説明

鉄皮補強部材の取付構造

【課題】リング状ブロックの溶接接合後における鉄皮補強部材の取り外しが極めて容易であって、リングブロック工法の本来の目的である工程短縮を達成できる鉄皮補強部材の取付構造を提供すること。
【解決手段】炉体の炉頂部から炉底部までを複数のリング状のブロックに分割したブロックで、当該ブロックの鉄皮内側にはステーブクーラと煉瓦、または冷却板と耐火材が施工されているリング状ブロックに、鉛直方向から見てリングの中心を横断するように鉄皮補強部材を取り付ける鉄皮補強部材の取付構造において、鉄皮補強部材の両端部が鉄皮を貫通して鉄皮外側に突出するように鉄皮補強部材を貫通せしめ、当該鉄皮外側に突出した鉄皮補強部材の両端部を鉄皮外側から鉄皮に係止せしめることによって当該鉄皮補強部材をリング状ブロックに固定することを特徴とする鉄皮補強部材の取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄皮補強部材の取付構造に関し、特に炉体の炉頂部から炉底部までを複数のリング状のブロックに分割したブロックで、当該ブロックの鉄皮内側にはステーブクーラと煉瓦、または冷却板と耐火材が施工されているリング状ブロックに対して、鉛直方向から見てリングの中心を横断するように鉄皮補強部材を取り付ける鉄皮補強部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高炉改修に際しては、古くなった高炉(旧高炉)を小片に分割して高炉基礎上から撤去した後に、その基礎上で短冊形の鉄皮を一枚一枚溶接接合して新たな高炉本体を据え付け、その後に炉内に煉瓦積みを実施する工法、換言すると一から新たな高炉を構築する工法を採っていた。また、高炉の新設に際しても前記の高炉改修と同様に、高炉基礎上で鉄皮を一枚一枚溶接接合して新たな高炉本体を据え付け、その後に炉内に煉瓦積みを実施する工法を採っていた。したがって、従来の工法では高炉の新設・改修に非常に長大な期間を要していた。
【0003】
このため、近年においては工期短縮が可能な工法として、いわゆるリングブロック工法が採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。この工法においては、高炉の炉体の炉頂部から炉底部までを複数のリング状のブロックに分割し、各ブロックを高炉基礎とは別の場所(地組場)で一斉に施工を開始する。例えば、ステーブクーラ方式の高炉の場合には、外側から鉄皮、ステーブクーラおよび煉瓦の順に、また、冷却板方式の高炉の場合には、外側から鉄皮、冷却板および耐火材(キャスタブル)の順に各ブロックを施工する。そして、施工された各ブロックを順次ドーリー等の大規模重量物搬送台車を用いて高炉基礎上に搬入し、搬入された各ブロックを順次クレーン等で吊り上げて設置し、ブロック同士が接する部分の鉄皮や配管などを溶接接合して一体化する。
【0004】
ところで、前記したように高炉基礎上に搬入された各ブロックは順次クレーン等で吊り上げられて設置されるが、このブロック吊り上げ時に当該ブロックが変形すると、ステーブクーラ方式の場合には鉄皮の内周壁に予め施工しているステーブクーラの目地が開いてしまい、また冷却板方式の場合には鉄皮の内周壁に予め施工している耐火材が変形したり落下したりして、これらの補修に多くの手間を要するという問題がある。また、方式を問わず各ブロックが変形したまま段積みされると、上下のブロックに肌違いを生じ、ブロックを一体化するための溶接接合ができなくなる問題がある。
【0005】
したがって、従来においては、鉛直方向から見てリングの中心を横断するように鉄皮補強部材を取り付け、各ブロックを高炉基礎上に段積みして溶接接合した後に当該鉄皮補強部材の取り外し作業を行うことによって、ブロック吊り上げ時のブロック変形問題に対処してきた。
