説明

銀ナノ粒子を用いた検体検出用センサ

センサは銀ナノ粒子からなり、銀ナノ粒子の実質的に全表面を検体との相互作用に、又は検体と相互作用し得るレセプタによる機能付与に用いることができる。銀ナノ粒子は、PVAのような高分子安定剤の存在下でナノ粒子を形成することにより調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ナノ粒子からなるセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
センサの開発は大きな関心が持たれている分野である。生物学的、化学的又は生化学的センサは、例えばペプチド、代謝物、分子又はイオンなどの関心のある標的種を量的又は質的に認識することができるデバイスである。
【0003】
生物検出の分野では、体液中の病気の病原体、ホルモン、抗体及びそれに類似する物を検出するのに用いる多くの診断方法がある。通常の臨床的診断方法には、例えば酵素免疫測定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、側方流動試験(LFT)が含まれる。化学及び環境検出の分野には、例えば滴定、酵素要求量試験、クロマトグラフィ、原子吸光、分光学/比色定量法など、検出のために用いられる多くの診断方法がある。これらは十分に確立された技術であるが、一般に多段階のプロセスが必要であり、かつ多くの場合、結果を明らかにするのに多くの時間及び/又は日数を要する。
【0004】
最近数年間で、金属ナノ粒子はセンサインジケータとして使用するのに適した候補であることが分かった。
【0005】
光のような外部の電磁場を金属に当てると、伝導電子が、「プラズマ振動」として知られる、摂動電荷分布を覆うように集合的に動く。従って、表面プラズモン共鳴(SPR)は、金属表面付近に局所化されたプラズマの集団的励起モードである。
【0006】
金属ナノ粒子の場合、表面プラズモンモードは、電子が閉じこめられる小さな範囲のために「制限」される、即ち表面プラズモンモードはナノ粒子の大きさの範囲と一致しなければならない。従って、金属ナノ粒子の表面プラズモン振動の共鳴振動数は、バルク金属のプラズマ振動数とは異なる。表面相互作用は光学特性を変更し、かつ金属ナノ粒子のSPRによって散乱する光のスペクトルプロファイルに影響を与えることができる。この特徴は、センシング相互作用におけるインジケータとして適用することができる。SPRを示すことが知られている金属ナノ粒子の中で、銀ナノ粒子は特に強いSPRを有し、バイオセンシングのために特に高い感度を発揮すると期待されている。
【0007】
金は、バイオセンサの発展のために最近研究されている主要な金属ナノ粒子である。1990年代後半以来、研究の大部分は金ナノ粒子を用いたDNAベースの方法の開発であった(1〜4)。金ナノ粒子に基づく一般的なバイオセンサでは、標的検体の存在下で観察することができる色の変化が、SPRにおける変化よりもむしろ凝集によって主に生じる。個々の金ナノ粒子は、それらを検体が集合させて、色の変化を生じさせるように機能付与することができ、分離している金ナノ粒子は肉眼に深紅色に見え、より大きな集合の金ナノ粒子は青色に見える。
【0008】
また、本発明は、光学的特性を制御した銀ナノ粒子の調製方法に関する。重要なことは、この方法が、様々な色の範囲において多量の銀ナノ粒子を簡単に製造するために単純な「湿式分析」技術を用いることである。
【0009】
色又はルミネセンスのようなナノ粒子の光学的特性は、ナノ粒子のサイズ及び形に大きく依存することが分かっている(5〜8)。更に、金属ナノ粒子は触媒として働くことが知られている。触媒は、化学反応が起こる速度を増加させる薬品として定義することができる。大きな金属結晶では、各表面が異なる触媒特性を有する。また、様々な形状のナノ粒子は異なる結晶面を有し、それぞれが特定の触媒特性を示すと考えることができる。巨視的な結晶と比較して、このような形状のナノ粒子から触媒作用の増強が予想される。
【0010】
ナノ粒子のサイズを制御する合成方法の開発が大きな進展を見せているのに対し、ナノ粒子のモルフォロジの制御は達成することがより困難であることが分かっている。画定された形状を有する銀ナノ粒子の調整方法は、わずかな数しか報告されていない。しかしながら、これらの方法の多くには、それを銀ナノ粒子の大量生産に適用することを妨げる多くの制限がある。
【0011】
Zhou外が報告する技術は、紫外線照射と安定剤としてポリ(ビニルアルコール)(PVA)を用いて、350nmまでの長さの銀ナノロッドを合成する(9)。このような光誘起法は高価であり、70時間までの長い照射時間を必要とする場合が多い。
【0012】
Murphy外(10)は、制御可能なアスペクト比及び40nm〜200nmの範囲の長さを有する銀ナノロッドを得るシード添加法を説明している。臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を用いて、ナノロッドの成長の鋳型としている。銀ナノロッドは、UV−Vis吸収スペクトルにおいて2つのプラズモンバンド−1つは400nmにおいて、及びもう1つはナノロッドの長さによって900〜1100nmの範囲の波長において−を示した。広く使用されているCTABは、高温においてのみ水溶性を示すので、安定剤として効率的ではない。これは、この方法に従って製造されるナノ材料の長期的安定性及び保存に問題を引き起こす。
【0013】
Mirkin外(7)は、球形銀ナノ粒子の照射によってエッジ長100nmの銀ナノプリズムを調製する光誘起法を開発した。これらのナノプリズムは、335nm、470nm及び670nmで3つのプラズモン共鳴を示した。しかしながら、この方法は、特定の波長範囲の光を要件としかつ125時間に至る照射時間を必要とする照射条件が要求される。
【0014】
Chen外(8)は、CTABのミセルの存在下でシード介在成長を通じて平均エッジ長68nmの三角錐台形銀ナノプレートを得た。同様に、CTABの使用によって、ナノ粒子合成の拡大に問題が生じる。
【0015】
Van Duyne外(11)は、固体基体上に三角形銀配列を調製するナノスフェアリソグラフィ(NSL)の使用を報告している。この方法で得られたナノ粒子は、90〜150nmの範囲の幅を有し、かつそれを用いて光学的バイオセンサが開発されている(12〜15)。NSLは、化学蒸着法(CVD)と組み合わせた高分子ナノスフェアの犠牲層を用いて、基体上にナノ粒子の配列を生成する。しかしながら、NSLは複雑かつ費用を要する技術であり、今のところ実験室での方法であって工業的には証明されていない。この方法をバイオセンシングに摘要する場合の第1の欠点は、銀ナノ粒子の利用可能なセンサ表面積が、固体基体に結合された表面積が不活性であるために、減少することである。更に、基体に結合されていることによって、バイオセンシングの用途に用いる場合に、これらナノ粒子の柔軟性が大きく低減する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、これらの問題の多くを解消する検出方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、銀ナノ粒子からなるセンサであって、前記銀ナノ粒子の全表面が検体との相互作用に、又は検体と相互作用し得るレセプタによる機能付与に使用できるセンサが提供される。
【0018】
或る実施例では、標的検体に専用のレセプタを前記銀ナノ粒子の表面に付着させる。
前記レセプタは、銀ナノ粒子の表面に直接結合することができる。
或る実施例では、前記レセプタと銀ナノ粒子との間にリンカーが設けられる。
或る実施例では、前記リンカーが有機又は無機官能基を含む。前記官能基は、チオール基又はアミン基から構成することができる。
複数のタイプのレセプタを銀ナノ粒子に付着させることができる。
【0019】
或る実施例では、前記銀ナノ粒子が安定し、成形され、かつ実質的に板状の構造をなす。
【0020】
好ましい実施例では、銀ナノ粒子の寸法が5〜100nmの範囲である。銀ナノ粒子の寸法は、18nm〜32nmの範囲とすることができる。
【0021】
或る実施例では、少なくとも一部の前記銀ナノ粒子のモルフォロジが六角形及び/又は三角形である。少なくとも一部の銀ナノ粒子は400nm領域でSPRピークを示すことができる。少なくとも一部の銀ナノ粒子は、470〜600nm領域でSPRピークを示す場合がある。少なくとも一部の銀ナノ粒子は、340nm領域でSPRピークを示すことができる。
【0022】
或る場合には、前記銀ナノ粒子が主に非球形のモルフォロジを示す。
【0023】
前記銀ナノ粒子は透過性基体上に固定化される。
前記銀ナノ粒子は膜上に配置される。
【0024】
或る実施例では、前記銀ナノ粒子が所定の形体に形成される。前記銀ナノ粒子は或る形体にキャスト成形され、プレス成形され、又はモールド成形することができる。
【0025】
或る場合には、前記ナノ粒子が溶媒系に存在する。前記溶媒系には水を主成分とする系がある。
【0026】
別の側面では、本発明により、検体を検出するために、前記検体を本発明のセンサと接触させ、かつ検出可能な変化を観察する過程からなる方法が提供される。この検出可能な変化は、吸収スペクトルにおける変化である。前記検出可能な変化には、質的又は量的変化がある。
【0027】
或る場合には、前記変化が肉眼で観察可能な色の変化である。
【0028】
或る実施例では、前記吸収スペクトルの変化が200nm〜900nmの範囲で検出されるシフトである。
前記シフトが1〜150nmであることが好ましい。前記シフトは5〜50nmとすることができる。
【0029】
別の側面では、本発明により、銀ナノ粒子を調製するための方法であって、高分子安定剤の存在下で前記銀ナノ粒子を形成する過程からなる方法が提供される。
【0030】
或る実施例では、前記方法は、前記高分子安定剤の濃度を変化させることにより、前記銀ナノ粒子の光学的応答を制御する過程からなる。
【0031】
或る実施例では、前記高分子安定剤が10kDaより大きい分子量を有する。前記高分子安定剤の分子量は、1300kDa未満とすることができる。
【0032】
或る場合には、前記高分子安定剤が水溶性である。
【0033】
前記高分子安定剤は、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(アクリル酸)の1つ又は複数から選択される。
或る場合には、前記高分子安定剤がポリ(ビニルアルコール)である。
【0034】
或る実施例では、前記方法が銀塩を還元する過程を有する。前記銀塩は硝酸銀とすることができる。
或る実施例では、前記還元がシード銀ナノ粒子の存在下で行われる。
【0035】
好ましくは、前記反応がシード銀ナノ粒子の存在下で行われる。硝酸銀と銀シードとの割合は50:1に等しく又はそれより大きくすることができる。
