説明

銅により触媒されたアリール化

本発明は、銅触媒、塩基及び水の存在下において求核性物質を芳香族化合物ArXと反応させることによる求核性物質のアリール化に関し、ここでArはアリール、ヘテロアリール又はアルケニルであり、Xはハロ、スルホネート又はホスホネートであり、塩基はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物又はリン酸塩を含み、銅触媒は銅原子もしくはイオンとリガンドを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族結合形成に関し、詳細に銅により触媒されたアリール及びヘテロアリール炭素−窒素結合の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
インドールの銅により触媒されたアリール化は公知である。例えばStephen L. Buchwald Org. Lett., 2, 1403-1406を参照されたい。最近、インドール及びアミドの銅により触媒されたアリール化が報告された。例えば、Klapars, A., Antilla, J.C., Huang, X., and Buchwald, S.L., J.AM.Chem.Soc.2001, 123, 7727-7729及びBuchwalds, S.L.Am.Chem.Soc.2002, 124, 7421を参照されたい。Buchwaldらは、溶媒(例えばトルエン及び1,4−ジオキサン)及び無機炭酸塩もしくはリン酸塩塩基(例えばK2CO3、Cs2CO3もしくはK3PO4)中で温和な温度において触媒量、すなわち0.1〜10モル%の銅による、銅により触媒されたインドールのアリール化を開示している。非配位溶媒中においてさえも温和な条件における反応性の重要な点は、リガンド、例えばジアミン(例えば1,2−ジアミノシクロヘキサンもしくはN,N’−ジメチルエチレンジアミン)の使用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アリールブロミドを用いる銅により触媒されるインドールアリール化の現在の方法は反応速度が遅く、多量の無機塩基、例えばK3PO4を用い、最小の溶媒体積で又は有機溶媒を用いずに反応器を攪拌する問題及び反応器の容量の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、求核性物質をアリール化するためのクロスカップリング反応方法に関し、この方法は銅触媒、塩基及び水の存在下において求核性物質を芳香族化合物ArXと反応させることを含み、上記式中、Arはアリール、ヘテロアリールもしくはアルケニルであり、Xはハロ、スルホネートもしくはホスホネートであり、前記塩基はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物もしくはリン酸塩を含み、前記銅触媒は銅原子もしくはイオンとリガンドを含む方法である。
【0005】
本発明の方法は、塩基の量を従来の方法よりも低下させ、反応器の攪拌及び容量の問題を最小にする。
【0006】
本発明の方法は、HN含有複素環をアリール化する方法に関し、この方法は、HN含有複素環を芳香族化合物ArXと、下式
【化1】

に従って反応させることを含み、上記式中、Arはアリール、ヘテロアリールもしくはアルケニルであり、Xはハロ、スルホネートもしくはホスホネートであり、前記塩基はアルカリ土類炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物もしくはリン酸塩を含み、前記銅触媒は銅原子もしくはイオンとリガンドを含む方法である。
【0007】
第二の態様において、本発明は、式HN(R1)R2で表されるHN含有化合物をアリール化する方法であって、この方法は、HN含有化合物を芳香族化合物ArXと下式
【化2】

に従って反応させることを含み、上記式中、Arはアリール、ヘテロアリールもしくはアルケニルであり、Xはハロ、スルホネートもしくはホスホネートであり、R1はH、アルキルもしくはアリールであり、R2は式
【化3】

で表される置換基であり、ここでR3はH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、−OR5又は−OR62であり、このR5及びR6は各々独立に、アルキル、アリール、又は式
【化4】

