鉄筋ガス圧接部の測定具
【課題】ガス圧接された鉄筋の圧接部の膨らみの高さ及び圧接面のずれ量を測定できる測定具を提供する。
【解決手段】第1目盛13及び第2目盛14が付された第1定規部11と、先端に鉄筋5の胴部51に当接する第1当接部15が形成された第2定規部12とを有する測定具本体1と、第3目盛21が付され、測定具本体に対してX軸方向及び支点22aを中心にした回転方向に移動可能に装着され、鉄筋の胴部に当接する第2当接部23が形成された第2スライド定規板3が装着された第1スライド定規板2と、第4目盛41が付され、測定具本体に対してX軸方向及びY軸方向に移動可能に装着され、その先端に鉄筋の圧接部に当接する第3当接部42が形成された第3スライド定規板4とを備える。
【解決手段】第1目盛13及び第2目盛14が付された第1定規部11と、先端に鉄筋5の胴部51に当接する第1当接部15が形成された第2定規部12とを有する測定具本体1と、第3目盛21が付され、測定具本体に対してX軸方向及び支点22aを中心にした回転方向に移動可能に装着され、鉄筋の胴部に当接する第2当接部23が形成された第2スライド定規板3が装着された第1スライド定規板2と、第4目盛41が付され、測定具本体に対してX軸方向及びY軸方向に移動可能に装着され、その先端に鉄筋の圧接部に当接する第3当接部42が形成された第3スライド定規板4とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧接された鉄筋の圧接部の、膨らみの軸方向長さ、膨らみの直径、圧接部の軸偏心量、圧接部の軸折れ曲がり角度、膨らみの高さ、圧接面のずれ量及び圧接部の割れの深さ・幅を測定するための測定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス圧接された鉄筋の圧接部の品質を評価するため、圧接部の膨らみの軸方向長さなどを測定するための測定具が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
従来の測定具によれば、膨らみの軸方向長さ、膨らみの直径および圧接部の軸偏心量は測定できるものの、膨らみの高さ、圧接面のずれ量及び圧接部の割れの深さ・幅は測定できない。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−167201号公報
【特許文献2】特開2000−71080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ガス圧接された鉄筋の圧接部の、膨らみの軸方向長さ、膨らみの直径、圧接部の軸偏心量、圧接部の軸折れ曲がり角度、膨らみの高さ及び圧接面のずれ量を測定できる測定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鉄筋ガス圧接部の測定具は、測定具本体と、第1スライド定規板と、第2スライド定規板と、第3スライド定規板とを有する。これに加えて、楔状測定具を備えることもできる。
【0007】
測定具本体は、X軸方向に延在して第1目盛及び第2目盛が付された第1定規部と、X軸に直交するY軸方向に延在してその先端に鉄筋の胴部に当接する第1当接部が形成された第2定規部とを有する。
【0008】
第1スライド定規板は、Y軸方向に延在して第3目盛が付され、測定具本体に対してX軸方向および支点を中心にした回転方向に移動可能に装着され、その先端に、当該第1スライド定規板に対しY軸方向に移動可能であって鉄筋の胴部に当接する第2当接部が形成された第2スライド定規板を有する。
【0009】
第3スライド定規板は、Y軸方向に延在して第4目盛が付され、測定具本体に対してX軸方向及びY軸方向に移動可能に装着され、その先端に鉄筋の圧接部に当接する第3当接部が形成されている。
【0010】
そして、第1目盛は、第1当接部を鉄筋の圧接部の一方端に当接させ、第2当接部を圧接部の他方端に当接させたときの膨らみの軸方向長さ(L)を示す。また、この第1目盛は、第1当接部の端部を鉄筋の圧接部の一方の頂点に当接させ、第2当接部の端部を圧接部の他方の頂点に当接させたときの膨らみの直径(D)を示す。
【0011】
また、第2目盛は、第1当接部を一方の鉄筋の胴部に当接させ、第2当接部を他方の鉄筋の胴部に当接させたときの圧接部の軸折れ曲がり角度(α)を示す。
【0012】
また、第3目盛は、第1当接部を一方の鉄筋の胴部に当接させ、第2当接部を他方の鉄筋の胴部に当接させたときの圧接部の軸偏心量(C)を示す。
【0013】
また、第4目盛は、第1当接部を一方の鉄筋の胴部に当接させ、第3当接部を圧接部の頂点に当接させたときの膨らみの高さ(H)を示す。
【0014】
圧接面のずれ量は、第1当接部を鉄筋の圧接部の一方端に当接させ、第2当接部を圧接部の他方端に当接させて第1目盛により膨らみの軸方向長さ(L)を測定するとともに、第3当接部の端部を圧接部の頂点に当接させたときの第1目盛を読み(L1)、膨らみの軸方向長さの半分(L/2)と第1目盛の読み(L1)との差を計算することにより測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、一つの測定具により、ガス圧接された鉄筋の圧接部の、膨らみの軸方向長さ、膨らみの直径、圧接部の軸偏心量、圧接部の軸折れ曲がり角度、膨らみの高さ及び圧接面のずれ量を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
最初に、本実施形態に係るガス圧接部の測定具(以下、単に測定具ともいう)を用いて測定できる測定項目について説明する。図1〜図5は鉄筋ガス圧接部の測定対象を示す正面図または断面図であり、図1は膨らみの軸方向長さ,膨らみの直径,膨らみの高さ、図2は圧接部の軸偏心量、図3は圧接部の軸折れ曲がり角度、図4は圧接面のずれ量、図5は割れ部の深さ及び幅を示す図である。
【0018】
鉄筋のガス圧接法は、たとえば図1に示すように建築物等で用いられる補強用鉄筋5,5の先端を互いに突き合わせ、軸方向AXに圧縮力を加えながら接合部分を加熱して軟化させることで2本の鉄筋5,5を接合する方法である。接合された圧接部52にはそれぞれの鉄筋先端が軟化してできた、概ね球状をなす膨らみが形成される。この膨らみの形状を測定することで接合強度等が評価される。
【0019】
測定項目には、膨らみの軸方向長さL、膨らみの直径D、膨らみの高さH、圧接部の軸偏心量C、圧接部の軸折れ曲がり角度α、圧接面のずれ量X及び圧接部の割れの深さd・幅Wがある。
