説明

銅含有方向性珪素鋼の製造方法

スラブを熱間圧延し、一回目の冷間圧延を行ってから800℃以上に加熱し、PH2O/PH2=0.50〜0.88の保護雰囲気中で中間脱炭焼鈍を3〜8分間行うことで、鋼板の炭素含有量を30ppm以下に低下させる工程と、次に、ショットブラストと酸洗をして表面における鉄の酸化物を除去し、酸素含有量を500ppm以下に抑制する工程と、所期の厚さになるまで二回目の冷間圧延を行い、スラリー状で分離剤を塗布する工程と、分離剤の含水率を1.5%未満にするように乾燥する工程と、酸化度(PH2O/PH2)が0.0001〜0.2の水素含有保護雰囲気中で高温焼鈍する工程と、最後に張力コーティングと伸長平坦化焼鈍を施す工程と、を含む電磁的性能の高い銅含有方向性珪素鋼の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向性珪素鋼の製造方法に関し、特に、電磁的性能の高い銅含有方向性珪素鋼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、方向性珪素鋼の製造プロセスの発展方向は、低いスラブ加熱温度にある。窒化アルミニウム及び銅を抑制剤とする中温での方向性珪素鋼の製造プロセスによっては、低いスラブ加熱温度(1250〜1300℃)が実現できる。この技術は、中間完全脱炭焼鈍を含む二回冷間圧延法を採用し、即ち、一回目の冷間圧延の後、中間完全脱炭焼鈍を(炭素が30ppm以下になるまで)行い、鋼板の厚さになるまで二回目の冷間圧延を行った後、そのまま或いは低温回復焼鈍処理を経ってからMgO焼鈍分離剤をコートし、高温焼鈍及び後処理を行う。スラブ中温加熱プロセスには、高温焼鈍の段階で完全なガラス膜を形成させるため、脱炭焼鈍条件を厳格に制御し適切な表面酸化層を形成させる必要がある。しかし、中間脱炭焼鈍のスラブが厚くて、適切な酸化層の形成を確保できる脱炭焼鈍条件では炭素を30ppm以下にすることが難しい。さらに、このプロセスには、中間脱炭焼鈍の後で二回目の冷間圧延を行うので、表面酸化層が破壊され、表面品質に影響を与えてしまう。
【0003】
方向性珪素鋼のベース層は従来から方向性珪素鋼の製造における難点であり、優れたベース層は張力コーティングの張力効果と絶縁効果の発揮を確保するが、ベース層と基板の接合部の凹凸が磁区の活動を阻害して鉄損を向上させるとともに、ガラス膜のベース層の存在が方向性珪素鋼の打ち抜き性の低下を招いてしまう。さらなる鉄損の低下と打ち抜き性の向上を図るために、最近ベース層のない方向性珪素鋼が開発された。
【0004】
中国特許03802019.Xには、スラブ成分が質量百分率でSi:0.8〜4.8%、C:0.003〜0.1%、酸可溶性Al:0.012〜0.05%、N:0.01%或いは0.01%以下、残部:Fe及び不可避な不純物であり、スラブを、まず熱間圧延して、そのまま或いは熱間圧延板を焼鈍してから、一回または中間焼鈍が介在する二回か二回以上の冷間圧延で最終の板厚にして、次に、Fe系酸化物が形成しない酸化度の雰囲気ガスの中で脱炭焼鈍を行い、鋼板の表面にシリカを主成分とする酸化層を形成させた後、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を塗布することにより鋼板の焼鈍済みの表面を鏡面状とし、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤をスラリー状で塗布・乾燥したことによって持ち込まれた水分及び鋼板焼鈍時の水蒸気分圧を制御することにより、二次再結晶を安定化させる、という製造方法が開示されている。
【0005】
韓国特許KR 526122には、脱炭・浸窒を同時に行うという特徴を持つ低温方向性珪素鋼製造プロセスに対して、酸化マグネシウムにSiO2、Clを添加した分離剤を使用して高温焼鈍工程でベース層を形成させない製造方法であって、スラブ成分が重量百分率でC:0.045〜0.062、Si:2.9〜3.4、P:0.015-0.035,Als(酸溶性Al):0.022〜0.032、Cu:0.012〜0.021、N:0.006〜0.009、S:0.004〜0.010であり、スラブの加熱温度を1150〜1190℃の範囲に制御し、鋼板の厚さになるまで冷間圧延してから、840〜890℃のアンモニア含有ウェット窒素・水素保護ガスの中で脱炭・浸窒処理を行い、重量比で100部のMgO+3〜12部のSiO2+25部の塩素イオンを主成分とする分離剤を用いて高温焼鈍することを特徴とする製造方法が開示されている。
