説明

金属電極格子からなるミラーを備えた共鳴キャビティが設けられているMSMタイプの光検出器

本発明は、入射光を検出し得るよう構成されたMSMタイプの光検出器に関するものであって、支持体(1)上に成膜されるとともに、ファブリペロータイプの共振キャビティの第1ミラーを形成するような、反射手段(2)と;入射光を吸収しない材料から形成された材料層(3)と;入射光を吸収する半導体材料から形成された活性層(4)と;検出した信号を収集する複数の分極電極からなるネットワーク(5)と;を具備している。電極ネットワーク(5)は、活性層の上に配置されるとともに、入射光の波長よりも短い一様間隔でもって配置された互いに平行な複数の導電性ストリップを備えて構成され、電極ネットワーク(5)は、共振キャビティのための第2ミラーを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極ネットワークを有したミラーを備えた共鳴キャビティが設けられているMSMタイプの光検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超高速の光検出器(1psよりも小さな応答時間)は、現在では、非常に高速の光ファイバ遠隔通信(100Gbits/sあるいはこれよりも高速)にとって重要な構成要素である。要求される性能は、高感度であること、および、1.3〜1.55μmという波長帯域において通過帯域が広いこと、である。光検出器のタイプ(PNダイオード、PINダイオード、金属−半導体−金属(MSM)構造)にかかわらず、ターゲット速度は、電極間間隔が短い(100nmよりも短い)ことを必要とし、光の吸収が最小容積で行われることを必要とする。
【0003】
したがって、現存の光検出器は、効率と速度との間において妥協を必要としている。よって、1.55μmという波長において約3μmという特徴的吸収長さを有した固体InGaAs半導体においては、荷電キャリアの移動時間の低減化が、PINダイオードおよびMSM構造における外部量子効率の低減化に対して直接的に関連している。
【0004】
したがって、現存の光リピータが使用された場合、光学的遠隔通信の速度における増大化は、伝送ライン上におけるリピータの数のかなりの増大化を必要とし、そのため、伝送ラインの製造コストがかさむこととなる。
【0005】
超高速のMSM光検出器(数百GHz)は、薄い吸収層と、波長よりも短い電極間間隔と、を有していなければならない。
【0006】
第1の要求は、感度を深刻に制限する。このことは、“High-Speed InGaAs Metal-
Semiconductor-Metal Photo-detectors with Thin Absorption Layers”by W.A. Wohmuth et al., IEEE Photon. Tech. Lett., Vol. 9, N0. 5, 1997, pages 654 to 656という文献に記載されている。
【0007】
第2の要求も、また、感度を深刻に制限する。文献は、この要求に関する2つの観点を記載している。第1は、電極陰影効果であり、第2は、検出器内への光の進入を弱いものとする回折効果である。この主題に関するさらなる情報は、“High-Responsivity InGaAs
MSM Photo-detectors with Semi-Transparent Schottky Contacts”by R.H. Yuang
et al., IEEE Photon. Tech. Lett., Vol. 7, N0. 11, 1995, pages 1333 to 1335という文献に記載されている。
【0008】
研究は、この困難性を克服するため、2つの異なる方向性で行われている。共振キャビティと関連したPIN型のまたはショットキー型のフォトダイオードは、大きな量子効率を維持し得るものの、遮断周波数が、100μm という表面積を有したデバイスの場合には、約100GHzに制限される。この主題に関するさらなる情報は、“Resonant
Cavity-Enhanced (RCE) Photo-detectors”by K. Kishino et al., IEEE J. Quantum
Electron., Vol. 78, N0. 2, 1995, pages 607 to 639 という文献に記載されている。
【0009】
より最近では、伝搬波を有した光検出器が、研究されている。先の構造とは異なり、光線導入が、側面的である。すなわち、光線導入が、荷電キャリアの移動方向に対して垂直である。このような構造は、光学的導波路としておよびTEM電磁波ガイドとして機能し得るよう構成されている。この場合には、容量(帯電定数RC)に基づく制限が、光学的グループの速度と電気的グループの速度との間の不適合に基づく制限によって、代替される。この主題に関するさらなる情報は、“Traveling-Wave Photo-detectors”by K.S.
