説明

鋏構造及び鋏

【課題】一対の鋏片を枢軸により互いに交差した状態で枢支し、一方の鋏片の先端部に切刃部を設けると共に他方の鋏片の先端部に受刃部を設け、両鋏片の基部に操作部を設け、上記受刃部に上記切刃部の刃縁が対向可能な受面部を設けてなるから、切断に伴う反力が切刃部及び受刃部に左右に偏位して掛かることを抑制することができ、このため、切刃部と受刃部との対向側面の隙間の開きを防ぐことができ、それだけ、切断力を有効に切断対象物に掛けることができ、多少の硬さの切断対象物をも切断することができると共に切刃部の損傷を防ぐことができる。
【解決手段】一対の鋏片1・2を枢軸3により互いに交差した状態で枢支し、一方の鋏片の先端部に切刃部4を設けると共に他方の鋏片の先端部に受刃部5を設け、両鋏片の基部に操作部6・7を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、園芸用剪定鋏、高枝切り鋏等の各種の鋏に用いられる鋏構造及び鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鋏構造として、一対の鋏片を枢軸により互いに交差した状態で枢支し、一方の鋏片の先端部に切刃部を設けると共に他方の鋏片の先端部に受刃部を設け、両鋏片の基部に握持部を設けてなる構造のものが知られている。
【特許文献1】特開2003−225017
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらこの従来構造の場合、上記切刃部は片刃に形成されて切刃部と受刃部の各対向側面が相互に擦接する構造となっており、このため、受刃部に切断対象物を載せて両握持部を握持することにより切刃部により切断対象物を切断する際、例えば、硬い枝のような大きな切断力が必要な切断対象物であると、切刃部と受刃部との対向側面の隙間が開き、切断が不可能となったり、切刃部の損傷を受けることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、一対の鋏片を枢軸により互いに交差した状態で枢支し、一方の鋏片の先端部に切刃部を設けると共に他方の鋏片の先端部に受刃部を設け、両鋏片の基部に操作部を設けてなり、上記受刃部に上記切刃部の刃縁が対向可能な受面部を設けてなることを特徴とする鋏構造ことを特徴とする鋏構造にある。
【0005】
又、請求項2記載の発明は、上記受刃部に上記受面部をもつ受部材を設けてなることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記他方の鋏片の先端部を上記切刃部の刃縁が上記受面部に対向する位置に折曲形成してなることを特徴とするものであり、又、請求項4記載の発明は、上記切刃部を取替可能な着脱機構を設けてなることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の発明は、上記受面部に上記切刃部の刃縁が没入可能な逃げ部を設けてなることを特徴とするものである。
【0006】
又、請求項6記載の発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の上記鋏構造を備えてなることを特徴とする鋏である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述の如く、請求項1又は6記載の発明にあっては、一対の鋏片を枢軸により互いに交差した状態で枢支し、一方の鋏片の先端部に切刃部を設けると共に他方の鋏片の先端部に受刃部を設け、両鋏片の基部に操作部を設け、上記受刃部に上記切刃部の刃縁が対向可能な受面部を設けてなるから、切断に伴う反力が切刃部及び受刃部に左右に偏位して掛かることを抑制することができ、このため、切刃部と受刃部との対向側面の隙間の開きを防ぐことができ、それだけ、切断力を有効に切断対象物に掛けることができ、多少の硬さの切断対象物をも切断することができると共に切刃部の損傷を防ぐことができる。
【0008】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記受刃部に上記受面部をもつ受部材を設けてなるから、上記受刃部に上記切刃部の刃縁が対向可能な受面部を容易に設けることができ、製作コストを低減することができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記他方の鋏片の先端部を上記切刃部の刃縁が上記受面部に対向する位置に折曲形成してなるから、容易に受面部を設けることができ、又、請求項4記載の発明にあっては、上記切刃部を取替可能な着脱機構を設けてなるから、摩耗に伴う切刃部の取り替えを容易に行うことができ、又、請求項5記載の発明にあっては、上記受面部に上記切刃部の刃縁が没入可能な逃げ部を設けているから、確実に切断を終了することができると共に切刃部の損傷を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図13は本発明の実施の形態例を示し、図1乃至図7は第一形態例、図8は第二形態例、図9乃至図13は第三形態例である。
【0010】
図1乃至図7の第一形態例において、1・2は一対の鋏片であって、枢軸3により互いに交差した状態で枢支され、一方の鋏片1の先端部に切刃部4を設けると共に他方の鋏片2の先端部に受刃部5を設け、両鋏片1・2の基部に握持部としての操作部6・7を設けて構成している。
【0011】
この場合、上記切刃部4を着脱機構Kにより取替可能に構成され、即ち、一方の鋏片1に二個の位置決めピンK1・K1を植設し、替刃体4aに位置決め穴K2・K2を形成し、位置決めピンK1・K1を位置決め穴K2・K2に嵌合することにより替刃体4aを取り替え自在に設けて構成している。
【0012】
この場合、上記受刃部5の側面に上記切刃部4の刃縁Hが対向可能な受面部8をもつ合成樹脂製又は金属製の受部材9をリベット10により止着して構成している。
【0013】
