説明

鋼管湾曲量測定装置及びその方法

【課題】容易かつ高精度に、鋼管の湾曲量を測定することが可能な鋼管湾曲量測定装置を提供する。
【解決手段】鋼管湾曲量測定装置2は、レーザ光照射装置20を保持し、鋼管10の表面に固定して配置する固定側保持体21と、目盛りMを付したスケール部材22を保持し、鋼管10の表面上を軸方向に移動させて所定の測定位置に配置する移動側保持体23とを備える。固定側保持体21と移動側保持体23は、鋼管10の外周面に当接した際に鋼管10の当接した箇所の軸方向に対する向きが特定の一の向きとなる形状に構成されている。固定側保持体21と移動側保持体23とを鋼管10の外周面に当接させた状態で、レーザ光照射装置20の光軸Aの方向、及びスケール部材22の目盛りMの臨む方向が、それぞれ鋼管10の前記当接した箇所の軸方向と平行になるように保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔用の鋼管の湾曲量を測定する鋼管湾曲量測定装置、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用の鉄塔は、山形に形成されたアングル材、あるいは円筒状の鋼管を上下に連結して組み立てられた4本の主柱材を有している。これらの主柱材に対し、従来から、鉄塔の保守・点検のためにその湾曲量を測定することが行われている。
【0003】
主柱材の湾曲量測定方法としては、一般に、長尺部材の湾曲量を測定する方法として知られる水糸を使った方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、図18に示すように、主柱材としての鋼管10の両端の連結部分に設けられている各フランジ71,72に、それぞれ、取付金具81,82を取り付け、鋼管10の中心線Xから各取付金具81,82の等距離にある位置に水糸85の両端を取り付けて両取付金具81,82間に水糸85を張る。そして、金尺90を水糸85に沿って移動させ、所定の測定位置で鋼管10の表面と水糸85との間の距離Dを測定する。その結果、いずれの測定箇所においても測定距離が同じになった場合は、鋼管に湾曲が生じていないものと判断し、測定距離が異なっていた場合は、湾曲が生じているものと判断できる。また、測定の正確性を期す場合は、上記の一連の作業を1本の鋼管において周方向の4箇所で行う。
なお、上記「中心線」とは、鋼管の両端のフランジ部における鋼管の中心同士をつないだ直線を指す。以下、同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−48787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
主柱材の湾曲は、極めて小さいレベル、例えば数ミリ程度の精度で把握することが必要である。しかしながら、水糸を使った測定方法では、水糸が風の影響を受けて撓むと、測定の基準となる線の位置がずれてしまうため、湾曲量を正確に測定することができなくなるといった問題がある。また、フランジに取付金具を設置したり、水糸を張ったりする作業に手間がかかり、作業効率が良くないといった問題もある。
【0006】
そこで、水糸を使わずに湾曲量を測定する方法として、レーザ光や照準スコープを用いる方法が考えられる。
レーザ光を用いる場合は、例えば、図19に示すように、鋼管10の一端部上にレーザ光照射装置20を設置し、反対側の他端部上にレーザ光の位置合わせ用のターゲット95を設置する。そして、レーザ光照射装置20からターゲット95に向けてレーザ光を照射し、その光軸Aが鋼管10の中心線Xと平行となるようにレーザ光の位置合わせを行う。レーザ光の位置合わせを終えたら、光軸Aに沿って金尺90を移動させて、所定の測定位置で金尺90にレーザ光が当たる箇所を読み取ることにより、鋼管10の表面から光軸Aまでの距離Dを測定する。
【0007】
また、図示省略するが、照準スコープを用いる場合は、上記レーザ光照射装置に代えて、鋼管の一端上に照準スコープを設置し、照準スコープで上記と同様のターゲットを覗いて視準線(仮想線)の位置合わせを行う。そして、照準スコープとターゲット間で金尺を移動させ、所定の測定位置で照準スコープの照準と一致する金尺の目盛りを読み取ることにより、鋼管の表面から視準線までの距離を測定する。
【0008】
上記のように、レーザ光や照準スコープを用いる場合は、レーザ光の光軸や照準スコープの視準線が測定の基準線となる。従って、これらの基準線は風の影響を受けることはないので、水糸のように位置がずれて測定精度が低下することはない。
【0009】
しかし、レーザ光照射装置を保持部材を介して鋼管上に設置する際、その保持部材の設置面が平坦面となっていると、曲面に形成されている鋼管の表面に対して保持部材の向きが定まりにくい。このため、図19に示す光軸Aを図の上方から見ると、図20に示すように、光軸Aが鋼管10の中心線Xと平行となっていない場合がある。また、同様に、照準スコープを用いる方法においても、視準線が鋼管の中心線と平行とならない場合が生じ得る。
【0010】
