説明

金属顔料組成物

【課題】水性塗料に使用可能で塗料の貯蔵安定性に優れており、なおかつ塗膜にしたとき密着性、耐薬品性に優れ、色調の低下が少ない金属顔料組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも一種のモリブデン酸アミン塩(a)を含む金属顔料組成物であって、その金属顔料がラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸モノまたはジエステル、ラジカル二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも一種(b−1)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体(b−2)の重合物である樹脂で被覆されていることを特徴とする金属顔料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性メタリック塗料組成物(尚、以下で塗料組成物を単に塗料ということがある。)、又は水性メタリックインキ組成物(尚、以下でインキ組成物を単にインキということがある。)に適した新規な金属顔料組成物に関する。さらに詳しくは塗料顔料又はインキ顔料として使用したとき、色調、密着性、耐薬品性に優れたメタリック塗膜を与え、かつ水性塗料又は水性インキ中での貯蔵安定性に優れた金属顔料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、メタリック塗料用、印刷インキ用、プラスチック練り込み用等に、メタリック感を重視する美粧効果を得る目的でアルミニウム顔料が使用されている。これらの用途において、アルミニウム顔料を用いて得られた塗膜の密着性、耐酸、耐アルカリ性等の耐薬品性を求められる場合がある。
また、近年、塗料分野においては、省資源、無公害化対策として、有機溶剤の使用量の少ない水性塗料への転換の必要性が高まっているが、アルミニウム顔料を含むメタリック塗料においては、未だ、実用可能な水性塗料の例は少ない。
その理由として、アルミニウム顔料が水性塗料中で腐食されて水素ガスを発生しやすいことが挙げられる。これは塗料メーカーにおける塗料化工程や、自動車、家電、工業塗装メーカーにおける塗装工程において、安全上極めて重大な問題である。なお、以下では水性塗料中におけるアルミニウム顔料の腐食に対する安定性を、「貯蔵安定性」と定義する。
【0003】
塗膜の色調、密着性、耐薬品性を維持しつつ、貯蔵安定性を改良すべくこれまで数多くの発明が開示されているが、以下に述べるように残念ながら未だ実用可能な技術は少ない。
特許文献1には、色調低下を防止し、かつ密着性、耐薬品性を発現させるために、アルミニウム顔料を均一で高度に三次元架橋した被覆膜を形成させる方法が提案されているが、貯蔵安定性は不十分である。
特許文献2には、アルミニウム顔料をシロキサン被覆と、該シロキサン被覆に共有結合した3次元架橋した合成樹脂被覆とを形成させる方法が開示されているが、ここでシロキサン被覆に使用されている化合物では顔料への被覆性が劣るため、貯蔵安定性は十分とは言えない。
【0004】
特許文献3では、酸性リン酸エステルによりアルミニウム顔料を被覆する方法が提案されているが、密着性、耐薬品性が不十分である。特許文献4では、アルミニウム顔料をクロム酸で処理する方法が提案されているが、密着性、耐薬品性が不十分であり、六価クロム化合物を使用するため労働衛生面あるいは環境面での問題が大きい等の難点があった。
特許文献5、特許文献6、特許文献7では、アルミニウムフレークの表面にモリブデン酸皮膜を形成させる方法が開示されている。しかしこれらの先行文献に記載の方法においても、密着性、耐薬品性が不十分であり問題である。
【0005】
【特許文献1】国際公開公報WO96/38506
【特許文献2】特公平7−53837号公報
【特許文献3】特公昭60−8057号公報
【特許文献4】特公平1−54386号公報
【特許文献5】特開平6−57171号公報
【特許文献6】特開平7−133440号公報
【特許文献7】特開平9−328629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を排除した新規な金属顔料組成物を提供すること、すなわち、水性塗料や水性インキに配合された場合、塗膜の色調を著しく損なうことなく、優れた密着性、耐薬品性と、貯蔵安定性とを発揮する新規な金属顔料組成物を提供することを目的とする。
本発明は、上記のような従来技術の欠点を克服した金属顔料組成物を提供すること、すなわち水性塗料に使用可能で塗料中の貯蔵安定性に優れており、なおかつ塗膜にしたときの光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの色調低下が少なく、かつ密着性、耐薬品性を有する金属顔料組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来検討されたことのないモリブデン酸アミン塩を含有する金属顔料組成物に樹脂被覆を施すことにより、水性塗料や水性インキの顔料として優れた貯蔵安定性と、優れた色調、密着性、耐薬品性とを兼ね備えた金属顔料組成物を得ることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)少なくとも一種のモリブデン酸アミン塩(a)を含む金属顔料組成物であって、その金属顔料がラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸モノまたはジエステル、ラジカル二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも一種(b−1)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体(b−2)の重合物である樹脂で被覆されていることを特徴とする金属顔料組成物。
(2)金属顔料がアルミニウム粉末である(1)に記載の金属顔料組成物。
【0008】
(3)モリブデン酸アミン塩(a)のアミンが、下記一般式(1)で表されるアミン化合物から選ばれる少なくとも一種である(1)または(2)に記載の金属顔料組成物。
