説明

錠剤型洗剤の製造方法

【課題】低発泡性であり洗浄作用が大きく、また洗浄力が水の硬度の影響を受け難く、さらに生分解性が良好で環境負荷が低く、低毒性で安全性にも問題がない非イオン性界面活性剤を含有するとともに、使用時に計量を行う必要がなく使用性にも優れた錠剤型洗浄剤の製造方法であって、生産性に優れ、また錠剤の水への溶解性に優れるとともに機械的強度の優れた錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(a)非イオン性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物と、ゲル状剤と、を混練して混練物を得る混練工程と、(b)前記混練物を成形し錠剤を得る成形工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物から抽出された天然脂肪酸等の非イオン性界面活性剤を含有する錠剤型洗浄剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非イオン性界面活性剤は、一般に低発泡性であり洗浄作用が大きく、また洗浄力が水の硬度の影響を受け難いという性質を有している。さらに、生分解性が良好で環境負荷が低く、低毒性で安全性にも問題がない等の優れた性質を有しているため、洗浄剤に広く用いられている。
一方、洗浄剤の形態として、液状タイプや粉末状タイプのものが主に使用されている。しかし、液状や粉末状の洗浄剤は使用時に計量を行う必要があり、しかも液や粉末が飛び散る場合があり使用性に欠けるという問題があった。
そこで、非イオン性界面活性剤を含有する錠剤型の洗浄剤が要望されており、種々の錠剤型の洗浄剤が提案されている。
従来の技術としては、(特許文献1)に「非イオン性界面活性剤と、非イオン性界面活性剤を吸蔵する吸油剤とを含有する洗剤原料を混合する工程と、前記工程で得られた混合物を造粒し洗剤粒子を得る工程と、前記洗剤粒子を圧縮し錠剤を得る工程と、を備えた錠剤型洗剤の製造方法」が開示されている。
(特許文献2)には、「非イオン性界面活性剤と水不溶性無機物を含有する活性剤粒子と、崩壊剤粒子と、を混合した後、打錠機で圧縮して錠剤を製造する錠剤型洗剤の製造方法」が開示されている。
【特許文献1】特開平6−207199号公報
【特許文献2】特開2002−180098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)及び(特許文献2)に開示の技術は、非イオン性界面活性剤を含有する粒子を打錠機等で圧縮して錠剤を製造するものであるが、非イオン性界面活性剤は賦形性が小さいため成形性に乏しく、また洗剤原料は粒状化を防止するため水分率が低いので、洗剤原料や洗剤粒子を単に打錠するだけでは錠剤としての強度が不足し、製造中や保存時或いは輸送時等に崩れ易いという課題を有していた。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、生産性に優れ、また錠剤の水への溶解性に優れるとともに機械的強度の優れた錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために本発明の錠剤型洗浄剤の製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法は、(a)非イオン性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物と、ゲル状剤と、を混練して混練物を得る混練工程と、(b)前記混練物を成形し錠剤を得る成形工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)非イオン性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物をゲル状剤と混練するので、ゲル状剤と混練することによって洗浄剤組成物がゲル状にされ、ゲル状の3次元構造によって錠剤の機械的強度を向上させることができる。
(2)混練工程において非イオン性界面活性剤が混練された混練物を得た後、これを成形し錠剤を得るので、非イオン性界面活性剤を錠剤内に保持でき、生産性に優れるとともに非イオン性界面活性剤の洗浄作用を発現させることができる。
【0006】