このように、光軸や視準線が鋼管の中心線と平行となっていない状態では、その光軸又は視準線と鋼管の表面との間の距離を測定しても、正確な湾曲量を測定することはできない。また、これを防止する方法として、事前に、鋼管上のレーザ光照射装置等の設置位置や金尺の配置位置に、マーキングを施しておくことが考えられるが、その場合、マーキングの作業の手間がかかるといった問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、容易かつ高精度に、鋼管の湾曲量を測定することが可能な鋼管湾曲量測定装置、及びその方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、鉄塔用の鋼管の湾曲量を測定する鋼管湾曲量測定装置であって、レーザ光照射装置又は照準スコープを保持し、鋼管の表面に固定して配置する固定側保持体と、目盛りを付したスケール部材を保持し、鋼管の表面上を軸方向に移動させて所定の測定位置に配置する移動側保持体とを備え、前記固定側保持体と前記移動側保持体は、鋼管の外周面に当接した際に鋼管の当接した箇所の軸方向に対する向きが特定の一の向きとなる形状に構成され、前記固定側保持体と前記移動側保持体とを鋼管の外周面に当接させた状態で、前記レーザ光照射装置の光軸又は前記照準スコープの視準線の方向、及び前記スケール部材の目盛りの臨む方向が、それぞれ鋼管の前記当接した箇所の軸方向と平行になるように保持するように構成したものである。
【0013】
請求項1に記載の構成によれば、固定側保持体と移動側保持体とを鋼管の外周面に当接させて配置することにより、レーザ光照射装置の光軸又は照準スコープの視準線の方向と、スケール部材の目盛りの臨む方向の両方を、鋼管の当接した箇所の軸方向に対して平行となるように保持することができる。これにより、容易に、鋼管の中心線と略平行な線上で、光軸又は視準線と鋼管の表面との間の距離を測定することができるようになり、鋼管の湾曲量を正確に測定することが可能となる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の鋼管湾曲量測定装置において、前記レーザ光照射装置の光軸又は前記照準スコープの視準線の方向を、鋼管の中心線を通る平面内で可変とする機構を設けたものである。
【0015】
鋼管の湾曲量によっては、レーザ光の光軸や照準スコープの視準線がスケール部材の目盛りの所定の箇所から外れることも考えられるため、これを補正する必要がある。そのため、レーザ光照射装置の光軸又は照準スコープの視準線の方向を、鋼管の中心線を通る平面内で可変とする機構を設けることで、光軸又は視準線が目盛りの所定の箇所に合うように補正することができるようになる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の鋼管湾曲量測定装置において、前記固定側保持体と前記移動側保持体の少なくとも一方は、所定の開き角度を形成するように互いに向かい合って設けられた2つの平坦面を有し、当該2つの平坦面を鋼管の外周面に当接させるように構成したものである。
【0017】
所定の開き角度を形成するように互いに向かい合って設けられた2つの平坦面を、鋼管の外周面に当接させた際、その接触部(接触線)は鋼管の当接した箇所の軸方向と平行となる。すなわち、接触部(接触線)の向きは、当接のたびに各平坦面に対して毎回同じ向きとなる。このように、一対の平坦面を鋼管に当接させた際、各平坦面における接触部(接触線)の向きが、鋼管の当接した箇所の軸方向と平行で、かつ、当接のたびに同じ向きに特定されるので、固定側保持体又は移動側保持体の鋼管の当接した箇所の軸方向に対する向きを特定の一の向きに決定することができる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の鋼管湾曲量測定装置において、前記固定側保持体と前記移動側保持体の少なくとも一方は、鋼管の外径よりも大きい径に形成された凹状の円弧面を有し、当該凹状の円弧面を鋼管の外周面に当接させるように構成したものである。
【0019】
鋼管の外径よりも大きい径に形成された凹状の円弧面を、鋼管の外周面に当接させた際、この場合も、その接触部(接触線)は鋼管の当接した箇所の軸方向と平行となる。すなわち、接触部(接触線)の向きは、当接のたびに円弧面に対して毎回同じ向きとなる。このように、凹状の円弧面を鋼管に当接させた際、円弧面における接触部(接触線)の向きが、鋼管の当接した箇所の軸方向と平行で、かつ、当接のたびに同じ向きに特定されるので、固定側保持体又は移動側保持体の鋼管の当接した箇所の軸方向に対する向きを特定の一の向きに決定することができる。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の鋼管湾曲量測定装置において、前記固定側保持体を、鋼管に対して磁着するように構成したものである。
【0021】
固定側保持体を、鋼管に対して磁着することにより、測定作業中における固定側保持体の位置ずれによる精度低下を防止することができる。
【0022】
請求項6の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の鋼管湾曲量測定装置において、前記固定側保持体を、鋼管に対してベルトで固定するように構成したものである。
【0023】
固定側保持体を、鋼管に対してベルトで固定することにより、測定作業中における固定側保持体の位置ずれによる精度低下を防止することができる。
【0024】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の鋼管湾曲量測定装置において、前記目盛りを、鋼管の中心から同心円状に形成したものである。
【0025】
この場合、移動側保持体を鋼管に当接させて配置した状態で、レーザ光が目盛りの中央線からずれた位置に当たっていたり、照準スコープの照準に対して目盛りが傾いていたりしても、移動側保持体を鋼管の周方向に移動させて位置補正する必要はない。すなわち、この場合は、目盛りの同じ線上では、いずれの箇所においても鋼管の中心からの距離が等しくなるので、レーザ光が目盛りの中央線と一致しているか否か、あるいは、照準スコープの照準に対して目盛りが傾いるか否かにかかわらず、レーザ光が当たっている箇所、又はスコープの照準が一致している箇所を読み取ることで、光軸又は視準線と鋼管の表面との間の距離を測定することができる。
