説明

鋼板張断熱パネル

【課題】断熱性能を向上し、日射による熱を回収して有効利用できるようにした鋼板張断熱パネルを提供することにある。
【解決手段】厚さと、厚さより大きい幅及び長さを有する断熱材12と、断熱材12の厚さ方向の両面を覆う第1及び第2鋼板14,16からなるパネル本体18と、第1及び第2鋼板14,16のうちの一方の鋼板の断熱材12と反対の面に断熱材12の厚さ方向に一定の間隔をおいて設けられた第3鋼板22と、一方の鋼板14と第3鋼板22との間に設けられ外部に連通し外気が流通する空間部24とにより鋼板張断熱パネル10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外装壁などに用いられる鋼板張断熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、断熱材に塗装鋼板を張った鋼板張断熱パネルは(特許文献1)、住宅、事務所ビル、冷凍倉庫などの外装壁に用いられている。
【0003】
以下、従来の鋼板張断熱パネルについて、図4を参照して説明する。
従来の鋼板張断熱パネル40は、図4に示すように、屋外側の鋼板42と、屋内側の鋼板44と、この両鋼板42と44の間に挿入されたウレタンフォームなどの断熱材46とから構成される。また、屋外側の鋼板42の外気と接する表面には、日射による熱を遮断する遮熱塗装50などが施され、屋内側の鋼板44の表面には石膏ボード48が設けられている。
【0004】
しかし、上記のような従来の鋼板張断熱パネル40は、2枚の鋼板42、44の間に断熱材46を挟む構造であるため、その熱的な機能は断熱のみである。したがって、この鋼板張断熱パネル40を冷凍倉庫などに外装壁に用いた場合、鋼板張断熱パネル40の屋外側表面に結露が生じ、鋼板張断熱パネル40の外側壁面が汚れ易くなるという問題がある。
また、従来の鋼板張断熱パネル40が建築物の壁面に隙間なく並べて取り付けられた場合、鋼板張断熱パネル同士の接合部において、鋼板が熱橋となり、屋外の熱が屋内に伝達されてしまうという問題が生じる。
また、遮熱効果と意匠性を向上するために鋼板張断熱パネルの屋外側表面に白色などの遮熱塗装を施した場合は、日射による熱を遮断し得るものの、遮熱塗装50面が日射を反射してしまい、その反射光が車両の運転や通行者に悪影響を及ぼす問題がある。
【0005】
一方、従来の鋼板張断熱パネル40では、その断熱設計が複雑になるという問題がある。
例えば、図5に示すように、実スケールで日射の影響を受けた板張断熱パネル40の熱貫流率Kを求めるには、板張断熱パネル40を通過する熱量Qと屋内外の温度差(θ−θ)を求める必要がある。熱貫流率Kは次の式(1)で与えられる。
K=Q/(θ−θ)×A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ここで、Aは外壁面の面積(m)である。
また、熱量Qは、複合壁の内部に熱流板を挿入することで計測される。
屋内外の気温差(θ−θ)のうち、屋内の気温θ1は温度センサーに日射が当たらないように、遮蔽筒で覆うことで計測される。
相当外気温θ8は屋外側鋼板42の表面近傍に温度センサーを設置することで計測される。ただし,屋外側鋼板42の表面から温度センサーまでの距離は,10mm以下である。数十m×数十mの実スケールの壁面を対象にした場合,屋外側鋼板42の表面近傍における風速の変動は大きい。そのため、相当外気温θ8の測定点数は膨大な数となることが想像できる。したがって、従来の鋼板張断熱パネルの熱貫流率Kの代表値または近似値を求めることは、非常に困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−002050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、断熱性能を向上し、日射による熱を回収して有効利用できるようにした鋼板張断熱パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、鋼板張断熱パネルであって、厚さと、厚さより大きい幅及び長さを有する断熱材と、前記断熱材の厚さ方向の両面を覆う第1及び第2鋼板からなるパネル本体と、前記第1及び第2鋼板のうちの一方の鋼板の前記断熱材と