説明

金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物およびライナー付金属PPキャップ

【課題】 射出成形性が良く、ワックスフロート現象を発生せず、130℃で30分間のレトルト殺菌に耐える耐熱性と耐衝撃性をもち、熱変形,熱収縮に起因する漏洩、落下に起因する漏洩もなく、かつ開栓性も良好なライナー付金属PPキャップの提供。
【解決手段】(イ)230℃で荷重が21.18Nにおけるメルトフローレート(MFR)が0である水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーを30〜40重量%(ロ)ポリプロピレン系樹脂を10〜20重量%(ハ)流動パラフィンを40〜60重量%(ニ)(i)シリコーンオイルおよび(ii)アミドワックスよりなる滑剤を(イ)、(ロ)、(ハ)の合計量100重量部に対して3〜15重量部を含有しライナー材の125℃、50%圧縮時の圧縮応力緩和指数〔=(B÷A)×100;30分後の応力値をB、初期応力値をA〕が70以上である金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物、とくに耐熱性金属PP(ピルファープルーフ)キャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物およびそれを用いたライナー付金属PPキャップに関するものであり、より詳しくは、内容物を熱間充填密封後、130℃で30分間のレトルト殺菌に耐え得ると共に、保管、取り扱い時の落下に起因する漏洩も解消され、開栓時の開栓性も良好な耐熱性金属PPキャップ用ライナーおよび該ライナー付金属PPキャップに関する。PPはpilfer proofの略称であり、これは一度キャップを開栓して開封したら、もう一度再栓したとしても開封したことが外観上明らかなものとなっており、誰れでも第3者がいたずらで封をあけたことが明らかになる構造を指すものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金板製キャップ(以下アルミキャップと略記することがある)の内面側にオレフィン樹脂系のライナーを設けたPPキャップは、衛生的特性と密封性能とに優れた容器蓋として広く使用されているが、瓶詰め後の加熱殺菌のような熱処理を行う場合には、熱変形又は熱収縮に起因する漏洩が問題となっている。
【0003】
この問題を解決しようとするものとして特許文献1には(i)水素添加スチレン/ブタジエンブロック共重合体、(ii)流動パラフィン、(iii)プロピレン系樹脂よりなるブレンド物を、容器蓋のライナーとして使用することが提案されている。
【0004】
この(i)水素添加スチレン/ブタジエンブロック共重合体、(ii)流動パラフィン、(iii)プロピレン系樹脂よりなるブレンド物は、内容物を95℃で熱間充填後、90℃の熱湯で、3分間シャワー処理するような場合には加熱殺菌に耐え得るものの、130℃で30分間のレトルト殺菌を必要とするような場合には未だかなりの頻度で漏洩を生じることがわかった。この理由は未だ十分に明らかでないが、使用された水素添加スチレン/ブタジエンブロック共重合体が、比較的耐熱性に優れているとしても、上述した130℃という高温領域では圧縮永久歪や永久伸びが大きいため、容器口部と容器蓋との間に無視し得ない熱変形乃至熱収縮によるズレを生じ、密封部に微少な間隙を生じるためと思われる。
【0005】
また、特許文献2では、前記特許文献1記載の重合体組成物は、流動パラフィンの配合量が20〜80重量%と大きな幅があり、流動パラフィンの配合量が多い時には樹脂組成物の成形加工性はよいもののワックスフロート(ライナー材から流動パラフィンと見られる油状物質が分離し、内容液の表面に液滴状に浮いたり、油膜を形成すること)を生じる場合があり、流動パラフィンの配合量が少ないと成形加工性に問題が生ずるので、その対応策を提案している。
【0006】
特許文献2記載の発明では、前記特許文献1の水素添加スチレン/ブタジエンブロック共重合体のかわりに水素添加スチレン/イソプレン共重合体を用いるとともに、前記特許文献1のプロピレン系樹脂の代りに、メルトフローレート〔230℃、21.18N(2.16kgf)荷重〕が0.1〜100g/10分の結晶性ポリプロピレン樹脂またはメルトフローレート〔190℃、21.18N(2.16kgf)荷重〕が0.1〜50g/10分、密度0.940g/cm以上のポリエチレン樹脂を併用することにより解決を計っている。
