素基としては、前記RA1〜RA6の具体例と同様のものが挙げられる。
また、前記RA7〜RA11及びRA12〜RA26の互いに隣接する基が環状構造を形成した場合の2価の基としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2’−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
一般式(A)で表される含窒素環の金属キレート錯体の具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0051】
【化25】
【0052】
【化26】
【0053】
【化27】
【0054】
前記含窒素環誘導体としては、含窒素5員環誘導体も好ましく、含窒素5員環としては、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、オキサトリアゾール環、チアトリアゾール環等が挙げられ、含窒素5員環誘導体としては、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ピリジノイミダゾール環、ピリミジノイミダゾール環、ピリダジノイミダゾール環であり、特に好ましくは、下記一般式(B)で表されるものである。
【0055】
【化28】
【0056】
一般式(B)中、LBは二価以上の連結基を表し、例えば、炭素、ケイ素、窒素、ホウ素、酸素、硫黄、金属(例えば、バリウム、ベリリウム)、芳香族炭化水素環、芳香族複素環等が挙げられ、これらのうち炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、ホウ素原子、酸素原子、硫黄原子、アリール基、芳香族複素環基が好ましく、炭素原子、ケイ素原子、アリール基、芳香族複素環基がさらに好ましい。
LBのアリール基及び芳香族複素環基は置換基を有していてもよく、置換基として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、芳香族複素環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、芳香族複素環基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族複素環基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、芳香族複素環基である。
LBの具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0057】
【化29】
【0058】
一般式(B)におけるXB1は、−O−、−S−又は=N−RB1を表す。RB1は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基又は複素環基を表す。
RB1の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)であり、アルキル基であると好ましい。
RB1のアリール基は、単環又は縮合環であり、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−メトキシフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、ペンタフルオロフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が挙げられる。
【0059】
RB1の複素環基は、単環又は縮合環であり、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数2〜10の複素環基であり、好ましくは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の少なくとも一つを含む芳香族複素環基である。この複素環基の例としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオフェン、セレノフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、カルバゾール、アゼピン等が挙げられ、好ましくは、フラン、チオフェン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリンであり、より好ましくはフラン、チオフェン、ピリジン、キノリンであり、さらに好ましくはキノリンである。
RB1で表される脂肪族炭化水素基、アリール基及び複素環基は置換基を有していてもよく、置換基としては前記LBで表される基の置換基として挙げたものと同様であり、また好ましい置換基も同様である。
RB1として好ましくは脂肪族炭化水素基、アリール基又は複素環基であり、より好ましくは脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のもの)又はアリール基であり、さらに好ましくは脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数2〜10のもの)である。
【0060】
XB1として好ましくは−O−、=N−RB1であり、より好ましくは=N−RB1であり、特に好ましくは=N−RB1である。
ZB1は、芳香族環を形成するために必要な原子群を表す。ZB1で形成される芳香族環は芳香族炭化水素環、芳香族複素環のいずれでもよく、具体例としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、テルロフェン環、イミダゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、テルラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、ピラゾール環などが挙げられ、好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環であり、さらに好ましくはベンゼン環、ピリジン環であり、特に好ましくはピリジン環である。
ZB1で形成される芳香族環は、さらに他の環と縮合環を形成してもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては前記LBで表される基の置換基として挙げたものと同様であり、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、複素環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、複素環基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族複素環基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、芳香族複素環基である。
nB1は、1〜4の整数であり、2〜3であると好ましい。
【0061】
前記一般式(B)で表される含窒素5員環誘導体のうち、さらに好ましくは下記一般式(B’)で表されるものである。
【化30】
【0062】
一般式(B’)中、RB2、RB3及びRB4は、それぞれ一般式(B)におけるRB1と同様であり、また好ましい範囲も同様である。
ZB2、ZB3及びZB4は、それぞれ一般式(B)におけるZB1と同様であり、また好ましい範囲も同様である。
LB2、LB3及びLB4は、それぞれ連結基を表し、一般式(B)におけるLBの例を二価としたものが挙げられ、好ましくは、単結合、二価の芳香族炭化水素環基、二価の芳香族複素環基、及びこれらの組み合わせからなる連結基であり、より好ましくは単結合である。LB2、LB3及びLB4は置換基を有していてもよく、置換基としては前記一般式(B)におけるLBで表される基の置換基として挙げたものと同様であり、また好ましい置換基も同様である。
Yは、窒素原子、1,3,5−ベンゼントリイル基、2,4,6−トリアジントリイル基又は2,4,6−ピリジントリイル基を表す。1,3,5−ベンゼントリイル基は2,4,6−位に置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基、芳香族炭化水素環基、ハロゲン原子などが挙げられる。
一般式(B)又は(B’)で表される含窒素5員環誘導体の具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0063】
【化31】
【0064】
【化32】
【0065】
さらに、電子注入・輸送材料としては、電子欠乏性含窒素5員環又は電子欠乏性含窒素6員環骨格と、置換又は無置換のインドール骨格、置換又は無置換のカルバゾール骨格、置換又は無置換のアザカルバゾール骨格を組み合わせた構造を有する化合物等も挙げられる。また、好適な電子欠乏性含窒素5員環又は電子欠乏性含窒素6員環骨格としては、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、トリアゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、キノキサリン、ピロール骨格及び、それらがお互いに縮合したベンズイミダゾール、イミダゾピリジン等の分子骨格が挙げられる。これらの組み合わせの中で好ましくはピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン骨格と,カルバゾール、インドール、アザカルバゾール、キノキサリン骨格が挙げられる。前述の骨格は置換されていても無置換であってもよい。
このような化合物の具体例を以下に示す。
【0066】
【化33】
【0067】
【化34】
【0068】
電子注入層及び電子輸送層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。これらはπ電子欠乏性含窒素ヘテロ環基であることが好ましい。
電子注入・輸送層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入・輸送層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。
具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li 2 O、Na 2S及びNa 2 Seが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF 2 、BaF 2 、SrF 2 、MgF2 及びBeF 2 等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0069】
また、電子注入・輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子注入・輸送層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子輸送層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。
なお、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
さらに、電子注入・輸送層は、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントを含有していてもよい。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送性化合物を還元ができる物質と定義される。したがって、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0070】
また、より具体的に、好ましい還元性ドーパントとしては、Na(仕事関数:2.36 eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)及びCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)及びBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられ、仕事関数が2.9eVのものが特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、Rb及びCsであり、最も好ましのは、Csである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組合せも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、CsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0071】
本発明の有機EL素子の発光層は、電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能、注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有するものである。本発明の有機EL素子の発光層は、少なくとも本発明の金属錯体化合物を含有すると好ましく、この金属錯体化合物をドーパント材料とするホスト材料を含有させてもよい。前記ホスト材料としては、例えばカルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するもの等が挙げられる。前記ホスト材料のT1(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、ドーパント材料のT1より大きいことが好ましい。前記ホスト材料と前記金属錯体化合物等の発光材料とを共蒸着等することによって、前記発光材料が前記ホスト材料にドープされた発光層を形成することができる。
【0072】
前記ホスト材料としては、例えば一般式(C−I)及び(C−II)で表されるものが好ましい。
(Het−)n1A (C−I)
Het(−A)m1 (C−II)
〔式中、Hetは置換もしくは無置換のカルバゾリル基、アリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアルキレン基、を代表とする含窒素、酸素又は硫黄ヘテロ芳香族化合物基を表し、Aは下記一般式(E)で表される部位より形成される基である。n1、m1はそれぞれ1〜3の整数である。
(M’)p−(L)q−(M”)r (E)
(M’及びM”は、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が2〜40の窒素含有ヘテロ芳香族環であり、環に置換基を有していても有していなくてもよい。またM’及びM”は、同一でも異なっていてもよい。Lは単結合、炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数5〜30のシクロアルキレン基又は炭素数2〜30のヘテロ芳香族環であり、環に結合する置換基を有していても有していなくてもよい。pは0〜2、qは1〜3、rは0〜2の整数である。ただし、p+rは1以上である。)〕
前記一般式(C−I)及び(C−II)で表される具体例としては下記のような構造が挙げられるが、この例に限定されるものではない。
【0073】
【化35】
【0074】
また、以下の一般式(D−I)及び(D−II)で表される化合物もホスト材料として用いることができる。式中Q1〜Q4はそれぞれ一般式(B)のRB1と同様の基を示し、L及びqは一般式(E)に定めたものと同じである。
【化36】
【0075】
前記一般式(D−I)及び(D−II)で表される具体例としては下記のような構造が挙げられるが、この例に限定されるものではない。
【化37】
【0076】
有機EL素子の陽極は、正孔を正孔注入・輸送層及び/又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。本発明に用いられる陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、金、銀、白金、銅等が適用できる。また、陰極としては、電子注入・輸送層及び/又は発光層に電子を注入する目的で、仕事関数の小さい材料が好ましい。また、有機EL素子においては、陽極の上に正孔注入(輸送)層を用いてもよい。正孔注入・輸送層の例としては、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報等に記載されている、通常有機EL素子に用いられている各種有機化合物及びポリマーを用いることができる。例えば、芳香族第三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、あるいはポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン・ ポリスルフォン酸(PEDOT・ PSS)等が挙げられる。
有機EL素子の陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が使用できる。
【実施例】
【0077】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
合成実施例1(金属錯体化合物3の合成)
以下の経路により金属錯体化合物3を合成した。
【化38】
【0078】
(1)Bfbの合成
100mlフラスコに1−ブロモ−2,4−ジフルオロベンゼン 39mmol(7.52g)を入れ、60℃に加温した。次いで鉄 0.15gを加えた後、60℃のまま、臭素 39mmol(6.23g)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに60℃で2時間反応させた。
得られた反応液を室温まで冷却後、冷水酸化ナトリウム水溶液に投入し、ヘキサンで抽出した。得られた有機層を純水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を除去した。得られた残さをシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 へキサン)により精製し、無色オイルとしてBfbを8.81g得た(収率84%)。
1H-NMR(CDCl3) :δ7.70(t,1H,J=7.2Hz),6.92(t,1H,J=8.0Hz)
(2)Fppyの合成
500mlの三口フラスコに4−フルオロフェニルボロン酸77mmol(10.7g)、2−ブロモピリジン70mmol(11.0g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)1.4mmol(1.6g)、2Mの炭酸ナトリウム水溶液22g及び1,2−ジメトキシエタン140mlを入れ、系内を窒素置換した。攪拌しながら9時間加熱還流し、室温に冷却後、水及び酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。
ろ過後、溶液を濃縮してオレンジ色のスラリー状物質を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒 ジクロロメタン:ヘキサン1:2〜2:1)により精製し、Fppyを得た(9.7g、収率80%)。
1H-NMR(CDCl3) :δ8.68(d,1H,J=5.7Hz),8.00-7.97(m,2H),7.75(t,1H,J=7.7Hz) ,7.68(d,1H,J=8.0Hz) , 7.24-7.22(m,1H) , 7.16(t,2H,J=8.6Hz)
【0079】
(3)Fpybの合成
200ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム207mmol(8.78g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド1.61mmol(1.1g)を加え、再度窒素置換した。そこへ、トルエン80ml、Bfb 20.7mmol(5.62g)を加えた。更に、トリメチル(2−ピリジル)スズ62.1mmol(15g)を滴下し、窒素気流下において、3日間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液150mlを加え、30分間攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出した後、有機層に無水硫酸ナトリウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た茶色固体をエーテルで洗浄することにより、Fpybの白色固体を得た(4.3g、収率78%)。
1H-NMR(CDCl3) : δ8.66(d,2H,J=5.2Hz),8.55(t,1H,J=8.9Hz),7.72-7.68(m,4H),7.21-7.19(m,2H), 6.97(t,1H,J=10.9Hz)
19F-NMR(CDCl3) : δ-112.95
(4)FpybIrの合成
100ml二口フラスコに、塩化イリジウム水和物1.33mmol(0.469g)、Fpyb 1.86mmol(0.5g)及び2−エトキシエタノール20mlを加え、窒素気流下で20時間還流下で加熱攪拌した。放冷後、ろ過により溶媒を除去し、黄色固体を得た(0.51g、収率73%)。
(5)金属錯体化合物3の合成
100mlナス型フラスコにFpybIr 0.283mmol(0.3g)、Fppy 0.283mmol(0.49g)、及びグリセロール10mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて6分間加熱還流した。放冷後、水を加えて生じた沈殿をろ過により回収し、ヘキサンにより洗浄した。金属錯体化合物3を黄色固体として得た(0.221g、収率58%)。
1H-NMR(CDCl3):δ10.08(d,1H,J=5.2Hz),8.10(d,2H,J=8.0Hz),8.00-7.99(m,2H),7.62(t,2H,J=8.6Hz),7.63-7.61(m,3H),6.85(t,2H,J=6.6Hz),6.79(t,1H,J=11.5Hz),6.47(t,1H,J=8.6Hz),5.72(d,1H,J=10.3Hz)
Anal.calcd for C27H16N3F3IrCl:C,48.61;H,2.42;N,6.30 Found:C,48.35;H,2.42;N,6.10
【0080】
合成実施例2(金属錯体化合物4の合成)
合成実施例1に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物3を合成した。
次いで、50mlナス型フラスコに金属錯体化合物3 0.3mmol(0.2g)、シアン化カリウム 3.0mmol(0.194g)及びメタノール10mlを加え、窒素気流下にて1時間加熱還流した。
放冷後、溶媒を減圧除去し、純水を加えろ過により生じた沈殿を回収し、ヘキサンにより洗浄した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)により精製を行ない、金属錯体化合物4を黄色固体として得た(0.135g、収率70%)。
1H-NMR(CDCl3):δ10.02(d,1H,J=4.6Hz),8.13(d,2H,J=8.0Hz),8.02(d,2H,4.0),7.66-7.61(m,5H),7.50(q,1H,J=4.8Hz),6.85-6.81(m,3H),6.51(t,1H,J=8.6Hz),5.70(d,1H,J=9.2Hz)
Anal.calcd for C28H16N4F3Ir:C,51.14;H,2.45;N,8.52 Found:C,51.12;H,2.52;N,8.26
FT-IR(KBr):2105 cm-1[ν(CN) ]
【0081】
合成実施例3(金属錯体化合物5の合成)
以下の経路により金属錯体化合物5を合成した。化合物Bfb、Fpyb及びFpybIrは合成実施例1と同様に合成を行った。
【化39】
【0082】
(1)dFppyの合成
1000mlフラスコに2,4−ジフルオロフェニルボロン酸 63.3mmol(10g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)1.73mmol(2.0g)を入れ、窒素置換した後に、1,2−ジメトキシエタン500ml、1.3M炭酸ナトリウム水溶液120ml、次いで2−ブロモピリジン 63.3mmol(10g)を加え、還流下で8時間反応させた。
得られた反応溶液より溶媒を留去し、エーテル抽出を行った。分離した有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後得られたオイル状物をシリカカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:ヘキサン=1:1)で精製し、dFppyを黄色オイルとして得た(8.0g、収率67%)。
1H-NMR(CO(CD3)2-d6):δ8.71(d,1H,J=4.6Hz),8.11(q,1H,J=8.0Hz),7.88(t,1H,J=7.7 Hz),7.81(d,1H,J=8.0Hz),7.36(t,1H,J=6.0Hz),7.16-7.14(m,2H)
(2)金属錯体化合物5の合成
100mlナス型フラスコにFpybIr 0.094mmol(0.1g)、dFppy0.934mmol(0.18g)及びグリセロール10mlを加え、26時間加熱還流した。放冷後、水を加え、生じた沈殿をろ過により回収し、ヘキサン により洗浄した。金属錯体化合物5を黄色固体として得た(0.04g、収率65%)。
1H-NMR(CDCl3): δ10.15(d,1H,J=4.0Hz),8.46(d,1H,J=8.0Hz),8.11(d,2H,J=8.6Hz),8.02(t,1H,J=7.7Hz),7.64(t,2H,J=8.0Hz),7.56(t,1H,J=6.3Hz),7.52(d,2H,J=5.7Hz),6.88(t,2H,J=6.9Hz),6.79(t,1H,J=11.5Hz),6.25(t,1H,J=11.2Hz) ,5.56(d,1H,J=9.7Hz)
【0083】
合成実施例4(金属錯体化合物6の合成)
合成実施例3に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物5を合成した。
次いで、50mlナス型フラスコに金属錯体化合物5 0.3mmol(0.2g)、シアン化カリウム3.0mmol(0.194g)及びメタノール10mlを加え、窒素気流下にて1時間加熱還流した。
放冷後、溶媒を減圧除去し、純水を加えろ過により生じた沈殿を回収し、ヘキサンにより洗浄した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)により精製を行ない、金属錯体化合物6を黄色固体として得た(0.127g、収率63%)。
【0084】
合成実施例5(金属錯体化合物7の合成)
以下の経路により金属錯体化合物7を合成した。化合物FpybIrは合成実施例1と同様に合成を行った。
【化40】
【0085】
(1)pmiの合成
50mlのナスフラスコに窒素気流下にて、1-フェニルイミダゾール 13.8mmol(2.0g)、ヨウ化メチル30.5mmol(1.9ml)をトルエン15ml中に入れ、30℃で24時間反応させた。生成物をろ過により回収しトルエンで洗浄し、pmiを白色固体として得た(3.65g、収率92%)。
1H-NMR(CDCl3):δ10.55(s,1H),7.78-7.76(m,2H),7.61-7.56(m,5H),4.29(s,3H)
(2)金属錯体化合物7の合成
