鋼の連続鋳造方法
【課題】電磁攪拌領域を広く保って、浸漬ノズル吐出流が形成する流動との干渉を解消する。
【解決手段】1対の吐出孔3aを側壁に有する浸漬ノズル3から供給した溶鋼に電磁攪拌を施して鋼を連続鋳造する方法。鋳型2長辺2aに平行な角度を0°、電磁攪拌による鋳型内循環流の回転方向を正とした場合に、流下溶鋼流に旋回を付与しない浸漬ノズルを、吐出孔側壁の平均角度が3°〜35°となるように設置する。R0=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2]・exp[−{(ω・σ3・μ3)/2}1/2z3]で定義する鋳型の厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下、R1=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2]で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上となるように連続鋳造する。
【解決手段】1対の吐出孔3aを側壁に有する浸漬ノズル3から供給した溶鋼に電磁攪拌を施して鋼を連続鋳造する方法。鋳型2長辺2aに平行な角度を0°、電磁攪拌による鋳型内循環流の回転方向を正とした場合に、流下溶鋼流に旋回を付与しない浸漬ノズルを、吐出孔側壁の平均角度が3°〜35°となるように設置する。R0=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2]・exp[−{(ω・σ3・μ3)/2}1/2z3]で定義する鋳型の厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下、R1=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2]で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上となるように連続鋳造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼スラブを連続鋳造するに際し、鋳型内電磁攪拌技術と、例えば浸漬ノズル内の溶鋼を旋回させる旋回流ノズル技術を組み合わせて、鋳型内流動を均一かつ安定に制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造では、鋳型内流動を空間的に均一、かつ時間的に安定したものに制御することが、鋼の表面品質を良好に保つ観点から重要である。そこで、上記の目的を達成するべく、従来から、浸漬ノズルの改善や、鋳型内電磁攪拌を適用した連続鋳造方法の発明が成されてきた。
【0003】
例えば、浸漬ノズルの改善として、発明者らは、内部に捩り板型旋回羽根を設置した浸漬ノズルの発明を特許文献1で提案している。この発明は、旋回羽根の捩りピッチ、捩り角、外径、厚み、下端と吐出孔との間で内径が絞られた後の横断面積、及びタンディッシュと鋳型間の必要ヘッド予測値を規定したものである。
【特許文献1】特開2002−239690号公報
【0004】
しかしながら、この特許文献1で提案した浸漬ノズルの改善技術は、主として鋳型内電磁攪拌を行わない条件下で鋳造する際に適用するものである。従って、特許文献1の請求項11及び12に鋳型内電磁攪拌を組み合わせた方法についての記述はあるが、この場合は更なる検討が必要であった。
【0005】
また、スラブの連続鋳造における鋳型内電磁攪拌の適用に関しては、特許文献2〜特許文献4等、多くの発明が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献2で提案された方法は、メニスカス近傍の鋳型内溶鋼に、凝固シェルの内周面に沿って水平方向に回転する流れを生じさせるよう、鋳型の外側に電磁攪拌装置を設置する。そして、浸漬ノズルの底部に、その断面積を規定した吐出孔を下方に向けて設け、この吐出孔が電磁攪拌装置よりも下方に位置するように配置して、鋳型内の下方に向けて溶鋼を注入するものである。
【特許文献2】特開平7−112248号公報
【0007】
また、特許文献3で提案された電磁攪拌方法は、溶鋼流路が逆Y字型となる浸漬ノズルを溶鋼に浸漬し、鋳型の狭面に向かって溶鋼を吐出すると共に、鋳片の引き抜き方向に推力を発生する電磁攪拌装置を、メニスカスから所定の距離内に設置するものである。
【特許文献3】特開平10−166119号公報
【0008】
また、特許文献4で提案された鋳型内溶鋼の攪拌方法は、電磁攪拌コイルにより鋳型内で水平方向に移動できるようにした移動磁界の進行方向を、所定の時間間隔で反転させて、凝固シェル界面近傍の溶鋼に水平方向に反転する流れを付与するものである。
【特許文献4】特開平7−164119号公報
【0009】
鋳型内電磁攪拌技術は、浸漬ノズル吐出孔から吐出する溶鋼流(以下、吐出流と言う。)を安定化する技術と組合さなければその効果を安定して発揮できない。しかしながら、前記特許文献2〜4に記載された技術では、浸漬ノズルからの吐出流を制御することができない。
【0010】
また、鋳型内電磁攪拌技術は、浸漬ノズルからの吐出流によって形成される鋳型内流動と、鋳型内電磁攪拌により形成される鋳型内流動が干渉する。
【0011】
そこで、発明者らは、浸漬ノズル内の溶鋼を旋回させる旋回流ノズル技術と鋳型内電磁攪拌技術とを適正に組み合わせる方法を、特許文献5で提案した。この特許文献5で提案した技術は、鋳型内電磁攪拌を適用した連続鋳造方法が潜在的に有する欠点である、浸漬ノズル吐出流が形成する鋳型内流動と電磁攪拌が形成する鋳型内流動との干渉を、浸漬ノズル内の旋回流を利用して解消するものである。
【特許文献5】特開2005−199325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明者らは、特許文献5で提案した技術について、さらに研究を進めた結果、浸漬ノズル吐出流が形成する鋳型内流動と、電磁攪拌が形成する鋳型内流動との干渉を、特許文献5で提案した発明よりもさらに効果的に解消できる本発明を成立させた。
【0013】
すなわち、本発明では、浸漬ノズル吐出流が形成する鋳型内流動と、電磁攪拌が形成する鋳型内流動との干渉を、2つの過程において解消した。1つ目は、特許文献5で提案した発明と同じくメニスカスにおける干渉であり、2つ目は、浸漬ノズルからの吐出流を鋳型内電磁攪拌が無用に加速される問題である。
【0014】
発明者らは、特に2つ目の、浸漬ノズルからの吐出流を鋳型内電磁攪拌が無用に加速される問題に注目して研究を進めた結果、これを抑制することによって、1つ目のメニスカスにおける干渉問題をも解消できることを知見した。
【0015】
この浸漬ノズルからの吐出流を鋳型内電磁攪拌が無用に加速する問題は、例えば特許文献6においても指摘されている。この特許文献6で提案された発明では、鋳型内電磁攪拌を、メニスカス近傍すなわち鋳型上部のみに限定して印加することによって、この問題を解消しようとしている。
【特許文献6】特許第3577389号公報
【0016】
しかしながら、特許文献6のように電磁攪拌領域を限定することは、電磁力活用の可能性を限定するものであり、例えば、一つのコイル−鉄心系を、電磁攪拌と電磁ブレーキに共用するなど電磁気力を幅広く活用するには、電磁攪拌領域を限定するべきではない。
【0017】
また、電磁攪拌領域を限定することは、電磁攪拌の効果が及ぶ範囲を限定することでもあり、電磁攪拌本来の効果を損なう。例えば、電磁攪拌領域をメニスカス近傍に限定すると、凝固シェルの薄い部分にのみ電磁攪拌の効果が付与されることになって、鋳片のごく表層部に品質改善効果(ピンホールや介在物の減少など)の表出が限定されてしまう。
【0018】
本発明が解決しようとする問題点は、浸漬ノズルからの吐出流を鋳型内電磁攪拌が無用に加速する問題を、鋳型内電磁攪拌領域を限定して印加することによって解消する場合、電磁攪拌本来の効果を損なうという点である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の鋼の連続鋳造方法は、
電磁攪拌領域を広く保ったまま、浸漬ノズル吐出流が形成する流動との干渉を抜本的に解消するために、
1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、
1) 溶鋼供給側の鋳型上方から見て鋳型長辺に平行な角度を0°、前記電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とした場合に、内部を流下する溶鋼流に旋回を付与しない浸漬ノズルを、吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置し、
又は、
2) 前記鋳型長辺に平行な角度を0°、前記電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とした場合に、内部を流下する溶鋼流を旋回流となす浸漬ノズルを、吐出孔から流出する溶鋼流の方向を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置し、
かつ、
下記(1)式で定義する鋳型厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下で、
かつ下記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上として連続鋳造することを最も主要な特徴としている。
【0020】
R0=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2]
・exp[−{(ω・σ3・μ3)/2}1/2z3] …(1)
R1=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2] …(2)
ここで、σは導電率(S/m)、μは透磁率(H/m)、zは厚み(m)を示し、添え字の1はステンレス鋼、2は銅、3は溶鋼を示す。また、(1)式におけるz3は、鋳型厚みの半分とする。ω(rad./s)は、印加周波数の角速度換算値である。
【0021】
本発明の鋼の連続鋳造方法では、浸漬ノズルからの吐出流を水平面に投影した角度が、鋳型長辺と平行ではなく、やや鋳型長辺側に向くようにしている。従って、鋳型内電磁攪拌流と対向する吐出流が、電磁攪拌流によって無用な加速を受けることを防止できる。
【0022】
また、浸漬ノズル内を流下する溶鋼流を旋回流となす場合は、当該旋回流を利用して浸漬ノズルからの吐出流速を低下させて、浸漬ノズル吐出流が形成する流動を抑制し、鋳型内電磁攪拌流との干渉を避けることができる。加えて、浸漬ノズル内溶鋼の旋回(遠心力)によって、吐出流が一定に保たれ、鋳型内流動を安定化することができる。
【0023】
ここでいう安定とは、時間的安定性をいう。電磁攪拌の磁力を安定に保つことは容易である反面、浸漬ノズルからの吐出流は、自励振動的な変動を生じやすいので、この安定を保つことが、鋳型内流動を安定させる上で重要である。
【0024】
さらに、電磁攪拌の磁場浸透深さ(鋳型厚み方向の磁場分布)を適正に制御することによって、浸漬ノズルからの吐出流に、電磁攪拌の磁力を有効に作用させて、均一な鋳型内流動を形成することができる。
【0025】
ここでいう均一とは、空間的均一性を言う。具体的には、鋳型上方から見て、メニスカスにおける鋳型長辺に沿った流速が均一であること、及び浸漬ノズルからの吐出流が鋳型短辺側の凝固シェルに衝突する流速が、鋳型の高さ方向で均一であることを言う。すなわち浸漬ノズルからの吐出流が電磁攪拌によって無用に加速されていないことをいう。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電磁攪拌領域を広く保ったままで、浸漬ノズルからの吐出流と鋳型内電磁攪拌流との整合性を改善し、鋳型内電磁攪拌流と対向する吐出流が、電磁攪拌流によって無用な加速を受けることを、効果的に防止できる。従って、鋳型内流動を安定かつ均一で、適正な流動を備えた理想的状態に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明方法における各種の形態例と、最良の形態例について、添付図面を用いて説明する。
【0028】
(第1発明:請求項1に係る発明)
第1発明は、1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて、鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、以下の構成を有している。
【0029】