すなわち、リングブロック工法は従来の工法と比較すると工期短縮が可能な工法ではあるが、ブロック吊り上げ時のブロック変形問題に対処するために、鉄皮補強部材の取り付け・取り外し作業が新たに必要となって、その分リングブロック工法の利点が損なわれていた。特に、従来においては鉄皮補強部材を鉄皮に直接溶接していたので、鉄皮補強部材の取り外し作業に過大な工数を費やしたのであって、これを改善する技術の開発が喫緊の課題となっていた。
【0006】
この問題を解決する技術として、特許文献1には、棒状の鉄皮補強部材を直接鉄皮に溶接係合すると鉄皮を損傷するおそれがあるので、ステーブクーラを鉄皮に取り付ける金具の炉内側端部に棒状の鉄皮補強部材の端部を係合する鉄皮補強部材の取付方法が開示されている。
しかしながら、当該方法においては鉄皮補強部材の接合部が炉内に設置されるので、鉄皮補強部材を取り外すために作業者がわざわざ炉内に入る必要がある。また、これに伴う作業用の仮足場の設置・解体作業も新たに必要となる。
すなわち、特許文献1に記載の発明は、リングブロック工法で高炉を改修あるいは新設するに際して、各ブロックに取り付ける棒状の鉄皮補強部材を容易に取り除き可能にする高炉炉体ブロックへの鉄皮補強部材の取付方法を提供することを解決課題としているものの、当該方法によっても依然としてリングブロック工法の本来の目的である工程短縮を達成し得なかった。
【特許文献1】特開平10−096004号公報
【特許文献2】特公昭47−1846号公報
【特許文献3】特開2007−63592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決すべき課題は、リング状ブロックの溶接接合後における鉄皮補強部材の取り外しが極めて容易であって、リングブロック工法の本来の目的である工程短縮を確実に達成できる鉄皮補強部材の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく様々な実験的検討および理論的検討を重ねた結果、以下の技術的知見を得た。
(A)前記したように鉄皮補強部材の接合部が炉内に設置されていると、鉄皮補強部材を取り外すために作業者がわざわざ炉内に入ったり、これに伴う作業用の仮足場の設置・解体作業が新たに必要となって、リングブロック工法の本来の目的である工程短縮が阻害されるところ、鉄皮補強部材の両端部が鉄皮を貫通して鉄皮外側に突出するように鉄皮補強部材を貫通せしめ、当該鉄皮外側に突出した鉄皮補強部材の両端部を鉄皮外側から鉄皮に係止するようにすれば、鉄皮補強部材の取り外し作業は鉄皮の外側から行えるので、極めて容易に鉄皮補強部材を取り外せること。
【0009】
(B)このように本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造においては、鉄皮補強部材を取り付ける際には、鉄皮補強部材の両端部が鉄皮を貫通して鉄皮外側に突出するように鉄皮補強部材を貫通せしめ、鉄皮補強部材を取り外す際には、貫通させた鉄皮補強部材を鉄皮外側から引き抜くところ、引き抜き易さの観点からは、鋼線、鋼撚り線、鋼棒、鋼管および型鋼のいずれかの鉄皮補強部材を用いるのが望ましいこと。
【0010】
上記の知見に基づき、本発明者は、リング状ブロックの溶接接合後における鉄皮補強部材の取り外しが極めて容易であって、リングブロック工法の本来の目的である工程短縮を確実に達成できる鉄皮補強部材の取付構造に想到した。その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0011】
(1)炉体の炉頂部から炉底部までを複数のリング状のブロックに分割したブロックで、当該ブロックの鉄皮内側にはステーブクーラと煉瓦、または冷却板と耐火材が施工されているリング状ブロックに、鉛直方向から見てリングの中心を横断するように鉄皮補強部材を取り付ける鉄皮補強部材の取付構造において、鉄皮補強部材の両端部が鉄皮を貫通して鉄皮外側に突出するように鉄皮補強部材を貫通せしめ、当該鉄皮外側に突出した鉄皮補強部材の両端部を鉄皮外側から鉄皮に係止せしめることによって当該鉄皮補強部材をリング状ブロックに固定することを特徴とする鉄皮補強部材の取付構造。
【0012】