で表される置換基であり、このR7はアルキル又はアリールであり、前記塩基はアルカリ土類炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物もしくはリン酸塩を含み、前記銅触媒は銅原子もしくはイオンとリガンドを含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ここで用語「置換した」とは、水素原子以外の置換基による有機部分の水素原子の置換を意味し、すべての置換基(非環式炭化水素基、脂環式炭化水素基、単環芳香族炭化水素基、多環芳香族炭化水素基、複素非環式基、複素環基、縮合環系及び架橋した環系を含む)を含む。
【0009】
「アルキル」とは、直鎖、分枝鎖もしくは環式飽和炭化水素基、好ましくは、所望により1以上のヘテロ原子、例えばメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、デシル、ステアリル、エイコシル、メトキシ、トリアコンチル、2,5,7-トリオキサノナニル、2,5,8-トリアザデセニルを含み、所望により1以上の位置において他の部分、たとえばアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、ヒドロペルオキシ、カルボニル含有基(例えばカルボニル、ケトン、エステル及びアルデヒド基を含む)、アルキルオキシ、アルキルジオキシ、アミノ、アミド、イミノ、ヒドラジノ、ニトロ、シアナト、チオシアナト、メルカプト、チオカルボニル含有基(例えばチオケトン基、チオエステル基及びチオアルデヒド基を含む)、スルホニル含有基(例えばスルフェート、スルホネート及びスルファモイル基を含む)、シリル、シロキシ及びリン含有置換基(例えばホスホラニル、ホスフィニル、ホスフィノチオイル、ホスフィニミルを含む)により置換していてもよい(C1-C30)直鎖、分枝鎖もしくは環式飽和炭化水素基を意味する。そのような置換基はそれ自身、例えば上記基によってさらに置換し、アラルキル、アミノアルキル、ハロアルキル、ヘテロアシクリルアルキルのような化合物置換基を形成していてもよい。
【0010】
用語「ヘテロ原子」は、例えば酸素、窒素及び硫黄のような、炭素以外の元素を意味する。
【0011】
「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味し、「ヒドロキシ」は−OHを意味し、「スルフヒドリル」は−SHを意味し、「ヒドロペルオキシ」は−OOHを意味し、「カルボニル」は−C(O)−を意味し、「カルボキシ」は−COOHを意味し、ケトン基は2つの炭素原子に結合しているカルボニル部分を含む基であり、エステル基は−C(O)OR部分を含む基であり、アルデヒド基は−CHO部分を含む基であり、「アルキルオキシ」は−OR’を意味し、「アルキルジオキシ」は−OOR’を意味し、「アミノ」は1以上の水素原子が非アシル有機基により置換されたNH3の誘導体であり、1級、2級及び3級アミンを含み、「アミド」は例えば−C(O)NR"2を含み、「イミノ」は=NHを意味し、「ヒドラジノ」は例えば−HNNR"2を含み、「ニトロ」は−NO2であり、「シアナト」は−OCNであり、「チオシアナト」は−SCNであり、「メルカプト」は−SHであり、「チオカルボニル」は−C(S)−であり、「チオケトン基」は2つの炭素原子に結合しているチオカルボニル部分を含む基であり、「チオエステル基」は−C(S)ORであり、「チオアルデヒド」基は−CHS部分を含む基であり、「スルホニル」は−SO2−であり、「スルフェート」は例えば−OSO2OR"を含み、「スルホネート」は例えば−O2SOR"を含み、「スルファモイル」は例えば−O2SNR"2を含み、「シリル」は−SiR"3であり、「シロキシ」は−OSiR"3であり、「ホスフィノ」は−PR"2を含み、「ホスホラニル」は例えば−PR"4を含み、「ホスフィニル」は例えば−P(O)R"2を含み、「ホスフィノチオニル」は例えば−P(S)R"2を含み、「ホスフィニルニル」は例えば−P(NH)R"2を含み、「アラルキル」はアリール基によって置換したアルキル基、例えばベンジルを意味し、「アミノアルキル」はアミノ基によって置換したアルキル基、例えばジメチルアミノエチルを意味し、「ハロアルキル」はハロゲン原子によって置換したアルキル基、例えばクロロメチルを意味し、「ヘテロシクリルアルキル」はヘテロシクリル基によって置換したアルキル基、例えばピロリジニルエチルを意味し、ここで上記においてRは有機基を、R’はアルキル基を、そしてR”はH、アルキルまたはアリールである。