Giboney et al., IEEE Photon. Tech. Lett., Vol. 4, N0. 12, 1992, pages 1363 to
1365 という文献に記載されている。
【非特許文献1】“High-Speed InGaAs Metal-Semiconductor-MetalPhoto-detectors with Thin Absorption Layers”by W.A. Wohmuth et al., IEEEPhoton. Tech. Lett., Vol. 9, N0. 5, 1997, pages 654 to 656
【非特許文献2】“High-Responsivity InGaAs MSM Photo-detectors withSemi-Transparent Schottky Contacts”by R.H. Yuang et al., IEEE Photon. Tech.Lett., Vol. 7, N0. 11, 1995, pages 1333 to 1335
【非特許文献3】“Resonant Cavity-Enhanced (RCE) Photo-detectors”by K.Kishino et al., IEEE J. Quantum Electron., Vol. 78, N0. 2, 1995, pages 607 to639
【非特許文献4】“Traveling-Wave Photo-detectors”by K.S. Giboney et al.,IEEE Photon. Tech. Lett., Vol. 4, N0. 12, 1992, pages 1363 to 1365
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、小さな活性容積をゆうしたMSM構造内へと共振的に光を集中化することにより、従来技術における様々なデバイスの欠点を克服することが、提案される。共振は、デバイスの底部に位置した高反射率のミラー(例えば、ブラッグミラー)と、表面上における金属製電極ネットワークと、の間におけるファブリペロータイプのものとされる。電極ネットワークの周期は、入射光の波長よりも短いものとされる。電極ネットワーク(ファブリペローキャビティにおける第2ミラー)は、ネットワークの幾何学的パラメータによって制御される。このようにして形成されたキャビティは、2つの部分を備えている。すなわち、内部で光キャリアが形成される薄い吸収製層と、非吸収性層と、を備えている。電極によって収集されるべき光キャリアが通過すべき経路が短いことにより、このデバイスの本来的振舞いが極めて高速であること(1psよりも短い応答時間)が保証され、同時に、入射光との共振結合が、大きな外部量子効率(典型的には、現時点での最良の性能よりも、10倍良好)を保証する。
【0011】
したがって、本発明の目的は、入射光を検出し得るよう構成されたMSMタイプの光検出器であって、支持体の第1面上に成膜されるとともに、ファブリペロータイプの共振キャビティの第1ミラーを形成するような、反射手段と;入射光を吸収しない材料から形成された材料層と;入射光を吸収する半導体材料から形成された活性層と;検出した信号を収集する複数の分極電極からなるネットワークと;を具備し、電極ネットワークが、活性層の上に配置されるとともに、入射光の波長よりも短い一様間隔でもって配置された互いに平行な複数の導電性ストリップを備えて構成され、電極ネットワークが、共振キャビティのための第2ミラーを形成し、この第2ミラーの光学的特性が、複数の導電性ストリップの幾何学的寸法によって決定され、第1ミラーと第2ミラーとの離間距離が、これら2つのミラー間において入射光がファブリペロータイプの共振を起こし得るような距離とされている。
【0012】
第1ミラーを形成している反射手段は、ブラッグミラーから構成することができ、例えば、AlAs層とAlGaAs層との交互積層、あるいは、GaInAsP層とInP層との交互積層、あるいは、AlGaInAs層とAlInAs層との交互積層、あるいは、AlGaAsSb層とAlAsSb層との交互積層、から構成することができる。
【0013】
また、第1ミラーを形成している反射手段は、金属層から構成することができる。好ましくは、第1ミラーを形成している金属層は、入射光に対して、銀表面、あるいは、金表面、あるいは、アルミニウム表面、を呈する。
【0014】
また、第1ミラーを形成している反射手段は、多層誘電体ミラーから構成することができる。
【0015】
入射光を吸収しない材料層は、AlGa1−xAsから形成することができ、活性層は、GaAsから形成することができる。好ましくは、xは、800nmという波長における動作に際しては、0.35とされる。
【0016】
また、1500nmという波長に対しての動作に際しては、入射光を吸収しない材料層は、AlInAsから形成することができ、活性層は、InGaAsから形成することができる。
【0017】
電極ネットワークは、相互噛合した2つの櫛形電極を形成することができる。一変形例においては、電極ネットワークは、互いに隣接配置されかつ浮遊電位とされた導電性ストリップから構成することができる。
