説明

鋳造装置

【課題】非金属製の材料で形成される中子の間に溶湯を流す鋳造装置について、鋳造部品に鋳巣による鋳造欠陥が発生しないようにする。
【解決手段】金属製の材料で形成される主型3内に非金属製の材料で形成される第1中子7と第2中子8とを配置し、第1中子7によって底壁9と天井壁10と側壁11とで囲まれる第1空間部17を鋳造部品2内に形成する一方、第2中子8によってその底面27が天井壁の外側面と接するとともにこの底面より開口が狭い開口部をこの底面と反対側に備える袋状の第2空間部18を鋳造部品内に形成する鋳造装置1において、第2中子8は底面29と反対側の面が主型3と接触しており、その内部に一端が主型と接触する面に開口し、他端が底面27に開口する貫通穴30を備え、貫通穴内に溶湯の熱を主型3に伝える伝熱部材31を配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鋳造装置に係り、特に、2つの中子間の溶湯の熱を逃がして凝固遅れによる鋳巣の発生を防止した鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鋳造装置には、図6に示すものがある。図6において、101は鋳造装置、102は鋳造部品である。鋳造装置101は、金属製の材料で形成される主型103として上型104、下型105、横型106を備え、主型102内に非金属製の材料で形成される第1中子107と第2中子108とを配置し、主型103内に溶湯を流し込んで鋳造部品102を成形する。
鋳造部品102内には、第1中子107によって第1空間部109を形成する一方、第2中子108によって第2空間部110を形成している。第1空間部109は、底壁111と天井壁112と側壁113とで囲まれている。第2空間部110は、底面114と上面115と横面116とを有し、底面114が第1空間部109の上方に配置される天井壁112の外側面と接するとともに、この底面114と反対側(上側)の上面115に底面114より開口が狭い開口部117を備える袋状に形成されている。前記開口部117は、上側に延びて鋳造部品102の外側面に開口している。開口部117は、上型104の下面に形成した第2空間部110の上面115に達する突出部118によって形成される。
この鋳造装置101は、鋳造部品102の内部に第1空間部109と第2空間部110とを形成するために、主型103内に第1空間部109と第2空間部110とに対応する形状の第1中子107と第2中子108とをそれぞれ配置している。鋳造部品102は、第1空間部109を囲む天井壁112の下面に、第1空間部109内に突出するボス部119を備えている。ボス部119には、鋳造後の機械加工によりオイル通路120を形成する。
この鋳造装置101によって鋳造される鋳造部品102の第1空間部109と第2空間部110との間は、第1中子107と第2中子108とに挟まれている。この第1中子107と第2中子108とに挟まれている部分の溶湯、特にボス部119の溶湯は冷却が難しく、鋳巣が発生し易くなる。このため、鋳造部品102は、鋳巣発生(鋳造欠陥)により品質が安定しないという問題がある。
【0003】
構造欠陥の解消を図った鋳造装置としては、両側縁部が外部に突出するように中子に予め設置された板状部材を鋳包み成型する鋳造装置であって、板状部材の近傍に複数の凝固調整用インサートを配置し、凝固調整用インサート内に制御手段によって冷媒を流通させて溶湯を冷却し、板状部材近傍の溶湯の凝固を促進することで、板状部材の位置ズレなどを抑えて品質向上を図り、また、中子の割れに起因するバリの発生箇所を限定的にしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−118863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では、鋳造部品の鋳造後に凝固調整用インサートを引き抜かなければならないため、引き抜き跡が残る問題がある。また、特許文献1は、凝固調整用インサート内に冷媒を流通させるパイプを設け、制御装置により温度を制御しているため、構造が複雑になる問題がある。
【0006】