反対の面に前記断熱材の厚さ方向に一定の間隔をおいて設けられた第3鋼板と、前記一方の鋼板と前記第3鋼板との間に設けられ外部に連通し外気が流通する空間部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鋼板張断熱パネルによれば、断熱性能を向上でき、日射による熱を空気または水を用いて回収し、温風または温水として有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる鋼板張断熱パネルの一部を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態2にかかる鋼板張断熱パネルの一部を示す斜視図である。
【図3】本発明にかかる鋼板張断熱パネルの熱貫流率の概念を示す説明図である。
【図4】従来における鋼板張断熱パネルの一部を示す斜視図である。
【図5】従来における鋼板張断熱パネルの熱貫流率の概念を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明にかかる鋼板張断熱パネルを建築物の外壁に適用した場合の実施の形態1について図1を参照して詳細に説明する。
鋼板張断熱パネル10は、図1に示すように、厚さと、厚さより大きい幅及び長さを有する断熱材12と、断熱材12の厚さ方向の両面を覆う第1及び第2鋼板14,16からなるパネル本体18と、第1及び第2鋼板14,16のうち一方の鋼板、例えば第1鋼板14の断熱材12と反対の面(屋外側の面)に、断熱材12の厚さ方向に一定の間隔を保持する複数のスペーサ20を介して設けられた第3鋼板22とを備える。さらに、第1鋼板14と第3鋼板22との間には、外部に連通し外気が流通する空間部24が設けられている。
第1鋼板14と第3鋼板22とは同じ大きさを有し、空間部24は、第1鋼板14と第3鋼板22との間の全域にわたって設けられている。
【0012】
第3鋼板22の空間部24と反対の面(屋外側の面)には、日射を吸収する吸熱性に優れ、かつ艶消し性のある黒色や反射率の低い材質などからなる吸熱層26が塗装など従来公知の手段により形成されている。さらに、第1鋼板14の空間部24と接する面には、アルミ箔などの熱反射性に優れた材質などからなる遮熱層28が塗装など従来公知の手段により形成されている。
また、第2鋼板16の断熱材12と反対の面(屋内側の面)には、石膏ボードなどの耐熱性ボード30が接着剤などの従来公知の手段により張り付けられている。
【0013】
断熱材12は、発泡ウレタンなどの発泡樹脂系のものや、ロックウールなどの鉱製繊維系のような従来公知の材料が使用可能である。また、第1及び第2鋼板14,16には、例えば、ガルバニウム鋼板などのような従来公知の材料が使用可能である。断熱材12の表面への第1及び第2鋼板14,16の張り付けは、例えば、接着剤を用いるなど従来公知の手段によりなされる。
なお、断熱材12の厚さは、10〜500mmであり、幅は、0.9〜20mであり、長さは、0.5〜20mである。また、第1及び第2鋼板14,16の厚さは、0.4〜50mmであり、第2鋼板22の厚さは、0.4〜50mmである。
【0014】
スペーサ20は、断熱性の高い合成樹脂材などの材質から構成されもので、パネル本体18の長さ方向(図1に示す矢印Yの方向)の全長にわたり延在するチャンネル形状を呈している。このスペーサ20はパネル本体18の幅方向(図1に示す矢印Xの方向)に一定の間隔をおいて複数平行に配設される。これにより、第3鋼板22はスペーサ20を介して第1鋼板14に取着され、鋼板張断熱パネル10の上下端で大気に連通し外気が流通する空間部24が形成される。
【0015】
なお、本発明の鋼板張断熱パネル10に使用されるスペーサ20は図1に示す形状のものに限定されず、空間部24を形成するのに必要な一定の長さを有する円柱状や角柱状または円筒状、角筒状の複数のスペーサを二次元方向にマトリクス状に配列しても良い。
また、空間部24は、鋼板張断熱パネル10の下端から上端に向けて蛇行状に延在する形状のものであっても良い。
【0016】
