説明

銅ナノペースト及びその形成方法、並びに銅ナノペーストを用いる電極形成方法

【課題】高温工程の適用が困難なシリコン基板、高分子基板、ガラス基板、印刷回路基板などに対して電極の形成が可能な銅ナノペースト及びその形成方法を提供する。
【解決手段】0.1〜30重量部で添加されるバインダと、10重量部以下で添加される添加剤と、1〜95重量部で添加され、150nm以下の粒子大きさを有し、表面がキャッピング材料でコートされた銅粒子とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅ペースト及びその形成方法、並びに銅ペーストを用いる太陽電池電極形成方法に関し、特に、200℃以下の低温で焼成処理が可能な銅ナノペースト及びその形成方法、並びに銅ナノペーストを用いる太陽電池電極形成方法に関する。より詳しくは、本発明は、高温工程を適用しにくいシリコン基板、高分子基板、ガラス基板及び印刷回路基板に対して、スクリーン印刷方法などを用いて電極の形成が可能な銅ナノペースト及びその形成方法、並びに銅ペーストを用いる電極形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、太陽電池の電極形成のために、銀ナノペースト(Ag Nano paste)または金ナノペースト(Ag Nano paste)が広く使われている。しかし、このような銀及び金ナノペーストを用いる場合、電極形成のための製造単価が非常に増加するという問題点がある。そのため、最近では、相対的に低価の銅ナノペースト(Cu Nano paste)を用いて、太陽電池の電極をインクジェットプリンティング方式で形成する技術が開発されている。
【0003】
しかし、銅金属は酸化され易い特徴がある。ナノ単位の粒子大きさを有する銅ナノペーストの場合、銀及び金ナノペーストに比べて、相当に酸化され易いという問題点がある。特に、銅は、特性上略120℃以上では、待機中で酸化され易いため、熱処理を通じた電極の形成が極めて難しいという問題がある。そのため、銅ナノ粒子インキの焼成は、還元雰囲気内で行うことによって銅ナノペーストの酸化を防ぐことができる。また、このような銅ナノペーストを用いて。太陽電池製造用基板に電極を形成するためには、焼成温度が基板のガラス転移温度(Glass Transition Temperature:Tg)以下に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2008−0056772号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2008−0088712号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10−2010−0028287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、このような条件を満たすため、水素ガスを用いる還元雰囲気内で銅ナノペーストを焼成処理する方法がある。しかし、この場合、略600℃以上の温度雰囲気で相対的に長い時間の間熱処理を行われなければならないと、銅ナノペーストの焼成を完了することができない。また、抵抗率が極めて高い値を示すという問題がある。また、太陽電池製造用基板としてシリコン基板を用いる場合、該シリコン基板のガラス転移温度(Tg)は、略250℃以下なので、前述のような銅ナノペーストの焼成処理ができないという問題がある。
【0006】
一方、銀ペーストの場合、現在、数マイクロの粒子大きさを有するペーストが用いられている。このような数マイクロの銀ペーストは、略500℃以上の焼成温度が必要である。よって、最近、非晶質シリコン層を有する太陽電池に銀ペーストを用いる電極を形成するには限界がある。これを克服するため、低温硬化型銀ペーストを使うことができるが、この場合、電極の抵抗率が高くなり、電極特性が低いという問題がある。これに加えて、銀ペーストを用いて形成された電極は、長期間電流を加えると、該電極から外部へ銀粒子が移動するマイグレイション(migration)現象が発生する。
【0007】
その他、高温工程が不可能な高分子基板、ガラス基板及び印刷回路基板に対して、スクリーン印刷方式で電極を形成するためには、ペースト組成物が最小200℃以下の温度で焼成ができなければならない。しかし、現在使用中の金、銀及び銅のペースト組成物の場合、300℃以上の焼成温度を有するので、前述のような技術分野には、適用するには困難である。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、略200℃以下の低温で焼成処理が可能な銅ナノペースト及びその形成方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、高温工程の適用が困難なシリコン基板、高分子基板、ガラス基板、印刷回路基板などに対して電極の形成が可能な銅ナノペースト及びその形成方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明のさらに他の目的は、銀ペーストを用いて形成された電極に比べて、抵抗率が小さな電極の形成が可能な銅ナノペースト及びその形成方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明のさらに他の目的は、略200℃以下