或る実施例では、硝酸銀と銀シードとの割合が50:1と200:1との間である。一般に、硝酸銀と銀シードとの割合は50:1と100:1との間である。
【0036】
或る実施例では、前記反応が水媒体中で行われる。
【0037】
前記還元は10℃〜60℃の温度で行うことができ、一般に前記還元は約40℃の温度で行われる。
【0038】
前記反応は暗所で行われ、又は前記反応は環境光条件で行うことができ、又は前記反応は制御された照射条件下で行うことができる。
【0039】
また、本発明によれば、本発明の方法により作られるナノ粒子が提供される。これらは、例えば本明細書中に記載するセンサにおいて使用することができる。
【0040】
別の側面では、本発明により、サイズが5〜100nmである銀ナノ粒子が提供される。前記粒子は、主に非球形のモルフォロジを示すことができる。
或る場合には、前記ナノ粒子のサイズが10〜50mmの間である。
別の場合には、前記ナノ粒子の平均サイズが31nm±8nmである。
別の場合には、前記ナノ粒子の平均サイズが20nm±8nmである。
別の場合には、前記ナノ粒子の平均サイズが22nm±8nmである。
【0041】
また、本発明によれば、センシング、バイオセンシング、イメージング、データの記憶、触媒のいずれかにおける銀ナノ粒子の使用方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、添付図面を参照しつつ、以下に単なる実施例として記載される幾つかの実施態様の詳細な説明からより明確に理解することができる。
本発明によれば、検体を検出するための銀ナノ粒子からなるセンサが提供される。
【0043】
また、本発明によれば、それに付着させた検出手段を有する銀ナノ粒子からなり、該銀ナノ粒子が、検体の結合に応答してそのUV可視吸収スペクトルに検出可能な変化を起こさせるセンサが提供される。この変化は、機器により又は肉眼により観察することができる。
【0044】
金属ナノ粒子は、生物種又は化学種と密接に相互作用する程度に小さい。このような相互作用は、匹敵するサイズ及びナノ粒子の大きな表面積対容量比によって容易になる。分子種は、容易にナノ粒子表面に付着させることができる。非特異的な吸収又は共有静電結合を含む相互作用によって可能となる前記付着は、ナノ粒子のSPRに作用し、スペクトル応答を変化させる。このスペクトル応答の変化は、スペクトルピークの波長のシフト、ピーク吸光度の減少又は増加として、又はこれらの組合せとして観察することができる。この周囲の環境における分子に対するこれらナノ粒子の表面の感度が、それをセンサの用途に理想的なものにしている。
【0045】
サイズ、形状及び組成が異なる金属ナノ粒子は、その明瞭なSPRによる様々な波長の光を散乱させる。同様にこれは、これらの要素がSPRのスペクトル応答に影響することによるものである。最も一般的な金属ナノ粒子の形状は球形であり、特徴的な単一のSPRスペクトルピークを有する。金属ナノ粒子が非球形形状、例えば卵形を有する場合には、SPRは2つ以上のピークを示すことになる。これが起こるのは、ナノ粒子がもはやアイソメトリックではなく、かつSPR電子が複数の振動軸を有するからである。卵形ナノ粒子の場合には、長軸及び短軸に関する電子振動がSPRスペクトルに少なくとも2つのピークを生じさせることになる。非アイソメトリック金属ナノ粒子の利点はその感度が大きくなることであり、これは部分的に追加のSPRスペクトルピークの存在により生じる。最も効果的で好ましいナノ粒子のモルフォルジは球形であるので、非球形粒子の追加のSPRピークは、従って局所的な環境に対して格別に感度が高く、かつスペクトルプロファイルにおける変化は、単一のSPRピークを有する球形の金属ナノ粒子の場合よりも容易に観察することができる。
【0046】
銀ナノ粒子は金よりも好ましい。これは、図1aを図3aと比較することにより分かるように、銀ナノ粒子のより強くかつ明瞭なSPRスペクトルによるものであり、はるかに高い感度の応答を示すことを意味している。しかしながら、非常に最近まで、それらを安定かつ利用可能な形で調製することは不可能であった。
【0047】
本明細書に記載される方法によって、長期間に亘って安定でありかつ凝集しない、溶解状態で様々な色及び形状を有する広範な銀ナノ粒子の調製が可能になる。
【0048】
銀ナノ粒子の実質的に全表面は、ナノ粒子が水媒体のような溶媒を用いた系において製造し得ることから、デポジション法による場合よりも、検体との相互作用、又は検体と相互作用し得るレセプタによる機能付与に利用可能である。
【0049】
4〜40℃の範囲の温度及び1%w/v〜5%w/vの範囲の安定剤濃度で環境光条件で前記調製を行うことによって、様々な色及びサイズを有する銀ナノ粒子を得ることが可能である。以下に例示するように様々に異なる物について説明する。
【0050】
(a)肉眼に黄色に見える球形銀ナノ粒子。これらの粒子は、31±9nmの平均径を有し、かつ410〜450nmの範囲で起こる単一の吸収バンドを示す。
(b)肉眼に赤色に見える球形及び三角形上の銀ナノ粒子の混合物。球形粒子の平均径は20±8nmであり、三角形粒子の平均エッジ長さは20±8nmである。この粒子の混合物は2つの吸収バンドを示す。1つは405〜420nmの範囲で発生し、球形銀ナノ粒子の存在に関連する。第2の吸収バンドは500〜530nmの範囲で発生し、三角形銀ナノ粒子の存在に関連する。
(c)肉眼に紫色に見える球形、三角形及び六角形状の銀ナノ粒子の混合物。球形粒子の平均径は20±8nmであり、三角形粒子の平均エッジ長さは22±8nmであり、六角形粒子の対向する面間の平均距離も同様に22±8nmである。この粒子の混合物は2つの吸収バンドを示す。1つは405〜420nmの範囲で発生し、球形銀ナノ粒子の存在に関係する。第2の吸収バンドは530〜550nmの範囲で発生し、三角形及び六角形銀ナノ粒子の存在に関係する。
(d)肉眼に青色に見える球形及び六角形状の銀ナノ粒子の混合物。球形粒子の平均径は19±4.5nmであり、六角形粒子の対向する面間の平均距離は同様に19±4.5nmである。この粒子の混合物は2つの吸収バンドを示す。1つは405〜420nmの範囲で発生し、球形銀ナノ粒子の存在に関係する。第2の吸収バンドは560〜600nmの範囲で発生し、六角形銀ナノ粒子の存在に関係している。
【0051】
例えばキセノンランプを用いて制御された照射条件下で環境温度で前記調製を行うことにより、肉眼に赤色に見える三角形及び六角形金ナノ粒子の混合物を得ることができる。三角形粒子の平均エッジ長は56±7nmであり、六角形粒子の対向する面間の平均距離も同様に56±7nmである。この粒子の混合物は、490〜510nmの領域で発生する1つの吸収バンドを示す。照射条件を変化させることにより三角形状のみ、六角形状のみ、又は三角形状及び六角形状の混合物からなり、約450nm〜約650nmの範囲で発生するように調製された単一のプラズモンバンドを有する粒子を製造することができる。
【0052】
4〜40℃の範囲の温度及び1%w/v〜5%w/vの範囲の安定剤濃度で暗所で前記調製を行うことにより、様々な色及びサイズを有する銀ナノ粒子を得ることができる。以下に様々なものを例示する。
【0053】
a)肉眼にオレンジ色に見える銀ナノ粒子。この粒子は、450nm付近で発生する単一のプラズモンバンドを示す。
【0054】
b)オレンジ色銀ナノ粒子。この試料は、球形の銀ナノ粒子と、三角錐台形銀ナノディスクとを含む。これら粒子の平均サイズは27±5.5nmである。この試料は2つのプラズモンバンドを示す。第1のバンドは410〜420nmの領域で発生する。第2のバンドは470〜490nmの領域で発生する。
【0055】
c)青色銀ナノ粒子。この試料のナノ粒子のモルフォロジ及びサイズは依然として決まっていない。この試料は2つのプラズモンバンドを示す。第1のバンドは410〜420nmの領域で発生する。第2のバンドは570〜600nmの領域で発生する。
【0056】
前記方法は、様々な形状を有する狭いサイズ分布のナノ粒子を製造するように調製し得ることが分かる。狭いサイズ分布の利点は、吸収スペクトルの帯域幅が同様に狭く、例えば300mmではなく50mm〜100mmに、又は大きなサイズ分布についてより大きくなることである。この狭いサイズ分布は、SPR応答の読み取りを容易にし、色の変化をより明確かつ観察可能にし、従って本発明のナノ粒子を用いて効果的かつ効率的なセンサ又は検査システムを作ることができる。
【0057】
銀ナノ粒子は、10kDより大きくかつ1300kDより小さい範囲の分子量の高分子安定剤によって安定化することができる。銀ナノ粒子は、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピドリドン)(PVP)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)又はポリ(アクリル酸)(PAA)を含むが、これらに限定されない或る範囲の水溶性高分子安定剤により安定化することができる。好ましくは、銀ナノ粒子を調製するのに使用する安定剤がPVAであり、より好ましくは前記安定剤が、89kD〜98kDの範囲の分子量を有するPVAである。
【0058】
銀イオンの銀シードに対するモル比が、前記ナノ粒子の最終的なサイズに影響を与える。角を有する粒子の外観は、或るナノ粒子サイズ(約20nm)以上で識別することができる。銀ナノ粒子は、10:1〜400:1の範囲、より好ましくは50:1〜400:1、又は最も好ましくは100:1の範囲のイオン対シードの割合を用いて調整することができる。イオン対シードの割合が高くなるほど、得られるナノ粒子のサイズが大きくなる。
【0059】
図1a及び図1bは球形ナノ粒子にのみ関連する。図2a及び図2bは球形、三角形及び六角形のナノ粒子の混合物に関連する。球形及び角を有するナノ粒子の混合物であるナノ粒子を用いることは、角付きナノ粒子が球形のものよりもより敏感であることから、有用である。2つのナノ粒子のタイプのSPRピークにおいて誘導される変化の割合は、センシングについて重要な情報を提供することができる。
【0060】
図3(a)及び図3(b)は、三角形及び六角形のナノ粒子にのみ関連する。410nmの領域にピークが存在しないことは、図3(b)のTEM画像で確認されるように、球形ナノ粒子が存在しないことを示している。太陽ランプ光源から強度を増した環境光を、これらナノ粒子の調製において用いた。これら角付きナノ粒子は、その非常に高い感度により特に有利である。
【0061】
図4(a)は、本発明の合成方法により製造されるナノ粒子のスペクトルを示しており、この方法を用いて赤色から紫色、青色までの範囲の様々な色を有する銀ナノ粒子を調製できることを説明している。これは、反応条件、特に使用される安定剤の濃度の変化によって行われる。これにより、長い波長のSPRバンドの位置を調整することが可能である。SPRバンド位置は、試料に存在する主なナノ粒子の形状に依存する。図4(b)は、図4(a)の各試料に関連する主なナノ粒子のモルフォロジを示している。
