説明

鉱物油汚染水浄化処理装置

【課題】排水中の油分を効率的かつ低コストで浄化する装置の提供。
【解決手段】機械加工工場等から排出される鉱物油汚染水を阻集する阻集器1に近接する場所に設置される装置で、阻集器1から鉱物油汚染水原水7を汲み上げる、鉱物油汚染水汲み上げポンプ5によって鉱物油汚染水原水7を第一分解槽2の下部へ導入し、第一分解槽2の底部に設置された曝気装置によって曝気された鉱物油汚染水原水7を、不織布フィルターと、微生物及び酵素を着床せしめたゼオライトで構成された濾過部を通過させる行程と、第一分解槽2と同様に構成された第二分解槽3を通過させる事によって、更に油分の分解を促進する行程と、最終段階として、脱色する為に活性炭と川砂を充填した濾過槽4を経て浄化された処理水を、再び阻集器1へ排水する構成による、鉱物油汚染水浄化処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工工場等から排出される、鉱物油で汚染された排水を、高速且つ効率的に浄化する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品加工工場、及び、厨房等から排出される、植物油で汚染された排水を浄化する方法として、油分の分解能力を向上させる目的で、特開2003−266062号広報に示されるような、微生物又は酵素を阻集器に自動添加する方法がある。
【0003】
また、特開平08−168753号広報に示されるように、微生物又は酵素を、浮上及び分離させた油分に対して、その都度供給する方法が開発されている。
【0004】
一方、機械加工工場等から排出される、鉱物油で汚染された排水の分解処理については、未だ有効な装置が開発されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、鉱物油で汚染された排水を、高速で分解処理し、且つノルマルヘキサン抽出物質含有量を、平成15年制令第435号改正下水道法施行令に定められた基準値である、1リットルにつき5ミリグラム以下を達成する装置を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する為に、本発明による鉱物油汚染水浄化処理装置は、鉱物油で汚染された排水中の浮上油を捕集して分解する第一分解槽と、水と油分が攪拌される事によって乳化した状態である親水性油を捕集して分解する第二分解槽と、第一分解槽及び第二分解槽を経て、なお残存する油分を濾過し脱色する濾過槽から構成される。
【0007】
また、本発明は、分解槽の内部に、微生物及び酵素を着床せしめた、多孔質鉱石であるゼオライトと、不織布製の吸着フィルターを成層して、分解槽内の底面と平行となる位置に固定された金網の上に担持された状態で装填し、上記の鉱物油汚染水を、ゼオライトと吸着フィルターの積層体である、自己浄化フィルターに通過させる事により、油分を吸着し且つ分解する事を特徴とする、鉱物油汚染水浄化処理装置を構成した。
【0008】
さらに、本発明に因る鉱物油汚染水の処理方法は、油分解槽に、槽内温度を微生物及び酵素の活性を最適にする目的で、加熱するヒーターと、且つ経時連続的に微生物及び酵素に酸素を供給し、活動を活性化する曝気装置を設置し、好気性発酵処理方法とした。
【0009】
本発明には、油分の効率的な吸着を目的として、レーヨン製の不織布で、不織布1グラムあたりで、油分6グラムを吸着できる性能以上の物が好適に使用できる。
【0010】
さらに、本発明には、鉱物油で汚染された排水を、装置内に装填した自己浄化フィルターに着床せしめた微生物及び酵素が必要とする、分解処理に掛かる時間を得るに十分な滞留時間とする事のできる、透気度0.5秒以上のレーヨン製不織布が好適に使用できる。
【0011】
さらに、本発明には、微生物及び酵素の培地としての着床面積を拡大する目的と、水流から微生物及び酵素を保護する目的で、多孔質鉱石であるゼオライトが好適に使用できる。
【0012】
またさらには、設置しようとする施設の規模又は鉱物油汚染水の汚染濃度、或いは処理を必要とする鉱物油汚染水の排出量に合わせて、本発明による装置の処理容量及び処理能力を、適宜改良する事が可能な構成としても良い。
【発明の効果】
【0013】
上記の本発明の装置によれば、油分の発酵分解速度を、飛躍的に向上する事が可能である。
【0014】
また、微生物及び酵素の活動により、油分を吸着する不織布フィルターの寿命を飛躍的に向上させる事が可能となり、装置のメンテナンスに掛かる費用及び労力、且つ時間的な負担を大幅に軽減する事が出来る。
【実施の形態】
【0015】
図1は、機械加工工場等の排水経路に、本発明による鉱物油汚染水浄化処理装置を設置した一形態を示し、図2及び図3によれば、1は阻集器、5は鉱物油汚染水汲み上げポンプ、第一分解槽2及び第二分解槽3は油分解槽であり、微生物及び酵素を着床せしめた多孔質鉱石であるゼオライト17と、油分を吸着する不織布フィルター18を積層して、金網19上に担持された状態で装填してあり、第一分解槽2及び第二分解槽3の底部には、ゼオライト17に着床せしめた、微生物及び酵素の活動を活性化する為、槽内の水温を適温に保つヒーター12、曝気装置15がそれぞれ配置され、槽内温度を安定させる目的で温度調節計13と温度センサー14が設置される。
【0016】
汲み上げポンプ5は、阻集器1から浮上油及び親水性油を、第一分解槽2へ供給し、第一分解槽2では、供給された鉱物油汚染水7に含まれる浮上油は、不織布フィルター18に吸着され、吸着された浮上油は、ゼオライト17に着床せしめた微生物及び酵素の活動によって分解される。
【0017】
