説明

鋳造品の処理装置

【課題】生産性を維持しつつ全数検査が可能な鋳造品の処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】中央に配置された1基のロボット18を囲うように、搬入コンベア11の出口部12と、曲がり検査機構30と、バリ研削機構15と、バケット16と、超音波検査機構40と、搬出コンベア17の入口部22とが配置されている。
【効果】バリ取り及び非破壊検査の前に曲がり検査を実施し、不良品を除外する。非破壊検査に供するバリ無し鋳造品の数は、減少する。数が少なくなれば全数検査が実施可能となる。また、1台のロボットで、曲がり検査機構、バリ研削機構及び超音波検査機構へこの順に鋳造品を運搬するため、機構の集約化が可能であると共に、全数検査が実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造品、特に棒状の鋳造品からバリを除去して次の工程へ流す鋳造品の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砂型鋳造では、下型に上型を合わせてキャビティを形成し、このキャビティへ注湯し、湯が凝固したら鋳造品を取り出す。下型と上型との間などに不可避的に隙間が存在するため、鋳バリと呼ばれるバリが付いて形態で鋳造品が取り出される。このバリは必ず除去する必要がある。このバリ除去作業は、近年、機械化されるようになってきた(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6は従来の鋳造品の処理装置を説明する図であり、作業用ロボット101でワーク102を把持し、プレス用固定刃103に押し付けてワークのオーバーフロー及びランナーを除去し、次に、チップソー104にて湯口を切断し、エンドミル105にてバリ取りを行う。バリが除かれたワーク106は、反転テーブル107で反転され、次工程ロボット108に受け渡され、エンドミル109で残りのバリが除去される。
【0004】
上記の従来技術によれば、バリ取りが自動化されたため、生産効率を高まることができる。
ところで、鋳造品には、巣や空洞などの鋳造欠陥を内包するものがある。そこで、ワーク払い出しテーブル110で、払い出されたワークに対して、非破壊検査が行われる。
【0005】
非破壊検査は、バリ取り作業場とは、別の検査場で実施される。運搬等の手間が掛かるために、一般には、抜き取り検査と称して、ワーク払い出しテーブル110から払い出されるバリ無し鋳造品の一部の数が、検査される。
しかし、重要部品や強度部材である場合、全数検査が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−341053公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生産性を維持しつつ全数検査が可能な鋳造品の処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、鋳造品からバリを除去して次の工程へ流す鋳造品の処理装置であって、
バリが付いているバリ付き鋳造品の曲がりを検査する曲がり検査機構と、この曲がり検査機構で不合格とされた不良品を投入する不良品投入部と、前記曲がり検査機構で合格とされた良品を対象としてバリを研削するバリ研削機構と、バリが除去されたバリ無し鋳造品に超音波検査を施す超音波検査機構と、前記曲がり検査機構、バリ研削機構及び超音波検査機構へこの順に鋳造品を運搬すると共に曲がり検査で不合格になった第1次不良品及び超音波検査で不合格となった第2次不良品を、前記不良品投入部に投入するロボットとからなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、超音波検査機構は、バリ無し鋳造品へ水を水平又は上向きに噴射する噴水ノズルと、バリ無し鋳造品を濡らした後に落下する落下水を受ける水受けと、濡れた前記バリ無し鋳造品へ超音波を発射し反射波を受信する超音波センサと、この超音波センサの計測情報に基づいて合否判定を行う合否判定部からなり、バリ無し鋳造品において、噴水ノズルからの噴射水が当たらない部位を、ロボットで把持させながら超音波検