50mlナスフラスコにFpybIr 0.094mmol(0.1g)、pmi 0.282mmol(0.081g)、酸化銀1.22mmol(0.283g)及び2−エトシキエタノール25mlを入れ、窒素気流下にて6時間加熱還流した。
放冷後、溶媒を減圧除去し、塩化メチレンに溶解させて、セライトによりろ過した。溶媒を減圧除去後の固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:メタノール=100:1)により精製を行なった。さらに、塩化メチレン/クロロホルム/ヘキサンで再結晶を行い、金属錯体化合物7を得た(82mg、収率67%)
Anal.Calcd for C26H19N5F2ClIr:C,47.81;H,2.93;N,8.58 Found:C,47.66;H,2.53;N,8.18
1H-NMR(CDCl3):δ8.05(d,2H,J=8.0Hz),7.88(d,2H,J=5.2Hz),7.62(d,1H,J=2.3Hz),7.56(t,2H,J=7.7Hz),7.24(d,2H,J=2.3Hz),7.04(d,1H,J=9.2Hz),6.77(t,2H,J=6.6 Hz),6.71(t,1H,J=6.9Hz),6.47(t,1H,J=7.4Hz),5.99(d,1H,J=5.99Hz)
19F-NMR(CDCl3): δ-108.62
【0086】
合成実施例6(金属錯体化合物8の合成)
合成実施例5に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物7を合成した。
次いで、50mlナスフラスコに金属錯体化合物7 0.077mmol(0.05g)、シアン化カリウム0.766mmol(0.05g)、及びメタノール10mlを入れ、窒素気流下にて14時間加熱還流した。放冷後、溶媒を減圧除去し、純水を加えろ過し、ヘキサンにて洗浄した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:メタノール=25:1)により精製を行ない、金属錯体化合物8を明黄色固体として得た(33mg、収率67%)。
Anal.calcd for C27H19N5F2Ir:C,50.38;H,2.98;N,10.88 Found:C,50.20;H,2.69;N,10.52
1H-NMR(CDCl3):δ8.06(d,2H,J=8.6Hz),7.83(d,2H,J=5.7Hz),7.62(s,1H),7.58(t,2H,J=8.0Hz),7.23(s,1H),7.09(d,1H,J=8.0Hz),6.82-6.78(m,2H),6.73(t,2H,J=6.6Hz),6.53(t,1H,J=7.2Hz),6.02(d,1H,J=7.4Hz)
19F-NMR(CDCl3):δ-108.49
FT-IR(KBr):2103cm-1[ν(CN) ]
【0087】
合成実施例7(金属錯体化合物9の合成)
以下の経路により金属錯体化合物9を合成した。化合物FpybIrは合成実施例1と同様に合成を行った。
【化41】
【0088】
(1)CFppyの合成
100mlの二口フラスコに2−クロロピリジン13mmol(1.49g)、2−トリフルオロメチルフェニルボロン酸16mmol(3.0g)、1,2−ジメトキシエタン20ml、2M炭酸カリウム水溶液12ml及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.65mmmol(0.751g)を入れ19時間加熱還流した。放冷後、酢酸エチルで抽出し硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を除去した。減圧蒸留により精製を行い、CFppyを得た(1.83g、収率63%)。
1H-NMR(CDCl3):δ8.73(d,1H,J=4.6Hz),8.28(s,1H),8.18(d,1H,J=7.4Hz),7.82-7.76(m,2H),7.67(d,1 H,J=7.4Hz),7.60(t,1H,J=7.7Hz),7.30-7.29(m,1H)
(2)金属錯体化合物9の合成
100mlナス型フラスコにFpybIr 0.189mmol(0.2g)、CFppy 1.89mmol(0.421g)、グリセロール10mlを入れ、窒素気流下にて12分間マイクロ波照射により加熱還流した。放冷後、水を加え、生じた沈殿をろ過により回収し、ヘキサンにより洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)及び塩化メチレン/ヘキサンによる再結晶にて精製し、金属錯体化合物9を白黄色固体として得た(0.216g、収率80%)。
1H-NMR(CDCl3):δ10.1(d,1H,J=6.3Hz),8.15(d,1H,J=6.3Hz),8.10(d,2H,J=8.0Hz),8.06(t,1H,J=8.0Hz),7.80(s,1H),7.66-7.61(m,3H),7.53(d,2H,J=5.7Hz),6.86(t,2H,J=6.6Hz),6.83-6.78(m,2H),6.22(d,1H,J=9.7Hz)
【0089】
合成実施例8(金属錯体化合物10の合成)
合成実施例7に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物9を合成した。
次いで、50mlのナス型フラスコに金属錯体化合物9 0.301mmol(0.216g)、シアン化カリウム3.0mmol(0.194g)及びメタノール10mlを入れ、窒素気流下にて1時間加熱還流した。放冷後、溶媒を減圧除去し、純水を加え、ろ過により生じた沈殿を回収し、ヘキサンにより洗浄した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:メタノール=50:1)にて精製を行い、金属錯体化合物10を白黄色固体として得た(0.11g、収率52%)。
Anal.calcd for C29H16N5F4Ir:C,49.22;H,2.28;N,7.92 Found:C,49.34;H,2.31;N,7.68
1H-NMR(CDCl3) :δ10.08(d,1H,J=5.7Hz),8.17(d,1H,J=8.0Hz),8.13-8.08(m,3H),7.83(s,1H),7.66-7.58(m,5H),6.88-6.82(m,4H),6.19(d,1H,J=8.0Hz)
19F-NMR(CDCl3) :δ-62.10(CFppy),-107.62(Fpyb)
FT-IR(KBr) : 2112 cm-1[ν(CN) ]
【0090】
合成実施例9(金属錯体化合物11の合成)
以下の経路により金属錯体化合物11を合成した。
【化42】
【0091】
(1)Bcfbの合成
三口フラスコに臭化銅(II)4.79mmol(1.07mg)、アセトニトリル15mlを入れ、窒素下、0℃で亜硝酸t−ブチル6.4mmol(0.844ml)、3−アミノ−5−ブロモベンゾトリフルオリド 4.16mmol(1.0g)を滴下し、1.5時間攪拌した。その後、室温に戻し、16時間攪拌した。
得られた溶液を半分に濃縮し、1N塩酸にて洗浄しエーテルにより抽出した。有機層を脱水後、溶媒を減圧除去し、シリカゲルカラム(展開溶媒 ヘキサン)により精製を行ない、Bcfbを橙色オイルとして得た(0.84g、収率58%)。
1H-NMR(CD3CN) :δ8.04(s,1H)、7.88(s,2H)
(2)CFpybの合成
合成実施例1のFpybの合成と同様に合成した。ただし、原料のブロマイドとしてBcfb、スズ化合物としてトリn−ブチル(2−ピリジル)スズを用いた。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:エーテル=4:1)にて行なった。(0.64g、収率26 %)
1H-NMR(CDCl3) :δ8.84(s,1H),8.75(d,2H,J=5.7Hz),8.34(s,2H),7.89(d,2H,J=8.0Hz),7.82(t,2H,J=7.7Hz),7.32(t,2H,J=6.0Hz)
(3)CFpybIrの合成
100ml二口フラスコに塩化イリジウム水和物0.284mmol(0.1g)、2−エトキシエタノール10mlを入れ、窒素気流下110℃にて攪拌した。温度が上がったところで、CFpyb 0.397mmol(0.119g)を加えて、20時間加熱攪拌した。放冷後、ろ過メタノールとエーテルで洗浄し橙色固体を得た(0.103g、収率65%)。
(4)金属錯体化合物11の合成
100mlナス型フラスコにCFpybIr 0.089mmol(0.1g)、Fppy 0.712mmol(0.123g)、グリセロール10mlを入れ、窒素気流下にてマイクロ波照射により12分間加熱還流した。放冷後、水を加え、生じた沈殿をろ過により回収し、ヘキサンにより洗浄後、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:メタノール=50:1)及び塩化メチレン/ヘキサンによる再結晶で精製を行い、金属錯体化合物11の黄色固体を得た(67mg、収率54%)。
1H-NMR(CDCl3) :δ10.09(d,1H,J=5.7Hz),8.02-8.00(m,4H),7.95(d,2H,J=8.0Hz),7.67(t,2H,J=7.7Hz),7.64(d,2H,J=5.7Hz),7.60-7.55(m,2H),6.92(t,2H,J=6.6Hz),6.45(t,1H,J=8.6Hz),5.55(d,1H,J= 9.7Hz)
19F-NMR(CDCl3) : δ-60.82(CF3pyb),-110.71(fppy)
【0092】
合成実施例10(金属錯体化合物12の合成)
合成実施例9に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物11を合成した。
次いで、金属錯体化合物11 0.086mmol(60mg)を原料とし、金属錯体化合物4と同様の方法で合成した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:メタノール=50:1)にて精製を行い、金属錯体化合物12の白黄色固体を得た(37mg、収率63%)。
1H-NMR(CDCl3) :δ10.04(d,1H,J=5.2Hz),8.04-8.03(m,4H),7.97(d,2H,J=8.0Hz),7.72-7.68(m,4H),7.62(t,1H,J=6.9Hz),7.51(t,1H,J=7.2Hz),6.91(t,2H,J=6.0Hz),6.48(t,1H,J=8.9Hz),5.50(d,1H,J=9.2Hz)
【0093】
合成実施例11(金属錯体化合物29の合成)
以下の経路により金属錯体化合物29を合成した。
【化43】
【0094】
(1)Ifbの合成
500ml三口フラスコを窒素置換し、N−メチルイミダゾール 38mmol(3.1g)、テトラヒドロフラン50mlを入れ、−70℃下で1.6Mのn−ブチルリチウム 27.5ml(44mmol)を加えた。2時間攪拌後、テトラヒドロフラン中に懸濁させた無水塩化亜鉛44mmol(6.0g)を滴下し、1時間攪拌後室温に戻した。さらに、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロライド 0.504mmol(0.412g)とBfb 25.2mmol(6.88g)をテトラヒドロフラン20mlに溶解させた溶液を加え、1時間半還流した。少し冷却させてから、無水塩化亜鉛76mmol(10.4g)を加え、さらに5日間還流させた。
得られた反応溶液をエチレンジアミンN,N,N',N'−四酢酸二ナトリウム塩無水物 236mmol(88g)水溶液(1L)中に入れ、10%炭酸ナトリウム水溶液でpH8にした。塩化メチレンで有機物を抽出し、硫酸ナトリウムで脱水したのち溶媒を除去した。シリカゲルカラム(展開溶媒 アセトン)により精製を行い、黄色の固体を得た。さらに昇華を行うことにより、Ifbの白色固体を得た(10.2g、収率46%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ7.84(t, 1H, J=7.7Hz), 7.16 (d, 1H, J=1.1Hz), 7.03-7.01(m, 2H),3.62 (d, 3H, J=2.3Hz)
(2)Pyifbの合成
500ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム45.3mmol(1.92g)、Ifb 11.3mmol(3.1g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド0.354mmol(0.248g)、トリブチル(2−ピリジル)スズ13.6mmol(5.0g)及びトルエン40mlを加え、6日間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液を加え、3時間攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液150mlにて抽出した後、有機層に無水硫酸ナトリウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た茶色オイルをシリカカラムにより精製を行い、Pyifbの黄色オイルを得た(2.4g、収率78%)。
1H-NMR(Acetone-d6):δ8.72(q, 1H, J=2.1Hz), 8.29 (t, 1H, J=8.9Hz), 7.93-7.89(m,2H), 7.42-7.39 (m, 1H) , 7.34 (t, 1H, J=11.2Hz), 7.25(d, 1H, J=1.1Hz), 7.06 (d,1H, J=1.1Hz) , 3.70 (d, 3H, J=1.7Hz)
(3)PyifbIrの合成
100mlナスフラスコに、塩化イリジウム水和物5.9mmol(2.07g)、Pyifb 8.8mmol(2.4g)及び2−エトキシエタノール30mlを加え、窒素気流下で24時間還流下で加熱攪拌した。放冷後、生成物をろ過し、ヘキサン及びエーテルで洗浄し、黄色固体を得た(2.91g、収率91%)。
(4)金属錯体化合物29の合成
100mlナス型フラスコにPyifbIr 0.46mmol(0.5g)、Fppy 2.3mmol(0.4g)、及びエチレングリコール25mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて1分間、3回加熱還流した。放冷後、水を加えて、生じた沈殿を遠心分離機によりろ過し、ヘキサンにより洗浄した。さらにシリカカラム(展開溶媒 メタノール:ジクロロメタン=1:25)により精製し、金属錯体化合物29を黄色固体として得た(0.289g、収率47%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ10.06(d, 1H, J=5.2Hz), 8.12 (d, 1H, J=8.6Hz), 7.95-7.92(m, 2H), 7.62-7.54 (m, 3H), 7.47(t, 1H, J=6.0Hz), 6.83 (t, 1H, J=6.6Hz), 6.76(t, 1H, J=11.7Hz), 6.65 (d, 1H, J=1.7Hz), 6.45(t, 1H, J=8.6Hz), 6.21 (d, 1H, J=1.7Hz), 5.63 (d, 1H, J=10.0Hz) , 4.09 (d, 3H, J=4.6Hz)
【0095】
合成実施例12(金属錯体化合物30の合成)
合成実施例11に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物29を合成した。
次いで、100mlナス型フラスコに金属錯体化合物29 0.45mmol(0.3g)とシアン化カリウム4.5mmol(0.292g)及びメタノール40mlを加え、窒素気流下で還流した。生成物をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄し、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 メタノール:塩化メチレン=1:25)で精製し、金属錯体化合物30の黄色粉末を得た(0.113g、収率38%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ8.14 (d, 1H, J=8.6Hz), 7.96-7.95(m, 2H), 7.70 (d, 1H, J=5.2Hz) 7.62-7.59 (m, 2H), 7.42(t, 1H, J=5.7Hz), 6.82-6.79 (m, 2H), 6.67 (d, 1H, J=1.1Hz), 6.49(t, 1H, J=8.6Hz), 6.26 (d, 1H, J=1.7Hz), 5.64 (d, 1H, J=9.5Hz), 4.10 (d, 3H, J=5.2Hz)
【0096】
合成実施例13(金属錯体化合物23の合成)
以下の経路により金属錯体化合物23を合成した。
【化44】
【0097】
(1)t−BupySnの合成
500ml三口フラスコを窒素置換し、2−ジメチルアミノエタノール136mmol(13.8ml)、ヘキサン170mlを入れ、0℃下で1.6Mのn−ブチルリチウム170ml(272mmol)を滴下して加えた。0℃に保ち、15分間攪拌後、4−t−ブチルピリジン68mmol(10ml)のヘキサン30ml溶液を滴下して加え、0℃でさらに1時間攪拌した。その後、−78℃に冷却し、トリメチルスズクロライド154mmol(50g)を滴下して5時間攪拌し、アイスバスをはずし、12時間反応させた。
反応溶液に水を加えて、エーテルで抽出し、溶媒を除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、t−BupySnを得た(23g、収率80%)。
(2)tBuCFpybの合成
100ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム15.8mmol(0.67g)、Bcfb 1.58mmol(0.48g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド0.04mmol(0.029g)、t−BupySn 4.97mmol(2.1g)及びトルエン35mlを加え、24時間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液を加え、30分攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液150mlにて抽出した後、有機層に無水硫酸ナトリウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た褐色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製を行い、tBuCFpybの褐色オイルを得た(0.28g、収率38%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ8.75(s, 1H), 8.65 (d, 2H, J = 5.0Hz), 8.29(s,2H), 7.81 (d, 2H, J = 2.0Hz) , 7.31 (dd, 2H, J = 5.0Hz), 1.40 (s, 18H)
(3)tBuCFpybIrの合成
100mlナスフラスコに、塩化イリジウム水和物2.25mmol(0.67g)、tBuCFpyb 3.15mmol(1.3g)及び2−エトキシエタノール40mlを加え、窒素気流下で14時間還流下で加熱攪拌した。放冷後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄し、オレンジ色固体を得た(0.98g、収率64%)。
(4)金属錯体化合物23の合成
200mlナス型フラスコにtBuCFpybIr 0.72mmol(0.98g)、Fppy 7.26mmol(1.25g)及びグリセリン50mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて15分間加熱還流した。放冷後、水を加えて、生じた沈殿を遠心分離機によりろ過し、ヘキサンにより洗浄した。さらにシリカカラム(展開溶媒 メタノール:ジクロロメタン=1:25)により精製し、金属錯体化合物23を黄色固体として得た(1.19g、収率100%)。
FD-MS m/z=811(811.3 required for C36H33ClF4IrN3)
【0098】
合成実施例14(金属錯体化合物24の合成)
合成実施例13に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物23を合成した。
次いで、100mlナス型フラスコに金属錯体化合物23 1.47mmol(1.19g)とシアン化カリウム14.6mmol(0.955g)及びメタノール50mlを加え、窒素気流下で還流した。生成物をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄し、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)で精製し、金属錯体化合物24の黄色粉末を得た(0.7g、収率60%)。
FD-MS m/z=802 (801.9 required for C37H33F4IrN4)
【0099】
合成実施例15(金属錯体化合物37の合成)
以下の経路により金属錯体化合物37を合成した。
【化45】
【0100】
(1)i−PrpyBrの合成
500ml三口フラスコを窒素置換し、2−ジメチルアミノエタノール100mmol(10.1ml)、ヘキサン100mlを入れ、−10℃下で1.6Mのn−ブチルリチウム125ml(200mmol)を滴下して加えた。−10℃に保ち、1.5時間攪拌後、4−i−プロピルピリジン50mmol(6.5ml)のヘキサン20ml溶液を滴下して加えた。その後、−78℃に冷却し、四臭化炭素125mmol(41.4g)のTHF50ml溶液を滴下して、アイスバスをはずし、15時間反応させた。
反応溶液に水を加えて、塩化メチレンで抽出し、溶媒を除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し、i−PrpyBrを得た(6.0g、収率60%)。
(2)i−PrpySnの合成
300ml三口フラスコを窒素置換し、i−PrpyBr 29.3mmol(5.87g)、THF 110mlを入れ、−78℃下で1.6Mのn−ブチルリチウム20ml(32.9mmol)を滴下して加えた。−78℃で30分攪拌後、トリブチルスズクロライド29.7mmol(8.1ml)を滴下して加えた。その後、アイスバスをはずし、7時間反応させた。反応溶液に水を加えて、塩化メチレンで抽出し、溶媒を除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、i−PrpySnを得た(10.1g、収率63%)。
(3)iPrFpybの合成
100ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム36mmol(1.52g)、Bfb 3.67mmol(1.0g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド0.1mmol(0.07g)、i−PrpySn 11.0mmol(4.52g)及びトルエン40mlを加え、13時間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液を加え、1時間攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液250mlにて抽出した後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た褐色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製を行い、iPrFpybの褐色オイルを得た(0.62g、収率48 %)。
FD-MS m/z=352 (352.4 required for C22H22F2N2)
(4)iPrFpybIrの合成
200mlナスフラスコに、塩化イリジウム水和物3.59mmol(1.07g)、iPrFpyb 3.94mmol(1.39g)及び2−エトキシエタノール50mlを加え、窒素気流下で16時間還流下で加熱攪拌した。放冷後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄し、オレンジ色固体を得た(1.74g、収率79%)。
(5)金属錯体化合物37の合成
200mlナス型フラスコにiPrFpybIr 1.4mmol(1.72g)、Fppy 14.0mmol(2.42g)及びグリセリン50mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて1時間加熱還流した。放冷後、水を加えて、生じた沈殿を遠心分離機によりろ過し、ヘキサンにより洗浄した。さらにシリカカラム(展開溶媒 メタノール:ジクロロメタン=1:25)により精製し、金属錯体化合物37を黄色固体として得た(2.23g、収率100%)。
FD-MS m/z=751 (751.2 required for C33H28ClF3IrN3)
【0101】
合成実施例16(金属錯体化合物38の合成)
合成実施例15に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物37を合成した。
次いで、100mlナス型フラスコに金属錯体化合物37 2.66mmol(1.66g)とシアン化カリウム26.6mmol(1.73g)及びメタノール90mlを加え、窒素気流下で14時間還流した。生成物をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄し、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)で精製し、金属錯体化合物38の黄色粉末を得た(1.1g、収率89%)。
FD-MS m/z=742 (741.8 required for C34H28F3IrN4)
【0102】
合成実施例17(金属錯体化合物15の合成)
以下の経路により金属錯体化合物15を合成した。
【化46】
【0103】
(1)t−BuFpybの合成
100ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム94.5mmol(4.0g)、Bfb 9.45mmol(2.58g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド0.245mmol(0.173g)、t−BupySn 37.8mmol(16.0g)及びトルエン20mlを加え、5日間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液を加え、30分間攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出した後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た黄緑色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製を行い、t−BuFpybの淡黄色オイルを得た(0.46g、収率13%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ8.61(d, 2H, J = 5.3 Hz), 8.45 (t, 1H, J = 8.9Hz), 7.72 (d, 2H, J = 0.9 Hz) , 7.26 (dd, 2H, J = 5.3, 1.8Hz), 7.03(t, 1H, JH-F = 10.5Hz), 1.36 (s, 18H)