【0006】
上記の2つの特許はベース層のない方向性珪素鋼に関し、いずれも(Al、Si)N或いはAlN+MnSを抑制剤とし、鋼板の厚さになるまで冷間圧延してから脱炭焼鈍を行う伝統的な高温または低温での製造プロセスを使用し、さらなる鉄損の低下と打ち抜き性の向上を目的とするものである。
【0007】
中国特許CN 1400319には、溶鋼成分が重量百分率でC:0.08%以下、Si:1.0-8.0%、Mn:0.005-3.0%であり、鋼板を、まず熱間圧延し、そして冷間圧延、再結晶焼鈍、二次再結晶焼鈍、脱炭焼鈍、高温連続焼鈍を行う、抑制剤を使用しない連続的な二次再結晶焼鈍プロセスが開示されている。このプロセスによれば、抑制剤を使用することなく、高磁束密度で低鉄損の方向性珪素鋼板が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の内容
本発明の目的は、鋼板に高温焼鈍工程でベース層を形成させることがなく、優れた電磁的性能と表面品質を有する方向性珪素鋼を得ることができる、銅含有方向性珪素鋼の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
まずは、転炉や電気炉で製鋼し、溶鋼を二次精錬・連続鋳造して、成分が(重量百分率で)C:0.010%〜0.050%、Si:2.5%〜4.0%、Mn:0.1%〜0.30%、Als:0.006%〜0.030%、Cu:0.4%〜0.7%、N:0.006%〜0.012%、S:≦0.025%、残部:Fe及び不可避な不純物であるスラブを得る工程と、
そして、熱間圧延、酸洗、一回目の冷間圧延、脱脂を行った後、鋼板をPH2O/PH2=0.50〜0.88の保護雰囲気中で、800〜900℃の温度条件で3〜8分間脱炭焼鈍することで、鋼板の炭素含有量を30ppm以下に低下させる、中間脱炭焼鈍を行う工程と、
次に、ショットブラストと酸洗をして表面における鉄の酸化物を除去し、酸素含有量を500ppm以下に抑制する工程と、
その後、酸洗し、鋼板の所期の厚さになるように、二回目の冷間圧延を行う工程と、
さらに高温焼鈍する工程と、
最後に鋼板の表面に張力コーティングと伸長平坦化焼鈍を施す工程と、
を含む銅含有方向性珪素鋼の製造方法にて実現される。
【0010】
前述の高温焼鈍のプロセスは、
二回目の冷間圧延を経った鋼板にスラリー状で高温焼鈍分離剤を塗布し、分離剤の含水率を1.5%未満にするように乾燥し、或いは静電塗装法で直接に乾式塗布することと、
鋼板の高温焼鈍を水素含有保護雰囲気中で行い、導入される保護性ガスの酸化度(PH2O/PH2)を0.0001〜0.2とすることと、
を含む。
【0011】
前述の高温焼鈍分離剤の主成分は、ジルコニアセラミック細粉、アルミナ細粉、シリカ細粉からなる群れより選ばれるいずれか1種、或いは任意の2種または3種の組合せである。
【0012】
本発明に係る熱間圧延、冷間圧延及び他のプロセスは常法であり、具体的なパラメーターは以下の通りである。熱間圧延プロセスは、スラブを加熱炉で1250℃以上に加熱し、二時間以上保温し、熱間圧延を行い、圧延開始温度を1050〜1200℃、好ましくは1070〜1130℃に、圧延終止温度を800℃以上、好ましくは850℃以上に確保し、最終的に厚さ2.0〜2.8mmの熱間圧延板とする。
【0013】
熱間圧延の後では酸洗し、さらに一回目の冷間圧延を行い、0.50〜0.70mmの中間厚さになるまで圧延し、そして脱脂する。
【0014】
その後、脱炭焼鈍と二回目の冷間圧延を行い、二回目の冷間圧延で得られる鋼板の厚さは0.15〜0.50mmで、そして脱脂し、最後に高温焼鈍し、張力コーティングと伸長平坦化焼鈍を施す。
【0015】