の低温で、銅ナノペーストを焼成処理することができる電極形成方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明のさらに他の目的は、高温工程の適用が困難なシリコン基板、高分子基板、ガラス基板、印刷回路基板などに対して電極の形成が可能な電極形成方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明のさらに他の目的は、銀ペーストを用いて形成された電極に比べて、抵抗率が小さな電極を形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を解決するために、本発明による銅ナノペーストは、0.1〜30重量部で添加されるバインダと、10重量部以下で添加される添加剤と、1〜95重量部で添加され、150nm以下の粒子大きさを有し、表面がキャッピング材料でコートされた銅粒子とを含む。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記キャッピング材料は、脂肪酸及び脂肪アミンのうちの少なくともいずれか一つを含む。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記バインダは、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、アマイド系樹脂及びブチラール樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含む。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記添加剤は、搖変剤及びラベル剤を含む。
【0018】
また、上記目的を解決するために、本発明による銅ナノペーストの形成方法は、反応器に銅化合物、還元剤及び溶剤を供給して混合液を形成するステップと、該混合液にキャッピング材料(capping material)を添加し、該キャッピング材料で表面がコートされた150nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子を含む反応組成物を形成するステップと、該反応組成物から銅ナノ粒子を取り出すステップとを含む。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記キャッピング材料は、脂肪酸及び脂肪アミンのうちの少なくともいずれか一つが挙げられる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記混合液を形成するステップは、前記混合液にセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、アマイド系樹脂及びブチラール樹脂のうちの少なくともいずれか一つを添加するステップを含む。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記混合液を形成するステップは、前記混合液に、搖変剤及びラベル剤を添加するステップを含む。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記反応組成物にラベル剤及び搖変剤のうちの少なくともいずれか一つを添加するステップをさらに含む。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記混合液を形成するステップは、前記反応器にターピネオール(terpineol)を注入するステップと、前記ターピネオールにエチルセルロース(ethyl cellulose)を溶解させるステップと、前記反応器に加えられた温度を低めながら、10nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子を添加するステップとを含む。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記混合液を形成するステップは、前記反応器に、ターピネオールを注入するステップと、前記ターピネオールに、トルエン、エチルセルロース、セルロースアセテイト誘導体(cellulose acetate derivatives)及びメタクリル酸メチル重合体(Methyl Methacrylate Polymer)を溶解するステップと、前記反応器に加えられた温度を低めながら、10nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子を添加するステップを含む。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記混合液を形成するステップは、前記反応器にブチルカルビトール(butyl carbitol)を注入するステップと、前記ブチルカルビトールにヒドロキシプロピルメチルセルロース (Hydroxypropyl methyl Cellulose)及びエチルメタクリル酸重合体(ethyl methacrylic acid Polymer)を溶解させながら、前記銅ナノ粒子を添加させるステップとを含む。