溶鋼供給側の鋳型上方から見て鋳型長辺に平行な角度を0°、電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とする。この場合、内部を流下する溶鋼流に旋回を付与しない浸漬ノズルを、吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置する。
【0030】
前記(1)式で定義する鋳型厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下で、かつ前記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上となるようにする。
【0031】
第1発明の範囲を上記のように規定した理由を以下に説明する。
1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズル内を流下する溶鋼流に旋回を付与せず、吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を3°〜35°とするのは、浸漬ノズルからの吐出流の角度を同じく3°〜35°とするためである。
【0032】
前記角度が3°未満であると、吐出流が電磁攪拌によって無用に加速されて鋳型短辺に衝突する作用が強くなり、鋳型短辺側の凝固シェルの健全な成長が妨げられるからである。また、前記角度が35°を超えると、吐出流が鋳型長辺側の凝固シェルに衝突してその健全な成長を妨げる作用が強くなるからである。
【0033】
これに対して、前記角度が3°〜35°の場合は、浸漬ノズルからの吐出流は電磁攪拌によって適当に減速されるので、鋳型短辺側の凝固シェル成長が健全に保たれ、同時にメニスカスにおける吐出流形成流と電磁攪拌流との干渉も抑制される。
発明者らの調査によれば、前記角度のより好ましい範囲は、5°〜20°である。
【0034】
次に、前記(1)式及び前記(2)式で定義する電磁攪拌磁場減衰率R0、R1について、以下に実例をあげて具体的に説明する。
【0035】
電磁攪拌には、出願人が特願2007−150627号で提案したものと同じ電磁ブレーキ・電磁攪拌兼用コイルを用いた。
【0036】
この電磁ブレーキ・電磁攪拌兼用コイルは、鋳型長辺の外周に配置した電磁コイルに直流電流又は3相交流電流を通電して、鋳型内の溶鋼に電磁ブレーキ又は電磁攪拌を選択的に作用させるものであって、励磁コイルと直流電源と3相交流電源を有している。
【0037】
このうち、励磁コイルは、各長辺に2n個(nは2以上の自然数)のティース部を有している。これら各ティース部は、外側に夫々内側巻き線を施し、かつこれら内側巻き線を施したティース部は、さらに2個宛、外側に外側巻き線を施してひとまとめにして、各長辺にn個配置している。
【0038】
また、使用した鋳型は、幅が1600mm、厚さが270mmで、この鋳型を構成する銅板の厚みは40mm、ステンレス鋼製のバックアッププレートの厚みは70mmである。銅、鋼、ステンレス鋼の導電率σ1〜σ3は、それぞれ3.75×107、7.14×105、1.41×106(S/m)とし、透磁率μ1〜μ3はいずれの材質においても1.26×10−6(H/m)とした。
【0039】
まず、図1に示したように、電磁攪拌コイル1を鋳型2の長辺2aの片側にのみ設置した場合について計算を行った。なお、図1中の2bは鋳型2の短辺、3は浸漬ノズルで、3aは側壁に設けられた吐出孔を示す。
【0040】
電流値は45000ATurnとして、周波数を0.5Hz、3.0Hz、6.0Hzに変化した場合の計算を行った。
【0041】
図2に周波数0.5Hzの場合のローレンツ力の分布を示し、鋳型2の長辺2aの1/4の位置(図1のA−A’線上)における鋳型厚み方向のローレンツ力分布の比較を図3に示した。
【0042】
図3から、周波数が低いほど、電磁攪拌コイルを設置した側の鋳型表面近傍のローレンツ力が高くなるが、対向する鋳型長辺の近傍までローレンツ力が浸透していることが確認できる。
【0043】
これより、電磁攪拌コイルを両長辺に設置して、鋳型内を溶鋼流が巡回するように電磁攪拌を実施する場合には、この対向する鋳型長辺近傍にまで浸透しているローレンツ力は、攪拌方向と反対向きに作用するので好ましくないことが分かる。
【0044】
よって、電磁攪拌コイルを設置した側の鋳型長辺近傍のローレンツ力は大きく、対向する鋳型長辺近傍のローレンツ力は小さくなる分布が最適で、図3より、このような分布に最適な周波数の範囲があると考えられる。
【0045】
次に、電磁攪拌コイルを、実機と同様に鋳型の両長辺の背面に対向させて設置した場合のローレンツ力の分布を計算した。電磁攪拌コイル数を除いた条件は、図1〜図3の検討例と同じである。図4は、図5中の鋳型2の長辺2aの1/4の位置(図5のB−B’線上)における鋳型厚み方向のローレンツ力の分布を示す。
【0046】
図4の結果は、対向するコイルの影響で図3とは若干異なっているものの、同様の傾向を示した。すなわち図4から、鋳型長辺近傍のローレンツ力は周波数が小さいほど大きくなるが、周波数が小さいと鋳型中心におけるローレンツ力も大きくなることが分かる。
【0047】
電磁攪拌を行う場合は、鋳型の長辺近傍のローレンツ力は大きいほど良いが、一方で、鋳型厚み中心部のローレンツ力は小さい方がよい。
【0048】
下記表1は、前記(1)式及び前記(2)式から求めた電磁攪拌磁場減衰率R0、R1の値と、鋳型中心におけるローレンツ力L0、長辺近傍のローレンツ力L1を示す。また、数値解析によって求めた下記表1に示すローレンツ力L0、L1及び磁場の減衰率R0、R1を、前記(1)式及び前記(2)式を用いて簡便に求めた値との関係を図6に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
図6より、両者には一定の関係があり、工数と時間が必要となる数値解析を実施しなくても、前記(1)式及び前記(2)式から電磁攪拌に適切な条件を得ることができる可能性を示唆している。
【0051】
ローレンツ力は、対向するコイルとの距離に依存する磁場同士の相互作用や、鋳型銅板あるいはステンレス鋼製バックアッププレートによる減衰など、複雑な要素が絡み合って大きく変化するので、簡便に求めることは困難である。
【0052】
さらに、攪拌作用には、ローレンツ力の絶対値以外に、その方向や、磁場の電磁ブレーキ作用なども考慮する必要があるので、通常は、その都度数値解析を実施して電磁攪拌作用を確認する必要がある。
【0053】
発明者らは、様々な条件におけるローレンツ力分布を計算し、電磁攪拌作用を確認した。また、その電磁攪拌作用と、電磁攪拌磁場減衰率R0及びR1との関係を検証した。その結果、R0が0.3以下で、R1が0.15以上、より好ましくはR0が0.22以下で、R1が0.20以上の場合に、良好な電磁攪拌作用が得られることを見出した。
【0054】
前記(1)式で定義する鋳型厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0を0.3以下とするのは、R0が0.3を超えると、対向する鋳型長辺側の溶鋼を逆方向に駆動する力が増して、電磁攪拌の効率が低下するからである。
【0055】
また、前記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1を0.15以上とするのは、R1が0.15未満であると、溶鋼を駆動する電磁気力が弱く、前記浸漬ノズルからの吐出流を減速するのに必要な磁場が得られないからである。
【0056】
これに対し、R0が0.30以下で、R1が0.15以上の場合、浸漬ノズルからの吐出流を減速するのに十分で、かつ電磁攪拌の効率を落とさない程度の磁場分布が得られる。発明者らの研究結果によれば、R0及びR1のより好ましい範囲は、それぞれ0.22以下、及び0.20以上である。
【0057】
(第2発明:請求項2に係る発明)
第2発明は、1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて、鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、前記電磁攪拌磁場減衰率R0、R1は、前記第1発明と同様、0.30以下、0.15以上である。
【0058】
しかしながら、第2発明では、浸漬ノズル内を流下する溶鋼流を旋回流となし、この浸漬ノズルからの吐出流の方向を水平面に投影した平均角度を3°〜35°とする点が前記第1発明と相違する。
【0059】
第2発明において、1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルの内部を溶鋼が旋回しつつ流下し、吐出流の方向を水平面に投影した平均角度を3°〜35°と規定した理由を以下に説明する。なお、電磁攪拌磁場減衰率R0、R1は、前記第1発明と同様であるので、説明を省略する。
【0060】
前記角度が3°未満であると、吐出流が電磁攪拌によって無用に加速されて鋳型短辺に衝突する作用が強くなり、鋳型短辺側の凝固シェルの健全な成長が妨げられるからである。また、前記角度が35°を超えると、吐出流が鋳型長辺側の凝固シェルに衝突してその健全な成長を妨げる作用が強くなるからである。
【0061】
これに対して、前記角度が3°〜35°の場合は、浸漬ノズルからの吐出流は電磁攪拌によって適当に減速されるので、短辺側の凝固シェル成長が健全に保たれ、同時にメニスカスにおける吐出流形成流と電磁攪拌流との干渉も抑制される。
発明者らの研究によれば、前記角度のより好ましい範囲は、5°〜20°である。
【0062】
この浸漬ノズル内部の溶鋼が旋回しつつ流下する第2発明は、浸漬ノズル内部の溶鋼を旋回させない前記第1発明に比べると、吐出流が水平方向に広がる傾向があり、平均流速が低下する。従って、鋳型内流動を電磁攪拌のみによる水平方向循環流に近付けることができ、より好ましい成果が得られやすい。
【0063】
(第3発明:請求項3に係る発明)
第3発明は、前記第2発明において、更に以下の構成を有している。
浸漬ノズルにおける吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5とする。
【0064】
浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流、及び電磁攪拌により鋳型内に形成される溶鋼の循環流を水平面に投影した回転方向を同方向とする。そして、前記鋳型長辺に平行な角度を0°、浸漬ノズル内を流下する旋回流の回転方向を正の角度とした場合に、浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−20°〜30°とする。
【0065】
浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流の、下記(3)式で定義されるスワール数SWを0.2〜0.8とする。
SW=4W/9V …(3)
ここで、Vは平均下降流速(m/s)、Wは外周部における旋回周速度(m/s)であり、浸漬ノズルの吐出孔直上部の旋回流を角速度一定の強制渦であると仮定する。
【0066】
第3発明の範囲を上記のように規定した理由を以下に説明する。
内部の溶鋼が旋回しつつ流下する浸漬ノズルを用いる理由のひとつは、浸漬ノズル内の旋回流が吐出流の時間的安定性を高める作用を有するためである。
【0067】
そして、浸漬ノズル内旋回流の前記スワール数SWが0.2未満では、旋回流の作用が不十分となる。一方、0.8を超えるスワール数SWを得るには実現が困難なほどの多くのエネルギが必要になる。従って、第3発明では前記スワール数SWを0.2〜0.8としている。
【0068】
なお、浸漬ノズル内旋回流のスワール数SWについては、ISIJ International, Vol.40 (2000), 584頁や、鉄と鋼、Vol.93 (2007)、575頁に詳しく記載されている。
【0069】
また、前記吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5とするのは、0.8未満であると、吐出流速が大きくなりすぎるからである。一方、1.5を超えると、吐出孔間の浸漬ノズル側壁の断面積が小さくなって強度が不足するからである。
【0070】
これに対して、浸漬ノズル内の旋回流と、0.8〜1.5のB/D比を有する比較的幅が広い吐出孔を組み合わせれば、水平方向に穏やかな流速分布を持って吐出流が広がり、吐出流が形成する鋳型内流動が抑制されて、効果的に吐出流が減速される。
【0071】