【化1】


(式中、R、RおよびRは同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、ここでRとRは一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR、RおよびRは一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成し、R、R、Rの炭素原子数の合計は2以上であり、nは1から2の数を表す。)
【0009】
(4)モリブデン酸アミン塩が、金属顔料の重量の0.01から10重量%で存在する(1)〜(3)のいずれか一項に記載の金属顔料組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の金属顔料組成物を含むことを特徴とする水性メタリック塗料組成物。
(6)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の金属顔料組成物を含むことを特徴とする水性メタリックインキ組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属顔料組成物は、少なくとも一種以上のモリブデン酸アミン塩(a)と金属顔料を混合させ、さらに、ラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸モノまたはジエステル、ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも一種(b−1)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体(b−2)の重合物である樹脂で被覆することによって得られる。本発明の金属顔料組成物を、水性塗料に用いた場合、塗料の良好な貯蔵安定性と、色調、密着性、耐薬品性に優れた塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、詳細に説明する。
本発明に用いる金属顔料としては、アルミニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、ニッケル、のような卑金属粉末、及びそれらの合金粉末を好ましく用いることができる。特に好適なのはメタリック用顔料として多用されているアルミニウム粉末である。本発明に用いるアルミニウム粉末としては、表面光沢性、白度、光輝性等メタリック用顔料に要求される表面性状、粒径、形状を有するものが適している。形状としては、鱗片状のものが好ましい。例えば、0.01から5μmの範囲の厚さを有し、1から60μmの範囲の長さまたは幅を有するものが好ましい。アスペクト比は、10から250の範囲にあることが好ましい。ここで、アスペクト比とは、鱗片状アルミニウム粉末の平均長径をアルミニウム粉末の平均厚さで割った値である。また、アルミニウム粉末の純度は特に限定するものではないが、塗料用として用いられているものは純度99.5%以上である。アルミニウム粉末は、通常ペースト状態(即ち、アルミニウム粉末と溶剤との混合物)で市販(例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX3100」)されており、これを用いるのが好ましい。
【0012】
本発明に用いるモリブデン酸アミン塩(a)のアミンとしては、下記一般式(1)で表され、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、トリデシルアミン、ステアリルアミンのような直鎖一級アミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、分岐トリデシルアミンのような分岐一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジトリデシルアミン、ジステアリルアミンのような直鎖二級アミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、分岐ジトリデシルアミンのような分岐二級アミン、メチル・ブチルアミン、エチル・ブチルアミン、エチル・ヘキシルアミン、エチル・ラウリルアミン、エチル・ステアリルアミン、イソプロピル・オクチルアミン、イソブチル・2−エチルヘキシルアミンのような非対称二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリトリデシルアミン、トリステアリルアミンような直鎖三級アミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、分岐トリトリデシルアミンのような分岐三級アミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジエチルラウリルアミンのような混合炭化水素基を有する三級アミンなどの他に、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミンなどアルケニル基をもつアミン、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミンのような脂環一級アミン、ベンジルアミン、4−メチルベンジルアミンのような芳香環置換基を持つ一級アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−2−メチルシクロヘキシルアミンのような脂環二級アミン、ジベンジルアミン、ジ−4−メチルベンジルアミンのような芳香環置換基を持つ二級アミン、シクロヘキシル・2−エチルヘ