ここで、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル及びアルキルフェニルエーテル,アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル,ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー,ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル等のエーテル型、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル,ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル,ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル等のエーテルエステル型、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル,グリセリンエステル,ポリグリセリンエステル,ソルビタンエステル,プロピレングリコールエステル,ショ糖エステルのエステル型、脂肪酸アルカノールアミド,ポリオキシエチレン脂肪酸アミド,ポリオキシエチレンアルキルアミン,アミンオキシド等の含窒素型、椰子等の植物から抽出した天然脂肪酸が用いられる。
なかでも、ポリオキシエチレンオレインエーテル,ポリオキシアルキレンエーテル等のエーテル型、椰子等の植物から抽出した天然脂肪酸が好適に用いられる。環境負荷を低くできるからである。
【0007】
洗浄剤組成物における非イオン性界面活性剤の含有量としては、7〜30重量%好ましくは10〜25重量%が好適に用いられる。非イオン性界面活性剤の含有量が10重量%より少なくなるにつれ洗浄力が低下する傾向がみられ、25重量%より多くなるにつれ錠剤の外に染み出したりべた付きが生じたりする傾向がみられる。特に、7重量%より少なくなるか30重量%より多くなると、これらの傾向が著しくなるため、いずれも好ましくない。
【0008】
ゲル状剤としては、グルコマンナン、ゼラチン、ペクチン、コクザッツ,グッタペルカ,アラビアゴム等の天然ゴム、エチルセルロース,ピロキシリン,酢酸セルロース,酢酸フタル酸セルロース,フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース,カルボキシメチルエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、寒天,アルギン酸ナトリウム等の海藻類等の天然高分子、ポリビニルピロリドン,ポリアクリル酸,ポリメタクリル酸,ポリエチレングリコール等の合成高分子が用いられる。これらを水や湯等と混合することにより、ゲル状剤を製造することができる。なかでも、グルコマンナン,ゼラチン,寒天,ペクチン,天然ゴム等の天然高分子が好適に用いられる。錠剤型洗浄剤が溶解した溶解液の環境負荷を小さくするためである。
【0009】
洗浄剤組成物は、非イオン性界面活性剤の他、酒石酸,フマル酸,クエン酸,リンゴ酸,マレイン酸,グルコン酸,コハク酸,サリチル酸,アジピン酸等の有機酸、リン酸,スルファミン酸等の無機酸等のうち1種又は複数種を含有することができる。これにより、義歯や入れ歯に付着した歯石の主構成成分であり5以下のpHで溶解するリン酸カルシウムを、義歯や入れ歯から容易に除去することができる。
【0010】
また、炭酸塩、珪酸塩、過炭酸塩等のアルカリ剤の1種又は複数種を含有することができる。
炭酸塩としては、炭酸ナトリウム,炭酸カリウム等のアルカリ金属塩、炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩;炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウム等のアルカリ金属塩、炭酸水素カルシウム,炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、炭酸水素アンモニウム等のアンモニウム塩等の炭酸水素塩、セスキ炭酸ナトリウム等を用いることができる。炭酸塩を含有することにより、油脂肪軟化作用と、pHを保ち洗浄作用を安定に持続させることができる。
炭酸塩の含有量としては、洗浄剤組成物の40〜60重量%が好適に用いられる。炭酸塩の含有量が40重量%より少なくなるにつれ油脂分の軟化効果が低下し、被洗浄物の表面に付着した油脂分の除去効果が低下する傾向がみられ、60重量%より多くなるにつれ他の配合成分の含有量、特に過炭酸塩,キレート剤の含有量が低下し、それらの効果が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0011】
珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、オルト珪酸カリウム、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、珪酸アルミニウム、ゼオライト等のアルミノ珪酸塩等を用いることができる。珪酸塩を含有することにより、スライム,油脂,スケール等の剥離作用を高めることができる。
珪酸塩の含有量としては、洗浄剤組成物の5〜10重量%が好適に用いられる。珪酸塩の含有量が5重量%より少なくなるにつれスライム,油脂,スケール等の剥離作用が低下する傾向がみられ、10重量%より多くなるにつれ他の配合成分の含有量、特に炭酸塩,過炭酸塩,キレート剤の含有量が低下し、それらの効果が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0012】