上記のような鋼板張断熱パネル10において、第3鋼板22の外表面に日射が当たると、その日射による熱が吸熱層26で吸収され、第3鋼板22を通して空間部24に伝達される。空間部24では、その内部に充満している空気が伝達熱エネルギーを吸収することで第3鋼板22を内側から冷却すると同時に空気自体が加温される。これにより、空間部24内の空気に上昇気流による流れが発生する。これに伴い、外気が空間部24の下端に設けられた空気取り入れ口24aから順次吸い込まれ、そして、加温された空気は空間部24の上端に設けられた空気排出口24bを通して大気に排出される。この場合、空間部24内に虫または鳥などの生き物が侵入しないように,空気取り入れ口24aや空気排出口24bに防虫ネット(図示省略)を取り付けることが望ましい。
【0017】
このように本実施の形態1に示す鋼板張断熱パネル10によれば、第1鋼板14と第3鋼板22との間に、大気に連通し外気が流通する空間部24が設けられているので、空間部24内を流通する空気によって第3鋼板22を内側から冷却することができる。これにより、鋼板張断熱パネル10の断熱性能を向上できる。
また、第1鋼板14の空間部24と接する面には遮熱層28が設けられているので、熱橋となるパネル本体18の鋼板の温度を低減でき、鋼板張断熱パネル10全体の断熱性能を更に向上できる。
【0018】
また、本実施の形態1に示す鋼板張断熱パネル10によれば、遮熱層28を有するパネル本体18により日射による熱流束が遮断され、空間部24および第3鋼板22の温度は外気に比べ高温となるが、この熱源を空間部24内を流通する空気を利用して回収することができる。すなわち、空間部24内を流通する空気を上記熱源エネルギーで加温することにより、温風として建築物の暖房やヒートポンプタイプの電気温水器に有効利用することができる。特に、冬期では空間部24中に空気を流して温風を生成し、これを建物で利用することにより、建物内における暖房に必要なエネルギーを減らすことができる。
【0019】
本実施の形態1において、熱源回収を積極的に行う場合は,第3鋼板22の外表面に黒色または明度の低い吸熱層26を設けることで積極的に日射を吸収し,鋼板張断熱パネル10から反射する熱を抑えることができる。これにより、鋼板張断熱パネル10を用いた建物近傍において、日射の照り返しが少なくなり、建物近傍における歩行者に対する熱環境が改善され、屋外の温熱環境を緩和できる。さらに、建築物の断熱性能を向上させ、建物内部で消費する化石エネルギーを低減でき、街全体の熱容量の低減を図り、ヒートアイランド対策に寄与でき、かつ建築物によるCOの削減を図ることができる。
【0020】
(実施の形態2)
本発明にかかる鋼板張断熱パネルを建築物の外壁に適用した場合の実施の形態2について図2を参照して説明する。
この図2に示す鋼板張断熱パネル10において、図1に示す場合と同一構成要素には、図1と同一の符号を付してその構成説明を省略し、図1と異なる部分について説明する。
図2において、図1と異なる部分は、空間部24内に、空間部24内を図2に示す矢印Yの方向に貫通する方向に延在して送水管32を配設したところにある。送水管32には水道水が供給され、この送水管32内を流れる水が第3鋼板22を通して伝達される日射による熱で加温されるように構成されている。
【0021】
上記のように構成された鋼板張断熱パネル10において、第3鋼板22の外表面に日射が当たると、その日射による熱が吸熱層26で吸収され、第3鋼板22を通して空間部24に伝達される。空間部24では、その内部に充満している空気が伝達熱エネルギーを吸収することで第3鋼板22を内側から冷却すると同時に空気自体が加温される。更に、加温された空気は送水管32と接触することで、その熱エネルギーを送水管32を通して送水管32内を流れる水に伝達し加温する。そして、加温された水は電気給湯器などに供給される。また、空間部24内の空気が加温されると、空間部24内に空気の上昇気流による流れが発生する。これに伴い、外気が空間部24の下端に設けられた空気取り入れ口24aから順次吸い込まれ、加温された空気は空間部24の上端に設けられた空気排出口24bを通して大気に排出される。この場合、空間部24は、空間部24内を流通する外気と送水管32内を流れる水によって冷却される。
【0022】
このような実施の形態2に示す鋼板張断熱パネル10によれば、上記実施の形態1に示す場合と同様な効果が得られるほか、空間部24が空間部24内を流通する外気と送水管32内を流れる水との両方によって冷却されるので、鋼板張断熱パネル10の断熱性能を更に向上できる。