本発明は、ジルコニアセラミック細粉、アルミナ細粉、シリカ細粉からなる群れより選ばれるいずれか1種、或いは任意の2種または3種の組合せを主成分とする分離剤を使用し、高温焼鈍工程で分離剤が表面の酸化物と反応することなく、且つ脱炭焼鈍で形成されるSiO2を主成分とする表面の酸化物が高温焼鈍工程で還元されるように高温焼鈍の雰囲気を厳格に制御し、ガラス膜のない鏡面状の製品を形成し、張力コーティングを施して表面品質及び磁気性能の優れた方向性珪素鋼を得ることにより、伝統のスラブ中温加熱プロセスにおいて、ベース層の品質が不安定で、表面のコーティングが脱離しやすく、張力効果が薄く、絶縁性と表面品質が劣るという問題を根本的に解決する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以下の有益な効果を持つ。
本発明に係る銅含有方向性珪素鋼の製造方法は、高温焼鈍工程でガラス膜を形成させず、中間脱炭焼鈍において脱炭焼鈍の雰囲気を厳格に鉄の酸化物が形成しない範囲に制御する必要がなく、比較的に高い酸化度(PH2O/PH2)で中間脱炭焼鈍を行い、脱炭の効率を向上させることができることから、炭素含有量が30ppm以下に低下することを確保し、製品の磁気時効による磁気性能の劣化を回避し、かつ中間脱炭焼鈍の時間を低減して製造効率を高めることができる。
【0017】
本発明によれば、中間脱炭焼鈍の後でショットブラストと酸洗をして表面における鉄の酸化物を主成分とする酸化層を除去することにより、二回目の冷間圧延済みのスラブの表面品質を有効に改善するとともに、最終の製品の表面品質を改善することができる。本発明によれば、二回目の冷間圧延の後で直接に分離剤を塗布して高温焼鈍を行うので、回復焼鈍による磁気性能の劣化やベース層の不安定の問題がなく、回復焼鈍工程が不要になり、製造効率が向上する。
【0018】
本発明によれば、高温焼鈍工程でベース層を形成させないので、分離剤成分と塗布手段を厳格に制御する必要がなく、製品の製造の安定性を向上させるとともに、鋼の高純度化の効果を有効に改善することができる。鏡面状の製品が得られて、磁区の移動を阻害する鋼板の表面酸化層とガラス膜の凹凸が除去され、鉄損が顕著に低下する。
【0019】
以上のように、本発明は、スラブ中温加熱の利点を保持しながら、中温でのスラブ加熱の製造方法にある脱炭の不充分、回復焼鈍による磁気性能の低下、コーティングの付着性の劣化、薄い張力効果、及び劣る表面品質などの問題を有効に解決した、低コストで効率的な実施しやすい方向性珪素鋼板の製造方法である。
【実施例】
【0020】
本発明の最良な実施形態
実施例1:
500kg真空炉で製鋼し、スラブの化学成分(wt%)が0.035%C、3.05%Si、0.020%S、0.008%Als、0.0010%N、0.60%Cu、0.15%Mn、残部:Fe及び不可避な不純物であった。このような成分のスラブを1280℃に加熱し、3時間保温して熱間圧延を行い、最終圧延温度を930〜950℃とし、圧延してから層流冷却し、550℃±30℃で巻取って、厚さ2.5mmの帯鋼を作成した。上記の帯鋼をショットブラスト・酸洗した後、厚さが0.65mmになるように冷間圧延し、そして中間焼鈍を行って、炭素を30ppm以下にした。ショットブラスト・酸洗の後、以下の3種のプロセスのようにした。
【0021】
(1)製品の厚さが0.30mmになるように二回目の冷間圧延を行い、帯鋼にAl2O3スラリーを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して乾燥した。その後、帯鋼を巻取り、窒素・水素または純水素の雰囲気中で1200℃で20時間保温する高温焼鈍を行い、巻戻してから絶縁コーティングの塗布と伸長平坦化焼鈍を施した。
【0022】
(2)製品の厚さが0.30mmになるように二回目の冷間圧延を行い、MgOを主成分とする分離剤を塗布し、巻取ってから窒素・水素または純水素の雰囲気中で1200℃で20時間保温する高温焼鈍を行い、巻戻してから絶縁コーティングの塗布と伸長平坦化焼鈍を施した。
【0023】
