説明

銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液及び銅−インジウム−硫黄合金皮膜

【課題】非真空のプロセスで、且つ、有毒ガスを発生するセレンを含まない系において、CIS系太陽電池の光吸収層として好適な、純度の高い銅−インジウム−硫黄合金皮膜を得ることができるめっき液を提供する。
【解決手段】水溶性銅化合物、水溶性インジウム化合物、並びにスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性有機化合物を含む銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CIS系太陽電池の光吸収層として好適な硫黄含有量の高い銅−インジウム−硫黄合金皮膜を形成するためのめっき液、及び該めっき液を使用して得られる銅−インジウム−硫黄合金皮膜に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、環境にやさしい発電デバイスとして注目されており、pn接合を利用したシリコン系半導体が広く知られている。しかし、シリコン系太陽電池は製造に際して高真空・高温が必要であり、低コスト化が難しく、普及が妨げられていた。
【0003】
より低コストの太陽電池の開発が待たれる中、近年、化合物半導体を用いた次世代型の太陽電池が開発され、一部商品化されている。この次世代型の太陽電池のなかでも、光吸収層の材料として、シリコンではなく、11族、13族及び16族からなる合金、特に、銅、インジウム、ガリウム、アルミニウム、セレン、硫黄等からなるI−III−VI族化合物半導体を用いたCIS系太陽電池が注目されている。
【0004】
このような化合物半導体の応用として、ガリウム又は硫黄を固溶したCu(In,Ga)Se、CuIn(S,Se)等の研究が行われるようになった。これらの化合物半導体では、禁制帯幅を太陽光スペクトルに対して最適制御することが可能となり、その結果、高い変換効率が実現可能とされている。
【0005】
I−III−VI族化合物半導体のうち、銅−インジウム−硫黄合金薄膜の製造に関しては、真空系技術(スパッタリング、CVD等)を用いる技術が知られているが、これらの真空計技術は、生産性が低い、製造コストが高い、特殊な設備が必要等の欠点を有する。
【0006】
また、スパッタリング等の真空蒸着プロセスにより、モリブデン薄膜等の裏面電極上に銅−インジウム−硫黄合金薄膜を形成させる場合には、まず銅−インジウム合金皮膜を形成する。次に、裏面電極上の銅−インジウム合金皮膜を硫化水素気流中で熱処理し、無理矢理硫黄を導入する。ここで、銅−インジウム合金皮膜は、モリブデン薄膜等の裏面電極に、銅及びインジウムをイオン化して無理矢理成膜しているため、密着性が悪いと言われている。さらに、この銅−インジウム合金皮膜に、無理矢理硫黄を導入するため、裏面電極と銅−インジウム−硫黄合金薄膜との密着性がさらに悪く、銅−インジウム−硫黄合金薄膜が剥がれてしまうという問題がある。密着性を悪化させないために、硫化時の昇温パターンを調整する、裏面電極と銅−インジウム−硫黄合金薄膜の間にガリウム等の金属を挿入する等も行われているが、裏面電極と銅−インジウム−硫黄合金薄膜との密着性を改善するものではなく、根本的な解決には至っていない。
【0007】
これらのことから、非真空のプロセスを用いて、銅−インジウム−硫黄合金薄膜を製造する技術が求められている。
【0008】
非真空のプロセスとしては、電解めっき(電着)により、銅−インジウム−硫黄系めっき皮膜(CuInS)を得ようと試みられている。この際、硫黄の供給源としては、チオ尿素が一般に用いられている。しかし、チオ尿素は水に溶解しにくく、銅イオン、インジウムイオンが共存すると沈殿するという問題がある。この沈殿が発生しためっき液をろ過して電解めっきを行っても、めっき皮膜中の硫黄含有量は10atm%未満と少ないため、たとえ硫化水素気流中350℃で熱処理しても、硫黄含有量が20atm%程度と低く、純度の高いCuInS皮膜は得られない。純度の高いCuInS皮膜を得るためには、硫黄含有量を35atm%以上とすることが好ましい。また、このように純度の低いCuInS皮膜を用いてCIS系太陽電池セルを作製しても、変換効率はせいぜい数%程度と充分な結果は得られない。
【0009】
特許文献1には、硫酸銅、硫酸インジウム、二酸化セレン及びチオ尿素の存在下で、導電性基板に電着処理することで、各元素の組成比を最適化することが良好なカルコパライト結晶(Cu−In−S−Se)が得られることが記載されている。しかし、特許文献1では、硫酸でpHを調整しているが、セレンを含む水溶液中に酸を混合すると、有毒なセレン化水素が発生する。このように、非真空のプロセスで、且つ、有毒ガスを発生するセレンを含まない系において、純度の高いCuInS皮膜(硫黄含有量:35atm%以上)を得る方法は、いまだ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−31683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、非真空のプロセスで、且つ、有毒ガスを発生するセレンを含まない系において、CIS系太陽電池の光吸収層として好適な、純度の高い銅−インジウム−硫黄合金皮膜を得ることができるめっき液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、硫黄供給源として、スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する有機化合物を添加しためっき液を使用することで、純度の高い銅−インジウム−硫黄合金皮膜を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