【0026】
請求項8の発明は、鉄塔用の鋼管の湾曲量を測定する鋼管湾曲量測定方法であって、レーザ光照射装置又は照準スコープを保持すると共に、鋼管に当接させた際の鋼管の当接した箇所の軸方向に対する向きが特定の一の向きとなる形状に構成された固定側保持体を、鋼管に当接させることにより、前記レーザ光照射装置の光軸又は前記照準スコープの視準線が鋼管の前記当接した箇所の軸方向と平行になるように固定側保持体を配置する工程と、目盛りを付したスケール部材を保持すると共に、鋼管に当接させた際の鋼管の当接した箇所の軸方向に対する向きが特定の一の向きとなる形状に構成された移動側保持体を、鋼管に当接させることにより、前記スケール部材の目盛りの臨む方向が鋼管の前記当接した箇所の軸方向と平行になるように移動側保持体を配置する工程と、前記レーザ光照射装置から発するレーザ光がスケール部材の目盛りの中央線上に照射されるように、又は前記照準スコープの照準に対してスケール部材の目盛りが傾かないように、鋼管の周方向における前記移動側保持体の位置を補正する工程と、前記レーザ光照射装置から発したレーザ光が目盛りに照射された箇所、又は照準スコープの照準が目盛りと一致している箇所を読み取ることで、光軸又は視準線と鋼管の表面との間の距離を測定する工程とを有し、前記移動側保持体を鋼管の軸方向に移動させて、その移動させた箇所ごとに、前記移動側保持体を配置する工程と、前記鋼管の周方向における前記移動側保持体の位置を補正する工程と、前記光軸又は視準線と鋼管の表面との間の距離を測定する工程とを行う測定方法である。
【0027】
請求項8に記載の方法によれば、固定側保持体と移動側保持体とを鋼管の外周面に当接させて配置することにより、レーザ光照射装置の光軸又は照準スコープの視準線の方向と、スケール部材の目盛りの臨む方向の両方を、鋼管の当接した箇所の軸方向に対して平行となるように保持することができる。これにより、容易に、鋼管の中心線と略平行な線上で、光軸又は視準線と鋼管の表面との間の距離を測定することができるようになり、鋼管の湾曲量を正確に測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、固定側保持体及び移動側保持体を鋼管上に当接させるというような簡便な方法によって、精度の高い湾曲量測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】送電用の鉄塔を模式的に表した図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る鋼管湾曲量測定装置を鋼管上に設置した状態を示す図である。
【図3】固定側保持体を鋼管上に配置した状態を示す図である。
【図4】移動側保持体を鋼管上に配置した状態を示す図である。
【図5】一対の脚部材と鋼管との接触部を示す図である。
【図6】異なる外径の鋼管に対して固定側保持体又は移動側保持体を当接させた状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る鋼管湾曲量測定装置を鋼管上に設置した状態を示す図である。
【図8】固定側保持体を鋼管上に配置した状態を示す図である。
【図9】移動側保持体を鋼管上に配置した状態を示す図である。
【図10】円弧状部材と鋼管との接触部を示す図である。
【図11】異なる外径の鋼管に対して固定側保持体又は移動側保持体を当接させた状態を示す図である。
【図12】固定側保持体に固定用のベルトを取り付けた実施形態を示す図である。
【図13】スケール部材の他の実施形態の構成を示す図である。
【図14】スケール部材のさらに別の実施形態を示す図である。
【図15】本発明に係る鋼管湾曲量測定装置を用いた測定方法を説明するための図である。
【図16】移動側保持体の位置補正の方法を説明するための図である。
【図17】照準スコープを用いた場合の移動側保持体の位置補正の方法を説明するための図である。
【図18】水糸を用いた従来の鋼管湾曲量測定方法を説明するための図である。
【図19】レーザ光を用いた鋼管湾曲量測定方法を説明するための図である。
【図20】レーザの光軸が鋼管の中心線と平行となっていない状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0031】
図1は、本発明に係る鋼管湾曲量測定装置及びその方法が用いられる送電用の鉄塔を模式的に表した図である。
図1に示す送電用の鉄塔1は、4本の主柱材11と、主柱材11間に架設された複数の斜材12及び水平材13から成る腹材と、主柱材11の左右に固設され送電線又は架空地線を懸架する腕金14等から構成される。主柱材11には、円筒状の鋼管が用いられている。一般に、鋼管には、内部にコンクリートを充填したタイプと、充填しないタイプとがあるが、本発明において鋼管はいずれであってもよい。
【0032】
図2は、本発明の第1実施形態に係る鋼管湾曲量測定装置を鋼管上に設置した状態を示す図である。なお、図2では、便宜的に、鋼管10を横方向に配設しているが、鋼管10の向きはこれに限定されるものではない。
図2に示すように、本実施形態に係る鋼管湾曲量測定装置2は、レーザ光照射装置20を保持する固定側保持体21と、目盛りMを付したスケール部材22を保持する移動側保持体23とを備える。
【0033】
固定側保持体21は、レーザ光照射装置20を設置するベース部材24と、ベース部材24に所定の開き角度αを形成するように互いに向かい合って設けられた一対の脚部材25,26とを有する。各脚部材25,26は、平板状の部材で構成されている。ここでは、各脚部材25,26を別個の部材で構成しているが、これらを一体的に構成してもよい。