キシルアミン、シクロヘキシル・ベンジルアミン、ステアリル・ベンジルアミン、2−エチルヘキシル・ベンジルアミンのような非対称二級アミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミンのような脂環三級アミン、トリベンジルアミン、トリ−4−メチルベンジルアミンのような芳香環置換基を持つ三級アミン、モルホリン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−デシルオキシプロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノプロパノールアミン、ブタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−シクロヘキシル−N−メチルアミノエタノール、N−ベンジル−N−プロピルアミノエタノール、またはN−ヒドロキシエチルピロリジン、N−ヒドロキシエチルピペラジン、N−ヒドロキシエチルモルホリン、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N−シクロヘキシル−1,3−プロパンジアミン、N−デシル−1,3−プロパンジアミン、N−イソトリデシル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メトキシフェニルピペラジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、キヌクリジン等もしくはこれらの混合物が例示される。
これらの中で特に好ましい例としては、ステアリルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジオクチルアミン、直鎖または分岐ジトリデシルアミン、ジステアリルアミン、直鎖または分岐トリトリデシルアミン、トリステアリルアミン、モルホリン、3−エトキシプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0013】
【化2】


(式中、R、RおよびRは同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、ここでRとRは一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR、RおよびRは一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成し、R、R、Rの炭素原子数の合計は2以上であり、nは1から2の数を表す。)
モリブデン酸アミン塩の添加量は、金属顔料の重量の0.01から10重量%、好ましくは0.01から5重量%の範囲で使用される。
【0014】
本発明の金属顔料組成物は、少なくとも一種以上のモリブデン酸アミン塩(a)と金属顔料とを混合させ、さらに、ラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸モノまたはジエステル、ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも一種(b−1)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体(b−2)の重合物である樹脂で被覆することにより得られる。
【0015】
本発明に使用されるモリブデン酸アミン塩は、原料金属顔料をボールミルで粉砕する時に添加しても良いし、金属顔料に溶剤を大量に加えたスラリー状態で混合しても良いし、溶剤の量を少なくしたペースト状態で混練しても良い。また、モリブデン酸アミン塩は、金属顔料組成物にそのまま加えても良いし、溶剤で希釈して加えても良い。均一な混合状態を得るためには、モリブデン酸アミン塩を溶剤や鉱油等であらかじめ希釈して加える方が好ましい。希釈に用いる溶剤等は、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ類、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、デカリン等の炭化水素溶剤、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の工業用ガソリン、鉱物油等が挙げられる。
【0016】
本発明のモリブデン酸アミン塩(a)と金属顔料の混合物を調製する際に用いられる金属顔料の溶剤は、親水性溶剤でも疎水性溶剤でもよい。親水性溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ類、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、エチレンプロピレングリコールのグリコール類などが挙げられる。また、疎水性溶剤としては、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、LAWS、HAWS、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。
【0017】
スラリー状態で調製する場合は、金属顔料のスラリー中濃度は1から50重量%、好ましくは10から30重量%の状態で行い、ペースト状態で混練する場合は、金属顔料の濃度は50から95重量%、好ましくは60から85重量%の状態で行う。
モリブデン酸アミン塩は、金属顔料の重量の0.01から10重量%、好ましくは0.01から5重量%添加する。これらは予め溶剤や鉱油に溶解または分散させておいてから添加するのが好ましい。
【0018】
この混合物は10から160℃、好ましくは20から120℃の温度で10分から72時間、好ましくは20分から48時間の範囲で攪拌混合する。溶剤が多い場合は除去し、最終の金属顔料含量を所望の40から90%とする。得られた金属顔料組成物は40℃から120℃、好ましくは50℃から110℃で6時間から3ヶ月間、好ましくは1日から30日間の間エージングさせてもよい。
このようにして得られたモリブデン酸アミン塩を含む金属顔料を、さらに樹脂被覆することにより本願発明の金属顔料組成物が得られる。
【0019】
本発明で成分(b−1)として用いるラジカル重合性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が例示され、その1種または2種以上を混合して使用することができる。使用される量は金属顔料の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、本発明では金属顔料の重量に対して0.01〜10重量%の間であり、更に好ましくは0.1〜5.0重量%である。0.01重量%未満では、金属顔料表面への樹脂層の形成が十分に行われず、本発明の効果である密着性を満足させることができない。また、10重量%を越えて使用する場合は、色調の著しい低下を抑えるという本発明の効果が実現できない。