(2)t−BuFpybIrの合成
100mlナスフラスコに、塩化イリジウム水和物2.25mmol(0.794g)、 t−BuFpyb 3.15mmol(1.2g)及び2−エトキシエタノール50mlを加え、窒素気流下、4時間半還流下で加熱攪拌した。放冷後、生成物をろ過し、ヘキサンで洗浄し、オレンジ色固体を得た(1.34g、収率93%)。
(3)金属錯体化合物15の合成
100mlナス型フラスコに t−BuFpybIr 1.05mmol(1.34g)、Fppy 10.5mmol(1.81g)及びグリセリン50mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて10分間加熱還流した。放冷後、水を加えて、生じた沈殿を遠心分離機によりろ過し、ヘキサンにより洗浄することにより、金属錯体化合物15をオレンジ色固体として得た(1.29g、収率80%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ10.07(d, 1H, J = 6.3 Hz), 8.09 (s, 2H), 7.98-7.94(m, 2H), 7.56 (dd, 1H, J = 8.6, 5.7 Hz) , 7.52-7.50(m, 1H), 7.42 (d, 2H, J = 6.3 Hz) , 6.84(dd, 2H, J = 6.3, 2.3 Hz), 6.77 (t, 1H, JH-F = 11.7 Hz) , 6.46(td, 1H, J = 8.6, 2.9 Hz), 5.77 (dd, 1H, J = 9.7, 2.9 Hz) , 1.28(s, 18H)
ESI-MS m/z=744.3010 (744.2180 required for [C35H32F3IrN3]+)
【0104】
合成実施例18(金属錯体化合物16の合成)
合成実施例17に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物15を合成した。
次いで、500mlナス型フラスコに金属錯体化合物15 1.66mmol(1.29g)とシアン化カリウム16.6mmol(1.08g)及びメタノール100mlを加え、窒素気流下3日間加熱還流した。生成物をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄し、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン)で精製し、金属錯体化合物16の黄色粉末を得た(0.46g、収率36%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ10.01(d, 1H, J = 5.2 Hz), 8.10 (d, 2H, J = 1.7Hz), 8.00-7.99(m, 2H), 7.63 (dd, 1H, J = 8.6, 5.2 Hz) , 7.49(d, 2H, J = 6.3Hz), 7.46 (td, 1H, J = 5.6, 3.1 Hz) , 6.82-6.80 (m, 3H) , 6.51(td, 1H, J = 8.7, 2.5 Hz), 5.76 (dd, 1H, J = 9.2, 2.3 Hz) , 1.30(s, 18H)
FT-IR(KBr) : 2112.47cm-1[ν(CN)]
【0105】
以上の合成実施例1〜13、16及び18で合成した金属錯体化合物の紫外吸収スペクトル、及び室温、77Kでの低温発光スペクトルを図1〜45に示す。また、最大発光又は代表的な吸収ピークの波長を表2に示す。
【表2】
【0106】
また、金属錯体化合物3、4、9、29及び15のX線結晶構造解析図を図46〜55に、合成した金属錯体化合物の光物理化学データ(量子収率、励起寿命、輻射及び無輻射速度定数)を表3に、サイクリックボルタンメトリーによる酸化還元電位を表4に示す。
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
合成実施例19(金属錯体化合物29の光学的分割)
合成実施例11で得られた金属錯体化合物29をHPLCにより分取した。カラムには「CHIRALPAK(登録商標)IA」(ダイセル化学工業株式会社製)を用い、展開溶媒はジクロロメタン(流速0.5ml/min)で行った。UV検出波長380nmでのクロマトグラムを図56に示す。図56より、Λ体とΔ体が明瞭に分かれ、分割することができた。
また、光学分割したそれぞれの円二色性(CD)スペクトルを図57に示す。図57において、270nm付近のコットン効果の正負から、破線の錯体がΛ体、実線がΔ体と帰属した。さらに円偏光発光スペクトルを図58に示す。
また、これらの構造を分割する前のラセミ体のX線構造を図59に示す。図59より、金属錯体化合物29は、Λ体及びΔ体の構造が交互に積層した結晶であることがわかった。
【0109】
合成実施例20(金属錯体化合物30の光学的分割)
合成実施例19と同様に、金属錯体化合物30の光学分割で得られたクロマトグラムを図60に示す。
また、光学分割したそれぞれの円二色性(CD)スペクトルを図61に示す。図61において、270nm付近のコットン効果の正負から、破線の錯体がΛ体、実線がΔ体と帰属した。さらに円偏光発光スペクトルを図62に示す。
【0110】
実施例1
金属錯体化合物4を用いて、ガラス基板/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子を作製した。
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後のITO透明電極が形成されている側の面上に、真空蒸着法で正孔輸送層に用いる4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)−トリフェニルアミン(TCTA)を95nmの膜厚で成膜した。次いで発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は1.5:20)をTCTAの正孔輸送層上に真空蒸着法で成膜し、発光層を得た。この発光層の膜厚は30nmとした。続いて、膜厚25nmの上記化合物(B−20)、続いて膜厚5nmのトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を真空蒸着法により成膜した。更に、膜厚1nmのフッ化リチウムを真空蒸着法により成膜し、電子注入層とした。最後に膜厚150nmのアルミニウム(Al)陰極を真空蒸着法により成膜し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を用い、Al電極をマイナス、ITO透明電極をプラスにして直流電圧を印加した。その結果、電圧5V,電流密度0.6mA/cm2にて111cd/m2の発光が得られ、色度座標は(0.29,0.53)、発光効率18.6cd/Aであった。結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図63に示す。
【0111】
【化47】
【0112】
実施例2
実施例1において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は0.4:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図63に示す。
実施例3
実施例1において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は0.8:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図63に示す。
実施例4
実施例1において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は3.0:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図63に示す。
【0113】
実施例5
実施例1において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに、化合物(C−7)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図64に示す。
実施例6
実施例5において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−7)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−7)との質量比は0.8:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図64に示す。
実施例7
実施例5において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−7)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−7)との質量比は3.0:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図64に示す。
【0114】
実施例8
実施例1において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに化合物(C−1)、化合物(B−20)の代わりに下記BCPを用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図65に示す。
【化48】
【0115】
実施例9
実施例8において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−1)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−1)との質量比は0.8:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図65に示す。
素子実施例10
実施例8において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−1)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−1)との質量比は3.0:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図65に示す。
【0116】
実施例11
実施例1において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに、化合物(D−1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図66に示す。
実施例12
実施例1において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに、化合物(C−10)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図67に示す。
【0117】
実施例13
金属錯体化合物4を用いて、ガラス基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子を作製した。
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後のITO透明電極が形成されている側の面上に、真空蒸着法で正孔注入層に用いる下記化合物(F−1)を85nm、正孔輸送層に用いるTCTAを10nmの膜厚で成膜した。次いで発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は1.5:20)をTCTAの正孔輸送層上に真空蒸着法で成膜し、発光層を得た。この発光層の膜厚は30nmとした。続いて、膜厚25nmの(B−20)、続いて膜厚5nmのAlq3を真空蒸着法により成膜した。更に、膜厚1nmのフッ化リチウムを真空蒸着法により成膜し、電子注入層とした。最後に膜厚150nmのAl陰極を真空蒸着法により成膜し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を用い、Al電極をマイナス、ITO透明電極をプラスにして直流電圧を印加した。その結果、電圧7.8V,電流密度0.6mA/cm2にて109cd/m2の発光が得られ、色度座標は(0.31,0.52)、発光効率18.3cd/Aであった。結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図68に示す。
【0118】
【化49】
【0119】
実施例14
実施例13において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は0.8:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図68に示す。
実施例15
実施例13において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は3.0:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図68に示す。
実施例16
実施例13において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに、化合物(D−1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図69に示す。
【0120】
実施例17
金属錯体化合物4を用いて、ガラス基板/陽極/正孔輸送層/発光層1/発光層2/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子を作製した。
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後のITO透明電極が形成されている側の面上に、真空蒸着法で正孔輸送層に用いるTCTAを85nmの膜厚で成膜した。次いで発光層1に用いる(F−2)及び(C−3)との混合物((F−2)と(C−3)との質量比は0.4:20)をTCTAの正孔輸送層上に真空蒸着法で成膜し、発光層1を得た。この発光層1の膜厚は5nmとした。また発光層2に用いる金属錯体化合物4及び(C−3)との混合物(金属錯体化合物4と(C−3)との質量比は0.4:20)を発光層1上に30nm成膜し、発光層2を得た。続いて、膜厚25nmの(B−20)、続いて膜厚5nmのAlq3を真空蒸着法により成膜した。更に、膜厚1nmのフッ化リチウムを真空蒸着法により成膜し、電子注入層とした。最後に膜厚150nmのAl陰極を真空蒸着法により成膜し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を用い、Al電極をマイナス、ITO透明電極をプラスにして直流電圧を印加した。その結果、電圧8.7V,電流密度1.7mA/cm2にて97cd/m2の発光が得られ、色度座標は(0.35,0.46)、発光効率5.7cd/Aであった。このことから、白色発光であることが確認された。結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図70に示す。
【0121】
【化50】
【0122】
実施例18
実施例17においてさらに高電圧を印加した。その結果、電圧13.9V,電流密度100mA/cm2にて3921cd/m2の発光が得られ、色度座標は(0.32:0.42)、発光効率3.9cd/Aであった。このことから、白色発光であることが確認された。結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図70に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
実施例19
実施例1において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0125】
実施例20
実施例2において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0126】
実施例21
実施例3において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0127】
実施例22
実施例4において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0128】
実施例23
実施例5において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0129】
実施例24
実施例6において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0130】
実施例25
実施例7において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0131】
実施例26
実施例8において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0132】
実施例27
実施例9において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0133】
実施例28
実施例10において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0134】
実施例29
実施例11において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0135】
実施例30
実施例12において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0136】
実施例31
実施例13において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0137】
実施例32
実施例14において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0138】
実施例33
実施例15において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0139】
実施例34
実施例16において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0140】
【表6】
【0141】
実施例35
実施例1において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物10とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図71に示す。
【0142】
実施例36
実施例35において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0143】
実施例37
実施例13において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物10とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図72に示す。
【0144】
実施例38
実施例37において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0145】
実施例39
実施例1において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図73に示す。
【0146】
実施例40
実施例39において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0147】
実施例41
実施例3において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図74に示す。
【0148】
実施例42
実施例41において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0149】
実施例43
実施例4において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図75に示す。
【0150】
実施例44
実施例43において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0151】
実施例45
実施例13において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図76に示す。
【0152】
実施例46
実施例45において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0153】
実施例47
実施例15において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図77に示す。
【0154】
実施例48
実施例47において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0155】
実施例49
実施例1において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物38とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図78に示す。
【0156】
実施例50
実施例49において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0157】
実施例51
実施例13において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図79に示す。
【0158】
実施例52
実施例51において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0159】
実施例53
実施例14において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図80に示す。
【0160】
実施例54
実施例53において電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0161】
実施例55
実施例1において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図81に示す。
【0162】
実施例56
実施例55において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0163】
実施例57
実施例4において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図82に示す。
【0164】
実施例58
実施例57において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0165】
実施例59
実施例5において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図83に示す。
【0166】
実施例60
実施例59において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0167】
実施例61
実施例6において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図84に示す。
【0168】
実施例62
実施例61において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0169】
実施例63
実施例7において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図85に示す。
【0170】
実施例64
実施例63において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0171】
実施例65
実施例7において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図86に示す。
【0172】
実施例66
実施例65において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0173】
【表7】
【0174】
【表8】
【0175】
表6〜8より、本発明の金属錯体化合物を発光層に用いた有機EL素子は、色度座標が(0.42以下、0.59以下)であり、優れたものでは(0.2以下、0.5以下)であり、より優れたものでは(0.2以下、0.4以下)である。色度座標が(0.2以下、0.5以下)となるものが多いことから、色純度の高い青色領域の発光が得られることが分かる。また、低電圧で高輝度及び高発光効率を得ることもできていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
以上詳細に説明したように、本発明の金属錯体化合物を用いた有機EL素子は、発光効率が高く、短波長の発光で、色純度の高い青色発光が得られ、他の発光化合物と組み合わせて白色発光も可能である。このため、各種表示素子、ディスプレイ、バックライト、照明光源、標識、看板、インテリア等の分野に適用でき、カラーディスプレイの表示素子として適しており、特に有機EL素子用の材料に適している。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】金属錯体化合物3のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図2】金属錯体化合物4のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図3】金属錯体化合物5のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図4】金属錯体化合物6のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図5】金属錯体化合物7のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図6】金属錯体化合物8のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図7】金属錯体化合物9のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図8】金属錯体化合物10のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図9】金属錯体化合物11のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図10】金属錯体化合物12のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図11】金属錯体化合物29のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図12】金属錯体化合物30のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図13】金属錯体化合物24のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図14】金属錯体化合物38のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図15】金属錯体化合物16のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図16】金属錯体化合物3の室温発光スペクトルを示す図である。