【0062】
成形した(shaped)銀ナノ粒子の精製について報告されている他の方法と比較して、本発明の方法では、球形及び非球形双方の銀ナノ粒子の形成が光誘起法ではなく、銀ナノ粒子の精製ののための光に依存していない。これは、照射及び環境光が存在しない状態で調製した球形及び三角錐台形のモルフォロジを有する銀ナノ粒子のスペクトルを示す図5に説明されている。図5の銀ナノ粒子は、暗室内で前記反応を行うことによって調製した。
【0063】
別のナノ粒子合成
同様に銀ナノ粒子を、サン外(16)により報告されている別の方法で調製した。この方法は、10時間を超えるレングスリフラックス期間を必要とする。図6(a)に示す銀ナノ粒子のスペクトルは460nmに主ピークを示し、第2のフィーチャーが一般に銀三角形ナノプレートについて期待される347nmの領域に表れる。図6(b)に示すTEMは、三角形及び六角形のモルフォロジを含む成形ナノ粒子の存在を確認している。本明細書に記載される方法で製造した銀ナノ粒子と対比して、サンの方法により製造したナノ粒子は、ナノ粒子径が約10nmから同じ試料で観察される100nmより大きい範囲にあるサイズの広い分散を示す。また、大規模な凝集はTEM画像で観察可能であり、これはナノ粒子の不利な特性と考えられる。また、これは本明細書中に記載される方法で製造した銀ナノ粒子と対照的である。
【0064】
図10には、サンの方法により製造された銀ナノ粒子のSPR応答が示されている。DMSOの添加時に、より長い波長への6nmのシフトが、本明細書に記載される方法で製造した銀ナノ粒子の場合に発生するのと同様にして観察される。従って、SPR応答は同様に、別の方法で製造される銀ナノ粒子により示され、かつそのような銀ナノ粒子を同様にセンシングのために用いることができる。
【0065】
図8及び図9は、銀ナノ粒子の感度が金ナノ粒子よりも強化されていることを示している。銀ナノ粒子がジメチルスルホキシド(DMSO)に応答して11nmのシフトを示すのに対し、金の場合には、僅か0.5のシフトしか認められない。
【0066】
図11は、本発明の銀ナノ粒子ベースのセンサによる分子N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)の検出を示している。EDCに対するSPR応答が、10μg/ml〜10mg/mlの範囲の濃度で観察された。
【0067】
本発明の銀ナノ粒子は、安定した形で容易に合成され、かつ長時間にわたって安定した状態を維持する。前記銀ナノ粒子は溶解状態で合成される。前記ナノ粒子の安定性が図12に示されている。8ヶ月後に、僅かな変化が相対強度及びプラズモンバンドの吸収のプロファイルに観察された。500nmにおけるバンドのピーク最大値の位置における僅か5nmの小さな青色のシフトが認められる。ナノ粒子の凝集または沈殿が無いこと及び長期間に亘るスペクトルの一致は、本発明の銀ナノ粒子の長期間に亘る非常に高い安定性を示している。本発明の銀ナノ粒子は、金属及び非金属ナノ粒子双方で作用させた時に一般に経験するように凝集したり凝集の問題を生じないことが分かる。
【0068】
分子種は、例えば自己組織化単分子膜(SMA)の形態でナノ粒子の表面に容易に付着させることができ、表面相互作用によりナノ粒子の吸収スペクトルに変化が生じる。この変化は、肉眼に見ることができる色の変化として、又はスペクトルのシフト若しくは強度の変化として観察することができ、標的検体を検出する際のインジケータとして使用することができる。
【0069】
前記銀ナノ粒子に分子種を容易に付着することができる能力が、それを生物、化学又は生化学センサとして使用するために理想的なものにしている。標的検体を認識することができるレセプタ分子を銀ナノ粒子表面に付着させることができる。標的分子との相互作用の際、ナノ粒子−レセプタ系が、標的検体の検出が行われることを示すのに役立つナノ粒子のスペクトルの変化を生じさせる。
【0070】
本発明のセンサの安定した銀ナノ粒子を用いることによって、標的検体を検出する測定を行うのに必要な時間が、既存の診断方法と比較して大幅に減少することが分かった。
【0071】
銀ナノ粒子のSPRが固有の超高速電子特性を有すると考えれば、前記センサの検出速度を制限する要素は、レセプタ及び検体が相互作用する速度である。前記レセプタ及び検体が一旦相互作用すると、得られたスペクトルのプロファイルは、ビオチンレセプタによるストレプトアビジン標的の検出の例に関する図14(球形ナノ粒子)及び図15(a)(球形、三角形及び六角形のナノ粒子)に示すように、長い年月をかけて変化することはない。瞬間的に相互作用しないレセプタ−検体の対の場合には、相互作用が起こる速度が、相互作用の過程においてスペクトルの変化を観察することによって決定することができる。
【0072】
図14は、カルボキシル基を末端に有するチオール分子(メルカプトウンデカン酸)の膜層の球形銀ナノ粒子への付着及びそれに続くアミン末端ビオチン分子の銀ナノ粒子表面へのカップリングがストレプトアビジンのセンサを形成することを示している。
【0073】
検体に対するセンサの応答は、広範囲に亘る標的検体の濃度について再現可能である。ストレプトアビジンの場合の応答が表1に示されている。既存の方法は、検体の濃度が低い場合にのみ感度を有する。例えば、ELISAは一般に、1μg/mlから200pg/mlまで、特に10pg/mlまでの範囲の濃度で使われるが、この濃度範囲以外で再現可能な応答を生じることはできない。その結果、ELISAを行う場合には通常前処理段階が必要であり、未知の試料の場合には、分析サイクルを繰り返すことがしばしば必要である。
【0074】
周知のビオチン−ストレプトアビジン相互作用を、生体認識モデルシステムの例として用いた。ビオチンをレセプタとして用い、かつストレプトアビジンを標的として用いた。 図13(a)は前記センサの構成を概略的に示している。レセプタ分子は、例えばチオール基又はアミン基を介して銀ナノ粒子に付着することができる。これらの基は、レセプタ分子の化学構造の一部分とすることができ、又は次のように、リンカー分子の使用により導入することができる。
【0075】
1.アミン末端ビオチンは、銀ナノ粒子に直接付着させることができる。
2.2段階処理において、ビオチン及びチオールを、銀粒子への付着前に最初に互いに結合させることができる。
3.間接的組立方法を用いて、最初にチオールリンカーを銀ナノ粒子に付着させた。得られたチオール単分子層を有する銀ナノ粒子を次にビオチン溶液でインキュベートし、その結果銀ナノ粒子の表面にビオチン化単分子層を形成した。
【0076】
図13(b)〜(d)は、2つ以上の標的検体を同時に検出し得るセンサの構造を概略的に示している。図13(b)は、2つ以上の標的検体のレセプタが、同じバッチのナノ粒子上に付着させることができる。得られたセンサは、試料マトリックスに1つ又は複数の標的検体が存在する場合に応答を生じる。これは、現在金ナノ粒子を用いて実現できないが、その理由は、金依存の検査で観察される色の変化の原因である凝集プロセスには、検体のより高い濃度が必要だからである。
【0077】
図13(c)は、それぞれに別個のバッチのナノ粒子からなり、各バッチに異なる標的検体用のレセプタが付着している多数のセンサを調製できることを示している。各センサは、同じ多孔性基体、例えばニトロセルロース膜上に付着される。試料は各センサに塗布され、各センサの試料に対する応答が同時に測定される。
【0078】
図13(d)は、それぞれに別個のバッチのナノ粒子からなり、各バッチに異なる標的検体用のレセプタが付着した多数のセンサを、このように製造された各センサがUV可視スペクトルにおいて別個の吸収ピークを示すように調整する様子を示している。各センサのアリコートは単一の溶液中に結合され、試料マトリックスが添加されると、存在する標的検体の吸収ピークがシフトする。試料マトリックスに1つ又は複数の標的検体が存在しない場合には、そのセンサのピークにシフトは観察されないことになる。
【0079】
本発明のこれら実施例の利点は、多数の標的検体の迅速な検査を可能にしかつ最少量の試料しか必要としないことである。
【0080】
銀ナノ粒子へのレセプタの付着は、球形、三角形及び六角形の銀ナノ粒子へのアミン末端ビオチンのカップリングに関する図6(b)に示すように、ナノ粒子のスペクトルの変化によってモニタすることができる。
【0081】
次に、ビオチン化した銀ナノ粒子を標的分子、ストレプトアビジンと反応させた。図14及び図15(a)は、球形ナノ粒子及び球形、三角形並びに六角形ナノ粒子の混合物をそれぞれ用いて、銀ナノ粒子のみ、ビオチンを有する銀ナノ粒子がストレプトアビジンセンサを構成する、本発明のストレプトアビジン用センサを調製する各段階で記録したスペクトルを示している。図15(a)のセンサの調製の場合、ビオチン化後に、スペクトルの528nmピークが、428nmにおけるピークに関して減少し、12nmだけより長い波長へシフトした。図15(b)は、図15(a)のビオチン化ナノ粒子の5μg/mlの濃度のおけるストレプトアビジンに対する応答を示している。銀がストレプトアビジンと反応することによって、528nmにおけるピークが428nmにおけるピークに関して更に減少し、更に4nmのシフトを生じることになる。これらのスペクトルに観察される変化は、ビオチンが銀ナノ粒子に結合してセンサを形成していること、及びこれに続けてこのセンサによるストレプトアビジンの検出を確認している。1日後、スペクトルのプロファイルは、調製の最後に記録されたスペクトルと比較して変化しておらず、前記センサの質的応答が長時間に亘って安定していることを示している。
【0082】
本発明のセンサは、広い範囲の濃度に亘って標的分子を検出し得ることが分かった。表1は、ストレプトアビジン用センサを形成するべく0.1mMのビオチンでビオチン化した銀ナノ粒子の、0.1mg/ml〜10ng/mlの範囲の濃度のストレプトアビジンに対する応答を示している。この場合、ビオチンをレセプタとして使用し、かつストレプトアビジンを標的として使用した。前記センサによる応答は、UV可視吸収スペクトル(SPR応答)におけるSPR吸収最大値のシフトの形を取る。図16は、表1のデータをプロットした図を示している。SPR応答は、標的の濃度に比例することが分かり、本発明のセンサは量的に使用し得ることを示した。図16のデータの直線的な適合は、この本発明の特定のセンサがストレプトアビジン濃度(0.01μg/ml〜10μg/ml)に対して直線的な応答をし、かつこの特定のセンサの動作範囲として考えることができる領域を示している。図16のデータにより示すように、前記センサの応答は10μg/mlより高いストレプトアビジン濃度で飽和し始める。
【0083】
【表1】

【0084】
