説明

金属除去装置及び混練された材料の金属除去方法

【課題】混練の材料に金属粉が混入しても簡単に材料内の金属粉の除去ができると共に、除去した金属粉の清掃も容易に行うことができるようにする。
【解決手段】バレル2内に材料Mを混練する混練部と混練した材料Mを下流側に送り出す押出部とを備えた混練機に、材料M内の金属粉Fを除去する電磁石26を有する金属除去装置5を設ける。電磁石26(即ち、金属除去装置5)は材料Mを混練機1から外部へ排出する流路23に設けられてもよく、混練機1のバレル2内であって押出部23の下流側に電磁石26を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、混練機に設けられる金属除去装置及び混練された材料の金属除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、混練機にて樹脂などの材料を混練すると、バレルやスクリュが摩耗して混練材料内に金属粉が混入する可能性がある。そこで、混練材料に入った金属粉などを除去する技術として特許文献1に示すものがある。
特許文献1は、異物を含有する熱可塑性樹脂を溶融させ、溶融した熱可塑性樹脂に超臨界流体を添加して、臨界温度以上および臨界圧力以上での混合・混練を行うことにより溶融した熱可塑性樹脂の粘度を低下させ、ついで、フィルターを通してろ過することによって前記異物を除去したのち、樹脂圧力を低下させることにより含浸された超臨界流体を気化させて除去している。
【0003】
また、混練機ではないが樹脂材料内の金属粉を除去する技術として特許文献2に示すものがある。特許文献2は、樹脂をペレットに形成する工程、及び該ペレットを磁気分離機に通す工程を含む金属含有量の少ない樹脂材料の製造法であり、ペレットをマグネットフィルターに通す点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−125975号公報
【特許文献2】特開2004−188598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、金属粉(異物)を除去するために、わざわざ熱可塑性樹脂を溶融した後に溶融した熱可塑性樹脂に超臨界流体を添加し粘度を下げ、さらにフィルターにて濾過しなければならず、装置が多大なものとなる。
特許文献2は、材料をマグネットフィルターに通すことで金属粉を除去するものであるが、マグネットフィルターに付着した金属粉を除去するのが大変であった。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、混練の材料に金属粉が混入しても簡単に材料内の金属粉の除去ができると共に、除去した金属粉の清掃も容易に行うことができる金属除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、バレル内の材料を混練する混練部と混練した材料を下流側に送り出す押出部とを備えた混練機に設けられ、前記材料内の金属粉を除去する電磁石を有する点にある。
前記電磁石は前記材料を混練機から外部へ排出する流路に設けられていることが好ましい。
【0008】
前記混練機のバレル内であって前記押出部の下流側に設けられていることが好ましい。
前記電磁石に対して流す電流をオン・オフする制御部を備えていることが好ましい。
本発明における課題解決のための他の技術的手段は、混練機によって混練された材料の先端部が電磁石を通過する際に電磁石への電流の印加を開始し、前記材料の尾端部が電磁石を通過する際に電磁石への電流の印加を終了する点にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、混練の材料に金属粉が混入しても簡単に材料内の金属粉の除去ができると共に、除去した金属粉の清掃も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態における混練機に設けられた金属除去装置の概略図である。
【図2】金属除去装置の構成を示した側面図である。
【図3】金属除去装置を正面から見た正面断面図である。
【図4】材料内の金属粉の除去や金属粉の清掃の状態を示したものであって、a)電磁石に電流を流す直前の状態を示し、b)電磁石に電流を流し続けている状態を示し、c)電磁石に電流を流していない状態を示した図である。
【図5】第2実施形態における混練機に設けられた金属除去装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の混練機に設けられた金属除去装置及び混練された材料の金属除去方法について図を基に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の混練機に設けられた金属除去装置を示したものである。なお、以下の説明において、図1の紙面の左側を混練機1の上流側とし、紙面の右側を下流側とする。また、図1の紙面の左右方向を混練機1の軸方向とする。さらに、軸方向に対して垂直な方向を混練機1を説明する際の軸垂直方向という。
【0012】
図1に示すように、混練機1は、空洞状のバレル2と、このバレル2の内部を軸方向に沿って挿通するように設けられた混練スクリュ4とを備えている。
バレル2は、軸方向に沿って長い筒状に形成されており、その内部は断面めがね形状の空洞となっている。バレル2の軸方向の上流側にはバレル2内に材料Mを供給するホッパ7が設けられており、またバレル2の内部には電気ヒーターや加熱した油を用いた加熱装置(図示略)が備えられている。
【0013】
混練スクリュ4は、バレル2の空洞内部内に左右一対設けられている。各混練スクリュ4、4は、軸方向に沿って形成されたスプライン軸8を内部に備えており、このスプライン軸8により貫通状に複数のセグメントを固定する構成とされている。
