説明

鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー及び該センサーを使用した漏れ検知装置

【課題】従来技術の難点を解消し、地下に埋設した二重殻タンクに鉱油系燃料油を貯蔵し、当該二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりした場合に、これを迅速に且つ精度良く検知することが可能な鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー及び該センサーを使用した漏れ検知装置を提供する。
【解決手段】本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー7は、線状或いは棒状の部材の先端をテーパー部とすることにより、後端から入射した光が前記先端のテーパー部において、空気中では全反射し、且つ、液体中では透過するようにした一組の光学部材を、一方の光学部材の側面に全反射する光が他の光学部材の側面に入射し、前記テーパー部で反射されて当該他の光学部材の後端へ導かれるように相対的に位置付けてなるセンサー本体12と、2本の保護部材よりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、主にガソリン等の鉱油系燃料油を貯蔵するために用いられる二重殻タンクや、鉱油系燃料油を配送するために用いられる二重殻配管その他における鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー及びこのセンサーを使用した漏れ検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
危険物の規制に関する制令の一部を改正する法律、及び、危険物の規制に関する規則の一部を改正する規則が改正、施行され、地下に埋設した強化プラスチックライニング二重殻タンク等の二重殻タンクによる危険物、例えば鉱油系燃料油の貯蔵が可能となっている。
【0003】
上記強化プラスチックライニング二重殻タンクとは、例えば図8に示すように、鋼製のタンク101の外側に、上部及びフランジ部(気相部)以外の部分(液相部)において、間隙102を形成しつつ強化プラスチック層103を設けてタンク本体104とし、該タンク本体104の上部から底面へ前記間隙102に連通する検知管105を挿入すると共に、前記検知管105の底部に、タンク101から漏洩する鉱油系燃料油及び強化プラスチック層103から流入する地下水の双方を検知することができるセンサー106を配設し、更に適宜の箇所に該センサー106からの出力を処理する検知装置107を配してなるものである。
【0004】
かかる二重殻タンクは、主として、ガソリンスタンド等に設置され、ガソリン等の鉱油系燃料油を貯蔵する貯蔵タンクとして使用されているのが現状である。
【0005】
上記二重殻タンクを、ガソリン等を貯蔵する貯蔵タンクとして使用する場合、長期間にわたって使用していると、内側の鋼製タンク内部に発生した欠陥により、ガソリン等の漏れが発生したり、或いは、強化プラスチック層が損傷して地下水が流入する虞れがあるため、このような漏れが発生した場合に、これを迅速に且つ精度良く検知可能にしておく必要がある。
【0006】
二重殻タンク用の漏れ検知装置用センサーとしては、例えば図8に示すように、電気フロート式のものが使用されている。この電気フロート式の漏れ検知センサー106は、検知管105の底部に、漏れを検知するための環状のフロート108を上下動自在に設けると共に、当該環状フロート108の内側に磁石109を配置し、ガソリン等や地下水の漏れが発生した場合には、環状フロート108が上昇し、当該環状フロート108に配置された磁石109によって、検知装置106内のガラス管110の内部に封入された電気接点111、112がON状態となるように構成し、この状態を検知装置107に電気的に伝達し、検知装置107に設けたブザーやランプを動作させ、前記の漏れを検知、通報するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記二重殻タンク用の漏れ検知センサー106の場合には、図8に示すように、ガソリン等や地下水の漏れが発生した場合に、環状フロート108に配置された磁石109によって、ガラス管110の内部に封入された電気接点111、112をON状態となるように構成したものであるが、電気接点111、112を使用しているため、防爆認定を受ける必要があり、検査や認定等の手続きが煩雑となるという問題点や、その構造ゆえに小型化することができないという問題点を有していたのである。
【0008】
又、上記従来技術の場合には、大型とならざるを得ないために、ガソリン等や地下水の漏れが発生してから、環状フロート108に配置された磁石109によって電気接点111、112がON状態となるまでに時間が係り、一方、電気接点111、112がON状態となるまでに時間を短縮するために、環状フロート108に配置された磁石109の位置をガラス管110の内部に封入された電気接点111、112に接近させた場合は、わずかな振動によってでも電気接点111、112がON状態となり、誤作動を頻発させてしまうという問題点もあった。