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記混合液を形成するステップは、前記反応器に、ターピネオール、ジヒドロターピネオール(dihydroterpineol)及びネオデカネイト(neodecanate)を混合するステップと、前記反応器に加えられた温度を低めながら、前記反応器にエチルセルロース(ethyl cellulose)、ブチルメタクリレート(buthyl methacrylate)及びエチルメタクリル酸共重合体(ethyl methacrylic acid copolymer)を溶解させるステップとを含む。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記混合液を形成するステップは、前記反応器に、ターピネオールを注入するステップと、前記ターピネオールにブチルカルビトール、セルロースアセテイト(cellulose acetate)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース (hydroxy propyl cellulose)を溶解させるステップと、前記反応器にジオクチルフタルレイト(dioctylphthalate)及び界面活性剤を添加するステップとを含む。
【0028】
本発明による電極形成方法は、前記のような銅ナノペーストを用いて電極を形成する方法であって、電極形成用基板を準備するステップと、前記基板上に前記銅ナノペーストを塗布するステップと、200℃の温度で前記銅ナノペーストを焼成するステップとを含む。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前記基板を準備するステップは、透明伝導性酸化物が蒸着された太陽電池製造用基板を準備するステップを含み、前記銅ナノペーストを塗布するステップは、スクリーンプリンティング方法で前記太陽電池製造用基板上に前記銅ナノペーストを印刷するステップを含む。
【0030】
本発明の実施形態によれば、前記基板を準備するステップは、印刷回路基板製造用ポリイミド基板を準備するステップを含み、前記銅ナノペーストを塗布するステップは、スクリーンプリンティング方法で前記ポリイミド基板上に前記銅ナノペーストを塗布するステップを含み、前記銅ナノペーストを焼成するステップは、180℃の温度雰囲気で前記銅ナノペーストを還元焼成するステップを含む。
【0031】
本発明の実施形態によれば、前記基板を準備するステップは、シリコン基板、高分子基板、ガラス基板及び印刷回路基板のうちのいずれか一つを準備するステップを含む。
【発明の効果】
【0032】
本発明による銅ナノペーストは、粒子大きさが150nm以下の銅ナノ粒子を含み、200℃以下の低温でも反応性の高い銅ナノ粒子が互いに堅たく密着して結合されるので、焼成処理が可能で、高温工程の適用が困難なシリコン基板、高分子基板、ガラス基板、印刷回路基板などに対して電極の形成が可能になる。
【0033】
本発明による銅ナノペーストの形成方法は、200℃以下の低温温度で焼成処理が可能で、高温工程の適用が困難なシリコン基板、高分子基板、ガラス基板、印刷回路基板などに対して電極の形成が可能な銅ナノペーストを製造することができるという効果が奏する。
【0034】
本発明による電極形成方法は、200℃以下の低温で焼成処理が可能な銅ナノペーストを用いて、高温工程の適用が困難なシリコン基板、高分子基板、ガラス基板、印刷回路基板などに対して電極を形成することができ、電極の形成される基板を構成する材料の物理的/化学的変化及び損傷を防止することができるという効果が奏する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態は図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。
【0036】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は文句で特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0037】
以下、本発明の実施形態による銅ナノペースト及びその形成方法、並びに銅ナノペーストを用いる電極製造方法に対して詳しく説明する。
【0038】
本発明の実施形態による銅ナノペースト(Copper Nano Paste)は、所定の金属パターンを形成するための材料である。例えば、銅ナノペーストは、太陽電池(solar cell battery)の電極の形成のための材料である。銅ナノペーストは、ナノ単位の粒子大きさを有する銅粒子を含んでもよい。例えば、銅粒子の各々の直径は、略150nm以下である。望ましくは、銅粒子の各々の直径は、略20nm以下に調節されてもよい。銅粒子の直径が減少するほど、銅ペーストの塗布特性及び該銅ペーストを用いて形成された導電性パターンの電気的特性が向上することができる。これは、銅粒子の直径が減少するほど、熱反応性が向上し、焼成効率が向上するからである。
【0039】
銅粒子の各々は、所定のキャッピング材料で取り囲まれた構造を有する。一例として、キャッピング材料は、銅ナノペースト内の銅粒子間の凝集を防止する分散剤として用いられる。このため、該銅粒子の合成過程において、銅粒子の各々をキャッピング材料でキャッピングさせる過程が付加されてもよい。
【0040】