その結果、鋳型内電磁攪拌流による無用な加速や鋳型内電磁攪拌流との干渉が現れず、電磁攪拌によって形成される水平面内循環流が支配的となり、鋳型内流動が均一化する。
発明者らの研究結果によれば、B/Dのより好ましい範囲は、0.9〜1.3である。
【0072】
さらに、浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流と、電磁攪拌により鋳型内に形成される溶鋼の循環流を水平面に投影した回転方向を同方向とし、浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−20°〜30°とするのは、以下の理由による。
【0073】
すなわち、第2発明のように、内部を流下する溶鋼が旋回しつつ流下する浸漬ノズルを用いた場合に、浸漬ノズルからの吐出流の方向を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるようにするためである。これは、浸漬ノズルからの吐出流が内部の旋回流の影響を受けて、旋回流の回転方向に5°〜25°程度、吐出孔側壁に対して振れて吐出することに起因する。
【0074】
例えば、前記の旋回流と循環流を水平面に投影した回転方向が同方向の場合に、浸漬ノズルの吐出孔側壁が鋳型長辺となす、水平面に投影した角度が−5°(旋回流の回転方向が正)で、吐出流が旋回方向に15°振れて吐出した場合、吐出孔側壁を投影した前記角度は、−5°+15°=10°(循環流の水平面に投影した回転方向が正)となる。
【0075】
このように、吐出流の振れ代に応じて、浸漬ノズル側壁を予め反対方向に振って設置することによって、吐出流の方向を狙い通りに制御するのが、第3発明の狙いである。
【0076】
(第4発明:請求項4に係る発明)
この第4発明の狙いとするところは、第3発明と同じである。すなわち、第4発明は、前記第2発明において、前記吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5とする点、前記スワール数SWを0.2〜0.8とする点は、前記第3発明と同じである。
【0077】
しかしながら、第4発明では、前記旋回流、及び前記循環流を水平面に投影した回転方向を逆方向となし、かつ、前記浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−60°〜−10°とする点が前記第3発明と相違する。
【0078】
第4発明において、前記の旋回流と循環流を水平面に投影した回転方向を逆方向となし、かつ、浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−60°〜−10°とするのは、以下の理由による。
【0079】
すなわち、前記の旋回流と循環流の回転方向と、浸漬ノズルの吐出孔側壁の平均角度を規定するのは、第2発明のように、浸漬ノズルからの旋回吐出流の方向を水平面に投影した平均角度を3°〜35°となるようにするためである。
【0080】
これは、浸漬ノズルからの吐出流が、内部の旋回流の影響を受けて、旋回流の回転方向に5°〜25°程度、吐出孔側壁に対して振れて吐出することに対応した調整である。
【0081】
例えば、前記の旋回流と循環流を水平面に投影した回転方向が逆方向の場合に、浸漬ノズルの吐出孔側壁が鋳型長辺となす、水平面に投影した角度が−40°(旋回流の回転方向が正)で、吐出流が旋回方向に20°振れて吐出した場合、吐出流の方向を水平面に投影した前記角度は、−(−40°+20°)=20°(循環流の水平面に投影した回転方向が正)となる。
【0082】
このように、第3発明と同じく、吐出流の振れ代に応じて、予め浸漬ノズル側壁を反対方向に振って設置することによって、吐出流の方向を狙い通りに制御するのが、第4発明の狙いである。
【0083】
(第5、6発明:請求項5、6に係る発明)
第5発明と第6発明は、従属する請求項によって便宜上分けたものであって、その意図するところは同じである。
【0084】
これら、第5、第6発明は、鋳型内電磁攪拌用の電磁コイル鉄心を配置する鋳型高さ方向の位置を、少なくとも前記浸漬ノズル吐出孔出口の下端よりも100mm下方〜前記浸漬ノズル吐出孔出口の上端よりも70mm上方の範囲を含む領域としている。
【0085】
そして、鋳型内電磁攪拌を適用しない条件での前記浸漬ノズルからの吐出流の吐出角度を水平〜下向30°となるようにする。
【0086】
第5、第6発明の範囲を上記のように規定した理由を以下に説明する。
鋳型内電磁攪拌コイルの鉄心を配置する鋳型高さ方向の位置を前記の領域とするのは、少なくともこの領域に鋳型内電磁攪拌コイルの鉄心が無ければ、浸漬ノズルからの吐出流を有効に駆動することができないからである。
【0087】
すなわち、浸漬ノズル吐出孔出口の下端から100mm下方の位置よりも上方に、前記鉄心の下端があると、下方向に広がった吐出流に駆動力が及ばないからである。一方、浸漬ノズル吐出孔出口の上端から70mm上方の位置よりも下方に、前記鉄心の上端位置があると、上方向に広がった吐出流に駆動力が及ばないからである。
【0088】
また、鋳型内電磁攪拌を適用しない条件での浸漬ノズルからの吐出流の吐出角度が、下向30°より吐出角度が大きくなると、上記のように配置された電磁攪拌コイルによって吐出流を有効に駆動することが難しくなるからである。
【0089】
一方、電磁攪拌コイルによって吐出流を有効に駆動するには、吐出角度は水平に近いほど好ましいが、一般に、吐出角度を水平よりも上向きに方向付けるのは困難であるため、適正な吐出角度の上限値は水平(0°)とする。
【0090】
ここで言う、吐出流を有効に駆動するとは、吐出流速を減速させ、電磁攪拌が形成する水平面内循環流が支配的となるように、鋳型内流動を制御することによって、鋳型内流動を均一化することである。
【0091】
発明者らの研究によれば、鋳型内電磁攪拌を適用しない場合の浸漬ノズル吐出孔からの吐出角度のより好ましい範囲は、下向10°〜下向25°の間である。
【0092】
なお、ここでいう上下方向の吐出角度については、吐出孔の下壁或いは上壁の角度とは必ずしも一致しないので、水モデル実験や数値流動解析等によって鋳型内の流速分布を求めて、吐出角度を見積もる必要がある。
【0093】
また、第5、第6発明の狙いとするところは、電磁攪拌によって吐出流を駆動する(実際には対向流にブレーキをかける)ことであるため、その容易な実現のためには吐出流速は小さいことが望まれる。従って、浸漬ノズル内の旋回流を活用して吐出流速を抑えた第2、第3、第4発明に従属する発明が、第1発明に従属する発明に対して実現が容易である。
【0094】
(第7発明:請求項7に係る発明)
第7発明は、前記第6発明において、更に以下の構成を有している。
浸漬ノズル吐出孔の上壁が、半径が30mm〜90mmの曲面で、前記吐出孔の下壁が、水平〜上向20°の角度を有し、前記吐出孔の出口高さH(mm)と溶鋼のスループットQ(ton/min)との比H/Qが9〜22である。さらに、前記吐出孔の出口高さH(mm)と前記出口幅Bとの比H/Bが0.6〜1.3である。
【0095】
第7発明の範囲を上記のように規定した理由を以下に説明する。
第7発明は、第2発明のような内部の溶鋼が旋回しつつ流下する浸漬ノズルを用いて、第6発明のように、浸漬ノズル吐出孔からの吐出角度が水平〜下向30°の間に調整する方法を主に規定するものである。
【0096】
第7発明において、浸漬ノズル吐出孔の上壁が、半径が30mm〜90mmの曲面とするのは、半径が30mmよりも小さいと吐出流が上壁から剥離して不安定になりやすくなるからである。一方、半径が90mmよりも大きいと吐出角度が下向きに大きくなり過ぎるからである。
【0097】
また、吐出孔の下壁が、水平〜上向20°の角度を有するようにするのは、水平よりも下向きであると、吐出流速が不安定に変動し易くなると共に、吐出角度が下向きに大きくなりすぎるからである。また、上向20°よりも上向きに大きな角度を有すると、吐出角度が水平よりも上向きになり易くなるからである。
【0098】
また、吐出孔の出口高さH(mm)と溶鋼のスループットQ(ton/min)との比H/Qを9〜22とするのは、9未満では吐出流速が大きくなり過ぎ、22を超えると吐出角度が下向きに大きくなり過ぎるからである。
発明者らの研究によれば、H/Qのより好ましい範囲は、12〜20である。
【0099】
また、吐出孔の出口高さH(mm)と出口幅Bとの比H/Bを0.6〜1.3とするのは、0.6未満では吐出孔面積が不足しがちで閉塞しやすくなるからである。一方、1.3を超えると、吐出孔面積が過大となって吐出方向が不安定に変動しやすくなるからである。
【実施例】
【0100】
以下に、本発明の実施例を示しながら、発明の内容をより具体的に説明する。
(実施例1)
第1発明の実施例(実施例1)を、図7及び図8を用いて説明する。
【0101】
実施例1では、図7に示したように、内径Dが90mmの円筒状の側壁の円周上180°対向する位置に、出口幅Bが90mm、出口高さHが100mmの2つの吐出孔3aを設けた浸漬ノズル3を用いた。この浸漬ノズル3の吐出孔3aの上下壁の角度は0°(水平)である。
【0102】
この浸漬ノズル3を、図8に示したように、電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型2の中央に設置する。図8に示した例では、電磁攪拌によって形成する鋳型内循環流の水平面に投影した回転方向は、反時計回り方向である。
【0103】
浸漬ノズル3は、前記鋳型内循環流の水平面に投影した回転方向を正とした場合、図8に示すように、その吐出孔3aの側壁が10°振って設置されており、それによって吐出流も平均10°振れて吐出する。この場合、浸漬ノズル3の内部を流下する溶鋼は旋回していないので、吐出方向と吐出孔3aの側壁角度は一致する。
【0104】
鋳型2の幅は1600mm、厚みは270mmで、鋳型2を構成する銅板の厚さは40mmである。鋳型2と電磁攪拌コイルの間には、厚さが70mmのステンレス鋼製のバックアッププレートが存在する。
【0105】
ステンレス鋼、銅、溶鋼の導電率σ1〜σ3は、それぞれ1.41×106(S/m)、3.75×107(S/m)、7.14×105(S/m)である。また、透磁率μ1〜μ3は、ステンレス鋼、銅、溶鋼の何れも1.257×10−6(H/m)である。従って、電磁攪拌の印加周波数を4.0Hzとすると、ωは8π(rad./s)である。
【0106】
これらの値を用いて、前記(1)式によってR0を算出すると、R0=0.17となる。同様に、前記(2)式によってR1を算出すると、R1=0.27となり、いずれも第1発明の要件を満たす。
【0107】
(実施例2)
第2、3発明の実施例(実施例2)について説明する。
実施例2は、浸漬ノズルを除く条件は、前記実施例1と同じである。
【0108】
浸漬ノズル3は、図9に示した形状、寸法の、捩り板型旋回羽根3bを用いて、内部の溶鋼を上方から見て反時計回りに旋回しつつ流下させるものを用いた。捩り板型旋回羽根3bは、直径D1が内装部の内径と同じ100mm、高さLが150mm、羽根の厚みが12.5mm、捩り角が180°である。また、浸漬ノズル3の吐出孔3aの直上の内径D2は82mm、吐出孔3aの出口幅Bは80mm、出口高さHは90mm、上壁の曲面の半径は60mmである。
【0109】
上記の浸漬ノズル3に、4.4ton/min相当の溶鋼を流すと、吐出孔3aの直上部において旋回流はほぼ角速度一定の強制渦状の流速分布となり、そのスワール数SWは、0.3となることを数値流動解析及びフルスケールの水モデル実験によって確認した。また、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口幅Bと吐出孔部の内径Dとの比B/Dは、80/82≒0.98となる。
【0110】
また、予め行った数値流動解析及びフルスケールの水モデル実験によれば、溶鋼スループット4.4ton/minの条件で、電磁攪拌を印加しなかった場合、吐出流は、この浸漬ノズル3の吐出孔3aの側壁に対して平均13°旋回流の回転方向に振れて吐出した。
【0111】
この浸漬ノズル3を、図10に示したように、吐出孔3aの側壁が鋳型2の長辺2aと平行になるように設置し、浸漬ノズル内の旋回流と鋳型内循環流の水平面に投影した回転方向が同方向になるように電磁攪拌すると、吐出流は13°振れて吐出した。
よって、実施例2は第2発明及び第3発明の構成を満たす。
【0112】
(実施例3)
第4発明の実施例(実施例3)について説明する。