【0009】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、地下に埋設した強化プラスチックライニング二重殻タンク等の二重殻タンクに鉱油系燃料油を貯蔵し、当該二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりした場合に、これを迅速に且つ精度良く検知することが可能であると共に、電気的な接点を使用することなく、光学的に鉱油系燃料油の漏れを検知することによって、防爆認定等が不要であり、しかも小型化や低コストでの製造が可能な鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー及び該センサーを使用した漏れ検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載された発明は、光透過性素材で形成された線状或いは棒状の部材の先端をテーパー部とすることにより、後端から入射した光が前記先端のテーパー部において、空気中では実質的に部材の側面方向に全反射し、且つ、液体中では少なくともその一部が実質的に透過するようにした一組の光学部材を、一方の光学部材の側面に全反射する光が他の光学部材の側面に入射し、前記テーパー部で反射されて当該他の光学部材の後端へ導かれるように相対的に位置付けてなるセンサー本体と、該センサー本体に、前記一組の光学部材よりその先端を突出させて配設した2本の保護部材よりなることを特徴とする鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、光学部材が、液体中では少なくともその一部が実質的に透過すると共に、該光学部材に対する該液体の屈折率の差に応じて、該液体の種類によって入射した光の透過割合が変化するものである請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーである。
【0012】
又、請求項3に記載された発明は、光透過性素材が光ファイバである請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーである。
【0013】
請求項4に記載された発明は、形状が相違する一組の光学部材からなる請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーである。
【0014】
更に、請求項5に記載された発明は、一組の光学部材を、線状或いは棒状の保護部材と共にスリーブに収容してなる請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーである。
【0015】
更に又、請求項6に記載された発明は、一組の光学部材のテーパー部側には、撥水撥油剤が塗布されている請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーである。
【0016】
更に又、請求項7に記載された発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーと、該センサーに光を供給する光源部と該センサーからの光を検出する検出部と、該検出部の検出結果に基づいて作動する警報部とを含むことを特徴とする鉱油系燃料油の漏れ等検知装置である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、地下に埋設した強化プラスチックライニング二重殻タンク等の二重殻タンクに鉱油系燃料油を貯蔵し、当該二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりした場合に、これを迅速に且つ精度良く検知することが可能であると共に、電気的な接点を使用することなく、光学的に鉱油系燃料油の漏れを検知することによって、防爆認定等が不要であり、しかも小型化や低コストでの製造が可能な鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー及び該センサーを使用した漏れ検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
実施の形態1
図2及び図3はこの発明の実施の形態1に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー及び該センサーを使用した漏れ検知装置を採用した二重殻タンクを示す構成図である。
【0020】
図2及び図3において、1はタンク本体を示すものであり、このタンク本体1は、所定の略円筒形状に形成された鋼製の内殻タンク1aから構成されている。上記鋼製の内殻タンク1aは、例えば、後述する被覆層1dも含めて、直径(外径)が1220mm、及び長さが2257mmに設定されている。尚、上記タンク本体1は、必ずしも、鋼製の内殻タンク1aそのものからなるものではなく、当該鋼製の内殻タンク1aの表面に、図4に示すように、錆止め塗装1b及びフィルム層1cなどにより、被覆する前の処理を施したものであっても勿論良い。又、上記タンク本体1の長手方向両端部には、図2に示すように、耐圧性などを向上させるため、所定の湾曲形状に形成された鏡板部2、3が設けられている。
【0021】
本発明が適用されるタンクは、例えば、ガソリンスタンド等の地中に埋設された状態で設置され、ガソリンや軽油、重油等の鉱油系燃料油を貯蔵する貯蔵タンクなどとして使用される。この貯蔵タンクは、鋼製の内殻タンク1aの外側に、必要に応じてFRP層などからなる被覆層1dを被覆した二重殻タンクとして構成されており、内殻タンク1aと被覆層1dとの間には、0.1mm程度の微小間隙4が形成されている。上記被覆層1dは、樹脂にガラス繊維等を充填して固化させたものが用いられる。樹脂としては、イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂、ビスフェノール系不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂又はエポキシ樹脂などが用いられる。又、ガラス繊維としては、ガラスチョップドストランドマット、ガラスロービング、処理ガラスクロス又はガラスロービングクロス等が用いられる。