【0018】
有利には、導電性ストリップは、銀または金から形成することができる。
【0019】
誘電体材料からなる保護層を、電極ネットワーク上に成膜することができる。例えば、保護層は、二酸化シリコンまたは窒化シリコンから形成することができる。
【0020】
可能であれば、支持体の第2面は、電極を支持し、電極に電界を印加することにより、電気光学効果によって、共振キャビティの共振波長を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
添付図面を参照しつつ、本発明を何ら限定するものではなく単なる例示としての好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことにより、本発明が、より明瞭に理解され、本発明の他の利点や特徴点が、より明瞭となるであろう。
【0022】
本発明が提案する構造は、検出対象をなす光を吸収する半導体材料からなる薄層上に配置された複数の金属製電極からなるネットワークから構成されている。薄層は、下側ミラー上に成膜された透明層の上に成膜されている。本発明は、一次的に、電極ネットワークを通しての、入射波(TE分極、および、TM分極)の部分的透過を使用する。電極ネットワークは、半反射性ミラー(上側ミラー)として機能する。本発明は、二次的に、上側ミラーと下側ミラーとの間における共振を使用する。入射光の大部分は、電極に対して非常に近いところにおいて吸収することができ、活性層の厚さは、50nmとすることができる。
【0023】
電極ネットワーク上に成膜された保護層の存在は、ネットワークパラメータをわずかしか変化させず、また、2つのミラー間の間隔をわずかしか変化させず、よって、本発明において使用される共振の存在に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0024】
デバイスの裏面上に配置された第3電極を使用することにより、表面に対して垂直に電界を印加したときには、電気光学効果を引き起こして、共振波長を変化させることができる。これにより、波長に対して光検出器をチューニングするための手段を提供することができる。
【0025】
図1は、本発明による光検出器の一部を破断して示す斜視図である。光検出器は、GaAs基板(1)をベースとして形成されている。符号(2)は、下側ミラーを示している。この場合、下側ミラー(2)は、ブラッグミラーとされている。このブラッグミラーは、複数の層(21,22)の交互積層によって形成されている。層(21,22)を構成している材料は、共に光を吸収しない材料であるとともに、互いに屈折率が相違する材料である。GaAs基板の場合には、ブラッグミラーは、AlAs層とAlGaAs層との交互積層とすることができる。これら層の厚さは、反射すべき波長範囲の関数として計算される。層(21,22)は、基板(1)上におけるエピタキシャル成長(例えば、分子ジェットによるエピタキシャル成長)によって得ることができる。
【0026】
次なるステップは、下側ミラー(2)上に、層(3)と活性層(4)とをこの順に成膜することである。層(3)をなす材料は、検出すべき光を吸収するものではない。これら層(3,4)も、また、エピタキシャル成長によって成膜することができる。層(3)は、AlGa1−xAsとすることができ、係数(x)は、最適には、0.35として選択される。活性層(4)は、GaAsから形成することができる。活性層(4)は、金または銀またはアルミニウムからなる複数の電極(5)を支持する。複数の電極(5)は、一様間隔の平行ストリップを形成している。これらストリップの幾何学的寸法は、電極ネットワーク(5)と活性層(4)との間の界面のところに上側ミラーを形成するように、選択されている。
【0027】
例えば、約790nmという波長の入射光の場合には、下側ミラーと上側ミラーとの間の離間間隔は、70nmとすることができる。ここで、吸収層の厚さが40nmであり、透明層の厚さが30nmである。電極層ネットワークの周期は、200nmとすることができ、導電性ストリップは、幅が100nmでありかつ厚さが30nmであるものとすることができる。
【0028】
この構造は、従来技術において提案されてきた共振MSM構造とは、相違している。なぜなら、本発明においては、電極どうしを互いに接近させていることにより、もはや光を遮蔽してしまうという欠点を有していないだけでなく、上側ミラーの反射率を制御するという基本的役割をも果たしている。
【0029】
受領した入射光に対しての吸収層内における電磁界の電気的成分の強度を考慮するならば、その吸収が、TE分極におけるキャリアの収集に対して、非常に導電的であることがわかる。それは、吸収が、主に電極間において行われるからであり、これにより、光キャリア収集時間を最小化しているからである。TM分極においては、電磁界は、弱い静電界を有した領域内に配置され、この領域は、光キャリアの高速収集に関して導電的ではない。
【0030】