項1.水溶性銅化合物、水溶性インジウム化合物、並びにスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性有機化合物を含む銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液。
項2.スルホ基及び/又はスルホニル基を有する水溶性有機化合物が、
スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性芳香族化合物若しくはその誘導体、又はスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有し、末端に二重結合を有する水溶性脂肪族化合物若しくはその誘導体である、項1に記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液。
項3.スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性芳香族化合物若しくはその誘導体が、
式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Qは炭素数6〜22の芳香環;Mは水素原子又はアルカリ金属;Rは炭素数1〜4のアルキル基;m1は1〜4の整数;n1は0〜4の整数である)
で表される芳香族スルホン酸若しくはその誘導体、
式(2):
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Qは炭素数6〜22の芳香環;M及びMは同じか又は異なり、いずれも水素原子又はアルカリ金属;Rは炭素数1〜4のアルキル基;m2は1〜4の整数;n2は0〜4の整数である)
で表される芳香族スルホンアミド、
式(3):
−SONMSO−Q
(式中、Q及びQは同じか又は異なり、いずれも炭素数6〜22の芳香環;Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表される芳香族スルホンイミド、並びに
式(4):
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表されるサッカリン化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項2に記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液。
項4.スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有し、末端に二重結合を有する水溶性脂肪族化合物若しくはその誘導体が、式(5):
−SO
(式中、Rは末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基;Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表される脂肪族スルホン酸若しくはその誘導体、
式(6):
−SONM
(式中、Rは末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基;M及びMは同じか又は異なり、いずれも水素原子又はアルカリ金属である)
で表される脂肪族スルホンアミド、並びに
式(7):
−SONMSO−R
(式中、R及びRは同じか又は異なり、いずれも末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基;Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表される脂肪族スルホンイミド
よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項2又は3に記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液。
項5.(A)基板上に、項1〜4のいずれかに記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液を用いて電解めっき処理する工程、及び
(B)工程(A)で得られためっき皮膜を硫化水素を含む気流中で熱処理する工程
を含む、銅−インジウム−硫黄皮膜の製造方法。
項6.(A)基板上に、項1〜4のいずれかに記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液を用いて電解めっき処理する工程、及び
(B)工程(A)で得られためっき皮膜を硫化水素を含む気流中で熱処理する工程
を含む、銅−インジウム−硫黄皮膜の電解めっき方法。
項7.硫黄含有量が35atm%以上である銅−インジウム−硫黄皮膜。
項8.項5に記載の製造方法又は項6に記載のめっき方法により得られる、硫黄含有量が35atm%以上である銅−インジウム−硫黄皮膜。
項9.項7又は8に記載の銅−インジウム−硫黄皮膜を用いて得られる光電変換素子。