【図17】金属錯体化合物4の室温発光スペクトルを示す図である。
【図18】金属錯体化合物5の室温発光スペクトルを示す図である。
【図19】金属錯体化合物6の室温発光スペクトルを示す図である。
【図20】金属錯体化合物7の室温発光スペクトルを示す図である。
【図21】金属錯体化合物8の室温発光スペクトルを示す図である。
【図22】金属錯体化合物9の室温発光スペクトルを示す図である。
【図23】金属錯体化合物10の室温発光スペクトルを示す図である。
【図24】金属錯体化合物11の低温発光スペクトルを示す図である。
【図25】金属錯体化合物12の室温発光スペクトルを示す図である。
【図26】金属錯体化合物29の室温発光スペクトルを示す図である。
【図27】金属錯体化合物30の室温発光スペクトルを示す図である。
【図28】金属錯体化合物24の室温発光スペクトルを示す図である。
【図29】金属錯体化合物38の室温発光スペクトルを示す図である。
【図30】金属錯体化合物16の室温発光スペクトルを示す図である。
【図31】金属錯体化合物3の低温発光スペクトルを示す図である。
【図32】金属錯体化合物4の低温発光スペクトルを示す図である。
【図33】金属錯体化合物5の低温発光スペクトルを示す図である。
【図34】金属錯体化合物6の低温発光スペクトルを示す図である。
【図35】金属錯体化合物7の低温発光スペクトルを示す図である。
【図36】金属錯体化合物8の低温発光スペクトルを示す図である。
【図37】金属錯体化合物9の低温発光スペクトルを示す図である。
【図38】金属錯体化合物10の低温発光スペクトルを示す図である。
【図39】金属錯体化合物11の低温発光スペクトルを示す図である。
【図40】金属錯体化合物12の低温発光スペクトルを示す図である。
【図41】金属錯体化合物29の低温発光スペクトルを示す図である。
【図42】金属錯体化合物30の低温発光スペクトルを示す図である。
【図43】金属錯体化合物24の低温発光スペクトルを示す図である。
【図44】金属錯体化合物38の低温発光スペクトルを示す図である。
【図45】金属錯体化合物16の低温発光スペクトルを示す図である。
【図46】金属錯体化合物3(1分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図47】金属錯体化合物3(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図48】金属錯体化合物3(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図49】金属錯体化合物4(1分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図50】金属錯体化合物4(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図51】金属錯体化合物4(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図52】金属錯体化合物9のX線結晶構造解析を示す図である。
【図53】金属錯体化合物29のX線結晶構造解析を示す図である。
【図54】金属錯体化合物15(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図55】金属錯体化合物15(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図56】金属錯体化合物29の、HPLCにおけるUV検出波長380nmでのクロマトグラムを示す図である。
【図57】光学分割した金属錯体化合物29の円二色性(CD)スペクトルを示す図である。
【図58】金属錯体化合物29の円偏光発光スペクトルを示す図である。
【図59】金属錯体化合物29(ラセミ体)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図60】金属錯体化合物30の、HPLCにおけるUV検出波長380nmでのクロマトグラムを示す図である。
【図61】光学分割した金属錯体化合物30の円二色性(CD)スペクトルを示す図である。
【図62】金属錯体化合物30の円偏光発光スペクトルを示す図である。
【図63】実施例1〜4の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図64】実施例5〜7の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図65】実施例8〜10の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図66】実施例11の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図67】実施例12の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図68】実施例13〜15の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図69】実施例16の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図70】実施例17〜18の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図71】実施例35の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図72】実施例37の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図73】実施例39の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図74】実施例41の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図75】実施例43の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図76】実施例45の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図77】実施例47の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図78】実施例49の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図79】実施例51の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図80】実施例53の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図81】実施例55の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図82】実施例57の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図83】実施例59の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図84】実施例61の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図85】実施例63の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図86】実施例65の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な金属錯体化合物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、特に、短波長の発光で、色純度の高い青色発光が得られ、他の発光化合物と組み合わせて白色発光も可能な有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを実現する金属錯体化合物並びに有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を液晶に代わるカラーディスプレイ用表示装置として用いることが活発に検討されている。しかし、大画面化を実現するにはまだその発光素子性能は不足している。この有機EL素子の性能向上手段として、りん光発光材料としてオルソメタル化イリジウム錯体(fac-tris(2-phenylpyridine)iridium)を発光材料に用いた緑色発光素子が提案されている (非特許文献1; 非特許文献2) 。
りん光発光を利用した有機EL素子、現状では緑色発光や赤色発光に限られるために、カラーディスプレイとしての適用範囲は狭いため、他の色についても発光特性が改善された素子の開発が望まれていた。特に青色発光素子については、外部量子収率5%を超えるものは報告されておらず、青色発光素子の改善ができればフルカラー化及び白色化が可能となり、りん光EL素子の実用化に向けて大きく前進する。
【0003】
現状、りん光発光錯体として、Irを含む金属錯体化合物の開発が活発に行われており、緑色発光素子用としては下記化合物Aが知られている。一方、青色発光素子としては、下記化合物Bが知られているが、素子の寿命、効率の点で実用的でない。そこで、その他の青色発光素子用の錯体を開発する必要性があるが、現状では、化合物B以外には見出されていない。
【0004】
【化1】
【0005】
以上の化合物A及びBは、2座キレート配位子を用いた錯体であるが、類似の3座キレート配位子を用いた錯体は殆ど知られておらず、以下に示す化合物Cが知られている程度である(非特許文献3参照)。
【0006】
【化2】
【0007】
しかしながら、化合物Cより得られる発光波長は600nmの赤色領域発光であり、青色領域発光ではない。このような3座キレート配位子を用いた錯体で青色領域発光の錯体が実現できれば、新たな技術展開の可能性がある。
また、特許文献1及び2には、3座キレート配位子を有する金属錯体化合物が開示されているが、金属錯体化合物の特定部位に電子吸引性基を付加することで、より短い波長の光を発光させる技術については開示がない。
【0008】
【非特許文献1】D.F.O'Brien and M.A.Baldo et al "Improved energy transferin electrophosphorescent devices" Applied Physics letters Vol.74 No.3, pp442-444, January 18, 1999
【非特許文献2】M.A.Baldo et al "Very high-efficiencygreen organic light-emitting devices based on electrophosphorescence" Applied Physics letters Vol. 75 No.1, pp4-6, July 5, 1999
【非特許文献3】J-P. Collin et.al., J.Am.Chem.Soc., 121,5009(1999)
【特許文献1】国際公開第2006/051806号パンフレット
【特許文献2】特開2006−160724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、短波長の発光で、色純度の高い青色発光が得られ、他の発光化合物と組み合わせて白色発光も可能な有機EL素子及びそれを実現する金属錯体化合物並びに有機EL素子用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは下記一般式(I)で表されるような2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有する構造を持ち、電子吸引性基を有する金属錯体化合物を用いると、短波長の発光で、色純度の高い青色発光が得られるという青色化の新たな構造因子を明らかにし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有する下記一般式(I)で表される構造を有する金属錯体化合物を提供するものである。
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、環Aは、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基であり、
環Bは、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、Nは窒素原子、Yは炭素原子又は窒素原子であり、
L及びZは、それぞれ独立に、周期律表第14〜16族のいずれかの原子を含有する有機基であり、
Xは、周期律表第14〜17族のいずれかの原子を含有する一価の配位子であり、
Rは、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルキニル基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基である。nは0〜4の整数であり、nが2以上である場合、それぞれのRは同一でも異なっていてもよく、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
ただし、3座キレート配位子及び/又は2座キレート配位子は電子吸引性基を含有する。)
また、本発明は、前記金属錯体化合物からなる有機EL素子用材料、並びに、一対の電極間に少なくとも発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、前記金属錯体化合物を含有し、両極間に電圧を印加することにより発光する有機EL素子を提供するものである。
さらに、前記金属錯体化合物と赤色発光材料とを発光層の発光性ドーパントとして同時に用いることにより、色純度の高い白色発光する有機EL素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、発光効率が高く、発光色が短波長で、色純度の高い青色発光が得られ、他の発光化合物と組み合わせて白色発光も可能な有機EL素子及びそれを実現する金属錯体化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の金属錯体化合物は、2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有する下記一般式(I)で表される構造を有するものである。
【化4】
【0015】
一般式(I)において、環Aは、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基であり、環Bは、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、Nは窒素原子、Yは炭素原子又は窒素原子である。
環Aの芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、フルオランテン等の残基が挙げられ、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基が好ましく、ベンゼンの残基がより好ましい。
環A及び環Bの複素環基としては、例えば、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾフラン等の残基が挙げられ、炭素数2〜5の複素環基が好ましく、ピリジン、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾフランの残基がより好ましい。環Bの複素環基としては、特にピリジンの残基が好ましい。
また、これら各基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のフッ素置換アルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜12(好ましくは炭素数2〜8)のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜12(好ましくは炭素数5〜8)のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜5の複素環基、置換もしくは無置換のアリールアルキル基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等が挙げられる。
アミノ基としては、アミノ基の水素原子が炭素数1〜12のアルキル基で置換されたアルキルアミノ基;アミノ基の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアリールアミノ基が挙げられる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
複素環基としては、例えばイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジン等の残基が挙げられる。
アリールアルキル基としては、上記アルキル基に上記アリール基が置換したものであり、例えばベンジル基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、アリール基部位が上記アリール基であるものが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、アルコキシ基部位が上記アルコキシ基であるものが挙げられる。
【0016】
一般式(I)において、L及びZは、それぞれ独立に、周期律表第14〜16族のいずれかの原子を含有する有機基である。
このL及びZに含まれる周期律表第14〜16族の原子としては、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)、Si(ケイ素)、P(リン)、S(硫黄)、Ge(ゲルマニウム)、As(ヒ素)、Se(セレン)原子等が挙げられ、炭素、窒素、酸素原子が好ましい。
また、L及びZの示す有機基としては、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルキニル基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基であると好ましい。
【0017】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、フルオランテン等の残基が挙げられる。
前記複素環基としては、例えば、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジン等の残基が挙げられる。
前記アルキルアミノ基としては、アミノ基の水素原子が前記アルキル基で置換されたものが挙げられる。
前記アリールアミノ基としては、アミノ基の水素原子が前記芳香族炭化水素基で置換されたものが挙げられる。
前記アルコキシ基は−OY’と表され、Y’としては、前記アルキル基で挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記ハロゲン化アルコキシ基としては、前記アルコキシ基の水素原子が前記ハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。
前記アリールオキシ基は−OY''と表され、Y''としては、前記芳香族炭化水素基で挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記ハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子が前記ハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等が挙げられる。
前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、メチルエチニル基等が挙げられる。
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、これら各基が有していてもよい置換基としては、環A及びBが有していてもよい置換基として例示したものと同様の置換基が挙げられる。
【0018】
一般式(I)において、Xは、周期律表第14〜17族のいずれかの原子を含有する一価の配位子である。
このXに含まれる周期律表第14〜17族の原子としては、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)、F(フッ素)、Si(ケイ素)、P(リン)、S(硫黄)、Cl(塩素)、Ge(ゲルマニウム)、As(ヒ素)、Se(セレン)、Br(臭素)、I(ヨウ素)原子等が挙げられ、炭素、窒素、塩素、臭素、ヨウ素原子が好ましい。
また、Xの示す配位子としては、シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、水素原子、Si(R’)3(R’は下記Rと同様の基を示す)、置換もしくは無置換のフェニル基及び下記の基
【化5】
が挙げられ、シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、水素原子、Si(R’)3又は置換フェニル基が好ましく挙げられる。
【0019】
一般式(I)において、Rは、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルキニル基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、これら各基の具体例としては、L及びZと同様の例が挙げられる。
これらの中でも、水素原子、イソプルピル基、t−ブチル基、メチル基が好ましい。
また、nは0〜4の整数であり、nが2以上の場合、それぞれのRは同一でも異なっていてもよく、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。nは0又は1が好ましい。
この環状構造としては、例えば、シクロアルカン(例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロプロパン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等)、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、フルオランテン等)及び複素環(例えば、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、ジフェニルアントラセン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジン等)が挙げられる。
また、これら各基が有していてもよい置換基としては、環A及びBが有していてもよい置換基として例示したものと同様の置換基が挙げられる。
【0020】
本発明の金属錯体化合物は、一般式(I)において、3座キレート配位子及び/又は2座キレート配位子は電子吸引性基を含有する。また、3座キレート配位子及び2座キレート配位子の両方が電子吸引性基を含有すると、より短波長の発光が得られる、或いはより高い量子収率が得られるため好ましい。
前記電子吸引性基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子含有アルキル基又はエステル基、アルデヒド基等が挙げられ、ハロゲン原子、ハロゲン原子含有アルキル基が好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル基がより好ましい。
本発明の金属錯体化合物は、このように電子吸引性基を導入することにより、金属錯体化合物のHOMOを安定化し、HOMOとLUMOのエネルギー差が広がるように作用するため、より短波長の青色発光が得られる。この作用は、電子吸引性基として特にフッ素原子を用いると強い。また、フッ素原子を導入した金属錯体化合物は、昇華性に優れるので、蒸着により有機EL素子を製造する場合に効率が良い。
また、本発明の金属錯体化合物は、三座キレート配位子がピリジン環を必須構造として有することにより、化合物の安定性が向上し、量子収率も向上する。
【0021】
前記一般式(I)において、前記3座キレート配位子が下記一般式(1)又は(2)で表されると好ましく、(3)〜(16)のいずれかで表される化合物であると好ましい。
【化6】
(式中、環B、Y、R及びnは、前記と同じ。)
【0022】
【化7】
【0023】
(式中、R1 〜R23は、それぞれ前記Rと同じであり、またR1〜R23のうち隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。具体例もRと同様のものが挙げられる。)
さらに、前記3座キレート配位子として、下記のような例が挙げられる。
【0024】
【化8】
【0025】
【化9】
【0026】
【化10】
【0027】
【化11】
【0028】
【化12】
【0029】
【化13】
【0030】
【化14】
【0031】
【化15】
【0032】
【化16】
【0033】
前記一般式(I)において、L−Zで形成される2座キレート配位子が下記一般式(17)〜(22)のいずれかで表される化合物であると好ましい。
【0034】
【化17】
(式中、R24〜R45は、それぞれ前記Rと同じであり、またR24〜R45のうち隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。具体例もRと同様のものが挙げられる。)
さらに、前記2座キレート配位子として、下記のような例が挙げられる。
【0035】
【化18】
【0036】
【化19】
【0037】
【化20】
【0038】
本発明の金属錯体化合物は、下記一般式(I−1)〜(I−12)及び(I−13)〜(I−24)のいずれかで表されるものであると好ましい。
【化21】
【0039】
【化22】
【0040】
(式(I−1)〜(I−12)中、R46〜R58は、それぞれ前記Rと同じである。l及びl'は0〜2の整数であり、m及びm'は0〜3の整数であり、n、n'、n''及びn'''は0〜4の整数である。l、l'、m、m'、n、n'、n''又はn'''が2以上である場合、R46〜R58のうち2以上となるものはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。具体例もRと同様のものが挙げられる。ただし、R46〜R58において、いずれか1以上は電子吸引性基である必要がある。
式(I−13)〜(I−24)中、R46及びR48〜R59は、それぞれ前記Rと同じである。l、l'及びl''は0〜2の整数であり、mは0〜3の整数であり、n、n'、n''及びn'''は0〜4の整数である。l、l'、l''、m、n、n'、n''又はn'''が2以上である場合、R46及びR48〜R59のうち2以上となるものはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。具体例もRと同様のものが挙げられる。ただし、R48〜R59において、いずれか1以上は電子吸引性基である必要がある。)