過炭酸塩としては、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等のアルカリ金属塩を用いることができる。過炭酸塩を含有することにより、強固に付着した汚れの剥離効果を高めるとともに、漂白作用や殺菌作用が得られる。
過炭酸塩の含有量としては、洗浄剤組成物の20〜30重量%が好適に用いられる。過炭酸塩の含有量が20重量%より少なくなるにつれ被洗浄物に付着した汚れの剥離効果が低く漂白作用や殺菌作用が低下する傾向がみられ、30重量%より多くなるにつれ他の配合成分の含有量、特に炭酸塩,キレート剤の含有量が低下し、それらの効果が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0013】
他のアルカリ剤として、クエン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、重炭酸塩等を含有することもできる。
【0014】
キレート剤を含有することもできる。これにより、カルシウムやマグネシウム等の金属イオンを解離状態に保つことができ、洗浄効果を安定に維持することができ、溶解された汚れが再付着するのを防止できる。
キレート剤としては、アミノカルボン酸、オキシカルボン酸等を用いることができる。オキシカルボン酸としては、グルコン酸、クエン酸、グルコール酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等又はそれらの塩等を用いることができる。なかでも、グルコン酸ナトリウム等のグルコン酸塩が好適に用いられる。天然由来成分であり環境負荷を低くでき、また界面活性剤の洗浄力を助長し、被洗浄物に対する防食作用があり、さらに金属イオンに対する優れたキレート作用を有しているからである。
キレート剤の含有量としては、洗浄剤組成物の5〜10重量%が好適に用いられる。キレート剤の含有量が5重量%より少なくなるにつれ溶解された汚れが被洗浄物に再付着する傾向がみられ、10重量%より多くなるにつれ、他の配合成分の含有量、特に炭酸塩,過炭酸塩の含有量が低下し、それらの効果が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0015】
また、精油を含有することもできる。精油としては、ヒバ、ヒノキ、サワラ等から抽出されヒノキチオール等を含有しているものが好適に用いられる。これにより、大腸菌群,黄色ブドウ球菌,サルモネラ菌,レジオネラ菌等の各種細菌に対する除菌効果や、アンモニア等に対する消臭効果を得ることができる。
精油の含有量としては、洗浄剤組成物の0.1〜5重量%が好適に用いられる。精油の含有量が0.1重量%より少なくなるにつれ除菌・消臭効果が低下する傾向がみられ、5重量%より多くなるにつれ、他の配合成分の含有量、特に炭酸塩,過炭酸塩の含有量が低下し、それらの効果が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0016】
また、崩壊促進剤を含有することもできる。これにより、水中での崩壊性を高め溶解性を高めることができる。
崩壊促進剤としては、HLBが10〜16のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油等の構造内にエステル結合を有する非イオン性界面活性剤、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム等のアルカリ金属珪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の非石鹸アニオン界面活性剤等を用いることができる。
なお、洗浄剤組成物は、水分率が0〜30%好ましくは0〜20%より好ましくは0〜15%になるように乾燥させるのが好ましい。潮解性を有する炭酸塩や過炭酸塩等を含有する洗浄剤組成物が粒状化するのを防止するためである。
【0017】
混練工程としては、洗浄剤組成物とゲル状剤の所定量を、シンプソンミル,ブレード型ニーダ,ロールミキサ等の混練機に入れ、混練して混練物を得るものが用いられる。
【0018】
成形工程としては、混練工程で得られた混練物を金型内に充填した後、冷間で加圧してタブレット状にするものが用いられる。冷却させることによりゲル状剤を硬化させ、錠剤の硬度を高めることができる。
成形された錠剤は、自然乾燥等によって内部まで乾燥させることによって、機械的強度の高い錠剤型洗浄剤を得ることができる。