(3)製品の厚さが0.30mmになるように二回目の冷間圧延を行い、そしてウェット窒素・水素雰囲気中で700℃以下での焼鈍処理を行い、MgOを主成分とする分離剤を塗布し、巻取ってから窒素・水素または純水素の雰囲気中で1200℃で20時間保温する高温焼鈍を行い、巻戻してから絶縁コーティングの塗布と伸長平坦化焼鈍を施した。
【0024】
得られた製品の磁気性能とコーティング性能を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例2:
500kg真空炉で製鋼し、スラブの化学成分(wt%)が0.032%C、3.15%Si、0.016%S、0.012%Als、0.0092%N、0.48%Cu、0.20%Mn、残部:Fe及び不可避な不純物であった。このような成分のスラブを1280℃に加熱し、3時間保温して熱間圧延を行い、最終圧延温度を930〜950℃とし、圧延してから層流冷却し、550℃±30℃で巻取って、厚さ2.5mmの帯鋼を作成した。上記の帯鋼をショットブラスト・酸洗した後、厚さが0.65mmになるように冷間圧延し、850℃で表2の条件で中間焼鈍を行い、ショットブラスト・酸洗してから製品の厚さが0.30mmになるように二回目の冷間圧延を行い、帯鋼にAl2O3スラリーを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して乾燥した後、帯鋼を巻取り、窒素・水素または純水素の雰囲気中で1200℃で20時間保温する高温焼鈍を行い、巻戻してから絶縁コーティングの塗布と伸長平坦化焼鈍を施した。得られた製品の磁気性能とコーティング性能を表2に示す。ただし、付着性の評価方法と基準は中国国家標準GB/T 2522-1988したがった。
【0027】
【表2】

【0028】
実施例3:
500kg真空炉で製鋼し、スラブの化学成分(wt%)が0.032%C,3.15%Si,0.016%S,0.012%Als,0.0092%N,0.48%Cu,0.20%Mn、残部:Fe及び不可避な不純物であった。このような成分のスラブを1280℃に加熱し、3時間保温て熱間圧延を行い、最終圧延温度を930〜950℃とし、圧延してから層流冷却し、550℃±30℃で巻取って、厚さ2.5mmの帯鋼を作成した。上記の帯鋼をショットブラスト・酸洗した後、厚さが0.65mmになるように冷間圧延し、850℃で表3の条件で中間焼鈍を行い、ショットブラスト・酸洗してから或いは直接に、製品の厚さが0.30mmになるように二回目の冷間圧延を行い、帯鋼にAl2O3スラリーを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して乾燥した後、帯鋼を巻取り、窒素・水素または純水素の雰囲気中で1200℃で20時間保温する高温焼鈍を行い、巻戻してから絶縁コーティングの塗布と伸長平坦化焼鈍を施した。得られた製品の磁気性能とコーティング性能を表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
実施例4:
500kg真空炉で製鋼し、スラブの化学成分(wt%)が0.032%C,3.15%Si,0.016%S,0.012%Als,0.0092%N,0.48%Cu,0.20%Mn、残部:Fe及び不可避な不純物であった。このような成分のスラブを1280℃に加熱し、3時間保温して熱間圧延を行い、最終圧延温度を930〜950℃とし、圧延してから層流冷却し、550℃±30℃で巻取って、厚さ2.5mmの帯鋼を作成した。上記の帯鋼をショットブラスト・酸洗した後、厚さが0.65mmになるように冷間圧延し、850℃で表4の条件で中間焼鈍を行い、ショットブラスト・酸洗してから、製品の厚さが0.30mmになるように二回目の冷間圧延を行い、帯鋼にAl2O3スラリーを主成分とする焼鈍分離剤を静電塗装した後、帯鋼を巻取り、窒素・水素または純水素の雰囲気中で1200℃で20時間保温する高温焼鈍を行い、巻戻してから絶縁コーティングの塗布と伸長平坦化焼鈍を施した。得られた製品の磁気性能とコーティング性能を表4に示す。
【0031】
【表4】

【0032】
実施例5:
