鋼管杭の杭本体連結構造
【課題】施工現場で杭の連結作業を簡単容易にしかも雨天等の天候に左右されることなく行うことができる鋼管杭の杭本体連結構造を提供する。
【解決手段】下方の杭本体1の上端部に上方の杭本体1の下端部を連結するにあたり、下半部が下方の杭本体1上端部に内嵌合され且つ上半部が上方の杭本体1の下端部に内嵌合される円筒状の連結部材Nを設け、下方の杭本体1の上端部及び上方の杭本体1の下端部に周方向一定間隔おきにボルト挿通孔7を設け、連結部材Nの上端部側及び下端部側に、連結部材Nを杭本体1の連結端部に内嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8を設けると共に、連結部材Nの内周面側には、各連結部材側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で連結部材Nの上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部9を設ける。
【解決手段】下方の杭本体1の上端部に上方の杭本体1の下端部を連結するにあたり、下半部が下方の杭本体1上端部に内嵌合され且つ上半部が上方の杭本体1の下端部に内嵌合される円筒状の連結部材Nを設け、下方の杭本体1の上端部及び上方の杭本体1の下端部に周方向一定間隔おきにボルト挿通孔7を設け、連結部材Nの上端部側及び下端部側に、連結部材Nを杭本体1の連結端部に内嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8を設けると共に、連結部材Nの内周面側には、各連結部材側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で連結部材Nの上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部9を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭において下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結するための杭本体連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭は、鉛直及び水平方向にきわめて大きな耐力を有し、杭先端側の支持層に十分に力が伝達され、大きな支持力が得られ、また軽量で破損の心配がなく、運搬や取り扱いが容易なことから、近年その需要は著しく増大している。
【0003】
建造物等の基礎に使用される鋼管杭としては、杭本体下端部に取り付けた掘削ヘッドに螺旋翼を設けた拡底型、掘削ヘッドと共に杭本体の中間所要部に螺旋翼を設けた多翼型、また杭本体の下端部に掘削ヘッドのみ取り付けたストレート型の3種類の鋼管杭が一般に知られているが、その何れの鋼管杭も、杭打ち機械による杭長さの制約、施工現場での置き場スペースによる制約、運送時の長さの制約から、最大長さは6〜8mとされ、これらを越える長さの杭については、掘削ヘッドをもたない杭本体のみからなる所定長さの杭を地盤に打ち込みながら逐次継ぎ足して使用されるようになっている。
【0004】
軟弱地盤での杭打ち機械による鋼管杭の打ち込み作業においては、杭先端部が支持層に達するまで所要本数の杭を逐次継ぎ足してゆく、つまり先に打ち込んだ杭の上端部に後続の杭の下端部を逐次連結してゆくわけであるが、この連結にあたり、従来では、先行杭の上端部に後続杭の下端部を溶接によって連結していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように従来の鋼管杭の継ぎ足し作業は、先行する杭本体の上端部に後続の杭本体の下端部を溶接によって連結していることから、溶接用の電源や発電機等が必要となってコストアップの要因となり、また雨天時には感電等の恐れがあるため作業が行えず、更に溶接にはある程度熟練した溶接技術者が必要であるためコストが高くつく、と言うような問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、施工現場で杭の連結作業を簡単容易に行うことができ、また雨天等の天候に左右されることなく作業が行うことができる鋼管杭の杭本体連結構造を提供することを目的とする。尚、本発明に係る鋼管杭の杭本体連結構造は、杭先端部が支持層に達するまで所定長さの杭を所要本数逐次継ぎ足してゆく場合の杭本体どうしの連結構造の他に、鋼管杭を製造するにあたり、1本の鋼管杭の杭本体を複数に分割して、その分割体どうしを連結する場合の連結構造も含むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の鋼管杭の杭本体連結構造は、下方の杭本体1の上端部に上方の杭本体1の下端部を連結するにあたり、下半部が下方の杭本体1上端部に内嵌合され且つ上半部が上方の杭本体1下端部に内嵌合される円筒状の連結部材Nを設け、下方の杭本体1の上端部及び上方の杭本体1の下端部には周方向一定間隔おきにボルト挿通孔7を設け、連結部材Nの上端部側及び下端部側には、連結部材Nを杭本体1の連結端部に内嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8を設けると共に、連結部材Nの内周面側には、各連結部材側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置でナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部9を設けておいて、連結部材Nの下半部を下方の杭本体上端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Nを下方の杭本体上端部に固定し、この連結部材Nの上半部を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Nを上方の杭本体下端部に固定して、両杭本体1,1を一体的に連結してなることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記各ナット保持部9は、連結部材Nの内周面に、ボルト挿通孔8を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなり、各アーム壁11は、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなるもので、ナット10は連結部材Nの上方よりこのナット保持部9に挿入されるようになっていることを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記連結部材Nの上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設し、連結部材内周面の上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とは互いに上下逆方向に設け、上端部側フランジ部13には各上端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下端部側フランジ部13には各下端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けてなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明の鋼管杭の杭本体連結構造は、下方の杭本体1の上端部に上方の杭本体1の下端部を連結するにあたり、杭本体1の外径と同じ外径を有する円筒状本体20の上下端部に、外径が杭本体1の内径より径小で上方の杭本体1の下端部及び下方の杭本体1の上端部が夫々外嵌合する上下基筒部21,22を形成してなる円筒状の連結部材Mを設け、下方の杭本体1の上端部及び上方の杭本体1の下端部には周方向一定間隔おきにボルト挿通孔7を設け、連結部材Mの上下各基筒部21,22には、基筒部21,22に杭本体1の連結端部が外嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8を設けると共に、各基筒部21,22の内周面側に、各基筒部側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で連結部材Mの上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部9を設けておいて、下基筒部22を下方の杭本体1の上端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mを下方の杭本体上端部に固定し、上基筒部21を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、上基筒部21を上方の杭本体下端部に固定して、両杭本体1,1を一体的に連結してなることを特徴とする。
【0011】
請求項5は、請求項3に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記連結部材Mの円筒状本体20には螺旋翼4を突設してなることを特徴とする。
【0012】
請求項6は、請求項4又は5に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記各ナット保持部9は、連結部材Mの内周面に、ボルト挿通孔8を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなり、各アーム壁11は、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなるもので、ナットは連結部材Mの上方よりこのナット保持部9に挿入されるようになっていることを特徴とする。
【0013】
請求項7は、請求項4〜6に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記上基筒部21の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設すると共に、下基筒部22の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設し、上基筒部側ナット保持部9と下基筒部側ナット保持部9とは互いに上下逆方向に設け、上基筒部側フランジ部13には各上基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下基筒部側フランジ部13には各下基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けてなることを特徴とする。
【0014】
請求項8は、請求項2又は6に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、各ナット保持部9の各アーム壁11を形成するナット受け壁部bは、その上面が水平面に対し約30°の傾斜面に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9は、請求項1〜8の何れかに記載の鋼管杭において、前記連結部材N,Mは鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の鋼管杭の杭本体連結構造によれば、例えば、杭打ち工事において所定長さの鋼管杭を逐次継ぎ足す場合に、連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に内嵌合して杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8にボルト12を挿通し、ナット保持部9内のナット10にねじ込むことにより、連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に固定した後、連結部材Nの上半部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を外嵌合し、上方の鋼管杭Kの杭本体下端部のボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通し、ナット保持部9内に保持されているナット10にねじ込むことにより上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結部材Nの上半部に連結して、両鋼管杭K,Kの杭本体1,1どうしをする連結するから、従来の溶接による連結作業のように溶接用の電源や発電機などの設備が一切不要になり、しかも連結作業は溶接のように熟練を必要としないため作業コストの著しい低減化を図ることができると共に、杭打ち工事期間の短縮を図ることができ、更にまた溶接作業のように雨天等の天候に左右されないため、杭打ち工事の遅延を来すようなことがない。