【0020】
本発明で成分(b−1)として用いるラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸のモノまたはジエステルとしては、2−メタクリロイロキシエチルホスフェート
、ジ−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、トリ−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジ−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、トリ−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシプロピルホスフェート、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネート等が挙げられ、その1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
好ましいものとしてはリン酸モノエステルを挙げることができる。これはリン酸基の持つOH基が2個あるため、より強固に金属顔料表面に固定されるためであると推定される。
より好ましいリン酸モノエステルとして、メタクリロイロキシ基およびアクロイロキシ基を有したモノエステルが挙げられ、例えば、2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、2−アクロイロキシエチルホスフェートが挙げられる。その使用量は、金属顔料の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、本発明では金属顔料の重量に対して0.01〜30重量%の間であり、更に好ましくは0.1〜20重量%である。0.01重量%未満では、金属顔料表面への樹脂層の形成が十分に行われず、本発明の効果である密着性を満足させることができない。また、30重量%を越えて使用する場合は、色調の著しい低下を抑えるという本発明の効果が実現できない。
【0022】
本発明で成分(b−1)として用いるラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤の例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤の例としては、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート等が挙げられる。
【0023】
アルミニウム系カップリング剤の例としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、ジルコアルミネート等が挙げられる。
使用されるラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤の量は、金属顔料の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、本発明では金属顔料の重量に対して0.01〜20重量%の間であり、更に好ましくは0.1〜10重量%である。0.01重量%未満では、金属顔料表面への樹脂層の形成が十分に行われず、本発明の効果である密着性を満足させることができない。また、20重量%を越えて使用する場合は、色調の著しい低下を抑えるという本発明の効果が実現できない。
【0024】
成分(b−1)の添加は40℃〜150℃の温度で加温、攪拌しながら行うことが望ましい。
40℃未満では成分(b−1)の重合温度まで昇温するのに時間を要し、150℃を越えると有機溶剤の蒸気の発火等に対する配慮を充分にしなければならず好ましくない。成分(b−1)の添加終了後、40℃〜150℃の温度で引き続き5分〜10時間程度攪拌を続けることが好ましい。この時間が5分未満では成分(b−1)の有機溶剤中の拡散および金属顔料表面への吸着が不十分となりやすく、10時間を越えても効果の増大はなく時間要するのみで好ましくない。
【0025】
本発明で成分(b−2)として用いるラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体
としては、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールペンタアクリレートモノプロピオネート等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を混合して使用する。
ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体の使用量は、金属顔料の重量に対して0.1〜50重量%の間であり、更に好ましくは、0.2〜40重量%である。0.1重量%未満では、金属顔料表面への樹脂層の形成が十分に行われず、本発明の効果である密着性を満足させることができない。また、50重量%を越えて使用する場合は、耐薬品性の効果の増大が期待できず、また、色調の低下が著しく実用に供し難い。
【0026】
本発明の効果を損なわない範囲で1分子中に重合性二重結合を1個有する単量体を使用することもできる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
重合開始剤は、一般にラジカル発生剤として知られるものであり、その種類は特に制限されない。重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキサイド類、および2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。その使用量は、重合性モノマーの反応速度によってそれぞれ調整されるため特に限定されないが、金属顔料の重量に対して、0.1〜25重量%程度である。
【0028】