査を実施させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、超音波検査機構は、バリ無し鋳造品を水没させる水槽と、この水槽に設けられ前記バリ無し鋳造品へ超音波を発射し反射波を受信する超音波センサと、この超音波センサの計測情報に基づいて合否判定を行う合否判定部とからなり、バリ無し鋳造品において、水槽に水没しない部位を、ロボットで把持させながら超音波検査を実施させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、バリ取り及び非破壊検査の前に曲がり検査を実施し、不良品を除外する。非破壊検査に供するバリ無し鋳造品の数は、減少する。数が少なくなれば全数検査が実施可能となる。
また、1台のロボットで、曲がり検査機構、バリ研削機構及び超音波検査機構へこの順に鋳造品を運搬するため、機構の集約化が可能であると共に、全数検査が実施できる。併せて、ロボットの稼働率を高めることもできる。
【0012】
請求項2に係る発明では、超音波検査に水槽を使用しないで、噴水で実施する。噴水であれば、鋳造品を握っているロボットアームから遠い部位を狙って、鋳造品に水を掛けることができる。ロボットアームが濡れる心配は無く、ロボットの故障発生を回避することができる。
【0013】
さらに、ロボットアームで握ったままで超音波検査を実施することができる。曲がり検査及びバリ研削は、ロボットアームで握ったままの鋳造品に対して容易に実施可能である。ロボットアームから鋳造品を放すと、次の把持時に鋳造品の基準出しを行う必要がある。この点、本発明では、受け入れから払い出しまで、鋳造品をロボットアームで握ったままで実施できるため、鋳造品の基準出しを複数回行う必要が無く、作業時間を短縮することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、水槽に沈めた状態で超音波検査を実施する。水槽に水没しない部位を、ロボットで把持させるため、ロボットが濡れる心配は無く、ロボットの故障発生を回避することができる。
【0015】
さらに、請求項2と同様に、ロボットアームで握ったままで超音波検査を実施することができる。曲がり検査及びバリ研削は、ロボットアームで握ったままの鋳造品に対して容易に実施可能である。ロボットアームから鋳造品を放すと、次の把持時に鋳造品の基準出しを行う必要がある。この点、本発明では、受け入れから払い出しまで、鋳造品をロボットアームで握ったままで実施できるため、鋳造品の基準出しを複数回行う必要が無く、作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る鋳造品の処理装置の平面図である。
【図2】曲がり検査機構の説明図である。
【図3】本発明に係る超音波検査機構の原理図である。
【図4】本発明に係る鋳造品の処理方法のフロー図である。
【図5】図3の別実施例を説明する図である。
【図6】従来の鋳造品の処理装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0018】
図1は本発明に係る鋳造品の処理装置の平面図であり、鋳造品の処理装置10は、バリが付いている鋳造品(バリ付き鋳造品)を搬入する搬入コンベア11と、この鋳造品コンベア11の出口部12の近傍に配置されている曲がり検査機構30と、例えば高速モータ13及び研削砥石14からなるバリ研削機構15と、不良品投入部としてのバケット16と、超音波検査機構40と、バリが除去され、検査に合格した鋳造品を搬出する搬出コンベア17と、1基の多関節ロボット(以下、単にロボットと記す。)18と、法規に則りロボット18の作業範囲を囲う安全フェンス19と、この安全フェンス19の外に配置されている監視盤21と、からなり、中央に配置された1基のロボット18を囲うように、搬入コンベア11の出口部12と、曲がり検査機構30と、バリ研削機構15と、バケット16と、超音波検査機構40と、搬出コンベア17の入口部22とが環状に配置されている。監視盤21には、後述する合否判定部や曲がり判定部が収納される。
【0019】