電極の形状は、図2に示すように、相互噛合タイプのものとすることができる。図2は、本発明による光検出器を示す平面図である。電極ネットワークは、活性層(14)上に配置されている。電極ネットワークは、共通のコンタクト(35)に対して電気的に接続されているとともに第1櫛を形成する複数の平行ストリップ(15)と、共通のコンタクト(45)に対して電気的に接続されているとともに第2櫛を形成する複数の平行ストリップ(25)と、から構成されている。これら2つの櫛形電極は、相互に噛合している。この例においては、電極ネットワークによって被覆された表面は、5μm×5μmである。
【0031】
また、図3は、図2に示す光検出器を符号(10)によって示しているような、平面図である。光検出器(10)は、基板(11)上に形成されている。複数の金属製ストリップ(図2におけるストリップ(15,25))の図示は、省略されている。
【0032】
図3は、コンタクト(35)に対して接続されかつ基板(11)上に成膜された導電性トラック(36)と、コンタクト(45)に対して接続されかつ基板(11)上に成膜された導電性トラック(46)と、を示している。基板(11)は、さらに、金属化領域(12,13)を支持している。これら金属化領域(12,13)は、光検出器(10)と導電性トラック(36,46)とを囲んでいる。第1に、金属製トラック(12,13,46)から構成されたアセンブリと、第2に、金属製トラック(12,13,36)から構成されたアセンブリとは、生成された光電流信号の伝搬のための、制御されたインピーダンスを有した、同一平面的な2つのラインを形成している。
【0033】
電極は、また、仏国特許出願公開第2 803 950号明細書に記載されているように、浮遊電位を有した互いに隣接する複数の導電性ストリップから形成することもできる。
【0034】
図4A〜図4Fは、本発明による光検出器に関し、電極ネットワークと関連コンタクトとの製造を例示している。これら図は、図1と同様の断面図である。
【0035】
図4Aは、基板(51)を示している。基板(51)は、下側ミラー(52)と非吸収性層(53)と活性層(54)とからなる構造体を、支持している。基板がGaAsから形成されている場合には、下側ミラーは、ブラッグミラーとすることができ、このブラッグミラーは、AlAs層とAlGaAs層との交互積層(8対をなす層、あるいは、16対をなす層)とすることができる。非吸収性層は、AlGa1−xAsとすることができ、活性層は、GaAs層とすることができる。活性層(54)上には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる層(60)を、厚さが10nmのものとして、形成した。電子的リソグラフィーによって層(60)内に、活性層(54)にまで到達するような複数の開口を形成した。これら開口は、電極ネットワークを形成するためのものである。したがって、各開口の幅は、100nmとすることができる。
【0036】
その後、金または銀からなる層を、厚さを30nmとして、エッチング済みPMMA層上に成膜した。この金または銀からなる層は、図4Bにおいては、符号(61)によって示されている。層(61)は、残部層(60)上に、および、エッチングによって露出された部分に関しては、活性層(54)をなす部分上に、支持されている。
【0037】
次なるステップは、トリクロロエチレン内へとPMMAを溶解させることによる『リフトオフ(持ち去り)』操作を行うことである。得られた結果が、図4Cに示されている。活性層(54)は、全体的に符号(62)によって示された電極ネットワークを、支持している。
【0038】
次に、樹脂層(70)を、電極ネットワーク(62)を支持している活性層(54)上に成膜する。樹脂層(70)に対して、光学的リソグラフィー操作とエッチング操作とを行うことにより、電極に関連するコンタクトを形成すべき部分において、活性層(54)を露出させる。この様子は、図4Dに示されている。
【0039】
次なるステップは、図4Eに示されている。図4Eは、電極ネットワークと同じ材料から形成されたあるいは他の材料から形成された層(71)を示している。この層(71)は、樹脂層(70)上に成膜されており、また、エッチングによって樹脂層(70)が露出された部分については、活性層(54)上に成膜されている。層(71)は、層(61)(図4B参照)よりも厚いものとされている。
【0040】
次なるステップは、さらなる『リフトオフ(持ち去り)』操作を行うことである。これにより、図4Fに示す構造が得られる。符号(72)は、電極ネットワーク(62)に関連するコンタクトを示している。
【0041】
図5A〜図5Cは、本発明による他の光検出器の製造に関する各ステップを示している。この変形例においては、下側ミラーが、金属層から構成されている。これら図は、図1と同様の断面図である。
【0042】