(2)前記鉄皮補強部材が、鋼線、鋼撚り線、鋼棒、鋼管および型鋼のいずれかであることを特徴とする前記(1)に記載の鉄皮補強部材の取付構造。
【0013】
(3)2本の鉄皮補強部材を用いた取付構造であって、1本の鉄皮補強部材はリング状ブロックの上端部に配設し、残りの1本の鉄皮補強部材についてはリング状ブロックの下端部に、鉛直方向から見て当該鉄皮補強部材の位相が上端部の鉄皮補強部材の位相と90°ずれるように配設したことを特徴とする前記(1)または(2)記載の鉄皮補強部材の取付構造。
【0014】
(4)4本の鉄皮補強部材を用いた取付構造であって、2本の鉄皮補強部材はリング状ブロックの上端部に、鉛直方向から見て十字交差するように配設し、残りの2本の鉄皮補強部材についてはリング状ブロックの下端部に、鉛直方向から見て十字交差するように、かつ当該十字の位相が上端部の十字の位相と45°ずれるように配設したことを特徴とする前記(1)または(2)記載の鉄皮補強部材の取付構造。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造は、鉄皮補強部材の両端部が鉄皮を貫通して鉄皮外側に突出するように鉄皮補強部材を貫通せしめ、当該鉄皮外側に突出した鉄皮補強部材の両端部を鉄皮外側から鉄皮に係止することによって、当該鉄皮補強部材をリング状ブロックに固定する構造である。
したがって、前記両端部における係止状態を鉄皮外側から解除して、鉄皮外側から鉄皮補強部材を引き抜くという極めて簡単な作業をするだけで、リング状ブロックに固定した鉄皮補強部材を取り外すことができる。
すなわち、本発明によれば、鉄皮補強部材を取り外すために作業者がわざわざ炉内に入る必要がなく、また、これに伴う仮足場を設置したり解体したりする作業も不要であって、リングブロック工法の本来の目的である工程短縮を確実に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜10を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造の一例を示す断面図であり、(a)は側面の断面図、(b)は平面の断面図である。また、図2は、本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造の別の一例を示す断面図であり、(a)は側面の断面図、(b)は平面の断面図である。
図1の例におけるリング状ブロックは、冷却板方式の高炉の炉体を複数のリング状のブロックに分割したブロックであって、当該ブロックの鉄皮1の内側には冷却板5と耐火材10(図示しない)が施工されている。また、図2の例におけるリング状ブロックは、ステーブクーラ方式の高炉の炉体を複数のリング状のブロックに分割したブロックであって、当該ブロックの鉄皮1の内側にはステーブクーラ2と煉瓦11が施工されている。
【0017】
本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造は、図1〜2に例示するように鉄皮補強部材7の両端部が鉄皮1を貫通して鉄皮1の外側に突出するように鉄皮補強部材を貫通せしめる。そして、当該鉄皮1の外側に突出した鉄皮補強部材7の両端部を所定の固定金具24を用いて鉄皮の外側から鉄皮1に係止することによって、当該鉄皮補強部材7をリング状ブロックに固定する。
【0018】
なお、図1〜2においては、鉄皮補強部材7の一方の端部が鉄皮1を貫通して鉄皮1の外側に突出している状態を示しているが、他方の端部についても同様に鉄皮1を貫通して鉄皮1の外側に突出しており、当該端部を所定の固定金具24を用いて鉄皮の外側から鉄皮1に係止する。
また、鉄皮補強部材7を渡すルートとしては、図1(b)、図2(b)に示すように鉛直方向から見てリングの中心を横断するように鉄皮補強部材7を取り付ける。また、図1(a)、図2(a)に示すように水平に鉄皮補強部材7を取り付ける。
【0019】