図2は曲がり検査機構の説明図であり、曲がり検査機構30は、台31と、この台31の上面に固定された、シリンダユニット形状の位置センサ32と、曲がり判定部33とからなる。この位置センサ32は、ロッド34が想像線で示す位置から実線で示すように後退したときに、ロッド34の後退量情報を発信する。
【0020】
ロボットアーム35で把持された棒状のバリ付き鋳造品36を位置センサ32に当てる。棒状のバリ付き鋳造品36は、球状黒鉛鋳鉄(FCD)製ナックルが好適である。
当てる位置を複数箇所にすると、複数の情報を得た曲がり判定部33は、相対的位置関係から曲がり量を求め、この曲がり量が、予め指定されている曲がり許容値以内であるか否かを判定する。
【0021】
否であれば不合格信号を発する。この不合格信号が発せられたときには、ロボット(図1、符号18)は、当該鋳造品36を、バケット(図1、符号16)へ投入する。すなわち、ロボットは、当該鋳造品36を、バリ研削機構(図1、符号15)へは廻さない。
【0022】
すなわち、図1において、曲がり検査に合格した鋳造品のみが、バリ研削機構15に廻され、バリ取り処置が施される。バリが除去された鋳造品は全数が、超音波検査機構40に廻される。
【0023】
図3は本発明に係る超音波検査機構の原理図であり、超音波検査機構40は、バリ無し鋳造品41へ水を上向き又は水平向きに噴射する噴水ノズル42、43と、バリ無し鋳造品を濡らした後に落下する落下水を受ける水受け44と、濡れたバリ無し鋳造品41へ超音波を発射し反射波を受信する超音波センサ45、45と、これらの超音波センサ45、45の計測情報に基づいて合否判定を行う合否判定部46とからなる。
【0024】
超音波センサ45は発信部と受信部とを内蔵し、発信部から超音波を発射し、鋳造品の内部欠陥部やおもて面、裏面で反射させ、これらの反射波を受信部で受信する構成のセンサである。おもて面、裏面による反射波のみであれば、欠陥は無く、おもて面、裏面による反射波以外の反射波が検出されたときには、その検出波に応じて欠陥ありと判定することができる。
【0025】
この発明では、超音波検査に水槽を使用しないで、噴水で実施する。噴水であれば、鋳造品36を握っているロボットアーム35から遠い部位を狙って、鋳造品36に水を掛けることができる。ロボットアーム35が濡れる心配が無く、ロボットの故障発生を回避することができる。
【0026】
さらに、鋳造品36はロボットアーム35で握ったままで、超音波検査が実施される。曲がり検査と共にバリ研削は、ロボットアーム35で握ったままの鋳造品に対して容易に実施可能である。であれば、受け入れ(搬入)から払い出し(搬出)まで、鋳造品36をロボットアーム35で握ったままで実施できるため、鋳造品の基準出しを複数回行う必要が無く、作業時間を短縮することができる。
【0027】
以上の説明した鋳造品の処理装置10の総合的作用をフロー図に基づいて説明する。
図4は本発明に係る鋳造品の処理方法のフロー図であり、ステップ(以下、STと記す。)10で、バリ付き鋳造品を搬入し、このバリ付き鋳造品をロボットアームで把持し(ST11)、先ず、鋳造品の曲がりを検査する(ST12)。
【0028】
ST13で曲がり検査が不合格と判断された場合には、バリ付き鋳造品を不良品投入部へ投入する(ST14)。ST13で曲がり検査が合格と判断された場合には、バリ付き鋳造品からバリを除去する(ST15)。バリが除去された鋳造品に超音波検査を施す(ST16)。
【0029】
ST17で超音波検査が不合格と判断された場合には、バリ無し鋳造品を不良品投入部へ投入する(ST14)。ST17で超音波検査が合格と判断された場合には、ロボットはバリ無し鋳造品を搬出コンベアへ解放する(ST18)。そして、搬出コンベアで鋳造品(合格品)を搬出する(ST19)。
【0030】
すなわち、発明では、バリ取り及び非破壊検査の前に曲がり検査を実施し、不良品を除外する。非破壊検査に供するバリ無し鋳造品の数は、減少する。数が少なくなれば全数検査が実施可能となる。
また、1台のロボットで、曲がり検査機構、バリ研削機構及び超音波検査機構へこの順に鋳造品を運搬するため、機構の集約化が可能であると共に、全数検査が実施できる。
【0031】
次に、超音波検査機構40の別実施例を説明する。