【0019】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法であって、前記混練工程において、前記洗浄剤組成物と前記ゲル状剤とを30〜99℃好ましくは30〜90℃に加熱しながら混練する構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)洗浄剤組成物とゲル状剤とを30〜99℃に加熱しながら混練するので、ゲル状にした洗浄剤組成物の粘度を低下させ、成形工程において、金型内へ容易に充填することができるようにして成形性を高めることができる。
【0020】
ここで、混練工程における洗浄剤組成物とゲル状剤の混練物は、30〜99℃好ましくは30〜90℃に加熱される。混練物の温度が30℃より低くなるにつれ、混練物の粘度が高く成形性が低下する傾向がみられ、90℃より高くなるにつれゲル状剤が分解することがあり錠剤の機械的強度が低くなる傾向がみられる。特に99℃より高くなると、この傾向が著しくなるため好ましくない。
【0021】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法であって、前記洗浄剤組成物に30〜99℃に加熱した前記ゲル状剤を加えて混練する構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)30〜99℃に加熱されたゲル状剤は、加熱直後が最も粘度が低く、洗浄剤組成物と混練すると水分が洗浄剤組成物に吸収されるとともに、混練するにつれて冷却されて粘度が高くなっていく。このため、洗浄剤組成物とゲル状剤とを加熱しながら混練する場合と比較して、混練中にゲル状剤から滲み出る水分量が少ないため、混練物のべた付きを抑え混練物の成形性を高めることができる。
(2)加熱直後のゲル状剤は粘度が低く洗浄剤組成物に分散させて混練し易いため、洗浄剤組成物とゲル状剤とを加熱しながら混練する場合と比較して、ゲル状剤の配合量を少なくすることができる。このため、錠剤型洗浄剤の水中での崩壊性を高め溶解性を高めることができる。
【0022】
ここで、ゲル状剤は30〜99℃好ましくは30〜90℃に加熱され、ゲル状剤の加熱温度より低い温度、好ましくは30℃より低い温度条件下で洗浄剤組成物と混練される。ゲル状剤の加熱温度が30℃より低くなるにつれ、ゲル状剤の粘度が高く混練性が低下する傾向がみられ、90℃より高くなるにつれゲル状剤が分解することがあり錠剤の機械的強度が低くなる傾向がみられる。特に99℃より高くなると、この傾向が著しくなるため好ましくない。
【0023】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法であって、前記ゲル状剤がグルコマンナンを含有した構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)グルコマンナンは天然多糖類のため環境負荷を低くすることができるとともに、水分とともに混練することでゲル状化されるため操作性に優れ、さらにグルコマンナンは水に対する溶解度が低いため、錠剤のべた付き等を少なくすることができる。
(2)グルコマンナンは細菌の培地となり難いため、細菌による品質劣化(錠剤の機械的強度の低下、かびの発生)が起こり難く保存性や品質の安定性に優れる。
【0024】
ここで、グルコマンナンとしては、コンニャクイモの根茎、ゾウゲヤシの胚乳、ラン科植物の球根、ハリモミのヘミセルロース等から得られるものが用いられる。なかでも、コンニャクイモの根茎やユリの球根等に含まれるコンニャクマンナンが好適に用いられる。コンニャクマンナンとしては、コンニャクイモをすりおろしたもの、乾燥させた粉末、コンニャクイモを適当な厚さにスライスして天日乾燥したものを粉砕したもの等を用いることができる。
【0025】
グルコマンナンに加え、水と塩基性硬化剤を加え混合することでゲル状剤を得ることができる。
塩基性硬化剤としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化カルシウム,水酸化バリウム,水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウム,炭酸バリウム,炭酸水素アンモニウム等の金属炭酸塩若しくはアンモニウム炭酸塩、L−アルギニン,L−リジン等の塩基性アミノ酸、アミルアミン,ジエチルアミン,2−アミノエタノール等のアミン類、硼酸アンモニウム、硼酸カルシウム,メタ硼酸ナトリウム,四硼酸ナトリウム,四硼酸水素メチルアンモニウム等の硼酸塩の内の1種以上が用いられる。
【0026】
ゲル状剤は、グルコマンナン10重量部に対し、塩基性硬化剤1〜400重量部好ましくは2〜200重量部、水500〜30000重量部好ましくは1000〜20000重量部を混合したものが、混練物を成形に適した粘度にすることができ好適である。
ここで、塩基性硬化剤は、その種類にもよるが、2重量部より少なくなるにつれグルコマンナンの硬化が不十分で硬化後の錠剤の機械的強度が低下する傾向がみられ、200重量部より多くなるにつれ錠剤内に残留する塩基性硬化剤の反応により大気中の二酸化炭素を吸収して変質し易くなる傾向がみられる。特に、塩基性硬化剤が1重量部より少なくなるか400重量部より多くなると、これらの傾向が著しくなるので、いずれも好ましくない。