第一分解槽2の内部は、ヒーター12によって、微生物及び酵素の活性を最適な状態に制御されると共に、曝気装置15により酸素を微生物及び酵素に供給し、好気性条件を維持し、微生物及び酵素の活性化を促す事により、不織布フィルター18に吸着された浮上油の分解時間を飛躍的に短縮する。
【0018】
第一分解槽2において分解されず第二分解槽3に送られた、主に水と油分が攪拌される事によって乳化した状態である親水性油は、第一分解槽2と同様の目的で、微生物及び酵素を着床せしめたゼオライト17と、油分を吸着する不織布フィルター18を積層して、金網19上に担持された状態で装填してあり、ヒーター12及び曝気装置15が配置され、槽内温度を安定させる目的で温度調節計13と温度センサー14が設置される。
【0019】
第一分解槽2及び第二分解槽3によって処理された鉱物油汚染水7は、濾過材として、活性炭21及び川砂20を充填した濾過槽4へ送られ、残存油分を基準値以下に低下させると共に脱色する事によって、河川又は下水へ放流する事が可能となる。
【実施例】
【0020】
図1に示す処理フローに従い、機械加工工場の鉱物油汚染水の浄化試験を行い、その効果を本発明の実施例として示す。
【0021】
鉱物油汚染水の汲み上げポンプ5の処理能力は毎分5リットルであり、稼働時間は毎日8時間として、一日の鉱物油汚染水処理能力は2400リットルとした。
【0022】
第一分解槽2の容積は25リットルであり、浮上油を吸着する目的で装填した不織布フィルター18は0.4平米であり、微生物及び酵素を着床せしめたゼオライト17は10キログラムである。
【0023】
第二分解槽3の容積は80リットルであり、親水性油を吸着する目的で装填した不織布フィルター18は0.2平米であり、微生物及び酵素を着床せしめたゼオライト17は40キログラムである。
【0024】
濾過槽4の容積は80リットルであり、残存油分を基準値以下に低下させると共に脱色する目的で装填した活性炭21は10キログラムであり、同様の目的で装填した川砂20は60キログラムである。
【0025】
試験期間を一ヶ月とし、毎週一回、微生物及び酵素を、第一分解槽2及び第二分解槽3へ、各々250ミリリットルずつ、合計500ミリリットルを補給した。
【0026】
第一分解槽2及び第二分解槽3の槽内温度は、ヒーター12によって摂氏35度に設定し、曝気装置15は24時間運転した。
【0027】
以上の方法と装置を用いて、一ヶ月間試験を行い、ノルマルヘキサン抽出物質含有量を、平成15年制令第435号改正下水道法施行令に定められた基準値である、1リットルにつき5ミリグラム以下に浄化した事を表1に示す通り確認した。
【0028】
また同時に、不織布フィルター及びゼオライトで構成する、自己浄化フィルターの交換時期判定試験を行ったが、一ヶ月間の試験期間中には、初期性能を維持しており、一ヶ月以上フィルターの交換を必要としない事を確認した。
【0029】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】機械加工工場等から排水される、鉱物油汚染水の浄化処理システムの実施例を示す構成例である。
【図2】図1の実施例における第一分解槽の内部構造である。
【図3】図1の実施例における第二分解槽の内部構造である。
【図4】図1の実施例における濾過槽の内部構造である。
【符号の説明】
【0031】
1 阻集器
2 第一分解槽
3 第二分解槽
4 濾過槽
5 鉱物油汚染水汲み上げポンプ
6 原水流入口
7 鉱物油汚染水原水
8 第一分解槽処理水
9 第二分解槽処理水
10 濾過槽処理水
11 浄化水排水口
12 ヒーター
13 温度調節計
14 温度センサー
15 曝気装置
16 曝気管
17 ゼオライト
18 不織布フィルター
19 金網
20 川砂
21 活性炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えば機械加工工場からの排水中の含有鉱物油の分解、除去及び、排水の浄化を可能とするフィルターを備えた濾過装置。
【請求項2】
耐油性及び耐水性を兼ね備えたレーヨン製不織布と、鉱物油及び親水性油を分解可能な、微生物及び酵素を着床せしめ、且つ微生物及び酵素の為の培地拡大と、更に微生物及び酵素を水流から保護する為の多孔質鉱石であるゼオライトとを成層し、自己浄化可能な濾過部を構成し、濾過部の頻繁な交換を必要としない濾過装置。
【請求項3】
ノルマルヘキサン抽出物濃度を、平成15年制令第435号改正下水道法施行令に定められた基準値である、1リットルにつき5ミリグラム以下に減少する事に有効な、経時連続的に微生物及び酵素に酸素を供給し、好気性発酵処理方法とする為、微生物及び酵素の活動を活性化する、曝気装置による鉱物油汚染水の曝気が出来る装置を備えた濾過装置。
【請求項4】
濾過材として、活性炭及び川砂を槽内に充填し、汚染水を脱色する事を可能とした濾過装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4から成る、小型且つ軽量で、設置される施設の規模、又は鉱物油汚染水の汚染濃度、或いは処理を必要とする鉱物油汚染水の排出量に合わせて、装置の処理容量及び処理能力を、適宜改良する事が可能な構成である濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−263698(P2006−263698A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121556(P2005−121556)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000252506)和田金属工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】