電磁攪拌の方向を除く条件は、前記実施例2と同じである。また、浸漬ノズル3は実施例2と同じものを水平方向の角度を変えて設置した。従って、第4発明のスワール数SWの規定、及び吐出孔の出口幅Bと、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径Dの比B/Dの規定は満たしている。
【0113】
図9に示した実施例2の浸漬ノズルを、溶鋼スループット4.4ton/minの条件で、図11に示したように、吐出孔3aの側壁が鋳型2の長辺2aとなす角度が−25°になるように設置し、前記の旋回流と循環流の水平面に投影した回転方向が逆方向になるように電磁攪拌すると、吐出流は、12°振れて吐出した。
よって、実施例3は第2発明及び第4発明の構成を満たす。
【0114】
(実施例4)
第5発明の実施例(実施例4)について説明する。
図7に示した浸漬ノズル3を、図8に示したように鋳型2に設置した場合の、鋳型2の長辺2a面に投影した電磁攪拌コイル1の鉄心と浸漬ノズル3の配置を図12に示す。
【0115】
図12に示したように、鋳型2内の電磁攪拌コイル1の鉄心の、鋳型高さ方向の位置は、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口下端よりも100mm下方〜浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口上端よりも70mm上方の範囲を含む領域である。
【0116】
具体的には、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口下端よりも230mm下方〜浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口上端よりも120mm上方の範囲に前記鉄心を設置した。
よって、第5発明の鉄心の高さ範囲の規定を満たす。
【0117】
また、図12に示したように、図7に示した浸漬ノズル3を適用した場合に、平均吐出角度は下向10°となり、第5発明の吐出角度の規定を満たす。この吐出角度は、数値流動解析及びフルスケール水モデル実験によって確認した。なお、溶鋼スループットは、5.7ton/minである。
よって、実施例4は、第1発明、第5発明の構成を満たす。
【0118】
(実施例5)
第7発明の実施例(実施例5)について説明する。
図9に示したノズルを、図10に示したように鋳型2に設置した場合の、鋳型2の長辺面に投影した電磁攪拌用コイル1の鉄心と浸漬ノズル2の配置を図13に示す。
【0119】
図13に示したように、鋳型内電磁攪拌コイル1の鉄心の鋳型高さ方向の位置は、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口下端よりも100mm下方〜浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口上端よりも70mm上方の範囲を含む領域である。
【0120】
具体的には、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口下端よりも260mm下方〜浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口上端よりも100mm上方の範囲にあり、第6発明の鉄心の高さ範囲の規定を満たす。
【0121】
また、図13に示したように、図9の浸漬ノズル3を適用した場合に、平均吐出角度は下向23°となり、第6発明の吐出角度の規定を満たす。この吐出角度は、数値流動解析及び水モデル実験によって確認した。なお、溶鋼スループットは、5.7ton/minである。
【0122】
図9に示した浸漬ノズル3は、吐出孔3aの上壁は半径が60mmの形状、下壁が水平であり、吐出孔3aの高さH(mm)とスループットQ(ton/min)との比H/Qが90/5.7=15.8である。また、前記高さHと吐出孔3aの出口幅Bとの比H/Bが90/80=1.125と、第7発明の吐出孔3aの形状の規定を満たす。
【0123】
このように、図13に示した実施例5は、第2、第3、第6及び第7発明を満たす実施例である。
この実施例5は、最も多くの発明を満たす実施例であるので、示した全ての実施例の中で、鋳型内流動の安定性および均一性に関して最良の結果が得られる。
【0124】
上記のように、本発明は、浸漬ノズルからの吐出流と鋳型内電磁攪拌流との整合性を改善し、鋳型内流動を安定かつ均一で、適正な流動を備えた理想的状態に保つことができる。
【0125】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0126】
図12や図13に示したように、本発明では、電磁攪拌コイル鉄心の鋳型長辺面への投影面積を大きく設計できるので、同じコイル−鉄心系を、電磁ブレーキに用いることも可能である。
【0127】
従って、本発明は、上記例のように、電磁攪拌と電磁ブレーキをひとつのコイル−鉄心系で兼用する場合に、真価を発揮すると言えるが、電磁攪拌専用のコイルを使用しても良い。
【0128】
また、実施例2では、浸漬ノズルの旋回流付与手段として、捩り板型旋回羽根を用いたものを示したが、特開2007−69236号の図2に示されたような斜めの溶鋼通過孔を多数配した耐火物製構造体を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上の本発明は、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼の何れの溶鋼を連続鋳造する際にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】電磁攪拌コイルを鋳型の長辺の片側にのみ設置した場合に作用するローレンツ力の説明図である。
【図2】周波数0.5Hzの場合のローレンツ力の分布を示した図である。
【図3】図1のA−A’線上における鋳型厚み方向のローレンツ力分布の比較を示した図である。
【図4】図5のB−B’線上における鋳型厚み方向のローレンツ力の分布を示した図である。
【図5】電磁攪拌コイルを鋳型の長辺の両側に設置した場合に作用するローレンツ力の説明図である。
【図6】数値解析によって求めた表1に示すローレンツ力L及び磁場の減衰率Rを、(1)式及び(2)式を用いて簡便に求めた値との関係を示した図である。
【図7】実施例1に用いた浸漬ノズルの吐出孔部を示す図で、(a)は吐出孔を側面から見た図、(b)は吐出孔を正面から見た図である。
【図8】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルの配置状態を示す実施例1の平面図である。
【図9】実施例2に用いた浸漬ノズルを示す図で、(a)は吐出孔を側面から見た断面図、(b)は吐出孔を正面から見た図である。
【図10】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルの配置状態を示す実施例2の平面図である。
【図11】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルの配置状態を示す実施例3の平面図である。
【図12】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルと電磁攪拌コイルの配置状態を示す実施例4の側面図である。
【図13】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルと電磁攪拌コイルの配置状態を示す実施例5の側面図である。
【符号の説明】
【0131】
1 電磁攪拌コイル
2 鋳型
2a 長辺
2b 短辺
3 浸漬ノズル
3a 吐出孔
3b 旋回羽根
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼スラブを連続鋳造するに際し、鋳型内電磁攪拌技術と、例えば浸漬ノズル内の溶鋼を旋回させる旋回流ノズル技術を組み合わせて、鋳型内流動を均一かつ安定に制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造では、鋳型内流動を空間的に均一、かつ時間的に安定したものに制御することが、鋼の表面品質を良好に保つ観点から重要である。そこで、上記の目的を達成するべく、従来から、浸漬ノズルの改善や、鋳型内電磁攪拌を適用した連続鋳造方法の発明が成されてきた。
【0003】
例えば、浸漬ノズルの改善として、発明者らは、内部に捩り板型旋回羽根を設置した浸漬ノズルの発明を特許文献1で提案している。この発明は、旋回羽根の捩りピッチ、捩り角、外径、厚み、下端と吐出孔との間で内径が絞られた後の横断面積、及びタンディッシュと鋳型間の必要ヘッド予測値を規定したものである。
【特許文献1】特開2002−239690号公報
【0004】
しかしながら、この特許文献1で提案した浸漬ノズルの改善技術は、主として鋳型内電磁攪拌を行わない条件下で鋳造する際に適用するものである。従って、特許文献1の請求項11及び12に鋳型内電磁攪拌を組み合わせた方法についての記述はあるが、この場合は更なる検討が必要であった。
【0005】
また、スラブの連続鋳造における鋳型内電磁攪拌の適用に関しては、特許文献2〜特許文献4等、多くの発明が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献2で提案された方法は、メニスカス近傍の鋳型内溶鋼に、凝固シェルの内周面に沿って水平方向に回転する流れを生じさせるよう、鋳型の外側に電磁攪拌装置を設置する。そして、浸漬ノズルの底部に、その断面積を規定した吐出孔を下方に向けて設け、この吐出孔が電磁攪拌装置よりも下方に位置するように配置して、鋳型内の下方に向けて溶鋼を注入するものである。
【特許文献2】特開平7−112248号公報
【0007】
また、特許文献3で提案された電磁攪拌方法は、溶鋼流路が逆Y字型となる浸漬ノズルを溶鋼に浸漬し、鋳型の狭面に向かって溶鋼を吐出すると共に、鋳片の引き抜き方向に推力を発生する電磁攪拌装置を、メニスカスから所定の距離内に設置するものである。
【特許文献3】特開平10−166119号公報
【0008】
また、特許文献4で提案された鋳型内溶鋼の攪拌方法は、電磁攪拌コイルにより鋳型内で水平方向に移動できるようにした移動磁界の進行方向を、所定の時間間隔で反転させて、凝固シェル界面近傍の溶鋼に水平方向に反転する流れを付与するものである。
【特許文献4】特開平7−164119号公報
【0009】
鋳型内電磁攪拌技術は、浸漬ノズル吐出孔から吐出する溶鋼流(以下、吐出流と言う。)を安定化する技術と組合さなければその効果を安定して発揮できない。しかしながら、前記特許文献2〜4に記載された技術では、浸漬ノズルからの吐出流を制御することができない。
【0010】
また、鋳型内電磁攪拌技術は、浸漬ノズルからの吐出流によって形成される鋳型内流動と、鋳型内電磁攪拌により形成される鋳型内流動が干渉する。
【0011】
そこで、発明者らは、浸漬ノズル内の溶鋼を旋回させる旋回流ノズル技術と鋳型内電磁攪拌技術とを適正に組み合わせる方法を、特許文献5で提案した。この特許文献5で提案した技術は、鋳型内電磁攪拌を適用した連続鋳造方法が潜在的に有する欠点である、浸漬ノズル吐出流が形成する鋳型内流動と電磁攪拌が形成する鋳型内流動との干渉を、浸漬ノズル内の旋回流を利用して解消するものである。
【特許文献5】特開2005−199325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明者らは、特許文献5で提案した技術について、さらに研究を進めた結果、浸漬ノズル吐出流が形成する鋳型内流動と、電磁攪拌が形成する鋳型内流動との干渉を、特許文献5で提案した発明よりもさらに効果的に解消できる本発明を成立させた。
【0013】
すなわち、本発明では、浸漬ノズル吐出流が形成する鋳型内流動と、電磁攪拌が形成する鋳型内流動との干渉を、2つの過程において解消した。1つ目は、特許文献5で提案した発明と同じくメニスカスにおける干渉であり、2つ目は、浸漬ノズルからの吐出流を鋳型内電磁攪拌が無用に加速される問題である。
【0014】
発明者らは、特に2つ目の、浸漬ノズルからの吐出流を鋳型内電磁攪拌が無用に加速される問題に注目して研究を進めた結果、これを抑制することによって、1つ目のメニスカスにおける干渉問題をも解消できることを知見した。
【0015】
この浸漬ノズルからの吐出流を鋳型内電磁攪拌が無用に加速する問題は、例えば特許文献6においても指摘されている。この特許文献6で提案された発明では、鋳型内電磁攪拌を、メニスカス近傍すなわち鋳型上部のみに限定して印加することによって、この問題を解消しようとしている。
【特許文献6】特許第3577389号公報
【0016】