【0017】
また、この杭本体連結構造によれば、鋼管杭Kの製造において、長尺な杭本体1を複数に分割形成して分割杭本体1,1どうしを簡単容易に連結する場合も、連結部材Nを介して分割杭本体1,1どうしを連結する構造とすることにより、鋼管杭Kを施工現場へ運送する時には杭本体1を連結前の短尺状態でトラックに積み込み、施工現場で分割杭本体1,1どうしを連結部材Nを介して連結するようにすれば、積み下ろしも容易で、運搬も容易となるため、運送コストの大幅な削減が可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、連結部材Nの各ナット保持部9が、基筒部6の内周面にボルト挿通孔8の内端側で左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなるもので、各アーム壁11が、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなる構造とすることによって、構造がきわめて簡単でありながら、ナット10を確実に保持させることができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、連結部材Nの上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用内向きフランジ部13を設けたことにより、ボルト挿通孔8の穿設されている連結部材Nの連結端部の強度が補強されるから、連結部材Nの肉厚をできるだけ薄く、また連結部材Nの長さをできるだけ短くできて、連結部材Nの重量の軽減を図ることができる。また、連結部材内周面の上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とを互いに上下逆方向に設け、上端部側フランジ部13には各上端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下端部側フランジ部13には各下端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けているから、連結部材Nの両端部を上下区別することなく任意に使用でき、連結作業が容易となる。
【0020】
請求項4に係る発明の杭本体連結構造によると、例えば鋼管杭Kの製造において、長尺な杭本体1を複数に分割形成して分割杭本体1,1どうしを簡単容易に連結する場合は、下基筒部22を下方の杭本体1の上端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mを下方の杭本体上端部に固定し、上基筒部21を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mの上基筒部21を杭本体上端部に固定して両杭本体1,1を一体的に連結することができるから、鋼管杭Kを施工現場へ運送する時に、連結前の短尺状態でトラックに積み込み、施工現場で連結組み立てを行うようにすれば、積み下ろしもし易く、運搬も容易となるため、運送コストの大幅な削減が可能となる。
【0021】
また、この杭本体連結構造によれば、杭打ち工事において所定長さの鋼管杭を所要本数逐次継ぎ足す場合には、従来の溶接による連結作業のように溶接用の電源や発電機などの設備が一切不要になり、しかも連結作業は溶接のように熟練を必要としないため作業コストの著しい低減化を図ることができると共に、杭打ち工事期間の短縮を図ることができ、更にまた溶接作業のように雨天等の天候に左右されないため、杭打ち工事の遅延を来すようなことがない。
【0022】
請求項5に記載の発明の杭本体連結構造によると、中間部に螺旋翼4をもつ鋼管杭Kの製造においては、円筒状本体20に螺旋翼4を突設した連結部材Mを使用すれば、杭打ち現場での連結組み立てが可能であるため、現場への運送時にはトラックの荷台に杭本体1と連結部材Mとを切り離して別々に積み重ねるようにすることにより、積載効率が良く、運送コストの大幅な削減が可能となる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、連結部材Mの各ナット保持部9が、基筒部6の内周面にボルト挿通孔8の内端側で左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなるもので、各アーム壁11が、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなる構造とすることによって、構造がきわめて簡単でありながら、ナット10を確実に保持させることができる。
【0024】
請求項7に記載のように、上基筒部21の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設すると共に、下基筒部22の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を設けることによって、ボルト挿通孔8の穿設されている上下基筒部21,22の強度が補強されるから、連結部材Mの肉厚をできるだけ薄く、また連結部材Mの長さをできるだけ短くできて、連結部材Mの重量の軽減を図ることができる。また、上基筒部側ナット保持部9と下基筒部側ナット保持部9とを互いに上下逆方向に設け、上基筒部側フランジ部13には各上基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下基筒部側フランジ部13には各下基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けているから、連結部材Mの両端部を上下区別することなく任意に使用でき、連結作業が容易となる。
【0025】
請求項8にの発明の鋼管杭のように、ナット保持部9の各アーム壁11を形成するナット受け壁部bの上面を水平面に対し約30°の傾斜面に形成することにより、六角ナット10をナット保持部9内に収容保持する時に、ナット10の外周端面にピッタリ係合して安定状態に保持することができる。
【0026】
請求項9に記載のように、連結部材N,Mは鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物であるから、連結部材N,Mの製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は円筒状連結部材を示す斜視図、図2の(a) は同連結部材の正面図、(b) は平面図、(c) は底面図であり、図3は同連結部材の縦断面図であり、図4の(a) は図2の(b) の矢印Xで示す部分の拡大図、(b) は図3の矢印Yで示す部分の拡大図、(c) は(a) のZ−Z線断面図であり、図5は下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結している状態を示す説明図、図6は両杭本体の連結を終えた状態の説明図である。これらの図において、Kは杭本体1からなる鋼管杭を示し、Nは円筒状の連結部材を示す。
【0028】
各鋼管杭Kには杭本体1の上端部及び下端部に夫々周方向一定間隔おきにボルト挿通孔7が設けられている。連結部材Nは、鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物であり、連結すべき鋼管杭Kの杭本体1の内径より僅かに小さい外径を有し、図5及び図6に示すように、鋼管杭Kの下方の杭本体1の上端部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結するにあたり、この連結部材Nの下半部が下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に内嵌合され、その上半部が上方の杭本体1の下端部に内嵌合されるようになっている。尚、一体成形鋳造物である鋳鋼にはステンレスも含まれるものとする。
【0029】
連結部材Nには上端部側及び下端部側に、この連結部材Nを杭本体1の連結端部に内嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8が設けられていると共に、連結部材Nの内周面側には、各連結部材側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で連結部材Nの上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するためのナット保持部9が設けられている。尚、前後移動不能に保持するとは、図7の(a) から分かるように、ナット10が軸方向の前後に不都合に移動しないように、ナット保持部9内に保持することである。
【0030】
各ナット保持部9は、図2〜図4及び図7から分かるように、連結部材Nの内周面におけるボルト挿通孔8の内端側でナット10を左右両側と下部側と前側とで保持するように左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなり、各アーム壁11は、図4の(a) 〜(c) 及び図7の(a) ,(b) に示すように、縦壁部aと、この縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとによって形成され、左右両アーム壁11,11の左右に対向する縦壁部a,aの対向間隔によってナット10の回転を阻止し、ナット受け壁部bでナット10が落ちないように受け止め、ナット抜け止め壁部cによってナット10がボルトねじ込み方向前方へ抜け出るのを阻止するようになっている。
【0031】
各ナット保持部9の各アーム壁11を形成するナット受け壁部bは、図4の(c) に示すように、その上面が水平面に対して約30°の傾斜面に形成されている。この傾斜面の傾斜角度の30°は、図7の(b) を参照すれば分かるように、六角ナット10をナット保持部9内に収容保持する時に、ナット10の左右両端面が左右両縦壁部a,aと平行に位置した状態で下端面側が左右両ナット受け壁部b,bの傾斜面にピッタリ係合して、ナット10全体を安定状態に保持することのできる角度である。
【0032】
上記のような構成の連結部材Nを使用して、図5及び図6に示すように下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結するには、先ず、連結部材Nの内周面側の上端部側及び下端部側に設けてあるナット保持部9にナット10を連結部材Nの上方より挿入して、図7の(a) 、(b) に示すように保持させておく。しかして、下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に連結部材Nの下半部を内嵌合した後、図7の(a) に示すように、ボルト12を、杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通すると共に、このボルト12の先端部を、各ナット保持部9内に保持されているナット10に螺合して締め付けることにより、図8に示すように連結部材Nを杭本体1の上端部に圧着して、図5に示すように連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に取り付け固定する。
【0033】
こうして連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に固定した後、図5に示すように下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端から突出している連結部材Nの上半部に、上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を外嵌合し、上方の鋼管杭Kの杭本体1下端部のボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通すると共に、このボルト12の先端部をナット保持部9内に保持されているナット10に螺合して締め付けることにより、上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結部材Nの上半部に連結し、これにより上方の鋼管杭Kの杭本体1と下方の鋼管杭Kの杭本体1との端部どうしを連結部材Nを介して一体的に連結することができる。この連結構造の外観を図6に示す。