図5Aは、半導体基板(80)を示している。半導体基板(80)は、停止層(85)と活性層(84)と非吸収性層(83)と下側ミラーをなす金属層(82)とからなる構造体を、支持している。基板(80)がGaAsから形成されている場合には、停止層(85)は、GaInPから形成することができ、活性層(84)は、GaAsから形成することができ、非吸収性層(83)は、AlGa1−xAsとすることができる。金属層(82)は、二重層とすることができ、非吸収性層(83)に対して隣接しているような、銀製の第1下層を有することができる。金属層(82)は、その後の半田付けのために使用されることとなる第2下層を有している。この第2下層は、例えば、金およびゲルマニウム合金から構成することができる。下側ミラーは、さらに、多層誘電体ミラーとすることもできる。
【0043】
図5Bは、支持体(81)に対して固定された先の構造を示している。金属層(82)と、支持体(81)上に成膜された半田付け層(86)と、の間において半田付けを行った。支持体(81)は、使用されているプロセスに適合した任意の材料から形成することができる。
【0044】
基板(80)は、機械的研磨や機械的化学的研磨や化学的研磨によって、停止層(85)に到達する程度にまで、除去される。停止層(85)自体は、選択的化学エッチングによって除去される。これにより、図5Cに示すように、活性層(84)を露出させることができる。
【0045】
電極ネットワークと関連コンタクトとを得るためのその後のプロセスについては、図4A〜図4Fを参照して上述した通りである。
【0046】
本発明によって新規に提案されたMSM構造は、ブラッグミラーと、金からなる金属製の『波長よりも短い』ネットワークと、の間に共振キャビティを備えているものであって、100nm未満の電極間間隔を有した40nm厚さの活性層内において、入射光(0.8μmという波長)の50%以上を吸収するための手段を提供する。よって、効率は、吸収性を1回だけ通過することによって得られる場合よりも、25倍大きなものである。この効率は、銀製ネットワークを使用することにより、また、ブラッグミラーの反射率を改良することにより、また、吸収性層の厚さを増大させることにより、かなり向上させることができる。
【0047】
TE分極において実験的デバイスに関して得られた外部量子効率は、40nm厚さの層内において、15%である。50%以上の効率を得ることの障害となるような技術的困難性が存在しないことは、明らかである。
【0048】
本発明は、また、共振キャビティを使用した任意のタイプの光検出器に関して、適用することができる。複数の金属製電極からなるネットワークは、キャビティにおけるミラーとして、および、検出器の電気分極手段として、使用される。例えば、デバイスは、PINタイプのコネクタとすることができる。このコネクタは、PIN接合を形成するpタイプおよびnタイプの半導体層と、真性領域(ゾーンI)と、からなる積層体を備えている。積層体は、共振キャビティ内に配置される。例えば、ブラッグミラーと、複数の金属製電極からなるネットワークを備えたミラーと、からなる共振キャビティ内に配置される。このネットワークは、また、接合のp層またはn層を分極させるために使用することができる。デバイスは、さらに、ショットキータイプの検出器とすることができる。このデバイスは、ブラッグミラーと、複数の金属製電極からなるネットワークと、の間に介装された非吸収性半導体層から構成することができる。この場合、ネットワークは、キャビティのためのミラーとして、および、電気分極用電極として、および、吸収領域として、機能する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による光検出器を一部を破断して示す斜視図である。
【図2】本発明による光検出器に関し、相互噛合型の変形例を示す平面図である。
【図3】本発明による光検出器に関し、相互噛合型の変形例を示す平面図である。
【図4A】本発明による光検出器に関し、電極ネットワークの製造および関連コンタクトの製造の様子を示す断面図である。
【図4B】本発明による光検出器に関し、電極ネットワークの製造および関連コンタクトの製造の様子を示す断面図である。
【図4C】本発明による光検出器に関し、電極ネットワークの製造および関連コンタクトの製造の様子を示す断面図である。
【図4D】本発明による光検出器に関し、電極ネットワークの製造および関連コンタクトの製造の様子を示す断面図である。
【図4E】本発明による光検出器に関し、電極ネットワークの製造および関連コンタクトの製造の様子を示す断面図である。
【図4F】本発明による光検出器に関し、電極ネットワークの製造および関連コンタクトの製造の様子を示す断面図である。
【図5A】本発明による他の光検出器の製造に関する各ステップを示す断面図である。
【図5B】本発明による他の光検出器の製造に関する各ステップを示す断面図である。
【図5C】本発明による他の光検出器の製造に関する各ステップを示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板(支持体)
2 下側ミラー(第1ミラー、反射手段)
3 材料層
4 活性層
5 電極ネットワーク
51 基板(支持体)
52 下側ミラー(第1ミラー、反射手段)
53 材料層
54 活性層
62 電極ネットワーク
81 基板(支持体)
82 金属層、下側ミラー(第1ミラー、反射手段)