【0022】
このような構造の二重殻タンクにおいては、当該二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりした場合、鉱油系燃料油や水はその底部に滞留することになる。
【0023】
又、図2及び図3に示すように、タンク本体1の長手方向の一端部寄りに、外径が11mm程度の金属製(例えば、鋼管)の検知管5が底部まで立設されている。この検知管5の上端部及び下端部は、内殻タンク1aに溶接等によって固着されており、当該検知管5の内部は、内殻タンク1aの底部に穿設された連通孔6を介して、微小間隙4と連通するように構成されている。
【0024】
又、上記タンク本体1に設けられた微小間隙4は、図2及び図3に示すように、液層部に対応した領域に設けられており、タンク本体1の気層部には、微小間隙4が設けられておらず、一体構造となっている。
【0025】
更に、上記検知管5の底部には、図2に示すように、本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー7が挿入され、漏れ検知装置用センサー7に光を供給する光源部と漏れ検知装置用センサー7からの光を検出する検出部と、該検出部の検出結果に基づいて作動する警報部とを含む警報本体ALと共に、本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置を構成している。尚、L1及びL2は、本発明の漏れ検知装置用センサー7と警報本体ALとの接続手段である。
【0026】
ところで、この実施の形態に係る本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーは、光透過性素材で形成された線状或いは棒状の部材の先端をテーパー部とすることにより、後端から入射した光が前記先端のテーパー部において、空気中では実質的に部材の側面方向に全反射し、且つ、液体中では少なくともその一部が実質的に透過するようにした一組の光学部材を、一方の光学部材の側面に全反射する光が他の光学部材の側面に入射し、前記テーパー部で反射されて当該他の光学部材の後端へ導かれるように相対的に位置付けてなるセンサー本体と、該センサー本体に、前記一組の光学部材よりその先端を突出させて配設した2本の保護部材よりなり、前記光学部材のテーパー部が、ガソリン等の鉱油系燃料油や地下水等の液状の漏洩物に接触しているか否かによって、当該光学部材のテーパー部における光の反射状態が変化することを利用して、前記鉱油系燃料油の漏れ等の有無を検知するように構成されている。
【0027】
具体的には、漏れ検知装置用センサー7には、図1に示すように、上記一組の光学部材として、例えば直径1mm程度の入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9が使用され、それらの先端部が互いに結束した状態で設けられており、当該入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9の先端部は、金属製又は合成樹脂製のセンサ補強スリーブ10によって被覆されていると共に、当該センサ補強スリーブ10の先端は、細く形成されており、入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9の先端が互いに密着した状態で僅かに突出するように構成されている。尚、この実施態様では入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9の仕様は共通しているが、これに限定されることはない。又、入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9としては、この実施の態様ではアクリル系のものが採用されている。尚、本発明で使用される光ファイバの直径は1mm程度に限られることはなく、市販されている直径0.25〜2.0mmのもののいずれも、何の問題もなく使用することができる。
【0028】
上記センサ補強スリーブ10によって被覆された入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9の先端部は、ファイバジャケット11、12によって被覆されていると共に、当該入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9の先端部には、保護部材としてのステンレス製の針金からなる2本のガイドピン13が所定長だけ突出するように挿入固着されている。
【0029】
又、上記入射用の光ファイバ8の先端にはテーパー部が設けられ、当該入射用の光ファイバ8の後端から入射する光を出射用の光ファイバ9側に反射する反射面14が形成されていると共に、当該出射用の光ファイバ9の先端にも同様に、入射用の光ファイバ側から反射された光を出射用の光ファイバ9内の後端側に導くように反射する反射面15が形成されている。そして、上記入射用の光ファイバ8及び出射用の光ファイバ9の反射面14、15は、当該二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりして、漏れ検知装置用センサー7が液状の漏洩物に接触しているか、或いはそうでないかによって、当該入射用の光ファイバ8及び出射用の光ファイバ9の反射面14、15における光の反射状態が変化するように構成されている。