本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造においては、このように鉄皮1の外側に突出させた鉄皮補強部材7の両端部を、鉄皮1の内側からではなく鉄皮1の外側から鉄皮に係止するので、鉄皮補強部材7の取り外し作業を、鉄皮の外側、すなわち炉外で実施でき、これにより極めて容易に鉄皮補強部材7を取り外すことができる。
【0020】
このように本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造においては、鉄皮補強部材7を取り付ける際には、鉄皮補強部材の両端部が鉄皮を貫通して鉄皮外側に突出するように鉄皮補強部材を貫通せしめ、これを所定の固定金具24を用いて鉄皮の外側から鉄皮1に係止し、鉄皮補強部材を取り外す際には、前記両端部における係止状態を鉄皮1の外側から解除して、貫通させた鉄皮補強部材7を鉄皮1の外側から引き抜いて取り外すところ、鉄皮補強部材7としては、引き抜き易さの観点から鋼線、鋼撚り線、鋼棒、鋼管および型鋼のいずれかを用いるのが望ましい。
【0021】
鉄皮補強部材7として鋼棒、鋼管、型鋼のいずれかを用いる場合には、鉄皮補強部材7の両端部にねじ加工するのが望ましい。これにより、鉄皮補強部材を取り付ける際には、図3に示すように鉄皮外側に突出した鉄皮補強部材の端部に支圧板25を重合し、これを挟むように固定用ナット26を締め付けることにより、鉄皮補強部材7をリング状ブロックに容易に固定できる。また、固定用ナット26を緩めることにより、鉄皮補強部材7を容易に取り外せる。
また、固定用ナットによる締め付け力は、固定用ナット26から支圧板25を介して鉄皮1へ伝えられるので、当該締め付け力を調整することによって鉄皮1の真円度についても保たれる。
【0022】
ここで、図3の例は、鉄皮補強部材の両端部にねじを切り、鉄皮外側に突出した鉄皮補強部材の両方の端部において、支圧板25と固定用ナット26を用いて、鉄皮補強部材7をリング状ブロックに取り付ける例であるが、本発明に係る取付構造はこの形態に限定されるものではない。
例えば、図4に示すように鉄皮補強部材の片方の端部にボルト頭27を形成し、もう片方の端部にねじを切る形態であってもよい。この場合には、ねじを切った側の端部において固定用ナット26を締め付けることとなるが、この場合であっても締め付け力は固定用ナット26から支圧板25を介して鉄皮1へ伝えられるので、当該固定用ナットによる締め付け力を調整することによって鉄皮1の真円度を保つことができる。
【0023】
また、鉄皮補強部材7として鋼線または鋼撚り線を用いる場合には、図5に示すように鋼線または鋼撚り線の両端部に圧着グリップ29を取り付け、鉄皮外側に突出した両端部において、支圧板25、固定用ナット26、アンカーヘッド30を用いてリング状ブロックに固定するのが望ましい。この場合、固定用ナット26を締め付けることにより鉄皮補強部材7をリング状ブロックに容易に固定でき、固定用ナット26を緩めることにより容易に取り外せる。また、固定用ナットを回転させることによりアンカーヘッド30のネジが左右に移動して鋼線または鋼撚り線の張力を調整できるので、当該固定用ナットによる締め付け力を調整することによって鉄皮1の真円度についても保たれる。
【0024】
あるいは、鉄皮補強部材7として鋼線または鋼撚り線を用いる場合には、図6に示すように鋼線または鋼撚り線の片方の端部側については、例えば、支圧板25、アンカーヘッド30、くさび(ウェッジ)31を用いて固定にして、もう片方の端部側には支圧板25を介して油圧ジャッキ28を設置してもよい。この場合には、締め付け力は油圧ジャッキ28の作動で支圧板25を介して鉄皮1に伝えられるので、当該油圧ジャッキ28による締め付け力を調整することによって鉄皮1の真円度についても保たれる。
【0025】