項10.項9に記載の光電変換素子を用いて得られる、CIS系太陽電池。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、銅−インジウム合金の核がモリブデン薄膜等の裏面電極の面に均一に形成され、この核が成長して島状になり、島同士が結合して皮膜になる。硫黄は、銅−インジウム合金薄膜の成長過程で、皮膜中に自然に取り込まれる。このため、真空プロセスで成膜した場合と比較し、銅−インジウム−合金皮膜と裏面電極との密着性が良くなる。また、他の非真空プロセスと比較して、純度の高い銅−インジウム−硫黄合金皮膜を得ることができる。このため、本発明のめっき液、及びそれを用いて得られる銅−インジウム−硫黄合金皮膜をCIS系太陽電池の光吸収層として用いることで、充分な変換効率が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液
本発明の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液は、水溶性銅化合物、水溶性インジウム化合物、並びにスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性有機化合物を含む。特に、スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性有機化合物を硫黄供給源として使用することで、本発明のめっき液を用いて電解めっきした際に、純度の高い銅−インジウム−硫黄合金皮膜を得ることができる。
【0021】
水溶性銅化合物
水溶性銅化合物は、銅の供給源として使用されるものである。
【0022】
水溶性銅化合物としては、水に溶解して銅イオンを形成するものであれば特に制限はなく、例えば、硫酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、硝酸銅、酢酸銅、ピロリン酸銅、シュウ酸銅、クエン酸銅、安息香酸銅、シアン化銅等が使用できる。これらの水溶性銅化合物は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。なお、本発明では、シアンイオンはめっき液中で安定なため、シアンガスは発生しない。また、めっき皮膜中にシアンイオンが取り込まれることもない。このため、シアン化銅を用いた場合にも、有毒ガスが発生することはない。
【0023】
水溶性インジウム化合物
水溶性インジウム化合物は、インジウムの供給源として使用されるものである。
【0024】
水溶性インジウム化合物としては、水に溶解してインジウムイオンを形成するものであれば特に制限はなく、例えば、硫酸インジウム、塩化インジウム、硝酸インジウム、酢酸インジウム等が使用できる。これらの水溶性インジウム化合物は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
スルホ基及び/又はスルホニル基を有する水溶性有機化合物
スルホ基及び/又はスルホニル基を有する水溶性有機化合物は、硫黄の供給源として使用されるものであり、当該化合物を使用することにより、電解めっきする際に、沈殿が発生することなく、充分な量の硫黄を電着させることができる。硫黄供給源としては、スルホ基及び/又はスルホニル基を有する有機化合物のなかでも、スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性芳香族化合物若しくはその誘導体、又はスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有し、末端に二重結合を有する水溶性脂肪族化合物若しくはその誘導体が好ましい。
【0026】
<スルホ基及び/又はスルホニル基を有する水溶性芳香族化合物>
スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性芳香族化合物としては、
式(1):
【0027】
【化4】

【0028】
(式中、Qは炭素数6〜22の芳香環;Mは水素原子又はアルカリ金属;Rは炭素数1〜4のアルキル基;m1は1〜4の整数;n1は0〜4の整数である)
で表される芳香族スルホン酸若しくはその誘導体、
式(2):
【0029】
【化5】

【0030】
(式中、Qは炭素数6〜22の芳香環;M及びMは同じか又は異なり、いずれも水素原子又はアルカリ金属;Rは炭素数1〜4のアルキル基;m2は1〜4の整数;n2は0〜4の整数である)
で表される芳香族スルホンアミド、
式(3):
−SONMSO−Q
(式中、Q及びQは同じか又は異なり、いずれも炭素数6〜22の芳香環;Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表される芳香族スルホンイミド、
式(4):
【0031】
【化6】

【0032】
(式中、Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表されるサッカリン化合物
等が好ましい。
【0033】
上記化合物を用いることで、銅−インジウム合金皮膜中に硫黄が効率的に取り込まれることから、より純度の高い銅−インジウム−硫黄合金皮膜(CuInS皮膜)を得ることができる。これらのスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する芳香族化合物は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
以下、式(1)〜(4)で表される化合物について、詳細に説明する。
【0035】
式(1)で表される芳香族スルホン酸又はその誘導体において、Qは炭素数6〜22、好ましくは6〜14の芳香環である。このような芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。なかでも、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。