【0034】
上記のように下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結するにあたり、連結部材Nの内周面側の上端部側と下端部側とに設けてあるナット保持部9に予めナット10を挿入しておいて、連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に内嵌合して杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8にボルト12を挿通し、ナット保持部9内のナット10にねじ込むことにより、連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に固定した後、連結部材Nの上半部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を外嵌合し、上方の鋼管杭Kの杭本体1下端部のボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通し、ナット保持部9内に保持されているナット10にねじ込むことにより上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結部材Nの上半部に連結して、両鋼管杭K,Kの杭本体1,1どうしを一体的に連結するようしたから、従来の溶接による連結作業のように溶接用の電源や発電機等の設備が一切不要になり、しかも連結作業に熟練を必要としないために、作業コストの著しい低減化を図ることができ、その上に溶接作業のように雨天等の天候に左右されないため、杭打ち工事の遅延を来すようなことがない。
【0035】
上述した実施形態においては、連結部材Nの内周面側の上端部側及び下端部側に設けるナット保持部9は、連結部材Nのボルト挿通孔8の内端側で左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなるもので、各アーム壁11が、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなる構造としているが、このような構造のナット保持部9によれば、構造が簡単でありながら、ナット10を確実に保持することができるから、鋳鋼からなる一体成形鋳物のナット保持部9として最適である。
【0036】
また上記実施形態の連結部材Nにおいてナット保持部9にナット10を挿入した場合、連結部材Nが直立状態のままであれば、ナット10がナット保持部9の上部側から抜け出ることはないが、連結部材Nが横向きになった状態では抜け出るおそれがあることから、図7の(b) に仮想線で示すように、例えば、片方のアーム壁11の上端部側にピン挿通孔32を設けておいて、これに抜け止めピン33をナット保持部9の内方へ差し込むことによって、如何なる場合でもナット10の抜け出しを防止することができる。
【0037】
以上は、杭先端部が支持層に達するまで所定長さの杭を逐次継ぎ足してゆく杭打ち工事に適用される鋼管杭Kの杭本体連結構造についての説明であるが、次に、鋼管杭を製造するにあたって、1本の鋼管杭の杭本体を複数に分割して、その分割体どうしを連結して鋼管杭Kを製造する場合の杭本体連結構造の実施形態について説明する。
【0038】
図9は杭本体1の下端部に螺旋翼4付き掘削ヘッド2を設けると共に杭本体1の中間所要部に螺旋翼4を設けた多翼型の鋼管杭Kを示し、図10の(a) は杭本体1,1どうしを連結する連結部材Mを示し、(b) は螺旋翼4付き掘削ヘッド2を示し、図11はこの多翼型鋼管杭Kを組み付ける方法を示す。
【0039】
連結部材Mは、図10の(a) 及び図11に示すように、杭本体1の外径と同じ外径を有する円筒状本体20の上下両端部に、外径が杭本体1の内径より小さく上方の杭本体1の下端部及び下方の杭本体1の上端部が夫々外嵌合する上下基筒部21,22を形成してなるもので、上下各基筒部21,22には、この基筒部21,22に杭本体1の連結端部が外嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8を設けると共に、上下各基筒部21,22の内周面側には、各基筒部側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で連結部材Mの上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部9を夫々設けている。各ナット保持部9の構造は、前述した連結部材Nのナット保持部9と同じである。この連結部材Mも、前記連結部材Nと同様に鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物であって、製造が容易である。
【0040】
螺旋翼4付き掘削ヘッド2は、前記連結部材N,Mと同様に鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳物で、図10の(b) 及び図11から分かるように、底部3aが略円錐形状を成す有底円筒状のヘッド本体3を有し、このヘッド本体3に螺旋翼4が突設され、またヘッド本体3の円錐形状底3aの下面に切削刃5が突設され、ヘッド本体3の上端部には、杭本体1の下端部が外嵌合する短円筒状の基筒部6が形成され、この基筒部6には、これに外嵌合される杭本体1のボルト挿通孔7と合致するボルト挿通孔8が周方向一定間隔おきに穿設されている。そして、基筒部6の内周面側には、基筒部側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で基筒部6の上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するためのナット保持部9が設けられている。各ナット保持部9の構造は、連結部材N,Mのナット保持部9と同じである。
【0041】
従って、この多翼型鋼管杭Kを組み付けるには、図11に示すように、先ず、連結部材Mの下基筒部22を下方の分割杭本体1の上端部に内嵌合して、ボルト12(図7の(a) 参照)を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mを下方の杭本体上端部に固定し、この後に上基筒部21を分割された上方の杭本体1の下端部に内嵌合して、上記同様にボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mの上基筒部21を杭本体上端部に固定し、これによって両分割杭本体1,1を一体的に連結する。
【0042】
こうして分割された上下両杭本体1,1を連結部材Mを介して連結した後、下方の杭本体1の下端部に螺旋翼4付き掘削ヘッド2を取り付ける。この掘削ヘッド2の取り付けも、上記同様に下方側杭本体1の下端部をヘッド本体3の基筒部6に外嵌合し、ボルト12(図7の(a) 参照)を杭本体1側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通して各ナット保持部9内に保持されているナット10に螺合することにより、杭本体1の下端部にヘッド本体3を取り付け固定することができる。
【0043】
図9〜図11に示す実施形態の鋼管杭Kは、杭本体1の下端部と中間部に螺旋翼4を有する多翼型鋼管杭であるが、杭本体1の下端部の掘削ヘッド2にのみ螺旋翼4をもつ拡底型や、螺旋翼4をもたず、杭本体の下端部に掘削ヘッドのみ取り付けたストレート型の鋼管杭において、杭本体1を複数に分割して、その分割した杭本体1どうしを連結する場合に、上述した連結部材Mをすることができる。
【0044】
上記のような連結部材Mによれば、長尺な杭本体1を複数に分割形成して分割杭本体1,1どうしを簡単容易に連結することができるから、鋼管杭Kを施工現場へ運送する場合に、連結前の短尺状態でトラックに積み込むようにすれば、積み込みもし易く、比較的小型のトラックでも運ぶことができる。特に中間部に螺旋翼4をもつ鋼管杭Kの場合には、円筒状本体20に螺旋翼4を突設した連結部材Mを使用すれば、施工現場への運送時にはトラックの荷台に杭本体1と連結部材Mとを別々に積み重ねることにより、積載効率が良く、運送コストを低減することができる。
【0045】
また、連結部材Mは、上記のように杭本体1を複数に分割して、その分割した杭本体1どうしを連結する場合に限るものではなく、図5及び図6によって説明した連結部材Nのように所定長さの鋼管杭を所要本数逐次継ぎ足してゆく杭打ち工事にも使用することができる。もちろん、連結部材Mも、所定長さの鋼管杭を所要本数逐次継ぎ足してゆく杭打ち工事に使用することができるものである。
【0046】
図12及び図13は本発明の他の実施形態による連結部材Nを示し、図12の(a) は連結部材Nの正面図、(b) は平面図、(c) は(a) のP−P線断面図、(d) は底面図、(e) は絵のQ−Q線断面図であり、図13の(a) は連結部材N及び塞ぎリング15を示す斜視図、(b) は塞ぎリング15の取付方法を示す説明斜視図である。
【0047】
この実施形態では、円筒状連結部材Nの上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13,13が突設され、そして連結部材Nの内周面の上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とは、図12の(e) と図3とを比較参照すれば分かるように、上下対称状に設けられている(即ち、先の実施形態では、図3に示すように、上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とは同じ向きに設けてある)。そして、上端部側フランジ部13には各上端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が設けられ、また下端部側フランジ部13には各下端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が設けられている。
【0048】
各ナット保持部9は、図4に示すような先の実施形態のものと全く同じ構成であって、ボルト挿通孔8を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなり、各アーム壁11は、図4の(a) 〜(c) を参照して、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなるもので、上端部側ナット保持部9には上端部側フランジ部13のナット挿入口14からナット10を挿入し、下端部側ナット保持部9については、連結部材Nを引っ繰り返して上下を逆にした状態で、その下端部側フランジ部13のナット挿入口14からナット10を挿入する。
【0049】
上記のように連結部材Nを引っ繰り返して上下を逆にした状態でナット挿入口14からナット保持部9内にナット10を挿入した後、連結部材Nを再び引っ繰り返すと、挿入したナット10がナット挿入口14から出てしまうおそれがあるため、図13の(a) ,(b) に示すように、フランジ部13のナット挿入口14よりナット10をナット保持部9内に挿入した後、そのナット挿入口14を塞ぎリング15で塞ぐようにする。このリング15には例えば直径方向両端部に一対ずつのピン孔17を設け、またフランジ部13にもリング15のピン孔17と対応する位置にピン孔18を設けておいて、図13の(b) に示すように、フランジ部13に塞ぎリング15を当て付けた状態で、コ字形のピン16をリング15のピン孔17からフランジ部13のピン孔18へと挿着して固定する。尚、この塞ぎリング15は、上下両方のフランジ部13,13に取り付ける必要はなく、最終的に連結部材Nの下側に位置する何れか一方のフランジ部13に取り付ければよい。
【0050】
上記のような構成の連結部材Nを使用して下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結するには、先ず、図13の(a) に示すように、連結部材Nの上端部側フランジ部13の各ナット挿入口14より上端部側ナット保持部9にナット10を挿入した後、この連結部材Nを引っ繰り返して、反対側(下端部側)フランジ部13の各ナット挿入口14よりそのナット保持部9にナット10を挿入し、そうしてこのフランジ部13に塞ぎリング15を取り付けてナット挿入口14を塞いだ状態で、この連結部材Nを再び元の状態に引っ繰り返して、塞ぎリング15を取り付けた側のフランジ部13を下側に位置させる。