図17は、本発明の別のストレプトアビジン用のセンサの、100pg/ml〜10μg/mlの範囲の濃度のストレプトアビジンに対する応答を示す一連の規格化スペクトルである。図17のセンサのSPR応答が図18にプロットして図示されている。
【0085】
これは、前記センサのSPR応答が、この特定のセンサについて、100pg/ml及び1μg/mlの範囲でそれぞれ下側の検出限界及び上側の検出限界を作る100pg/mlより低い濃度で及び1μg/mlより高い濃度で飽和することを示している。従って、このセンサは、これらの両限界の間の濃度範囲で動作すると考えられる。
【0086】
また、蛋白質のような大きい分子を銀ナノ粒子に付着させることができる。本発明の銀ナノ粒子は、全体に負電荷を有すると考えられる。この電荷は、蛋白質のような大きい分子を銀表面に結合できるようにする上で役割を果たすことができる。蛋白質の場合には、蛋白質(リジン)の正味正電荷を含む多くの特徴が、疎水結合(トリプトファン)及び硫黄結合(シスチン及びメチニン)と共に、前記ナノ粒子と蛋白質間の付着を容易にすることができる。これにより、蛋白質がナノ粒子表面に容易に吸収され得るようにする。また、蛋白質はナノ粒子上にカップリングすることができる。ナノ粒子を調整する際のクエン酸三ナトリウムの使用は、ナノ粒子表面上にカルボキシル基が存在することを意味している。これが、蛋白質上のアミノ基をナノ粒子上のカルボキシル基に結合させる反応により蛋白質をナノ粒子に付着させるカルボジイミドカップリングのような周知のカップリング方法の使用を可能にしている。多くの場合、銀ナノ粒子は三角形又は六角形の形状を有する。これらの角が、蛋白質の付着及びセンシングのための活性化された形として現れる。
【0087】
銀ナノ粒子表面への蛋白質吸収の例として2つの蛋白質、ウシ血清アルブミン(BSA)とストレプトアビジンとを使用する。様々な分子、この場合には蛋白質に対する銀ナノ粒子の明瞭な応答を、図19に示すように、ストレプトアビジンの吸収がSPRピークの長い方の周波数へのシフトを誘起するのに対し、BSAが図20に示すようにSPRピークの短い波長へのシフトを誘起する場合について本明細書に説明する。図20のBSA吸収の場合には、遠心分離を用いて、結合していない過剰な蛋白質を取り除いた。BSAの存在に伴って、図20に示すように、その特徴的な吸収ピークが280nm領域に起こる場合がある。元の銀はこのスペクトル領域に弱いフィーチャーしか生じないことを注意することができる。10mg/mlのBSA溶液を添加すると、280nmフィーチャーの飽和が起こる。遠心分離の後、付着したBSAの存在が280nm領域におけるピークで示される。
【0088】
図21(a)及び図21(b)は、銀ナノ粒子の表面における反応又は相互作用の速度に関する情報を提供する銀ナノ粒子の能力を示している。図21(b)は、ウシ血清アルブミン(BSA)のその表面への長期間に亘る吸光度応答したSPRスペクトルの発生を示している。角付き銀ナノ粒子(三角形及び六角形)に対応する第2のピークのSPRは、元々493nmに位置し、BSA吸収の過程で、SPR最大値が483nmへと約10nmだけシフトする。また、このピークの吸光度の減少は、7.9%の吸光度変化に対応する、吸光度が1.14mm−1から1.05mm−1に吸光度が変化する場合に観察される。また、この実施例は、角付き銀ナノ粒子の感度が球形銀ナノ粒子よりも増加することを示している。そのSPRが425nm領域に位置する球形ナノ粒子は、BSA吸収に応答する検出可能なSPRシフトが小さいことを示している。5.2%の吸収変化は、球形ナノ粒子のピークについて観察される。図21(b)は、角付きナノ粒子のSPRシフト及び吸収変化を時間と共に示す線図である。
【0089】
ナノ粒子の蛋白質カバレージは、カルボジイミドカップリングのようなカップリング法を用いることにより、増加させることができる。図22は、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いた結果としてBSA被覆ナノ粒子を示している。今回も、280nmフィーチャーが遠心分離時に強いまま残っており、ナノ粒子表面へのBSAの結合を示している。
【0090】
銀ナノ粒子の蛋白質コーティングを用いて、ELISA又は側方流動試験に類似のセンサを構成することができる。銀ナノ粒子を抗体又は抗原で被覆することによって、抗体/抗原被覆銀ナノ粒子は、対応する抗体又は抗原のセンサとなる。一例として、人間の記憶喪失性貝中毒(ASP)を生じさせ得るドウモイ酸の銀ナノ粒子センサを構成した。ドウモイ酸の試験は、一般にELISA試験を用いて行われる。側方流動試験の形態を、このタイプの試験形態における銀ナノ粒子の有用性を説明する試験で用いた。側方流動試験に使用される一般的な材料である金ナノ粒子を、対照試験として用いた。この試験を図23に示す。レセプタはドウモイ酸抗体(抗ドウモイ酸)であり、これを金ナノ粒子上に吸収させ、かつEDCを銀ナノ粒子上に結合させた。側方流動試験の試験片は、抗ドウモイ酸に非特異的に結合し得るラビット抗マウスの対照線と、ドウモイ酸をBSAに共役させたテスト線を有する。銀ナノ粒子及び金ナノ粒子の試験双方を効率的に実行し、従って銀ナノ粒子の側方流動試験の形態への有効な適用を説明した。
【0091】
本発明の抗体、抗IgG用のセンサのための光学フォーマットが図24(b)に示されている。図24(a)は、抗IgGセンサの調製の各段階に関する一連の正規化スペクトルを示している。抗原IgGをレセプタとして使用する。前記センサの0.1μgの抗IgGに対する応答が図24(b)に示され、21nmの大きなSPRシフトが認められる。この大きさのSPRシフトは、肉眼で容易に検出し得る色の変化に対応している。
【0092】
前記センサの選択性は、所望の標的検体との相互作用のみを可能にするレセプタの存在により達成される。銀ナノ粒子の全表面積にレセプタが完全に及ばない場合には、試料マトリックスに存在する種が露出した銀表面と相互作用することにより生じる可能性がある障害を、遮断方法を用いて防止することができる。この遮断方法は、非反応層(例えば、アルブミン蛋白質)をレセプタ被覆ナノ粒子に結合されることを含む。この原理は、金ナノ粒子技術の用途においてよく知られている。
【0093】
また、前記センサは、図25に示すように固体の形態において使用することができる。本発明のセンサは、ニトロセルロース膜上に付着させ、その孔径を、標的検体の希釈溶液が前記膜を通過するのに対し、センサのナノ粒子がその構造にトラップされた状態となるように選択した。検体の溶液が前記膜を通過すると、前記検体は前記ナノ粒子上に存在するレセプタと相互作用して、スペクトルの検出可能な変化を生じさせる。
【0094】
本発明のセンサは、ポリマ溶液から膜としてキャスト成形することができる。
【0095】
レセプタ及びリンカー分子の化学構造をテーラーメイドする、即ち仕立てることによって、前記センサのその標的検体への感度を制御することが可能である。従って、定性的に用いたとき、前記センサは、所定の濃度を超える場合にのみその標的検体に対する正の応答を発生するように仕立てることができる。本発明のセンサは、未熟なオペレータでさえ使用が容易であり、屋外での使用に適した迅速検査装置として開発することができる。吸収スペクトルにおける変化を測定するためのあらゆる適当な手段、例えば分光学又は肉眼に見ることができる色の変化を用いることができる。
【0096】
本発明のセンサは、ウエスタンブロット法、直接酵素検査法、放射線免疫検査法及び酵素免疫測定法(ELISA)のような従来使用されている検出方法を置き換え又は補完する代わりの検査方法を提供する。前記センサは、異なる標的検体を検出するように設計することができる。前記センサは、同じ検査で複数の検体を検出するように設計することができる。
【0097】
前記センサは、臨床、化学及び環境分析の分野で生物、化学及び生化学種の検出に適用することができる。
【0098】
前記センサは、生物、化学及び生化学分析において関心のある所定の標的に特定したハンドヘルドデバイスの形態で製造することができる。このようなハンドヘルドデバイスの概略を図27に示す。例えば狭いスペクトル発光帯域幅を有する発光ダイオード(LED)を、検出器の光源として使用することができる。少量の試料溶液をデバイス内のセンサ領域即ちキュベットに加える。前記キュベットは、デバイスの一回使用の部品とすることができる。標的検体の検出に応答して生じる瞬間的な色の変化は、同様に狭いスペクトル応答範囲を有するフォトダイオードにより測定される。誘起された色の変化は、LED発光のセンサによるスペクトル透過における変化に対応する。前記フォトダイオードは、前記透過の変化をその信号の電圧における変化として記録する。
【0099】
前記デバイスは、標的検体に対する質的又は量的応答を生成するように構成することができる。定性的デバイスとして使用する場合、検体の検出に対応する信号電圧を用いて、デバイスの全面にLEDを点灯させ、それを利用者が「イエス」の応答として認識するようにする。前記デバイスは、検体が存在しない場合に、第2のLEDが点灯し、それを利用者が「ノー」の応答として認識するように構成される。定量的デバイスとして使用する場合には、前記デバイスは、存在する検体の濃度に比例して信号電圧が変化するように較正される。
【0100】
このような別のハンドヘルドデバイスの概略が図28に示されている。この場合、ハンドヘルドデバイスは一回使用のキットである。少量の試料溶液を、パッドに埋め込まれたセンサを含む試験領域に加える。フィルタシステムを用いて、試験に関係のない試料材料を取り除くことができる。フィルタ材料を取り除くと、標的検体の検出に対する前記センサの色変化の応答が観察される。前記システムは、標的検体の正の検出に対応する色変化のための参照カードが利用者による比較用に提供されるように構成する。同様に、標的検体の検出が無い場合の参照用色も提供される。
【0101】
化学及び環境分析の分野で使用するための携帯型分光光度計が市販されている。様々な検体の検出が必要な場合には、関係する各検体毎に処理を繰り返し行わなければならない。対照的に、本発明のセンサは、単一のセンサに2つ又はそれ以上のレセプタを組み込むことができ、それによりオペレータは多数の検体を同時に試験することができる。
【0102】
銀ナノ粒子からなる本発明のセンサは、公知の検出方法に対して、他の多くの利点を有する。これは、検体の定量的及び定性的検出が可能である。これは高い感度を有する。これは即時的な応答を行うことができる。標的に対する選択性の度合は制御可能である。この選択性は、閾値濃度以上で正の応答をするように制御することができる。前記センサは、試料内の多数の検体を検出するためのマルチ標的センサとして使用することができる。前記センサのスペクトル応答は、肉眼に見ることができる色の変化の形を取ることができる。前記センサは溶解した状態又は固体の状態で用いることができる。また、前記センサを用いて反応の速度をモニタすることができる。