【0036】
式(1)で表される芳香族スルホン酸又はその誘導体において、Mは水素原子又はアルカリ金属である。なかでも、アルカリ金属、特にナトリウムが好ましい。
【0037】
式(1)で表される芳香族スルホン酸又はその誘導体において、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。なかでも、炭素数1〜2のアルキル基、特にメチル基が好ましい。
【0038】
式(1)で表される芳香族スルホン酸又はその誘導体において、m1は1〜4の整数、n1は0〜4の整数である。
【0039】
式(1)で表される芳香族スルホン酸又はその誘導体としては、具体的には、例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0040】
式(2)で表される芳香族スルホンアミドにおいて、Qは上記Qと同様、Rは上記Rと同様、M及びMは同じか又は異なり、上記Mと同様、m2は上記m1と同様、n2は上記n1と同様である。
【0041】
式(2)で表される芳香族スルホンアミドとしては、具体的には、例えば、ベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、ナフタレンジスルホンアミド、ナフタレントリスルホンアミド及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0042】
式(3)で表される芳香族スルホンイミドにおいて、Q及びQは同じか又は異なり、上記Qと同様、Mは上記Mと同様である。
【0043】
式(3)で表される芳香族スルホンイミドとしては、具体的には、例えば、ジベンゼンスルホンイミド、ジトルエンスルホンイミド、ジナフタレンスルホンイミド及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0044】
式(4)で表されるサッカリン化合物において、Mは上記Mと同様であり、サッカリン又はそのアルカリ金属塩が使用できる。
【0045】
<スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有し、末端に二重結合を有する水溶性脂肪族化合物又はその誘導体>
スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有し、末端に二重結合を有する水溶性脂肪族化合物又はその誘導体としては、
式(5):
−SO
(式中、Rは末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基;Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表される脂肪族スルホン酸若しくはその誘導体、
式(6):
−SONM
(式中、Rは末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基;M及びMは同じか又は異なり、いずれも水素原子又はアルカリ金属である)
で表される脂肪族スルホンアミド、
式(7):
−SONMSO−R
(式中、R及びRは同じか又は異なり、いずれも末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基;Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表される脂肪族スルホンイミド
等が好ましい。
【0046】
上記化合物を用いることで、銅−インジウム合金皮膜中に硫黄が効率的に取り込まれることから、より純度の高い銅−インジウム−硫黄合金皮膜(CuInS皮膜)を得ることができる。これらのスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有し、末端に二重結合を有する脂肪族化合物又はその誘導体は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
以下、式(5)〜(7)で表される化合物について、詳細に説明する。
【0048】
式(5)で表される脂肪族スルホン酸又はその誘導体において、Rは、末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基である。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。なお、Mは上記Mと同様である。
【0049】
式(5)で表される脂肪族スルホン酸又はその誘導体としては、具体的には、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−ブテン−1−スルホン酸、4−ペンテン−1−スルホン酸、5−ヘキセン−1−スルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0050】
式(6)で表される脂肪族スルホンアミドにおいて、Rは上記Rと同様、M及びMは上記Mと同様である。
【0051】
式(6)で表される脂肪族スルホンアミドとしては、具体的には、例えば、ビニルスルホンアミド、アリルスルホンアミド、3−ブテン−1−スルホンアミド、4−ペンテン−1−スルホンアミド、5−ヘキセン−1−スルホンアミド及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0052】
式(7)で表される脂肪族スルホンイミドにおいて、R及びRは上記Rと同様、Mは上記Mと同様である。
【0053】
