説明

鋳造用金型及び鋳造法

【課題】1つのシリンダによりトンネル中子とスライド中子を引き抜くことができる鋳造用金型及び当該鋳造用金型を用いて行う鋳造法の提供。
【解決手段】鋳造用金型1は、固定型10と、可動型20と、可動型の移動方向とは異なる方向へスライド自在でシリンダ50に連結されたトンネル中子40に貫通されるスライド中子30とを有する。スライド中子は第1傾斜面33Aを有する第1傾斜部33が設けられ、固定型10には、第1傾斜面と当接可能な第2傾斜面13Aを有する第2傾斜部13が設けられ、鋳造時におけるスライド中子の後退が防止される。トンネル中子は軸線方向に対して略垂直な方向に突出する大径部42を備え、大径部の移動ストロークを規制するカバー36に大径部が当接したことを検知するリミットスイッチ38とを備え、検知オンに基づいてシリンダの作動が一時的に停止され、可動型が移動して型開きがなされた後にシリンダの作動が再開される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用金型及び鋳造法に関し、より詳細にはスライド中子を貫通するトンネル中子を備えた鋳造用金型及び当該鋳造用金型を用い行う鋳造法に関する。
【背景技術】
【0002】
スライド中子を貫通してキャビティ内に配置されるトンネル中子を有する鋳造用金型は下記特許文献1により公知である。特許文献1の鋳造用金型は、トンネル中子に連結される第1シリンダと、スライド中子とトンネル中子を連結する為の第2シリンダとを備えて構成され、スライド中子とトンネル中子とを第2シリンダを用いて連結した後、第1シリンダによりスライド中子とトンネル中子とを引き抜くようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−59141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように2つのシリンダを設ける構成は大型化するので、設置スペースに制約がある場合には採用することができないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、1つのシリンダによりトンネル中子とスライド中子を引き抜くことができる鋳造用金型及び当該鋳造用金型を用いて行う鋳造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鋳造用金型1は、固定型10と、可動型20と、該可動型20の移動方向とは異なる方向へスライド自在であり、シリンダ50に連結されたトンネル中子40に貫通されるスライド中子30とを有し、該スライド中子30には第1傾斜面33Aを有する第1傾斜部33が設けられ、該固定型10又は該可動型20のいずれか一方には、型締め時に該第1傾斜面33Aと当接可能な第2傾斜面13Aを有する第2傾斜部13が設けられ、該第1傾斜面33Aと該第2傾斜面13Aとの当接により、鋳造時における該スライド中子30の後退が防止される鋳造用金型1において、該トンネル中子40はその軸線方向に対して略垂直な方向に突出する突出部42を備え、該スライド中子30は該突出部42の移動ストロークを規制する規制部36と、該突出部42が該規制部36に当接したことを検知する検知手段38とを備え、該検知手段38の検知に基づいて該シリンダ50の作動が一時的に停止され、該可動型20が該移動方向に移動して型開きがなされた後に該シリンダ50の作動が再開されるように構成したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る鋳造法は、当該鋳造用金型1を用いて鋳造を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリンダを2つ設置することが出来ない場合であっても、1つのシリンダによりトンネル中子とスライド中子を引き抜くことができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態における鋳造用金型の要部断面図である。
【図2】同実施形態の鋳造用金型の要部断面図であり、トンネル中子が鋳造品から引き抜かれた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る鋳造用金型について図1及び図2に基づき説明する。図1に示されるように、鋳造用金型1は具体的にはダイカスト金型であり、固定型10と可動型20とスライド中子30とを備える。固定型10は固定ホルダー11及び固定ダイス12からなる。可動型20は可動ホルダー21及び可動ダイス22からなり、矢印A←→A´で示される可動型20の移動方向へ移動可能である。
【0011】
スライド中子30は、中子ホルダー31及び中子ダイス32からなり、型開き時に可動型20とともに矢印A←→A´で示される可動型20の移動方向へ一体に移動可能である。またスライド中子30は、可動ホルダー21に図示せぬ固定手段により固定されたシリンダ50により、可動型20の移動方向とは略垂直の方向、即ち、図1の矢印B←→B´で示される方向へスライド自在である。また、図1の下方向には、固定ダイス12、可動ダイス22及び中子ダイス32によって図示せぬキャビティが画成されている。図示せぬキャビティが画成されている図1の下方向が、鋳造用金型1の内方に相当する。従って、図1の上方向が、鋳造用金型1の外方に相当する。
【0012】
トンネル中子40は、キャビティ内に突出可能な図示せぬ先端部と、小径部41と、小径部41よりも一段径を大きくした大径部42とを備えている。この大径部42は、トンネル中子40の軸線方向に対して略垂直な方向(可動型20の略移動方向)に突出するように形成されている。トンネル中子40の小径部41は、中子ホルダー31に形成された貫通孔31Aと中子ダイス32に形成された貫通孔32Aとを挿通し、図1に示す状態においてはトンネル中子40の先端部はキャビティ内に突出している。鋳造用金型1の最も外方寄りに位置する中子ホルダー31の面34には溝35が形成されており、この溝35内にトンネル中子40の大径部42が収容されている。中子ホルダー34の最も外方寄りの面34には溝35を覆う板状のカバー36が図示せぬボルトにより固定されている。カバー36には貫通孔36Aが形成されており、この貫通孔36Aには連結軸43が挿通されている。連結軸43の一端はトンネル中子40の大径部40に螺合され、他端はカップリング51を介してシリンダ50のピストンロッド50Aに連結されている。カップリング51には突起52がトンネル中子40の軸線方向に対して略垂直な方向(可動型20の略移動方向)に突出するように固定されている。カバー36は、シリンダ50によりトンネル中子40が図1中B←B´に示す方向に引き抜かれた際に大径部42に当接し、トンネル中子40のスライド中子30に対する移動ストロークを規制する。大径部42は突出部に相当し、カバー36は規制部に相当する。