【0103】
本発明によれば、コロイド粒を製造するための方法が提供される。より詳細には、本発明によって、形状及び従って特定の光学特性を確定した多量の銀ナノ粒子の製造のための簡単な溶液相法が提供される。ナノ粒子の線形的光学応答に対する制御が、その非線形応答の強化を可能にし、かつ光学的技術に大きな可能性を有する。本発明のナノ粒子は、ナノスケールのセンシング、バイオセンシング、イメージング及びデータの記憶のような広範囲の用途に大きな可能性を有する。
【0104】
本発明によれば、ナノ粒子のモルフォロジを制御するための方法が提供され、表面プラズモン共鳴(SPR)のパラメータを有効に仕立てることを可能にしている。この方法により、これら材料の線形的光学応答に対する前例のない制御が得られ、かつその非線形応答の著しい強化を可能にし、全ての光学的技術に適した材料の追求に新しい勢いを与えている。
【0105】
本発明の方法により、非球形形状の銀粒子の存在によって、多数のプラズモンバンドを有する銀ナノ粒子が製造される。この方法は、SPRの制御された調整及び従って銀ナノ粒子の系統的な色の変化を可能にしている。前記ナノ粒子のSPRは、様々な光学的特性を有する広範囲の粒子を調製できるように調整することができる。安定剤としてのPVAの使用により、前記ナノ粒子の長期的な安定性及び貯蔵性が得られる。
【0106】
本発明により、ナノ粒子の大規模な製造が得られる。これは溶解した状態で行うことができ、市販の試薬を利用し、リソグラフィ機器を必要とせず、かつその方法は長い反応時間を必要としない。前記ナノ粒子の合成は1時間で行うことができる。
【0107】
本発明では、透過型電子顕微鏡写真(TEM)により測定されるように平均サイズ20nmで様々なモルフォロジを有する銀ナノ粒子をシード添加法により調製する。このシード添加法により得られた銀ナノ粒子は、±7nmの狭い粒径分布を示す。銀シードナノ粒子は、クエン酸三ナトリウムの存在下で、銀イオンの水素化酵素ナトリウム還元により調製される。次に、これらシードナノ粒子を(アスコルビン酸還元剤と共に)銀イオンの成長溶液及び例えばポリ(ビニルアルコール)又はポリ(ビニルピロリドン)である30kDaより大きい分子量の高分子キャッピング剤に加える。
【0108】
同じキャッピング剤、同じ塩、同じ温度及び同じ溶媒を用いることを含めて同じ合成方法を使用し、かつ前記キャッピング剤の濃度の金属イオンのそれに対する割合を変えることにより、様々な形状の銀ナノ粒子が製造される。
【0109】
本発明の銀ナノ粒子は、その可視吸収スペクトルに2つのピークを示すことができる。複数の表面プラズモン共鳴の存在は、異なる銀ナノ粒子モルフォロジの存在によるものと考えられる。
【0110】
前記ナノ粒子の形状は、反応条件を変化させる制御される。同じキャッピング剤、同じ塩、同じ温度及び同じ溶媒を用いることを含めて同じ合成方法を用いるが、キャッピング剤の濃度の金属イオンのそれに対する割合を変化させることにより、異なる形状分布の銀ナノ粒子が製造される。反応条件におけるこれらの変化により製造される様々な形状によって、UV可視スペクトルにおける第2のピークの位置を動かすことができる。この結果、赤色、紫色及び青色を含むある範囲の色を有する銀ナノ粒子が調製されることになる。従って、銀ナノ粒子の色は、そのモルフォロジを制御された状態で変化させるために、前記シード添加法の実行に用いる条件を変化させることによって調整することができる。
【0111】
試料のUV可視吸収スペクトルを記録した。前記試料に関する吸収データは、以下の表1に要約される。
【0112】
【表2】

【0113】
この結果は、前記方法によって、第2のプラズモンバンドの位置の変化により銀ナノ粒子の色を制御する、簡単であるが効率的な方法が提供されることを示している。
【0114】
図4は、試料A、B、C及びDの電子吸収スペクトルを示している。図5は、試料Eの電子吸収スペクトルを示している。
【0115】
前記ナノ粒子のサイズ及び形状は、透過型電子顕微鏡写真によって測定した。TEM画像から測定したナノ粒子試料A〜Eのサイズは次の通りであった。
A: 20±8nm
B: 22±8nm
C: 19±4.5nm
D: 31±9nm
E: 56±7nm
【0116】
前記結果は、これら粒子が他の方法により製造される非球形粒子よりも大幅に小さいことを示している。その結果、これらの粒子は、他の合成方法で製造されるより大きな粒子と比較して、長期間の安定性が改善されたことを示していると考えられる。
【0117】
各試料に関係する主な粒子形状が図4(b)に示されている。例えば、試料Aについては、主粒子形状が三角形であり、サンプル抽出した粒子の55%がこのモルフォロジを示す。それより少ない量の他の粒子形状、即ち球形、六角形及びロッド状が認められる(それぞれ22%、14%及び9%)。
【0118】
主なナノ粒子モルフォロジは、使用する反応条件、特にPVA濃度に大きく依存することが分かった。元素状銀の存在が、エネルギ分散型X線分析法により確認された。
【0119】
この方法により製造されるナノ粒子は、以下に記載するように多数の用途で使用することができる。
1.表面増強ラマン散乱法(SERS)は、非常に低い分子濃度の検出について使用される分析技術である。この技術の高い感度は、特定の表面に吸収される分子が示す強いラマン散乱によるものである。本発明の方法により製造される銀ナノ粒子は、その上に検体が吸収される表面(基体)として用いることができる。これは、前記ナノ粒子が、この技術で使用される514nmの励起波長で強く吸収するからである。
2.この波長における前記ナノ粒子の強い吸収は、光学的非線形性が強化されたことを示している。このように強化された超高速線形光学応答を有する材料は、光デバイスの開発に必要である。
3.表面プラズモン共鳴の位置(即ち、それが起こる波長)は、ナノ粒子の局所的環境の変化に敏感である。従って、プラズモンバンドにおける変化を用いて、他の分子の前記ナノ粒子に対する結合を検出し、かつバイオセンシングの方法を提供することができる。
4.前記ナノ粒子は、大きい表面積−容積比を有することから、触媒中で用いることができ、様々なナノ粒子モルフォロジの生成が様々な反応の触媒を仕立てることを可能にする。
【0120】
制御された照射条件下で反応を行うことによって、六角形及び三角形のモルフォロジのみを有するナノ粒子の混合物の生成が可能である。このような試料は、470〜600nmの間に単一の吸収ピークを示す。
【0121】
図1(a)及び図1(b)は、球形のナノ粒子のみに関連する。図2(a)、図2(b)及び図5は、球形、三角形及び六角形のナノ粒子の混合物に関する。球形及び角付きナノ粒子の混合物は、ナノ粒子の角で非常に大きな振幅のSPRが発生することが分かっている(20)ので、角付きナノ粒子は球形のものよりもその環境の変化に対してより高い感度を有することから、有用である。ナノ粒子の角が鋭くなるほど、SPRの振幅の増加は大きくなる。2つのタイプのナノ粒子のSPRピークに誘起される変化の割合によって、センシングのための重要な情報を得ることができる。
【0122】
図3(a)及び図3(b)は、角付きナノ粒子、例えば三角形及び六角形ナノ粒子のみの混合物に関する。410nm領域に吸収ピークが存在しないことは、球形ナノ粒子が存在しないことを示している。これらの角付きナノ粒子は、その非常に高い感度により特に有利である。
【0123】
図8及び図9は、銀ナノ粒子の感度が金ナノ粒子よりも強化されていることを示している。銀ナノ粒子は、溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO)に対する11nmのシフトを示すのに対して、金の場合には0.5nmのシフトしか認められない。
【0124】
本発明の銀ナノ粒子ベースのセンサは、適当なレセプタが調製されかつ銀ナノ粒子の利用可能な表面に吸収される場合には、関係のある全ての検体を検出するように変更することができる。後の機能付与に適した、例えばビオチン又はカルボキシル酸グループを有するナノ粒子を有するセンサも調製できることが分かる。その場合、エンドユーザは前記センサを適当なレセプタで機能付与して、要求する範囲の検査を行うことができる。
【0125】
本発明は、以下の実施例からより明確に理解される。
【0126】
実施例1−銀シードの調製
水中で最終濃度2.5×10−4MのAgNO及び2.5×−4Mのクエン酸三ナトリウムの溶液20mlを調製した。NaBH(0.01M,0.6ml)を添加して強く撹拌した。無色から黄色への色の変化が認められ、銀シードナノ粒子の形成を示した。
【0127】
実施例2(i)−銀ナノ粒子の調製
ポリ(ビニルアルコール)(PVA)−銀ナノ粒子を通常通り次のように調製した。AgNO水溶液(0.01M,0.25ml)を分子量(mol.wt.)89kD〜98kD(10ml,1%w/v)のPVA水溶液に加えた。次に、銀シード(2.5×10−4M,0.1ml)とアスコルビン酸(0.1M,0.05ml)とを同時に加えて撹拌した。
【0128】
実施例A−赤色銀ナノ粒子の調製
PVA水溶液(mol.wt.89kD〜98kD、1%w/v、10ml)とAgNO水溶液(0.01M、0.25ml)とを反応容器に加えた。この混合物を40℃に加熱した。実施例1に従って調製した銀シードナノ粒子(0.1ml)とアスコロビン酸(0.1M、0.05ml)とを同時に加え、無色から赤色への色の変化を観察した。銀ナノ粒子を40℃で1時間インキュベートし、次にサンプルチューブに移し、かつ4℃で暗所に貯蔵した。
【0129】
実施例B−紫色銀ナノ粒子の調製
PVA水溶液(mol.wt.89kD〜98kD、2.5%w/v、10ml)とAgNO(0.01M、0.25ml)とを反応容器に加えた。この混合物を40℃に加熱した。実施例1に従って調製した銀シードナノ粒子(0.2ml)とアスコロビン酸(0.1M、0.05ml)とを同時に添加し、無色から紫色への色の変化を観察した。前記銀ナノ粒子を40℃で1時間インキュベートし、次にサンプルチューブに移し、4℃で暗所に貯蔵した。
【0130】
実施例C−青色銀ナノ粒子の調製
PVA水溶液(mol.wt.89kD〜98kD、5%w/v、10ml)とAgNO水溶液(0.01M、0.25ml)とを反応容器に加えた。この混合物を40℃に加熱した。実施例1に従って調製した銀シードナノ粒子(0.2ml)とアスコロビン酸(0.1M、0.05ml)とを同時に加え、無色から青色への色の変化を観察した。銀ナノ粒子を40℃で1時間インキュベートし、次にサンプルチューブに移し、4℃で暗所に貯蔵した。
【0131】
実施例D−黄色銀ナノ粒子の調製