成分(b−2)のラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体及び重合開始剤の添加の態様としては、両方を同時に一括で添加する態様、両方を同時に徐々に添加する態様、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体を先に添加後重合開始剤のみを徐々に添加する態様、などの種々の態様をとることができる。
成分(b−2)の添加は、攪拌しながら、加温された状態で添加するのが望ましい。添加する際の温度は、重合が生ずればよく特に限定されないが60℃〜150℃が好ましい。また、重合効率を高めるために窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で添加、重合することが望ましい。
【0029】
成分(b−2)の添加後の重合は、攪拌を連続、もしくは断続的に行い、分散を維持した状態で、60℃〜150℃の温度で引き続き5分〜10時間の間で行うのが望ましい。この時間が5分未満ではラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体同士の重合、および、金属顔料表面に吸着した成分(b−1)への重合が不十分となりやすく、10時間を越えても効果の増大はなく時間を要するのみで好ましくない。
ここにいう重合時間とは、成分(b−2)のラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体と重合開始剤とが反応系中に同時に存在した時点から、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体の未反応物が1%未満になるまでの時間をいう。
また、本発明の金属顔料組成物には、必要に応じて界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、リン酸エステル類、リン酸エステル基を側鎖に有するアクリル系樹脂、ZnDTP(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)を加えてもよい。
【0030】
本発明の金属顔料組成物を含有するメタリック塗料及びメタリックインキは、溶剤型、水性型等、何れの形態でも使用可能である。また、このメタリック塗料及びメタリックインキは主として3つの基本成分、即ち(ア)塗料用樹脂、(イ)金属顔料組成物、(ウ)希釈剤から適宜選択して作製すればよい。
本発明によって得られる金属顔料組成物は、水を主とする媒体中に塗膜形成成分である樹脂類が溶解または分散している水性塗料または水性インキに加えることにより、メタリック水性塗料またはメタリックインキとすることができる。金属顔料組成物は、そのまま水性塗料または水性インキに加えてもよいが、予め溶剤に分散させてから加える方が好ましい。使用する溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
ここで、メタリック塗料及びメタリックインキ用の樹脂とは、水溶性樹脂または水分散性樹脂であって、これらの単独または混合物であってもよい。その種類は目的、用途により千差万別であり、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリエーテル樹脂類、ポリウレタン樹脂類、エポキシ樹脂類、フッ素樹脂類などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし混合して用いてもよい。また、必要に応じて、メラミン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、アクリルディスパージョン、ウレタンディスパージョンなどの樹脂を併用することができる。更には一般的に塗料に加えられる無機顔料、有機顔料、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、ヘテロポリアニオン、リンケイ酸塩、ZnDTP(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)、ニトロパラフィンやその他各種添加剤と組み合わせてもよい。
【0032】
各種添加剤としては、例えば、分散剤、増粘剤、タレ防止剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、界面活性剤、湿潤剤、色分れ防止剤、レベリング剤、スリップ剤、皮張り防止剤、ゲル化防止剤、消泡剤等、その他の有機溶剤、水等、当該分野に於いて通常使用され得るもので、本発明の効果を損なわないものが使用でき、また、本発明の効果を損なわない程度の量であれば、添加しても差し支えない。
塗料及びインキにおける希釈剤としては、水性型の場合は水などが使用でき、溶剤型の場合は、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系化合物、エタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、トリクロロエチレン等の塩素化合物、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類が挙げられ、これらの希釈剤は単独または二種以上混合して使用できる。その組成は塗料用及びインキ用樹脂に対する溶解性、塗膜形成特性、塗装作業性等を考慮して適宜決定すればよい。
【0033】
水性塗料及びインキに使用される本発明の金属顔料組成物は、塗料用樹脂100重量部に対して金属顔料換算で0.1重量部〜300重量部である。特に0.2重量部〜200重量部用いることが好ましい。この金属顔料組成物が金属顔料換算で0.1重量部未満であると、メタリック塗料及びメタリックインキとして必要な金属光沢が不十分であり、また、金属顔料換算で300重量部を越えて用いると、塗料及びインキ中の金属顔料組成物の量が多くなり過ぎて、塗装及び印刷作業性が悪くなり、かつ、塗膜物性も劣り実用的でない。
本発明の金属顔料組成物は自動車用、一般家電用、携帯電話に代表される情報家電用、印刷用に、それぞれ鉄やマグネシウム合金などの金属、あるいはプラスチック等の基材の塗装用、印刷用途に好適に使用でき、高い意匠性を発揮できる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の実施例を示す。なお、以下の記載における%は重量%を示す。