キャッピング材料には、多様な種類の材料が使われてもよい。一例として、キャッピング材料には、多様な種類の脂肪酸が使われてもよい。このようなキャッピング材料でキャッピングされた銅ナノ粒子は、本出願人による先出願の多様な製造方法によって製造されることができる。一例として、韓国特許出願第2005−72478号によると、還元剤の役割をする銅化合物を用いてアルカン酸、すなわちラウリン酸、オルレサン、デカン酸、パルミチン酸のような脂肪酸でキャッピングさせた金属ナノ粒子を得ることができる。他の例として、韓国特許出願第2005−66936号によると、金属アルカノアートを熱処理することによって金属ナノ粒子の周囲に脂肪酸をキャッピングさせることができる。さらに他の例として、韓国特許出願第2006−64481号によると、金属前駆体を脂肪酸に解離させた後、錫、マグネシウム、鉄のような金属の金属塩を金属触媒として用いて脂肪酸でキャッピングさせた金属ナノ粒子を得ることができる。さらに他の例として、韓国特許出願第2006−98315号によると、銅前駆体材料を脂肪酸に入れて解離させた後に加熱させるか、還元剤をさらに投入して脂肪酸でキャッピングされた銅ナノ粒子を得ることができる。さらに他の例として、脂肪アミンでキャッピングされた金属ナノ粒子を使うこともできる。この場合、韓国特許出願第2006−127697号のように、2種の分散剤、すなわち脂肪酸及び脂肪アミンを共に有する粒子を使うこともできる。これらの方法は例示であって、これに限定されるのではなく、脂肪酸でキャッピングされた金属ナノ粒子を準備するために多様な方法を使ってもよい。
【0041】
また、銅ナノペーストは、バインダ、その他の添加剤をさらに含んでもよい。これらのバインダなどの添加剤に対する具体的な内容は、後述する。
【0042】
前記のような銅ペーストを用いて、太陽電池の電極を形成することができる。例えば、本発明による太陽電池の電極形成方法は、太陽電池製造用基板上に銅ナノペーストをプリントした後、該銅ナノペーストを焼成する。
【0043】
以下、本発明の具体的な製造例による銅ナノペースト及びその形成方法、並びに銅ナノペーストを用いる太陽電池の電極形成方法について説明する。後述する各製造例は例示であって、これに限定されるのではない。
<製造方法>
【0044】
a)銅(Cu)ナノ粒子の形成
本発明の実施形態による銅ナノ粒子の合成方法は、銅を含む金属前駆体を形成するステップと、該金属前駆体を高温雰囲気で還元させるステップと、該金属前駆体の表面を所定のキャッピング材料で取り囲むステップとを含む。
【0045】
所定の反応器に銅を含む銅化合物、第1の還元剤及び溶剤を供給して混合液を形成する。この混合液を形成するステップは、略30〜250℃の温度条件内で行われる。
【0046】
前記反応器内の混合液に銅ナノ粒子の大きさの制御及び安定化のために、銅化合物と同じモル数を有するキャッピング材料を漸進的に滴下する。キャッピング材料には、多様な種類の脂肪酸、脂肪アミンなどが挙げられる。
【0047】
また、前記混合液に所定の第2の還元剤を添加して、相対的に高温で反応させてもよい。第1及び第2の還元剤には、アスコルビン酸、フェノール酸、マレイン酸、酢酸、クエン酸、ギ酸のうちの少なくともいずれか一つが挙げられる。
【0048】
前記のような過程を通じて、反応器内には、150nm以下の直径を有する大略球状の銅ナノ粒子が含まれた反応組成物が形成されることができる。
【0049】
また、該反応組成物から銅ナノ粒子を取り出す後処理工程が行われる。例えば、この後処理工程は、組成物を所定の反応溶剤で冷却させるステップと、非溶剤で清浄した後遠心分離させるステップとを含む。より均一且つ高純度の銅ナノ粒子を得るためには、前述のような後処理工程が繰返して行われてもよい。これによって、反応組成物から150nm以下の直径を有する銅ナノ粒子を製造することができる。この銅ナノ粒子の直径は、20nm以下に設けられることが望ましい。
【0050】
前述のように、本発明の実施形態による銅ナノ粒子の形成方法は、銅ナノ粒子の表面がキャッピング材料でキャッピングされた構造の銅ナノ粒子を製造することができる。このようなキャッピング材料によって、後に銅ナノ粒子ペーストの製造の時、該キャッピング材料が銅ナノ粒子間の凝集を防止することができる。
b)銅ナノペーストの形成
【0051】
本発明の実施形態による銅ナノペーストは、前述の方法によって形成された銅ナノ粒子、バインダ及び添加剤を含む。
【0052】
銅ナノ粒子は、1〜95重量部を有するように調節される。該銅ナノ粒子が1重量部以下に添加された場合、該銅ナノ粒子の含量が相対的に非常に少なくなる。これを用いて所定の金属パターンを形成する場合、電気伝導度が低く、太陽電池の電極のような導電性パターンとして使いにくいことがある。逆に、銅ナノ粒子が95重量部以上の場合、バインダと溶剤との混合効率が低下すると共に、インクジェットプリンタの塗布効率が低くなり、インクジェットプリンティング技術のためのペースト組成物としては不適合である。
【0053】
バインダは、銅ナノ粒子ペーストの印刷の時に、金属など、その他添加剤成分が印刷対象物上で均一な膜に形成されるように、マトリクス(matrix)として作用する。このバインダには、樹脂系列の材料が挙げられる。例えば、該バインダには、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、アマイド系樹脂及びブチラール樹脂のうちの少なくともいずれか一つが挙げられる。
【0054】