これらの中でも、それぞれ、nが0又は1であることが好ましい。特に、金属錯体化合物(I−5)、(I−9)、(I−13)、(I−17)、(I−21)においては、nが1の場合に、R46及びR46は炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、イソプロピル基、t−ブチル基がさらに好ましい。
【0041】
また、本発明の金属錯体化合物の具体例としては、下記表1に示すような部分構造の組み合わせからなるものが好ましい。これら例示化合物に限定されるものではない。
【表1】
【0042】
本発明の有機EL素子用材料は、本発明の金属錯体化合物を含有するものである。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極からなる一対の電極間に少なくとも発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、本発明の金属錯体化合物を含有し、両極間に電圧を印加することにより発光するものである。
本発明の有機EL素子は、前記発光層が、本発明の金属錯体化合物を含有すると好ましく、本発明の金属錯体化合物を発光層全質量に対して1〜30質量%含有すると好ましい。
また、通常、前記発光層は真空蒸着又は塗布により薄膜化するが、塗布の方が製造プロセスが簡略化できることから、本発明の金属錯体化合物を含有する層が、塗布により成膜されてなると好ましい。
【0043】
本発明における有機EL素子の素子構造は、電極間に有機層を1層又は2層以上積層した構造であり、その例としては、(i)陽極、発光層、陰極、(ii)陽極、正孔注入・輸送層、発光層、電子注入・輸送層、陰極、(iii)陽極、正孔注入・輸送層、発光層、陰極、(iv)陽極、発光層、電子注入・輸送層、陰極等の構造が挙げられる。
本発明における金属錯体化合物は上記のどの有機層に用いられてもよく、他の正孔輸送材料、発光材料、電子 輸送材料にドープさせることも可能である。有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されないが、蒸着法のほか,本発明の発光組成物を溶解し、又は組成物を形成する化合物をそれぞれ溶解した後、この溶液を用い各種の湿式方法により発光媒体又は発光層を形成できる。溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法、インクジェット法などによる公知の方法で形成することができる。本発明の有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0044】
発光層を形成する発光溶液調製時に用いる溶媒例としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、ハロゲン系炭化水素系溶媒や炭化水素系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。なお、使用可能な溶媒はこれらに限定されるものではない。また、発光溶液にはドーパントとして本発明の金属錯体化合物をあらかじめ溶解させておいてもよい。
【0045】
また、本発明の金属錯体化合物をドーパントとして用いる場合、他の発光性ドーパントと組み合わせて発光層に用いることにより、白色発光可能な有機EL素子が得られる。上記他の発光性ドーパントは、蛍光発光材料でもりん光発光材料でもよく、特に限定はないが、好ましくは最大発光波長が黄色〜赤色領域にあるものが望ましい。
【0046】
本発明に用いられる電子注入・輸送材料は特に限定されず、通常電子注入・輸送材料として使用されている化合物であれば何を使用してもよい。含窒素環誘導体や、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ビス{2−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール}−m−フェニレン等のオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キノリノール系の金属錯体が挙げられる。また電子注入・輸送層を構成する無機化合物として、絶縁体又は半導体を使用することが好ましい。
また、本発明の有機EL素子は、前記発光層と陰極との間に電子注入層及び/又は電子輸送層を有する場合、含窒素環誘導体を主成分として含有すると好ましい。
含窒素環誘導体としては、分子内にヘテロ原子を有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましい。
【0047】
この含窒素環誘導体としては、例えば、一般式(A)で表されるものが好ましい。
【化23】
【0048】
RA1〜RA6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、オキシ基、アミノ基、又は炭素数1〜40の炭化水素基であり、これらは置換されていてもよい。
このハロゲン原子の例としては、前記と同様のものが挙げられる。また、置換されていてもよいアミノ基の例としては、前記アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基(アリールアルキルは、前記芳香族炭化水素基、アルキル基と同様)と同様のものが挙げられる。
前記炭素数1〜40の炭化水素基としては、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基(芳香族炭化水素基)、複素環基、アラルキル基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。このアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アラルキル基、アリールオキシ基の例としては、前記と同様のものが挙げられ、アルコキシカルボニル基は−COOY’と表され、Y’の例としては前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0049】
Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)であり、Inであると好ましい。
一般式(A)のLAは、下記一般式(A’)又は(A'')で表される基である。
【化24】
【0050】
(式中、RA7〜RA11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。また、RA12〜RA26は、それぞれ独立に、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。)
一般式(A’)及び(A'')のRA7〜RA11及びRA12〜RA26が示す炭素数1〜40の炭化水素基としては、前記RA1〜RA6の具体例と同様のものが挙げられる。
また、前記RA7〜RA11及びRA12〜RA26の互いに隣接する基が環状構造を形成した場合の2価の基としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2’−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
一般式(A)で表される含窒素環の金属キレート錯体の具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0051】
【化25】
【0052】
【化26】
【0053】
【化27】
【0054】
前記含窒素環誘導体としては、含窒素5員環誘導体も好ましく、含窒素5員環としては、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、オキサトリアゾール環、チアトリアゾール環等が挙げられ、含窒素5員環誘導体としては、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ピリジノイミダゾール環、ピリミジノイミダゾール環、ピリダジノイミダゾール環であり、特に好ましくは、下記一般式(B)で表されるものである。
【0055】
【化28】
【0056】
一般式(B)中、LBは二価以上の連結基を表し、例えば、炭素、ケイ素、窒素、ホウ素、酸素、硫黄、金属(例えば、バリウム、ベリリウム)、芳香族炭化水素環、芳香族複素環等が挙げられ、これらのうち炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、ホウ素原子、酸素原子、硫黄原子、アリール基、芳香族複素環基が好ましく、炭素原子、ケイ素原子、アリール基、芳香族複素環基がさらに好ましい。
LBのアリール基及び芳香族複素環基は置換基を有していてもよく、置換基として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、芳香族複素環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、芳香族複素環基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族複素環基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、芳香族複素環基である。
LBの具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0057】
【化29】
【0058】
一般式(B)におけるXB1は、−O−、−S−又は=N−RB1を表す。RB1は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基又は複素環基を表す。
RB1の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)であり、アルキル基であると好ましい。
RB1のアリール基は、単環又は縮合環であり、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−メトキシフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、ペンタフルオロフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が挙げられる。
【0059】
RB1の複素環基は、単環又は縮合環であり、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数2〜10の複素環基であり、好ましくは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の少なくとも一つを含む芳香族複素環基である。この複素環基の例としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオフェン、セレノフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、カルバゾール、アゼピン等が挙げられ、好ましくは、フラン、チオフェン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリンであり、より好ましくはフラン、チオフェン、ピリジン、キノリンであり、さらに好ましくはキノリンである。
RB1で表される脂肪族炭化水素基、アリール基及び複素環基は置換基を有していてもよく、置換基としては前記LBで表される基の置換基として挙げたものと同様であり、また好ましい置換基も同様である。
RB1として好ましくは脂肪族炭化水素基、アリール基又は複素環基であり、より好ましくは脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のもの)又はアリール基であり、さらに好ましくは脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数2〜10のもの)である。
【0060】
XB1として好ましくは−O−、=N−RB1であり、より好ましくは=N−RB1であり、特に好ましくは=N−RB1である。
ZB1は、芳香族環を形成するために必要な原子群を表す。ZB1で形成される芳香族環は芳香族炭化水素環、芳香族複素環のいずれでもよく、具体例としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、テルロフェン環、イミダゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、テルラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、ピラゾール環などが挙げられ、好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環であり、さらに好ましくはベンゼン環、ピリジン環であり、特に好ましくはピリジン環である。
ZB1で形成される芳香族環は、さらに他の環と縮合環を形成してもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては前記LBで表される基の置換基として挙げたものと同様であり、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、複素環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、複素環基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族複素環基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、芳香族複素環基である。
nB1は、1〜4の整数であり、2〜3であると好ましい。
【0061】
前記一般式(B)で表される含窒素5員環誘導体のうち、さらに好ましくは下記一般式(B’)で表されるものである。
【化30】
【0062】
一般式(B’)中、RB2、RB3及びRB4は、それぞれ一般式(B)におけるRB1と同様であり、また好ましい範囲も同様である。
ZB2、ZB3及びZB4は、それぞれ一般式(B)におけるZB1と同様であり、また好ましい範囲も同様である。
LB2、LB3及びLB4は、それぞれ連結基を表し、一般式(B)におけるLBの例を二価としたものが挙げられ、好ましくは、単結合、二価の芳香族炭化水素環基、二価の芳香族複素環基、及びこれらの組み合わせからなる連結基であり、より好ましくは単結合である。LB2、LB3及びLB4は置換基を有していてもよく、置換基としては前記一般式(B)におけるLBで表される基の置換基として挙げたものと同様であり、また好ましい置換基も同様である。
Yは、窒素原子、1,3,5−ベンゼントリイル基、2,4,6−トリアジントリイル基又は2,4,6−ピリジントリイル基を表す。1,3,5−ベンゼントリイル基は2,4,6−位に置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基、芳香族炭化水素環基、ハロゲン原子などが挙げられる。
一般式(B)又は(B’)で表される含窒素5員環誘導体の具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0063】
【化31】
【0064】
【化32】
【0065】
さらに、電子注入・輸送材料としては、電子欠乏性含窒素5員環又は電子欠乏性含窒素6員環骨格と、置換又は無置換のインドール骨格、置換又は無置換のカルバゾール骨格、置換又は無置換のアザカルバゾール骨格を組み合わせた構造を有する化合物等も挙げられる。また、好適な電子欠乏性含窒素5員環又は電子欠乏性含窒素6員環骨格としては、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、トリアゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、キノキサリン、ピロール骨格及び、それらがお互いに縮合したベンズイミダゾール、イミダゾピリジン等の分子骨格が挙げられる。これらの組み合わせの中で好ましくはピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン骨格と,カルバゾール、インドール、アザカルバゾール、キノキサリン骨格が挙げられる。前述の骨格は置換されていても無置換であってもよい。
このような化合物の具体例を以下に示す。
【0066】
【化33】
【0067】
【化34】
【0068】
電子注入層及び電子輸送層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。これらはπ電子欠乏性含窒素ヘテロ環基であることが好ましい。
電子注入・輸送層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入・輸送層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。
具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li 2 O、Na 2S及びNa 2 Seが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF 2 、BaF 2 、SrF 2 、MgF2 及びBeF 2 等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0069】
また、電子注入・輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子注入・輸送層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子輸送層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。
なお、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
さらに、電子注入・輸送層は、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントを含有していてもよい。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送性化合物を還元ができる物質と定義される。したがって、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0070】
また、より具体的に、好ましい還元性ドーパントとしては、Na(仕事関数:2.36 eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)及びCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)及びBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられ、仕事関数が2.9eVのものが特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、Rb及びCsであり、最も好ましのは、Csである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組合せも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、CsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0071】
本発明の有機EL素子の発光層は、電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能、注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有するものである。本発明の有機EL素子の発光層は、少なくとも本発明の金属錯体化合物を含有すると好ましく、この金属錯体化合物をドーパント材料とするホスト材料を含有させてもよい。前記ホスト材料としては、例えばカルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するもの等が挙げられる。前記ホスト材料のT1(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、ドーパント材料のT1より大きいことが好ましい。前記ホスト材料と前記金属錯体化合物等の発光材料とを共蒸着等することによって、前記発光材料が前記ホスト材料にドープされた発光層を形成することができる。
【0072】
前記ホスト材料としては、例えば一般式(C−I)及び(C−II)で表されるものが好ましい。
(Het−)n1A (C−I)
Het(−A)m1 (C−II)
〔式中、Hetは置換もしくは無置換のカルバゾリル基、アリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアルキレン基、を代表とする含窒素、酸素又は硫黄ヘテロ芳香族化合物基を表し、Aは下記一般式(E)で表される部位より形成される基である。n1、m1はそれぞれ1〜3の整数である。
(M’)p−(L)q−(M”)r (E)
(M’及びM”は、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が2〜40の窒素含有ヘテロ芳香族環であり、環に置換基を有していても有していなくてもよい。またM’及びM”は、同一でも異なっていてもよい。Lは単結合、炭素数6〜30のアリーレン基、炭素数5〜30のシクロアルキレン基又は炭素数2〜30のヘテロ芳香族環であり、環に結合する置換基を有していても有していなくてもよい。pは0〜2、qは1〜3、rは0〜2の整数である。ただし、p+rは1以上である。)〕
前記一般式(C−I)及び(C−II)で表される具体例としては下記のような構造が挙げられるが、この例に限定されるものではない。
【0073】
【化35】
【0074】
また、以下の一般式(D−I)及び(D−II)で表される化合物もホスト材料として用いることができる。式中Q1〜Q4はそれぞれ一般式(B)のRB1と同様の基を示し、L及びqは一般式(E)に定めたものと同じである。
【化36】
【0075】
前記一般式(D−I)及び(D−II)で表される具体例としては下記のような構造が挙げられるが、この例に限定されるものではない。
【化37】
【0076】
有機EL素子の陽極は、正孔を正孔注入・輸送層及び/又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。本発明に用いられる陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、金、銀、白金、銅等が適用できる。また、陰極としては、電子注入・輸送層及び/又は発光層に電子を注入する目的で、仕事関数の小さい材料が好ましい。また、有機EL素子においては、陽極の上に正孔注入(輸送)層を用いてもよい。正孔注入・輸送層の例としては、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報等に記載されている、通常有機EL素子に用いられている各種有機化合物及びポリマーを用いることができる。例えば、芳香族第三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、あるいはポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン・ ポリスルフォン酸(PEDOT・ PSS)等が挙げられる。
有機EL素子の陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が使用できる。
【実施例】
【0077】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
合成実施例1(金属錯体化合物3の合成)
以下の経路により金属錯体化合物3を合成した。
【化38】
【0078】
(1)Bfbの合成
100mlフラスコに1−ブロモ−2,4−ジフルオロベンゼン 39mmol(7.52g)を入れ、60℃に加温した。次いで鉄 0.15gを加えた後、60℃のまま、臭素 39mmol(6.23g)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに60℃で2時間反応させた。
得られた反応液を室温まで冷却後、冷水酸化ナトリウム水溶液に投入し、ヘキサンで抽出した。得られた有機層を純水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を除去した。得られた残さをシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 へキサン)により精製し、無色オイルとしてBfbを8.81g得た(収率84%)。
1H-NMR(CDCl3) :δ7.70(t,1H,J=7.2Hz),6.92(t,1H,J=8.0Hz)
(2)Fppyの合成
500mlの三口フラスコに4−フルオロフェニルボロン酸77mmol(10.7g)、2−ブロモピリジン70mmol(11.0g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)1.4mmol(1.6g)、2Mの炭酸ナトリウム水溶液22g及び1,2−ジメトキシエタン140mlを入れ、系内を窒素置換した。攪拌しながら9時間加熱還流し、室温に冷却後、水及び酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。
ろ過後、溶液を濃縮してオレンジ色のスラリー状物質を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒 ジクロロメタン:ヘキサン1:2〜2:1)により精製し、Fppyを得た(9.7g、収率80%)。
1H-NMR(CDCl3) :δ8.68(d,1H,J=5.7Hz),8.00-7.97(m,2H),7.75(t,1H,J=7.7Hz) ,7.68(d,1H,J=8.0Hz) , 7.24-7.22(m,1H) , 7.16(t,2H,J=8.6Hz)
【0079】
(3)Fpybの合成
200ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム207mmol(8.78g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド1.61mmol(1.1g)を加え、再度窒素置換した。そこへ、トルエン80ml、Bfb 20.7mmol(5.62g)を加えた。更に、トリメチル(2−ピリジル)スズ62.1mmol(15g)を滴下し、窒素気流下において、3日間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液150mlを加え、30分間攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出した後、有機層に無水硫酸ナトリウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た茶色固体をエーテルで洗浄することにより、Fpybの白色固体を得た(4.3g、収率78%)。
1H-NMR(CDCl3) : δ8.66(d,2H,J=5.2Hz),8.55(t,1H,J=8.9Hz),7.72-7.68(m,4H),7.21-7.19(m,2H), 6.97(t,1H,J=10.9Hz)
19F-NMR(CDCl3) : δ-112.95