[実施例1]
モリブデン酸ジオクチルアミン塩を、市販のアルミペースト(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX−3100(平均粒径10.5μm、不揮発分74%)」)135gに、モリブデン酸ジオクチルアミン塩がペースト原料中アルミニウム粉末の重量の0.3%となるように添加し、70℃で6時間攪拌した。
上記で得られたアルミニウム顔料組成物68gを、容積1リットルの四つ口フラスコに入れ、ミネラルスピリット350gを加え、窒素ガスを導入しながら撹拌し、系内の温度を70℃に昇温した。次いで、アクリル酸0.5gを添加し70℃で30分撹拌を続けた。
【0035】
次にトリメチロールプロパントリメタクリレート3.5gと、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gと2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1.5gをミネラルスピリット40gに溶解させ、その溶液を定量ポンプにより約0.26g/min.の速度で3時間かけて添加し、その後系内の温度を70℃に保ちながら合計6時間重合した。この時点でサンプリングしたろ液中のトリメチロールプロパントリメタアクリレートの未反応量をガスクロマトグラフィで分析したところ、添加量の99%以上が反応していた。重合終了後、ろ過し、目的とするアルミニウム顔料組成物を得た。このアルミニウム顔料組成物の不揮発分は、65重量%であった。
【0036】
[実施例2]
実施例1で用いたトリメチロールプロパントリメタクリレート3.5gとジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gの代わりにトリメチロールプロパントリメタクリレート5.0gを用いたこと以外は実施例1と同様にして行い、目的とするアルミニウム顔料組成物を得た。このアルミニウム顔料組成物の不揮発分は、65重量%であった。
[実施例3]
実施例1で用いたジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gの代わりにジ−ペンタエリスリトールヘキサアクリレート1.5gを用いたこと以外は実施例1と同様にして行い、目的とするアルミニウム顔料組成物を得た。このアルミニウム顔料組成物の不揮発分は、65重量%であった。
【0037】
[実施例4]
実施例1で用いたトリメチロールプロパントリメタクリレート3.5gとジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gの代わりにトリメチロールプロパントリメタクリレート3.0g、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.5gを用いたこと以外は実施例1と同様にして行い、目的とするアルミニウム顔料組成物を得た。このアルミニウム顔料組成物の不揮発分は、65重量%であった。
[実施例5]
実施例1のアクリル酸0.5gを2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(大八化学製、MR−200)0.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、目的とするアルミニウム顔料組成物を得た。このアルミニウム顔料組成物の不揮発分は、65重量%であった。
【0038】
[実施例6]
容積1リットルの四つ口フラスコに、実施例1で得たアルミニウム顔料組成物80gおよび2−プロピルアルコール360gを加え、窒素ガスを導入しながら攪拌し、系内の温度を70℃に昇温した。次いで、ビニルトリメトキシシラン4gと精製水4gを加え、5時間攪拌した。次にスラリーをろ過し、ミネラルスピリットでよく洗浄した。このようにして得られたアルミニウム顔料組成物68gとミネラルスピリット350gを加え、窒素ガスを導入しながら撹拌し、系内の温度を70℃に昇温した。
次にトリメチロールプロパントリメタクリレート3.5gと、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gと2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1.5gをミネラルスピリット40gに溶解させ、その溶液を定量ポンプにより約0.26g/min.の速度で3時間かけて添加し、その後系内の温度を70℃に保ちながら合計6時間重合した。
重合終了後、ろ過し、目的とするアルミニウム顔料組成物を得た。このアルミニウム顔料組成物の不揮発分は、65重量%であった。
【0039】
[実施例7]
実施例1で用いたトリメチロールプロパントリメタクリレート3.5gを0.5gに、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gを0.25gにそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、目的とするアルミニウム顔料組成物を得た。このアルミニウム顔
料組成物の不揮発分は、65重量%であった。
[実施例8]
モリブデン酸ジステアリルアミン塩を、市販のアルミペースト(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX−3100(平均粒径10.5μm、不揮発分74%)」)135gに、モリブデン酸ジイソトリデシルアミン塩がペースト原料中アルミニウム粉末の重量の0.6%となるように添加し、40℃で12時間攪拌した。
その後の樹脂被覆処理は、実施例1記載の方法と同様にして行い、目的とするアルミニウム顔料組成物を得た。このアルミニウム顔料組成物の不揮発分は、65重量%であった。
【0040】
[比較例1]
実施例1記載の方法でモリブデン酸アミン塩を含有するアルミニウム顔料組成物を得た。その後の樹脂被覆処理を行わなかった。
[比較例2]