【0051】
この状態で下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に連結部材Nの下半部を内嵌合した後、図7の(a) に示すようにボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通し、各ナット保持部9内に保持されているナット10に螺合して締め付けることにより連結部材Nを下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に固定する。この後、上記連結部材Nの上半部に、上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を外嵌合し、上方の鋼管杭Kの杭本体1下端部のボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通して、ナット保持部9内に保持されているナット10に螺合して締め付けることにより、上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結部材Nの上半部に連結し、鋼管杭Kの杭本体1と下方の鋼管杭Kの杭本体1との端部どうしを連結する。
【0052】
上記のように連結部材Nの上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用内向きフランジ部13を設けたことにより、ボルト挿通孔8の穿設されている連結部材Nの連結端部の強度が補強されるから、この連結部材Nが杭本体1の連結端部とボルト接合して鋼管杭Kとして使用する時に相当な剪断力が作用しても、連結部材Nのボルト挿通孔8から破損を生じるようなおそれがなく、鋼構造設計基準にも適合可能となる。因みに、このような補強用内向きフランジ部13を設けなければ、上記剪断力に対応するためにボルト挿通孔8から連結部材N6の夫々上下端までの長さを十分長くしたり、連結部材Nの肉厚を十分厚くする必要があるが、フランジ部13を設けることによって、連結部材Nの肉厚をできるだけ薄く、また連結部材Nの長さをできるだけ短くできるから、ヘッド本体3の重量を軽減できる。
【0053】
また、連結部材内周面の上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とを上下対称状に設け、上端部側フランジ部13には各上端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下端部側フランジ部13には各下端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けているから、連結部材Nの両端部を上下区別することなく任意に使用できて、連結作業が容易となる。
【0054】
図14は、更に他の実施形態による連結部材Mの縦断面図である。この連結部材Mは、円筒状本体20の上基筒部21の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設すると共に、下基筒部22の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設してなるもので、上基筒部側ナット保持部9と下基筒部側ナット保持部9とは、上下対称ではないが、上下が互いに逆方向に配設され、上基筒部側フランジ部13には各上基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が設けられ、また下基筒部側フランジ部13には詳細な図示は省略するが、各下基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が夫々設けられている。この連結部材Mの使用による杭本体1,1の連結要領は、連結部材Nによる連結要領と同様である。
【0055】
この図14に示すように円筒状本体20の上基筒部21の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設すると共に、下基筒部22の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を設けることにより、ボルト挿通孔8の穿設されている上下基筒部21,22の強度が補強され、連結部材Mの肉厚をできるだけ薄く、また連結部材Mの長さをできるだけ短くできて、連結部材Mの重量の軽減を図ることができる。また、上基筒部側ナット保持部9と下基筒部側ナット保持部9とは上下が互いに逆方向に設けられ、上基筒部側フランジ部13には各上基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が、また下基筒部側フランジ部13には各下基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が夫々設けてあるから、連結部材Mの両端部を上下区別することなく任意に使用できることになって、連結作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態による連結部材を示す斜視図である。
【図2】(a) は同連結部材の正面図、(b) は平面図、(c) は底面図である。
【図3】同連結部材の縦断面図である。
【図4】(a) は図2の(b) の矢印Xで示す部分の拡大図、(b) は図3の矢印Yで示す部分の拡大図、(c) は(a) のZ−Z線断面図である。
【図5】下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結している状態を示す説明図である。
【図6】両杭本体を連結し終えた状態の説明図である。
【図7】(a) はボルトを杭本体側ボルト挿通孔から連結部材側ボルト挿通孔を通ってナット受け壁部内のナットにねじ込もうとしている状態を示す平面図、(b) は(a) のV−V線断面図である。
【図8】図6のW−W線拡大断面図である。
【図9】多翼型鋼管杭の実施形態を示す斜視図である。
【図10】(a) 及び(b) は多翼型鋼管杭の製造に使用する連結部材を示す斜視図である。
【図11】多翼型鋼管杭を製造する場合の組み付け方法を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施形態による連結部材を示すもので、(a) 連結部材の正面図、(b) は平面図、(c) は(a) のP−P線断面図、(d) は底面図、(e) は絵のQ−Q線断面図である。
【図13】(a) は連結部材及び塞ぎリングを示す斜視図、(b) は塞ぎリングの取付方法を示す説明斜視図である。
【図14】更に他の実施形態による連結部材の縦断面図である。
【符号の説明】
【0057】
K 鋼管杭
N 連結部材
M 連結部材
1 杭本体
7 杭本体側ボルト挿通孔
8 連結部材側ボルト挿通孔
9 ナット保持部
10 ナット
12 ボルト
13 補強用の内向きフランジ部
14 ナット挿入口
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭において下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結するための杭本体連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭は、鉛直及び水平方向にきわめて大きな耐力を有し、杭先端側の支持層に十分に力が伝達され、大きな支持力が得られ、また軽量で破損の心配がなく、運搬や取り扱いが容易なことから、近年その需要は著しく増大している。
【0003】
建造物等の基礎に使用される鋼管杭としては、杭本体下端部に取り付けた掘削ヘッドに螺旋翼を設けた拡底型、掘削ヘッドと共に杭本体の中間所要部に螺旋翼を設けた多翼型、また杭本体の下端部に掘削ヘッドのみ取り付けたストレート型の3種類の鋼管杭が一般に知られているが、その何れの鋼管杭も、杭打ち機械による杭長さの制約、施工現場での置き場スペースによる制約、運送時の長さの制約から、最大長さは6〜8mとされ、これらを越える長さの杭については、掘削ヘッドをもたない杭本体のみからなる所定長さの杭を地盤に打ち込みながら逐次継ぎ足して使用されるようになっている。
【0004】
軟弱地盤での杭打ち機械による鋼管杭の打ち込み作業においては、杭先端部が支持層に達するまで所要本数の杭を逐次継ぎ足してゆく、つまり先に打ち込んだ杭の上端部に後続の杭の下端部を逐次連結してゆくわけであるが、この連結にあたり、従来では、先行杭の上端部に後続杭の下端部を溶接によって連結していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように従来の鋼管杭の継ぎ足し作業は、先行する杭本体の上端部に後続の杭本体の下端部を溶接によって連結していることから、溶接用の電源や発電機等が必要となってコストアップの要因となり、また雨天時には感電等の恐れがあるため作業が行えず、更に溶接にはある程度熟練した溶接技術者が必要であるためコストが高くつく、と言うような問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、施工現場で杭の連結作業を簡単容易に行うことができ、また雨天等の天候に左右されることなく作業が行うことができる鋼管杭の杭本体連結構造を提供することを目的とする。尚、本発明に係る鋼管杭の杭本体連結構造は、杭先端部が支持層に達するまで所定長さの杭を所要本数逐次継ぎ足してゆく場合の杭本体どうしの連結構造の他に、鋼管杭を製造するにあたり、1本の鋼管杭の杭本体を複数に分割して、その分割体どうしを連結する場合の連結構造も含むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の鋼管杭の杭本体連結構造は、下方の杭本体1の上端部に上方の杭本体1の下端部を連結するにあたり、下半部が下方の杭本体1上端部に内嵌合され且つ上半部が上方の杭本体1下端部に内嵌合される円筒状の連結部材Nを設け、下方の杭本体1の上端部及び上方の杭本体1の下端部には周方向一定間隔おきにボルト挿通孔7を設け、連結部材Nの上端部側及び下端部側には、連結部材Nを杭本体1の連結端部に内嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8を設けると共に、連結部材Nの内周面側には、各連結部材側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置でナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部9を設けておいて、連結部材Nの下半部を下方の杭本体上端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Nを下方の杭本体上端部に固定し、この連結部材Nの上半部を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Nを上方の杭本体下端部に固定して、両杭本体1,1を一体的に連結してなることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記各ナット保持部9は、連結部材Nの内周面に、ボルト挿通孔8を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなり、各アーム壁11は、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなるもので、ナット10は連結部材Nの上方よりこのナット保持部9に挿入されるようになっていることを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記連結部材Nの上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設し、連結部材内周面の上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とは互いに上下逆方向に設け、上端部側フランジ部13には各上端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下端部側フランジ部13には各下端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けてなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明の鋼管杭の杭本体連結構造は、下方の杭本体1の上端部に上方の杭本体1の下端部を連結するにあたり、杭本体1の外径と同じ外径を有する円筒状本体20の上下端部に、外径が杭本体1の内径より径小で上方の杭本体1の下端部及び下方の杭本体1の上端部が夫々外嵌合する上下基筒部21,22を形成してなる円筒状の連結部材Mを設け、下方の杭本体1の上端部及び上方の杭本体1の下端部には周方向一定間隔おきにボルト挿通孔7を設け、連結部材Mの上下各基筒部21,22には、基筒部21,22に杭本体1の連結端部が外嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8を設けると共に、各基筒部21,22の内周面側に、各基筒部側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で連結部材Mの上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部9を設けておいて、下基筒部22を下方の杭本体1の上端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mを下方の杭本体上端部に固定し、上基筒部21を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、上基筒部21を上方の杭本体下端部に固定して、両杭本体1,1を一体的に連結してなることを特徴とする。