しかしながら、特許文献6のように電磁攪拌領域を限定することは、電磁力活用の可能性を限定するものであり、例えば、一つのコイル−鉄心系を、電磁攪拌と電磁ブレーキに共用するなど電磁気力を幅広く活用するには、電磁攪拌領域を限定するべきではない。
【0017】
また、電磁攪拌領域を限定することは、電磁攪拌の効果が及ぶ範囲を限定することでもあり、電磁攪拌本来の効果を損なう。例えば、電磁攪拌領域をメニスカス近傍に限定すると、凝固シェルの薄い部分にのみ電磁攪拌の効果が付与されることになって、鋳片のごく表層部に品質改善効果(ピンホールや介在物の減少など)の表出が限定されてしまう。
【0018】
本発明が解決しようとする問題点は、浸漬ノズルからの吐出流を鋳型内電磁攪拌が無用に加速する問題を、鋳型内電磁攪拌領域を限定して印加することによって解消する場合、電磁攪拌本来の効果を損なうという点である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の鋼の連続鋳造方法は、
電磁攪拌領域を広く保ったまま、浸漬ノズル吐出流が形成する流動との干渉を抜本的に解消するために、
1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、
1) 溶鋼供給側の鋳型上方から見て鋳型長辺に平行な角度を0°、前記電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とした場合に、内部を流下する溶鋼流に旋回を付与しない浸漬ノズルを、吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置し、
又は、
2) 前記鋳型長辺に平行な角度を0°、前記電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とした場合に、内部を流下する溶鋼流を旋回流となす浸漬ノズルを、吐出孔から流出する溶鋼流の方向を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置し、
かつ、
下記(1)式で定義する鋳型厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下で、
かつ下記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上として連続鋳造することを最も主要な特徴としている。
【0020】
R0=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2]
・exp[−{(ω・σ3・μ3)/2}1/2z3] …(1)
R1=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2] …(2)
ここで、σは導電率(S/m)、μは透磁率(H/m)、zは厚み(m)を示し、添え字の1はステンレス鋼、2は銅、3は溶鋼を示す。また、(1)式におけるz3は、鋳型厚みの半分とする。ω(rad./s)は、印加周波数の角速度換算値である。
【0021】
本発明の鋼の連続鋳造方法では、浸漬ノズルからの吐出流を水平面に投影した角度が、鋳型長辺と平行ではなく、やや鋳型長辺側に向くようにしている。従って、鋳型内電磁攪拌流と対向する吐出流が、電磁攪拌流によって無用な加速を受けることを防止できる。
【0022】
また、浸漬ノズル内を流下する溶鋼流を旋回流となす場合は、当該旋回流を利用して浸漬ノズルからの吐出流速を低下させて、浸漬ノズル吐出流が形成する流動を抑制し、鋳型内電磁攪拌流との干渉を避けることができる。加えて、浸漬ノズル内溶鋼の旋回(遠心力)によって、吐出流が一定に保たれ、鋳型内流動を安定化することができる。
【0023】
ここでいう安定とは、時間的安定性をいう。電磁攪拌の磁力を安定に保つことは容易である反面、浸漬ノズルからの吐出流は、自励振動的な変動を生じやすいので、この安定を保つことが、鋳型内流動を安定させる上で重要である。
【0024】
さらに、電磁攪拌の磁場浸透深さ(鋳型厚み方向の磁場分布)を適正に制御することによって、浸漬ノズルからの吐出流に、電磁攪拌の磁力を有効に作用させて、均一な鋳型内流動を形成することができる。
【0025】
ここでいう均一とは、空間的均一性を言う。具体的には、鋳型上方から見て、メニスカスにおける鋳型長辺に沿った流速が均一であること、及び浸漬ノズルからの吐出流が鋳型短辺側の凝固シェルに衝突する流速が、鋳型の高さ方向で均一であることを言う。すなわち浸漬ノズルからの吐出流が電磁攪拌によって無用に加速されていないことをいう。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電磁攪拌領域を広く保ったままで、浸漬ノズルからの吐出流と鋳型内電磁攪拌流との整合性を改善し、鋳型内電磁攪拌流と対向する吐出流が、電磁攪拌流によって無用な加速を受けることを、効果的に防止できる。従って、鋳型内流動を安定かつ均一で、適正な流動を備えた理想的状態に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明方法における各種の形態例と、最良の形態例について、添付図面を用いて説明する。
【0028】
(第1発明:請求項1に係る発明)
第1発明は、1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて、鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、以下の構成を有している。
【0029】
溶鋼供給側の鋳型上方から見て鋳型長辺に平行な角度を0°、電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とする。この場合、内部を流下する溶鋼流に旋回を付与しない浸漬ノズルを、吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置する。
【0030】
前記(1)式で定義する鋳型厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下で、かつ前記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上となるようにする。
【0031】
第1発明の範囲を上記のように規定した理由を以下に説明する。
1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズル内を流下する溶鋼流に旋回を付与せず、吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を3°〜35°とするのは、浸漬ノズルからの吐出流の角度を同じく3°〜35°とするためである。
【0032】
前記角度が3°未満であると、吐出流が電磁攪拌によって無用に加速されて鋳型短辺に衝突する作用が強くなり、鋳型短辺側の凝固シェルの健全な成長が妨げられるからである。また、前記角度が35°を超えると、吐出流が鋳型長辺側の凝固シェルに衝突してその健全な成長を妨げる作用が強くなるからである。
【0033】
これに対して、前記角度が3°〜35°の場合は、浸漬ノズルからの吐出流は電磁攪拌によって適当に減速されるので、鋳型短辺側の凝固シェル成長が健全に保たれ、同時にメニスカスにおける吐出流形成流と電磁攪拌流との干渉も抑制される。
発明者らの調査によれば、前記角度のより好ましい範囲は、5°〜20°である。
【0034】
次に、前記(1)式及び前記(2)式で定義する電磁攪拌磁場減衰率R0、R1について、以下に実例をあげて具体的に説明する。
【0035】
電磁攪拌には、出願人が特願2007−150627号で提案したものと同じ電磁ブレーキ・電磁攪拌兼用コイルを用いた。
【0036】
この電磁ブレーキ・電磁攪拌兼用コイルは、鋳型長辺の外周に配置した電磁コイルに直流電流又は3相交流電流を通電して、鋳型内の溶鋼に電磁ブレーキ又は電磁攪拌を選択的に作用させるものであって、励磁コイルと直流電源と3相交流電源を有している。
【0037】
このうち、励磁コイルは、各長辺に2n個(nは2以上の自然数)のティース部を有している。これら各ティース部は、外側に夫々内側巻き線を施し、かつこれら内側巻き線を施したティース部は、さらに2個宛、外側に外側巻き線を施してひとまとめにして、各長辺にn個配置している。
【0038】
また、使用した鋳型は、幅が1600mm、厚さが270mmで、この鋳型を構成する銅板の厚みは40mm、ステンレス鋼製のバックアッププレートの厚みは70mmである。銅、鋼、ステンレス鋼の導電率σ1〜σ3は、それぞれ3.75×107、7.14×105、1.41×106(S/m)とし、透磁率μ1〜μ3はいずれの材質においても1.26×10−6(H/m)とした。
【0039】
まず、図1に示したように、電磁攪拌コイル1を鋳型2の長辺2aの片側にのみ設置した場合について計算を行った。なお、図1中の2bは鋳型2の短辺、3は浸漬ノズルで、3aは側壁に設けられた吐出孔を示す。
【0040】
電流値は45000ATurnとして、周波数を0.5Hz、3.0Hz、6.0Hzに変化した場合の計算を行った。
【0041】
図2に周波数0.5Hzの場合のローレンツ力の分布を示し、鋳型2の長辺2aの1/4の位置(図1のA−A’線上)における鋳型厚み方向のローレンツ力分布の比較を図3に示した。
【0042】
図3から、周波数が低いほど、電磁攪拌コイルを設置した側の鋳型表面近傍のローレンツ力が高くなるが、対向する鋳型長辺の近傍までローレンツ力が浸透していることが確認できる。
【0043】
これより、電磁攪拌コイルを両長辺に設置して、鋳型内を溶鋼流が巡回するように電磁攪拌を実施する場合には、この対向する鋳型長辺近傍にまで浸透しているローレンツ力は、攪拌方向と反対向きに作用するので好ましくないことが分かる。
【0044】
よって、電磁攪拌コイルを設置した側の鋳型長辺近傍のローレンツ力は大きく、対向する鋳型長辺近傍のローレンツ力は小さくなる分布が最適で、図3より、このような分布に最適な周波数の範囲があると考えられる。
【0045】
次に、電磁攪拌コイルを、実機と同様に鋳型の両長辺の背面に対向させて設置した場合のローレンツ力の分布を計算した。電磁攪拌コイル数を除いた条件は、図1〜図3の検討例と同じである。図4は、図5中の鋳型2の長辺2aの1/4の位置(図5のB−B’線上)における鋳型厚み方向のローレンツ力の分布を示す。
【0046】
図4の結果は、対向するコイルの影響で図3とは若干異なっているものの、同様の傾向を示した。すなわち図4から、鋳型長辺近傍のローレンツ力は周波数が小さいほど大きくなるが、周波数が小さいと鋳型中心におけるローレンツ力も大きくなることが分かる。
【0047】
電磁攪拌を行う場合は、鋳型の長辺近傍のローレンツ力は大きいほど良いが、一方で、鋳型厚み中心部のローレンツ力は小さい方がよい。
【0048】
下記表1は、前記(1)式及び前記(2)式から求めた電磁攪拌磁場減衰率R0、R1の値と、鋳型中心におけるローレンツ力L0、長辺近傍のローレンツ力L1を示す。また、数値解析によって求めた下記表1に示すローレンツ力L0、L1及び磁場の減衰率R0、R1を、前記(1)式及び前記(2)式を用いて簡便に求めた値との関係を図6に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
図6より、両者には一定の関係があり、工数と時間が必要となる数値解析を実施しなくても、前記(1)式及び前記(2)式から電磁攪拌に適切な条件を得ることができる可能性を示唆している。
【0051】
ローレンツ力は、対向するコイルとの距離に依存する磁場同士の相互作用や、鋳型銅板あるいはステンレス鋼製バックアッププレートによる減衰など、複雑な要素が絡み合って大きく変化するので、簡便に求めることは困難である。
【0052】
さらに、攪拌作用には、ローレンツ力の絶対値以外に、その方向や、磁場の電磁ブレーキ作用なども考慮する必要があるので、通常は、その都度数値解析を実施して電磁攪拌作用を確認する必要がある。
【0053】
発明者らは、様々な条件におけるローレンツ力分布を計算し、電磁攪拌作用を確認した。また、その電磁攪拌作用と、電磁攪拌磁場減衰率R0及びR1との関係を検証した。その結果、R0が0.3以下で、R1が0.15以上、より好ましくはR0が0.22以下で、R1が0.20以上の場合に、良好な電磁攪拌作用が得られることを見出した。
【0054】
前記(1)式で定義する鋳型厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0を0.3以下とするのは、R0が0.3を超えると、対向する鋳型長辺側の溶鋼を逆方向に駆動する力が増して、電磁攪拌の効率が低下するからである。