【0020】
図1に示すように、圧接部52の膨らみの軸方向の長さLとは、左右の鉄筋5,5の胴部51(鉄筋の円筒状の側面をいう。)と圧接部52の膨らみとの交点の軸方向AXの長さを言い、圧接部52の膨らみの直径Dとは、圧接部52の膨らみの、軸方向AXに直交する方向(以下、圧接部52の径方向RAとも言う。)における直径を言い、圧接部52の膨らみの高さHとは、左右何れか一方の鉄筋5の胴部51と圧接部52の膨らみの頂点53との、径方向RAの長さを言う。
【0021】
また、圧接部52の軸偏心量Cとは、図2に示すように、左右の鉄筋5,5の軸54,54の、圧接部52における径方向RAの長さを言い、圧接部52の軸折れ曲がり角度αとは、図3に示すように、左右の鉄筋5,5の軸の圧接部52における鋭角側の角度を言う。
【0022】
また、圧接面のずれ量Xとは、左右の鉄筋5,5の実際の圧接面55と、膨らみの軸方向長さの中点56との、軸方向AXにおける長さを言う。つまり、目視にて実際の圧接面55を確認する一方で、図1に示した膨らみの軸方向長さの中点56を求め、これらの軸方向のずれ量を測定する。
【0023】
また、圧接部52に生じた割れ部57の幅Wとは、図5に示すように割れ部57の延在方向に対する幅を言い、割れ部57の深さとは、同図に示すように圧接部52の表面58から軸54へ向かう深さを言う。
【0024】
次に、こうした項目の測定を行うことができる本発明の測定具の実施形態を説明する。図6は本発明の実施形態に係る測定具の構成部品を示す正面図、図7Aは図6に示すA部の側面図、図7Bは当該部分の他の実施形態を示す側面図、図8Aは図6に示す楔状測定具を示す正面図、図8Bは背面図である。
【0025】
本実施形態の測定具は接合した鉄筋のガス圧接部を建築現場などで簡単に測定・評価できるものであり、図6に示すように測定具本体1,第1スライド定規板2,第2スライド定規板3,第3スライド定規板4及び楔状測定具6から構成されている。
【0026】
測定具本体1は、同図に示すX軸方向に延在する第1定規部11と、Y軸方向に延在する第2定規部12とが一体に形成された直角状に形成された、たとえば板厚が2mm程度のステンレス板からなるものであり、第1定規部11のX軸方向に沿って長孔16が形成されている。この長孔16は、図9Bの組立状態図に示すように、ボルト7a及びナット7bなどを用いて第1スライド定規板2と第2スライド定規板3とを装着し、またこれら第1スライド定規板2及び第2スライド定規板3をそれぞれ相対的にX軸方向に移動可能にするための孔である。
【0027】
また、第1定規部11の下端左側には、第2定規部12の右端(Y軸に平行とされている。)をゼロとする第1目盛13が付され、この第1目盛13はX軸方向に沿って1mm間隔で目盛られている。また、第1定規部11の右側には、中心線がY軸方向とされ、第1スライド定規板2に付された基準線24が指示する第2目盛14が付されている。
【0028】
この第2目盛14は、図12に示すように、第1スライド定規板2を、ボルト7aの支点22aを中心にして回転させたときの、第1スライド定規板2のY軸とのなす角度αを示す目盛であり、たとえば2°間隔で両側に10°まで目盛られている。
【0029】
これに対して、第2定規部12の下端には、X軸に平行に加工された第1当接部15が形成され、上述した測定項目の測定時には、この第1当接部15が鉄筋5の胴部51に当接するように、たとえば図7Aに示すように千鳥状に折れ曲げたり、図7Bに示すようにL字状に折れ曲げたりした形状とされている。
【0030】
第1スライド定規板2は、図1に示すようにY軸方向に延在する短冊状に形成された、たとえば板厚が1.5mm程度の真鍮板またはステンレス板からなるものであり、丸孔22およびY軸方向に沿う長孔23が形成されている。この長孔23は、図9に示すようにボルト7a及びナット7bなどを用いて測定具本体1に装着し、また測定具本体1に対して相対的にY軸方向に移動可能にするための孔である。また、丸孔22は、既述したように第1スライド定規板2を測定具本体1に対して回転方向に移動可能とさせるものであり、ボルト7aの軸がこの丸孔22の支点22aを中心に回転することにより、第1スライド定規板2の右端に付された基準線24が第2目盛14のαを指し示すことになる。
【0031】
第1スライド定規板2には、その先端に鉄筋5の胴部51に当接する第2当接部31が形成された第2スライド定規板3が、当該第1スライド定規板2に対してY軸方向に移動可能に装着されている。この第2当接部31も、第1当接部15と同様、X軸に平行に加工され、上述した測定項目の測定時には、この第2当接部31が鉄筋5の胴部51に当接するように、たとえば図7Aに示すように千鳥状に折れ曲げたり、図7Bに示すようにL字状に折れ曲げたりした形状とされている。
【0032】
なお、第2スライド定規板3が第1スライド定規板2に対し、Y軸方向にのみスライド可能なように、図9Dに示すように、第2スライド定規板3の側縁には第1スライド定規板2の側縁に接するフランジ部33が形成されている。
【0033】
また、測定具本体1、第1スライド定規板2および後述する第3スライド定規板4がX軸方向に沿って、それらの先端、すなわち第1当接部15、第2当接部31および第3当接部42が一直線上に並ぶように、測定具本体1には基準線17、第1スライド定規板2には基準線25、第3スライド定規板4には基準線44がそれぞれ付されている。なおこの場合、第2スライド定規板3の上端縁を第1スライド定規板2の第3目盛21のゼロに合わせる。
【0034】
第1スライド定規板2の、Y軸に平行に形成された右端には、第3目盛21が付されている。この第3目盛21は、図9Aに示すように測定具本体1の第1当接部15と、第2スライド定規板3の第2当接部31とをX軸方向に沿って一直線にしたときに、第2スライド定規板3の上端縁をゼロとする目盛であって、Y軸方向に沿って上側及び下側へ1mm間隔で目盛られている。
【0035】
第3スライド定規板4は、図6に示すようにY軸方向に延在する短冊状に形成された、たとえば板厚が1.5mm程度の真鍮板またはステンレス板からなるものであり、Y軸方向に沿って長孔43が形成されている。この長孔43は、図9Cに示すようにボルト7a及びナット7bなどを用いて測定具本体1に装着し、また測定具本体1に対して相対的にY軸方向に移動可能にするための孔である。
【0036】