以上の様に、本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造においては、鉄皮1の外側に突出させた鉄皮補強部材7の両端部を、鉄皮1の内側からではなく鉄皮1の外側から鉄皮に係止するので、鉄皮補強部材7の取り外し作業を、鉄皮の外側、すなわち炉外で実施でき、これにより極めて容易に鉄皮補強部材7を取り外すことができる。特に、鉄皮補強部材7として鋼線または鋼撚り線を用いる場合には、鉄皮外側からこれらを引き抜くという極めて簡単な作業をするだけで、リング状ブロックに固定した鉄皮補強部材を取り外すことができるので、リングブロック工法の本来の目的である工程短縮を確実に達成することができる。
【0026】
次に、使用する鉄皮補強部材7の本数とその取付位置について説明する。
図7は、リング状ブロックの吊り上げ時に発生するブロックの変形現象を説明する模式図である。本発明者は、図7(a)に示すように鉄皮補強部材を設置していないリング状ブロックを不均等配置の4点の吊り点21で吊り上げた場合、ブロックの上端部は図7(b)に示すようにX軸方向に長径に変形し、ブロックの下端部については図7(c)に示すようにY軸方向に長径に変形するという技術的知見を得た。
なお、ここで言うX軸方向とは、不均等配置の4点の吊り点21を長方形の角と見立てた場合に短辺と平行する方向を言い、Y軸方向については長辺と平行する方向、すなわち、X軸と直行する方向を言う。
【0027】
当該知見から、リング状ブロックを不均等配置の4点の吊り点21で吊り上げる場合には、少なくとも2本の鉄皮補強部材7を用いることによって、ブロックの変形を防止できることが導かれる。すなわち、鉄皮補強部材を設置しない場合、ブロックの上端部はX軸方向に長径に変形することから、当該変形を防止するために、ブロックの上端部にこの方向に1本の鉄皮補強部材7を配設することが望ましい。一方、鉄皮補強部材を設置しない場合、ブロックの下端部はY軸方向に長径に変形することから、当該変形を防止するために、ブロックの下端部にこの方向に1本の鉄皮補強部材7を配設することが望ましい。すなわち、図8に示すようにブロックの上端部にはX軸方向に1本の鉄皮補強部材7を配設し、ブロックの下端部には鉛直方向から見て上端部の鉄皮補強部材の位相と90°ずれるように1本の鉄皮補強部材7を配設することが望ましい。これによりブロック全体の変形を防止でき、鉄皮の真円度を保つことができる。
【0028】
なお、図8の例は2本の鉄皮補強部材を用いた例であるが、本発明はこれ以上の本数の鉄皮補強部材を用いることを妨げるものではない。
また、同図はブロックの上端部と下端部に鉄皮補強部材を配設した例であるが、本発明は上端部と下端部の間に鉄皮補強部材を配設することを妨げるものではない。
さらに、同図は互いに直交するX軸方向とY軸方向に鉄皮補強部材を配設した例であるが、本発明はこれ以外の方向に鉄皮補強部材を配設することを妨げるものではない。例えば、吊り点の数や配置等の変更によってブロックの変形方向が変わることが予測される場合には、予測される変形方向に鉄皮補強部材を配設することにより、当該ブロックの変形を防止することができる。
【0029】
例えば、図7〜8の例は吊り点の配置が鉛直方向から見て長方形である不均等配置の例であるが、図9(a)に示すように鉄皮補強部材を設置していないリング状ブロックを、吊り点の配置が鉛直方向から見て正方形である均等配置の4点の吊り点21で吊り上げた場合、ブロックは図9(b)に示すように変形する。
したがって、この場合には、図10に示すように4本の鉄皮補強部材を配設するのが望ましい。より具体的には、ブロックの上端部には鉛直方向から見て十字交差するようにX方向とY方向にそれぞれ1本の鉄皮補強部材7を配設することが望ましい。そして、ブロックの下端部についても鉛直方向から見て十字交差する2本の鉄皮補強部材7を配設することが望ましく、特に当該十字の位相が上端部の十字の位相と45°ずれるように配設することが望ましい。これによりブロック全体の変形を防止でき、鉄皮の真円度を保つことができる。
なお、ここで言うX軸方向とは、均等配置の4点の吊り点21を正方形の角と見立てた場合に正方形の一辺と平行する方向を言い、Y軸方向についてはX軸と直行する方向を言う。