この発明は、非金属製の材料で形成される中子の間に溶湯を流す鋳造装置について、鋳造部品に鋳巣による鋳造欠陥が発生しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、金属製の材料で形成される主型内に非金属製の材料で形成される第1中子と第2中子とを配置し、前記第1中子によって底壁と天井壁と側壁とで囲まれる第1空間部を鋳造部品内に形成する一方、前記第2中子によってその底面が前記天井壁の外側面と接するとともにこの底面より開口が狭い開口部をこの底面と反対側に備える袋状の第2空間部を前記鋳造部品内に形成する鋳造装置において、前記第2中子は前記底面と反対側の面が前記主型と接触しており、その内部に一端が前記主型と接触する面に開口し、他端が前記底面に開口する貫通穴を備え、前記貫通穴内に溶湯の熱を主型に伝える伝熱部材を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の鋳造装置は、伝熱部材を通して第1中子と第2中子との間に流入した溶湯の熱を主型へ逃すことができ、第1中子と第2中子とに挟まれる溶湯の凝固が遅れて鋳巣が発生することを阻止できる。
また、この発明の鋳造装置は、溶湯の温度が高い領域に合わせて貫通穴と伝熱部材の径や断面形状を適宜変更することで溶湯の冷却範囲を自由に設定でき、鋳巣が発生することを阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は鋳造装置の断面図である。(実施例)
【図2】図2は鋳造部品の平面図である。(実施例)
【図3】図3は鋳造部品の側面図である。(実施例)
【図4】図4は鋳造部品の断面図である。(実施例)
【図5】図5は鋳造装置の断面図である。(変形例)
【図6】図6は鋳造装置の断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図4は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は鋳造装置、2は鋳造部品である。鋳造装置1は、金属製の材料で形成される主型3として上型4、下型5、横型6を備え、主型2内に非金属製の材料で形成される第1中子7と第2中子8とを配置し、主型3内に溶湯を流し込んで鋳造部品2を成形する。鋳造部品2には、例えば図2〜図4に示すように、エンジンのシリンダヘッドがある。シリンダヘッドは、底壁9、天井壁10、側壁11を有し、底壁9、天井壁10、側壁11の間にウォータジャケット12、カム室13、点火プラグ用孔部14を備え、また、底壁9に燃焼室15を備え、天井壁10に砂抜き穴16を備えている。
シリンダヘッドとなる鋳造部品2内には、図1に示すように、第1中子7によってウォータジャケット12とするための第1空間部17を形成する一方、第2中子8によってカム室13下部とするための第2空間部18を形成している。第1空間部17は、底壁9と天井壁10と側壁11とで囲まれている。第2空間部18は、底面19と上面20と横面21とを有し、底面19が第1空間部17を囲む天井壁10の外側面(上面)と接するとともに、この底面19と反対側(上側)の上面20に底面19より開口が狭い開口部22を備える袋状に形成されている。開口部22は、カム室14上部を構成するための空間であり、上側に延びて鋳造部品2の外側面(上面)に開口している。開口部22は、上型4の底面23から第2空間部18の上面20まで達するように突出させた突出部24によって形成される。
鋳造装置1は、鋳造部品2の内部に第1空間部17と第2空間部18とを形成するために、主型3内に第1空間部17と第2空間部18とに対応する形状の第1中子7と第2中子8とをそれぞれ配置している。鋳造部品2は、第1空間部17を囲む天井壁10の下面に、第1空間部17内に突出するボス部25を備えている。ボス部25には、鋳造後の機械加工によりオイル通路26を形成する。
鋳造部品2の第2空間部18を形成する第2中子8は、底面27と反対側の面(上面)28が、主型3を形成する上型4に設けた突出部24の底面29と接触している。第2中子8の内部には、一端が上型4の突出部24の底面29と接触する面28に開口し、他端が底面27に開口する貫通穴30を備えている。貫通穴30内には、溶湯の熱を上型4の突出部24に伝える伝熱部材31を配置している。伝熱部材31は、主型3を形成する上型4に設けた突出部24に一体に形成している。