【0034】
固定側保持体21を鋼管10上に配置する場合は、一対の脚部材25,26の互いに対向する2つの平坦面25a,26aを鋼管10の表面に当接させる。また、固定側保持体21を鋼管10上に配置した状態では、図3に示すように、レーザ光照射装置20の光照射部20aが、一対の脚部材25,26と鋼管10との各接点C1,C2同士を結ぶ線分の垂直二等分線Y1上に配置されるようになっている。
【0035】
移動側保持体23は、上記固定側保持体21と同様に、ベース部材27と、ベース部材27に設けられた一対の脚部材28,29とを有する。ベース部材27上にはスケール部材22が設置され、一対の脚部材28,29は所定の開き角度βを形成するように配設されている。また、一対の脚部材28,29は、別体で構成されていても、一体的に構成されていてもよい。
【0036】
移動側保持体23においても、鋼管10上に配置する場合は、一対の脚部材28,29の互いに対向する2つの平坦面28a,29aを鋼管10の表面に当接させる。また、移動側保持体23を鋼管10上に配置した状態では、図4に示すように、スケール部材22が、一対の脚部材28,29と鋼管10との各接点E1,E2同士を結ぶ線分の垂直二等分線Y2上に配置されるようになっている。
【0037】
図3に示す固定側保持体21のベース部材24の厚みt1及び脚部材25,26間の開き角度αと、図4に示す移動側保持体23のベース部材27の厚みt2及び脚部材28,29間の開き角度βは、互いに異なる寸法及び角度にすることも可能であるが、光照射部20aとスケール部材22との相対的高さ調整等を行いやすくするために、厚みt1,t2と開き角度α,βを同じ寸法に設定するのが望ましい。そうすれば、事前に光照射部20aまでの機械高さ(ベース部材24の表面から図2に示す光軸Aまでの距離)をスケールによって計測しておくことで、鋼管10に曲がりがない場合に光軸Aがスケール部材22を照射する位置を予測することができる。
【0038】
図5に示すように、固定側保持体21又は移動側保持体23の各脚部材25,26(28,29)と鋼管10との当接は、各平坦面25a,26a(28a,29a)と鋼管10の円弧状の外周面との当接となるので、これらは二点鎖線N1で示す線上で接触(線接触)し、その接触部(接触線)N1は鋼管10の当接した箇所の軸方向と平行となる。また、接触部(接触線)N1の向きは、当接のたびに各平坦面25a,26a(28a,29a)に対して毎回同じ向きとなる。さらに、これは、鋼管10上の他の箇所においても、あるいは、外径の異なる鋼管10においても同様である。すなわち、固定側保持体21と移動側保持体23は、鋼管10に当接した際、その当接した箇所の軸方向に対する向きが特定の一の向きとなるように構成されている。
【0039】
このように、本実施形態では、固定側保持体21及び移動側保持体23が、所定の開き角度を形成するように互いに向かい合って設けられた一対の脚部材を有していることで、固定側保持体21及び移動側保持体23を鋼管10に当接させた状態で、固定側保持体21及び移動側保持体23の向きが一の向きに特定される。このため、それらに保持されるレーザ光照射装置20の光軸A(図2参照)やスケール部材22の向きを特定の向きに設定することが可能である。通常の使用形態では、固定側保持体21及び移動側保持体23が鋼管10の外周面に当接した状態で、光軸Aと目盛りMの臨む方向が、それぞれ鋼管10の当接した箇所の軸方向と平行となるように、レーザ光照射装置20とスケール部材22を配設する。
【0040】
また、一般に、鋼管10の表面は塗装による微小の凹凸があるため、固定側保持体21及び移動側保持体23の鋼管10上での姿勢又は向きを精度良く決定するには、図5に示す各脚部材25,26(28,29)における鋼管10の中心線Xの方向の長さL1(以下、「中心線方向の長さL1」という)を、ある程度以上の長さに設定しておく必要がある。例えば、本実施形態の場合、各脚部材25,26(28,29)の中心線方向の長さL1は、少なくとも50mmに設定することが望ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
図6の(a)(b)は、異なる外径の鋼管に対して固定側保持体又は移動側保持体を当接させた状態を示している。
一般に、主柱材に用いられる鋼管10には、外径が89.1mm〜609.6mmの範囲内で異なるものが様々にある。固定側保持体21と移動側保持体23を鋼管10の外径に対応させて複数用意することも可能であるが、製造コストや作業容易性を鑑みれば、可能な限り1つで全ての外径に対応させる方が好ましい。そのため、図5に示す各脚部材25,26(28,29)の中心線方向の長さL1と直交する方向の長さS(以下、「直交方向の長さS」という)を、測定対象とする鋼管10のうち、最も太い鋼管10の外径の少なくとも約半分の長さに設定しておくことが好ましい。例えば、最も太い鋼管10の外径が609.6mmである場合、各脚部材25,26(28,29)の直交方向の長さSは、少なくとも305mm(609.6÷2≒305)にしておく必要がある。また、その場合、各脚部材25,26(28,29)間の開き角度α(β)は、45°程度が好ましい。なお、これは一例であり、脚部材の長さ、開き角度はこれに限定されない。
【0042】
図7は、本発明の第2実施形態に係る鋼管湾曲量測定装置を鋼管上に設置した状態を示す図である。なお、図7においても、便宜的に、鋼管10を横方向に配設しているが、鋼管10の向きはこれに限定されるものではない。