バインダは、略0.1〜30重量部を含む。このバインダが0.1重量部以下の場合、銅ナノ粒子ペーストが印刷対象物上に均一に塗布されにくくなる。加えて、該印刷対象物に対する銅ナノ粒子ペーストの接着強さが低くなり、該銅ナノ粒子ペーストで印刷対象物に電極を形成する場合、電極と印刷対象物との間の接着強さが低く、該電極が印刷対象物から剥離され易い現象が発生する。これに対して、バインダが30重量部以上の場合、銅ナノ粒子間の焼成が極めて難しくなり、そのような銅ナノ粒子ペーストで電極を形成する場合、電極の電気的特性が低下することになる。
【0055】
前記添加剤は、前記銅ペーストの塗布、電極の形成などの特性を向上するための材料が挙げられる。例えば、添加剤には、搖変剤及びラベル剤が挙げられる。
【0056】
前記搖変剤は、前記銅ペーストをスクリーン印刷初期には、銅ペーストの粘度を急激に減少させてメッシュ面への通過効率を増加させ、印刷後期には、銅ペーストの粘度が急激に上昇して印刷されたパターンの広がり(spread−out)を最大限抑制するために使われる。このため、搖変剤は、前記バインダの分子量を増加させ、高い剪断応力下で該バインダの分子チェーンが単方向に配列されるようにして、印刷初期に銅ペーストの粘度を減少させることができる。また、搖変剤は、銅ナノ粒子を取り囲むキャッピング材料と相対的に弱い結合をして、印刷後期の前記銅ペーストの広がり性を防止することができる。
【0057】
前記ラベル剤は、前記分散剤によって前記銅ペーストのラベル特性が低下して、印刷対象物上にメッシュ跡が残って不均一なパターンが形成されることを防止するための材料である。このため、前記ラベル剤は、前記銅ペーストに適切な流動性を与える。
【0058】
その他に、多様な種類の添加剤が使われてもよい、この添加剤は、略10重量部以下で添加されることが望ましい。記添加剤が10重量部以上に添加される場合、各添加剤の固有特性がむしろ低下してしまって、銅ペーストで形成された電極の電気的特性が低下することになる。
【0059】
前記溶剤は、銅ナノ粒子、バインダ、添加剤などのように商用性が優秀で、沸点が比較的低く、銅ペーストの製造及び印刷工程の時、揮発によるペースト物性の変化を防止するような材料が使われてもよい。一例として、溶剤には、トルエン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンのうちの少なくともいずれか一つの有機溶剤が挙げられる。他の例として、溶剤には、パラニルオイル、テトラデカン、テトラルリン及びミネラルオイルのうちの少なくともいずれか一つの非極性溶剤が挙げられる。さらに他の例として、溶剤には、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ターピネオール、ブチルカルビトール及びネオデカネイトのうちの少なくともいずれか一つの極性溶剤が挙げられる。
【0060】
銅ナノ粒子、バインダ、添加剤及び溶剤を混合した混合物を所定のミキサを用いて混合する。このミキサには、高速ミキサ、自転工程ミキサなどが挙げられる。混合物内の一部再凝集される粒子を再分散させるためには、3本ミル(Triple Roller Mill)を用いて混合することによって、均一な組成の銅ナノペーストが製造することができる。
c)太陽電池の電極の形成。
【0061】
上述した過程を通じて製造された銅ナノペーストを太陽電池製造用基板上に形成する。例えば、銅ナノペーストを太陽電池製造用シリコン基板上にスクリーン印刷法を用いてプリンティングする。そして、200℃以下の温度で前記銅ナノペーストを焼成し、該シリコン基板上に電極を形成する。この電極は、太陽電池のプラス及びマイナス電極になる。
【0062】
一般的な銅ペーストを焼成するためには、略600℃以上の相対的に高温工程雰囲気が求められる。しかし、このような高温工程雰囲気で焼成工程を行う場合、銅材料の特性上、太陽電池用製造用基板へと拡散されやすい現象が発生する。そのため、基板に形成されたPN接合層が破壊され、太陽電池の効率を減少させることになる。特に、太陽電池の基板には、透明伝導性酸化物(Transparent Conductive Oxide:TCO)層が蒸着されるので、600℃以上の高温工程に露出する場合、透明伝導性酸化物が損傷して太陽電池の効率を低下させることになる。
【0063】
しかし、本発明による銅ナノペーストの場合、銅を150nm以下の極微細単位で調節して、ペースト組成物の反応性を最大で高めることによって、焼成工程の時銅ナノペーストが200℃以下の低温でも、容易に焼成が可能である。これによって、本発明による銅ナノペーストは、低温焼成工程を用いて、透明伝導性酸化物のような高温雰囲気で損傷される薄膜が形成された太陽電池製造用基板上に、電極を形成することができる。
【0064】
前述のように、本発明の実施形態による銅ナノペーストは、銅粒子の大きさを150nm以下に調節して、熱反応効率の高い組成を有するので、200℃以下の低温温度で焼成処理が可能で、太陽電池の電極の製造のためのペーストとして使われることができる。
<銅ナノペースト製造の実施例>
a)実施例1
【0065】
所定の反応器に41gのターピネオールに2gのエチルセルロースを略60℃温度で加熱して溶解させながら、添加する。エチルセルロースが溶解されれば、反応器に加えられた温度を略常温に低め、10nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子220gを徐徐に添加する。そして、3本ミルを通過させ、5500cPの粘度を有する銅ナノペーストを製造する。