式(7)で表される脂肪族スルホンイミドとしては、具体的には、例えば、ジビニルスルホンイミド、ジアリルスルホンイミド、アリルビニルスルホンイミド、ビス(3−ブテニル)スルホンイミド、ビス(4−ペンテニル)スルホンイミド、ビス(5−ヘキセニル)スルホンイミド及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0054】
上記式(1)〜(7)で表される化合物のなかでも、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩;ベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、ナフタレンスルホンアミド、ナフタレンジスルホンアミド、ナフタレントリスルホンアミド及びこれらのアルカリ金属塩;ジベンゼンスルホンイミド、ジトルエンスルホンイミド、ジナフタレンスルホンイミド、サッカリン及びこれらのアルカリ金属塩;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩;ビニルスルホンアミド、アリルスルホンアミド及びこれらのアルカリ金属塩;ジビニルスルホンイミド、ジアリルスルホンイミドおよびそのアルカリ金属塩が好ましく、1,5−ナフタレンジスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、サッカリンナトリウムがより好ましい。
【0055】
めっき液の組成
本発明のめっき液においては、純度の高い銅−インジウム−硫黄皮膜を得るため、水溶性銅化合物中のCuが0.001〜0.1mol/L、好ましくは0.01〜0.05mol/L;水溶性インジウム化合物中のInが0.01〜0.5mol/L、好ましくは0.05〜0.2mol/L;並びにスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性有機化合物が0.01〜0.05mol/L、好ましくは0.02〜0.04mol/Lとなるように調整することが好ましい。
【0056】
なお、本発明のメッキ液においては、上記の水溶性銅化合物、水溶性インジウム化合物、並びにスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性有機化合物以外にも、硫黄を含まない光沢剤、レベリング剤、錯化剤、安定化剤等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含ませることができる。ただし、有毒ガスを発生するセレン、テルル等を含む化合物は含まないことが好ましい。
【0057】
また、本発明のめっき液は、40℃におけるpHを、1〜3程度とすることが好ましい。なお、pHを硫酸で調整する場合には、1.5〜2.5程度とすれば、緩衝能をより発揮できるため好ましい。
【0058】
2.銅−インジウム−硫黄合金皮膜
本発明の銅−インジウム−硫黄合金皮膜は、例えば、
(A)基板上に上記の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液を用いて電解めっき処理する工程、及び
(B)工程(A)で得られためっき皮膜を硫化水素を含む気流中で熱処理する工程
を含むめっき方法により得ることができる。
【0059】
<工程(A)>
工程(A)では、導電性基板上に、上記の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液を用いて電解めっき処理する。この工程により、めっき液中の銅イオン、インジウムイオン、並びにスルホ基又はスルホニル基由来のイオンが還元され、銅−インジウム−硫黄合金皮膜が得られる。
【0060】
基板としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板(ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート)等があげられる。また、上記の基板上に、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等の透光性導電性皮膜を形成したものを用いてもよい。
【0061】
一方、電解めっきの際に使用する陽極には、特に制限されるわけではないが、白金板、チタン板、カーボン板、黒鉛板等が使用できる。
【0062】
工程(A)において、電解めっきの条件としては、皮膜自身のクラックやモリブデン層との密着不良等のめっき欠陥のないめっき皮膜を形成する点から、浴温を30〜50℃程度、電流密度を0.5〜2.0A/dm程度とし、10〜30分間通電することが好ましい。
【0063】
この工程(A)により得られるめっき皮膜は、膜厚が0.5〜3.0μm程度、硫黄含有量が10〜15atm%のものである。また、硫黄以外の各成分は、銅含有量を30〜45atm%程度、インジウム含有量を30〜45atm%程度とすることができる。特に、硫黄含有量については、従来のように、チオ尿素を使用した場合の数atm%と比較し、飛躍的に増加させることができる。なお、メッキ皮膜中の各元素の含有量は、例えば、蛍光X線分析装置、X線マイクロアナライザー、誘導結合プラズマ発光分析装置等により測定することができる。
【0064】
<工程(B)>
次に、工程(B)では、工程(A)で得られためっき皮膜を、硫化水素を含む気流中で熱処理する。この工程により、めっき皮膜中の硫黄含有量を増大させ、純度の高いCuInS皮膜を得ることができる。
【0065】
硫化水素を含む気流としては、硫化水素を含んでいれば特に制限はないが、硫化水素が容積比で20〜80%含むものが好ましい。硫化水素を含む気流において、残部は、Ar、窒素等の不活性ガスとすればよい。また、熱処理条件は、温度を250〜400℃程度、時間を0.5〜2.0時間程度とすればよい。