【0012】
「アルケニル」とは、1以上の炭素−炭素二重結合を含み、所望により1以上のヘテロ原子を含む、直鎖、分枝鎖もしくは環式炭化水素基、好ましくは(C2-C20)直鎖、分枝鎖もしくは環式炭化水素基、例えばエテニル、プロペニル、アリル、イソプロペニル、エテニリデニル、シクロペンチル、シクロヘキサジエニル、アザノネニルを意味し、これは所望により、アルキル基について説明した置換基で1以上の部位において置換していてもよい。
【0013】
「アルキニル」とは、1以上の炭素−炭素三重結合を含み、所望により1以上のヘテロ原子を含む、直鎖、分枝鎖もしくは環式炭化水素基、好ましくは(C2-C20)不飽和炭化水素基、例えばエチニル、プロピニル、チアノニルを意味し、これは所望により、アルキル基について説明した置換基で1以上の部位において置換していてもよい。
【0014】
「アリール」とは、1以上の6員環を含む不飽和炭化水素基を意味し、この不飽和は3つの共約炭素−炭素二重結合により表され、単環及び多環を含み、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナンチリル、インデニル、フルオレニルであり、これは所望により、アルキル基について説明した置換基で1以上の部位において置換していてもよい。
【0015】
「複素環」もしくは「ヘテロシクリル」は、環を構成する1以上の原子がヘテロ原子、好ましくは窒素、硫黄もしくは酸素ヘテロ原子である1以上の環を含む飽和もしくは不飽和有機基を意味し、例えばチアシクロペンタジエニル、チアインデニル、チアントレニル、オキサシクロペンタジエニル、オキサインデニル、イソベンジルフラニル、ピラニル、アザシクロペンタジエニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリニル、キノリニル、イソキノリニル、フタラジニル、シンノリニル、アザフルオレニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェナルサジニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、フェノキサジニル、ピロリジニル、ピリマジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、オキサチアアントラセニル、イソキサゾリル、オキサアザアントラセニル、イソチアゾリル、モルホリニルであり、これは所望により、アルキル基について説明した置換基で1以上の部位において置換していてもよい。
【0016】
本明細書において、「求核性物質」とは、反応性電子対を有する化学部分を意味し、「求電子物質」とは求核性物質から電子対を受け入れることのできる化学部分を意味する。
【0017】
本発明の方法の芳香族化合物ArXとして適する化合物は、求核性物質との上記反応を受けやすい脱離基Xに結合した求電子原子を含む化合物である。
【0018】
一態様において、Arは、X置換基に加えて、環の1以上の炭素においてさらに、例えばアルキル基について説明した基で置換していてもよいフェニル環を含む。好ましい態様において、Arは、X置換基に加えて、環の1以上の炭素においてさらに、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、カルボニル、アミノ、アミドもしくはスルホニルより独立に選ばれる1以上の置換基で置換したフェニル環を含む。
【0019】
一態様において、Xはハロ、スルホネート又はホスホネート基であり、より好ましくはハロである。
【0020】
好適なスルホネート基は、例えば下式
【化5】