83 材料層
84 活性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を検出し得るよう構成されたMSMタイプの光検出器であって、
支持体(1,51,81)の第1面上に成膜されるとともに、ファブリペロータイプの共振キャビティの第1ミラーを形成するような、反射手段(2,52,82)と;
前記入射光を吸収しない材料から形成された材料層(3,53,83)と;
前記入射光を吸収する半導体材料から形成された活性層(4,54,84)と;
検出した信号を収集する複数の分極電極からなるネットワークと;
を具備し、
前記電極ネットワーク(5,62)が、前記活性層の上に配置されるとともに、前記入射光の波長よりも短い一様間隔でもって配置された互いに平行な複数の導電性ストリップを備えて構成され、
前記電極ネットワーク(5,62)が、前記共振キャビティのための第2ミラーを形成し、
この第2ミラーの光学的特性が、前記複数の導電性ストリップの幾何学的寸法によって決定され、
前記第1ミラーと前記第2ミラーとの離間距離が、これら2つのミラー間において前記入射光がファブリペロータイプの共振を起こし得るような距離とされていることを特徴とする光検出器。
【請求項2】
請求項1記載の光検出器において、
前記第1ミラーを形成している前記反射手段が、ブラッグミラー(2,52)から構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項3】
請求項2記載の光検出器において、
前記ブラッグミラー(2,52)が、AlAs層とAlGaAs層との交互積層、あるいは、GaInAsP層とInP層との交互積層、あるいは、AlGaInAs層とAlInAs層との交互積層、あるいは、AlGaAsSb層とAlAsSb層との交互積層、から構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項4】
請求項1記載の光検出器において、
前記第1ミラーを形成している前記反射手段が、金属層(82)から構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項5】
請求項4記載の光検出器において、
前記第1ミラーを形成している前記金属層(82)が、前記入射光に対して、銀表面、あるいは、金表面、あるいは、アルミニウム表面、を呈していることを特徴とする光検出器。
【請求項6】
請求項1記載の光検出器において、
前記第1ミラーを形成している前記反射手段が、多層誘電体ミラーから構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項7】
請求項1記載の光検出器において、
前記入射光を吸収しない前記材料層(3,53,83)が、AlGa1−xAsから形成され、
前記活性層(4,54,84)が、GaAsから形成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項8】
請求項7記載の光検出器において、
前記xが、0.35とされていることを特徴とする光検出器。
【請求項9】
請求項1記載の光検出器において、
前記入射光を吸収しない前記材料層(3,53,83)が、AlInAsから形成され、
前記活性層(4,54,84)が、InGaAsから形成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項10】
請求項1記載の光検出器において、
前記電極ネットワーク(5,62)が、相互噛合した2つの櫛形電極を形成していることを特徴とする光検出器。
【請求項11】
請求項1記載の光検出器において、
前記電極ネットワーク(5,62)が、互いに隣接配置されかつ浮遊電位とされた前記導電性ストリップから構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項12】
請求項1記載の光検出器において、
前記導電性ストリップが、銀または金またはアルミニウムから形成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項13】
請求項1記載の光検出器において、
誘電体材料からなる保護層が、前記電極ネットワーク上に成膜されていることを特徴とする光検出器。
【請求項14】
請求項13記載の光検出器において、
前記保護層が、二酸化シリコンまたは窒化シリコンから形成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項15】
請求項1記載の光検出器において、
前記支持体の第2面が、電極を支持し、
前記電極に電界を印加することにより、電気光学効果によって、前記共振キャビティの共振波長が変化することを特徴とする光検出器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を検出し得るよう構成されたMSMタイプの光検出器であって、
支持体(1,51,81)の第1面上に成膜されるとともに、ファブリペロータイプの共振キャビティの第1ミラーを形成するような、反射手段(2,52,82)と;