b)実施例2
【0066】
所定の反応器に50gのターピネオールに10gのトルエン溶剤に1gのエチルセルロース、1gのセルロースアセテイト誘導体、0.7gのメタクリル酸メチル重合体を略50℃温度で加熱して溶解させて混合する。エチルセルロースが溶解されれば、反応器に加えられた温度を略常温に低め、10nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子170gを徐徐に添加する。そして、高速ミキサを用いて混合した後、3本ミルを通過させて、4000cPの粘度を有する銅ナノペーストを製造する。
c)実施例3
【0067】
所定の反応器に100gのブチルカルビトールに2.5gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、1gのエチルメタクリル酸重合体を略60℃温度で加熱して完全溶解させて混合する。この過程で、10nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子250gを徐徐に添加して溶解させる。チキソトロピー性を付与するために、アエロジル5gを追加で添加してもよい。そして、高速ミキサを用いて撹拌した後、3本ミルを通過させて、5000cPの粘度を有する銅ナノペーストを製造する。
d)実施例4
【0068】
所定の反応器に150gのターピネオール、10gのジヒドロターピネオール、20gのネオデカネイト及びエチルセルロース、ブチルメタクリレート、エチルメタクリル酸共重合体を各々3g入れて、略60℃温度で加熱して徐徐に溶解させる。該反応器内の混合物に10nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子325gを徐徐に添加して溶解させる。そして、高速ミキサを用いて撹拌した後,3本ミルを通過させて、5500cPの粘度を有する銅ナノペーストを製造する。
e)実施例5
【0069】
所定の反応器に40gのターピネオール、100gのブチルカルビトール、セルロースアセテイト及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを各々1g入れて、略60℃温度で加熱して徐徐に溶解させる。該反応器内の混合物に10nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子137gを徐徐に添加して溶解させる。チキソトロピー性及び表面特性の向上のためにフタル酸ジオクチル(dioctylphthalate)1g及びシリコン系界面活性剤0.5gを添加した後、3本ミルを通過させて、6000cPの粘度を有する銅ナノペーストを製造する。
<太陽電池の電極製造の実施例>
【0070】
前述の実施例1〜5によって製造された銅ナノペーストを、透明伝導性酸化物が蒸着された太陽電池製造用基板にスクリーンプリンティング方法で印刷する。続いて、200℃の温度雰囲気で略30分間還元焼成して、100μmの線幅を有する電極パターンを形成することができた。その形成された電極パターンは、50〜200Ω/mの抵抗特性、1〜40mΩ/cmの接触抵抗及び3〜100μΩ/cmの抵抗率値を現わした。
【0071】
これによって、本発明の実施形態による銅ナノペーストは、粒子大きさが略150nm以下の銅粒子を含んで焼成効率を増加させ、略200℃以下の低温雰囲気で焼成が可能で、太陽電池の電極の形成ができた。
<印刷回路基板の電極製造の実施例>
【0072】
前述の各実施例1〜5によって製造された銅ナノペーストを、ポリイミド基板にスクリーンプリンティング方法で印刷する。続いて、180℃以下の温度雰囲気で略1時間間還元焼成して、80μmの線幅を有する電極パターンを形成することができた。その形成された電極パターンは、50〜200Ω/mの抵抗特性及び3〜100μΩ・cmの抵抗率値を現わした。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1〜30重量部で添加されるバインダと、
10重量部以下で添加される添加剤と、
1〜95重量部で添加され、150nm以下の粒子大きさを有し、表面がキャッピング材料でコートされた銅粒子と
を含む銅ナノペースト。
【請求項2】
前記キャッピング材料は、脂肪酸及び脂肪アミンのうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の銅ナノペースト。
【請求項3】
前記バインダは、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、アマイド系樹脂及びブチラール樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1または2に記載の銅ナノペースト。
【請求項4】
前記添加剤は、搖変剤及びラベル剤を含む請求項1から3の何れか1項に記載の銅ナノペースト。
【請求項5】
反応器に銅化合物、還元剤及び溶剤を供給して混合液を形成し、該混合液を形成するステップと、
前記混合液にキャッピング材料を添加して、該キャッピング材料で表面がコートされた150nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子を含む反応組成物を形成するステップと、
前記反応組成物から銅ナノ粒子を取り出すステップと