(4)FpybIrの合成
100ml二口フラスコに、塩化イリジウム水和物1.33mmol(0.469g)、Fpyb 1.86mmol(0.5g)及び2−エトキシエタノール20mlを加え、窒素気流下で20時間還流下で加熱攪拌した。放冷後、ろ過により溶媒を除去し、黄色固体を得た(0.51g、収率73%)。
(5)金属錯体化合物3の合成
100mlナス型フラスコにFpybIr 0.283mmol(0.3g)、Fppy 0.283mmol(0.49g)、及びグリセロール10mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて6分間加熱還流した。放冷後、水を加えて生じた沈殿をろ過により回収し、ヘキサンにより洗浄した。金属錯体化合物3を黄色固体として得た(0.221g、収率58%)。
1H-NMR(CDCl3):δ10.08(d,1H,J=5.2Hz),8.10(d,2H,J=8.0Hz),8.00-7.99(m,2H),7.62(t,2H,J=8.6Hz),7.63-7.61(m,3H),6.85(t,2H,J=6.6Hz),6.79(t,1H,J=11.5Hz),6.47(t,1H,J=8.6Hz),5.72(d,1H,J=10.3Hz)
Anal.calcd for C27H16N3F3IrCl:C,48.61;H,2.42;N,6.30 Found:C,48.35;H,2.42;N,6.10
【0080】
合成実施例2(金属錯体化合物4の合成)
合成実施例1に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物3を合成した。
次いで、50mlナス型フラスコに金属錯体化合物3 0.3mmol(0.2g)、シアン化カリウム 3.0mmol(0.194g)及びメタノール10mlを加え、窒素気流下にて1時間加熱還流した。
放冷後、溶媒を減圧除去し、純水を加えろ過により生じた沈殿を回収し、ヘキサンにより洗浄した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)により精製を行ない、金属錯体化合物4を黄色固体として得た(0.135g、収率70%)。
1H-NMR(CDCl3):δ10.02(d,1H,J=4.6Hz),8.13(d,2H,J=8.0Hz),8.02(d,2H,4.0),7.66-7.61(m,5H),7.50(q,1H,J=4.8Hz),6.85-6.81(m,3H),6.51(t,1H,J=8.6Hz),5.70(d,1H,J=9.2Hz)
Anal.calcd for C28H16N4F3Ir:C,51.14;H,2.45;N,8.52 Found:C,51.12;H,2.52;N,8.26
FT-IR(KBr):2105 cm-1[ν(CN) ]
【0081】
合成実施例3(金属錯体化合物5の合成)
以下の経路により金属錯体化合物5を合成した。化合物Bfb、Fpyb及びFpybIrは合成実施例1と同様に合成を行った。
【化39】
【0082】
(1)dFppyの合成
1000mlフラスコに2,4−ジフルオロフェニルボロン酸 63.3mmol(10g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)1.73mmol(2.0g)を入れ、窒素置換した後に、1,2−ジメトキシエタン500ml、1.3M炭酸ナトリウム水溶液120ml、次いで2−ブロモピリジン 63.3mmol(10g)を加え、還流下で8時間反応させた。
得られた反応溶液より溶媒を留去し、エーテル抽出を行った。分離した有機層を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後得られたオイル状物をシリカカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:ヘキサン=1:1)で精製し、dFppyを黄色オイルとして得た(8.0g、収率67%)。
1H-NMR(CO(CD3)2-d6):δ8.71(d,1H,J=4.6Hz),8.11(q,1H,J=8.0Hz),7.88(t,1H,J=7.7 Hz),7.81(d,1H,J=8.0Hz),7.36(t,1H,J=6.0Hz),7.16-7.14(m,2H)
(2)金属錯体化合物5の合成
100mlナス型フラスコにFpybIr 0.094mmol(0.1g)、dFppy0.934mmol(0.18g)及びグリセロール10mlを加え、26時間加熱還流した。放冷後、水を加え、生じた沈殿をろ過により回収し、ヘキサン により洗浄した。金属錯体化合物5を黄色固体として得た(0.04g、収率65%)。
1H-NMR(CDCl3): δ10.15(d,1H,J=4.0Hz),8.46(d,1H,J=8.0Hz),8.11(d,2H,J=8.6Hz),8.02(t,1H,J=7.7Hz),7.64(t,2H,J=8.0Hz),7.56(t,1H,J=6.3Hz),7.52(d,2H,J=5.7Hz),6.88(t,2H,J=6.9Hz),6.79(t,1H,J=11.5Hz),6.25(t,1H,J=11.2Hz) ,5.56(d,1H,J=9.7Hz)
【0083】
合成実施例4(金属錯体化合物6の合成)
合成実施例3に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物5を合成した。
次いで、50mlナス型フラスコに金属錯体化合物5 0.3mmol(0.2g)、シアン化カリウム3.0mmol(0.194g)及びメタノール10mlを加え、窒素気流下にて1時間加熱還流した。
放冷後、溶媒を減圧除去し、純水を加えろ過により生じた沈殿を回収し、ヘキサンにより洗浄した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)により精製を行ない、金属錯体化合物6を黄色固体として得た(0.127g、収率63%)。
【0084】
合成実施例5(金属錯体化合物7の合成)
以下の経路により金属錯体化合物7を合成した。化合物FpybIrは合成実施例1と同様に合成を行った。
【化40】
【0085】
(1)pmiの合成
50mlのナスフラスコに窒素気流下にて、1-フェニルイミダゾール 13.8mmol(2.0g)、ヨウ化メチル30.5mmol(1.9ml)をトルエン15ml中に入れ、30℃で24時間反応させた。生成物をろ過により回収しトルエンで洗浄し、pmiを白色固体として得た(3.65g、収率92%)。
1H-NMR(CDCl3):δ10.55(s,1H),7.78-7.76(m,2H),7.61-7.56(m,5H),4.29(s,3H)
(2)金属錯体化合物7の合成
50mlナスフラスコにFpybIr 0.094mmol(0.1g)、pmi 0.282mmol(0.081g)、酸化銀1.22mmol(0.283g)及び2−エトシキエタノール25mlを入れ、窒素気流下にて6時間加熱還流した。
放冷後、溶媒を減圧除去し、塩化メチレンに溶解させて、セライトによりろ過した。溶媒を減圧除去後の固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:メタノール=100:1)により精製を行なった。さらに、塩化メチレン/クロロホルム/ヘキサンで再結晶を行い、金属錯体化合物7を得た(82mg、収率67%)
Anal.Calcd for C26H19N5F2ClIr:C,47.81;H,2.93;N,8.58 Found:C,47.66;H,2.53;N,8.18
1H-NMR(CDCl3):δ8.05(d,2H,J=8.0Hz),7.88(d,2H,J=5.2Hz),7.62(d,1H,J=2.3Hz),7.56(t,2H,J=7.7Hz),7.24(d,2H,J=2.3Hz),7.04(d,1H,J=9.2Hz),6.77(t,2H,J=6.6 Hz),6.71(t,1H,J=6.9Hz),6.47(t,1H,J=7.4Hz),5.99(d,1H,J=5.99Hz)
19F-NMR(CDCl3): δ-108.62
【0086】
合成実施例6(金属錯体化合物8の合成)
合成実施例5に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物7を合成した。
次いで、50mlナスフラスコに金属錯体化合物7 0.077mmol(0.05g)、シアン化カリウム0.766mmol(0.05g)、及びメタノール10mlを入れ、窒素気流下にて14時間加熱還流した。放冷後、溶媒を減圧除去し、純水を加えろ過し、ヘキサンにて洗浄した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:メタノール=25:1)により精製を行ない、金属錯体化合物8を明黄色固体として得た(33mg、収率67%)。
Anal.calcd for C27H19N5F2Ir:C,50.38;H,2.98;N,10.88 Found:C,50.20;H,2.69;N,10.52
1H-NMR(CDCl3):δ8.06(d,2H,J=8.6Hz),7.83(d,2H,J=5.7Hz),7.62(s,1H),7.58(t,2H,J=8.0Hz),7.23(s,1H),7.09(d,1H,J=8.0Hz),6.82-6.78(m,2H),6.73(t,2H,J=6.6Hz),6.53(t,1H,J=7.2Hz),6.02(d,1H,J=7.4Hz)
19F-NMR(CDCl3):δ-108.49
FT-IR(KBr):2103cm-1[ν(CN) ]
【0087】
合成実施例7(金属錯体化合物9の合成)
以下の経路により金属錯体化合物9を合成した。化合物FpybIrは合成実施例1と同様に合成を行った。
【化41】
【0088】
(1)CFppyの合成
100mlの二口フラスコに2−クロロピリジン13mmol(1.49g)、2−トリフルオロメチルフェニルボロン酸16mmol(3.0g)、1,2−ジメトキシエタン20ml、2M炭酸カリウム水溶液12ml及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.65mmmol(0.751g)を入れ19時間加熱還流した。放冷後、酢酸エチルで抽出し硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を除去した。減圧蒸留により精製を行い、CFppyを得た(1.83g、収率63%)。
1H-NMR(CDCl3):δ8.73(d,1H,J=4.6Hz),8.28(s,1H),8.18(d,1H,J=7.4Hz),7.82-7.76(m,2H),7.67(d,1 H,J=7.4Hz),7.60(t,1H,J=7.7Hz),7.30-7.29(m,1H)
(2)金属錯体化合物9の合成
100mlナス型フラスコにFpybIr 0.189mmol(0.2g)、CFppy 1.89mmol(0.421g)、グリセロール10mlを入れ、窒素気流下にて12分間マイクロ波照射により加熱還流した。放冷後、水を加え、生じた沈殿をろ過により回収し、ヘキサンにより洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)及び塩化メチレン/ヘキサンによる再結晶にて精製し、金属錯体化合物9を白黄色固体として得た(0.216g、収率80%)。
1H-NMR(CDCl3):δ10.1(d,1H,J=6.3Hz),8.15(d,1H,J=6.3Hz),8.10(d,2H,J=8.0Hz),8.06(t,1H,J=8.0Hz),7.80(s,1H),7.66-7.61(m,3H),7.53(d,2H,J=5.7Hz),6.86(t,2H,J=6.6Hz),6.83-6.78(m,2H),6.22(d,1H,J=9.7Hz)
【0089】
合成実施例8(金属錯体化合物10の合成)
合成実施例7に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物9を合成した。
次いで、50mlのナス型フラスコに金属錯体化合物9 0.301mmol(0.216g)、シアン化カリウム3.0mmol(0.194g)及びメタノール10mlを入れ、窒素気流下にて1時間加熱還流した。放冷後、溶媒を減圧除去し、純水を加え、ろ過により生じた沈殿を回収し、ヘキサンにより洗浄した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:メタノール=50:1)にて精製を行い、金属錯体化合物10を白黄色固体として得た(0.11g、収率52%)。
Anal.calcd for C29H16N5F4Ir:C,49.22;H,2.28;N,7.92 Found:C,49.34;H,2.31;N,7.68
1H-NMR(CDCl3) :δ10.08(d,1H,J=5.7Hz),8.17(d,1H,J=8.0Hz),8.13-8.08(m,3H),7.83(s,1H),7.66-7.58(m,5H),6.88-6.82(m,4H),6.19(d,1H,J=8.0Hz)
19F-NMR(CDCl3) :δ-62.10(CFppy),-107.62(Fpyb)
FT-IR(KBr) : 2112 cm-1[ν(CN) ]
【0090】
合成実施例9(金属錯体化合物11の合成)
以下の経路により金属錯体化合物11を合成した。
【化42】
【0091】
(1)Bcfbの合成
三口フラスコに臭化銅(II)4.79mmol(1.07mg)、アセトニトリル15mlを入れ、窒素下、0℃で亜硝酸t−ブチル6.4mmol(0.844ml)、3−アミノ−5−ブロモベンゾトリフルオリド 4.16mmol(1.0g)を滴下し、1.5時間攪拌した。その後、室温に戻し、16時間攪拌した。
得られた溶液を半分に濃縮し、1N塩酸にて洗浄しエーテルにより抽出した。有機層を脱水後、溶媒を減圧除去し、シリカゲルカラム(展開溶媒 ヘキサン)により精製を行ない、Bcfbを橙色オイルとして得た(0.84g、収率58%)。
1H-NMR(CD3CN) :δ8.04(s,1H)、7.88(s,2H)
(2)CFpybの合成
合成実施例1のFpybの合成と同様に合成した。ただし、原料のブロマイドとしてBcfb、スズ化合物としてトリn−ブチル(2−ピリジル)スズを用いた。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:エーテル=4:1)にて行なった。(0.64g、収率26 %)
1H-NMR(CDCl3) :δ8.84(s,1H),8.75(d,2H,J=5.7Hz),8.34(s,2H),7.89(d,2H,J=8.0Hz),7.82(t,2H,J=7.7Hz),7.32(t,2H,J=6.0Hz)
(3)CFpybIrの合成
100ml二口フラスコに塩化イリジウム水和物0.284mmol(0.1g)、2−エトキシエタノール10mlを入れ、窒素気流下110℃にて攪拌した。温度が上がったところで、CFpyb 0.397mmol(0.119g)を加えて、20時間加熱攪拌した。放冷後、ろ過メタノールとエーテルで洗浄し橙色固体を得た(0.103g、収率65%)。
(4)金属錯体化合物11の合成
100mlナス型フラスコにCFpybIr 0.089mmol(0.1g)、Fppy 0.712mmol(0.123g)、グリセロール10mlを入れ、窒素気流下にてマイクロ波照射により12分間加熱還流した。放冷後、水を加え、生じた沈殿をろ過により回収し、ヘキサンにより洗浄後、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:メタノール=50:1)及び塩化メチレン/ヘキサンによる再結晶で精製を行い、金属錯体化合物11の黄色固体を得た(67mg、収率54%)。
1H-NMR(CDCl3) :δ10.09(d,1H,J=5.7Hz),8.02-8.00(m,4H),7.95(d,2H,J=8.0Hz),7.67(t,2H,J=7.7Hz),7.64(d,2H,J=5.7Hz),7.60-7.55(m,2H),6.92(t,2H,J=6.6Hz),6.45(t,1H,J=8.6Hz),5.55(d,1H,J= 9.7Hz)
19F-NMR(CDCl3) : δ-60.82(CF3pyb),-110.71(fppy)
【0092】
合成実施例10(金属錯体化合物12の合成)
合成実施例9に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物11を合成した。
次いで、金属錯体化合物11 0.086mmol(60mg)を原料とし、金属錯体化合物4と同様の方法で合成した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン:メタノール=50:1)にて精製を行い、金属錯体化合物12の白黄色固体を得た(37mg、収率63%)。
1H-NMR(CDCl3) :δ10.04(d,1H,J=5.2Hz),8.04-8.03(m,4H),7.97(d,2H,J=8.0Hz),7.72-7.68(m,4H),7.62(t,1H,J=6.9Hz),7.51(t,1H,J=7.2Hz),6.91(t,2H,J=6.0Hz),6.48(t,1H,J=8.9Hz),5.50(d,1H,J=9.2Hz)
【0093】
合成実施例11(金属錯体化合物29の合成)
以下の経路により金属錯体化合物29を合成した。
【化43】
【0094】
(1)Ifbの合成
500ml三口フラスコを窒素置換し、N−メチルイミダゾール 38mmol(3.1g)、テトラヒドロフラン50mlを入れ、−70℃下で1.6Mのn−ブチルリチウム 27.5ml(44mmol)を加えた。2時間攪拌後、テトラヒドロフラン中に懸濁させた無水塩化亜鉛44mmol(6.0g)を滴下し、1時間攪拌後室温に戻した。さらに、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロライド 0.504mmol(0.412g)とBfb 25.2mmol(6.88g)をテトラヒドロフラン20mlに溶解させた溶液を加え、1時間半還流した。少し冷却させてから、無水塩化亜鉛76mmol(10.4g)を加え、さらに5日間還流させた。
得られた反応溶液をエチレンジアミンN,N,N',N'−四酢酸二ナトリウム塩無水物 236mmol(88g)水溶液(1L)中に入れ、10%炭酸ナトリウム水溶液でpH8にした。塩化メチレンで有機物を抽出し、硫酸ナトリウムで脱水したのち溶媒を除去した。シリカゲルカラム(展開溶媒 アセトン)により精製を行い、黄色の固体を得た。さらに昇華を行うことにより、Ifbの白色固体を得た(10.2g、収率46%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ7.84(t, 1H, J=7.7Hz), 7.16 (d, 1H, J=1.1Hz), 7.03-7.01(m, 2H),3.62 (d, 3H, J=2.3Hz)
(2)Pyifbの合成
500ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム45.3mmol(1.92g)、Ifb 11.3mmol(3.1g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド0.354mmol(0.248g)、トリブチル(2−ピリジル)スズ13.6mmol(5.0g)及びトルエン40mlを加え、6日間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液を加え、3時間攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液150mlにて抽出した後、有機層に無水硫酸ナトリウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た茶色オイルをシリカカラムにより精製を行い、Pyifbの黄色オイルを得た(2.4g、収率78%)。
1H-NMR(Acetone-d6):δ8.72(q, 1H, J=2.1Hz), 8.29 (t, 1H, J=8.9Hz), 7.93-7.89(m,2H), 7.42-7.39 (m, 1H) , 7.34 (t, 1H, J=11.2Hz), 7.25(d, 1H, J=1.1Hz), 7.06 (d,1H, J=1.1Hz) , 3.70 (d, 3H, J=1.7Hz)
(3)PyifbIrの合成
100mlナスフラスコに、塩化イリジウム水和物5.9mmol(2.07g)、Pyifb 8.8mmol(2.4g)及び2−エトキシエタノール30mlを加え、窒素気流下で24時間還流下で加熱攪拌した。放冷後、生成物をろ過し、ヘキサン及びエーテルで洗浄し、黄色固体を得た(2.91g、収率91%)。
(4)金属錯体化合物29の合成
100mlナス型フラスコにPyifbIr 0.46mmol(0.5g)、Fppy 2.3mmol(0.4g)、及びエチレングリコール25mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて1分間、3回加熱還流した。放冷後、水を加えて、生じた沈殿を遠心分離機によりろ過し、ヘキサンにより洗浄した。さらにシリカカラム(展開溶媒 メタノール:ジクロロメタン=1:25)により精製し、金属錯体化合物29を黄色固体として得た(0.289g、収率47%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ10.06(d, 1H, J=5.2Hz), 8.12 (d, 1H, J=8.6Hz), 7.95-7.92(m, 2H), 7.62-7.54 (m, 3H), 7.47(t, 1H, J=6.0Hz), 6.83 (t, 1H, J=6.6Hz), 6.76(t, 1H, J=11.7Hz), 6.65 (d, 1H, J=1.7Hz), 6.45(t, 1H, J=8.6Hz), 6.21 (d, 1H, J=1.7Hz), 5.63 (d, 1H, J=10.0Hz) , 4.09 (d, 3H, J=4.6Hz)
【0095】
合成実施例12(金属錯体化合物30の合成)
合成実施例11に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物29を合成した。
次いで、100mlナス型フラスコに金属錯体化合物29 0.45mmol(0.3g)とシアン化カリウム4.5mmol(0.292g)及びメタノール40mlを加え、窒素気流下で還流した。生成物をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄し、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 メタノール:塩化メチレン=1:25)で精製し、金属錯体化合物30の黄色粉末を得た(0.113g、収率38%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ8.14 (d, 1H, J=8.6Hz), 7.96-7.95(m, 2H), 7.70 (d, 1H, J=5.2Hz) 7.62-7.59 (m, 2H), 7.42(t, 1H, J=5.7Hz), 6.82-6.79 (m, 2H), 6.67 (d, 1H, J=1.1Hz), 6.49(t, 1H, J=8.6Hz), 6.26 (d, 1H, J=1.7Hz), 5.64 (d, 1H, J=9.5Hz), 4.10 (d, 3H, J=5.2Hz)
【0096】
合成実施例13(金属錯体化合物23の合成)
以下の経路により金属錯体化合物23を合成した。
【化44】
【0097】
(1)t−BupySnの合成
500ml三口フラスコを窒素置換し、2−ジメチルアミノエタノール136mmol(13.8ml)、ヘキサン170mlを入れ、0℃下で1.6Mのn−ブチルリチウム170ml(272mmol)を滴下して加えた。0℃に保ち、15分間攪拌後、4−t−ブチルピリジン68mmol(10ml)のヘキサン30ml溶液を滴下して加え、0℃でさらに1時間攪拌した。その後、−78℃に冷却し、トリメチルスズクロライド154mmol(50g)を滴下して5時間攪拌し、アイスバスをはずし、12時間反応させた。
反応溶液に水を加えて、エーテルで抽出し、溶媒を除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、t−BupySnを得た(23g、収率80%)。
(2)tBuCFpybの合成
100ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム15.8mmol(0.67g)、Bcfb 1.58mmol(0.48g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド0.04mmol(0.029g)、t−BupySn 4.97mmol(2.1g)及びトルエン35mlを加え、24時間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液を加え、30分攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液150mlにて抽出した後、有機層に無水硫酸ナトリウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た褐色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製を行い、tBuCFpybの褐色オイルを得た(0.28g、収率38%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ8.75(s, 1H), 8.65 (d, 2H, J = 5.0Hz), 8.29(s,2H), 7.81 (d, 2H, J = 2.0Hz) , 7.31 (dd, 2H, J = 5.0Hz), 1.40 (s, 18H)
(3)tBuCFpybIrの合成
100mlナスフラスコに、塩化イリジウム水和物2.25mmol(0.67g)、tBuCFpyb 3.15mmol(1.3g)及び2−エトキシエタノール40mlを加え、窒素気流下で14時間還流下で加熱攪拌した。放冷後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄し、オレンジ色固体を得た(0.98g、収率64%)。
(4)金属錯体化合物23の合成
200mlナス型フラスコにtBuCFpybIr 0.72mmol(0.98g)、Fppy 7.26mmol(1.25g)及びグリセリン50mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて15分間加熱還流した。放冷後、水を加えて、生じた沈殿を遠心分離機によりろ過し、ヘキサンにより洗浄した。さらにシリカカラム(展開溶媒 メタノール:ジクロロメタン=1:25)により精製し、金属錯体化合物23を黄色固体として得た(1.19g、収率100%)。
FD-MS m/z=811(811.3 required for C36H33ClF4IrN3)
【0098】
合成実施例14(金属錯体化合物24の合成)
合成実施例13に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物23を合成した。
次いで、100mlナス型フラスコに金属錯体化合物23 1.47mmol(1.19g)とシアン化カリウム14.6mmol(0.955g)及びメタノール50mlを加え、窒素気流下で還流した。生成物をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄し、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)で精製し、金属錯体化合物24の黄色粉末を得た(0.7g、収率60%)。