【0066】
この工程(B)により、めっき皮膜の硫黄含有量を30〜50atm%とすることができる。また、硫黄以外の各成分は、銅含有量を20〜35atm%程度、インジウム含有量を20〜35atm%程度とすることができる。したがって、従来のように、チオ尿素を使用した場合の20atm%程度と比較し、飛躍的に増加させることができる。
【0067】
3.光電変換素子及びCIS系太陽電池
本発明の光電変換素子は、例えば、透光性基板上に、透光性導電膜、バッファ層、光吸収層及び裏面電極を順次積層させた構造を有する。なお、後述の実施例のように、バッファ層上に透光性導電膜を形成させれば、透光性基板を用いなくてもよい。
【0068】
透光性基板としては、特に制限されないが、例えば、ガラス、プラスチック等から構成すればよい。これにより、光を光吸収層に導入するための窓層になり得る。
【0069】
透光性基板の厚みは、特に限定されないが、0.1〜5.0mm程度とすればよい。
【0070】
透光性導電膜は、後述する光吸収層に光を導入する窓層として使用され、光吸収層から得られた電力を効率よく取り出す役割を有する。例えば、透明導電性酸化物からなるものとすればよく、例えば、フッ素ドープ錫酸化物(FTO)、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムドープ亜鉛酸化物、アルミニウムドープ亜鉛酸化物、ニオブドープチタン酸化物等からなるものが好ましく、なかでも、ITOからなるものがより好ましい。これにより、透光性導電膜が、光吸収層に導入するための窓層となり、且つ、光吸収層から得られた電力を効率よく取り出すことができる。
【0071】
透光性導電膜の厚みは、0.01〜10.0μm程度が好ましく、0.3〜1.0μm程度がより好ましい。透光性導電層の厚みを上記範囲内とすることにより、シート抵抗を低減し、結果として光電変換装置のシリーズ抵抗を低減できるため、フィルファクター特性を維持できる。
【0072】
なお、例えば、ITO膜付きガラス、FTO膜付きガラス等の透明導電膜付き基板を、透光性基板及び透光性導電膜としてもよい。
【0073】
バッファ層は、後述する光吸収層に光を導入する窓層として使用され、光吸収層で発生した電子が正孔と再結合するのを抑制する役割を有する。特に限定されないが、例えば、硫化インジウム(In)、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)等からなるものとすればよい。
【0074】
バッファ層の厚みは、0.01〜0.2μm程度が好ましく、0.03〜0.1μm程度がより好ましい。バッファ層の厚みを上記範囲内とすることにより、高い変換効率が得られる。
【0075】
光吸収層は、光を吸収して電子を発生させる役割を有し、本発明の銅−インジウム−硫黄合金皮膜からなるものである。
【0076】
裏面電極は、電力を取り出す役割を有する。特に制限されないが、例えば、金属電極、特にモリブデン、金、銀、アルミニウム、カーボン、白金等が好ましい。また、これらの金属の合金等も好ましく用いられる。なかでも、モリブデンは、光吸収層との間に充分なオーム接触を得ることができ、且つ、融点が2623℃と高いため、好適である。
【0077】
裏面電極の厚みは、特に制限されないが、0.1〜2.0μm程度とすればよい。
【0078】
このような構成を有する本発明の光電変換素子は、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0079】
まず、裏面電極上に、本発明の銅−インジウム−硫黄合金皮膜を電解めっきにより形成する。めっき条件等は上述したとおりである。
【0080】
次に、本発明の銅−インジウム−硫黄合金皮膜の上に、スプレー法、化学析出法等によりバッファ層を形成する。
【0081】
さらに、バッファ層上に、真空蒸着法、スパッタリング法等により、透光性導電膜を形成する。
【0082】
上記の製造方法では、裏面電極から透光性導電膜まで順に形成する方法を例示したが、透光性導電膜から裏面電極まで順に形成してもよい。ただし、裏面電極から透光性導電膜まで順に形成したほうが、裏面電極と光吸収層との密着性が優れるため好ましい。
【0083】
また、本発明のCIS系太陽電池は、上記の本発明の光電変換素子を用いて得られるものである。
【実施例】
【0084】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0085】
実施例1
硫酸銅0.02mol、硫酸インジウム0.1mol、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム0.03molを蒸留水1Lに添加して攪拌し、溶解させた。この状態でpHを測定すると1.5であった。0.2M硫酸水溶液を添加してpH2の均一な水溶液が1.05L得られた。
【0086】
陰極に、2mm厚×20mm×20mmのソーダライムガラス基板にマスキングを施し、中央の5mm×5mm部分にスパッタ法を用いてモリブデン皮膜0.5μmを形成したもの、陽極に白金板を用いて、浴温40℃、電流密度1A/dmの条件にて、15分間電解めっきを行った。この際、蛍光X線分析装置で測定したところ、モリブデン膜付きソーダライムガラスに形成されためっき皮膜の膜厚は2μmで、銅の含有量は42atm%、インジウムの含有量は44atm%、硫黄の含有量は14atm%であった。
【0087】