前記入射光を吸収しない材料から形成された材料層(3,53,83)と;
前記入射光を吸収する半導体材料から形成された活性層(4,54,84)と;
検出した信号を収集する複数の分極電極からなるネットワークと;
を具備し、
前記電極ネットワーク(5,62)が、前記活性層の上に配置されるとともに、前記入射光の波長よりも短い一様間隔でもって配置された互いに平行な複数の導電性ストリップを備えて構成され、
前記電極ネットワーク(5,62)が、前記共振キャビティのための第2ミラーを形成し、
このような光検出器において、
検出対象をなす前記入射光が、前記電極ネットワーク(5,62)を通して入射され、
前記第2ミラーの光学的特性が、前記複数の導電性ストリップの幾何学的寸法によって決定され、
前記第1ミラーと前記第2ミラーとの離間距離が、これら2つのミラー間において前記入射光がファブリペロータイプの共振を起こし得るような距離とされていることを特徴とする光検出器。
【請求項2】
請求項1記載の光検出器において、
前記第1ミラーを形成している前記反射手段が、ブラッグミラー(2,52)から構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項3】
請求項2記載の光検出器において、
前記ブラッグミラー(2,52)が、AlAs層とAlGaAs層との交互積層、あるいは、GaInAsP層とInP層との交互積層、あるいは、AlGaInAs層とAlInAs層との交互積層、あるいは、AlGaAsSb層とAlAsSb層との交互積層、から構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項4】
請求項1記載の光検出器において、
前記第1ミラーを形成している前記反射手段が、金属層(82)から構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項5】
請求項4記載の光検出器において、
前記第1ミラーを形成している前記金属層(82)が、前記入射光に対して、銀表面、あるいは、金表面、あるいは、アルミニウム表面、を呈していることを特徴とする光検出器。
【請求項6】
請求項1記載の光検出器において、
前記第1ミラーを形成している前記反射手段が、多層誘電体ミラーから構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項7】
請求項1記載の光検出器において、
前記入射光を吸収しない前記材料層(3,53,83)が、AlGa1−xAsから形成され、
前記活性層(4,54,84)が、GaAsから形成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項8】
請求項7記載の光検出器において、
前記xが、0.35とされていることを特徴とする光検出器。
【請求項9】
請求項1記載の光検出器において、
前記入射光を吸収しない前記材料層(3,53,83)が、AlInAsから形成され、
前記活性層(4,54,84)が、InGaAsから形成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項10】
請求項1記載の光検出器において、
前記電極ネットワーク(5,62)が、相互噛合した2つの櫛形電極を形成していることを特徴とする光検出器。
【請求項11】
請求項1記載の光検出器において、
前記電極ネットワーク(5,62)が、互いに隣接配置されかつ浮遊電位とされた前記導電性ストリップから構成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項12】
請求項1記載の光検出器において、
前記導電性ストリップが、銀または金またはアルミニウムから形成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項13】
請求項1記載の光検出器において、
誘電体材料からなる保護層が、前記電極ネットワーク上に成膜されていることを特徴とする光検出器。
【請求項14】
請求項13記載の光検出器において、
前記保護層が、二酸化シリコンまたは窒化シリコンから形成されていることを特徴とする光検出器。
【請求項15】
請求項1記載の光検出器において、
前記支持体の第2面が、電極を支持し、
前記電極に電界を印加することにより、電気光学効果によって、前記共振キャビティの共振波長が変化することを特徴とする光検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−501638(P2006−501638A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−523876(P2004−523876)
【出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002343
【国際公開番号】WO2004/012275
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】