また、第3スライド定規板4の、Y軸に平行に形成された左端には、第4目盛41が付されている。この第4目盛41は、測定具本体1の第1当接部15と、当該第3スライド定規板4の下端の第3当接部42とをX軸方向に一直線にしたときに、測定具本体1の第1定規部11の下端をゼロとする目盛であって、Y軸方向に沿って下側へ1mm間隔で目盛られている。
【0037】
第3スライド定規板4の下端には、X軸に平行に加工された第3当接部42が形成され、上述した測定項目の測定時には、この第3当接部43が鉄筋5の圧接部52の頂点53に当接するように、たとえば板を切断したままの状態とされている。
【0038】
楔状測定具6は、楔状に形成されたステンレス板からなるもので、図6に示すように、回転軸61によって測定具本体1に対して回転可能に装着され、測定時には同図に示す位置から時計回りに90°回転させて用いられる。この楔状測定具6の一方の主面には、図8Aに示すように、圧接部52の割れ部57の幅を測定するための第5目盛61が付される一方で、反対の主面には、図8Bに示すように、圧接部52の割れ部57の深さdを測定するための他の第5目盛62が付されている。すなわち、図8Aに示す幅の目盛61は、楔状測定具6の幅wと同じ値とされた目盛であり、図8Bに示す深さの目盛62は、楔状測定具6の先端からの長さとされた目盛である。
【0039】
なお、第1スライド定規板2と第3スライド定規板4を測定具本体1に対して装着するには、図9B、図9Cに示すように、ボルト7aとナット7bの間にスプリングワッシャ7cを挟んで装着することが好ましい。また、第2スライド定規板3を第1スライド定規板2に対して装着する場合も、図9Dに示すように、ボルト7aとナット7bの間にスプリングワッシャ7cを挟んで装着することが好ましい。
【0040】
次に、本実施形態の測定具を用いて図1〜図5に示す各測定項目を測定する手順を説明する。
【0041】
まず、膨らみの軸方向長さLを測定するには、図9Aに示すように、測定具本体1の第1当接部15を左側の鉄筋5の圧接部52の一方端52aに当接させ、ボルト7aを緩めながら第1スライド定規板2を長孔16に沿って移動させつつ、2つの基準線17,25を合わせる。そして、第2スライド定規板3の第2当接部31を右側の鉄筋5の圧接部52の他方端52bに当接させる。そして、このときの第1スライド定規板2の左端が示す第1目盛13の目盛を読み取る。同図の例では45mmとなるが、これが膨らみの軸方向長さLとなる。なお、第3スライド定規板4は使用しないので同図に示すように圧接部52と緩衝しない位置に退避させておく。
【0042】
ここで仮に、左右の鉄筋5,5の軸54,54が偏心していると、図11に示すように第2スライド定規板3が第1スライド定規板2に対してY軸方向に移動することになるので、同時に第1スライド定規板2の第3目盛21を読み取れば、それが圧接部の軸偏心量Cとなる。図11に示す例では5mmとなる。
【0043】
膨らみの直径Dを測定するには、図10に示すように測定具本体1の第1当接部15の右側端部を左側の鉄筋5の圧接部52の頂点53に当接させ、ボルト7aを緩めながら第1スライド定規板2を長孔16に沿って移動させつつ、第2スライド定規板3の第2当接部31の左側端部を圧接部52の頂点53に当接させる。そして、このときの第1スライド定規板2の左端が示す第1目盛13の目盛を読み取る。同図の例では45mmとなるが、これが膨らみの直径Dとなる。なお、第3スライド定規板4は使用しないので同図に示すように圧接部52と緩衝しない位置に退避させておく。
【0044】
圧接部52の軸折れ曲がり角度αを測定するには、図12に示すように測定具本体1の第1当接部15を左側の鉄筋5の胴部51に当接させる一方で、ボルト7aを緩めながら第1スライド定規板2を長孔16に沿って移動させる。そして、支点22aを中心に第1スライド定規板2を回転させ、第2スライド定規板3の第2当接部31を右側の鉄筋5の胴部51に当接させる。なおこのとき、圧接部52の膨らみは関係ないので、測定具本体1の第1当接部15や第2スライド定規板3の第2当接部31は、左右それぞれの鉄筋5の胴部51に当接させればよい。
【0045】
そして、このときの第1スライド定規板2の基準線24が示す第2目盛14の目盛を読み取る。同図の例では4°となるが、これが圧接部の軸折れ曲がり角度αとなる。なお、第3スライド定規板4は使用しないので同図に示すように圧接部52と緩衝しない位置に退避させておく。
【0046】
膨らみの高さHを測定するには、図13に示すように測定具本体1の第1当接部15を左側の鉄筋5の胴部51に当接させ、ボルト7aを緩めながら第1スライド定規板2を長孔16に沿って移動させつつ、第2スライド定規板3の第2当接部31を右側の鉄筋5の胴部51に当接させたのち、第3スライド定規板4のボルト7aを緩めながら当該第3スライド定規板4を長孔43に沿ってY軸方向に移動させつつ第3当接部42を圧接部52の頂点53に当接させる。
【0047】
そして、このときの測定具本体1の第1定規部11の下端が示す第4目盛41の目盛を読み取る。同図の例では16mmとなるが、これが膨らみの高さHとなる。
【0048】
圧接面のずれ量Xを測定するには、図14に示すように、図9Aにて説明した膨らみの軸方向長さLを測定する場合と同様、まず測定具本体1の第1当接部15を左側の鉄筋5の圧接部52の一方端52aに当接させ、第2スライド定規板3の第2当接部31を右側の鉄筋5の圧接部52の他方端52bに当接させる。
【0049】
そして、このときの第1スライド定規板2の左端が示す第1目盛13を読み取って膨らみの軸方向長さLを測定する。
【0050】
この状態で、第3スライド定規板4のボルト7aを緩めながら当該第3スライド定規板4を長孔43に沿ってY軸方向に移動させつつ第3当接部42の左端を、目視により観察された圧接面55に当接させる。そして、このときの第3スライド定規板4の左端が示す第1目盛13を読み取る。
【0051】
第1スライド定規板2の左端が示す第1目盛13の読みがL、第4スライド定規板4の左端が示す第1目盛の読みがL1であるとき、圧接面のずれ量Xは、X=L/2−L1の絶対値として求められる。たとえば、図14に示す例では、L=51mm、L1=26mmであるから、X=0.5mmとなる。
【0052】
ここで、圧接面55が目視で観察できない場合には、下記のような評価をすることもできる。すなわち、測定具本体1と第1スライド定規板2とを用いて圧接部の軸方向長さLを測定する手順は同じであるが、第3スライド定規板4の左端を圧接面55に当接させることに代えて膨らみの頂点53に当接させる。そして、そのときの第3スライド定規板4の左端が示す第1目盛13を読み取り、これをL1として、圧接面のずれ量X=L/2−L1を求める。