【0030】
即ち、上記入射用の光ファイバ8の反射面14では、液状の漏洩物に接触しているか否かによって光の反射状態が変化すればよく、好ましくは当該反射面14が空気中にある場合に全反射、液状の漏洩物に接触している場合には全透過の起こることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。光ファイバ9の反射面15についても同様である。
【0031】
入射用の光ファイバ8及び出射用の光ファイバ9の位置関係については、入射用の光ファイバ8の後端から入射し、反射面14で側面に反射する光が、出射用の光ファイバ9の側面に入射し、反射面15で反射して当該出射用の光ファイバ9の後端へ導かれるように、相対的に決定すればよい。
【0032】
更に説明すると、上記入射用の光ファイバ8及び出射用の光ファイバ9の反射面14、15によって、入射用の光ファイバ8によって導かれた光が、全反射乃至大きな反射率をもって反射するか、当該反射面14、15を光が透過するかは、反射面が接触する空気や液体状の貯蔵物等の媒体の屈折率によって変化する。
【0033】
上記入射用の光ファイバ8の反射面14に入射する光16は、図4に示すように、入射角θ0で入射する。この入射光16が反射面14で全反射する臨界角θ0は、光ファイバ8の材質をアクリル樹脂として、反射面14の外部を空気とすると、
sinθ0=n1/n2=0.6702
∴ θ0=42°
となる。ここで、n1は空気の屈折率1.000、n2はアクリル樹脂の屈折率1.492である。
【0034】
よって、上記入射用光ファイバ8の反射面14のポイント1で入射光16が全反射する条件は、ポイント1における角度Aが、
0<A<48° (1)
を満たせば良いことがわかる。
【0035】
同様に、上記出射用光ファイバ9の反射面15のポイント2で反射光17が全反射する条件は、ポイント2における角度Bが、
0<B<48° (2)
を満たせば良いことがわかる。
【0036】
ここで、幾何学的に、
B=180°−3A (3)
であるから、式(2)及び式(3)より、
0°<180°−3A<48°
−180°<−3A<−132°
44°<A<60° (4)
となって、式(1)(4)より、
44°<A<48°
となり、入射用及び出射用光ファイバ8、9の反射面14、15の先端角2Aは、
88°<2A<96°
の範囲となる。
【0037】
特に、入射光16と出射光18とが平行になる条件は、2A=90°のときである。この実施の形態では、A=45°に設定されることになる。尚、出射光18の強度という点からは、A=47.5°とした場合が、A=45°や46°とした場合よりも出射光18の光量が多く、好ましかった。
【0038】
一方、地下水やガソリン等の漏れ等が発生して、上記入射用の光ファイバと出射用の光ファイバの先端部が、例えば、水(屈折率=1.33)と接触している場合には、全反射の臨界角は63°であるため、例えば、角度A=45°で入射した光16は、図5に示すように、一部の光19が屈折し、他の光17が反射する。又、上記出射用の光ファイバ9の反射面15に入射した光17は、例えば、角度A=45°で入射した光17は、一部の光20が屈折し、他の光18が反射する。
【0039】
その結果、地下水やガソリン等の漏れ等が発生して、上記入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9の先端部が、例えば、水と接触している場合には、出射用の光ファイバ9から戻る光量が大幅に低下する。そのため、上記出射用の光ファイバ8から戻る光18の光量をモニターすることにより、地下水やガソリン等の漏れ等の有無を検知することが可能となっている。
【0040】
尚、上記図4及び図5では、入射用及び出射用の光ファイバ8、9を互いに平行に配置した場合について説明したが、これに限定される訳ではなく、入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9を互いに傾斜した状態で対向させても良く、この場合には、当該入射用及び出射用の光ファイバ8、9の傾斜角に伴って、反射面14、15の角度を調整する必要があることは勿論である。
【0041】
一方、この実施の態様では、図1に示すように、センサー本体12に、入射用の光ファイバ8と出射用の光ファイバ9よりなる前記一組の光学部材より、その先端を突出させて2本のガイドピン13を配設してあり、このガイドピン13は、強度が不足する光学部材を、特にその先端部において保護するものであるばかりでなく、本発明の漏れ等検知装置用センサー7の機能回復に重要な役割を有している。
【0042】
即ち、二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりした場合は、当該二重殻タンクに重大な構造的欠陥が有ることになるが、そうではなく、例えば、軽微な欠陥やミスで雨水や結露水等が検知装置用センサー7を作動させてしまった場合、軽微な欠陥やミスを解消すると共に、検知装置用センサー7を復帰させるために、雨水や結露水等を検知装置用センサー7から排除しなければならない。しかしながら、雨水や結露水等は純水ではなく、乾燥や自然落下にはかなりの時間が必要なのであるが、2本のガイドピン13を配設することによって、雨水や結露水等がこれらの間を伝って落下し、速やかに検知装置用センサー7を復帰させることができるのである。