(上式中、R8はアルキル、アリール、フルオロアルキル、好ましくはトリフルオロメチル、パーフルオロアルキルである)
で表されるものを含む。
【0021】
好適なホスホネート基は、例えば下式
【化6】

(上式中、R6は独立にアルキル又はアリールである)
で表されるものを含む。
【0022】
芳香族化合物ArXとして好適な化合物は、例えば4−ブロモベンゾニトリル、4−N,N’−ジメチルブロモアニリン、2−ブロモチオフェン、1−ニトロ−2−ヨードベンゼン、4−クロロトルエン、4−ブロモフルオロベンゼン、2−ブロモアニソール、4−ヨードアニリン、3−ブロモアセトフェノン、及び4−ブロモチオアニソールを含む。さらに好ましい態様において、芳香族化合物は4−ブロモフルオロベンゼンである。
【0023】
好適な芳香族化合物は、公知の合成方法により製造される。芳香族化合物上の置換基は所望の生成物の構造に基づいて選択される。
【0024】
本発明の方法の求核性物質として好適な化合物は、HN含有複素環及び式HN(R1)R2(式中R1及びR2は上記と同じである)で表されるHN含有化合物を含む。
【0025】
本発明の方法の好ましい態様におけるHN含有複素環として好適な化合物は、例えば置換されたもしくは未置換のトリアゾール、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、インドール、アザインドール、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、及びカルバゾール、例えば3−メチルピラゾール、2−フェニルインドール、5−メトキシインドール、5−アミノインドール、5−ニトロインドール、3−カルボメトキシインドール、ベンズイミダゾリルアセトニトリル、ピロール、7−アザインドール、1,2,4−トリアゾール、及びカルバゾールを含む。
【0026】
一態様において、HN含有複素環は下式
【化7】

(上式中、nは0又は1〜3の整数であり、R10は置換されたアルキル、置換されたNもしくはOである)
で表される単環系、例えば2−ピリミジノン、フタルアジノン、2−アゼチジノン、2−ピロリジノン、2−オキサゾリジノン、又はイミダゾリジノンを含む。
【0027】
好ましい態様において、NH含有複素環は5−クロロインドール又は2−ピロリジノンである。
【0028】
式HN(R1)R2で表されるHN含有化合物として好適な化合物は、アミド、カルバメート、尿素、及びスルホンアミドを含む。
【0029】
一態様において、式HN(R1)R2で表されるHN含有化合物は、アミド、例えばベンズアミド、4−アミノベンズアミド、シクロヘキシルアミド、トランスシンナムアミド、N−フェニルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−ベンジルホルムアミド、又はN−シクロヘキシルホルムアミドである。より好ましい態様において、HN(R1)R2化合物はベンズアミド及びN−メチルホルムアミドより選ばれる。
【0030】
他の態様において、式HN(R1)R2で表されるHN含有化合物は、カルバメート、尿素又はスルホンアミド、例えばN−フェニル−t−ブチルカルバメート、N−メチルイミダゾリジノン、又はp−トルエンスルホンアミドである。
【0031】
本発明の方法の銅原子又はイオン成分はあらゆる銅含有物質からのものであってよい。好ましい態様において、銅原子又はイオンは銅金属、Cu2O、又は銅塩、例えばCuCl、CuBr、CuBr2もしくはCuI由来である。好ましい態様において、銅触媒はCuIである。
【0032】
好ましい態様において、銅触媒は金属−リガンド錯体として反応混合物中に存在し、銅触媒は担持リガンドに結合している。
【0033】
本発明の方法のリガンド成分として好適な化合物は、反応混合物中の銅物質を溶解することができる化合物である。好ましい態様において、リガンドは1,2−ジアミン化合物、例えば1,2−ジ(アミノメチル)シクロヘキサン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、1−プロピル−1,2−N,N’−ジメチルエチレンジアミンである。さらに好ましい態様において、リガンドは1,2−ジ(アミノメチル)シクロヘキサンである。
【0034】
銅原子もしくはイオンとリガンド成分は別々の化合物として反応混合物に加えてもよい。又は、反応混合物に加える前に銅−リガンド触媒錯体を形成し、次いで銅−リガンド錯体として反応混合物に加えてもよい。
【0035】
一般に、カップリング反応は触媒量の銅触媒の存在下で行われる。本明細書において触媒の「触媒量」とは、本発明の方法の反応速度を、同じ条件ではあるが触媒を用いないで行った同じ反応の速度と比較して増加させる触媒の量を意味する。通常、銅触媒の量は、反応体の量を基準として、約0.01〜約10モル%、より好ましくは約0.5〜約5モル%である。
【0036】
好ましい態様において、反応混合物は、求核性物質の量を基準として約0.8〜3当量、より好ましくは約1.0〜約2.0当量のArXを含む。
【0037】
本発明の方法の塩基成分として好適な化合物は、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを含む。好ましい態様において、塩基は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを1種以上含む。好ましい態様において、反応混合物は、求核性物質の量を基準として、約1〜約5当量、より好ましくは約1.2〜約4当量の塩基を含む。
【0038】
塩基は通常固体又は水溶液として反応混合物に加えられる。反応に用いられる塩基の総量を1度に反応混合物に加えてもよく、又は時間をかけて加えてもよい。いずれの場合においても、銅−リガンド触媒錯体が形成された後に塩基を加えることが好ましい。
【0039】
好ましい態様において、反応は反応混合物の総量を基準として、約1〜約80体積%(vol%)、より好ましくは約10〜約50vol%の水の存在下で行われる。
【0040】
一態様において、反応混合物は有機溶媒を含まず、好ましい態様において、反応混合物は反応体、銅触媒、塩基及び水から本質的になる。
【0041】
他の態様において、反応混合物は、脂肪族もしくは芳香族炭化水素溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、ベンゼン、キシレン及びトルエン、エーテル、例えばジエチルエーテル及びt−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及び1,2−ジメトキシエタンより選ばれる溶媒をさらに含む。
【0042】
通常、カップリング反応は反応体、触媒もしくは生成物に悪影響を与えない温和な条件で行われる。好ましい態様において、カップリング反応は約25℃〜約300℃、より好ましくは約25℃〜約150℃の温度で行われる。
【0043】
好ましい態様において、カップリング反応は不活性雰囲気において、例えばアルゴンもしくは窒素雰囲気において行われる。
【実施例】
【0044】
例1及び2、並びに比較例C1及びC2:5−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)インドールの合成
【化8】