【0011】
請求項5は、請求項3に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記連結部材Mの円筒状本体20には螺旋翼4を突設してなることを特徴とする。
【0012】
請求項6は、請求項4又は5に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記各ナット保持部9は、連結部材Mの内周面に、ボルト挿通孔8を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなり、各アーム壁11は、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなるもので、ナットは連結部材Mの上方よりこのナット保持部9に挿入されるようになっていることを特徴とする。
【0013】
請求項7は、請求項4〜6に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、前記上基筒部21の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設すると共に、下基筒部22の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設し、上基筒部側ナット保持部9と下基筒部側ナット保持部9とは互いに上下逆方向に設け、上基筒部側フランジ部13には各上基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下基筒部側フランジ部13には各下基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けてなることを特徴とする。
【0014】
請求項8は、請求項2又は6に記載の鋼管杭の杭本体連結構造において、各ナット保持部9の各アーム壁11を形成するナット受け壁部bは、その上面が水平面に対し約30°の傾斜面に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9は、請求項1〜8の何れかに記載の鋼管杭において、前記連結部材N,Mは鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の鋼管杭の杭本体連結構造によれば、例えば、杭打ち工事において所定長さの鋼管杭を逐次継ぎ足す場合に、連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に内嵌合して杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8にボルト12を挿通し、ナット保持部9内のナット10にねじ込むことにより、連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に固定した後、連結部材Nの上半部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を外嵌合し、上方の鋼管杭Kの杭本体下端部のボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通し、ナット保持部9内に保持されているナット10にねじ込むことにより上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結部材Nの上半部に連結して、両鋼管杭K,Kの杭本体1,1どうしをする連結するから、従来の溶接による連結作業のように溶接用の電源や発電機などの設備が一切不要になり、しかも連結作業は溶接のように熟練を必要としないため作業コストの著しい低減化を図ることができると共に、杭打ち工事期間の短縮を図ることができ、更にまた溶接作業のように雨天等の天候に左右されないため、杭打ち工事の遅延を来すようなことがない。
【0017】
また、この杭本体連結構造によれば、鋼管杭Kの製造において、長尺な杭本体1を複数に分割形成して分割杭本体1,1どうしを簡単容易に連結する場合も、連結部材Nを介して分割杭本体1,1どうしを連結する構造とすることにより、鋼管杭Kを施工現場へ運送する時には杭本体1を連結前の短尺状態でトラックに積み込み、施工現場で分割杭本体1,1どうしを連結部材Nを介して連結するようにすれば、積み下ろしも容易で、運搬も容易となるため、運送コストの大幅な削減が可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、連結部材Nの各ナット保持部9が、基筒部6の内周面にボルト挿通孔8の内端側で左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなるもので、各アーム壁11が、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなる構造とすることによって、構造がきわめて簡単でありながら、ナット10を確実に保持させることができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、連結部材Nの上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用内向きフランジ部13を設けたことにより、ボルト挿通孔8の穿設されている連結部材Nの連結端部の強度が補強されるから、連結部材Nの肉厚をできるだけ薄く、また連結部材Nの長さをできるだけ短くできて、連結部材Nの重量の軽減を図ることができる。また、連結部材内周面の上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とを互いに上下逆方向に設け、上端部側フランジ部13には各上端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下端部側フランジ部13には各下端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けているから、連結部材Nの両端部を上下区別することなく任意に使用でき、連結作業が容易となる。
【0020】
請求項4に係る発明の杭本体連結構造によると、例えば鋼管杭Kの製造において、長尺な杭本体1を複数に分割形成して分割杭本体1,1どうしを簡単容易に連結する場合は、下基筒部22を下方の杭本体1の上端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mを下方の杭本体上端部に固定し、上基筒部21を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mの上基筒部21を杭本体上端部に固定して両杭本体1,1を一体的に連結することができるから、鋼管杭Kを施工現場へ運送する時に、連結前の短尺状態でトラックに積み込み、施工現場で連結組み立てを行うようにすれば、積み下ろしもし易く、運搬も容易となるため、運送コストの大幅な削減が可能となる。
【0021】
また、この杭本体連結構造によれば、杭打ち工事において所定長さの鋼管杭を所要本数逐次継ぎ足す場合には、従来の溶接による連結作業のように溶接用の電源や発電機などの設備が一切不要になり、しかも連結作業は溶接のように熟練を必要としないため作業コストの著しい低減化を図ることができると共に、杭打ち工事期間の短縮を図ることができ、更にまた溶接作業のように雨天等の天候に左右されないため、杭打ち工事の遅延を来すようなことがない。
【0022】
請求項5に記載の発明の杭本体連結構造によると、中間部に螺旋翼4をもつ鋼管杭Kの製造においては、円筒状本体20に螺旋翼4を突設した連結部材Mを使用すれば、杭打ち現場での連結組み立てが可能であるため、現場への運送時にはトラックの荷台に杭本体1と連結部材Mとを切り離して別々に積み重ねるようにすることにより、積載効率が良く、運送コストの大幅な削減が可能となる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、連結部材Mの各ナット保持部9が、基筒部6の内周面にボルト挿通孔8の内端側で左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなるもので、各アーム壁11が、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなる構造とすることによって、構造がきわめて簡単でありながら、ナット10を確実に保持させることができる。
【0024】
請求項7に記載のように、上基筒部21の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設すると共に、下基筒部22の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を設けることによって、ボルト挿通孔8の穿設されている上下基筒部21,22の強度が補強されるから、連結部材Mの肉厚をできるだけ薄く、また連結部材Mの長さをできるだけ短くできて、連結部材Mの重量の軽減を図ることができる。また、上基筒部側ナット保持部9と下基筒部側ナット保持部9とを互いに上下逆方向に設け、上基筒部側フランジ部13には各上基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下基筒部側フランジ部13には各下基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けているから、連結部材Mの両端部を上下区別することなく任意に使用でき、連結作業が容易となる。
【0025】
請求項8にの発明の鋼管杭のように、ナット保持部9の各アーム壁11を形成するナット受け壁部bの上面を水平面に対し約30°の傾斜面に形成することにより、六角ナット10をナット保持部9内に収容保持する時に、ナット10の外周端面にピッタリ係合して安定状態に保持することができる。
【0026】
請求項9に記載のように、連結部材N,Mは鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物であるから、連結部材N,Mの製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は円筒状連結部材を示す斜視図、図2の(a) は同連結部材の正面図、(b) は平面図、(c) は底面図であり、図3は同連結部材の縦断面図であり、図4の(a) は図2の(b) の矢印Xで示す部分の拡大図、(b) は図3の矢印Yで示す部分の拡大図、(c) は(a) のZ−Z線断面図であり、図5は下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結している状態を示す説明図、図6は両杭本体の連結を終えた状態の説明図である。これらの図において、Kは杭本体1からなる鋼管杭を示し、Nは円筒状の連結部材を示す。
【0028】