【0043】
因みに、ガイドピン13は1本では、2本の場合に比べて水及び鉱油系燃料油、特に粘度の高いC重油に対して効果が薄く、2本を設けた場合にのみ、水及び鉱油系燃料油が表面張力でガイドピン13間を伝って速やかに落下した。図1(b)に明らかなように、3本以上を設けることは検知装置用センサー7を大型化してしまうという問題がある。
【0044】
又、同様の趣旨で、上記光ファイバ8、9の反射面14、15には、フッ素系の樹脂等による撥水撥油剤を塗布するなどして、水や油性成分等を弾く撥液処理を施すように構成することが望ましく、このように構成した場合、撥液処理とガイドピン13とは相乗効果を示すようになる。尚、ガイドピン13にもこのような撥液処理を施すことも好ましい。
【0045】
一方、図2に示すように、本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー7と警報本体ALとは、接続手段L1及びL2で接続されるが、簡便には、入射用及び出射用の光ファイバ8、9を必要な長さだけ延設し、それらの基端部を警報本体ALに接続すればよく、又、入射用及び出射用の光ファイバ8、9とは別の光ファイバーを用意し、それらにより入射用及び出射用の光ファイバ8、9と警報本体ALとを接続してもよい。尚、本発明の漏れ等検知装置用センサー7と警報本体ALとの距離に制限はなく、使用した光ファイバーの伝送効率や漏れ検知装置用センサー7における入射光と反射光との比率にもよるが、例えば、短い場合で30〜40m、長い場合で50〜100m程度に設定しても、本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置は作動し、効果が確認された。
【0046】
上記警報本体ALには、図6に示すように、入射用の光ファイバ8の入射端部に、LED、好ましくは高輝度LEDやレーザー光源、或いはランプ等の発光素子による光源部22が配置され、必要に応じて集光用のレンズ23を介して、入射用の光ファイバ8に光を入射させるように構成されている。尚、本発明における発光素子には、光量の安定より、高輝度、長寿命であることが要求される。
【0047】
又、上記出射用の光ファイバ9の出射端部には、必要に応じて集光用のレンズ24を介して、フォトマルや光電池、或いはフォトダイオード、cds、セレン等の受光素子による検出部25が配置されるように構成されていて、特にフォトマルの使用は漏れ等検知装置用センサー7と警報本体ALとの距離が長い場合に極めて効果的である。
【0048】
上記受光素子25の出力は、必要に応じて、増幅器を介して識別回路26と警報器27とよりなる警報部に入力され、前記受光素子25の出力が、所定の閾値以上か否かが判別される。そして、上記識別回路26は、受光素子25の出力が所定の閾値未満であると、二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりしたと検知して、ブザーや警告ランプ等の警告手段としての警報器27によって漏れが発生していると警告するように構成されている。
【0049】
更に、上記の実施態様では、入射用及び出射用の光ファイバ8、9は、例えば、警報本体ALまで直接導かれるが、当該入射用及び出射用の光ファイバ8、9の光減衰が大きい場合には、警報本体ALに至る途中に、入射用の光ファイバの入射端部に配置される発光素子と、出射用の光ファイバの出射端部に受光素子を配置して、当該受光素子によって出射用の光ファイバから出射される光の光量を電気信号に変換した後、接続手段L1及びL2としての配線を介して、警報本体ALに導くように構成しても良く、接続手段L1及びL2の中途に増幅器を配しても良い。
【0050】
実用面としては、入射用及び出射用の光ファイバ8、9により漏れ等検知装置用センサー7を形成すると共に、他の接続手段L1及びL2を、コスト的に有利なアクリル系の光ファイバで形成して、必要に応じて防爆認定を受けた光−電気変換器や増幅器に導き、更に必要に応じて、この構成を連結すればよい。又、漏れ等検知装置用センサー7としては、液状の漏洩物30の有無を検出すれば十分である場合は、アクリル系の光ファイバによるものをというように、求められる検出対象により選択すればよい。
【0051】
以上の構成において、この実施の形態に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーでは、次のようにして、二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりした場合に、これを迅速に且つ精度良く検知することが可能であると共に、防爆認定等が不要であり、しかも小型化が可能となっている。
【0052】
即ち、この実施の形態に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーでは、図1及び図4に示すように、液状の貯蔵物30の漏れ等が発生していない場合、入射用の光ファイバ8の反射面14は、空気層31に接触しているため、当該入射用の光ファイバ8によって導かれた光16は、反射面14によって反射乃至は全反射されると共に、出射用の光ファイバ9の反射面15によって反射乃至は全反射され、当該出射用の光ファイバ9を介して、警報本体ALへと導かれる。
【0053】
そのため、上記出射用の光ファイバ9の出射端部に配置された受光素子25によって、図6に示すように、当該出射用の光ファイバ9を介して警報本体ALへと導かれた光18が受光され、電気信号に変換される。上記受光素子25の出力は、必要に応じて、増幅器を介して識別回路26に入力され、当該受光素子25の出力が、所定の閾値以上か否かが判別される。そして、上記識別回路26は、受光素子25の出力が、所定の閾値以上である場合には、液状の漏洩物30が無いと検知する。