500kg真空炉で製鋼し、スラブの化学成分(wt%)が0.032%C,3.15%Si,0.016%S,0.012%Als,0.0092%N,0.48%Cu,0.20%Mn、残部:Fe及び不可避な不純物であった。このような成分のスラブを1280℃に加熱し、3時間保温して熱間圧延を行い、最終圧延温度を930〜950℃とし、圧延してから層流冷却し、550℃±30℃で巻取って、厚さ2.5mmの帯鋼を作成した。上記の帯鋼をショットブラスト・酸洗した後、厚さが0.65mmになるように冷間圧延し、850℃で表5の条件で中間焼鈍を行い、ショットブラスト・酸洗してから、製品の厚さが0.30mmになるように二回目の冷間圧延を行い、帯鋼にZrO2スラリーを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して乾燥し或いは直接にZrO2細粉を主成分とする焼鈍分離剤を静電スプレーした後、帯鋼を巻取り、窒素・水素または純水素の雰囲気中で1200℃で20時間保温する高温焼鈍を行い、巻戻してから絶縁コーティングの塗布と伸長平坦化焼鈍を施した。得られた製品の磁気性能とコーティング性能を表5に示す。
【0033】
【表5】

【0034】
本発明に係る方法は、スラブ中温加熱の利点を保持しながら、高温焼鈍工程でベース層を形成させない方法を採用し、且つ脱炭焼鈍と高温焼鈍プロセスを厳格に制御して、ベース層のない鏡面状の方向性珪素鋼が得られた。張力コーティングを施した製品は、優れた外観と電磁的性能を有し、打ち抜き性が向上し、工数が低減し、製造効率が向上し、製品の性能が安定し、用いられる装置が通常の方向性珪素鋼製造装置で、技術とコントロールが簡単である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
まずは、転炉や電気炉で製鋼し、溶鋼を二次精錬・連続鋳造して、成分が(重量百分率で)C:0.010%〜0.050%、Si:2.5%〜4.0%、Mn:0.1%〜0.30%、Als:0.006%〜0.030%、Cu:0.4%〜0.7%、N:0.006%〜0.012%、S:≦0.025%、残部:Fe及び不可避な不純物であるスラブを得る工程と、
そして、熱間圧延、酸洗、一回目の冷間圧延、脱脂を行った後、鋼板を800℃以上の均熱温度に加熱し、PH2O/PH2=0.50〜0.88の保護雰囲気中で8分間以内の中間脱炭焼鈍することで、焼鈍済みの鋼板の炭素含有量を30ppm以下に低下させる、中間脱炭焼鈍を行う工程と、
次に、ショットブラストと酸洗をして表面における鉄の酸化物を除去し、酸素含有量を500ppm以下に抑制する工程と、
その後、酸洗し、鋼板の所期の厚さになるように、二回目の冷間圧延を行う工程と、
さらに高温焼鈍する工程と、
最後に鋼板の表面に張力コーティングと伸長平坦化焼鈍を施す工程と、
を含む、銅含有方向性珪素鋼の製造方法。
【請求項2】
前述の高温焼鈍のプロセスは、
二回目の冷間圧延を経った鋼板にスラリー状で高温焼鈍分離剤を塗布し、分離剤の含水率を1.5%未満にするように乾燥し、或いは静電塗装法で直接に乾式塗布することと、
鋼板の高温焼鈍を水素含有保護雰囲気中で行い、導入される保護性ガスの酸化度(PH2O/PH2)を0.0001〜0.2とすることと、
を含む、請求項1に記載の銅含有方向性珪素鋼の製造方法。
【請求項3】
前述の高温焼鈍分離剤の主成分は、ジルコニアセラミック細粉、アルミナ細粉、シリカ細粉からなる群れより選ばれるいずれか1種、或いは任意の2種または3種の組合せである、ことを特徴とする請求項2に記載の銅含有方向性珪素鋼の製造方法。

【公表番号】特表2011−518253(P2011−518253A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501094(P2011−501094)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/CN2009/071442
【国際公開番号】WO2010/015156
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(302022474)宝山鋼鉄股▲分▼有限公司 (17)
【Fターム(参考)】