図7に示す第2実施形態では、上記第1実施形態の構成と比べて、固定側保持体21及び移動側保持体23の形状が異なっている。具体的には、図7に示すように、本実施形態における固定側保持体21及び移動側保持体23は、上記一対の脚部材の代わりに、円弧状に湾曲した円弧状部材31,32を有する。それ以外は、上記第1実施形態の構成と同様である。
【0043】
固定側保持体21と移動側保持体23を鋼管10上に配置する場合は、それぞれ、円弧状部材31,32の凹状の円弧面31a,32aを鋼管10の表面に当接させる。固定側保持体21及び移動側保持体23を鋼管10上に配置した状態では、図8及び図9に示すように、光照射部20aとスケール部材22が、各円弧状部材31,32と鋼管10との接点F,Gと鋼管10の中心Oとを通る直線Y3,Y4上に配置されるようになっている。また、各円弧状部材31,32の凹状の円弧面31a,32aは、鋼管10の外径(半径R)よりも大きい径(半径r1,r2)に形成されている。
【0044】
なお、固定側保持体21の凹状の円弧面31aの径(半径r1)と、移動側保持体23の凹状の円弧面32aの径(半径r2)は、互いに異なる径にすることも可能であるが、作製容易性などの観点から、互いの径を同じ径に設定することが望ましい。
【0045】
また、固定側保持体21と移動側保持体23のそれぞれのベース部材24、27の厚みt1,t2同士、及び固定側保持体21と移動側保持体23のそれぞれの円弧状部材31,32の厚みt3,t4同士は、互いに異なる寸法にすることも可能であるが、光照射部20aとスケール部材22との相対的高さ調整等を行いやすくするために、それぞれの厚みt1,t2及びt3,t4を同じ寸法に設定するのが望ましい。そうすれば、事前に光照射部20aまでの機械高さ(ベース部材24の表面から図2に示す光軸Aまでの距離)をスケールによって計測しておくことで、鋼管10に曲がりがない場合に光軸Aがスケール部材22を照射する位置を予測することができる。
【0046】
図10に示すように、固定側保持体21又は移動側保持体23の円弧状部材31(32)と鋼管10との当接は、互いに異なる径の2つの円弧面同士の当接となるので、これらは二点鎖線N2で示す線上で接触(線接触)し、その接触部(当接線)N2は鋼管10の当接した箇所の軸方向と平行となる。また、接触部(接触線)N2の向きは、当接のたびに円弧面31a(32a)に対して毎回同じ向きとなる。さらに、これは、鋼管10上の他の箇所においても、あるいは、外径の異なる鋼管10においても同様である。すなわち、本実施形態の場合も、上記第1実施形態と同様に、固定側保持体21と移動側保持体23は、鋼管10に当接した際、その当接した箇所の軸方向に対する向きが特定の一の向きとなるように構成されている。
【0047】
このように、本実施形態においても、固定側保持体21及び移動側保持体23を鋼管10に当接させた状態で、固定側保持体21及び移動側保持体23の向きを一の向きに特定させることができるため、その状態で、通常の使用形態では、光軸Aと目盛りMの臨む方向が、それぞれ鋼管10の当接した箇所の軸方向と平行となるように、レーザ光照射装置20とスケール部材22を配設する。
【0048】
また、本実施形態においても、固定側保持体21及び移動側保持体23の鋼管10上での姿勢又は向きを精度良く決定するために、図10に示す各円弧状部材31(32)における鋼管10の中心線Xの方向の長さL2(以下、「中心線方向の長さL2」という)を、少なくとも50mmに設定している。ただし、中心線方向の長さL2は、これに限定されるものではない。
【0049】
また、図11の(a)(b)に示すように、本実施形態においても、異なる外径の鋼管10に対して固定側保持体21又は移動側保持体23の凹状の円弧面31a(32a)を当接させることが可能である。
【0050】
図12の(a)(b)は、固定側保持体に固定用のベルトを取り付けた実施形態を示す図である。
図12において(a)は、一対の脚部25,26を有する固定側保持体21にベルト40を取り付けた実施形態を示し、(b)は、円弧状部材31を有する固定側保持体21にベルト40を取り付けた実施形態を示す。このように、ベルト40を、各脚部25,26の各先端、又は円弧状部材31の両端に渡して取り付けることにより、固定側保持体21を鋼管10に対して固定することができる。ベルト40は、一端が固定側保持体21に対して着脱可能に構成されているものがよい。ベルト40の一端を着脱させる手段としては、例えば、面状ファスナー等を適用できる。
【0051】
また、ベルト40の代わりに、磁石によって固定側保持体21を鋼管10に固定(磁着)することも可能である。その場合、磁石を脚部25,26や円弧状部材31に設けてもよいし、脚部25,26自体、円弧状部材31自体を磁石で構成してもよい。
【0052】
図13は、スケール部材の他の実施形態の構成を示す図である。
図13に示す実施形態では、スケール部材22の目盛りMが鋼管10の中心Oから同心円状に形成されている。この場合、図13に示すように、移動側保持体23を鋼管10に当接させて配置した状態で、目盛りMの同じ線上では、いずれの箇所においても鋼管10の中心Oからの距離が等しくなる。また、図13に示す例では、移動側保持体23を一対の脚部28,29を有する構成としているが、これに代えて、上記円弧状部材32(図9参照)とすることも可能である。
【0053】
図14は、スケール部材のさらに別の実施形態を示す図である。
図14に示す実施形態では、スケール部材22が、複数の半円弧状の凹部33a〜33dを有する形状に構成されている。複数の凹部33a〜33dは、それぞれ異なる外径の鋼管10a〜10dの外周面に対応した形状となっている。また、このスケール部材22には、各凹部33a〜33dと同心円状の複数の目盛りM1〜M4が付されている。