【0054】
一方、上記漏れ検知装置では、図5に示すように、二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりして、液状の貯蔵物30の漏れが発生していると、入射用の光ファイバ8の反射面14は、液状の貯蔵物30や、地下水等の液状の漏洩物31に接触するため、当該入射用の光ファイバ8によって導かれた光16は、反射面14によって全反射されずに、一部が透過光19となって透過すると共に、出射用の光ファイバ9の反射面15によっても全反射されずに、一部が透過光20となって透過し、当該出射用の光ファイバ9を介して、警報本体ALへと導かれる光量は、大幅に低下する。
【0055】
そのため、上記出射用の光ファイバ9の出射端部に配置された受光素子25によって、当該出射用の光ファイバ9を介して警報本体ALへと導かれた光が受光され、電気信号に変換される。上記受光素子25の出力は、必要に応じて、増幅器を介して識別回路26に入力され、当該受光素子25の出力が、所定の閾値以上か否かが判別される。そして、上記識別回路26は、受光素子25の出力が、所定の閾値未満である場合には、液状の漏洩物31が有ると検知して、ブザーや警告ランプ等の警告器27によって、二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりしていると警告する。
【0056】
このように、上記実施の形態では、二重殻タンクにガソリン等の液状の貯蔵物30を貯蔵した場合でも、電気的な接点を使用することなく、光学的に液状の貯蔵物の漏れを検知することによって、防爆認定等が不要となっている。
【0057】
又、上記実施の形態では、入射用及び出射用の光ファイバ8、9の先端を当該二重殻タンクのタンク本体直近に配置することが可能であり、且つ、理論的に地下水等の液状の漏洩物が存在しなければ警報本体ALは作動しないから、液状の貯蔵物30の漏れ等が発生した場合に、これを迅速に精度良く検知することが可能である。
【0058】
加えて、本発明の漏れ検知装置用センサー7は、主として光ファイバーとガイドピンで構成されるから、小型化及び低コストでの製造が非常に容易である。
【0059】
尚、上記本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーを、二重殻配管へ設置するには、通常、二重殻配管同士の接続部には点検用のピットが設けられるので、当該ピット内に箱状のセンサーボックスを設けると共に、二重殻配管外側パイプ内に連通するチューブを接続して、当該センサーボックス内に本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーを配設すればよい。
【0060】
実施の形態2
一般に、強化プラスチックライニング二重殻タンク等の二重殻タンクは、地下に埋設されるために、上記のように地下水の浸入が予想され、この場合、タンクに亀裂が生じていることが原因と考えられ、対応が必要ではあるが、鉱油系燃料油の漏れが発生した場合に比べれば、緊急度は低いために、上記本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置が、地下水の浸入と、鉱油系燃料油の漏れとを区別して検知することができればより好ましい。因みに、フロートの浮力を利用した上記従来のセンサーでは、原理的にこのような区別をすることができない。
【0061】
本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置が、地下水の浸入と鉱油系燃料油の漏れとを区別して検知することができるようにするためには、上記警報本体ALにおける識別回路26の識別精度を向上させ、水と鉱油系燃料油の屈折率に基づく上記出射用の光ファイバ8から戻る光18の光量の差を識別するようにすればよいが、識別回路26の識別精度を向上させることは、誤動作の原因ともなるために、より簡便には、上記本発明の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーにおける光ファイバーの少なくとも先端部として、重フリントガラス、重ランタンフリントガラス、高鉛含有ガラス等の高屈折ガラス成分よりなるものを使用し、高屈折ガラス成分よりなる光ファイバーに対する、水と鉱油系燃料油の屈折率の差を拡大すればよく、このようにすれば、識別回路26の識別精度を、誤動作が心配されるほどに向上させなくても良い。
【0062】
尚、上記のように構成する場合は、上記警報本体ALにおける警告器27も、地下水の浸入と鉱油系燃料油の漏れとを区別して警告することができるようにする。
【0063】
又、高屈折ガラスはロットごとに屈折率が相違しているので、これに応じた反射面14、15の調製が必要であり、実際に使用した屈折率1.842の高屈折ガラスにあっては、図4、5における角度Aは35.4<A<43.6、角度Bは43.6<B<57.1であることが必要であり、実際の作動は、A=40°、B=50°のものを使用し、地下水の浸入と鉱油系燃料油の漏れとを区別して検知し得ることを確認した。
【0064】
実施の形態3