【0053】
一方、圧接部52に割れ部57が生じているときは、割れ部57の深さdや幅Wを測定する。割れ部57の幅Wを測定するには、図15に示すように楔状測定具6の先端を、割れ部57の幅方向と平行になる方向で割れ部57に挿入し、割れ部57の表面が示す図8Aの第5目盛61を読み取る。読み取った数値が割れ部の幅Wとなる。
【0054】
また、割れ部57の深さdを測定するには、楔状測定具6の先端を、割れ部57の長手方向と平行になる方向で割れ部57に挿入し、割れ部57の表面が示す図8Bの第5目盛62を同図に示す白抜き矢印方向から読み取る。読み取った数値が割れ部の深さdとなる。
【0055】
以上のとおり、本実施形態の測定具によれば、一つの測定具によって、ガス圧接された鉄筋の圧接部の、膨らみの軸方向長さL、膨らみの直径D、圧接部の軸偏心量C、圧接部の軸折れ曲がり角度α、膨らみの高さH及び圧接面のずれ量X、並びに割れ部の幅W及び深さdを測定することができる。
【0056】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】鉄筋ガス圧接部の測定項目(膨らみの軸方向長さ,膨らみの直径,膨らみの高さ)を示す正面図である。
【図2】鉄筋ガス圧接部の測定項目(圧接部の軸偏心量)を示す正面図である。
【図3】鉄筋ガス圧接部の測定項目(圧接部の軸折れ曲がり角度)を示す正面図である。
【図4】鉄筋ガス圧接部の測定項目(圧接面のずれ量)を示す正面図である。
【図5】鉄筋ガス圧接部の測定項目(割れ部の深さ及び幅)を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る測定具の構成部品を示す正面図である。
【図7A】図6に示すA部の側面図である。
【図7B】図6に示すA部の他の実施形態を示す側面図である。
【図8A】図6に示す楔状測定具を示す正面図である。
【図8B】図6に示す楔状測定具を示すは背面図である。
【図9A】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(膨らみの軸方向長さ)を示す正面図である。
【図9B】図9AのB−B線に沿う断面図である。
【図9C】図9AのC−C線に沿う断面図である。
【図9D】図9AのD−D線に沿う断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(膨らみの直径)を示す正面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(圧接部の軸偏心量)を示す正面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(圧接部の軸折れ曲がり角度)を示す正面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(膨らみの高さ)を示す正面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(圧接面のずれ量)を示す正面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る楔状測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(割れ部の幅)を示す正面図である。
【図16】本発明の実施形態に係る楔状測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(割れ部の深さ)を示す正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…測定具本体
2…第1スライド定規板
3…第2スライド定規板
4…第3スライド定規板
6…楔状測定具
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧接された鉄筋の圧接部の、膨らみの軸方向長さ、膨らみの直径、圧接部の軸偏心量、圧接部の軸折れ曲がり角度、膨らみの高さ、圧接面のずれ量及び圧接部の割れの深さ・幅を測定するための測定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス圧接された鉄筋の圧接部の品質を評価するため、圧接部の膨らみの軸方向長さなどを測定するための測定具が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
従来の測定具によれば、膨らみの軸方向長さ、膨らみの直径および圧接部の軸偏心量は測定できるものの、膨らみの高さ、圧接面のずれ量及び圧接部の割れの深さ・幅は測定できない。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−167201号公報
【特許文献2】特開2000−71080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ガス圧接された鉄筋の圧接部の、膨らみの軸方向長さ、膨らみの直径、圧接部の軸偏心量、圧接部の軸折れ曲がり角度、膨らみの高さ及び圧接面のずれ量を測定できる測定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鉄筋ガス圧接部の測定具は、測定具本体と、第1スライド定規板と、第2スライド定規板と、第3スライド定規板とを有する。これに加えて、楔状測定具を備えることもできる。
【0007】
測定具本体は、X軸方向に延在して第1目盛及び第2目盛が付された第1定規部と、X軸に直交するY軸方向に延在してその先端に鉄筋の胴部に当接する第1当接部が形成された第2定規部とを有する。
【0008】
第1スライド定規板は、Y軸方向に延在して第3目盛が付され、測定具本体に対してX軸方向および支点を中心にした回転方向に移動可能に装着され、その先端に、当該第1スライド定規板に対しY軸方向に移動可能であって鉄筋の胴部に当接する第2当接部が形成された第2スライド定規板を有する。
【0009】
第3スライド定規板は、Y軸方向に延在して第4目盛が付され、測定具本体に対してX軸方向及びY軸方向に移動可能に装着され、その先端に鉄筋の圧接部に当接する第3当接部が形成されている。
【0010】
そして、第1目盛は、第1当接部を鉄筋の圧接部の一方端に当接させ、第2当接部を圧接部の他方端に当接させたときの膨らみの軸方向長さ(L)を示す。また、この第1目盛は、第1当接部の端部を鉄筋の圧接部の一方の頂点に当接させ、第2当接部の端部を圧接部の他方の頂点に当接させたときの膨らみの直径(D)を示す。