を含む銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記キャッピング材料は、脂肪酸及び脂肪アミンのうちの少なくともいずれか一つである請求項5に記載の銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記混合液を形成するステップは、前記混合液にセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、アマイド系樹脂及びブチラール樹脂のうちの少なくともいずれか一つを添加するステップを含む請求項5または6に記載の銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記混合液を形成するステップは、前記混合液に搖変剤及びラベル剤を添加するステップを含む請求項5から7の何れか1項に記載の銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記反応組成物にラベル剤及び搖変剤のうちの少なくともいずれか一つを添加するステップをさらに含む請求項5から8の何れか1項に記載の銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記混合液を形成するステップは、
前記反応器にターピネオールを注入するステップと、
前記ターピネオールにエチルセルロースを溶解させるステップと、
前記反応器に加えられた温度を低めながら、10nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子を添加するステップと
を含む請求項5から9の何れか1項に記載の銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記混合液を形成するステップは、
前記反応器にターピネオールを注入するステップと、
前記ターピネオールに、トルエン、エチルセルロース、セルロースアセテイト誘導体及びメタクリル酸メチル重合体を溶解するステップと、
前記反応器に加えられた温度を低めながら、10nm以下の粒子大きさを有する銅ナノ粒子を添加するステップと
を含む請求項5から9の何れか1項に記載の銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記混合液を形成するステップは、
前記反応器にブチルカルビトールを注入するステップと、
前記ブチルカルビトールにヒドロキシプロピルメチルセルロース及びエチルメタクリル酸重合体を溶解させながら、前記銅ナノ粒子を添加するステップと
を含む請求項5から9の何れか1項に記載の銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記混合液を形成するステップは、
前記反応器にターピネオール、ジヒドロターピネオール及びネオデカネイトを混合するステップと、
前記反応器に加えられた温度を低めながら、前記反応器にエチルセルロース、ブチルメタクリレート及びエチルメタクリル酸共重合体を溶解するステップと
を含む請求項5から9の何れか1項に記載の銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記混合液を形成するステップは、
前記反応器にターピネオールを注入するステップと、
前記ターピネオールにブチルカルビトール、セルロースアセテイト及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解するステップと、
前記反応器にフタル酸ジオクチル及び界面活性剤を添加するステップと
を含む請求項5から9の何れか1項に記載の銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の銅ナノペーストを用いて電極を形成する方法であって、
電極形成用基板を準備するステップと、
前記基板上に前記銅ナノペーストを塗布するステップと、
200℃の温度で前記銅ナノペーストを焼成するステップと
を含む電極形成方法。
【請求項16】
前記電極形成用基板を準備するステップは、透明伝導性酸化物の蒸着された太陽電池製造用基板を準備するステップを含み、
前記銅ナノペーストを塗布するステップは、スクリーンプリンティング方法で前記太陽電池製造用基板上に前記銅ナノペーストを印刷するステップを含む請求項15に記載の電極形成方法。
【請求項17】
前記電極形成用基板を準備するステップは、印刷回路基板製造用ポリイミド基板を準備するステップを含み、
前記銅ナノペーストを塗布するステップは、スクリーンプリンティング方法で前記ポリイミド基板上に前記銅ナノペーストを塗布するステップを含み、
前記銅ナノペーストを焼成するステップは、180℃の温度雰囲気で前記銅ナノペーストを還元焼成するステップを含む請求項15に記載の電極形成方法。
【請求項18】
前記電極形成用基板を準備するステップは、シリコン基板、高分子基板、ガラス基板及び印刷回路基板のうちのいずれか一つを準備するステップを含む請求項15に記載の電極形成方法。

【公開番号】特開2012−178334(P2012−178334A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268725(P2011−268725)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】