【0027】
水は、グルコマンナン10重量部に対し1000重量部より少なくなるにつれゲル状剤の粘度が高く成形性が低下する傾向がみられ、20000重量部より多くなるにつれ後工程の乾燥時間が長くなり生産性が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。特に、水が500重量部より少なくなるか、30000重量部より多くなると、これらの傾向が著しくなるため、いずれも好ましくない。
【0028】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法であって、前記非イオン性界面活性剤が、植物から抽出された天然脂肪酸である構成を有している。
この構成によって、請求項1乃至4の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)非イオン界面活性剤が植物から抽出された天然脂肪酸なので、毒性がなく生体への影響がなく、さらに環境負荷を低くすることができる。
【0029】
ここで、植物から抽出された天然脂肪酸としては、椰子等の植物から抽出した椰子油アルカノール等が用いられる。
【0030】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の内いずれか1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法であって、前記洗浄剤組成物100重量部に対し、前記ゲル状剤を5〜40重量部好ましくは8〜20重量部配合する構成を有している。
この構成により、請求項1乃至5の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)洗浄剤組成物100重量部に対しゲル状剤を5〜40重量部配合するので、ゲル状剤の錠剤表面への染み出しを防止できるとともに混練性を高め、また水に崩壊し易く、かつ、製造中や輸送中等に壊れることのない機械的強度を有する錠剤を製造できる。
【0031】
ここで、洗浄剤組成物100重量部に対するゲル状剤の配合量が8重量部より少なくなるにつれ錠剤の機械的強度が向上しなくなる傾向がみられ、20重量部より多くなるにつれ錠剤の機械的強度が高くなるが水中の崩壊性が低下するとともに、洗剤が水中に溶解した際に不純物として浮遊するゲル状剤が増加する傾向がみられる。特に、5重量部より少なくなるか40重量部より多くなると、これらの傾向が著しいため、いずれも好ましくない。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明の錠剤型洗浄剤の製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)ゲル状剤と混練することによって洗浄剤組成物がゲル状にされ、ゲル状の3次元構造によって錠剤の機械的強度を向上させることができ、製造中や保存時或いは輸送時等に崩れ難い高い機械的強度を有する錠剤を製造できる錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することができる。
(2)非イオン性界面活性剤を錠剤内に保持できるので高い洗浄作用が得られる錠剤型洗浄剤が製造でき、さらに生産性に優れた錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することができる。
【0033】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)ゲル状にした洗浄剤組成物の粘度を低下させ、成形工程において、金型内へ容易に充填することができるようにして成形性を高め、生産性に優れた錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することができる。
【0034】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)混練中にゲル状剤から滲み出る水分量が少ないため、混練物のべた付きを抑え混練物の成形性を高め生産性に優れた錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することができる。
(2)加熱直後のゲル状剤は粘度が低く洗浄剤組成物に分散させて混練し易いため、ゲル状剤の配合量を少なくすることができ、錠剤型洗浄剤の水中での崩壊性が高く溶解性の高い錠剤を製造できる錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することができる。