【0011】
また、第2目盛は、第1当接部を一方の鉄筋の胴部に当接させ、第2当接部を他方の鉄筋の胴部に当接させたときの圧接部の軸折れ曲がり角度(α)を示す。
【0012】
また、第3目盛は、第1当接部を一方の鉄筋の胴部に当接させ、第2当接部を他方の鉄筋の胴部に当接させたときの圧接部の軸偏心量(C)を示す。
【0013】
また、第4目盛は、第1当接部を一方の鉄筋の胴部に当接させ、第3当接部を圧接部の頂点に当接させたときの膨らみの高さ(H)を示す。
【0014】
圧接面のずれ量は、第1当接部を鉄筋の圧接部の一方端に当接させ、第2当接部を圧接部の他方端に当接させて第1目盛により膨らみの軸方向長さ(L)を測定するとともに、第3当接部の端部を圧接部の頂点に当接させたときの第1目盛を読み(L1)、膨らみの軸方向長さの半分(L/2)と第1目盛の読み(L1)との差を計算することにより測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、一つの測定具により、ガス圧接された鉄筋の圧接部の、膨らみの軸方向長さ、膨らみの直径、圧接部の軸偏心量、圧接部の軸折れ曲がり角度、膨らみの高さ及び圧接面のずれ量を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
最初に、本実施形態に係るガス圧接部の測定具(以下、単に測定具ともいう)を用いて測定できる測定項目について説明する。図1〜図5は鉄筋ガス圧接部の測定対象を示す正面図または断面図であり、図1は膨らみの軸方向長さ,膨らみの直径,膨らみの高さ、図2は圧接部の軸偏心量、図3は圧接部の軸折れ曲がり角度、図4は圧接面のずれ量、図5は割れ部の深さ及び幅を示す図である。
【0018】
鉄筋のガス圧接法は、たとえば図1に示すように建築物等で用いられる補強用鉄筋5,5の先端を互いに突き合わせ、軸方向AXに圧縮力を加えながら接合部分を加熱して軟化させることで2本の鉄筋5,5を接合する方法である。接合された圧接部52にはそれぞれの鉄筋先端が軟化してできた、概ね球状をなす膨らみが形成される。この膨らみの形状を測定することで接合強度等が評価される。
【0019】
測定項目には、膨らみの軸方向長さL、膨らみの直径D、膨らみの高さH、圧接部の軸偏心量C、圧接部の軸折れ曲がり角度α、圧接面のずれ量X及び圧接部の割れの深さd・幅Wがある。
【0020】
図1に示すように、圧接部52の膨らみの軸方向の長さLとは、左右の鉄筋5,5の胴部51(鉄筋の円筒状の側面をいう。)と圧接部52の膨らみとの交点の軸方向AXの長さを言い、圧接部52の膨らみの直径Dとは、圧接部52の膨らみの、軸方向AXに直交する方向(以下、圧接部52の径方向RAとも言う。)における直径を言い、圧接部52の膨らみの高さHとは、左右何れか一方の鉄筋5の胴部51と圧接部52の膨らみの頂点53との、径方向RAの長さを言う。
【0021】
また、圧接部52の軸偏心量Cとは、図2に示すように、左右の鉄筋5,5の軸54,54の、圧接部52における径方向RAの長さを言い、圧接部52の軸折れ曲がり角度αとは、図3に示すように、左右の鉄筋5,5の軸の圧接部52における鋭角側の角度を言う。
【0022】
また、圧接面のずれ量Xとは、左右の鉄筋5,5の実際の圧接面55と、膨らみの軸方向長さの中点56との、軸方向AXにおける長さを言う。つまり、目視にて実際の圧接面55を確認する一方で、図1に示した膨らみの軸方向長さの中点56を求め、これらの軸方向のずれ量を測定する。
【0023】
また、圧接部52に生じた割れ部57の幅Wとは、図5に示すように割れ部57の延在方向に対する幅を言い、割れ部57の深さとは、同図に示すように圧接部52の表面58から軸54へ向かう深さを言う。
【0024】
次に、こうした項目の測定を行うことができる本発明の測定具の実施形態を説明する。図6は本発明の実施形態に係る測定具の構成部品を示す正面図、図7Aは図6に示すA部の側面図、図7Bは当該部分の他の実施形態を示す側面図、図8Aは図6に示す楔状測定具を示す正面図、図8Bは背面図である。
【0025】
本実施形態の測定具は接合した鉄筋のガス圧接部を建築現場などで簡単に測定・評価できるものであり、図6に示すように測定具本体1,第1スライド定規板2,第2スライド定規板3,第3スライド定規板4及び楔状測定具6から構成されている。
【0026】
測定具本体1は、同図に示すX軸方向に延在する第1定規部11と、Y軸方向に延在する第2定規部12とが一体に形成された直角状に形成された、たとえば板厚が2mm程度のステンレス板からなるものであり、第1定規部11のX軸方向に沿って長孔16が形成されている。この長孔16は、図9Bの組立状態図に示すように、ボルト7a及びナット7bなどを用いて第1スライド定規板2と第2スライド定規板3とを装着し、またこれら第1スライド定規板2及び第2スライド定規板3をそれぞれ相対的にX軸方向に移動可能にするための孔である。
【0027】
また、第1定規部11の下端左側には、第2定規部12の右端(Y軸に平行とされている。)をゼロとする第1目盛13が付され、この第1目盛13はX軸方向に沿って1mm間隔で目盛られている。また、第1定規部11の右側には、中心線がY軸方向とされ、第1スライド定規板2に付された基準線24が指示する第2目盛14が付されている。
【0028】
この第2目盛14は、図12に示すように、第1スライド定規板2を、ボルト7aの支点22aを中心にして回転させたときの、第1スライド定規板2のY軸とのなす角度αを示す目盛であり、たとえば2°間隔で両側に10°まで目盛られている。
【0029】
これに対して、第2定規部12の下端には、X軸に平行に加工された第1当接部15が形成され、上述した測定項目の測定時には、この第1当接部15が鉄筋5の胴部51に当接するように、たとえば図7Aに示すように千鳥状に折れ曲げたり、図7Bに示すようにL字状に折れ曲げたりした形状とされている。
【0030】
第1スライド定規板2は、図1に示すようにY軸方向に延在する短冊状に形成された、たとえば板厚が1.5mm程度の真鍮板またはステンレス板からなるものであり、丸孔22およびY軸方向に沿う長孔23が形成されている。この長孔23は、図9に示すようにボルト7a及びナット7bなどを用いて測定具本体1に装着し、また測定具本体1に対して相対的にY軸方向に移動可能にするための孔である。また、丸孔22は、既述したように第1スライド定規板2を測定具本体1に対して回転方向に移動可能とさせるものであり、ボルト7aの軸がこの丸孔22の支点22aを中心に回転することにより、第1スライド定規板2の右端に付された基準線24が第2目盛14のαを指し示すことになる。