図5は図3の別実施例を説明する図であり、超音波検査機構40Bは、バリ無し鋳造品41を水没させる水槽48と、水槽48に設けられバリ無し鋳造品41へ超音波を発射し反射波を受信する複数の超音波センサ45と、これらの超音波センサの計測情報に基づいて合否判定を行う合否判定部46とからなる。
バリ無し鋳造品41において、水没しない部位49をロボットアーム35で把持しながら、検査を行う。
【0032】
水槽48に沈めた状態で超音波検査を実施する。水槽に水没しない部位49を、ロボットアーム35で把持させるため、ロボットアーム35が濡れる心配は無く、ロボットの故障発生を回避することができる。
【0033】
さらに、ロボットアーム35で握ったままで超音波検査を実施することができる。曲がり検査及びバリ研削は、ロボットアーム35で握ったままの鋳造品に対して容易に実施可能である。ロボットアーム35から鋳造品を放すと、次の把持時に鋳造品41の基準出しを行う必要がある。この点、本発明では、受け入れから払い出しまで、鋳造品41をロボットアーム35で握ったままで実施できるため、鋳造品41の基準出しを複数回行う必要が無く、作業時間を短縮することができる。
【0034】
尚、本発明は、棒状のナックルアームのバリ取り及び非破壊検査に好適であるが、鋳造品は、アンカーブラケットやデフケースであってもよく、鋳造品の種類は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ナックルアームのバリ取り及び非破壊検査に好適である。
【符号の説明】
【0036】
10…鋳造品の処理装置、15…バリ研削機構、16…不良品投入部(バケット)、18…ロボット、30…曲がり検査機構、32…位置センサ、36…バリ付き鋳造品、40,40B…超音波検査機構、41…バリ無し鋳造品、42、43…噴水ノズル、44…水受け、45…超音波センサ、46…合否判定部、48…水槽、49…鋳造品の水没しない部位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造品からバリを除去して次の工程へ流す鋳造品の処理装置であって、
バリが付いているバリ付き鋳造品の曲がりを検査する曲がり検査機構と、この曲がり検査機構で不合格とされた不良品を投入する不良品投入部と、前記曲がり検査機構で合格とされた良品を対象としてバリを研削するバリ研削機構と、バリが除去されたバリ無し鋳造品に超音波検査を施す超音波検査機構と、前記曲がり検査機構、バリ研削機構及び超音波検査機構へこの順に鋳造品を運搬すると共に曲がり検査で不合格になった第1次不良品及び超音波検査で不合格となった第2次不良品を、前記不良品投入部に投入するロボットとからなることを特徴とする鋳造品の処理装置。
【請求項2】
前記超音波検査機構は、前記バリ無し鋳造品へ水を水平又は上向きに噴射する噴水ノズルと、前記バリ無し鋳造品を濡らした後に落下する落下水を受ける水受けと、濡れた前記バリ無し鋳造品へ超音波を発射し反射波を受信する超音波センサと、この超音波センサの計測情報に基づいて合否判定を行う合否判定部とからなり、前記バリ無し鋳造品において、前記噴水ノズルからの噴射水が当たらない部位を、前記ロボットで把持させながら超音波検査を実施させることを特徴とする請求項1記載の鋳造品の処理装置。
【請求項3】
前記超音波検査機構は、前記バリ無し鋳造品を水没させる水槽と、この水槽に設けられ前記バリ無し鋳造品へ超音波を発射し反射波を受信する超音波センサと、この超音波センサの計測情報に基づいて合否判定を行う合否判定部とからなり、前記バリ無し鋳造品において、前記水槽に水没しない部位を、前記ロボットで把持させながら超音波検査を実施させることを特徴とする請求項1記載の鋳造品の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−188410(P2010−188410A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38128(P2009−38128)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(390027524)浅間技研工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】