各鋼管杭Kには杭本体1の上端部及び下端部に夫々周方向一定間隔おきにボルト挿通孔7が設けられている。連結部材Nは、鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物であり、連結すべき鋼管杭Kの杭本体1の内径より僅かに小さい外径を有し、図5及び図6に示すように、鋼管杭Kの下方の杭本体1の上端部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結するにあたり、この連結部材Nの下半部が下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に内嵌合され、その上半部が上方の杭本体1の下端部に内嵌合されるようになっている。尚、一体成形鋳造物である鋳鋼にはステンレスも含まれるものとする。
【0029】
連結部材Nには上端部側及び下端部側に、この連結部材Nを杭本体1の連結端部に内嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8が設けられていると共に、連結部材Nの内周面側には、各連結部材側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で連結部材Nの上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するためのナット保持部9が設けられている。尚、前後移動不能に保持するとは、図7の(a) から分かるように、ナット10が軸方向の前後に不都合に移動しないように、ナット保持部9内に保持することである。
【0030】
各ナット保持部9は、図2〜図4及び図7から分かるように、連結部材Nの内周面におけるボルト挿通孔8の内端側でナット10を左右両側と下部側と前側とで保持するように左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなり、各アーム壁11は、図4の(a) 〜(c) 及び図7の(a) ,(b) に示すように、縦壁部aと、この縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとによって形成され、左右両アーム壁11,11の左右に対向する縦壁部a,aの対向間隔によってナット10の回転を阻止し、ナット受け壁部bでナット10が落ちないように受け止め、ナット抜け止め壁部cによってナット10がボルトねじ込み方向前方へ抜け出るのを阻止するようになっている。
【0031】
各ナット保持部9の各アーム壁11を形成するナット受け壁部bは、図4の(c) に示すように、その上面が水平面に対して約30°の傾斜面に形成されている。この傾斜面の傾斜角度の30°は、図7の(b) を参照すれば分かるように、六角ナット10をナット保持部9内に収容保持する時に、ナット10の左右両端面が左右両縦壁部a,aと平行に位置した状態で下端面側が左右両ナット受け壁部b,bの傾斜面にピッタリ係合して、ナット10全体を安定状態に保持することのできる角度である。
【0032】
上記のような構成の連結部材Nを使用して、図5及び図6に示すように下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結するには、先ず、連結部材Nの内周面側の上端部側及び下端部側に設けてあるナット保持部9にナット10を連結部材Nの上方より挿入して、図7の(a) 、(b) に示すように保持させておく。しかして、下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に連結部材Nの下半部を内嵌合した後、図7の(a) に示すように、ボルト12を、杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通すると共に、このボルト12の先端部を、各ナット保持部9内に保持されているナット10に螺合して締め付けることにより、図8に示すように連結部材Nを杭本体1の上端部に圧着して、図5に示すように連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に取り付け固定する。
【0033】
こうして連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に固定した後、図5に示すように下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端から突出している連結部材Nの上半部に、上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を外嵌合し、上方の鋼管杭Kの杭本体1下端部のボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通すると共に、このボルト12の先端部をナット保持部9内に保持されているナット10に螺合して締め付けることにより、上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結部材Nの上半部に連結し、これにより上方の鋼管杭Kの杭本体1と下方の鋼管杭Kの杭本体1との端部どうしを連結部材Nを介して一体的に連結することができる。この連結構造の外観を図6に示す。
【0034】
上記のように下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結するにあたり、連結部材Nの内周面側の上端部側と下端部側とに設けてあるナット保持部9に予めナット10を挿入しておいて、連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に内嵌合して杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8にボルト12を挿通し、ナット保持部9内のナット10にねじ込むことにより、連結部材Nの下半部を下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に固定した後、連結部材Nの上半部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を外嵌合し、上方の鋼管杭Kの杭本体1下端部のボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通し、ナット保持部9内に保持されているナット10にねじ込むことにより上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結部材Nの上半部に連結して、両鋼管杭K,Kの杭本体1,1どうしを一体的に連結するようしたから、従来の溶接による連結作業のように溶接用の電源や発電機等の設備が一切不要になり、しかも連結作業に熟練を必要としないために、作業コストの著しい低減化を図ることができ、その上に溶接作業のように雨天等の天候に左右されないため、杭打ち工事の遅延を来すようなことがない。
【0035】
上述した実施形態においては、連結部材Nの内周面側の上端部側及び下端部側に設けるナット保持部9は、連結部材Nのボルト挿通孔8の内端側で左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなるもので、各アーム壁11が、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなる構造としているが、このような構造のナット保持部9によれば、構造が簡単でありながら、ナット10を確実に保持することができるから、鋳鋼からなる一体成形鋳物のナット保持部9として最適である。
【0036】
また上記実施形態の連結部材Nにおいてナット保持部9にナット10を挿入した場合、連結部材Nが直立状態のままであれば、ナット10がナット保持部9の上部側から抜け出ることはないが、連結部材Nが横向きになった状態では抜け出るおそれがあることから、図7の(b) に仮想線で示すように、例えば、片方のアーム壁11の上端部側にピン挿通孔32を設けておいて、これに抜け止めピン33をナット保持部9の内方へ差し込むことによって、如何なる場合でもナット10の抜け出しを防止することができる。
【0037】
以上は、杭先端部が支持層に達するまで所定長さの杭を逐次継ぎ足してゆく杭打ち工事に適用される鋼管杭Kの杭本体連結構造についての説明であるが、次に、鋼管杭を製造するにあたって、1本の鋼管杭の杭本体を複数に分割して、その分割体どうしを連結して鋼管杭Kを製造する場合の杭本体連結構造の実施形態について説明する。
【0038】
図9は杭本体1の下端部に螺旋翼4付き掘削ヘッド2を設けると共に杭本体1の中間所要部に螺旋翼4を設けた多翼型の鋼管杭Kを示し、図10の(a) は杭本体1,1どうしを連結する連結部材Mを示し、(b) は螺旋翼4付き掘削ヘッド2を示し、図11はこの多翼型鋼管杭Kを組み付ける方法を示す。
【0039】
連結部材Mは、図10の(a) 及び図11に示すように、杭本体1の外径と同じ外径を有する円筒状本体20の上下両端部に、外径が杭本体1の内径より小さく上方の杭本体1の下端部及び下方の杭本体1の上端部が夫々外嵌合する上下基筒部21,22を形成してなるもので、上下各基筒部21,22には、この基筒部21,22に杭本体1の連結端部が外嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔7と合致する位置にボルト挿通孔8を設けると共に、上下各基筒部21,22の内周面側には、各基筒部側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で連結部材Mの上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部9を夫々設けている。各ナット保持部9の構造は、前述した連結部材Nのナット保持部9と同じである。この連結部材Mも、前記連結部材Nと同様に鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物であって、製造が容易である。
【0040】
螺旋翼4付き掘削ヘッド2は、前記連結部材N,Mと同様に鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳物で、図10の(b) 及び図11から分かるように、底部3aが略円錐形状を成す有底円筒状のヘッド本体3を有し、このヘッド本体3に螺旋翼4が突設され、またヘッド本体3の円錐形状底3aの下面に切削刃5が突設され、ヘッド本体3の上端部には、杭本体1の下端部が外嵌合する短円筒状の基筒部6が形成され、この基筒部6には、これに外嵌合される杭本体1のボルト挿通孔7と合致するボルト挿通孔8が周方向一定間隔おきに穿設されている。そして、基筒部6の内周面側には、基筒部側ボルト挿通孔8と軸方向に対向する位置で基筒部6の上方より挿入されるナット10を回転不能にして且つ前後移動不能に保持するためのナット保持部9が設けられている。各ナット保持部9の構造は、連結部材N,Mのナット保持部9と同じである。
【0041】
従って、この多翼型鋼管杭Kを組み付けるには、図11に示すように、先ず、連結部材Mの下基筒部22を下方の分割杭本体1の上端部に内嵌合して、ボルト12(図7の(a) 参照)を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mを下方の杭本体上端部に固定し、この後に上基筒部21を分割された上方の杭本体1の下端部に内嵌合して、上記同様にボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通してナット保持部9内に保持されたナット10に螺合することにより、連結部材Mの上基筒部21を杭本体上端部に固定し、これによって両分割杭本体1,1を一体的に連結する。
【0042】
こうして分割された上下両杭本体1,1を連結部材Mを介して連結した後、下方の杭本体1の下端部に螺旋翼4付き掘削ヘッド2を取り付ける。この掘削ヘッド2の取り付けも、上記同様に下方側杭本体1の下端部をヘッド本体3の基筒部6に外嵌合し、ボルト12(図7の(a) 参照)を杭本体1側ボルト挿通孔7から基筒部側ボルト挿通孔8に挿通して各ナット保持部9内に保持されているナット10に螺合することにより、杭本体1の下端部にヘッド本体3を取り付け固定することができる。
【0043】
図9〜図11に示す実施形態の鋼管杭Kは、杭本体1の下端部と中間部に螺旋翼4を有する多翼型鋼管杭であるが、杭本体1の下端部の掘削ヘッド2にのみ螺旋翼4をもつ拡底型や、螺旋翼4をもたず、杭本体の下端部に掘削ヘッドのみ取り付けたストレート型の鋼管杭において、杭本体1を複数に分割して、その分割した杭本体1どうしを連結する場合に、上述した連結部材Mをすることができる。