たしかに、この方法により前記特許文献1のワックスフロートの問題は解消し、しかも90℃の熱水シャワーで3分間の殺菌処理には充分耐えられるが、この樹脂組成物を用いたライナーは、125℃で30分間の殺菌条件を要求されている用途には使用することができない。また特許文献2記載の発明とほぼ同一の発明として特許文献3記載の発明があるが、この発明においても、130℃で30分間の殺菌条件に耐えられるようなライナーは得られていない。
【0007】
これらの問題点を解決するため、本出願人は先に特許文献4におて、前記特許文献2の発明における水素添加スチレン/共役ジエン系ブロック共重合体のうち、230℃の加熱時において流動しないという特異な性質をもつものを選択使用することおよび前記流動性を示さない水素添加スチレン/共役ジエン系ブロック共重合体を含む樹脂組成物に良好な押出成形性を与えるために、流動パラフィンとポリプロピレン系樹脂の他にさらにシリコーンオイルと特定範囲の平均粒径をもつ微粉末タルクを組み合せることにより、前記課題を一挙に解決できることを見出しているが、この樹脂組成物は押出成形によるライナーの製造を意図したものであり、射出成形によるライナーの製造を意図したものではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開平2−57569号公報
【特許文献2】特開平11−106565号公報
【特許文献3】特開平11−130910号公報
【特許文献4】特開2005−133068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特に射出成形性が良く、ワックスフロート現象を発生せず、かつ内容物が130℃で30分間のレトルト殺菌に耐えるという優れた耐熱性と耐衝撃性をもち、熱変形ないし熱収縮に起因する漏洩も有効に解消され、さらに十分な柔軟性およびゴム弾性を有し保管時や取り扱い時の落下に起因する漏洩も解消され、かつ開栓時の開栓性も良好な金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物およびそれを用いて射出成形することにより得られたライナー付金属PPキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、
(イ)230℃で荷重が21.18N(2.16kgf)におけるメルトフローレート(MFR)が0(すなわち、この条件では流動しない)である水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーを30〜40重量%
(ロ)ポリプロピレン系樹脂を10〜20重量%
(ハ)流動パラフィンを40〜60重量%
(ニ)(i)シリコーンオイルおよび(ii)アミドワックスよりなる滑剤を前記(イ)、(ロ)、(ハ)の合計量100重量部に対して3〜15重量部
を含有する金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物であって、ライナー材用樹脂組成物の125℃における50%圧縮時の圧縮応力緩和指数〔30分経過後の応力値をB、初期の応力値をAとしたとき、(B÷A)×100をもって示す値である〕が70以上であることを特徴とする金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物に関する。
本発明の第2は、ライナー材用樹脂組成物の125℃における50%伸長保持したときの破断時間が10分間以上である請求項1記載の金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物に関する。
本発明の第3は、前記(イ)水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーの5重量%トルエン溶液としたときの30℃における粘度が300〜1000mPa・sである請求項1または2記載の金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物に関する。
本発明の第4は、ライナー材用樹脂組成物のメルトフローレート(230℃で荷重が21.18Nのときのもの)が1〜20である請求項1〜3いずれか記載の金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物に関する。
本発明の第5は、ライナー付金属PPキャップにおいて、前記ライナーが請求項1〜4いずれか記載のライナー材用樹脂組成物であることを特徴とするライナー付金属PPキャップに関する。
【0011】