FD-MS m/z=802 (801.9 required for C37H33F4IrN4)
【0099】
合成実施例15(金属錯体化合物37の合成)
以下の経路により金属錯体化合物37を合成した。
【化45】
【0100】
(1)i−PrpyBrの合成
500ml三口フラスコを窒素置換し、2−ジメチルアミノエタノール100mmol(10.1ml)、ヘキサン100mlを入れ、−10℃下で1.6Mのn−ブチルリチウム125ml(200mmol)を滴下して加えた。−10℃に保ち、1.5時間攪拌後、4−i−プロピルピリジン50mmol(6.5ml)のヘキサン20ml溶液を滴下して加えた。その後、−78℃に冷却し、四臭化炭素125mmol(41.4g)のTHF50ml溶液を滴下して、アイスバスをはずし、15時間反応させた。
反応溶液に水を加えて、塩化メチレンで抽出し、溶媒を除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し、i−PrpyBrを得た(6.0g、収率60%)。
(2)i−PrpySnの合成
300ml三口フラスコを窒素置換し、i−PrpyBr 29.3mmol(5.87g)、THF 110mlを入れ、−78℃下で1.6Mのn−ブチルリチウム20ml(32.9mmol)を滴下して加えた。−78℃で30分攪拌後、トリブチルスズクロライド29.7mmol(8.1ml)を滴下して加えた。その後、アイスバスをはずし、7時間反応させた。反応溶液に水を加えて、塩化メチレンで抽出し、溶媒を除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、i−PrpySnを得た(10.1g、収率63%)。
(3)iPrFpybの合成
100ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム36mmol(1.52g)、Bfb 3.67mmol(1.0g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド0.1mmol(0.07g)、i−PrpySn 11.0mmol(4.52g)及びトルエン40mlを加え、13時間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液を加え、1時間攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液250mlにて抽出した後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た褐色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製を行い、iPrFpybの褐色オイルを得た(0.62g、収率48 %)。
FD-MS m/z=352 (352.4 required for C22H22F2N2)
(4)iPrFpybIrの合成
200mlナスフラスコに、塩化イリジウム水和物3.59mmol(1.07g)、iPrFpyb 3.94mmol(1.39g)及び2−エトキシエタノール50mlを加え、窒素気流下で16時間還流下で加熱攪拌した。放冷後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄し、オレンジ色固体を得た(1.74g、収率79%)。
(5)金属錯体化合物37の合成
200mlナス型フラスコにiPrFpybIr 1.4mmol(1.72g)、Fppy 14.0mmol(2.42g)及びグリセリン50mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて1時間加熱還流した。放冷後、水を加えて、生じた沈殿を遠心分離機によりろ過し、ヘキサンにより洗浄した。さらにシリカカラム(展開溶媒 メタノール:ジクロロメタン=1:25)により精製し、金属錯体化合物37を黄色固体として得た(2.23g、収率100%)。
FD-MS m/z=751 (751.2 required for C33H28ClF3IrN3)
【0101】
合成実施例16(金属錯体化合物38の合成)
合成実施例15に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物37を合成した。
次いで、100mlナス型フラスコに金属錯体化合物37 2.66mmol(1.66g)とシアン化カリウム26.6mmol(1.73g)及びメタノール90mlを加え、窒素気流下で14時間還流した。生成物をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄し、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム)で精製し、金属錯体化合物38の黄色粉末を得た(1.1g、収率89%)。
FD-MS m/z=742 (741.8 required for C34H28F3IrN4)
【0102】
合成実施例17(金属錯体化合物15の合成)
以下の経路により金属錯体化合物15を合成した。
【化46】
【0103】
(1)t−BuFpybの合成
100ml三口フラスコを窒素置換し、塩化リチウム94.5mmol(4.0g)、Bfb 9.45mmol(2.58g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド0.245mmol(0.173g)、t−BupySn 37.8mmol(16.0g)及びトルエン20mlを加え、5日間加熱還流した。
放冷後、飽和フッ素化カリウム水溶液を加え、30分間攪拌した。ろ過により固体を取り除き、塩化メチレン、5%炭酸水素ナトリウム水溶液にて抽出した後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加え脱水した。溶媒を減圧除去した後に得た黄緑色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製を行い、t−BuFpybの淡黄色オイルを得た(0.46g、収率13%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ8.61(d, 2H, J = 5.3 Hz), 8.45 (t, 1H, J = 8.9Hz), 7.72 (d, 2H, J = 0.9 Hz) , 7.26 (dd, 2H, J = 5.3, 1.8Hz), 7.03(t, 1H, JH-F = 10.5Hz), 1.36 (s, 18H)
(2)t−BuFpybIrの合成
100mlナスフラスコに、塩化イリジウム水和物2.25mmol(0.794g)、 t−BuFpyb 3.15mmol(1.2g)及び2−エトキシエタノール50mlを加え、窒素気流下、4時間半還流下で加熱攪拌した。放冷後、生成物をろ過し、ヘキサンで洗浄し、オレンジ色固体を得た(1.34g、収率93%)。
(3)金属錯体化合物15の合成
100mlナス型フラスコに t−BuFpybIr 1.05mmol(1.34g)、Fppy 10.5mmol(1.81g)及びグリセリン50mlを加え、窒素気流下マイクロ波照射にて10分間加熱還流した。放冷後、水を加えて、生じた沈殿を遠心分離機によりろ過し、ヘキサンにより洗浄することにより、金属錯体化合物15をオレンジ色固体として得た(1.29g、収率80%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ10.07(d, 1H, J = 6.3 Hz), 8.09 (s, 2H), 7.98-7.94(m, 2H), 7.56 (dd, 1H, J = 8.6, 5.7 Hz) , 7.52-7.50(m, 1H), 7.42 (d, 2H, J = 6.3 Hz) , 6.84(dd, 2H, J = 6.3, 2.3 Hz), 6.77 (t, 1H, JH-F = 11.7 Hz) , 6.46(td, 1H, J = 8.6, 2.9 Hz), 5.77 (dd, 1H, J = 9.7, 2.9 Hz) , 1.28(s, 18H)
ESI-MS m/z=744.3010 (744.2180 required for [C35H32F3IrN3]+)
【0104】
合成実施例18(金属錯体化合物16の合成)
合成実施例17に示した合成ルートに従い、金属錯体化合物15を合成した。
次いで、500mlナス型フラスコに金属錯体化合物15 1.66mmol(1.29g)とシアン化カリウム16.6mmol(1.08g)及びメタノール100mlを加え、窒素気流下3日間加熱還流した。生成物をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄し、黄色粉末を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 塩化メチレン)で精製し、金属錯体化合物16の黄色粉末を得た(0.46g、収率36%)。
1H-NMR(CDCl3-d):δ10.01(d, 1H, J = 5.2 Hz), 8.10 (d, 2H, J = 1.7Hz), 8.00-7.99(m, 2H), 7.63 (dd, 1H, J = 8.6, 5.2 Hz) , 7.49(d, 2H, J = 6.3Hz), 7.46 (td, 1H, J = 5.6, 3.1 Hz) , 6.82-6.80 (m, 3H) , 6.51(td, 1H, J = 8.7, 2.5 Hz), 5.76 (dd, 1H, J = 9.2, 2.3 Hz) , 1.30(s, 18H)
FT-IR(KBr) : 2112.47cm-1[ν(CN)]
【0105】
以上の合成実施例1〜13、16及び18で合成した金属錯体化合物の紫外吸収スペクトル、及び室温、77Kでの低温発光スペクトルを図1〜45に示す。また、最大発光又は代表的な吸収ピークの波長を表2に示す。
【表2】
【0106】
また、金属錯体化合物3、4、9、29及び15のX線結晶構造解析図を図46〜55に、合成した金属錯体化合物の光物理化学データ(量子収率、励起寿命、輻射及び無輻射速度定数)を表3に、サイクリックボルタンメトリーによる酸化還元電位を表4に示す。
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
合成実施例19(金属錯体化合物29の光学的分割)
合成実施例11で得られた金属錯体化合物29をHPLCにより分取した。カラムには「CHIRALPAK(登録商標)IA」(ダイセル化学工業株式会社製)を用い、展開溶媒はジクロロメタン(流速0.5ml/min)で行った。UV検出波長380nmでのクロマトグラムを図56に示す。図56より、Λ体とΔ体が明瞭に分かれ、分割することができた。
また、光学分割したそれぞれの円二色性(CD)スペクトルを図57に示す。図57において、270nm付近のコットン効果の正負から、破線の錯体がΛ体、実線がΔ体と帰属した。さらに円偏光発光スペクトルを図58に示す。
また、これらの構造を分割する前のラセミ体のX線構造を図59に示す。図59より、金属錯体化合物29は、Λ体及びΔ体の構造が交互に積層した結晶であることがわかった。
【0109】
合成実施例20(金属錯体化合物30の光学的分割)
合成実施例19と同様に、金属錯体化合物30の光学分割で得られたクロマトグラムを図60に示す。
また、光学分割したそれぞれの円二色性(CD)スペクトルを図61に示す。図61において、270nm付近のコットン効果の正負から、破線の錯体がΛ体、実線がΔ体と帰属した。さらに円偏光発光スペクトルを図62に示す。
【0110】
実施例1
金属錯体化合物4を用いて、ガラス基板/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子を作製した。
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後のITO透明電極が形成されている側の面上に、真空蒸着法で正孔輸送層に用いる4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)−トリフェニルアミン(TCTA)を95nmの膜厚で成膜した。次いで発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は1.5:20)をTCTAの正孔輸送層上に真空蒸着法で成膜し、発光層を得た。この発光層の膜厚は30nmとした。続いて、膜厚25nmの上記化合物(B−20)、続いて膜厚5nmのトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を真空蒸着法により成膜した。更に、膜厚1nmのフッ化リチウムを真空蒸着法により成膜し、電子注入層とした。最後に膜厚150nmのアルミニウム(Al)陰極を真空蒸着法により成膜し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を用い、Al電極をマイナス、ITO透明電極をプラスにして直流電圧を印加した。その結果、電圧5V,電流密度0.6mA/cm2にて111cd/m2の発光が得られ、色度座標は(0.29,0.53)、発光効率18.6cd/Aであった。結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図63に示す。
【0111】
【化47】
【0112】
実施例2
実施例1において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は0.4:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図63に示す。
実施例3
実施例1において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は0.8:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図63に示す。
実施例4
実施例1において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は3.0:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図63に示す。
【0113】
実施例5
実施例1において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに、化合物(C−7)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図64に示す。
実施例6
実施例5において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−7)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−7)との質量比は0.8:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図64に示す。
実施例7
実施例5において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−7)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−7)との質量比は3.0:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図64に示す。
【0114】
実施例8
実施例1において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに化合物(C−1)、化合物(B−20)の代わりに下記BCPを用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図65に示す。
【化48】
【0115】
実施例9
実施例8において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−1)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−1)との質量比は0.8:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図65に示す。
素子実施例10
実施例8において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−1)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−1)との質量比は3.0:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図65に示す。
【0116】
実施例11
実施例1において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに、化合物(D−1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図66に示す。
実施例12
実施例1において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに、化合物(C−10)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図67に示す。
【0117】
実施例13
金属錯体化合物4を用いて、ガラス基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子を作製した。
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後のITO透明電極が形成されている側の面上に、真空蒸着法で正孔注入層に用いる下記化合物(F−1)を85nm、正孔輸送層に用いるTCTAを10nmの膜厚で成膜した。次いで発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は1.5:20)をTCTAの正孔輸送層上に真空蒸着法で成膜し、発光層を得た。この発光層の膜厚は30nmとした。続いて、膜厚25nmの(B−20)、続いて膜厚5nmのAlq3を真空蒸着法により成膜した。更に、膜厚1nmのフッ化リチウムを真空蒸着法により成膜し、電子注入層とした。最後に膜厚150nmのAl陰極を真空蒸着法により成膜し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を用い、Al電極をマイナス、ITO透明電極をプラスにして直流電圧を印加した。その結果、電圧7.8V,電流密度0.6mA/cm2にて109cd/m2の発光が得られ、色度座標は(0.31,0.52)、発光効率18.3cd/Aであった。結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図68に示す。
【0118】
【化49】
【0119】
実施例14
実施例13において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は0.8:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図68に示す。
実施例15
実施例13において、発光層に用いる金属錯体化合物4及び化合物(C−3)との混合物の割合を(金属錯体化合物4と化合物(C−3)との質量比は3.0:20)に変えた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図68に示す。
実施例16
実施例13において、発光層に用いる化合物(C−3)の代わりに、化合物(D−1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に評価した結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図69に示す。
【0120】
実施例17
金属錯体化合物4を用いて、ガラス基板/陽極/正孔輸送層/発光層1/発光層2/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子を作製した。
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後のITO透明電極が形成されている側の面上に、真空蒸着法で正孔輸送層に用いるTCTAを85nmの膜厚で成膜した。次いで発光層1に用いる(F−2)及び(C−3)との混合物((F−2)と(C−3)との質量比は0.4:20)をTCTAの正孔輸送層上に真空蒸着法で成膜し、発光層1を得た。この発光層1の膜厚は5nmとした。また発光層2に用いる金属錯体化合物4及び(C−3)との混合物(金属錯体化合物4と(C−3)との質量比は0.4:20)を発光層1上に30nm成膜し、発光層2を得た。続いて、膜厚25nmの(B−20)、続いて膜厚5nmのAlq3を真空蒸着法により成膜した。更に、膜厚1nmのフッ化リチウムを真空蒸着法により成膜し、電子注入層とした。最後に膜厚150nmのAl陰極を真空蒸着法により成膜し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を用い、Al電極をマイナス、ITO透明電極をプラスにして直流電圧を印加した。その結果、電圧8.7V,電流密度1.7mA/cm2にて97cd/m2の発光が得られ、色度座標は(0.35,0.46)、発光効率5.7cd/Aであった。このことから、白色発光であることが確認された。結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図70に示す。
【0121】
【化50】
【0122】
実施例18
実施例17においてさらに高電圧を印加した。その結果、電圧13.9V,電流密度100mA/cm2にて3921cd/m2の発光が得られ、色度座標は(0.32:0.42)、発光効率3.9cd/Aであった。このことから、白色発光であることが確認された。結果を表5に示した。また、ELスペクトルを図70に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
実施例19
実施例1において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0125】
実施例20
実施例2において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0126】
実施例21
実施例3において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0127】
実施例22
実施例4において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0128】
実施例23
実施例5において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0129】
実施例24
実施例6において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0130】
実施例25
実施例7において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0131】
実施例26
実施例8において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0132】
実施例27
実施例9において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0133】
実施例28
実施例10において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0134】
実施例29
実施例11において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0135】
実施例30
実施例12において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0136】
実施例31
実施例13において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0137】
実施例32
実施例14において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0138】
実施例33
実施例15において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0139】
実施例34
実施例16において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表6に示す。
【0140】
【表6】
【0141】
実施例35
実施例1において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物10とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図71に示す。
【0142】
実施例36
実施例35において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0143】
実施例37
実施例13において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物10とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図72に示す。
【0144】
実施例38
実施例37において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0145】
実施例39
実施例1において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図73に示す。
【0146】
実施例40
実施例39において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0147】
実施例41
実施例3において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図74に示す。
【0148】
実施例42
実施例41において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0149】
実施例43
実施例4において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、同様に電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図75に示す。
【0150】
実施例44
実施例43において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0151】
実施例45
実施例13において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図76に示す。
【0152】
実施例46
実施例45において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0153】