【0035】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)環境負荷を低くすることができるとともに、水分とともに混練することでゲル状化されるため操作性に優れ、さらにグルコマンナンは水に対する溶解度が低いため、錠剤のべた付き等を少なくすることができる操作性に優れた錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することができる。
(2)機械的強度の低下やかびの発生等の細菌による品質低下が起こり難く、保存性と品質の安定性に優れた錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することができる。
【0036】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1の効果に加え、
(1)非イオン界面活性剤が植物から抽出された天然脂肪酸なので、毒性がなく生体への影響がなく、さらに環境負荷の低い錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することができる。
【0037】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の内いずれか1の効果に加え、
(1)非イオン性界面活性剤やゲル化状剤の錠剤表面への染み出しを防止できるとともに混練性を高め、水に崩壊し易く、かつ、製造中や輸送中等に壊れることのない機械的強度を有する錠剤を製造できる錠剤型洗浄剤の製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実験例1〜5)
(表1)に示す配合で各原料を秤量したものを混合して実験例1〜5の錠剤型洗浄剤の洗浄剤組成物を製造した。
なお、ゲル状剤は、グルコマンナン10重量部、水10000重量部を容器内で十分に混合撹拌して作成した懸濁液と、これとは別に作成した、水7000重量部に塩基性硬化剤として水酸化カルシウム13重量部を溶解した硬化液とを混ぜて製造した。また、精油は、フイルドサイエンス製の植物性除菌型消臭液PCK(商品名)を用いた。
各洗浄剤組成物と、ゲル状剤とを(表1)に示す配合で混合し、水浴又は湯浴若しくは蒸気浴を用いて80℃に加熱しながら混練することによって混練物を得た。
この混練物を金型内に充填し、冷間で加圧した後に脱型し、取り出した錠剤を自然乾燥させて、実験例1〜5の錠剤型洗浄剤を得た。
【0039】
(実験例6)
(表1)に示す配合で各原料を秤量したものを混合して実験例6の錠剤型洗浄剤の洗浄剤組成物を製造した。
洗浄剤組成物の粉末を金型に充填し、100kg/cmの圧力で打錠することによって実験例6の錠剤型洗浄剤を得た。
【0040】
(実験例7〜11)
(表2)に示す配合で各原料を秤量したものを混合して実験例7〜11の錠剤型洗浄剤の洗浄剤組成物を製造し、実験例1〜5と同様にしてゲル状剤を製造した。
ゲル状剤を水浴又は湯浴若しくは蒸気浴を用いて80℃に加熱した後、各洗浄剤組成物に加えて室温(25℃)で混練して混練物を得た。
この混練物を金型に充填し、冷間で加圧した後に脱型し、取り出した錠剤を自然乾燥させて、実験例7〜11の錠剤型洗浄剤を得た。
【0041】
(溶解性の評価)
35℃の水道水1Lをビーカーに入れ、これに実験例1〜11の錠剤型洗浄剤5gを別々に投入し、マグネチックスターラーで1分間撹拌した。撹拌をやめた後に静置し、目視でビーカー内の洗浄剤の溶け残り(残渣及び浮遊物)を観察した。
残渣や浮遊物が観察されない場合は評価○、僅かに残渣や浮遊物が観察される場合は評価△、残渣や浮遊物が多量に観察される場合は評価×。
【0042】
(機械的強度の評価)
JIS A 5209に準拠した方法で3点曲げ試験を行い、錠剤型洗浄剤が破壊される最大応力を測定し、以下の基準に従って評価した。
最大応力が20kg以上の場合は評価○、5kg以上20kg未満の場合は評価△、5kg未満の場合は評価×。
【0043】
(成形性の評価)
成形後の錠剤型洗浄剤の形状を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
きれいな錠剤が形成された場合は評価○、縁が一部欠ける程度の不良があった場合は評価△、錠剤が形成できない場合は評価×。
以上の評価結果も(表1)及び(表2)にまとめて示した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
(表1)、(表2)に示すように、本実施例の錠剤型洗浄剤の製造方法によれば、ゲル状剤を加えない実験例6と比較して、機械的強度と成形性に優れた錠剤型洗浄剤を得ることができることが明らかになった。また、実験例4,5,10,11以外は、溶解性にも優れていることが明らかになった。
なお、溶解性において、実験例4,10の評価が△、実験例5,11の評価が×となっているのは、グルコマンナンであると思われる浮遊物がビーカー内に観察されたからである。ゲル状剤の配合量が多いからであると推察された。また、成形性において、実験例4及び5の評価が△となっているのは、混練物がべた付き打錠時に金型に張りついて、錠剤の縁の一部が欠ける不良が発生したからであり、実験例1,7の評価が△となっているのは、混練物の湿り気が少なく錠剤の縁の一部が欠ける不良が発生したからである。