【0044】
上記のような連結部材Mによれば、長尺な杭本体1を複数に分割形成して分割杭本体1,1どうしを簡単容易に連結することができるから、鋼管杭Kを施工現場へ運送する場合に、連結前の短尺状態でトラックに積み込むようにすれば、積み込みもし易く、比較的小型のトラックでも運ぶことができる。特に中間部に螺旋翼4をもつ鋼管杭Kの場合には、円筒状本体20に螺旋翼4を突設した連結部材Mを使用すれば、施工現場への運送時にはトラックの荷台に杭本体1と連結部材Mとを別々に積み重ねることにより、積載効率が良く、運送コストを低減することができる。
【0045】
また、連結部材Mは、上記のように杭本体1を複数に分割して、その分割した杭本体1どうしを連結する場合に限るものではなく、図5及び図6によって説明した連結部材Nのように所定長さの鋼管杭を所要本数逐次継ぎ足してゆく杭打ち工事にも使用することができる。もちろん、連結部材Mも、所定長さの鋼管杭を所要本数逐次継ぎ足してゆく杭打ち工事に使用することができるものである。
【0046】
図12及び図13は本発明の他の実施形態による連結部材Nを示し、図12の(a) は連結部材Nの正面図、(b) は平面図、(c) は(a) のP−P線断面図、(d) は底面図、(e) は絵のQ−Q線断面図であり、図13の(a) は連結部材N及び塞ぎリング15を示す斜視図、(b) は塞ぎリング15の取付方法を示す説明斜視図である。
【0047】
この実施形態では、円筒状連結部材Nの上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13,13が突設され、そして連結部材Nの内周面の上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とは、図12の(e) と図3とを比較参照すれば分かるように、上下対称状に設けられている(即ち、先の実施形態では、図3に示すように、上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とは同じ向きに設けてある)。そして、上端部側フランジ部13には各上端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が設けられ、また下端部側フランジ部13には各下端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が設けられている。
【0048】
各ナット保持部9は、図4に示すような先の実施形態のものと全く同じ構成であって、ボルト挿通孔8を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁11,11からなり、各アーム壁11は、図4の(a) 〜(c) を参照して、縦壁部aと、縦壁部aの下端から内向きに突出するナット受け壁部bと、縦壁部aの前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部cとからなるもので、上端部側ナット保持部9には上端部側フランジ部13のナット挿入口14からナット10を挿入し、下端部側ナット保持部9については、連結部材Nを引っ繰り返して上下を逆にした状態で、その下端部側フランジ部13のナット挿入口14からナット10を挿入する。
【0049】
上記のように連結部材Nを引っ繰り返して上下を逆にした状態でナット挿入口14からナット保持部9内にナット10を挿入した後、連結部材Nを再び引っ繰り返すと、挿入したナット10がナット挿入口14から出てしまうおそれがあるため、図13の(a) ,(b) に示すように、フランジ部13のナット挿入口14よりナット10をナット保持部9内に挿入した後、そのナット挿入口14を塞ぎリング15で塞ぐようにする。このリング15には例えば直径方向両端部に一対ずつのピン孔17を設け、またフランジ部13にもリング15のピン孔17と対応する位置にピン孔18を設けておいて、図13の(b) に示すように、フランジ部13に塞ぎリング15を当て付けた状態で、コ字形のピン16をリング15のピン孔17からフランジ部13のピン孔18へと挿着して固定する。尚、この塞ぎリング15は、上下両方のフランジ部13,13に取り付ける必要はなく、最終的に連結部材Nの下側に位置する何れか一方のフランジ部13に取り付ければよい。
【0050】
上記のような構成の連結部材Nを使用して下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結するには、先ず、図13の(a) に示すように、連結部材Nの上端部側フランジ部13の各ナット挿入口14より上端部側ナット保持部9にナット10を挿入した後、この連結部材Nを引っ繰り返して、反対側(下端部側)フランジ部13の各ナット挿入口14よりそのナット保持部9にナット10を挿入し、そうしてこのフランジ部13に塞ぎリング15を取り付けてナット挿入口14を塞いだ状態で、この連結部材Nを再び元の状態に引っ繰り返して、塞ぎリング15を取り付けた側のフランジ部13を下側に位置させる。
【0051】
この状態で下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に連結部材Nの下半部を内嵌合した後、図7の(a) に示すようにボルト12を杭本体側ボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通し、各ナット保持部9内に保持されているナット10に螺合して締め付けることにより連結部材Nを下方の鋼管杭Kの杭本体1の上端部に固定する。この後、上記連結部材Nの上半部に、上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を外嵌合し、上方の鋼管杭Kの杭本体1下端部のボルト挿通孔7から連結部材側ボルト挿通孔8に挿通して、ナット保持部9内に保持されているナット10に螺合して締め付けることにより、上方の鋼管杭Kの杭本体1の下端部を連結部材Nの上半部に連結し、鋼管杭Kの杭本体1と下方の鋼管杭Kの杭本体1との端部どうしを連結する。
【0052】
上記のように連結部材Nの上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用内向きフランジ部13を設けたことにより、ボルト挿通孔8の穿設されている連結部材Nの連結端部の強度が補強されるから、この連結部材Nが杭本体1の連結端部とボルト接合して鋼管杭Kとして使用する時に相当な剪断力が作用しても、連結部材Nのボルト挿通孔8から破損を生じるようなおそれがなく、鋼構造設計基準にも適合可能となる。因みに、このような補強用内向きフランジ部13を設けなければ、上記剪断力に対応するためにボルト挿通孔8から連結部材N6の夫々上下端までの長さを十分長くしたり、連結部材Nの肉厚を十分厚くする必要があるが、フランジ部13を設けることによって、連結部材Nの肉厚をできるだけ薄く、また連結部材Nの長さをできるだけ短くできるから、ヘッド本体3の重量を軽減できる。
【0053】
また、連結部材内周面の上端部側ナット保持部9と下端部側ナット保持部9とを上下対称状に設け、上端部側フランジ部13には各上端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を、また下端部側フランジ部13には各下端部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14を夫々設けているから、連結部材Nの両端部を上下区別することなく任意に使用できて、連結作業が容易となる。
【0054】
図14は、更に他の実施形態による連結部材Mの縦断面図である。この連結部材Mは、円筒状本体20の上基筒部21の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設すると共に、下基筒部22の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設してなるもので、上基筒部側ナット保持部9と下基筒部側ナット保持部9とは、上下対称ではないが、上下が互いに逆方向に配設され、上基筒部側フランジ部13には各上基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が設けられ、また下基筒部側フランジ部13には詳細な図示は省略するが、各下基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が夫々設けられている。この連結部材Mの使用による杭本体1,1の連結要領は、連結部材Nによる連結要領と同様である。
【0055】
この図14に示すように円筒状本体20の上基筒部21の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を突設すると共に、下基筒部22の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部13を設けることにより、ボルト挿通孔8の穿設されている上下基筒部21,22の強度が補強され、連結部材Mの肉厚をできるだけ薄く、また連結部材Mの長さをできるだけ短くできて、連結部材Mの重量の軽減を図ることができる。また、上基筒部側ナット保持部9と下基筒部側ナット保持部9とは上下が互いに逆方向に設けられ、上基筒部側フランジ部13には各上基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が、また下基筒部側フランジ部13には各下基筒部側ナット保持部9にナット10を挿入するためのナット挿入口14が夫々設けてあるから、連結部材Mの両端部を上下区別することなく任意に使用できることになって、連結作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態による連結部材を示す斜視図である。
【図2】(a) は同連結部材の正面図、(b) は平面図、(c) は底面図である。
【図3】同連結部材の縦断面図である。
【図4】(a) は図2の(b) の矢印Xで示す部分の拡大図、(b) は図3の矢印Yで示す部分の拡大図、(c) は(a) のZ−Z線断面図である。
【図5】下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結している状態を示す説明図である。
【図6】両杭本体を連結し終えた状態の説明図である。
【図7】(a) はボルトを杭本体側ボルト挿通孔から連結部材側ボルト挿通孔を通ってナット受け壁部内のナットにねじ込もうとしている状態を示す平面図、(b) は(a) のV−V線断面図である。
【図8】図6のW−W線拡大断面図である。
【図9】多翼型鋼管杭の実施形態を示す斜視図である。
【図10】(a) 及び(b) は多翼型鋼管杭の製造に使用する連結部材を示す斜視図である。
【図11】多翼型鋼管杭を製造する場合の組み付け方法を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施形態による連結部材を示すもので、(a) 連結部材の正面図、(b) は平面図、(c) は(a) のP−P線断面図、(d) は底面図、(e) は絵のQ−Q線断面図である。
【図13】(a) は連結部材及び塞ぎリングを示す斜視図、(b) は塞ぎリングの取付方法を示す説明斜視図である。
【図14】更に他の実施形態による連結部材の縦断面図である。
【符号の説明】
【0057】
K 鋼管杭
N 連結部材
M 連結部材
1 杭本体
7 杭本体側ボルト挿通孔
8 連結部材側ボルト挿通孔
9 ナット保持部
10 ナット
12 ボルト
13 補強用の内向きフランジ部
14 ナット挿入口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結するにあたり、下半部が下方の杭本体上端部に内嵌合され且つ上半部が上方の杭本体下端部に内嵌合される円筒状の連結部材を設け、下方の杭本体の上端部及び上方の杭本体の下端部には周方向一定間隔おきにボルト挿通孔を設け、連結部材の上端部側及び下端部側には、連結部材を杭本体の連結端部に内嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔と合致する位置にボルト挿通孔を設けると共に、連結部材の内周面側には、各連結部材側ボルト挿通孔と軸方向に対向する位置でナットを回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部を設けておいて、連結部材の下半部を下方の杭本体上端部に内嵌合して、ボルトを杭本体側ボルト挿通孔から連結部材側ボルト挿通孔に挿通してナット保持部内に保持されたナットに螺合することにより、連結部材を下方の杭本体上端部に固定し、この連結部材の上半部を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルトを杭本体側ボルト挿通孔から連結部材側ボルト挿通孔に挿通してナット保持部内に保持されたナットに螺合することにより、連結部材を上方の杭本体下端部に固定して、両杭本体を一体的に連結してなる鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項2】