【0054】
この場合、鋼管10a〜10dの外径と合う径の凹部33a〜33dを選択して、その凹部を当該鋼管の外周面に嵌合させることにより、鋼管上にスケール部材22を配置する。このように、スケール部材22を鋼管の外周面に嵌合させるようにして配置することで、スケール部材22の向きが鋼管の当接した箇所の軸方向に対して特定の一の向きに決定されるようになっている。すなわち、この構成では、スケール部材22が上記移動側保持体23としての機能を兼ねている。
【0055】
また、このスケール部材22を鋼管の外周面に嵌合させた状態では、目盛りの臨む方向が鋼管の当接した箇所の軸方向と平行となるように構成されている。しかも、その状態で、鋼管に対応する目盛りの同じ線上では、いずれの箇所においても鋼管の中心からの距離が等しくなる。例えば、図14において、最も大きい外径の鋼管10aに対応する凹部33aを嵌合させた場合、その嵌合する凹部33aと同心円状の目盛りM1においては、同じ線上のいずれの箇所においても嵌合する鋼管10aの中心からの距離が等しくなる。
【0056】
また、スケール部材22の鋼管10a〜10d上での姿勢又は向きを精度良く決定するために、スケール部材22における鋼管の中心線Xの方向の長さL3は、少なくとも50mmに設定することが望ましい。ただし、これに限定されるものではない。
【0057】
以下、上記本発明に係る鋼管湾曲量測定装置を用いた測定方法について説明する。
まず、図15の(a)に示すように、湾曲量を測定する鋼管10の一端部側に、レーザ光照射装置20を保持する固定側保持体21を当接させて配置し、他端部側に、スケール部材22を保持する移動側保持体23を当接させて配置する。鋼管10に固定側保持体21と移動側保持体23を当接させた状態では、上述のように、レーザ光照射装置20の光軸Aとスケール部材22の目盛りMの臨む方向が、それぞれ鋼管10の当接した箇所の軸方向に対して平行となる。すなわち、光軸Aと目盛りMの臨む方向が、鋼管10の中心線Xに対して略平行となる。なお、ここで「略平行」としているのは、鋼管10が湾曲している場合、光軸Aと目盛りMの臨む方向が中心線Xに対して完全に平行とはならない場合場あるからである。そして、上記のように固定側保持体21と移動側保持体23とを鋼管10上に配置した状態で、レーザ光照射装置20からスケール部材22に向かってレーザ光を照射し、レーザ光をスケール部材22の目盛りMを付した部分に当てる。
【0058】
このとき、図16の(a)に示すように、スケール部材22のレーザ光が当たっている部分Pが目盛りMの中央線からずれている場合は、同図の(b)に示すように、移動側保持体23を鋼管10の周方向に移動(回転)させて、目盛りMの中央線にレーザ光が当たるように位置補正する。そして、レーザ光が目盛りMに照射されている箇所を読み取って確認し、その値を光軸Aと鋼管10の表面との間の距離の基準値とする。
【0059】
また、レーザ光照射装置20の光軸の方向を、鋼管10の中心線Xを通る平面内で可変とする機構を設けている場合は、事前に測定しておいた光照射部20aの機械高さから予測される目盛りM上のレーザ光照射位置と、実際にレーザ光が当たっている部分Pとが、目盛りMの上又は下に大きくずれていても、光軸の方向を変更することで光照射部20aの仰角を補正することができる。
ここで、「仰角」とは、鋼管の中心線を通る平面内における、光軸と鋼管の中心線とのずれ角度のことをいう。
【0060】
次に、図15の(b)に示すように、固定側保持体21をそのままの状態で、移動側保持体23を固定側保持部材21に向かって鋼管10の軸方向に移動させ、移動させた位置で移動側保持体23を鋼管10上に配置する。ここでも、移動側保持体23を鋼管10上に当接させることで、スケール部材22の目盛りMの臨む方向が鋼管10の当接した箇所の軸方向に対して平行となる。そして、レーザ光照射装置20からスケール部材22に向かってレーザ光を照射し、レーザ光がスケール部材22の目盛りMを付した部分に当たるようにする。なお、この場合も、レーザ光が目盛りMの中央線からずれた位置に当たっている場合は、上記と同様に、移動側保持体23を鋼管10の周方向に移動(回転)させて、目盛りMの中央線にレーザ光が当たるように位置補正する。そして、レーザ光が目盛りMに照射されている箇所を読み取ってその値を確認する。
【0061】
その後、同様に、移動側保持体23を鋼管10上の所定の測定箇所に移動させ、その移動させた箇所ごとに、上記移動側保持体23を鋼管10上に配置する工程と、上記鋼管10の周方向における移動側保持体23の位置を補正する工程と、上記レーザ光が目盛りMに照射されている箇所を読み取って光軸Aと鋼管10の表面との間の距離を測定する工程とを行う。
【0062】
その結果、各測定箇所で測定した値が上記基準値と同じ値である場合は、各測定箇所において鋼管10に湾曲が生じていないと判断できる。一方、値が異なっている場合は、異なる値となった測定箇所付近において鋼管10に湾曲が生じていることになる。また、各測定箇所における測定値と上記基準値との差を演算することにより、湾曲量を算出することが可能である。
【0063】
また、さらに測定の正確性を期す場合は、上記の一連の作業を1本の鋼管において周方向に異なる箇所(例えば周方向の4箇所)で行ってもよい。
【0064】
なお、図15の(a)(b)に示す例では、固定側保持体21及び移動側保持体23として、図2〜図6に示す一対の脚部材25,26又は28,29を有する構成を用いているが、図7〜図11に示す円弧状部材31,32を有する構成を用いた場合も上記と同様の方法で鋼管の湾曲量を測定することが可能である。