本発明で用いる(イ)の水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーは、スチレン/イソプレン系共重合体、好ましくはスチレン/イソプレン系ブロック共重合体の水素添加物であり、不活性溶媒中で、水素添加触媒の存在下に水素添加するなど公知の方法により得ることができる。水素化率は95%以上であることが好ましい。
この水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーはメルトフローレート〔230℃、21.18N(2.16kgf)荷重:JIS K7210−1995、表1の試験条件No.14〕が測定できず、流動性がない。すなわち水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーのメルトフローレートは0である。この流動性のない水素添加スチレン/イソプレン系ブロック共重合体を用いることにより、最終的な樹脂組成物にした時、室温では柔軟で、130℃では圧縮応力があまり低下せず、その結果として130℃で30分間の加熱殺菌条件で、熱変形または熱収縮に起因する漏洩(液漏れ)が有効に防止され、さらに保管時、取り扱い時の落下に起因する漏洩もまた有効に防止される。前記の流動性のない水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーは、最終的な樹脂組成物にした時は弾性に富んでいるものの、流動性が無いため加熱溶融押出成形や射出成形をすることができない。
そのため、本発明においては、前記(イ)の水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーに加えて、(ロ)〜(ニ)の成分の配合が不可欠である。
【0012】
水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーの使用量は、30〜40重量%とする必要がある。30重量%を下廻ると樹脂組成物の耐熱性が悪くなり、レトルト殺菌に耐えられない。一方、40重量%を上廻ると樹脂組成物のMFRが小さくなり、射出成形において、ショートショット、バリ等が発生してしまう。
【0013】
また、水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーの5重量%トルエン溶液としたときの粘度は、30℃において300〜1000mPa・sであることが好ましい。300mPa・sを下廻るようになると、125℃で30分間のレトルト殺菌を行った場合、ライナー材用樹脂組成物中における水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーの使用量を40重量%以上にしないと絶えられなくなる恐れが生ずるうえ、射出成形性も悪化する。一方、1000mPa・sを上廻るようになると、レトルト殺菌中に密封部分でクラックが発生し、密封性が劣化する恐れが生ずる。
【0014】
(ロ)のポリプロピレン系樹脂は、プロピレンのホモポリマーやプロピレンを主体とする共重合体などを挙げることができる(1994年1月5日 株式会社産業調査会発行、
実用プラスチック事典 28〜33頁参照)。
通常、前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンのホモ重合体、プロピレン(主成分)とエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。
好ましいポリプロピレン系樹脂は、下記の物性をもつものを用いることができる。
MFR〔230℃、21.18N(2.16kgf)/10分〕
(JIS K7210 表1、No.14の試験条件)
:1〜60、好ましくは5〜40
比 重 :0.89〜0.92、好ましくは0.90〜0.91
硬度(ロックウェル R型)
:80〜120、好ましくは85〜115
熱変形温度〔0.45MPa(メガパスカル)、ASTM D648〕
:100〜150℃、好ましくは105〜145℃
なお、MFRについては、特に5〜40の範囲にあると、樹脂組成物の成形性がよく、またキャップとしての耐衝撃性、落下密封性の点でもすぐれており、とくに好ましい。また、熱変形温度もとくに105℃〜145℃の範囲のものが、キャップの耐熱密封性と耐衝撃性の点からもっとも好ましい。
【0015】
前記ポリプロピレン系樹脂の使用量は、10〜20重量%とすることが必要である。10重量%を下廻ると、樹脂組成物のMFRが小さくなりすぎ、樹脂組成物の流れ特性が悪化し、射出形成性が悪くなり、密封不良の原因を招く、20重量%を上廻ると、耐熱性が悪くなり、レトルト殺菌に耐えられなくなる。