【0055】
また、前記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1を0.15以上とするのは、R1が0.15未満であると、溶鋼を駆動する電磁気力が弱く、前記浸漬ノズルからの吐出流を減速するのに必要な磁場が得られないからである。
【0056】
これに対し、R0が0.30以下で、R1が0.15以上の場合、浸漬ノズルからの吐出流を減速するのに十分で、かつ電磁攪拌の効率を落とさない程度の磁場分布が得られる。発明者らの研究結果によれば、R0及びR1のより好ましい範囲は、それぞれ0.22以下、及び0.20以上である。
【0057】
(第2発明:請求項2に係る発明)
第2発明は、1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて、鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、前記電磁攪拌磁場減衰率R0、R1は、前記第1発明と同様、0.30以下、0.15以上である。
【0058】
しかしながら、第2発明では、浸漬ノズル内を流下する溶鋼流を旋回流となし、この浸漬ノズルからの吐出流の方向を水平面に投影した平均角度を3°〜35°とする点が前記第1発明と相違する。
【0059】
第2発明において、1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルの内部を溶鋼が旋回しつつ流下し、吐出流の方向を水平面に投影した平均角度を3°〜35°と規定した理由を以下に説明する。なお、電磁攪拌磁場減衰率R0、R1は、前記第1発明と同様であるので、説明を省略する。
【0060】
前記角度が3°未満であると、吐出流が電磁攪拌によって無用に加速されて鋳型短辺に衝突する作用が強くなり、鋳型短辺側の凝固シェルの健全な成長が妨げられるからである。また、前記角度が35°を超えると、吐出流が鋳型長辺側の凝固シェルに衝突してその健全な成長を妨げる作用が強くなるからである。
【0061】
これに対して、前記角度が3°〜35°の場合は、浸漬ノズルからの吐出流は電磁攪拌によって適当に減速されるので、短辺側の凝固シェル成長が健全に保たれ、同時にメニスカスにおける吐出流形成流と電磁攪拌流との干渉も抑制される。
発明者らの研究によれば、前記角度のより好ましい範囲は、5°〜20°である。
【0062】
この浸漬ノズル内部の溶鋼が旋回しつつ流下する第2発明は、浸漬ノズル内部の溶鋼を旋回させない前記第1発明に比べると、吐出流が水平方向に広がる傾向があり、平均流速が低下する。従って、鋳型内流動を電磁攪拌のみによる水平方向循環流に近付けることができ、より好ましい成果が得られやすい。
【0063】
(第3発明:請求項3に係る発明)
第3発明は、前記第2発明において、更に以下の構成を有している。
浸漬ノズルにおける吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5とする。
【0064】
浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流、及び電磁攪拌により鋳型内に形成される溶鋼の循環流を水平面に投影した回転方向を同方向とする。そして、前記鋳型長辺に平行な角度を0°、浸漬ノズル内を流下する旋回流の回転方向を正の角度とした場合に、浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−20°〜30°とする。
【0065】
浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流の、下記(3)式で定義されるスワール数SWを0.2〜0.8とする。
SW=4W/9V …(3)
ここで、Vは平均下降流速(m/s)、Wは外周部における旋回周速度(m/s)であり、浸漬ノズルの吐出孔直上部の旋回流を角速度一定の強制渦であると仮定する。
【0066】
第3発明の範囲を上記のように規定した理由を以下に説明する。
内部の溶鋼が旋回しつつ流下する浸漬ノズルを用いる理由のひとつは、浸漬ノズル内の旋回流が吐出流の時間的安定性を高める作用を有するためである。
【0067】
そして、浸漬ノズル内旋回流の前記スワール数SWが0.2未満では、旋回流の作用が不十分となる。一方、0.8を超えるスワール数SWを得るには実現が困難なほどの多くのエネルギが必要になる。従って、第3発明では前記スワール数SWを0.2〜0.8としている。
【0068】
なお、浸漬ノズル内旋回流のスワール数SWについては、ISIJ International, Vol.40 (2000), 584頁や、鉄と鋼、Vol.93 (2007)、575頁に詳しく記載されている。
【0069】
また、前記吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5とするのは、0.8未満であると、吐出流速が大きくなりすぎるからである。一方、1.5を超えると、吐出孔間の浸漬ノズル側壁の断面積が小さくなって強度が不足するからである。
【0070】
これに対して、浸漬ノズル内の旋回流と、0.8〜1.5のB/D比を有する比較的幅が広い吐出孔を組み合わせれば、水平方向に穏やかな流速分布を持って吐出流が広がり、吐出流が形成する鋳型内流動が抑制されて、効果的に吐出流が減速される。
【0071】
その結果、鋳型内電磁攪拌流による無用な加速や鋳型内電磁攪拌流との干渉が現れず、電磁攪拌によって形成される水平面内循環流が支配的となり、鋳型内流動が均一化する。
発明者らの研究結果によれば、B/Dのより好ましい範囲は、0.9〜1.3である。
【0072】
さらに、浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流と、電磁攪拌により鋳型内に形成される溶鋼の循環流を水平面に投影した回転方向を同方向とし、浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−20°〜30°とするのは、以下の理由による。
【0073】
すなわち、第2発明のように、内部を流下する溶鋼が旋回しつつ流下する浸漬ノズルを用いた場合に、浸漬ノズルからの吐出流の方向を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるようにするためである。これは、浸漬ノズルからの吐出流が内部の旋回流の影響を受けて、旋回流の回転方向に5°〜25°程度、吐出孔側壁に対して振れて吐出することに起因する。
【0074】
例えば、前記の旋回流と循環流を水平面に投影した回転方向が同方向の場合に、浸漬ノズルの吐出孔側壁が鋳型長辺となす、水平面に投影した角度が−5°(旋回流の回転方向が正)で、吐出流が旋回方向に15°振れて吐出した場合、吐出孔側壁を投影した前記角度は、−5°+15°=10°(循環流の水平面に投影した回転方向が正)となる。
【0075】
このように、吐出流の振れ代に応じて、浸漬ノズル側壁を予め反対方向に振って設置することによって、吐出流の方向を狙い通りに制御するのが、第3発明の狙いである。
【0076】
(第4発明:請求項4に係る発明)
この第4発明の狙いとするところは、第3発明と同じである。すなわち、第4発明は、前記第2発明において、前記吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5とする点、前記スワール数SWを0.2〜0.8とする点は、前記第3発明と同じである。
【0077】
しかしながら、第4発明では、前記旋回流、及び前記循環流を水平面に投影した回転方向を逆方向となし、かつ、前記浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−60°〜−10°とする点が前記第3発明と相違する。
【0078】
第4発明において、前記の旋回流と循環流を水平面に投影した回転方向を逆方向となし、かつ、浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−60°〜−10°とするのは、以下の理由による。
【0079】
すなわち、前記の旋回流と循環流の回転方向と、浸漬ノズルの吐出孔側壁の平均角度を規定するのは、第2発明のように、浸漬ノズルからの旋回吐出流の方向を水平面に投影した平均角度を3°〜35°となるようにするためである。
【0080】
これは、浸漬ノズルからの吐出流が、内部の旋回流の影響を受けて、旋回流の回転方向に5°〜25°程度、吐出孔側壁に対して振れて吐出することに対応した調整である。
【0081】
例えば、前記の旋回流と循環流を水平面に投影した回転方向が逆方向の場合に、浸漬ノズルの吐出孔側壁が鋳型長辺となす、水平面に投影した角度が−40°(旋回流の回転方向が正)で、吐出流が旋回方向に20°振れて吐出した場合、吐出流の方向を水平面に投影した前記角度は、−(−40°+20°)=20°(循環流の水平面に投影した回転方向が正)となる。
【0082】
このように、第3発明と同じく、吐出流の振れ代に応じて、予め浸漬ノズル側壁を反対方向に振って設置することによって、吐出流の方向を狙い通りに制御するのが、第4発明の狙いである。
【0083】
(第5、6発明:請求項5、6に係る発明)
第5発明と第6発明は、従属する請求項によって便宜上分けたものであって、その意図するところは同じである。
【0084】
これら、第5、第6発明は、鋳型内電磁攪拌用の電磁コイル鉄心を配置する鋳型高さ方向の位置を、少なくとも前記浸漬ノズル吐出孔出口の下端よりも100mm下方〜前記浸漬ノズル吐出孔出口の上端よりも70mm上方の範囲を含む領域としている。
【0085】
そして、鋳型内電磁攪拌を適用しない条件での前記浸漬ノズルからの吐出流の吐出角度を水平〜下向30°となるようにする。
【0086】
第5、第6発明の範囲を上記のように規定した理由を以下に説明する。
鋳型内電磁攪拌コイルの鉄心を配置する鋳型高さ方向の位置を前記の領域とするのは、少なくともこの領域に鋳型内電磁攪拌コイルの鉄心が無ければ、浸漬ノズルからの吐出流を有効に駆動することができないからである。
【0087】
すなわち、浸漬ノズル吐出孔出口の下端から100mm下方の位置よりも上方に、前記鉄心の下端があると、下方向に広がった吐出流に駆動力が及ばないからである。一方、浸漬ノズル吐出孔出口の上端から70mm上方の位置よりも下方に、前記鉄心の上端位置があると、上方向に広がった吐出流に駆動力が及ばないからである。
【0088】
また、鋳型内電磁攪拌を適用しない条件での浸漬ノズルからの吐出流の吐出角度が、下向30°より吐出角度が大きくなると、上記のように配置された電磁攪拌コイルによって吐出流を有効に駆動することが難しくなるからである。
【0089】
一方、電磁攪拌コイルによって吐出流を有効に駆動するには、吐出角度は水平に近いほど好ましいが、一般に、吐出角度を水平よりも上向きに方向付けるのは困難であるため、適正な吐出角度の上限値は水平(0°)とする。
【0090】
ここで言う、吐出流を有効に駆動するとは、吐出流速を減速させ、電磁攪拌が形成する水平面内循環流が支配的となるように、鋳型内流動を制御することによって、鋳型内流動を均一化することである。
【0091】
発明者らの研究によれば、鋳型内電磁攪拌を適用しない場合の浸漬ノズル吐出孔からの吐出角度のより好ましい範囲は、下向10°〜下向25°の間である。
【0092】
なお、ここでいう上下方向の吐出角度については、吐出孔の下壁或いは上壁の角度とは必ずしも一致しないので、水モデル実験や数値流動解析等によって鋳型内の流速分布を求めて、吐出角度を見積もる必要がある。
【0093】
また、第5、第6発明の狙いとするところは、電磁攪拌によって吐出流を駆動する(実際には対向流にブレーキをかける)ことであるため、その容易な実現のためには吐出流速は小さいことが望まれる。従って、浸漬ノズル内の旋回流を活用して吐出流速を抑えた第2、第3、第4発明に従属する発明が、第1発明に従属する発明に対して実現が容易である。
【0094】
(第7発明:請求項7に係る発明)
第7発明は、前記第6発明において、更に以下の構成を有している。
浸漬ノズル吐出孔の上壁が、半径が30mm〜90mmの曲面で、前記吐出孔の下壁が、水平〜上向20°の角度を有し、前記吐出孔の出口高さH(mm)と溶鋼のスループットQ(ton/min)との比H/Qが9〜22である。さらに、前記吐出孔の出口高さH(mm)と前記出口幅Bとの比H/Bが0.6〜1.3である。
【0095】
第7発明の範囲を上記のように規定した理由を以下に説明する。