【0030】
また、図10の例は4本の鉄皮補強部材を用いた例であるが、本発明はこれ以上の本数の鉄皮補強部材を用いることを妨げるものではない。
また、同図はブロックの上端部と下端部に鉄皮補強部材を配設した例であるが、本発明は上端部と下端部の間に鉄皮補強部材を配設することを妨げるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造の一例を示す断面図であり、(a)は側面の断面図、(b)は平面の断面図である。
【図2】本発明に係る鉄皮補強部材の取付構造の別の一例を示す断面図であり、(a)は側面の断面図、(b)は平面の断面図である。
【図3】鉄皮補強部材の端部とこれを係止する固定金具の一例を示す模式図である。
【図4】鉄皮補強部材の端部とこれを係止する固定金具の一例を示す模式図である。
【図5】鉄皮補強部材の端部とこれを係止する固定金具の一例を示す模式図である。
【図6】鉄皮補強部材の端部とこれを係止する固定金具の一例を示す模式図である。
【図7】ブロック吊り上げ時の変形現象を説明する模式図であり、(a)は吊り点、(b)はブロック上端部の変形例、(c)はブロック下端部の変形例を示す模式図である。
【図8】鉄皮補強部材の取付位置の一例を示す模式図である。
【図9】ブロック吊り上げ時の変形現象を説明する模式図であり、(a)は吊り点、(b)はブロックの変形例を示す模式図である。
【図10】鉄皮補強部材の取付位置の別の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0032】
1 鉄皮 2 ステーブクーラ
5 冷却板 6 ステーブ取付金具
7 鉄皮補強部材 10 耐火材(キャスタブル)
11 煉瓦 21 吊り点
22 鉄皮補強部材取付板 23 冷却板ハウジング
24 鉄皮補強部材固定金具 25 支圧板
26 固定用ナット 27 ボルト頭
28 油圧ジャッキ 29 圧着グリップ
30 アンカーヘッド 31 くさび(ウェッジ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体の炉頂部から炉底部までを複数のリング状のブロックに分割したブロックで、当該ブロックの鉄皮内側にはステーブクーラと煉瓦、または冷却板と耐火材が施工されているリング状ブロックに、鉛直方向から見てリングの中心を横断するように鉄皮補強部材を取り付ける鉄皮補強部材の取付構造において、
鉄皮補強部材の両端部が鉄皮を貫通して鉄皮外側に突出するように鉄皮補強部材を貫通せしめ、当該鉄皮外側に突出した鉄皮補強部材の両端部を鉄皮外側から鉄皮に係止せしめることによって当該鉄皮補強部材をリング状ブロックに固定することを特徴とする鉄皮補強部材の取付構造。

【請求項2】
前記鉄皮補強部材が、鋼線、鋼撚り線、鋼棒、鋼管および型鋼のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の鉄皮補強部材の取付構造。

【請求項3】
2本の鉄皮補強部材を用いた取付構造であって、
1本の鉄皮補強部材はリング状ブロックの上端部に配設し、
残りの1本の鉄皮補強部材についてはリング状ブロックの下端部に、鉛直方向から見て当該鉄皮補強部材の位相が上端部の鉄皮補強部材の位相と90°ずれるように配設したことを特徴とする請求項1または2記載の鉄皮補強部材の取付構造。

【請求項4】
4本の鉄皮補強部材を用いた取付構造であって、
2本の鉄皮補強部材はリング状ブロックの上端部に、鉛直方向から見て十字交差するように配設し、
残りの2本の鉄皮補強部材についてはリング状ブロックの下端部に、鉛直方向から見て十字交差するように、かつ当該十字の位相が上端部の十字の位相と45°ずれるように配設したことを特徴とする請求項1または2記載の鉄皮補強部材の取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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