【0016】
(ハ)の流動パラフィンは、比較的軽質の潤滑油留分、たとえばスピンドル油留分を酸(例えば硫酸)洗浄によって精製した炭化水素油である。
この流動パラフィンは、樹脂組成物中40〜60重量%を占めることが必要である。40重量%を下廻ると、樹脂組成物のMFRが小さくなりすぎ、射出成形特性が悪化し、ショートショット、バリ等が発生する。一方、60重量%を上廻ると樹脂組成物の耐熱性が悪くなり、レトルト殺菌に耐えられなくなるおそれがある。
【0017】
(ニ)の滑剤の1成分であるシリコーンオイルとしては、動粘度100〜10000cst(20℃)、とくに100〜1000cst(20℃)のものが好ましく、また具体的シリコーンオイルとしては前記動粘度をもつジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイルなどが好適である。動粘度が100cst(20℃)未満のものは食品衛生上問題があり、10000cst(20℃)を超えると、組成物への混合、分散性が不充分となる。
【0018】
(ニ)の滑剤のもう1つの成分であるアミドワックスは脂肪酸のモノアミドおよび/またはビスアミドである。脂肪酸モノアミドとしてはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド等が挙げられ、脂肪酸ビスアミドとしてはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等が挙げられる。本発明ではこれを単独または複数種類を組み合せて使用する。これを用いることにより、開栓トルクが低下するという効果を招く。
【0019】
前記滑剤の(i)と(ii)の使用割合は、1:1〜3:1が好ましい。
【0020】
滑剤の使用量は、前記(イ)、(ロ)、(ハ)の合計量100重量部に対して3〜15重量部とすることが必要である。3重量部を下廻ると、樹脂組成物と缶胴との摩擦力が大きく、開栓性が悪くなりすぎ適性を欠く。
一方、15重量部以上になると滑剤が樹脂組成物の表面にブリードしてフレーバー特性が悪化するので好ましくない。
【0021】
ライナー材用樹脂組成物は、125℃における50%圧縮時の応力緩和における圧縮応力緩和指数が70以上であることが必要である。70を下廻ると、この樹脂組成物を装着した金属PPキャップで密封したボトルをレトルト殺菌したとき、密封性を保持するための圧縮力が不足し、密封不良をおこすので好ましくない。
【0022】
ライナー材用樹脂組成物の125℃における50%伸長保持したときの破断時間は10分間以上であることが好ましい。破断時間が10分間を下廻る場合には、ライナー材用樹脂組成物を装着した金属PPキャップでボトルを密閉し、レトルト殺菌すると、ライナー材に引っ張り応力がかかり、ライナー材が破断するおそれがある。
【0023】
50%伸長保持したときの破断時間を長くするためには、(イ)の水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーを(ロ)のポリプロピレン系樹脂や(ハ)の流動パラフィン中に充分均一に分散して(この場合、流動パラフィンは軟化剤としてエラストマーに吸収されており、ポリプロピレン系樹脂が分散媒、流動パラフィン含有エラストマーが分散質となっているものと推定される)、分散した粒子の大きさが10μm以下となるようにすることが好ましい。
【0024】
ライナー材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(230℃で荷重が21.18Nのときのもの)は1〜20であることが好ましい。MFRが1を下廻る場合には、ショートショットやバリ等が発生するといったように射出成形性が悪くなり、一方、20を上廻る場合には、樹脂組成物の流動性は良いものの射出成形時にバリが発生しやすくなるので好ましくない。
【0025】