11は逃げ部であって、上記切刃部4の刃縁Hが没入可能な切欠状に形成され、かつ、この場合、受刃部5の側面上部に逃げ面12を形成している。
【0014】
13は戻し用バネ、14は止め金であり、一対の鋏片1・2を戻し用バネ13により開動作させると共に止め金14により閉止可能に構成している。
【0015】
この実施の第一形態例は上記構成であるから、受刃部5に切断対象物を載せ、両握持部としての両操作部6・7を握持することにより切刃部4は受刃部5上の切断対象物を切断することになり、この際、上記受刃部5に上記切刃部4の刃縁Hが対向可能な受面部8を設けてなるから、切断に伴う反力が切刃部4及び受刃部5に左右に偏位して掛かることを抑制することができ、このため、切刃部4と受刃部5との対向側面の隙間の開きを防ぐことができ、それだけ、切断力を有効に切断対象物に掛けることができ、多少の硬さの切断対象物をも切断することができると共に切刃部4の損傷を防ぐことができる。
【0016】
この場合、上記受刃部5に上記受面部8をもつ受部材9を設けてなるから、上記受刃部5に上記切刃部4の刃縁Hが対向可能な受面部8を容易に設けることができ、製作コストを低減することができ、又、この場合、上記切刃部4を取替可能な着脱機構Kを設けてなるから、摩耗に伴う切刃部4の取り替えを容易に行うことができ、又、この場合、上記受面部8に上記切刃部4の刃縁Hが没入可能な逃げ部11を設けているから、確実に切断を終了することができると共に切刃部4の損傷を防ぐことができる。
【0017】
図8の第二形態例は別例構造を示し、この場合、上記一方の鋏片1の先端部に設けた切刃部4の刃縁H及び他方の鋏片2の先端部に設けた受刃部5の受縁の形状を弧状に形成したものである。
【0018】
この実施の第二形態例は上記構成であるから、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができると共に切刃部4の刃縁H及び受刃部5の受縁の形状が弧状に形成されていることにより断面形状が円形状の剪断対象物を良好に切断することができる。
【0019】
図9乃至図13の第三形態例は別例構造を示し、この場合、上記他方の鋏片2の先端部を上記切刃部4の刃縁Hが上記受面部8に対向する位置に折曲部2aで折曲形成し、上記受刃部5に上記切刃部4の刃縁Hが当接する合成樹脂製の緩衝部15を接着等により設け、上記受面部8の緩衝部15に上記切刃部4の刃縁Hが没入可能な逃げ部11を設けて構成している。
【0020】
この実施の第三形態例は上記構成であるから、上記他方の鋏片2の先端部を上記切刃部4の刃縁Hが上記受面部8に対向する位置に折曲形成することにより容易に受面部5を設けることができ、上記第一形態例と同様に切断に伴う反力が切刃部4及び受刃部5に左右に偏位して掛かることを抑制することができ、このため、切刃部4と受刃部5との対向側面の隙間の開きを防ぐことができ、それだけ、切断力を有効に切断対象物に掛けることができ、多少の硬さの切断対象物をも切断することができ、切刃部4の損傷を防ぐことができる。
【0021】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、鋏片1・2、切刃部4、受刃部5の形態、構造、材質等は適宜変更して設計され、又、上記形態例においては、剪定鋏に適用しているが、高枝切鋏等にも適用することができる。
【0022】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の第一形態例の全体正面図である。
【図2】本発明の実施の第一形態例の部分斜視図である。
【図3】本発明の実施の第一形態例の部分分離斜視図である。
【図4】本発明の実施の第一形態例の部分拡大正面図である。
【図5】本発明の実施の第一形態例の部分断面図である。
【図6】本発明の実施の第一形態例の部分縦断面図である。
【図7】本発明の実施の第一形態例の全体正面図である。
【図8】本発明の実施の第二形態例の部分正面図である。
【図9】本発明の実施の第三形態例の部分正面図である。
【図10】本発明の実施の第三形態例の部分斜視図である。
【図11】本発明の実施の第三形態例の部分分離斜視図である。
【図12】本発明の実施の第三形態例の部分断面図である。
【図13】本発明の実施の第三形態例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0024】
K 着脱機構
H 刃縁
1 鋏片
2 鋏片
4 切刃部
5 受刃部
6 操作部
7 操作部
8 受面部
9 受部材
11 逃げ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鋏片を枢軸により互いに交差した状態で枢支し、一方の鋏片の先端部に切刃部を設けると共に他方の鋏片の先端部に受刃部を設け、両鋏片の基部に操作部を設けてなり、上記受刃部に上記切刃部の刃縁が対向可能な受面部を設けてなることを特徴とする鋏構造。
【請求項2】
上記受刃部に上記受面部をもつ受部材を設けてなることを特徴とする請求項1記載の鋏構造。
【請求項3】
上記他方の鋏片の先端部を上記切刃部の刃縁が上記受面部に対向する位置に折曲形成してなることを特徴とする鋏構造。
【請求項4】
上記切刃部を取替可能な着脱機構を設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋏構造。
【請求項5】
上記受面部に上記切刃部の刃縁が没入可能な逃げ部を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋏構造。
【請求項6】
上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の上記鋏構造を備えてなることを特徴とする鋏。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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