第7発明は、第2発明のような内部の溶鋼が旋回しつつ流下する浸漬ノズルを用いて、第6発明のように、浸漬ノズル吐出孔からの吐出角度が水平〜下向30°の間に調整する方法を主に規定するものである。
【0096】
第7発明において、浸漬ノズル吐出孔の上壁が、半径が30mm〜90mmの曲面とするのは、半径が30mmよりも小さいと吐出流が上壁から剥離して不安定になりやすくなるからである。一方、半径が90mmよりも大きいと吐出角度が下向きに大きくなり過ぎるからである。
【0097】
また、吐出孔の下壁が、水平〜上向20°の角度を有するようにするのは、水平よりも下向きであると、吐出流速が不安定に変動し易くなると共に、吐出角度が下向きに大きくなりすぎるからである。また、上向20°よりも上向きに大きな角度を有すると、吐出角度が水平よりも上向きになり易くなるからである。
【0098】
また、吐出孔の出口高さH(mm)と溶鋼のスループットQ(ton/min)との比H/Qを9〜22とするのは、9未満では吐出流速が大きくなり過ぎ、22を超えると吐出角度が下向きに大きくなり過ぎるからである。
発明者らの研究によれば、H/Qのより好ましい範囲は、12〜20である。
【0099】
また、吐出孔の出口高さH(mm)と出口幅Bとの比H/Bを0.6〜1.3とするのは、0.6未満では吐出孔面積が不足しがちで閉塞しやすくなるからである。一方、1.3を超えると、吐出孔面積が過大となって吐出方向が不安定に変動しやすくなるからである。
【実施例】
【0100】
以下に、本発明の実施例を示しながら、発明の内容をより具体的に説明する。
(実施例1)
第1発明の実施例(実施例1)を、図7及び図8を用いて説明する。
【0101】
実施例1では、図7に示したように、内径Dが90mmの円筒状の側壁の円周上180°対向する位置に、出口幅Bが90mm、出口高さHが100mmの2つの吐出孔3aを設けた浸漬ノズル3を用いた。この浸漬ノズル3の吐出孔3aの上下壁の角度は0°(水平)である。
【0102】
この浸漬ノズル3を、図8に示したように、電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型2の中央に設置する。図8に示した例では、電磁攪拌によって形成する鋳型内循環流の水平面に投影した回転方向は、反時計回り方向である。
【0103】
浸漬ノズル3は、前記鋳型内循環流の水平面に投影した回転方向を正とした場合、図8に示すように、その吐出孔3aの側壁が10°振って設置されており、それによって吐出流も平均10°振れて吐出する。この場合、浸漬ノズル3の内部を流下する溶鋼は旋回していないので、吐出方向と吐出孔3aの側壁角度は一致する。
【0104】
鋳型2の幅は1600mm、厚みは270mmで、鋳型2を構成する銅板の厚さは40mmである。鋳型2と電磁攪拌コイルの間には、厚さが70mmのステンレス鋼製のバックアッププレートが存在する。
【0105】
ステンレス鋼、銅、溶鋼の導電率σ1〜σ3は、それぞれ1.41×106(S/m)、3.75×107(S/m)、7.14×105(S/m)である。また、透磁率μ1〜μ3は、ステンレス鋼、銅、溶鋼の何れも1.257×10−6(H/m)である。従って、電磁攪拌の印加周波数を4.0Hzとすると、ωは8π(rad./s)である。
【0106】
これらの値を用いて、前記(1)式によってR0を算出すると、R0=0.17となる。同様に、前記(2)式によってR1を算出すると、R1=0.27となり、いずれも第1発明の要件を満たす。
【0107】
(実施例2)
第2、3発明の実施例(実施例2)について説明する。
実施例2は、浸漬ノズルを除く条件は、前記実施例1と同じである。
【0108】
浸漬ノズル3は、図9に示した形状、寸法の、捩り板型旋回羽根3bを用いて、内部の溶鋼を上方から見て反時計回りに旋回しつつ流下させるものを用いた。捩り板型旋回羽根3bは、直径D1が内装部の内径と同じ100mm、高さLが150mm、羽根の厚みが12.5mm、捩り角が180°である。また、浸漬ノズル3の吐出孔3aの直上の内径D2は82mm、吐出孔3aの出口幅Bは80mm、出口高さHは90mm、上壁の曲面の半径は60mmである。
【0109】
上記の浸漬ノズル3に、4.4ton/min相当の溶鋼を流すと、吐出孔3aの直上部において旋回流はほぼ角速度一定の強制渦状の流速分布となり、そのスワール数SWは、0.3となることを数値流動解析及びフルスケールの水モデル実験によって確認した。また、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口幅Bと吐出孔部の内径Dとの比B/Dは、80/82≒0.98となる。
【0110】
また、予め行った数値流動解析及びフルスケールの水モデル実験によれば、溶鋼スループット4.4ton/minの条件で、電磁攪拌を印加しなかった場合、吐出流は、この浸漬ノズル3の吐出孔3aの側壁に対して平均13°旋回流の回転方向に振れて吐出した。
【0111】
この浸漬ノズル3を、図10に示したように、吐出孔3aの側壁が鋳型2の長辺2aと平行になるように設置し、浸漬ノズル内の旋回流と鋳型内循環流の水平面に投影した回転方向が同方向になるように電磁攪拌すると、吐出流は13°振れて吐出した。
よって、実施例2は第2発明及び第3発明の構成を満たす。
【0112】
(実施例3)
第4発明の実施例(実施例3)について説明する。
電磁攪拌の方向を除く条件は、前記実施例2と同じである。また、浸漬ノズル3は実施例2と同じものを水平方向の角度を変えて設置した。従って、第4発明のスワール数SWの規定、及び吐出孔の出口幅Bと、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径Dの比B/Dの規定は満たしている。
【0113】
図9に示した実施例2の浸漬ノズルを、溶鋼スループット4.4ton/minの条件で、図11に示したように、吐出孔3aの側壁が鋳型2の長辺2aとなす角度が−25°になるように設置し、前記の旋回流と循環流の水平面に投影した回転方向が逆方向になるように電磁攪拌すると、吐出流は、12°振れて吐出した。
よって、実施例3は第2発明及び第4発明の構成を満たす。
【0114】
(実施例4)
第5発明の実施例(実施例4)について説明する。
図7に示した浸漬ノズル3を、図8に示したように鋳型2に設置した場合の、鋳型2の長辺2a面に投影した電磁攪拌コイル1の鉄心と浸漬ノズル3の配置を図12に示す。
【0115】
図12に示したように、鋳型2内の電磁攪拌コイル1の鉄心の、鋳型高さ方向の位置は、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口下端よりも100mm下方〜浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口上端よりも70mm上方の範囲を含む領域である。
【0116】
具体的には、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口下端よりも230mm下方〜浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口上端よりも120mm上方の範囲に前記鉄心を設置した。
よって、第5発明の鉄心の高さ範囲の規定を満たす。
【0117】
また、図12に示したように、図7に示した浸漬ノズル3を適用した場合に、平均吐出角度は下向10°となり、第5発明の吐出角度の規定を満たす。この吐出角度は、数値流動解析及びフルスケール水モデル実験によって確認した。なお、溶鋼スループットは、5.7ton/minである。
よって、実施例4は、第1発明、第5発明の構成を満たす。
【0118】
(実施例5)
第7発明の実施例(実施例5)について説明する。
図9に示したノズルを、図10に示したように鋳型2に設置した場合の、鋳型2の長辺面に投影した電磁攪拌用コイル1の鉄心と浸漬ノズル2の配置を図13に示す。
【0119】
図13に示したように、鋳型内電磁攪拌コイル1の鉄心の鋳型高さ方向の位置は、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口下端よりも100mm下方〜浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口上端よりも70mm上方の範囲を含む領域である。
【0120】
具体的には、浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口下端よりも260mm下方〜浸漬ノズル3の吐出孔3aの出口上端よりも100mm上方の範囲にあり、第6発明の鉄心の高さ範囲の規定を満たす。
【0121】
また、図13に示したように、図9の浸漬ノズル3を適用した場合に、平均吐出角度は下向23°となり、第6発明の吐出角度の規定を満たす。この吐出角度は、数値流動解析及び水モデル実験によって確認した。なお、溶鋼スループットは、5.7ton/minである。
【0122】
図9に示した浸漬ノズル3は、吐出孔3aの上壁は半径が60mmの形状、下壁が水平であり、吐出孔3aの高さH(mm)とスループットQ(ton/min)との比H/Qが90/5.7=15.8である。また、前記高さHと吐出孔3aの出口幅Bとの比H/Bが90/80=1.125と、第7発明の吐出孔3aの形状の規定を満たす。
【0123】
このように、図13に示した実施例5は、第2、第3、第6及び第7発明を満たす実施例である。
この実施例5は、最も多くの発明を満たす実施例であるので、示した全ての実施例の中で、鋳型内流動の安定性および均一性に関して最良の結果が得られる。
【0124】
上記のように、本発明は、浸漬ノズルからの吐出流と鋳型内電磁攪拌流との整合性を改善し、鋳型内流動を安定かつ均一で、適正な流動を備えた理想的状態に保つことができる。
【0125】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0126】
図12や図13に示したように、本発明では、電磁攪拌コイル鉄心の鋳型長辺面への投影面積を大きく設計できるので、同じコイル−鉄心系を、電磁ブレーキに用いることも可能である。
【0127】
従って、本発明は、上記例のように、電磁攪拌と電磁ブレーキをひとつのコイル−鉄心系で兼用する場合に、真価を発揮すると言えるが、電磁攪拌専用のコイルを使用しても良い。
【0128】
また、実施例2では、浸漬ノズルの旋回流付与手段として、捩り板型旋回羽根を用いたものを示したが、特開2007−69236号の図2に示されたような斜めの溶鋼通過孔を多数配した耐火物製構造体を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上の本発明は、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼の何れの溶鋼を連続鋳造する際にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】電磁攪拌コイルを鋳型の長辺の片側にのみ設置した場合に作用するローレンツ力の説明図である。
【図2】周波数0.5Hzの場合のローレンツ力の分布を示した図である。
【図3】図1のA−A’線上における鋳型厚み方向のローレンツ力分布の比較を示した図である。
【図4】図5のB−B’線上における鋳型厚み方向のローレンツ力の分布を示した図である。
【図5】電磁攪拌コイルを鋳型の長辺の両側に設置した場合に作用するローレンツ力の説明図である。
【図6】数値解析によって求めた表1に示すローレンツ力L及び磁場の減衰率Rを、(1)式及び(2)式を用いて簡便に求めた値との関係を示した図である。
【図7】実施例1に用いた浸漬ノズルの吐出孔部を示す図で、(a)は吐出孔を側面から見た図、(b)は吐出孔を正面から見た図である。
【図8】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルの配置状態を示す実施例1の平面図である。
【図9】実施例2に用いた浸漬ノズルを示す図で、(a)は吐出孔を側面から見た断面図、(b)は吐出孔を正面から見た図である。
【図10】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルの配置状態を示す実施例2の平面図である。
【図11】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルの配置状態を示す実施例3の平面図である。
【図12】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルと電磁攪拌コイルの配置状態を示す実施例4の側面図である。