また、加熱したゲル状剤を室温で洗浄剤組成物と混練した実験例7〜11(特に、実験例10,11)は、加熱しながらゲル状剤と洗浄剤組成物とを混練した実施例1〜5(特に、実験例4,5)と比較して、混練物のべた付きが少なく成形性に優れることが確認された。
【0047】
(洗浄力の評価)
実験例2、実験例3、実験例8の錠剤型洗浄剤について、秘密状態のもと財団法人日本食品分析センターにJIS K 3370:1994に基づき鉱物油の洗浄力の評価を依頼した。
この結果、いずれの錠剤型洗浄剤も評価点の平均値は+2.0であった。この数値は評価点中の最高数値であり、指標洗剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)と比較して2倍の洗浄力があることを示している。
本実施例によれば、油脂等の汚れが付着した食器,コーヒーメーカー,エスプレッソマシン等の飲食用具や調理用具等の洗浄剤として好適であることが明らかになった。
【0048】
(入れ歯の洗浄評価)
市販の入れ歯用の錠剤型洗浄剤(塩素系化合物を含有している)と実験例2の錠剤型洗浄剤について、市販の錠剤型洗浄剤と同じ使用方法で、被験者5名ずつの入れ歯の洗浄実験を行った。
その結果、市販の入れ歯用の錠剤型洗浄剤で洗浄した入れ歯を付けた被験者は、5名とも、入れ歯の歯肉が若干硬くなっており、さらに塩素臭がすると訴えた。一方、実験例2の錠剤型洗浄剤で洗浄した入れ歯を付けた被験者は、5名とも、塩素臭がなく入れ歯の歯肉も柔らかく快適であると評価した。
本実施例によれば、義歯や入れ歯等を洗浄する洗浄剤として好適であることが明らかになった。
【0049】
また、本実施例の製造方法で得られた錠剤型洗浄剤は、塩素系化合物、アルカリベンゼンスルホン酸等の界面活性剤等を含有していないので、人体に対する毒性がなく生分解性が高く環境保全性等に優れていることが明らかである。また、義歯や入れ歯の洗浄に用いた場合には、義歯等に塩素臭が付着せず、また歯肉部を収縮させることがないため、快適性に優れるともに頻繁に洗浄することができ、義歯等を清潔に保つことができる。また、油脂類を強力に洗浄でき、精油を含有しているので除菌も同時に行うことができることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
非イオン性界面活性剤を含有する錠剤型洗浄剤の製造方法に関し、生産性に優れ、また錠剤の水への溶解性に優れるとともに機械的強度に優れた錠剤型洗浄剤を製造できるとともに、義歯や入れ歯等を洗浄する洗浄剤、食器,コーヒーメーカー,エスプレッソマシン等の飲食用具や調理用具、内視鏡,歯科治療器具等の医療用器具等を洗浄する洗浄剤として最適な錠剤型洗浄剤の製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)非イオン性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物と、ゲル状剤と、を混練して混練物を得る混練工程と、(b)前記混練物を成形し錠剤を得る成形工程と、を備えていることを特徴とする錠剤型洗浄剤の製造方法。
【請求項2】
前記混練工程において、前記洗浄剤組成物と前記ゲル状剤とを30〜99℃に加熱しながら混練することを特徴とする請求項1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法。
【請求項3】
前記混練工程において、前記洗浄剤組成物に30〜99℃に加熱した前記ゲル状剤を加えて混練することを特徴とする請求項1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法。
【請求項4】
前記ゲル状剤が、グルコマンナンを含有していることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が、植物から抽出された天然脂肪酸であることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法。
【請求項6】
前記洗浄剤組成物100重量部に対し、前記ゲル状剤を5〜40重量部配合することを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1に記載の錠剤型洗浄剤の製造方法。

【公開番号】特開2006−328337(P2006−328337A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185786(P2005−185786)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(398058393)株式会社フイルドサイエンス (1)
【Fターム(参考)】