また、本実施の形態2に示す鋼板張断熱パネル10によれば、遮熱層28を有するパネル本体18により日射による熱流束が遮断され、空間部24および第3鋼板22の温度は外気に比べ高温となるため、この熱源を送水管32内を流れる水を利用して回収することができる。すなわち、夏期など,空間部24が高温となる場合、送水管32を用いて温水を生成することができ、未利用エネルギーの活用と建物断熱性能の向上を両立できる。
【0023】
次に、本実施の形態2に示す鋼板張断熱パネル10は、その断熱設計が単純化できることについて、図3を参照して説明する。
本実施の形態2に示す鋼板張断熱パネル10においては、屋外側の第3鋼板22で蓄熱される熱量は,送水管32の温水または空間部24内を流れる空気により吸熱できる。そのため、外気温θ7と空間部24内の気温θ9は、概ねθ7=θ9となる。
従って、本実施の形態2に示す鋼板張断熱パネル10の熱貫流率Kは次の式(2)で与えられる。
K=Q/(θ−θ)×A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
上記式(2)から明らかなように、外気温θ7と空間部24内の気温θ9は、概ね等しいから、空間部24内の気温θ9を1箇所計測するだけで済み、その結果、鋼板張断熱パネル10の断熱設計を単純化できる。
【0024】
なお、上記実施の形態では、鋼板張断熱パネル10を建築物の外壁に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、建築物の屋根の表面材に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
10…鋼板張断熱パネル、12…断熱材、14…第1鋼板、16…第2鋼板、18…パネル本体、20…スペーサ、22…第3鋼板、24…空間部、26…吸熱層、28…遮熱層、30…耐熱性ボード、32…送水管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さと、厚さより大きい幅及び長さを有する断熱材と、前記断熱材の厚さ方向の両面を覆う第1及び第2鋼板からなるパネル本体と、
前記第1及び第2鋼板のうちの一方の鋼板の前記断熱材と反対の面に前記断熱材の厚さ方向に一定の間隔をおいて設けられた第3鋼板と、
前記一方の鋼板と前記第3鋼板との間に設けられ外部に連通し外気が流通する空間部と、
を備えることを特徴とする鋼板張断熱パネル。
【請求項2】
前記一方の鋼板と前記第3鋼板とは同じ大きさを有し、前記空間部は、前記一方の鋼板と前記第3鋼板との間の全域にわたって設けられていることを特徴とする請求項1記載の鋼板張断熱パネル。
【請求項3】
前記第3鋼板はスペーサを介して前記一方の鋼板に取着されることを特徴とする請求項1または2記載の鋼板張断熱パネル。
【請求項4】
前記第3鋼板の前記空間部と反対の面に、日射を吸収する吸熱層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の鋼板張断熱パネル。
【請求項5】
前記一方の鋼板の前記空間部と接する面に遮熱層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の鋼板張断熱パネル。
【請求項6】
前記空間部に送水管が配設され、前記送水管を流れる水が前記第3鋼板を通して伝達される日射による熱で加温されることを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の鋼板張断熱パネル。
【請求項7】
前記第1及び第2鋼板のうちの他方の鋼板の前記断熱材と反対の面に耐火ボードが設けられていることを特徴とする請求項1乃至6に何れか1項記載の鋼板張断熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−163024(P2011−163024A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27730(P2010−27730)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】