【0045】
例1の反応において、還流冷却器、オーバーヘッド機械攪拌器及びAr入口を備えた250mLの3口丸底フラスコからなる反応容器をArで30分間フラッシした。次いでこの反応容器に4−ブロモフルオロベンゼン3(6.6mL、60mmol)及びH2O(5mL、Arを1時間パージした)を入れ、オーバーヘッド攪拌器を始動させた。1,2−ジ(アミノメチル)シクロヘキサン1(426mg、3mmol)、CuI(114mg、0.60mmol)、及び5−クロロインドール2(4.5g、30mmol)を加え、反応混合物を5分間攪拌した。KOH(5.05g、90mmol)を反応容器に加え、反応フラスコを120℃の油浴に入れた。4時間後、EtOAcで希釈した試料のGC分析により95%の転化が示された。湯浴を取り除き、熱い反応混合物にH2O(4体積)を入れ、有機生成物がすばやく沈殿した。反応混合物を室温に冷却し、濾過により固体生成物を集め、真空中で一晩乾燥させた。収量:7.03g(95%)。GC純度:97.5%。
【0046】
例2並びに比較例C1及びC2の反応は、表1に示すことを除き例1と同様の条件において行った。
【0047】
【表1】

【0048】
各例について、時間に対する転化率を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
水/KOHの使用は、2当量のK3PO4と共に溶媒として2当量のArBrを用いる(水を用いる又は用いない)ものに匹敵する速度を示し、1)より安くかつ塩基の体積効率が高く、2)反応の攪拌が容易でスケールアップを容易にするという利点を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
求核性物質をアリール化する方法であって、銅触媒、塩基及び水の存在下において求核性物質を芳香族化合物ArXと反応させることを含み、上記式中、Arはアリール、ヘテロアリールもしくはアルケニルであり、Xはハロ、スルホネートもしくはホスホネートであり、前記塩基はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物もしくはリン酸塩を含み、前記銅触媒は銅原子もしくはイオンとリガンドを含む方法。
【請求項2】
前記求核性物質が式HN(R1)R2で表されるHN含有化合物もしくはHN含有複素環を含み、上記式中、R1はH、アルキルもしくはアリールであり、R2は式
【化1】

で表される置換基であり、ここでR3はH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、−OR5又は−OR62であり、このR5及びR6は各々独立に、アルキル、アリール、又は式
【化2】