【0012】
この鋳造装置1は、鋳造の際に第1中子7と第2中子8との間に流入した溶湯の熱を、第2中子8の貫通穴30内に配置した伝熱部材31を通して主型3を形成する上型4へ逃すことができる。これにより、第1中子7と第2中子8とに挟まれる溶湯の凝固を促進することができ、溶湯の凝固が遅れて鋳巣が発生することを阻止できる。
また、この鋳造装置1は、溶湯の温度が高い領域に合わせて貫通穴30と伝熱部材31の径や断面形状を適宜変更することで、溶湯の冷却範囲を自由に設定できる。これにより、鋳造部品2の内部構造に応じて、溶湯の熱を適切に逃がすことができ、鋳巣が発生することを阻止できる。
さらに、この鋳造装置1は、伝熱部材31を上型4と一体に形成したことで、伝熱部材31を第2中子8に予め取り付ける必要が無くなるため、第2中子8の製造性を向上できる。
また、鋳造部品2の第1空間部17を囲む天井壁10は、第1空間部17内に突出するボス部25を備えている。鋳造装置1は、第2中子8の底面27に開口する貫通穴30と貫通穴30内に配置した伝熱部材31を、ボス部25の裏側となる天井壁10の外側面(上面)に接触させている。
これにより、この鋳造装置1は、天井壁11に、天井壁11より肉厚が厚く、溶湯の凝固が遅れやすいボス部25を備えている場合、このボス部25を形成する溶湯の冷却を促進でき、鋳巣が発生することを阻止できる。
図5は、鋳造装置1の変形例を示すものである。上述実施例においては、伝熱部材31を主型3を形成する上型4の突出部24に一体に形成したが、図5に示すように、伝熱部材31を突出部24と別体に形成することもできる。この場合は、伝熱部材31の熱伝導率を適宜変更することで、溶湯の冷却範囲を自由に設定できる。これにより、鋳造部品2の内部構造に応じて、溶湯の熱を適切に逃がすことができ、鋳巣が発生することを阻止できる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
この発明は、鋳造部品に鋳巣による鋳造欠陥が発生しないようにするものであり、エンジン部品に限らず、各種の鋳造部品の鋳造に応用が可能である。
【符号の説明】
【0014】
1 鋳造装置
2 鋳造部品
3 主型
4 上型
5 下型
6 横型
7 第1中子
8 第2中子
9 鋳造部品2の底壁
10 鋳造部品2の天井壁
11 鋳造部品2の側壁
17 第1空間部
18 第2空間部
19 第2空間部18の底面
20 第2空間部18の上面
21 第2空間部18の横面
22 開口部
23 上型4の底面
24 突出部
25 ボス部
27 第2中子8の底面27
28 第2中子8の底面27と反対側の面
29 突出部24の底面
30 貫通穴
31 伝熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の材料で形成される主型内に非金属製の材料で形成される第1中子と第2中子とを配置し、前記第1中子によって底壁と天井壁と側壁とで囲まれる第1空間部を鋳造部品内に形成する一方、前記第2中子によってその底面が前記天井壁の外側面と接するとともにこの底面より開口が狭い開口部をこの底面と反対側に備える袋状の第2空間部を前記鋳造部品内に形成する鋳造装置において、前記第2中子は前記底面と反対側の面が前記主型と接触しており、その内部に一端が前記主型と接触する面に開口し、他端が前記底面に開口する貫通穴を備え、前記貫通穴内に溶湯の熱を主型に伝える伝熱部材を配置したことを特徴とする鋳造装置。
【請求項2】
前記伝熱部材を前記主型と一体に形成したことを特徴とする請求項1に記載の鋳造装置。
【請求項3】
前記天井壁は前記第1空間部内に突出するボス部を備え、前記貫通穴と前記伝熱部材とを前記ボス部の裏側に接触させたことを特徴とする請求項1に記載の鋳造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−250267(P2012−250267A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125152(P2011−125152)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】