PVA水溶液(mol.wt.89kD〜98kD、5%w/v、10ml)及びAgNO水溶液(0.01M、0.25ml)を反応容器に加えた。この混合物を氷水槽で4℃に冷却した。実施例1に従って調製した銀シードナノ粒子(0.2ml)とアスコロビン酸(0.1M、0.05ml)とを同時に加え、無色から黄色への色の変化を観察した。前記銀ナノ粒子を4℃でインキュベートし、次にサンプルチューブに移して、4℃で暗所に貯蔵した。
【0132】
実施例E−照射による赤色銀ナノ粒子の調製
PVA水溶液(mol.wt.89kD〜98kD、1%w/v、10ml)とAgNO水溶液(0.01M、0.25ml)とを反応容器に加えた。実施例1に従って調製した銀シードナノ粒子(0.1ml)を前記混合物に加えた。前記反応容器をキセノンランプ(Oriel社製Xe、輝度12cd/m)から60cmの距離に置いた。アスコルビン酸(0.1M、0.05ml)を加え、かつ前記反応容器を振とうさせて確実に混合した。約30秒後に無色から赤色への色の変化が観察された。前記銀ナノ粒子をインキュベートし、次にサンプルチューブに移して、4℃で暗所に貯蔵した。
【0133】
実施例F−暗所における銀ナノ粒子の調製
銀ナノ粒子を、処理を暗室内で行ったことを除いて、実施例Aで記載した方法に従って調製した。この試料の吸収スペクトルを図5に示す。
【0134】
実施例2(ii)−PVPを安定剤として用いた銀ナノ粒子の調製
銀ナノ粒子を、実施例2(i)Bに記載される方法に従って、かつ2.5%(w/v)PVPを安定剤に用いて、40℃で調製した。分子量10kDのPVPを用いることによって、410nmに単一の吸収ピークを有するナノ粒子が得られ、分子量55kDのPVPを用いることによって、410nm及び544nmに吸収ピークを有するナノ粒子が得られた。
【0135】
実施例3(i)−銀ナノ粒子センサのDMSOに対する応答
実施例2に従って調製した0.4mlの銀ナノ粒子溶液に0.1mlのDMSOを加えた。DMSOに対する銀ナノ粒子センサの応答が、スペクトルの吸収ピークが11nmシフトしたことにより観察された。
【0136】
実施例3(ii)−サン外の銀ナノ粒子のDMSOに対する応答
サン外が報告した処理(16)に従って調製した0.4mlの銀ナノ粒子溶液に0.1mlのDMSOを加えた。銀ナノ粒子センサのDMSOに対する応答が、スペクトルにおける吸収ピークが6nmシフトしたことにより観察された。
【0137】
実施例4−2段階でのビオチン層の銀ナノ粒子への付着
銀ナノ粒子の溶液を実施例2に従って製造し(水中で2.5×10−4Mの銀含量を有する)、かつアルカンチオールとエタノール中1nMの総濃度を有するメルカプト酸との混合物により室温で一晩インキュベートし、銀ナノ粒子の表面上にアルカンチオール/メルカプト酸層、おそらくは単分子層を形成できるようにした。結果物であるアルカンチオール/メルカプト酸層を有する銀ナノ粒子を遠心分離により回収した。水又は水性緩衝液への再懸濁の後、(+)ビオチニル−3,6−ジオキサオクタンジアミン(EZ−Link(登録商標)、ビオチン−PEO−アミン、ピアースバイオテクノロジ社)を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC、ピアースバイオテクノロジ社)の存在下でビオチン−PEO−アミン1mM:EDC1mMの割合でアルカンチオール/メルカプト酸被覆銀ナノ粒子に加えた。得られた生成物は、遠心分離及び水又は水性緩衝液への再懸濁により回収した。このようにして得られたビオチン化ナノ粒子は、関係のある検体、例えばストレプトアビジン、抗ビオチンなどを選択的に結合し得るレセプタを備える。
【0138】
実施例5−1段階でのビオチン化層の銀ナノ粒子への付着
スルホスクシンイミジル−6’−(ビオチンアミド)−6−ヘキサンアミド・ヘキサノエート(スルホ−NHS−LC−LC−ビオチン、ピアースバイオテクノロジ社)をアミノアルカンチオールと反応させ、チオール末端ビオチン誘導体を得た。実施例2に従って製造した銀ナノ粒子をビオチン誘導体により水性緩衝液、例えば0.1MのMES(2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸)中で室温で一晩インキュベートし、おそらくは単分子層であるビオチン化層を銀ナノ粒子の表面に形成させた。得られた生成物を遠心分離及び水又は水性緩衝液への再懸濁により回収した。このようにして得られたビオチン化ナノ粒子は、関心のある検体、例えばストレプトアビジン、抗ビオチンと選択的に結合し得るレセプタを備える。
【0139】
実施例6−Agナノ粒子のビオチン化のための別の直接的方法
ビオチン化溶液を、水性緩衝液、例えば0.1MのMES(2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸)、pH5.5中で(+)−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタンジアミン1mMを等量の1mg/ml1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)に加えることにより調製した。実施例2に従って製造したナノ粒子の溶液(水中で2.5×10−4Mの銀含量)既知量を遠心分離し、かつ上澄みを取り除いた。等量のビオチン化溶液を銀ナノ粒子に加え、かつペレットを振とう又はボルテックスの使用により再懸濁した。懸濁液を緩やかに撹拌し、室温で48時間までの時間インキュベートさせた。得られたビオチン化銀ナノ粒子は、遠心分離及び水又は水性緩衝液への再懸濁により回収した。
【0140】
実施例7(i)−銀ナノ粒子への牛血清アルブミンの付着
水中又は水性緩衝液(例えば、0.1MのMES、pH5.5)中で、好ましくは1μg/mlから10mg/mlの範囲の濃度を有するウシ血清アルブミン(BSA)の溶液0.5mlを、実施例2に従って製造した等量の銀ナノ粒子の溶液に加えた。前記混合物を緩やかに撹拌し、室温で1時間から24時間の間でインキュベートした。インキュベーションの後、BSA被覆銀ナノ粒子を遠心分離及び水又は水性緩衝液への再懸濁により回収した。
【0141】
実施例7(ii)銀ナノ粒子へのウシ血清アルブミンのカップリング
水性緩衝液(例えば、0.1MのMES,pH5.5)中の10mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)0.2mlを同じ緩衝液中で等量の1mg/mlEDC塩酸塩に加えた。この溶液を実施例2に従って製造した銀ナノ粒子の溶液0.2mlに加え、室温で2時間から24時間に亘ってインキュベートした。インキュベーションの後、BSA被覆銀ナノ粒子を遠心分離及び水又は水性緩衝液への再懸濁により回収した。
【0142】
実施例8(i)−銀ナノ粒子へのストレプトアビジンの付着
好ましくは10μg/ml〜10mg/mlの範囲の濃度を有する、水又は水性緩衝液(例えば、0.1MのMES,pH5.5)中でのストレプトアビジンの溶液0.5mlを、実施例2に従って製造した等量の銀ナノ粒子の溶液に加えた。この混合物を緩やかに撹拌し、室温で1時間から24時間に亘ってインキュベートした。インキュベーションの後、ストレプトアビジン被覆銀ナノ粒子を遠心分離及び水又は水性緩衝液への再懸濁により回収した。
【0143】
実施例8(ii)−銀ナノ粒子へのストレプトアビジンのカップリング
水性緩衝液(例えば、0.1MのMES,pH5.5)中で10mg/mlストレプトアビジン0.2mlを同じ緩衝液中で等量の1mg/mlEDC塩酸塩に加えた。この溶液を、実施例2に従って製造した銀ナノ粒子の溶液0.2mlに加え、室温で2時間から24時間インキュベートした。インキュベーションの後、ストレプトアビジン被覆銀ナノ粒子を遠心分離及び水又は水性緩衝液への再懸濁により回収した。
【0144】
実施例9−溶解状態でのストレプトアビジンの検出
ビオチン化銀ナノ粒子を、1mM〜1nM、より好ましくは0.1mM〜0.01mMの範囲の濃度のビオチン溶液を用いて、実施例4〜6に記載されるように調製した。ストレプトアビジンを1mg/ml〜100pG/mlの範囲の濃度の各試料に加えた。いずれの場合でも、ストレプトアビジンの検出は、2つ以上のSPRピークを有するナノ粒子のSPRバンドの相対強度の割合の変化を伴うSPRスペクトルピークのシフトとして観察された。24時間後、スペクトルに更なるシフトは見られなかった。
【0145】
実施例10−固体状態でのストレプトアビジンの検出
実施例4〜6に記載されるように、かつより高い濃度の銀を用いて調製したビオチン化ナノ粒子を、ニトロセルロース膜上に付着させ、その孔径を、関心のある検体の希釈溶液は前記膜を通過できるが、ビオチン化ナノ粒子はその構造にトラップされた状態に留まるように選択した。ビオチン化ナノ粒子を連続的に前記膜に加えて、強い色が付いた領域を得ることができる。
【0146】
ストレプトアビジンの溶液を前記膜に通した。ストレプトアビジンは前記ナノ粒子に存在するビオチンに結合し、そのスペクトルに強度の低下を生じさせた。ポジティブ試験の結果を、前記膜上の色の消失を観察することにより示した。この試験は、上述した実施例に記載される手法で適当なレセプタを銀ナノ粒子の利用可能な表面に吸収させた場合には、関心のあるあらゆる検体を検出するように変更することができる。
【0147】
実施例11−銀ナノ粒子を用いたドウモイ酸側方流動試験
実施例2に従って調製した銀ナノ粒子の溶液0.5mlを遠心分離し、かつ上澄みを取り除いた。水性緩衝液、例えばPBS中で5mg/mlEDCと0.5mg/mlドウモイ酸とを銀ナノ粒子ペレットに加え、全体をボルテックスを用いて再懸濁した。この懸濁液を緩やかに撹拌し、室温で3時間インキュベートした。25μlの10%w/vヒト血清アルブミン(SHA)を加え、全体を更に10分間撹拌した。この懸濁液を遠心分離し、上澄みを取り除き、ペレットをPBSに再懸濁した。再懸濁した銀ナノ粒子3〜4滴を、ラビット抗マウスを対照線として及びBSAに共役させたドウモイ酸を試験線として有する側方流動試験紙に加えた。この側方流動試験紙を表面活性剤、例えば、ツイーンの0.5M溶液中に立たせた。前記溶液を前記側方流動試験片の上端まで昇らせた後、該試験片を前記溶液から取り出して、対照線及び試験線の存在を調べた。
【0148】
実施例12 抗IgGセンサの調整及び抗IgGの検出
実施例2に従って調製した銀ナノ粒子の溶液のアリコート0.5mlを遠心分離しかつ上澄みを取り除いた。1mg/mlEDCを、水性緩衝液(例えば、0.1MのMES,pH5.5)中で好ましくは10μg/ml〜10mg/mlの濃度を有する等量のIgGに加えた。この溶液0.5mlを、実施例2に従って製造したナノ粒子の各アリコートに加え、室温で2時間から36時間に亘ってインキュベートした。インキュベーションの後、IgG被覆銀ナノ粒子を遠心分離及び水又は水性緩衝液への再懸濁により回収した。抗IgGを1mg/ml〜100pg/mlの範囲の濃度で各アリコートに加えた。全ての場合において、ストレプトアビジンの検出は、複数のSPRピークを有するナノ粒子のSPRバンドの相対強度の割合における変化を伴うSPRスペクトルピークのシフトとして観察した。24時間後、スペクトルに更なるシフトは見られなかった。