更に、極めてまれではあるが、本発明の漏れ検知装置用センサー7近傍に、当該センサーとは無関係の光源が存在したり、太陽光が入射したりする場合があり、このような場合は、漏れ検知装置用センサー7の反射面14、15付近で光の散乱が起こり、誤動作をする可能性があるので、このような状況においては、図7に示すように、漏れ検知装置用センサー7に、円筒状のケーシング60の下底を一部開口61すると共に、反射面14、15付近には連通孔62を設け、内部を黒色艶消し塗装したものを嵌着し、誤動作に対処することが好ましい。
【0065】
尚、上記ケーシング60の開口61等には、不純物等を除去するフィルターを配置するように構成しても良い。
【0066】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明は、二重殻タンクから鉱油系燃料油の漏れが発生したり、地下水が浸入したりした場合に、これを迅速に且つ精度良く検知することが可能であると共に、電気的な接点を使用することなく、光学的に鉱油系燃料油の漏れを検知することによって、防爆認定等が不要であり、しかも小型化や低コストでの製造が可能な鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー及び該センサーを使用した漏れ検知装置を提供することができる。
【0068】
又、本発明は、鉱油系燃料油の移送ポンプ等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1はこの発明の実施の形態1に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーの要部を示す断面図及び底面図である。
【図2】図2はこの発明の実施の形態1に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーを適用した強化プラスチックライニング二重殻タンクを示す断面図である。
【図3】図3はこの発明の実施の形態1に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーを適用した強化プラスチックライニング二重殻タンクを示す断面図である。
【図4】図4はこの発明の実施の形態1に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーの検知原理を示す説明図である。
【図5】図5はこの発明の実施の形態1に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーの検知原理を示す説明図である。
【図6】図6はこの発明の実施の形態1に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置を示す構成図である。
【図7】図7はこの発明の実施の形態3に係る鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーの要部を示す断面図である。
【図8】図8は従来の二重殻タンクにおける漏れ検知装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
8:入射用の光ファイバ
9:出射用の光ファイバ
13:ガイドピン
14、15:反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性素材で形成された線状或いは棒状の部材の先端をテーパー部とすることにより、後端から入射した光が前記先端のテーパー部において、空気中では実質的に部材の側面方向に全反射し、且つ、液体中では少なくともその一部が実質的に透過するようにした一組の光学部材を、一方の光学部材の側面に全反射する光が他の光学部材の側面に入射し、前記テーパー部で反射されて当該他の光学部材の後端へ導かれるように相対的に位置付けてなるセンサー本体と、該センサー本体に、前記一組の光学部材よりその先端を突出させて配設した2本の保護部材よりなることを特徴とする鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー。
【請求項2】
光学部材が、液体中では少なくともその一部が実質的に透過すると共に、該光学部材に対する該液体の屈折率の差に応じて、該液体の種類によって入射した光の透過割合が変化するものである請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー。
【請求項3】
光透過性素材が光ファイバである請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー。
【請求項4】
形状が相違する一組の光学部材からなる請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー。
【請求項5】
一組の光学部材を、線状或いは棒状の保護部材と共にスリーブに収容してなる請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー。
【請求項6】
一組の光学部材のテーパー部側には、撥水撥油剤が塗布されている請求項1に記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の鉱油系燃料油の漏れ等検知装置用センサーと、該センサーに光を供給する光源部と該センサーからの光を検出する検出部と、該検出部の検出結果に基づいて作動する警報部とを含むことを特徴とする鉱油系燃料油の漏れ等検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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