図1に示すように、混練スクリュ4においては、上流側から下流側にかけて、供給された材料Mを溶融しながら下流側に送る送り部10と、送り部10から送られてきた材料Mを混練する混練部11と、混練部11で混練された材料Mを下流側に送り出す押出部12とが設けられている。
【0014】
送り部10は軸方向に配備された複数のスクリュセグメント13で構成されている。スクリュセグメント13は、軸方向に螺旋状に捩れたスクリュフライト(図示略)を備えており、材料Mを上流側から下流側に送ることができる。
押出部12も、送り部10同様に螺旋状に捩れたスクリュフライトを備えたスクリュセグメント13を軸方向に複数有している。押出部12のスクリュセグメント13は、下流に位置するスクリュセグメント13ほどスクリュピッチが小さくなるように形成されており、下流側に行くほど材料Mの移動速度を低く対流させて材料Mを加圧できるようになっている。
【0015】
混練部11は、上流側に位置する位置するVCMT混練部21(可変クリアランス混練部)と、この可変クリアランス混練部21の下流側に位置するニーディング部20とを備え、これら可変クリアランス部21やニーディング部20によって材料Mの混練が行えるようになっている。
バレル2の下流側(押出部12の下流側)には、当該バレル2内の材料Mを混練機1から外部へ排出する排出口22が設けられ、この排出口22には材料Mをペレタイザ6に導く流路23が設けられている。ペレタイザ6は、材料M(混練材料M)を多数の孔を通過させて所定の大きさに切断し、混練材料Mをペレット等するものである。
【0016】
このような混練機1では、ホッパ7に供給した材料Mを送り部10によって混練部11に送り、この混練部11にて材料Mを混練することができる。混練部11にて混練された材料Mは、下流側の押出部12に送られて押出部12よってさらにペレタイザ6に向けて送られる。ホッパ7に供給された材料Mが押出部12までに達する間での間に、バレル2やスクリュ等の摩耗によって材料M(混練材料M)内に金属粉Fが混入する場合がある。
【0017】
材料M内に混入した金属粉Fを除去するため、本発明では、押出部12の下流側であって排出口22よりも上流側に、言い換えれば、押出部12の下流側の端部とペレタイザ6との間であってバレル2の内部に、金属粉Fを除去するための金属除去装置5が設けられている。
以下、金属除去装置5について詳しく説明する。
【0018】
図2に示すように、金属除去装置5は、電流により磁力を発生する電磁石26と、この電磁石26への電流を制御する制御部27とを備えている。電磁石26は、バレル2内にて長手方向(軸方向)の同一位置にて複数個配置されて支持部材35によりバレル2に固定されている。
図2,3に示すように、詳しくは、複数(例えば、3本)の支持部材35がバレル2の内壁に跨って固定され、各支持部材35はバレル2の円中心にて交差した状態となっている。各支持部材35の開き角度は60°となっている。
【0019】
このような各支持部材35の両端側に電磁石26が設けられ、各支持部材35が交差している部分にも電磁石26が設けられている。ゆえに、各電磁石26は、円弧状のバレル2の内面に沿って周方向に沿って複数個配置され、バレル2の円中心にも1つ配置されている。
図3に示すように、バレル2を正面断面視から見ると、各電磁石26は軸方方向の同一位置にて配置されていて、各電磁石26はバレル2の下端部側から上端部側に向けて一定の間隔で配置されている。言い換えれば、図2,3に示すように、電磁石26は側面断面視でバレル2の上端部から下端部に亘って配置されていて、バレル2の内壁に近くを通る材料M内の金属粉Fを除去することができるようになっている。
【0020】
また、バレル2の径内方向にも電磁石26が配置され、径方向にも複数の電磁石26が配置された状態となっている。そのため、バレル2の中心付近を通る材料M内の金属粉Fを除去することができるようになっている。
各電磁石26は、磁性材料28(例えば、円柱の鉄心)と、鉄心28に巻かれたコイル29と、鉄心28及びコイル29を収納するケース30とを備えている。例えば、ケース30は円筒状とされ、当該軸方向がバレル2の軸方向と同じ向きになるように配置されている。
【0021】
各電磁石26のコイル29同士は、直列又は並列に導線等により接続されていて、導線を介して制御部27から各コイル29に電流が供給される。制御部27は、導線を介してコイル29に電流を流すための電源31と、電源31のオン・オフを行う切換部32(例えば、スイッチ)を備えている。
制御部27のスイッチ32をオンすることにより、コイル29に電流が流れ、鉄心が磁石となり、ケース30に鉄粉等が付着する。制御部27は、材料Mが電磁石26の外周付近(ケース30の外周付近)を通過中にコイル29に流す電流をオフすることができるものである。
【0022】
制御部27の動作、即ち、混練された材料の金属除去方法を説明する。
材料Mの混練を行うにあたっては、まず、材料Mを連続的にホッパ7へ供給し、混練スクリュ4を回転させることによって材料Mを送り部10を介して混練部11へ送る。混練部11ではニーディング部20やVCMT混練部21により材料Mを混練し、押出部12では混練した材料Mを下流側へと送る。
【0023】
図4(a)に示すように、混練した材料Mは押出部12によって連続的に押し出され、最初の材料(材料Mの先端部36)は電磁石26を通過することになる。材料Mの先端部36が電磁石26を通過する直前に、制御部27のスイッチ32を自動又は手動によってオンし、電磁石26への電流の印加を開始する。これにより、電磁石26を通過する材料Mに混入した金属粉Fは当該電磁石26のケース30に付着するため、金属粉Fを材料Mから除去することができる。