【0065】
また、図12の(a)(b)に示すように、固定側保持体21にベルト40を取り付けている場合は、固定側保持体21を鋼管10上に配置する際に、ベルト40で固定側保持体21を鋼管10に固定することにより、測定作業中における固定側保持体21の位置ずれによる精度低下を防止することができる。また、固定側保持体21を鋼管10に対して磁着するように構成している場合も、同様に、測定作業中における固定側保持体21の位置ずれによる精度低下を防止することが可能である。
【0066】
また、図13に示す目盛りMが同心円状のスケール部材22を用いた場合、移動側保持体23を鋼管10に当接させて配置した状態で、レーザ光が目盛りMの中央線からずれた位置に当たっていても、移動側保持体23を鋼管10の周方向に移動(回転)させて位置補正する必要はない。すなわち、この場合は、目盛りMの同じ線上では、いずれの箇所においても鋼管10の中心Oからの距離が等しくなるので、レーザ光が目盛りMの中央線と一致しているか否かにかかわらず、レーザ光が当たっている箇所を読み取ることで光軸Aと鋼管10の表面との間の距離を測定することができる。
【0067】
また、図14に示す複数の凹部33a〜33dを有するスケール部材22を用いた場合も、鋼管と嵌合する凹部33a〜33dと同心円状の目盛りM1〜M4において、同じ線上では、いずれの箇所においても嵌合する鋼管の中心からの距離が等しくなるので、レーザ光が目盛りの中央線からずれた位置に当たっていても、移動側保持体23を鋼管10の周方向に移動させて位置補正する必要はない。従って、この場合も、レーザ光が目盛りの中央線と一致しているか否かにかかわらず、レーザ光が当たっている箇所を読み取ることで光軸と鋼管の表面との間の距離を測定することが可能である。
【0068】
また、上述の測定方法では、レーザ光照射装置20を固定し、スケール部材22を移動させる場合を例に説明したが、反対に、スケール部材22を固定し、レーザ光照射装置20を移動させてもよい。また、レーザ光照射装置20とスケール部材22の両方を移動させて測定することも可能である。すなわち、レーザ光照射装置20とスケール部材22とを保持する2つの保持体21,23のうち、少なくとも一方を鋼管10の軸方向に移動させればよい。
【0069】
また、本発明に係る構成は、上記レーザ光を用いたもの以外に、照準スコープを用いたものにも適用可能である。
照準スコープを用いた構成は、例えば、図2において示すレーザ光照射装置20の代わりに、固定側保持体21に照準スコープを設ける以外は、基本的に同様の構成でよい。図示省略するが、この場合、固定側保持体21を鋼管10の表面に当接させた状態では、照準スコープの視準線が鋼管10の当接した箇所の軸方向と平行となるように、照準スコープを保持する。
【0070】
また、照準スコープを用いた場合の鋼管湾曲量測定方法は、上記レーザ光を用いた場合の測定方法と基本的に同様である。
照準スコープを用いた場合の測定方法を簡単に説明すると、まず、鋼管10の両端側に固定側保持体21と移動側保持体23とを配置した状態で、照準スコープを覗いてその照準がスケール部材22の目盛りMと一致している箇所を読み取って、その値を視準線と鋼管10の表面との間の距離の基準値とする。
【0071】
このとき、図17の(a)に示すように、目盛りMが照準スコープの照準である十字線Tに対して傾いている場合は、移動側保持体23を鋼管10の周方向に移動(回転)させて、同図の(b)に示すように、目盛りMを十字線Tに対して傾かないように揃えてから、目盛りMの十字線Tと一致する値を読み取る。
【0072】
また、照準スコープの視準線の方向を、鋼管10の中心線Xを通る平面内で可変とする機構を設けている場合は、事前に測定しておいた照準スコープの機械高さから予測される目盛りM上の読み取り位置と、実際の照準スコープからの読み取り位置とが、目盛りMの上又は下に大きくずれていても、視準線の方向を変更することで照準スコープの仰角を補正することができる。
なお、ここでの「仰角」は、鋼管の中心線を通る平面内における、視準線と鋼管の中心線とのずれ角度のことをいう。
【0073】
その後、移動側保持体23を鋼管10上の所定の測定箇所に移動させ、その移動させた箇所ごとに、移動側保持体23を鋼管10上に配置する工程と、鋼管10の周方向における移動側保持体23の位置を補正する工程と、照準と目盛りMとが一致している箇所を読み取って視準線と鋼管10の表面との間の距離を測定する工程とを行う。
【0074】
その結果、上記と同様に、各測定箇所で測定した値が上記基準値と同じ値である場合は、各測定箇所において鋼管10に湾曲が生じていないと判断できる。一方、値が異なっている場合は、異なる値となった測定箇所付近において鋼管10に湾曲が生じていることになる。また、各測定箇所における測定値と上記基準値との差を演算することにより、湾曲量を算出することが可能である。
【0075】
なお、照準スコープを用いた構成には、図2に示す一対の脚部材25,26又は28,29を用いた構成以外に、図7に示す円弧状部材31,32を有する構成、図12の(a)(b)に示す固定用ベルト40を用いた構成も適用可能である。さらに、それぞれの構成において、スケール部材22を、図13又は図14に示す構成とすることも可能である。
【0076】
また、照準スコープを用いた測定方法においても、上述の例とは異なり、スケール部材22を固定し、照準スコープを移動させてもよい。また、照準スコープとスケール部材22の両方を移動させて測定することも可能である。すなわち、この場合も、照準スコープとスケール部材22とを保持する2つの保持体21,23のうち、少なくとも一方を鋼管10の軸方向に移動させればよい。
【0077】