【0031】
第1スライド定規板2には、その先端に鉄筋5の胴部51に当接する第2当接部31が形成された第2スライド定規板3が、当該第1スライド定規板2に対してY軸方向に移動可能に装着されている。この第2当接部31も、第1当接部15と同様、X軸に平行に加工され、上述した測定項目の測定時には、この第2当接部31が鉄筋5の胴部51に当接するように、たとえば図7Aに示すように千鳥状に折れ曲げたり、図7Bに示すようにL字状に折れ曲げたりした形状とされている。
【0032】
なお、第2スライド定規板3が第1スライド定規板2に対し、Y軸方向にのみスライド可能なように、図9Dに示すように、第2スライド定規板3の側縁には第1スライド定規板2の側縁に接するフランジ部33が形成されている。
【0033】
また、測定具本体1、第1スライド定規板2および後述する第3スライド定規板4がX軸方向に沿って、それらの先端、すなわち第1当接部15、第2当接部31および第3当接部42が一直線上に並ぶように、測定具本体1には基準線17、第1スライド定規板2には基準線25、第3スライド定規板4には基準線44がそれぞれ付されている。なおこの場合、第2スライド定規板3の上端縁を第1スライド定規板2の第3目盛21のゼロに合わせる。
【0034】
第1スライド定規板2の、Y軸に平行に形成された右端には、第3目盛21が付されている。この第3目盛21は、図9Aに示すように測定具本体1の第1当接部15と、第2スライド定規板3の第2当接部31とをX軸方向に沿って一直線にしたときに、第2スライド定規板3の上端縁をゼロとする目盛であって、Y軸方向に沿って上側及び下側へ1mm間隔で目盛られている。
【0035】
第3スライド定規板4は、図6に示すようにY軸方向に延在する短冊状に形成された、たとえば板厚が1.5mm程度の真鍮板またはステンレス板からなるものであり、Y軸方向に沿って長孔43が形成されている。この長孔43は、図9Cに示すようにボルト7a及びナット7bなどを用いて測定具本体1に装着し、また測定具本体1に対して相対的にY軸方向に移動可能にするための孔である。
【0036】
また、第3スライド定規板4の、Y軸に平行に形成された左端には、第4目盛41が付されている。この第4目盛41は、測定具本体1の第1当接部15と、当該第3スライド定規板4の下端の第3当接部42とをX軸方向に一直線にしたときに、測定具本体1の第1定規部11の下端をゼロとする目盛であって、Y軸方向に沿って下側へ1mm間隔で目盛られている。
【0037】
第3スライド定規板4の下端には、X軸に平行に加工された第3当接部42が形成され、上述した測定項目の測定時には、この第3当接部43が鉄筋5の圧接部52の頂点53に当接するように、たとえば板を切断したままの状態とされている。
【0038】
楔状測定具6は、楔状に形成されたステンレス板からなるもので、図6に示すように、回転軸61によって測定具本体1に対して回転可能に装着され、測定時には同図に示す位置から時計回りに90°回転させて用いられる。この楔状測定具6の一方の主面には、図8Aに示すように、圧接部52の割れ部57の幅を測定するための第5目盛61が付される一方で、反対の主面には、図8Bに示すように、圧接部52の割れ部57の深さdを測定するための他の第5目盛62が付されている。すなわち、図8Aに示す幅の目盛61は、楔状測定具6の幅wと同じ値とされた目盛であり、図8Bに示す深さの目盛62は、楔状測定具6の先端からの長さとされた目盛である。
【0039】
なお、第1スライド定規板2と第3スライド定規板4を測定具本体1に対して装着するには、図9B、図9Cに示すように、ボルト7aとナット7bの間にスプリングワッシャ7cを挟んで装着することが好ましい。また、第2スライド定規板3を第1スライド定規板2に対して装着する場合も、図9Dに示すように、ボルト7aとナット7bの間にスプリングワッシャ7cを挟んで装着することが好ましい。
【0040】
次に、本実施形態の測定具を用いて図1〜図5に示す各測定項目を測定する手順を説明する。
【0041】
まず、膨らみの軸方向長さLを測定するには、図9Aに示すように、測定具本体1の第1当接部15を左側の鉄筋5の圧接部52の一方端52aに当接させ、ボルト7aを緩めながら第1スライド定規板2を長孔16に沿って移動させつつ、2つの基準線17,25を合わせる。そして、第2スライド定規板3の第2当接部31を右側の鉄筋5の圧接部52の他方端52bに当接させる。そして、このときの第1スライド定規板2の左端が示す第1目盛13の目盛を読み取る。同図の例では45mmとなるが、これが膨らみの軸方向長さLとなる。なお、第3スライド定規板4は使用しないので同図に示すように圧接部52と緩衝しない位置に退避させておく。
【0042】
ここで仮に、左右の鉄筋5,5の軸54,54が偏心していると、図11に示すように第2スライド定規板3が第1スライド定規板2に対してY軸方向に移動することになるので、同時に第1スライド定規板2の第3目盛21を読み取れば、それが圧接部の軸偏心量Cとなる。図11に示す例では5mmとなる。
【0043】
膨らみの直径Dを測定するには、図10に示すように測定具本体1の第1当接部15の右側端部を左側の鉄筋5の圧接部52の頂点53に当接させ、ボルト7aを緩めながら第1スライド定規板2を長孔16に沿って移動させつつ、第2スライド定規板3の第2当接部31の左側端部を圧接部52の頂点53に当接させる。そして、このときの第1スライド定規板2の左端が示す第1目盛13の目盛を読み取る。同図の例では45mmとなるが、これが膨らみの直径Dとなる。なお、第3スライド定規板4は使用しないので同図に示すように圧接部52と緩衝しない位置に退避させておく。
【0044】
圧接部52の軸折れ曲がり角度αを測定するには、図12に示すように測定具本体1の第1当接部15を左側の鉄筋5の胴部51に当接させる一方で、ボルト7aを緩めながら第1スライド定規板2を長孔16に沿って移動させる。そして、支点22aを中心に第1スライド定規板2を回転させ、第2スライド定規板3の第2当接部31を右側の鉄筋5の胴部51に当接させる。なおこのとき、圧接部52の膨らみは関係ないので、測定具本体1の第1当接部15や第2スライド定規板3の第2当接部31は、左右それぞれの鉄筋5の胴部51に当接させればよい。