【0149】
実施例13−ハンドヘルドデバイス
図27に示すように、LED、試料キュベット、フォトダイオード検出器及び電圧計からなるデバイスを組み立てた。スペクトル幅100nm及び490nmのピーク発光を有するLEDを用いた。実施例2に従って調製した銀ナノ粒子の溶液0.4mlを前記試料キュベットに加え、前記LEDの光路内に配置し、前記フォトダイオードからの出力電圧を記録した。0.1mlのDMSOを前記試料キュベットに加え、再び前記フォトダイオードからの出力電圧を記録した。DMSOの存在に応答して、20mVの電圧変化が観察された。
【0150】
前記ハンドヘルドデバイスは、観察された電圧変化が検体の存在を示すように標的検体の存在に対して量的応答を発生させることができ、又は観察された電圧変化が存在する検体の濃度に比例するように量的応答を発生させることができる。
【0151】
実施例14−測色迅速検査キット
本発明の銀ナノ粒子センサを例えばニトロセルロースである多孔性膜上に付着させ、該膜の孔径を、関心のある検体の希釈溶液は前記膜を通過し得るが、ビオチン化ナノ粒子はその構造にトラップした状態に維持されるように選択した。前記膜にナノ粒子を連続して加え、強く色が付いた領域を得ることができる。
【0152】
試料マトリックスの溶液を前記膜に通す。前記マトリックスに標的検体が存在する場合には、それが前記センサに結合し、そのスペクトルに検出可能な変化を生じさせる。最も好ましくは、この検出可能な変化が肉眼に見える色の変化である。
【0153】
前記検査キットは、観察した色の変化が検体の存在を示すように、標的検体の存在に対する量的応答を発生させることができ、又は観察された色の変化の程度が存在する検体の濃度に比例するように、質的応答を発生させることができる。
【0154】
本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、その詳細において様々に変化させることができる。
【0155】
参考文献
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20. Kottmann J. P. et al. ,"Field polarization and polarization charge distributions in plasmon resonant nanoparticles", New Journal of Physics vol. 2 pp. 1-27 (2000).
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1(a)】408nm付近に表面プラズモン共鳴(SPR)最大吸収を有しかつ黄色である球形ナノ粒子の一般的なUV可視吸収スペクトル(以下、スペクトルという)を示す図である。
【図1(b)】図1(a)の球形ナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【図2(a)】赤色でありかつ球形、三角形及び六角形のナノ粒子の混合物を含むナノ粒子の混合物の一般的なスペクトルを示す図である。SPR最大値は419nm及び509nm付近に存在する。
【図2(b)】球形、三角形及び六角形のモルフォロジを有する図2(a)のナノ粒子の混合物のTEMである。
【図3(a)】三角形及び六角形のモルフォロジのみを有し、498nmにSPRピークを有しかつ赤色である銀ナノ粒子の混合物の一般的なスペクトルを示す図である。
【図3(b)】図3(a)の三角形及び六角形ナノ粒子の混合物のTEMである。
【図4(a)】様々な反応条件下で調整した銀ナノ粒子試料のバッチの一般的なスペクトルを示す図であり、選択した反応条件による第2のプラズモンバンドの位置の変化を示している。スペクトルAは肉眼で赤色に見える三角形のナノ粒子に関する。スペクトルBは、紫色に見える三角形及び六角形のナノ粒子の混合物に関する。スペクトルCは、青色に見える六角形のナノ粒子に関する。スペクトルDは黄色に見える球形ナノ粒子に関する。
【図4(b)】図4(a)に示す吸収スペクトルに関連する主なナノ粒子形状のTEMである。
【図5】暗所で製造された球形、三角形及び六角形のモルフォロジを有する銀ナノ粒子の混合物の一般的なスペクトルを示す図である。
【図6(a)】サン外が報告した(16)方法により製造された銀ナノ粒子の一般的なスペクトルを示す図である。
【図6(b)】図6(a)のナノ粒子のTEMである。
【図7】赤色である金ナノ粒子の一般的なスペクトルを示す図である。
【図8】ジメチルスルホキシド(DMSO)の添加時に0.5nmのスペクトルシフトを受ける金ナノ粒子の一般的なスペクトルを示す図である。
【図9】DMSOの添加時に11nmのスペクトルシフトを受ける銀ナノ粒子の一般的なスペクトルを示す図である。
【図10】DMSOの添加時に6nmのスペクトルシフトを受ける、サン外の方法に従って製造される銀ナノ粒子のスペクトルを示す図である。
【図11】そのSPR吸収最大値が1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)の存在に反応して短い波長側にシフトする球形、三角形及び六角形の銀ナノ粒子の混合物の一般的なスペクトルを示す図である。
【図12】調整時及び8時間後における銀ナノ粒子の一般的なスペクトルを示す図である。
【図13(a)】レセプタを有する銀ナノ粒子からなる本発明のセンサ(i)と、前記センサの標的検体との相互作用(ii)とを概略的に示す図である。
【図13(b)】2つ又はそれ以上の標的検体のためのレセプタを有する銀ナノ粒子からなる本発明のセンサと、前記センサの標的検体との相互作用を示す図である。
【図13(c)】それぞれに標的検体のためのレセプタを有し、透過性固体表面に固定化された銀ナノ粒子の2つ又はそれ以上のバッチからなる本発明のセンサと、前記センサの標的検体との相互作用を概略的に示す図である。
【図13(d)】それぞれに標的検体のためのレセプタを有する、液体媒体内の銀ナノ粒子の2つ又はそれ以上のバッチからなる本発明のセンサと、前記センサの標的検体との相互作用を概略的に示す図である。
【図14】球形銀ナノ粒子を用いて本発明のセンサを調整する各段階において記録した一連の正規化スペクトルを示す図である。チオール層を加えたときとビオチンによる機能付与後のナノ粒子のスペクトルを比較している。
【図15(a)】ストレプトアビジンを検出する本発明の一般的なセンサを調整する各段階で記録した一連の正規化スペクトルを示す図である。ビオチンによる機能付与の前後及び遠心分離並びに再懸濁の後における球形、三角形及び六角形のナノ粒子の混合物のスペクトルを比較している。
【図15(b)】濃度5μg/mlのストレプトアビジンに応答する図15(a)のセンサの7nmのSPRシフトを示す図である。
【図16】10ng/ml〜0.1mg/mlの範囲の濃度のストレプトアビジンに応答する本発明の別のセンサのSPRのシフトをプロットした図である。10ng/ml〜10μg/mlの範囲においてデータへの直線的な適合が得られた。
【図17】100pg/ml〜0.1mg/mlの範囲の濃度のストレプトアビジンを検出する本発明の一般的なセンサの応答を示す一連の規格化スペクトルである。この本発明の特定の実施例では、ストレプトアビジンの検出の質的限界が10pg/mlであり、直線的応答が1ng/ml〜1μg/mlの範囲で得られる。
【図18】100pg/ml〜10μg/mlの範囲の濃度のストレプトアビジンに対する図17のセンサのSPRのシフトをプロットした図である。1ng/ml〜100ng/mlの範囲でデータに対する直線的な適合が得られた。
【図19】417nm及び502nmにおけるSPR吸収最大値がそれぞれストレプトアビジンに応答してより長い波長427nm及び512nmにそれぞれシフトする球形、三角形及び六角形の銀ナノ粒子の混合物のスペクトルを示す図である。
【図20】493nmにおけるSPR吸収最大値が10mg/mlの濃度のBSAに応答してより短い波長484nmにシフトする三角形及び六角形の銀ナノ粒子の混合物からなる一般的なスペクトルを示す図である。遠心分離により過剰のBSAを取り除いた後、280nmにおけるフィーチャーの存在が、BSAのナノ粒子への結合を示している。
【図21(a)】時間をかけたウシ血清アルブミン(BSA)のナノ粒子表面への結合に応答したSPRスペクトルシフトの発生を示す図である。
【図21(b)】BSAの吸収に応答した図21(a)のナノ粒子の吸収の変化及びSPR応答を時間に対してプロットした図である。
【図22】527nmにおけるSPR吸収最大値が1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)の存在下で10ng/mlのBSAに応答して509nmにシフトする球形、三角形及び六角形の銀ナノ粒子の混合物の一般的なスペクトルを示す図である。
【図23】ドウモイ酸の側方流動試験の形態における本発明のセンサの実施例を示す概略図である。銀ナノ粒子を用いた本発明のセンサの性能を、実施例9に詳細に説明した金ナノ粒子を用いた場合と比較している。
【図24(a)】抗IgGの検出のための本発明のセンサを調整する様々な段階における一般的な一連の規格化スペクトルを示す図である。
【図24(b)】0.1μg/mlの濃度の抗IgGに対する図24(a)のセンサの一般的な応答を示す図である。
【図25】透過性固体表面上に固定化される本発明のセンサの実施例を示す概略図である。
【図26】DMSO添加の前(b)及び後(b)における固体銀ナノ粒子センサを示す図である。
【図27】ハンドヘルドデバイスの形態をなす本発明のセンサの実施例を概略的に示す図である。ユーザに見えるデバイスの外観が(a)図に示され、そのようなデバイスを構成するのに必要な部品が(b)図に示されている。
【図28】迅速測定キットの形態をなす本発明のセンサの別の実施例を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀ナノ粒子からなるセンサであって、前記銀ナノ粒子の全表面が検体との相互作用に、又は検体と相互作用し得るレセプタによる機能付与に使用できるセンサ。
【請求項2】
標的検体に専用のレセプタを前記銀ナノ粒子の表面に付着させた請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記レセプタが前記銀ナノ粒子の表面に直接結合している請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記レセプタと前記銀ナノ粒子との間にリンカーが設けられている請求項2に記載のセンサ。
【請求項5】