本発明のライナー材用樹脂組成物には必要に応じて酸化防止剤などの各種安定剤、染顔料、充填剤など従来からライナー材用樹脂組成物に配合していた添加剤を使用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物を用いると、(1)レトルト殺菌に充分耐えられること、(2)適度な開栓性を有すること、(3)良好なフレーバー特性(フレーバー特性とは、滑剤がブリードして滑剤の臭気がすることをいう。すなわち、内容物が入っていれば、滑剤の臭気で内容物の臭いが悪くなることを表している。つまり、ブリードしていれば、フレーバーは悪く、ブリードしていなければフレーバーはいいことになる。ブリードしているか否かの外観上の判断については、ケースバイケースであるが、ライナー材表面に析出して外観上認識できる場合や、内容物の表面に油状またはワックス状に浮遊して認識できる場合がある。)をもつこと、(4)射出成形性に優れていること、(5)高い密封性を有すること、という金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物に必要なすべての要件を満たすことができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0028】
実施例1〜7、および比較例1〜9
スチレン/イソプレン系エラストマーA:
230℃、21.18NのMFRが0で、かつ、5wt%トルエン溶液の粘度が
30℃において700mPa・sのもの
スチレン/イソプレン系エラストマーB:
230℃、21.18NのMFRが0で、5wt%トルエン溶液の粘度が
30℃において250mPa・sのもの
スチレン/イソプレン系エラストマーC:
230℃、21.18NのMFRが0で、5wt%トルエン溶液の粘度が
30℃において1100mPa・sのもの
ポリプロピレン系樹脂:230℃、21.18NのMFRが20のものを使用
流動パラフィン:粘度が25℃で68mPa・sのものを使用
滑剤:シリコーンオイルA:350cst/20℃のもの
アミドワックス:エルカ酸アミド
下記表に示す原料を配合した混合物をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、200℃に調整した2軸押出機を通して溶融し、ペレット化したライナー材用樹脂組成物を得た。これを42mm中のアルミキャップに射出成形し、ライナー付金属PPキャップを得た。
【0029】
(1)MFRは、株式会社安田精機製作所製のメルトインデックステスターを用いて、230℃、21.18Nの条件下で測定した値である。
(2)ライナー材用樹脂組成物の分散性
ライナー材用樹脂組成物を230℃で厚さ1mmに圧縮成形し、急冷する。このとき、成形されたシートにクラックが入っているかどうかを調べ、シートの中心部にクラックが入っている場合は分散性が不良と判断した。
(3)フレーバー特性
ライナー材用樹脂組成物を230℃で厚さ1mmに圧縮成形し、急冷する。そのシートを室温で1週間保管し、シート表面にブリードがあるかどうか評価する。ブリードがない場合は良○、ブリードがある場合フレーバー特性は不良×であると評価した。
(4)レトルト殺菌適性
ライナー材用樹脂組成物が装着されたアルミキャップを、90℃の熱水が充填されたスチールボトル缶に巻き締め、これを125℃×30分間のレトルト処理を行い、室温に冷却後、缶内の真空度を測定する。正常範囲(45kPa〜55kPa)の真空度であれば合格○、それ以外は不合格×とした。
(5)開栓性
レトルト殺菌された試験缶の開栓トルクを測定した。開栓トルクの装置は、シンポ産業(株) TNK100B−5、開栓トルクの評価は、充填後、トルクメーターで開栓トルクを測定した。開栓トルクの評価は、キャップ径(本試験ではD=47)の1/4〜1/2の数値に0.098を乗じた値(単位はN・m)が1.2N・m〜2.3N・mである場合を○とし、それ以外を×と表示した。開栓トルクがキャップ径の(1/4)×0.098N・m即ちD×0.024N・m(本試験では1.2N・m)より小さいと衝撃によるキャップのゆるみにより漏洩が発生することがあり、また開栓トルクがキャップ径の1/2×0.098N・m即ちD×0.049N・m(本試験では2.3N・m)より大きいと開けづらくなる。
(6)密封性
レトルト殺菌された試験缶を、キャップ面を下にして15度の傾斜角をつけた鉄板上に高さ20cmおよび30cmから落下させ、それぞれの真空度の低下状態を調べた。
真空度が44kPa以上を保っているものは密封性良好○とし、44kPaを下廻ったものを密封性不良×とした。
(7)ライナー材用樹脂組成物の伸長破断特性
ライナー材用樹脂組成物を230℃で厚さ1mmに圧縮成形し、これをダンベル状に打ち抜き125℃で50%伸長させ、破断するまでの時間を測定した。
(8)ライナー材用樹脂組成物の圧縮応力緩和指数
ライナー材用樹脂組成物を210℃で厚さ2mmに圧縮成形し、これを16mmφに打ち抜き、2枚重ねて試験体とするこの試験体を用いて初期圧縮応力値Aを求める。ついでこの試験体を125℃に設定した引張試験機〔(株)東洋精機製作所 ストログラフVE5D〕により、圧縮ジグを用いて50%圧縮し、30分間保持した後の応力値Bを求め、(B÷A)×100により圧縮応力緩和指数を算出した。