【0024】
次に、図4(b)に示すように、材料Mの先端部36が電磁石26を通過して、継続的に材料Mが電磁石26を通過しているとき(混練中期)では、スイッチ32のスイッチ32をオンを継続する。材料Mの混練を連続的に続けると、ケース30の外周面の金属粉Fは次第に増加することになる。
そこで、図4(c)に示すように、所定量の材料Mの混練を終了する直前であって最後の材料M(材料Mの尾端部37)が電磁石26の直前にきたとき(混練末期)では、制御部27のスイッチ32を手動又は自動により切り、電磁石26への電流の印加を終了する(電磁石26の磁力の発生を停止する)。
【0025】
そうすると、ケース30に付着した金属粉Fは、ケース30を通過する材料Mによって拭き取られ、この金属粉Fは材料Mと共に下流側に移動することになり、この材料Mを捨てることによって、ケース30の清掃を簡単に行うことができる。
なお、ケース30の清掃、即ち、金属粉Fの清掃は、混練末期に行わなくてもよく、ケース30の外周面に金属粉Fが溜まってきたときにスイッチ32をオンからオフに切り替えることによって行えばよい。
【0026】
第1実施形態における本発明によれば、バレル2内であって押出部13の下流側に、材料M内の金属粉Fを除去する電磁石26を備えた金属除去装置5が設けられているので、混練の材料Mに金属粉Fが混入しても簡単に材料M内の金属粉Fの除去ができると共に、除去した金属粉Fの清掃も容易に行うことができる。しかも、第1実施形態では、バレル2内に金属除去装置5(電磁石26)が設けられているため、混練機1を含む全体の装置をコンパクトにすることができる。
【0027】
また、材料Mが電磁石26を通過中にコイル29に流す電流をオフする制御部27を備えているため、電磁石26をバレル2から取り出すことを行わなくても材料Mを利用して金属粉Fの清掃を行うことができる。
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態のようにバレル2内に金属除去装置5を設けるのではなく、混練機1の外側の流路23に材料M内の金属を除去する金属除去装置5を設けたものである。なお、混練機1の構成は第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0028】
図5に示すように、本実施形態の金属除去装置5は、流路23の中途部に設けられたハウジング38と、ハウジング38内に支持部材35を介して設けられた電磁石26とを備えている。電磁石26は、材料Mが流れる方向と直交する方向(紙面、左右方向)に所定の間隔で並べられ、各電磁石26は支持部材27によって左右方向に連結されて当該ハウジング38に固定されている。流路23の最下流側にはペレタイザ6が設けられている。金属除去装置5は、出来る限りペレタイザ6に近接することが望ましい。なお、ハウジング38の内部と流路23とは材料Mが通過できるように連通されている。
【0029】
第2実施形態における本発明によれば、材料Mを混練機1から外部へ排出する流路23に金属除去装置5(電磁石26)が設けられているため、材料Mをペレタイザ6にてペレットにする直前まで、材料M内の金属粉を除去することができ、金属粉の除去効率を向上させることができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。金属除去装置5は、既存の混練機に取付可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 混練機
3 バレル
4 混練スクリュ
5 金属除去装置
6 ペレタイザ
7 ホッパ
8 スプライン軸
10 送り部
11 混練部
12 押出部
13 スクリュセグメント
20 ニーディング部
21 混練部
23 流路
26 電磁石
27 制御部
28 磁性材料(鉄心)
29 コイル
30 ケース
31 電源
32 切換部(スイッチ)
36 先端部
37 尾端部
F 金属粉
M 材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル内の材料を混練する混練部と混練した材料を下流側に送り出す押出部とを備えた混練機に設けられ、前記材料内の金属粉を除去する電磁石を有することを特徴とする金属除去装置。
【請求項2】
前記電磁石は前記材料を混練機から外部へ排出する流路に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金属除去装置。
【請求項3】
前記混練機のバレル内であって前記押出部の下流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金属除去装置。
【請求項4】
前記電磁石に対して流す電流をオン・オフする制御部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属除去装置。
【請求項5】
混練機によって混練された材料の先端部が電磁石を通過する際に電磁石への電流の印加を開始し、前記材料の尾端部が電磁石を通過する際に電磁石への電流の印加を終了することを特徴とする混練された材料の金属除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−20414(P2012−20414A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157859(P2010−157859)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】