モリブデン酸アミン塩を含有しないアルミペースト(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX−3100(平均粒径10.5μm、不揮発分74%)」)を実施例1記載の方法で樹脂被覆処理を行った。このアルミニウム顔料組成物の不揮発分は、65重量%であった。
【0041】
[評価1(貯蔵安定性評価)]
実施例1から8、及び比較例1から2で得られたアルミニウム顔料組成物に対し、下記の組成で水性メタリック塗料を作製した。
アルミニウム顔料組成物(実施例1から8、比較例1から2):
アルミニウム分として 8g
エチレングリコールモノブチルエーテル: 32g
水溶性アクリル樹脂: 200g
(オリジン電気株式会社製、商品名「水性プラミーズ#300」)
作製した水性メタリック塗料を用いて、貯蔵安定性の評価を次のように行った。
上記水性メタリック塗料200gをフラスコに採取し、40℃の恒温水槽で120時間まで加温し、その間の水素ガス累積発生量を観察した。ガスの発生量に応じて下記のように評価し、塗料中のアルミニウム顔料組成物の貯蔵安定性の指標とした。
○:1.0ml未満
△:1.0以上5.0ml未満
×:5.0ml以上
【0042】
[評価2(塗膜の密着性、耐薬品性、色調の評価)]
実施例1から8、及び比較例1から2で得られたアルミニウム顔料組成物に対し、下記
の組成でメタリック塗料を作製した。
アルミニウム顔料組成物(実施例1から8、比較例1から2):
アルミニウム分として 5g
シンナー: 50g
(武蔵塗料株式会社製、商品名「プラエースシンナー No.2726」)
アクリル樹脂: 33g
(武蔵塗料株式会社製、商品名「プラエース No.7160」)
エアスプレー装置を用いて上記塗料をABS樹脂板に乾燥膜厚が10μmになるように塗装し、60℃のオーブンで30分乾燥し、評価用塗板を得た。
【0043】
上記の評価用塗板を用いて、密着性、耐薬品性、塗膜の色調(光沢保持率)の評価を次のように行った。
<塗膜の密着性>
上記で作成した塗板を用い、セロテープ(登録商標:ニチバン(株)製、CT−24)を塗膜に密着させ、45度の角度で引っ張り、アルミニウム顔料粒子の剥離度合いを目視で観察した。観察結果に応じて、下記のように評価した。
△:やや剥離あり
×:剥離あり
【0044】
<耐薬品性>
上記で作製した塗板の下半分を0.1N−NaOH水溶液を入れたビーカーに浸漬し、55℃で4時間放置した。試験後の塗板を水洗、乾燥したのち、浸漬部と未浸漬部を、JIS−Z−8722(1982)の条件d(8−d法)により測色し、JIS−Z−8730(1980)の6.3.2により色差ΔEを求める。色差ΔEの値に応じて、下記のように評価した。(値が小さいほど良好。)
△:1.0以上〜2.0未満
×:2.0以上
【0045】
<光沢保持率>
光沢計(スガ試験機(株)製、デジタル変角光沢計UGV−5D)を用いて60度光沢(入射角、反射角とも60度)を測定する。上記で作製した塗板の60度光沢の測定値をG’、未処理のフレーク状アルミニウム粉末を用いて上記[評価2]におけると同様に作製した塗板の60度光沢の測定値をGとし、光沢保持率Rを下式によって求める。
光沢保持率Rの値に応じて、下記のように評価した。(数値が大きいほど良好。実用上70以上が好ましい。)
◎:90以上
○:90未満〜80以上
×:70未満
評価1、2の結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の金属顔料組成物は、水性塗料や水性インキに使用可能で塗料の貯蔵安定性に優れており、なおかつ塗膜にしたときの密着性、耐薬品性に優れ、色調の低下が少ないので、自動車、家電等用の塗料として利用性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のモリブデン酸アミン塩(a)を含む金属顔料組成物であって、その金属顔料がラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸モノまたはジエステル、ラジカル二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも一種(b−1)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体(b−2)の重合物である樹脂で被覆されていることを特徴とする金属顔料組成物。
【請求項2】
金属顔料がアルミニウム粉末である請求項1に記載の金属顔料組成物。
【請求項3】
モリブデン酸アミン塩(a)のアミンが、下記一般式(1)で表されるアミン化合物から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載の金属顔料組成物。
【化1】


(式中、R、RおよびRは同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、ここでRとRは一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR、RおよびRは一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成し、R、R、Rの炭素原子数の合計は2以上であり、nは1から2の数を表す。)
【請求項4】
モリブデン酸アミン塩が、金属顔料の重量の0.01から10重量%で存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属顔料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属顔料組成物を含むことを特徴とする水性メタリック塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属顔料組成物を含むことを特徴とする水性メタリックインキ組成物。

【公開番号】特開2008−201821(P2008−201821A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35932(P2007−35932)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】