さらに、アルゴンと硫化水素の混合気流(混合比は、Ar:HS=1:1(容積比))で350℃、1時間熱処理を行った。熱処理後の皮膜において、硫黄含有量は42atm%であり、純度の高い銅−インジウム−硫黄皮膜(銅含有量は28atm%、インジウム含有量は30atm%)が得られた。
【0088】
この銅−インジウム−硫黄皮膜の上に化学析出法を用いて硫化カドミウム薄膜を0.05μm形成させた。さらにスパッタリング法により、酸化インジウム薄膜を0.3μm形成して光電変換素子を作製した。
【0089】
この光電変換素子について、擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm2)を照射して太陽電池特性評価を行った。短絡電流密度25mA/cm、開放電圧0.6V、フィルファクター0.7、光電変換効率は10.5%であった。
【0090】
なお、フィルファクターとは、太陽電池セル評価の重要な指標であり、1.0に近いほど性能のよい太陽電池であることを意味する。
【0091】
実施例2
硫酸銅0.02mol、硫酸インジウム0.1mol、パラトルエンスルホンアミド0.03molを添加して攪拌し、溶解させた。この状態でpHを測定すると1.5であった。0.2M硫酸水溶液を添加してpH2の均一な水溶液が1.05L得られた。
【0092】
陰極に、2mm厚×20mm×20mmのソーダライムガラス基板にマスキングを施し、中央の5mm×5mm部分にスパッタ法を用いてモリブデン皮膜0.5μmを形成したもの、陽極に白金板を用いて、浴温40℃、電流密度1A/dmの条件にて、15分間電解めっきを行った。この際、蛍光X線分析装置で測定したところ、モリブデン膜付きソーダライムガラスに形成されためっき皮膜の膜厚は2μmで、銅の含有量は43atm%、インジウムの含有量は45atm%、硫黄の含有量は12atm%であった。
【0093】
さらに、アルゴンと硫化水素の混合気流(混合比は、Ar:HS=1:1(容積比))で350℃、1時間熱処理を行った。熱処理後の皮膜において、硫黄含有量は38atm%(銅含有量は30atm%、インジウム含有量は32atm%)であり、純度の高い銅−インジウム−硫黄皮膜が得られた。
【0094】
この銅−インジウム−硫黄皮膜の上に化学析出法を用いて硫化カドミウム薄膜を0.05μm形成させた。さらにスパッタリング法により、酸化インジウム薄膜を0.3μm形成して光電変換素子を作製した。
【0095】
この光電変換素子について、擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm)を照射して太陽電池特性評価を行った。短絡電流密度24.6mA/cm、開放電圧0.6V、フィルファクター0.69、光電変換効率は10.2%であった。
【0096】
実施例3
硫酸銅0.02mol、硫酸インジウム0.1mol、サッカリンナトリウム二水和物0.03molを添加して攪拌し、溶解させた。この状態でpHを測定すると1.5であった。0.2M硫酸水溶液を添加してpH2の均一な水溶液が1.05L得られた。
【0097】
陰極に、2mm厚×20mm×20mmのソーダライムガラス基板にマスキングを施し、中央の5mm×5mm部分にスパッタ法を用いてモリブデン皮膜0.5μmを形成したもの、陽極に白金板を用いて、浴温40℃、電流密度1A/dmの条件にて、15分間電解めっきを行った。この際、蛍光X線分析装置で測定したところ、モリブデン膜付きソーダライムガラスに形成されためっき皮膜の膜厚は2μmで、銅の含有量は43atm%、インジウムの含有量は45atm%、硫黄の含有量は12atm%であった。
【0098】
さらに、アルゴンと硫化水素の混合気流(混合比は、Ar:HS=1:1(容積比))で350℃、1時間熱処理を行った。熱処理後の皮膜において、硫黄含有量は40atm%(銅含有量は29atm%、インジウム含有量は31atm%)であり、純度の高い銅−インジウム−硫黄皮膜が得られた。
【0099】
この銅−インジウム−硫黄皮膜の上に化学析出法を用いて硫化カドミウム薄膜を0.5μm形成させた。さらにスパッタリング法により、酸化インジウム薄膜を0.3μm形成して光電変換素子を作製した。
【0100】
この光電変換素子について、擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm)を照射して太陽電池特性評価を行った。短絡電流密度24.8mA/cm、開放電圧0.6V、フィルファクター0.71、光電変換効率は10.6%であった。
【0101】
比較例1
硫酸銅0.02mol、硫酸インジウム0.1mol、チオ尿素0.03molを添加して攪拌すると、赤色の沈殿物が生じたため、赤色の沈殿物をろ過して除去した。この状態でpHを測定すると1.5であった。0.2M硫酸水溶液を添加してpH2の均一な水溶液が1.0L得られた。
【0102】
陰極に、2mm厚×20mm×20mmのソーダライムガラス基板にマスキングを施し、中央の5mm×5mm部分にスパッタ法を用いてモリブデン皮膜0.5μmを形成したもの、陽極に白金板を用いて、浴温40℃、電流密度1A/dmの条件にて、15分間電解めっきを行った。この際、蛍光X線分析装置で測定したところ、モリブデン膜付きソーダライムガラスに形成されためっき皮膜の膜厚は2μmで、銅の含有量は47atm%、インジウムの含有量は50atm%、硫黄の含有量は3atm%であった。
【0103】
さらに、アルゴンと硫化水素の混合気流(混合比は、Ar:HS=1:1(容積比))で350℃、1時間熱処理を行った。熱処理後の皮膜において、硫黄含有量は20atm%(銅含有量は40atm%、インジウム含有量は40atm%)であり、純度の高い銅−インジウム−硫黄皮膜は得られなかった。