で表される置換基であり、このR7はアルキル又はアリールである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記求核性物質がトリアゾール、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、インドール、アザインドール、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、及びカルバゾールより選ばれるHN含有複素環であり、これらは置換していても未置換であってもよい、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記求核性物質が下式
【化3】

(上式中、nは0又は1〜3の整数であり、R10は置換したアルキル、置換したN、又はOである)
で表される単環系を含むHN含有複素環を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記求核性物質がアミド、カルバメート、尿素、又はスルホンアミドを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記求核性物質がベンズアミド、4−アミノベンズアミド、シクロヘキシルアミド、トランスシンナミド、N−フェニルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−ベンジルホルムアミド、N−シクロヘキシルホルムアミド、N−フェニル−t−ブチルカルバメート、N−メチルイミダゾリジノン、又はp−トルエンスルホンアミドを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
Arが、未置換であるか又はX置換基に加えて、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、カルボニル、アミノ、アミドもしくはスルホニルより独立に選ばれる1以上の置換基により環の1以上の炭素原子において置換されたフェニル環を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
Xがハロである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
Xが下式
【化4】

(上式中、R8はアルキル、アリール、フルオロアルキル、好ましくはトリフルオロメチル、パーフルオロアルキルである)
で表されるスルホネート基である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
Xが下式
【化5】

(上式中、各R9は独立にアルキル又はアリールである)
で表されるホスホネート基である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ArXが4−ブロモベンゾニトリル、4−N,N’−ジメチルブロモアニリン、2−ブロモチオフェン、3−ブロモキノリン、1−ニトロ−2−ヨードベンゼン、4−クロロトルエン、4−ブロモフルオロベンゼン、2−ブロモアニソール、4−ヨードアニリン、3−ブロモアセトフェノン、又は4−ブロモチオアニソールを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記銅原子もしくはイオンが銅金属、Cu2O、又はCuCl、CuBr、CuBr2及びCuIより選ばれる銅塩由来である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記リガンドが1,2−ジアミン化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記リガンドが1,2−ジ(アミノメチル)シクロヘキサン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、又は1−プロピル−1,2−N,N’−ジメチルエチレンジアミンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記銅触媒が、銅原子もしくはイオンとリガンドを含む錯体として反応混合物に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記銅触媒が、反応体の量を基準として約0.01〜約10モル%の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
求核性物質の量を基準として約0.8〜3当量のArXの存在下で反応を行う、請求項1記載の方法。
【請求項18】
反応混合物の総体積を基準として約1〜約80体積%の水の存在下で反応を行う、請求項1記載の方法。
【請求項19】
HN含有複素環物質のアリール化方法であって、HN含有複素環物質を芳香族化合物ArXと下式
【化6】

に従って反応させることを含み、上記式中、Arはアリール、ヘテロアリールもしくはアルケニルであり、Xはハロ、スルホネートもしくはホスホネートであり、前記塩基はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物もしくはリン酸塩を含み、前記銅触媒は銅原子もしくはイオンとリガンドを含む方法。
【請求項20】
式HN(R1)R2で表されるHN含有化合物をアリール化する方法であって、HN含有化合物を芳香族化合物ArXと下式
【化7】

に従って反応させることを含み、上記式中、Arはアリール、ヘテロアリールもしくはアルケニルであり、Xはハロ、スルホネートもしくはホスホネートであり、R1はH、アルキルもしくはアリールであり、R2は式
【化8】

で表される置換基であり、ここでR3はH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、−OR5又は−OR62であり、このR5及びR6は各々独立に、アルキル、アリール、又は式
【化9】

で表される置換基であり、このR7はアルキル又はアリールであり、前記塩基はアルカリ土類炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物もしくはリン酸塩を含み、前記銅触媒は銅原子もしくはイオンとリガンドを含む方法。

【公表番号】特表2006−508046(P2006−508046A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526201(P2004−526201)
【出願日】平成15年7月29日(2003.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/023673
【国際公開番号】WO2004/013072
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(504469570)ローディア ファーマ ソリューションズ インコーポレイティド (3)
【Fターム(参考)】