【0045】
そして、このときの第1スライド定規板2の基準線24が示す第2目盛14の目盛を読み取る。同図の例では4°となるが、これが圧接部の軸折れ曲がり角度αとなる。なお、第3スライド定規板4は使用しないので同図に示すように圧接部52と緩衝しない位置に退避させておく。
【0046】
膨らみの高さHを測定するには、図13に示すように測定具本体1の第1当接部15を左側の鉄筋5の胴部51に当接させ、ボルト7aを緩めながら第1スライド定規板2を長孔16に沿って移動させつつ、第2スライド定規板3の第2当接部31を右側の鉄筋5の胴部51に当接させたのち、第3スライド定規板4のボルト7aを緩めながら当該第3スライド定規板4を長孔43に沿ってY軸方向に移動させつつ第3当接部42を圧接部52の頂点53に当接させる。
【0047】
そして、このときの測定具本体1の第1定規部11の下端が示す第4目盛41の目盛を読み取る。同図の例では16mmとなるが、これが膨らみの高さHとなる。
【0048】
圧接面のずれ量Xを測定するには、図14に示すように、図9Aにて説明した膨らみの軸方向長さLを測定する場合と同様、まず測定具本体1の第1当接部15を左側の鉄筋5の圧接部52の一方端52aに当接させ、第2スライド定規板3の第2当接部31を右側の鉄筋5の圧接部52の他方端52bに当接させる。
【0049】
そして、このときの第1スライド定規板2の左端が示す第1目盛13を読み取って膨らみの軸方向長さLを測定する。
【0050】
この状態で、第3スライド定規板4のボルト7aを緩めながら当該第3スライド定規板4を長孔43に沿ってY軸方向に移動させつつ第3当接部42の左端を、目視により観察された圧接面55に当接させる。そして、このときの第3スライド定規板4の左端が示す第1目盛13を読み取る。
【0051】
第1スライド定規板2の左端が示す第1目盛13の読みがL、第4スライド定規板4の左端が示す第1目盛の読みがL1であるとき、圧接面のずれ量Xは、X=L/2−L1の絶対値として求められる。たとえば、図14に示す例では、L=51mm、L1=26mmであるから、X=0.5mmとなる。
【0052】
ここで、圧接面55が目視で観察できない場合には、下記のような評価をすることもできる。すなわち、測定具本体1と第1スライド定規板2とを用いて圧接部の軸方向長さLを測定する手順は同じであるが、第3スライド定規板4の左端を圧接面55に当接させることに代えて膨らみの頂点53に当接させる。そして、そのときの第3スライド定規板4の左端が示す第1目盛13を読み取り、これをL1として、圧接面のずれ量X=L/2−L1を求める。
【0053】
一方、圧接部52に割れ部57が生じているときは、割れ部57の深さdや幅Wを測定する。割れ部57の幅Wを測定するには、図15に示すように楔状測定具6の先端を、割れ部57の幅方向と平行になる方向で割れ部57に挿入し、割れ部57の表面が示す図8Aの第5目盛61を読み取る。読み取った数値が割れ部の幅Wとなる。
【0054】
また、割れ部57の深さdを測定するには、楔状測定具6の先端を、割れ部57の長手方向と平行になる方向で割れ部57に挿入し、割れ部57の表面が示す図8Bの第5目盛62を同図に示す白抜き矢印方向から読み取る。読み取った数値が割れ部の深さdとなる。
【0055】
以上のとおり、本実施形態の測定具によれば、一つの測定具によって、ガス圧接された鉄筋の圧接部の、膨らみの軸方向長さL、膨らみの直径D、圧接部の軸偏心量C、圧接部の軸折れ曲がり角度α、膨らみの高さH及び圧接面のずれ量X、並びに割れ部の幅W及び深さdを測定することができる。
【0056】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】鉄筋ガス圧接部の測定項目(膨らみの軸方向長さ,膨らみの直径,膨らみの高さ)を示す正面図である。
【図2】鉄筋ガス圧接部の測定項目(圧接部の軸偏心量)を示す正面図である。
【図3】鉄筋ガス圧接部の測定項目(圧接部の軸折れ曲がり角度)を示す正面図である。
【図4】鉄筋ガス圧接部の測定項目(圧接面のずれ量)を示す正面図である。
【図5】鉄筋ガス圧接部の測定項目(割れ部の深さ及び幅)を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る測定具の構成部品を示す正面図である。
【図7A】図6に示すA部の側面図である。
【図7B】図6に示すA部の他の実施形態を示す側面図である。
【図8A】図6に示す楔状測定具を示す正面図である。
【図8B】図6に示す楔状測定具を示すは背面図である。
【図9A】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(膨らみの軸方向長さ)を示す正面図である。
【図9B】図9AのB−B線に沿う断面図である。
【図9C】図9AのC−C線に沿う断面図である。
【図9D】図9AのD−D線に沿う断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(膨らみの直径)を示す正面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(圧接部の軸偏心量)を示す正面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(圧接部の軸折れ曲がり角度)を示す正面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(膨らみの高さ)を示す正面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(圧接面のずれ量)を示す正面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る楔状測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(割れ部の幅)を示す正面図である。
【図16】本発明の実施形態に係る楔状測定具を用いて鉄筋ガス圧接部を測定する状態(割れ部の深さ)を示す正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…測定具本体
2…第1スライド定規板
3…第2スライド定規板
4…第3スライド定規板
6…楔状測定具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向に延在して第1目盛(13)及び第2目盛(14)が付された第1定規部(11)と、X軸に直交するY軸方向に延在してその先端に鉄筋(5)の胴部(51)に当接する第1当接部(15)が形成された第2定規部(12)とを有する測定具本体(1)と、