【0104】
この銅−インジウム−硫黄皮膜の上に化学析出法を用いて硫化カドミウム薄膜を0.05μm形成させた。さらにスパッタリング法により、酸化インジウム薄膜を0.3μm形成して光電変換素子を作製した。
【0105】
この光電変換素子について、擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm)を照射して太陽電池特性評価を行った。短絡電流密度15.6mA/cm、開放電圧0.4V、フィルファクター0.55、光電変換効率は3.4%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性銅化合物、水溶性インジウム化合物、並びにスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性有機化合物を含む銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液。
【請求項2】
スルホ基及び/又はスルホニル基を有する水溶性有機化合物が、
スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性芳香族化合物若しくはその誘導体、又はスルホ基及び/若しくはスルホニル基を有し、末端に二重結合を有する水溶性脂肪族化合物若しくはその誘導体である、請求項1に記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液。
【請求項3】
スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有する水溶性芳香族化合物若しくはその誘導体が、
式(1):
【化1】

(式中、Qは炭素数6〜22の芳香環;Mは水素原子又はアルカリ金属;Rは炭素数1〜4のアルキル基;m1は1〜4の整数;n1は0〜4の整数である)
で表される芳香族スルホン酸若しくはその誘導体、
式(2):
【化2】

(式中、Qは炭素数6〜22の芳香環;M及びMは同じか又は異なり、いずれも水素原子又はアルカリ金属;Rは炭素数1〜4のアルキル基;m2は1〜4の整数;n2は0〜4の整数である)
で表される芳香族スルホンアミド、
式(3):
−SONMSO−Q
(式中、Q及びQは同じか又は異なり、いずれも炭素数6〜22の芳香環;Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表される芳香族スルホンイミド、並びに
式(4):
【化3】

(式中、Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表されるサッカリン化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液。
【請求項4】
スルホ基及び/若しくはスルホニル基を有し、末端に二重結合を有する水溶性脂肪族化合物若しくはその誘導体が、式(5):
−SO
(式中、Rは末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基;Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表される脂肪族スルホン酸若しくはその誘導体、
式(6):
−SONM
(式中、Rは末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基;M及びMは同じか又は異なり、いずれも水素原子又はアルカリ金属である)
で表される脂肪族スルホンアミド、並びに
式(7):
−SONMSO−R
(式中、R及びRは同じか又は異なり、いずれも末端に二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基;Mは水素原子又はアルカリ金属である)
で表される脂肪族スルホンイミド
よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液。
【請求項5】
(A)基板上に、請求項1〜4のいずれかに記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液を用いて電解めっき処理する工程、及び
(B)工程(A)で得られためっき皮膜を硫化水素を含む気流中で熱処理する工程
を含む、銅−インジウム−硫黄皮膜の製造方法。
【請求項6】
(A)基板上に、請求項1〜4のいずれかに記載の銅−インジウム−硫黄合金皮膜形成用めっき液を用いて電解めっき処理する工程、及び
(B)工程(A)で得られためっき皮膜を硫化水素を含む気流中で熱処理する工程
を含む、銅−インジウム−硫黄皮膜の電解めっき方法。
【請求項7】
硫黄含有量が35atm%以上である銅−インジウム−硫黄皮膜。
【請求項8】
請求項5に記載の製造方法又は請求項6に記載のめっき方法により得られる、硫黄含有量が35atm%以上である銅−インジウム−硫黄皮膜。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の銅−インジウム−硫黄皮膜を用いて得られる光電変換素子。
【請求項10】
請求項9に記載の光電変換素子を用いて得られる、CIS系太陽電池。

【公開番号】特開2011−202220(P2011−202220A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69549(P2010−69549)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】