前記各ナット保持部は、連結部材の内周面に、ボルト挿通孔を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁からなり、各アーム壁は、縦壁部と、縦壁部の下端から内向きに突出するナット受け壁部と、縦壁部の前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部とからなるもので、ナットは連結部材の上方よりこのナット保持部に挿入されるようになっている請求項1に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項3】
前記連結部材の上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部を突設し、連結部材内周面の上端部側ナット保持部と下端部側ナット保持部とは互いに上下逆方向に設け、上端部側フランジ部には各上端部側ナット保持部にナットを挿入するためのナット挿入口を、また下端部側フランジ部には各下端部側ナット保持部にナットを挿入するためのナット挿入口を夫々設けてなる請求項1又は2に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項4】
下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結するにあたり、杭本体の外径と同じ外径を有する円筒状本体の上下端部に、外径が杭本体の内径より小さく上方の杭本体の下端部及び下方の杭本体の上端部が夫々外嵌合する上下基筒部を形成してなる円筒状の連結部材を設け、下方の杭本体の上端部及び上方の杭本体の下端部には周方向一定間隔おきにボルト挿通孔を設け、連結部材の上下各基筒部には、基筒部に杭本体の連結端部が外嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔と合致する位置にボルト挿通孔を設けると共に、各基筒部の内周面側に、各基筒部側ボルト挿通孔と軸方向に対向する位置でナットを回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部を設けておいて、下基筒部を下方の杭本体の上端部に内嵌合して、ボルトを杭本体側ボルト挿通孔から基筒部側ボルト挿通孔に挿通してナット保持部内に保持されたナットに螺合することにより、連結部材を下方の杭本体上端部に固定し、上基筒部を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルトを杭本体側ボルト挿通孔から基筒部側ボルト挿通孔に挿通してナット保持部内に保持されたナットに螺合することにより、上基筒部を上方の杭本体下端部に固定して、両杭本体を一体的に連結してなる鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項5】
前記連結部材の円筒状本体には螺旋翼を突設してなる請求項4に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項6】
前記各ナット保持部は、連結部材の内周面に、ボルト挿通孔を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁からなり、各アーム壁は、縦壁部と、縦壁部の下端から内向きに突出するナット受け壁部と、縦壁部の前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部とからなるもので、ナットは連結部材の上方よりこのナット保持部に挿入されるようになっている請求項4又は5に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項7】
前記上基筒部の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部を突設すると共に、下基筒部の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部を突設し、上基筒部側ナット保持部と下基筒部側ナット保持部とは互いに上下逆方向に設け、上基筒部側フランジ部には各上基筒部6側ナット保持部にナットを挿入するためのナット挿入口を、また下基筒部側フランジ部には各下基筒部側ナット保持部にナットを挿入するためのナット挿入口を夫々設けてなる請求項4〜6に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項8】
前記各ナット保持部の各アーム壁を形成するナット受け壁部は、その上面が水平面に対し約30°の傾斜面に形成されている請求項2又は6に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項9】
前記連結部材は鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物である請求項1〜8の何れかに記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項1】
下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結するにあたり、下半部が下方の杭本体上端部に内嵌合され且つ上半部が上方の杭本体下端部に内嵌合される円筒状の連結部材を設け、下方の杭本体の上端部及び上方の杭本体の下端部には周方向一定間隔おきにボルト挿通孔を設け、連結部材の上端部側及び下端部側には、連結部材を杭本体の連結端部に内嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔と合致する位置にボルト挿通孔を設けると共に、連結部材の内周面側には、各連結部材側ボルト挿通孔と軸方向に対向する位置でナットを回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部を設けておいて、連結部材の下半部を下方の杭本体上端部に内嵌合して、ボルトを杭本体側ボルト挿通孔から連結部材側ボルト挿通孔に挿通してナット保持部内に保持されたナットに螺合することにより、連結部材を下方の杭本体上端部に固定し、この連結部材の上半部を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルトを杭本体側ボルト挿通孔から連結部材側ボルト挿通孔に挿通してナット保持部内に保持されたナットに螺合することにより、連結部材を上方の杭本体下端部に固定して、両杭本体を一体的に連結してなる鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項2】
前記各ナット保持部は、連結部材の内周面に、ボルト挿通孔を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁からなり、各アーム壁は、縦壁部と、縦壁部の下端から内向きに突出するナット受け壁部と、縦壁部の前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部とからなるもので、ナットは連結部材の上方よりこのナット保持部に挿入されるようになっている請求項1に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項3】
前記連結部材の上端部及び下端部の夫々内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部を突設し、連結部材内周面の上端部側ナット保持部と下端部側ナット保持部とは互いに上下逆方向に設け、上端部側フランジ部には各上端部側ナット保持部にナットを挿入するためのナット挿入口を、また下端部側フランジ部には各下端部側ナット保持部にナットを挿入するためのナット挿入口を夫々設けてなる請求項1又は2に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項4】
下方の杭本体の上端部に上方の杭本体の下端部を連結するにあたり、杭本体の外径と同じ外径を有する円筒状本体の上下端部に、外径が杭本体の内径より小さく上方の杭本体の下端部及び下方の杭本体の上端部が夫々外嵌合する上下基筒部を形成してなる円筒状の連結部材を設け、下方の杭本体の上端部及び上方の杭本体の下端部には周方向一定間隔おきにボルト挿通孔を設け、連結部材の上下各基筒部には、基筒部に杭本体の連結端部が外嵌合した時に杭本体側ボルト挿通孔と合致する位置にボルト挿通孔を設けると共に、各基筒部の内周面側に、各基筒部側ボルト挿通孔と軸方向に対向する位置でナットを回転不能にして且つ前後移動不能に保持するナット保持部を設けておいて、下基筒部を下方の杭本体の上端部に内嵌合して、ボルトを杭本体側ボルト挿通孔から基筒部側ボルト挿通孔に挿通してナット保持部内に保持されたナットに螺合することにより、連結部材を下方の杭本体上端部に固定し、上基筒部を上方の杭本体下端部に内嵌合して、ボルトを杭本体側ボルト挿通孔から基筒部側ボルト挿通孔に挿通してナット保持部内に保持されたナットに螺合することにより、上基筒部を上方の杭本体下端部に固定して、両杭本体を一体的に連結してなる鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項5】
前記連結部材の円筒状本体には螺旋翼を突設してなる請求項4に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項6】
前記各ナット保持部は、連結部材の内周面に、ボルト挿通孔を中心として左右対称位置に突設された両側一対のアーム壁からなり、各アーム壁は、縦壁部と、縦壁部の下端から内向きに突出するナット受け壁部と、縦壁部の前端から内向きに突出するナット抜け止め壁部とからなるもので、ナットは連結部材の上方よりこのナット保持部に挿入されるようになっている請求項4又は5に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項7】
前記上基筒部の上端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部を突設すると共に、下基筒部の下端部内周縁に沿って補強用の内向きフランジ部を突設し、上基筒部側ナット保持部と下基筒部側ナット保持部とは互いに上下逆方向に設け、上基筒部側フランジ部には各上基筒部6側ナット保持部にナットを挿入するためのナット挿入口を、また下基筒部側フランジ部には各下基筒部側ナット保持部にナットを挿入するためのナット挿入口を夫々設けてなる請求項4〜6に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項8】
前記各ナット保持部の各アーム壁を形成するナット受け壁部は、その上面が水平面に対し約30°の傾斜面に形成されている請求項2又は6に記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【請求項9】
前記連結部材は鋳鋼又は鋳鉄からなる一体成形鋳造物である請求項1〜8の何れかに記載の鋼管杭の杭本体連結構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−127029(P2010−127029A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304143(P2008−304143)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(592050283)住金物産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(592050283)住金物産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]