錠剤検査装置及びPTP包装機
【課題】PTPシートの製造過程における錠剤の欠け等の検査に際し、検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供する。
【解決手段】錠剤検査装置21は、照明装置22、カメラ23及び画像処理装置24等を備えている。照明装置22は、テオフィリン徐放性錠剤及び容器フィルム3に対し、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射する。これにより、テオフィリン徐放性錠剤の欠け等に関する検査が実施される。
【解決手段】錠剤検査装置21は、照明装置22、カメラ23及び画像処理装置24等を備えている。照明装置22は、テオフィリン徐放性錠剤及び容器フィルム3に対し、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射する。これにより、テオフィリン徐放性錠剤の欠け等に関する検査が実施される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートの製造に際し用いられる錠剤検査装置、及び、該錠剤検査装置を備えたPTP包装機を含む技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTPシートは、錠剤が充填されるポケット部が形成された樹脂製の包装用フィルムと、その包装用フィルムにポケット部の開口側を密封するように前記包装用フィルムに取着されるアルミニウム製のカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
PTPシートの製造に際しては、ポケット部に錠剤が充填された後、カバーフィルムが取着される前段階において、錠剤の欠けや剥離など、錠剤の異常に関する検査が行われる。
【0004】
当該検査に際しては、錠剤充填後において、例えばポケット部側に設けられた照射手段から光を照射し、照射手段とは反対側に設けられたカメラにて透過光の撮像を行うことにより、錠剤を透過した光の画像データに基づいて、錠剤表面に欠けや剥離等の異常があるか否かが検査される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−198175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来では、錠剤の色による輝度変化を避ける等するため、一般に850nm程度の近赤外光を利用して上記透過光検査を行っているが、錠剤の種類によっては適切な検査を行えない場合もある。
【0007】
例えば、テオフィリン徐放性錠剤は、一定時間持続的に薬効成分が放出されるよう、主としてテオフィリンから成る素顆粒を水不溶性物質により被覆し、該被覆顆粒を賦形剤と共に打錠されて形成されている。このため、テオフィリン徐放性錠剤に上記近赤外光を照射して撮像を行った場合には、素顆粒を構成するテオフィリンと、その周りの賦形剤成分との光の透過率の違い等から、図13の模式図に示すように、撮像された錠剤画像70は、被覆顆粒71の中心部分が暗く、輪郭部分が明るい輝度斑の大きい画像となる。その結果、錠剤表面の欠けや剥離等を適正に検出することが困難となっていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、PTPシートの製造過程における錠剤の欠け等の検査に際し、検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.主としてテオフィリンから成る素顆粒を水不溶性物質により被覆し、該被覆顆粒を賦形剤と共に打錠してなるテオフィリン徐放性錠剤を収容するPTPシートの製造過程にあって、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に前記錠剤が収容された後、前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムがシール状態で取着される前段階において用いられる錠剤検査装置であって、
前記錠剤及び包装用フィルムに対し、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光を照射可能な青色光源、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外光源を具備する照明手段と、
前記照明手段とは前記包装用フィルムを介して反対側に設けられ、前記光源から照射され前記錠剤を透過する透過光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像信号を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、前記画像信号から得た画像データに基づき、少なくとも前記錠剤の表面異常を検出可能に構成されていることを特徴とする錠剤検査装置。
【0011】
上記手段1によれば、PTPシートの製造過程にあって、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部にテオフィリン徐放性錠剤が収容された後、ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムがシール状態で取着される前段階において錠剤検査装置による検査が行われる。すなわち、照明手段の光源から、錠剤及び包装用フィルムに対し上記青色光(430nm〜490nm)又は上記近赤外光(940nm〜980nm)が照射され、前記照明手段とは包装用フィルムを介して反対側に設けられた撮像手段にて、前記光源から照射され錠剤を透過する透過光が撮像される。そして、画像処理装置では、撮像手段から出力される画像信号が処理され、画像信号から得られた画像データに基づき、少なくとも錠剤の表面異常が検出される。ここで、錠剤の表面異常としては、錠剤のひびや欠け等が挙げられる。
【0012】