実施例47
実施例15において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図77に示す。
【0154】
実施例48
実施例47において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0155】
実施例49
実施例1において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物38とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図78に示す。
【0156】
実施例50
実施例49において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0157】
実施例51
実施例13において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図79に示す。
【0158】
実施例52
実施例51において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0159】
実施例53
実施例14において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図80に示す。
【0160】
実施例54
実施例53において電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0161】
実施例55
実施例1において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図81に示す。
【0162】
実施例56
実施例55において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0163】
実施例57
実施例4において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図82に示す。
【0164】
実施例58
実施例57において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0165】
実施例59
実施例5において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図83に示す。
【0166】
実施例60
実施例59において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0167】
実施例61
実施例6において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図84に示す。
【0168】
実施例62
実施例61において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0169】
実施例63
実施例7において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物16とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図85に示す。
【0170】
実施例64
実施例63において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0171】
実施例65
実施例7において、発光層に用いる錯体を金属錯体化合物24とした以外は同様にして有機EL素子を作製し、電圧、電流密度、輝度、色度座標、発光効率を測定した。その結果を表7に示す。また、ELスペクトルを図86に示す。
【0172】
実施例66
実施例65において、電流密度を0.1mA/cm2、1.0mA/cm2、10mA/cm2とした場合の素子性能を表8に示す。
【0173】
【表7】
【0174】
【表8】
【0175】
表6〜8より、本発明の金属錯体化合物を発光層に用いた有機EL素子は、色度座標が(0.42以下、0.59以下)であり、優れたものでは(0.2以下、0.5以下)であり、より優れたものでは(0.2以下、0.4以下)である。色度座標が(0.2以下、0.5以下)となるものが多いことから、色純度の高い青色領域の発光が得られることが分かる。また、低電圧で高輝度及び高発光効率を得ることもできていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
以上詳細に説明したように、本発明の金属錯体化合物を用いた有機EL素子は、発光効率が高く、短波長の発光で、色純度の高い青色発光が得られ、他の発光化合物と組み合わせて白色発光も可能である。このため、各種表示素子、ディスプレイ、バックライト、照明光源、標識、看板、インテリア等の分野に適用でき、カラーディスプレイの表示素子として適しており、特に有機EL素子用の材料に適している。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】金属錯体化合物3のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図2】金属錯体化合物4のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図3】金属錯体化合物5のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図4】金属錯体化合物6のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図5】金属錯体化合物7のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図6】金属錯体化合物8のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図7】金属錯体化合物9のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図8】金属錯体化合物10のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図9】金属錯体化合物11のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図10】金属錯体化合物12のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図11】金属錯体化合物29のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図12】金属錯体化合物30のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図13】金属錯体化合物24のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図14】金属錯体化合物38のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図15】金属錯体化合物16のUV吸収スペクトルを示す図である。
【図16】金属錯体化合物3の室温発光スペクトルを示す図である。
【図17】金属錯体化合物4の室温発光スペクトルを示す図である。
【図18】金属錯体化合物5の室温発光スペクトルを示す図である。
【図19】金属錯体化合物6の室温発光スペクトルを示す図である。
【図20】金属錯体化合物7の室温発光スペクトルを示す図である。
【図21】金属錯体化合物8の室温発光スペクトルを示す図である。
【図22】金属錯体化合物9の室温発光スペクトルを示す図である。
【図23】金属錯体化合物10の室温発光スペクトルを示す図である。
【図24】金属錯体化合物11の低温発光スペクトルを示す図である。
【図25】金属錯体化合物12の室温発光スペクトルを示す図である。
【図26】金属錯体化合物29の室温発光スペクトルを示す図である。
【図27】金属錯体化合物30の室温発光スペクトルを示す図である。
【図28】金属錯体化合物24の室温発光スペクトルを示す図である。
【図29】金属錯体化合物38の室温発光スペクトルを示す図である。
【図30】金属錯体化合物16の室温発光スペクトルを示す図である。
【図31】金属錯体化合物3の低温発光スペクトルを示す図である。
【図32】金属錯体化合物4の低温発光スペクトルを示す図である。
【図33】金属錯体化合物5の低温発光スペクトルを示す図である。
【図34】金属錯体化合物6の低温発光スペクトルを示す図である。
【図35】金属錯体化合物7の低温発光スペクトルを示す図である。
【図36】金属錯体化合物8の低温発光スペクトルを示す図である。
【図37】金属錯体化合物9の低温発光スペクトルを示す図である。
【図38】金属錯体化合物10の低温発光スペクトルを示す図である。
【図39】金属錯体化合物11の低温発光スペクトルを示す図である。
【図40】金属錯体化合物12の低温発光スペクトルを示す図である。
【図41】金属錯体化合物29の低温発光スペクトルを示す図である。
【図42】金属錯体化合物30の低温発光スペクトルを示す図である。
【図43】金属錯体化合物24の低温発光スペクトルを示す図である。
【図44】金属錯体化合物38の低温発光スペクトルを示す図である。
【図45】金属錯体化合物16の低温発光スペクトルを示す図である。
【図46】金属錯体化合物3(1分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図47】金属錯体化合物3(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図48】金属錯体化合物3(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図49】金属錯体化合物4(1分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図50】金属錯体化合物4(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図51】金属錯体化合物4(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図52】金属錯体化合物9のX線結晶構造解析を示す図である。
【図53】金属錯体化合物29のX線結晶構造解析を示す図である。
【図54】金属錯体化合物15(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図55】金属錯体化合物15(2分子)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図56】金属錯体化合物29の、HPLCにおけるUV検出波長380nmでのクロマトグラムを示す図である。
【図57】光学分割した金属錯体化合物29の円二色性(CD)スペクトルを示す図である。
【図58】金属錯体化合物29の円偏光発光スペクトルを示す図である。
【図59】金属錯体化合物29(ラセミ体)のX線結晶構造解析を示す図である。
【図60】金属錯体化合物30の、HPLCにおけるUV検出波長380nmでのクロマトグラムを示す図である。
【図61】光学分割した金属錯体化合物30の円二色性(CD)スペクトルを示す図である。
【図62】金属錯体化合物30の円偏光発光スペクトルを示す図である。
【図63】実施例1〜4の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図64】実施例5〜7の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図65】実施例8〜10の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図66】実施例11の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図67】実施例12の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図68】実施例13〜15の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図69】実施例16の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図70】実施例17〜18の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図71】実施例35の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図72】実施例37の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図73】実施例39の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図74】実施例41の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図75】実施例43の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図76】実施例45の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図77】実施例47の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図78】実施例49の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図79】実施例51の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図80】実施例53の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図81】実施例55の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図82】実施例57の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図83】実施例59の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図84】実施例61の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図85】実施例63の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【図86】実施例65の有機EL素子におけるELスペクトルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有する下記一般式(I)で表される構造を有する金属錯体化合物。
【化1】
(式中、環Aは、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基であり、
環Bは、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、Nは窒素原子、Yは炭素原子又は窒素原子であり、
L及びZは、それぞれ独立に、周期律表第14〜16族のいずれかの原子を含有する有機基であり、
Xは、周期律表第14〜17族のいずれかの原子を含有する一価の配位子であり、
Rは、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルキニル基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基である。nは0〜4の整数であり、nが2以上である場合、それぞれのRは同一でも異なっていてもよく、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
ただし、3座キレート配位子及び/又は2座キレート配位子は電子吸引性基を含有する。)
【請求項2】
前記一般式(I)において、Xがシアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、水素原子、Si(R’)3(R’は前記Rと同様の基を示す。)又は置換フェニル基である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)において、3座キレート配位子及び2座キレート配位子の両方が電子吸引性基を含有する請求項1に記載の金属錯体化合物。
【請求項4】
前記一般式(I)において、電子吸引性基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子含有アルキル基又はエステル基又はアルデヒド基である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【請求項5】
前記一般式(I)において、前記3座キレート配位子が下記一般式(1)又は(2)で表される化合物である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化2】
(式中、環B、Y及びRは、前記と同じ。)
【請求項6】
前記一般式(I)において、前記3座キレート配位子が下記一般式(3)〜(16)のいずれかで表される化合物である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化3】
(式中、R1 〜R23は、それぞれ前記Rと同じであり、またR1 〜R23のうち隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項7】
前記一般式(I)において、L−Zで形成される2座キレート配位子が下記一般式(17)〜(22)のいずれかで表される化合物である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化4】
(式中、R24〜R45は、それぞれ前記Rと同じであり、またR24〜R45のうち隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項8】
下記一般式(I−1)〜(I−12)のいずれかで表される請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化5】
(式中、R46〜R58は、それぞれ前記Rと同じである。l及びl'は0〜2の整数であり、m及びm'は0〜3の整数であり、n、n'、n''及びn'''は0〜4の整数である。l、l'、m、m'、n、n'、n''又はn'''が2以上である場合、R46〜R58のうち2以上となるものはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項9】
下記一般式(I−13)〜(I−24)のいずれかで表される請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化6】
(式中、R46及びR48〜R59は、それぞれ前記Rと同じである。l、l'及びl''は0〜2の整数であり、m及びm'は0〜3の整数であり、n、n'、n''及びn'''は0〜4の整数である。l、l'、l''、m、m'、n、n'、n''又はn'''が2以上である場合、R46及びR48〜R59のうち2以上となるものはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項10】
請求項1に記載の金属錯体化合物からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項11】
一対の電極間に少なくとも発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、請求項1に記載の金属錯体化合物を含有し、両極間に電圧を印加することにより発光する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
発光色が白色である請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記発光層が、前記金属錯体化合物を含有する請求項11又は12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記発光層が、発光性ドーパントを含有する請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記金属錯体化合物を含有する層が、塗布により成膜されてなる請求項11又は12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項1】
2座キレート配位子及び3座キレート配位子を有する下記一般式(I)で表される構造を有する金属錯体化合物。
【化1】
(式中、環Aは、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基であり、
環Bは、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、Nは窒素原子、Yは炭素原子又は窒素原子であり、
L及びZは、それぞれ独立に、周期律表第14〜16族のいずれかの原子を含有する有機基であり、
Xは、周期律表第14〜17族のいずれかの原子を含有する一価の配位子であり、
Rは、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数2〜20の複素環基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜12のアルキニル基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基である。nは0〜4の整数であり、nが2以上である場合、それぞれのRは同一でも異なっていてもよく、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
ただし、3座キレート配位子及び/又は2座キレート配位子は電子吸引性基を含有する。)
【請求項2】
前記一般式(I)において、Xがシアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、水素原子、Si(R’)3(R’は前記Rと同様の基を示す。)又は置換フェニル基である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)において、3座キレート配位子及び2座キレート配位子の両方が電子吸引性基を含有する請求項1に記載の金属錯体化合物。
【請求項4】
前記一般式(I)において、電子吸引性基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子含有アルキル基又はエステル基又はアルデヒド基である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【請求項5】
前記一般式(I)において、前記3座キレート配位子が下記一般式(1)又は(2)で表される化合物である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化2】
(式中、環B、Y及びRは、前記と同じ。)
【請求項6】
前記一般式(I)において、前記3座キレート配位子が下記一般式(3)〜(16)のいずれかで表される化合物である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化3】
(式中、R1 〜R23は、それぞれ前記Rと同じであり、またR1 〜R23のうち隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項7】
前記一般式(I)において、L−Zで形成される2座キレート配位子が下記一般式(17)〜(22)のいずれかで表される化合物である請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化4】
(式中、R24〜R45は、それぞれ前記Rと同じであり、またR24〜R45のうち隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項8】
下記一般式(I−1)〜(I−12)のいずれかで表される請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化5】
(式中、R46〜R58は、それぞれ前記Rと同じである。l及びl'は0〜2の整数であり、m及びm'は0〜3の整数であり、n、n'、n''及びn'''は0〜4の整数である。l、l'、m、m'、n、n'、n''又はn'''が2以上である場合、R46〜R58のうち2以上となるものはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項9】
下記一般式(I−13)〜(I−24)のいずれかで表される請求項1に記載の金属錯体化合物。
【化6】
(式中、R46及びR48〜R59は、それぞれ前記Rと同じである。l、l'及びl''は0〜2の整数であり、m及びm'は0〜3の整数であり、n、n'、n''及びn'''は0〜4の整数である。l、l'、l''、m、m'、n、n'、n''又はn'''が2以上である場合、R46及びR48〜R59のうち2以上となるものはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また、隣接するもの同士で互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項10】
請求項1に記載の金属錯体化合物からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項11】
一対の電極間に少なくとも発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、請求項1に記載の金属錯体化合物を含有し、両極間に電圧を印加することにより発光する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
発光色が白色である請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記発光層が、前記金属錯体化合物を含有する請求項11又は12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記発光層が、発光性ドーパントを含有する請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記金属錯体化合物を含有する層が、塗布により成膜されてなる請求項11又は12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【公開番号】特開2009−57367(P2009−57367A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169417(P2008−169417)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(599011687)学校法人 中央大学 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(599011687)学校法人 中央大学 (110)
【Fターム(参考)】
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