(9)射出成形性
ライナー材用樹脂組成物を射出成形したとき、成功率99.99%以上のものは○、それを下廻るものは×とした。射出成形は本出願人の出願にかかる特開2003−236879号公報の記載に準じて行った。その射出成形条件は下記のとおりである。
a予備加熱工程
あらかじめシェルの所定温度は80〜90℃に加熱できるようにした。
bライナー成形工程
樹脂通路の内壁を所定温度(これは、たとえば、ライナーを形成する合成樹脂がポリエチレン系であれば200℃前後、ポリプロピレン系であれば210℃前後の温度とする)に加熱して、この樹脂通路を通過する合成樹脂材が溶融状態を維持できるようにする。
ライナー成形処理の実施時に、この樹脂通路に溶融状態の合成樹脂材が供給されると、所定の射出圧力(これは、たとえば、約20〜28Mpa前後の圧力とする)を有する合成樹脂材が、前記の空間部に射出される。そして射出された合成樹脂材は、80〜100℃程度までその温度が低下し、離型後も所定のライナーに保たれる。
なお、この実施には前記公報記載のような冷却工程(例えば、冷却用の空気を吹付けるなど)は採用していないが、適宜採用は可能である。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
<評価>
比較例1、2、3、4、5、6、7はライナー材用樹脂組成物のMFRが1〜20の範囲外でインジェクション特性に劣ることを示している。比較例3はライナー材用樹脂組成物の分散性不良によるレトルト殺菌適性及び落下密封性の低下を示している。比較例8は滑剤が3重量部未満であるため開栓性不良を示している。比較例9は滑剤が15重量部以上である為フレーバー特性の不良を示している。また比較例1、4、5、7は応力緩和指数が70未満であるため、レトルト殺菌適性及び落下密封性の低下を示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)230℃で荷重が21.18N(2.16kgf)におけるメルトフローレート(MFR)が0(すなわち、この条件では流動しない)である水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーを30〜40重量%
(ロ)ポリプロピレン系樹脂を10〜20重量%
(ハ)流動パラフィンを40〜60重量%
(ニ)(i)シリコーンオイルおよび(ii)アミドワックスよりなる滑剤を前記(イ)、(ロ)、(ハ)の合計量100重量部に対して3〜15重量部
を含有する金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物であって、ライナー材用樹脂組成物の125℃における50%圧縮時の圧縮応力緩和指数〔30分経過後の応力値をB、初期の応力値をAとしたとき、(B÷A)×100をもって示す値である〕が70以上であることを特徴とする金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物。
【請求項2】
ライナー材用樹脂組成物の125℃における50%伸長保持したときの破断時間が10分間以上である請求項1記載の金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(イ)水素添加スチレン/イソプレン系エラストマーの5重量%トルエン溶液としたときの30℃における粘度が300〜1000mPa・sである請求項1または2記載の金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物。
【請求項4】
ライナー材用樹脂組成物のメルトフローレート(230℃で荷重が21.18Nのときのもの)が1〜20である請求項1〜3いずれか記載の金属PPキャップの射出成形に用いるライナー材用樹脂組成物。
【請求項5】
ライナー付金属PPキャップにおいて、前記ライナーが請求項1〜4いずれか記載のライナー材用樹脂組成物であることを特徴とするライナー付金属PPキャップ。

【公開番号】特開2007−63392(P2007−63392A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250939(P2005−250939)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【出願人】(595044661)株式会社日本化学研究所 (14)
【Fターム(参考)】