【図13】電磁攪拌コイル付きのスラブ連続鋳造用の鋳型への浸漬ノズルと電磁攪拌コイルの配置状態を示す実施例5の側面図である。
【符号の説明】
【0131】
1 電磁攪拌コイル
2 鋳型
2a 長辺
2b 短辺
3 浸漬ノズル
3a 吐出孔
3b 旋回羽根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、
溶鋼供給側の鋳型上方から見て鋳型長辺に平行な角度を0°、前記電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とした場合に、内部を流下する溶鋼流に旋回を付与しない浸漬ノズルを、吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置し、
下記(1)式で定義する鋳型の厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下で、
かつ下記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上となるようにして連続鋳造することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
R0=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2]
・exp[−{(ω・σ3・μ3)/2}1/2z3] …(1)
R1=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2] …(2)
ここで、σは導電率(S/m)、μは透磁率(H/m)、zは厚み(m)を示し、添え字の1はステンレス鋼、2は銅、3は溶鋼を示す。また、(1)式におけるz3は、鋳型厚みの半分とする。ω(rad./s)は、印加周波数の角速度換算値である。
【請求項2】
1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、
前記鋳型長辺に平行な角度を0°、前記電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とした場合に、内部を流下する溶鋼流を旋回流となす浸漬ノズルを、吐出孔から流出する溶鋼流の方向を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置し、
前記(1)式で定義する鋳型の厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下で、
かつ前記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上となるようにして連続鋳造することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【請求項3】
前記浸漬ノズルにおける吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5となすと共に、
前記浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流、及び電磁攪拌により鋳型内に形成される溶鋼の循環流を水平面に投影した回転方向を同方向となし、
かつ、前記鋳型長辺に平行な角度を0°、前記旋回流の回転方向を正の角度とした場合に、前記浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−20°〜30°となし、
前記旋回流の、下記(3)式で定義されるスワール数SWを0.2〜0.8として連続鋳造することを特徴とする請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
SW=4W/9V …(3)
ここで、Vは平均下降流速(m/s)、Wは外周部における旋回周速度(m/s)であり、浸漬ノズルの吐出孔直上部の旋回流を角速度一定の強制渦であると仮定する。
【請求項4】
前記浸漬ノズルにおける吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5となすと共に、
前記浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流、及び電磁攪拌により鋳型内に形成される溶鋼の循環流を水平面に投影した回転方向を逆方向となし、
かつ、前記鋳型長辺に平行な角度を0°、前記旋回流の回転方向を正の角度とした場合に、前記浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−60°〜−10°となし、
前記旋回流の、前記(3)式で定義されるスワール数SWを0.2〜0.8として連続鋳造することを特徴とする請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
【請求項5】
鋳型内電磁攪拌用の電磁コイル鉄心を配置する鋳型高さ方向の位置を、少なくとも前記浸漬ノズル吐出孔出口の下端よりも100mm下方〜前記浸漬ノズル吐出孔出口の上端よりも70mm上方の範囲を含む領域とし、
鋳型内電磁攪拌を適用しない条件での前記浸漬ノズル吐出孔から流出する溶鋼流の吐出角度を水平〜下向30°となるようにすることを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
【請求項6】
鋳型内電磁攪拌用の電磁コイル鉄心を配置する鋳型高さ方向の位置を、少なくとも前記浸漬ノズル吐出孔出口の下端よりも100mm下方〜前記浸漬ノズル吐出孔出口の上端よりも70mm上方の範囲を含む領域とし、
鋳型内電磁攪拌を適用しない条件での前記浸漬ノズル吐出孔から流出する溶鋼流の吐出角度を水平〜下向30°となるようにすることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の鋼の連続鋳造方法。
【請求項7】
前記浸漬ノズル吐出孔の上壁が、半径が30mm〜90mmの曲面であり、
前記吐出孔の下壁が、水平〜上向20°の角度を有し、
前記吐出孔の出口高さH(mm)と溶鋼のスループットQ(ton/min)との比H/Qが9〜22であり、
かつ前記吐出孔の出口高さH(mm)と前記出口幅Bとの比H/Bが0.6〜1.3であることを特徴とする請求項6に記載の鋼の連続鋳造方法。
【請求項1】
1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、
溶鋼供給側の鋳型上方から見て鋳型長辺に平行な角度を0°、前記電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とした場合に、内部を流下する溶鋼流に旋回を付与しない浸漬ノズルを、吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置し、
下記(1)式で定義する鋳型の厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下で、
かつ下記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上となるようにして連続鋳造することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
R0=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2]
・exp[−{(ω・σ3・μ3)/2}1/2z3] …(1)
R1=exp[−{(ω・σ1・μ1)/2}1/2z1]・exp[−{(ω・σ2・μ2)/2}1/2z2] …(2)
ここで、σは導電率(S/m)、μは透磁率(H/m)、zは厚み(m)を示し、添え字の1はステンレス鋼、2は銅、3は溶鋼を示す。また、(1)式におけるz3は、鋳型厚みの半分とする。ω(rad./s)は、印加周波数の角速度換算値である。
【請求項2】
1対の吐出孔を側壁に有する浸漬ノズルを用いて鋳型内に供給した溶鋼に電磁攪拌を実施しつつ鋼を連続鋳造する方法であって、
前記鋳型長辺に平行な角度を0°、前記電磁攪拌によって形成される溶鋼の鋳型内循環流を水平面に投影した回転方向を正とした場合に、内部を流下する溶鋼流を旋回流となす浸漬ノズルを、吐出孔から流出する溶鋼流の方向を水平面に投影した平均角度が3°〜35°となるように設置し、
前記(1)式で定義する鋳型の厚み中央における電磁攪拌磁場減衰率R0が0.30以下で、
かつ前記(2)式で定義する鋳型長辺面における電磁攪拌磁場減衰率R1が0.15以上となるようにして連続鋳造することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【請求項3】
前記浸漬ノズルにおける吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5となすと共に、
前記浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流、及び電磁攪拌により鋳型内に形成される溶鋼の循環流を水平面に投影した回転方向を同方向となし、
かつ、前記鋳型長辺に平行な角度を0°、前記旋回流の回転方向を正の角度とした場合に、前記浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−20°〜30°となし、
前記旋回流の、下記(3)式で定義されるスワール数SWを0.2〜0.8として連続鋳造することを特徴とする請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
SW=4W/9V …(3)
ここで、Vは平均下降流速(m/s)、Wは外周部における旋回周速度(m/s)であり、浸漬ノズルの吐出孔直上部の旋回流を角速度一定の強制渦であると仮定する。
【請求項4】
前記浸漬ノズルにおける吐出孔の出口幅B(m)と、吐出孔部の浸漬ノズル本体の内径D(m)との比B/Dを0.8〜1.5となすと共に、
前記浸漬ノズル内を流下する溶鋼の旋回流、及び電磁攪拌により鋳型内に形成される溶鋼の循環流を水平面に投影した回転方向を逆方向となし、
かつ、前記鋳型長辺に平行な角度を0°、前記旋回流の回転方向を正の角度とした場合に、前記浸漬ノズルの吐出孔側壁を水平面に投影した平均角度を−60°〜−10°となし、
前記旋回流の、前記(3)式で定義されるスワール数SWを0.2〜0.8として連続鋳造することを特徴とする請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
【請求項5】
鋳型内電磁攪拌用の電磁コイル鉄心を配置する鋳型高さ方向の位置を、少なくとも前記浸漬ノズル吐出孔出口の下端よりも100mm下方〜前記浸漬ノズル吐出孔出口の上端よりも70mm上方の範囲を含む領域とし、
鋳型内電磁攪拌を適用しない条件での前記浸漬ノズル吐出孔から流出する溶鋼流の吐出角度を水平〜下向30°となるようにすることを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
【請求項6】
鋳型内電磁攪拌用の電磁コイル鉄心を配置する鋳型高さ方向の位置を、少なくとも前記浸漬ノズル吐出孔出口の下端よりも100mm下方〜前記浸漬ノズル吐出孔出口の上端よりも70mm上方の範囲を含む領域とし、
鋳型内電磁攪拌を適用しない条件での前記浸漬ノズル吐出孔から流出する溶鋼流の吐出角度を水平〜下向30°となるようにすることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の鋼の連続鋳造方法。
【請求項7】
前記浸漬ノズル吐出孔の上壁が、半径が30mm〜90mmの曲面であり、
前記吐出孔の下壁が、水平〜上向20°の角度を有し、
前記吐出孔の出口高さH(mm)と溶鋼のスループットQ(ton/min)との比H/Qが9〜22であり、
かつ前記吐出孔の出口高さH(mm)と前記出口幅Bとの比H/Bが0.6〜1.3であることを特徴とする請求項6に記載の鋼の連続鋳造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−220122(P2009−220122A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64522(P2008−64522)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
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