【0013】
カバー36には略コ字状のブラケット37が図示せぬボルトにより固定されており、該ブラケット37にはリミットスイッチ38が上述の突起52に対向するように取り付けられている。リミットスイッチ38は、トンネル中子40の大径部42がカバー36に当接するタイミングで突起52と当接するように配置されている。リミットスイッチ38が突起52と当接してオンとなった場合には、図示せぬ制御部が図示せぬ油圧回路を遮断し、シリンダ50の作動が一時的に停止するように構成されている。また、制御部は型開き信号を受信した際に油圧回路を連通させ、シリンダ50の作動を再開することができるように構成されている。リミットスイッチ38は検知手段に相当する。
【0014】
中子ホルダー31には、第1傾斜部33が設けられている。第1傾斜部33は、矢印A←→A´で示される可動型20の移動方向に対して所定の角度で傾斜する第1傾斜面33Aを備えている。また、固定ホルダー11には、第2傾斜部13が設けられている。第2傾斜部13は、図1の矢印A←→A´で示される可動型20の移動方向に対して所定の角度で傾斜する第2傾斜面13Aを備えている。
【0015】
次に、本実施形態の鋳造用金型1の作用について説明する。図1に示す型締め状態において、図示せぬ制御部によりシリンダ50が作動させられると、トンネル中子40は図1のB←B´で示す方向に移動し、トンネル中子40の先端部がキャビティ内で凝固した図示せぬ鋳造品から引き抜かれていく。この際、中子ホルダー31の第1傾斜面33Aと固定ホルダー11の第2傾斜面13Aの当接により、スライド中子30の後退が防止されているので、トンネル中子40の先端部はスムーズに鋳造品から引き抜かれる。
【0016】
大径部42が溝35内を移動していき、図2に示すように大径部42がカバー36に当接するタイミングになると、リミットスイッチ38は突起52との当接により大径部42がカバー36に当接したことを検知してオンとなる。リミットスイッチ38がオンとなると、図示せぬ制御部が図示せぬ油圧回路を遮断し、シリンダ50の作動が一時的に停止される。なお、図2に示す状態では、トンネル中子40の先端部は鋳造品から完全に引き抜かれている。
【0017】
図2の状態から可動型20がA→A´の方向に移動することにより型開きが行われる。型開きが完了し、制御部が型開き信号を受信すると、制御部は油圧回路を連通させ、シリンダ50の作動を再開させる。トンネル中子40の大径部42が中子ホルダー31に固定されたカバー36に当接していることから、シリンダ50によりスライド中子30とトンネル中子40の両方が図2中B←B´で示す方向に移動させられ、中子ダイス32が図示せぬ鋳造品から引き抜かれる。
【0018】
本実施形態による鋳造法では、先ず、鋳造用金型1の型締めを行い、第1傾斜面33Aと第2傾斜面13Aとを当接させて、鋳造時におけるスライド中子30の後退を防止する。次に、図示せぬ鋳造機によりキャビティへ溶湯を充填する。溶湯が凝固したら、シリンダ50を作動させて鋳造品からトンネル中子40を引き抜き、制御部によりシリンダ50の作動を一時停止させる。シリンダ50の作動を一時停止させた状態で型開きを行い、型開き完了後に制御部によりシリンダ50の作動を再開させてスライド中子30を鋳造品から引き抜く。そして、可動型20から鋳造品を取り出す。
【0019】
本発明による鋳造用金型及び鋳造法は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、本実施形態では第2傾斜部13は固定型10に設けられていたが、可動型に第2傾斜部13を設け、可動型の第2傾斜面が中子ホルダーの第1傾斜面に当接可能な構成にしてもよい。また、本実施形態では第1傾斜部は中子ホルダー31に形成されていたが、中子ホルダーに傾斜面を有する傾斜部材を固定することにより第1傾斜部を設けてもよい。また、本実施形態では第2傾斜部13は固定ホルダー11に形成されたが、固定ホルダー11に傾斜面を有する傾斜部材を固定することにより第2傾斜部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 鋳造用金型
10 固定型
11 固定ホルダー
12 固定ダイス
13 第2傾斜部
13A 第2傾斜面
20 可動型
21 可動ホルダー
22 可動ダイス
30 スライド中子
31 中子ホルダー
32 中子ダイス
33 第1傾斜部
33A 第1傾斜面
35 溝
36 カバー(規制部)
37 ブラケット
38 リミットスイッチ(検知手段)
40 トンネル中子
41 小径部
42 大径部(突出部)
43 連結軸
50 シリンダ
50A ピストンロッド
51 カップリング
52 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、可動型と、該可動型の移動方向とは異なる方向へスライド自在であり、シリンダに連結されたトンネル中子に貫通されるスライド中子とを有し、該スライド中子には第1傾斜面を有する第1傾斜部が設けられ、該固定型又は該可動型のいずれか一方には、型締め時に該第1傾斜面と当接可能な第2傾斜面を有する第2傾斜部が設けられ、該第1傾斜面と該第2傾斜面との当接により、鋳造時における該スライド中子の後退が防止される鋳造用金型において、該トンネル中子はその軸線方向に対して略垂直な方向に突出する突出部を備え、該スライド中子は該突出部の移動ストロークを規制する規制部と、該突出部が該規制部に当接したことを検知する検知手段とを備え、該検知手段の検知に基づいて該シリンダの作動が一時的に停止され、該可動型が該移動方向に移動して型開きがなされた後に該シリンダの作動が再開されるように構成したことを特徴とする鋳造用金型。

【図1】
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【図2】
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