前記リンカーが有機又は無機官能基を含む請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記官能基がチオール基又はアミノ基からなる請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
複数のタイプのレセプタが前記銀ナノ粒子に付着している請求項1乃至6のいずれかに記載のセンサ。
【請求項8】
前記銀ナノ粒子が安定し、成形され、板状の構造をなす請求項1乃至7のいずれかに記載のセンサ。
【請求項9】
前記銀ナノ粒子の寸法が5〜100nmの範囲である請求項1乃至8のいずれかに記載のセンサ。
【請求項10】
前記銀ナノ粒子の寸法が18nm〜32nmの範囲内である請求項1乃至9のいずれかに記載のセンサ。
【請求項11】
少なくとも一部の前記銀ナノ粒子のモルフォロジが六角形及び/又は三角形である請求項1乃至10のいずれかに記載のセンサ。
【請求項12】
少なくとも一部の前記銀ナノ粒子が400nm領域にSPRピークを示す請求項1乃至11のいずれかに記載のセンサ。
【請求項13】
少なくとも一部の前記銀ナノ粒子が470〜600nm領域にSPRピークを示す請求項1乃至12のいずれかに記載のセンサ。
【請求項14】
少なくとも一部の前記銀ナノ粒子が340nm領域にSPRピークを示す請求項1乃至13のいずれかに記載のセンサ。
【請求項15】
前記銀ナノ粒子が主に非球形モルフォルジを呈する請求項1乃至14のいずれかに記載のセンサ。
【請求項16】
前記銀ナノ粒子が透過性基体上に固定化されている請求項1乃至15のいずれかに記載のセンサ。
【請求項17】
前記銀ナノ粒子が膜上に配置されている請求項1乃至16のいずれかに記載のセンサ。
【請求項18】
前記銀ナノ粒子が所定の形体に形成されている請求項1乃至15のいずれかに記載のセンサ。
【請求項19】
前記銀ナノ粒子が或る形体にキャスト成形され、プレス成形され又はモールド成形されている請求項18に記載のセンサ。
【請求項20】
前記ナノ粒子が溶媒系内にある請求項1乃至15のいずれかに記載のセンサ。
【請求項21】
前記溶媒系が水を主成分とする系である請求項20に記載のセンサ。
【請求項22】
検体を検出するための方法であって、請求項1乃至21のいずれかに記載されるセンサに前記検体を接触させ、かつ検出可能な変化を観察する過程からなる方法。
【請求項23】
前記検出可能な変化が吸収スペクトルの変化である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記検出可能な変化が質的又は量的変化である請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記変化が肉眼で観察可能な色の変化である請求項22乃至24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記吸収スペクトルの変化が200nm〜900nmの範囲で検出されるシフトである請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記シフトが1〜150nmである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記シフトが5〜50nmである請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
銀ナノ粒子を調製するための方法であって、高分子安定剤の存在下で前記銀ナノ粒子を形成する過程からなる方法。
【請求項30】
前記高分子安定剤の濃度を変化させることにより、前記銀ナノ粒子の光学的応答を制御する過程からなる請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記高分子安定剤の分子量が10kDaより大きい請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記高分子安定剤の分子量が1300kDa未満である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記高分子安定剤が水溶性である請求項29乃至32にいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記高分子安定剤が、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(アクリル酸)の1つ又は複数から選択される請求項29乃至33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記高分子安定剤がポリ(ビニルアルコール)である請求項29乃至34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
銀塩を還元する過程を有する請求項29乃至35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記銀塩が硝酸銀である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記反応がシード銀ナノ粒子の存在下で行われる請求項29乃至36のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記反応がシード銀ナノ粒子の存在下で行われる請求項37に記載の方法。
【請求項40】
硝酸銀と銀シードとの割合が50:1に等しい又はそれ以上である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
硝酸銀と銀シードとの割合が50:1〜200:1である請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
硝酸銀と銀シードとの割合が50:1〜100:1である請求項39乃至41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記反応が水媒体内で行われる請求項29乃至41のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記還元が10℃〜60℃の温度で行われる請求項36乃至43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記還元が約40℃の温度で行われる請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記反応が暗所で行われる請求項29乃至45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記反応が環境光条件下で行われる請求項29乃至45のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記反応が制御された照射条件下で行われる請求項29乃至45のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
サイズが5〜100nmである銀ナノ粒子。
【請求項50】
前記銀ナノ粒子のサイズが10〜50nmである請求項49に記載の銀ナノ粒子。
【請求項51】
前記銀ナノ粒子の平均サイズが31nm±8nmである請求項49又は50に記載の銀ナノ粒子。
【請求項52】
前記銀ナノ粒子の平均サイズが20nm±8nmである請求項49又は50に記載の銀ナノ粒子。
【請求項53】
前記銀ナノ粒子の平均サイズが20nm±8nmである請求項49又は50に記載の銀ナノ粒子。
【請求項54】
請求項49乃至53のいずれかに記載の銀ナノ粒子からなるセンサ。

【図1(a)】
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【図2(a)】
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【図3(a)】
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【図4(a)】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図13(c)】
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【図13(d)】
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【図14】
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【図15(a)】
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【図15(b)】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21(a)】
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【図21(b)】
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【図22】
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【図23】
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【図24(a)】
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【図24(b)】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2006−521556(P2006−521556A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507571(P2006−507571)
【出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【国際出願番号】PCT/IE2004/000047
【国際公開番号】WO2004/086044
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(599049945)ザ・プロウボウスト・フェロウズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホリー・アンド・アンデバイデッド・トリニティ・オブ・クイーン・エリザベス・ニア・ダブリン (9)
【氏名又は名称原語表記】The Provost Fellows and Scholars of the College of the Holy and Undivided Trinity of Queen Elizabeth Near Dublin
【Fターム(参考)】