以上のように、本発明によれば、鋼管の湾曲量を測定するにあたって、水糸に代えてレーザ光や照準スコープを用いているので、風が吹いても水糸のように位置がずれることはなく、測定精度が低下することはない。さらに、本発明によれば、固定側保持体及び移動側保持体を鋼管上に当接させるだけで、レーザ光の光軸又は照準スコープの視準線と、スケール部材の目盛りの臨む方向とが、それぞれ鋼管の中心線に対して略平行となるように保持することができるので、簡単な方法によって湾曲量の測定精度を向上させることができる。また、これにより、事前に鋼管上に測定箇所をマーキングしておかなくても容易に光軸又は視準線と目盛りの臨む方向とを鋼管の中心線と略平行に保持できるので、作業負担が軽減され、作業速度のアップを図れるようになる。
【0078】
また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、本発明を鉄塔の主柱材の湾曲量測定に用いる場合を例に挙げて説明したが、鉄塔の腹材が鋼管で構成されている場合は、その腹材の湾曲量の測定においても本発明を用いることは可能である。また、本発明に係る鋼管湾曲量測定装置及びその方法が用いられる鉄塔は、図1に示す構成以外の鉄塔であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 鉄塔
2 鋼管湾曲量測定装置
10 鋼管
20 レーザ光照射装置
21 固定側保持体
22 スケール部材
23 移動側保持体
25 脚部材
25a 平坦面
26 脚部材
26a 平坦面
28 脚部材
28a 平坦面
29 脚部材
29a 平坦面
31 円弧状部材
31a 円弧面
32 円弧状部材
32a 円弧面
40 ベルト
A 光軸
M 目盛り
O 中心
X 中心線
α 開き角度
β 開き角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔用の鋼管の湾曲量を測定する鋼管湾曲量測定装置であって、
レーザ光照射装置又は照準スコープを保持し、鋼管の表面に固定して配置する固定側保持体と、
目盛りを付したスケール部材を保持し、鋼管の表面上を軸方向に移動させて所定の測定位置に配置する移動側保持体とを備え、
前記固定側保持体と前記移動側保持体は、鋼管の外周面に当接した際に鋼管の当接した箇所の軸方向に対する向きが特定の一の向きとなる形状に構成され、
前記固定側保持体と前記移動側保持体とを鋼管の外周面に当接させた状態で、前記レーザ光照射装置の光軸又は前記照準スコープの視準線の方向、及び前記スケール部材の目盛りの臨む方向が、それぞれ鋼管の前記当接した箇所の軸方向と平行になるように保持するように構成したことを特徴とする鋼管湾曲量測定装置。
【請求項2】
前記レーザ光照射装置の光軸又は前記照準スコープの視準線の方向を、鋼管の中心線を通る平面内で可変とする機構を設けた請求項1に記載の鋼管湾曲量測定装置。
【請求項3】
前記固定側保持体と前記移動側保持体の少なくとも一方は、所定の開き角度を形成するように互いに向かい合って設けられた2つの平坦面を有し、当該2つの平坦面を鋼管の外周面に当接させるように構成した請求項1又は2に記載の鋼管湾曲量測定装置。
【請求項4】
前記固定側保持体と前記移動側保持体の少なくとも一方は、鋼管の外径よりも大きい径に形成された凹状の円弧面を有し、当該凹状の円弧面を鋼管の外周面に当接させるように構成した請求項1又は2に記載の鋼管湾曲量測定装置。
【請求項5】
前記固定側保持体を、鋼管に対して磁着するように構成した請求項1から4のいずれか1項に記載の鋼管湾曲量測定装置。
【請求項6】
前記固定側保持体を、鋼管に対してベルトで固定するように構成した請求項1から4のいずれか1項に記載の鋼管湾曲量測定装置。
【請求項7】
前記目盛りを、鋼管の中心から同心円状に形成した請求項1から6のいずれか1項に記載の鋼管湾曲量測定装置。
【請求項8】
鉄塔用の鋼管の湾曲量を測定する鋼管湾曲量測定方法であって、
レーザ光照射装置又は照準スコープを保持すると共に、鋼管に当接させた際の鋼管の当接した箇所の軸方向に対する向きが特定の一の向きとなる形状に構成された固定側保持体を、鋼管に当接させることにより、前記レーザ光照射装置の光軸又は前記照準スコープの視準線が鋼管の前記当接した箇所の軸方向と平行になるように固定側保持体を配置する工程と、
目盛りを付したスケール部材を保持すると共に、鋼管に当接させた際の鋼管の当接した箇所の軸方向に対する向きが特定の一の向きとなる形状に構成された移動側保持体を、鋼管に当接させることにより、前記スケール部材の目盛りの臨む方向が鋼管の前記当接した箇所の軸方向と平行になるように移動側保持体を配置する工程と、
前記レーザ光照射装置から発するレーザ光がスケール部材の目盛りの中央線上に照射されるように、又は前記照準スコープの照準に対してスケール部材の目盛りが傾かないように、鋼管の周方向における前記移動側保持体の位置を補正する工程と、
前記レーザ光照射装置から発したレーザ光が目盛りに照射された箇所、又は照準スコープの照準が目盛りと一致している箇所を読み取ることで、光軸又は視準線と鋼管の表面との間の距離を測定する工程とを有し、
前記移動側保持体を鋼管の軸方向に移動させて、その移動させた箇所ごとに、前記移動側保持体を配置する工程と、前記鋼管の周方向における前記移動側保持体の位置を補正する工程と、前記光軸又は視準線と鋼管の表面との間の距離を測定する工程とを行うことを特徴とする鋼管湾曲量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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