Y軸方向に延在して第3目盛(21)が付され、前記測定具本体(1)に対してX軸方向及び支点(22a)を中心にした回転方向に移動可能に装着された第1スライド定規板(2)と、
前記第1スライド定規板(2)に対してY軸方向に移動可能に装着され、その先端に鉄筋(5)の胴部(51)に当接する第2当接部(31)が形成された第2スライド定規板(3)と、
Y軸方向に延在して第4目盛(41)が付され、前記測定具本体(1)に対してX軸方向及びY軸方向に移動可能に装着され、その先端に鉄筋(5)の圧接部(52)に当接する第3当接部(42)が形成された第3スライド定規板(4)とを備え、
前記第1目盛(13)は、前記第1当接部(15)を鉄筋(5)の圧接部(52)の一方端(52a)に当接させ、前記第2当接部(31)を前記圧接部(52)の他方端(52b)に当接させたときの膨らみの軸方向長さ(L) を示すとともに、前記第1当接部(15)の端部を鉄筋(5)の圧接部(52)の一方の頂点(53)に当接させ、前記第2当接部(31)の端部を前記圧接部(52)の他方の頂点(53)に当接させたときの膨らみの直径(D)を示し、
前記第2目盛(14)は、前記第1当接部(15)を一方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させ、前記第2当接部(31)を他方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させたときの圧接部の軸折れ曲がり角度(α)を示し、
前記第3目盛(21)は、前記第1当接部(15)を一方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させ、前記第2当接部(31)を他方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させたときの圧接部の軸偏心量(C)を示し、
前記第4目盛(41)は、前記第1当接部(15)を一方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させ、前記第3当接部(42)を前記圧接部の頂点(53)に当接させたときの膨らみの高さ(H)を示すことを特徴とする鉄筋ガス圧接部の測定具。
【請求項2】
前記測定具本体に、第5目盛(61,62)が付された楔状測定具(6)が設けられ、前記第5目盛は、前記楔状測定具の先端を圧接部(52)の割れ部(57)に挿入したときの割れ部の深さ(d)又は幅(W)を示すことを特徴とする請求項1記載の鉄筋ガス圧接部の測定具。
【請求項1】
X軸方向に延在して第1目盛(13)及び第2目盛(14)が付された第1定規部(11)と、X軸に直交するY軸方向に延在してその先端に鉄筋(5)の胴部(51)に当接する第1当接部(15)が形成された第2定規部(12)とを有する測定具本体(1)と、
Y軸方向に延在して第3目盛(21)が付され、前記測定具本体(1)に対してX軸方向及び支点(22a)を中心にした回転方向に移動可能に装着された第1スライド定規板(2)と、
前記第1スライド定規板(2)に対してY軸方向に移動可能に装着され、その先端に鉄筋(5)の胴部(51)に当接する第2当接部(31)が形成された第2スライド定規板(3)と、
Y軸方向に延在して第4目盛(41)が付され、前記測定具本体(1)に対してX軸方向及びY軸方向に移動可能に装着され、その先端に鉄筋(5)の圧接部(52)に当接する第3当接部(42)が形成された第3スライド定規板(4)とを備え、
前記第1目盛(13)は、前記第1当接部(15)を鉄筋(5)の圧接部(52)の一方端(52a)に当接させ、前記第2当接部(31)を前記圧接部(52)の他方端(52b)に当接させたときの膨らみの軸方向長さ(L) を示すとともに、前記第1当接部(15)の端部を鉄筋(5)の圧接部(52)の一方の頂点(53)に当接させ、前記第2当接部(31)の端部を前記圧接部(52)の他方の頂点(53)に当接させたときの膨らみの直径(D)を示し、
前記第2目盛(14)は、前記第1当接部(15)を一方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させ、前記第2当接部(31)を他方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させたときの圧接部の軸折れ曲がり角度(α)を示し、
前記第3目盛(21)は、前記第1当接部(15)を一方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させ、前記第2当接部(31)を他方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させたときの圧接部の軸偏心量(C)を示し、
前記第4目盛(41)は、前記第1当接部(15)を一方の鉄筋(5)の胴部(51)に当接させ、前記第3当接部(42)を前記圧接部の頂点(53)に当接させたときの膨らみの高さ(H)を示すことを特徴とする鉄筋ガス圧接部の測定具。
【請求項2】
前記測定具本体に、第5目盛(61,62)が付された楔状測定具(6)が設けられ、前記第5目盛は、前記楔状測定具の先端を圧接部(52)の割れ部(57)に挿入したときの割れ部の深さ(d)又は幅(W)を示すことを特徴とする請求項1記載の鉄筋ガス圧接部の測定具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−281415(P2008−281415A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125269(P2007−125269)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(507152833)株式会社ロッキーエンジニアリング (1)
【出願人】(507153081)
【出願人】(507153379)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(507152833)株式会社ロッキーエンジニアリング (1)
【出願人】(507153081)
【出願人】(507153379)
【Fターム(参考)】
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