特に、照明手段の光源として、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光を照射可能な青色光源、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外光源を用いることにより、テオフィリン徐放性錠剤を撮像した場合でも、被覆顆粒の中心部分と輪郭部分とで輝度差の少ない錠剤画像を取得することができる。結果として、錠剤表面のひびや欠け等を適正に検出することができ、検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0013】
手段2.前記照明手段は、前記包装用フィルム越しに前記撮像手段に直接入射する光を除去又は減光させる直接入射光制限手段を具備していることを特徴とする手段1に記載の錠剤検査装置。
【0014】
上記手段2によれば、被覆顆粒の中心部分と輪郭部分との輝度差を小さくし、上記手段1の作用効果をさらに高めると共に、錠剤表面のより微小な欠け等をも検査することが可能となる。また、「前記直接入射光制限手段は、少なくとも前記光源と、前記撮像手段のレンズ部中心とを結ぶ直線方向に対し、前記レンズ部の画角分以内の光のみすべて全反射可能に構成された角度透過率制御フィルタからなること」がより好ましい。
【0015】
手段3.前記照明手段は、前記青色光源及び前記近赤色光源の両者を具備し、照射される光を前記青色光と前記近赤色光との間で切換可能としたことを特徴とする手段1又は2に記載の錠剤検査装置。
【0016】
上記手段3によれば、そのときどきのニーズに応じた照射の下、検査を実行することができる。例えば、包装用フィルムとして、赤色系のフィルムが採用されることがあるが、このような場合にまで青色光源から青色光を照射させたのでは、却って包装用フィルム自体で遮光されてしまうことが懸念される。このような場合には、近赤色光源から近赤色光を照射することで、無色フィルムと同様に、錠剤に関し正確な検査を実現することが可能となる。
【0017】
手段4.手段1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【0018】
上記手段4のように、錠剤検査装置をPTP包装機に備えることで、PTPシートの製造過程において不良品を効率的に除外できる等のメリットが生じる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態におけるPTP包装機等の概略構成を示す模式図である。
【図2】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPシートを示す部分拡大断面図である。
【図3】照明装置を模式的に示す部分断面図である。
【図4】照明装置のうち、角度透過率制御フィルタの機能を模式的に説明する説明図である。
【図5】錠剤検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】「検査ルーチン」を示すフローチャートである。
【図7】(a)はチッピング(欠け)が生じ、中央に割線を有し、かつ、刻印の付された錠剤を模式的に示す平面図であり、(b)は(a)のJ−J線断面図であり、(c)はJ−J線に沿った画像信号(明度)曲線を示すグラフである。
【図8】錠剤ウインドウの概念を説明するための平面模式図である。
【図9】錠剤形状ウインドウの概念を説明するための平面模式図である。
【図10】2値化後の画像を示す模式図である
【図11】割線部のマスク処理の手法を説明する説明図である。
【図12】各種光源を用いた試験の結果を示す表である。
【図13】従来の検査装置によりテオフィリン徐放性錠剤を撮像して得られた錠剤画像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、錠剤検査装置をPTP包装機に装備することによって、PTP包装機においてPTPシートの不良(特に、チッピング、キャッピング、スティッキング等と称される錠剤の表面欠け等の異常)が検査される。
【0021】
図2(a),(b)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた包装用フィルムとしての容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルムとしての密封用フィルム4とを有している。容器フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によって構成され、光透過性を有している(ここでは、透明を呈している)。密封用フィルム4は、アルミニウムによって構成されている。また、各ポケット部2にはテオフィリン徐放性錠剤5が1つずつ収容されている。
【0022】
テオフィリン徐放性錠剤5(以下、単に「錠剤5」という)は、一定時間持続的に薬効成分が放出されるよう、主としてテオフィリンから成る素顆粒を水不溶性物質により被覆し、該被覆顆粒を賦形剤と共に打錠されて形成されている。
【0023】
図1に示すように、PTP包装機7は、錠剤5を容器フィルム3に自動的に包装するものである。具体的には、PP、PVCなどの帯状の樹脂フィルムをフィルム送りロール9とテンションロール10,11とで、加熱装置12及び成形装置13に送り込み、錠剤5充填用のポケット部2を樹脂フィルムに成形する。そして、樹脂フィルムにポケット部2の成形された容器フィルム3が、充填装置14の下まで送られてくると、充填装置14が各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する。
【0024】
一方、帯状に形成された密封用フィルム4は、テンションロール16,17を介してフィルム受けロール18の方へと案内されている。フィルム受けロール18には、加熱ロール19が圧接可能となっており、該加熱ロール19の外周面には、僅かに凸状に形成された格子状の線(図示略)が設けられている。そして、両ロール18,19間に、容器フィルム3及び密封用フィルム4が送り込まれるようになっている。両フィルム3,4が、両ロール18,19間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着される。これによって、錠剤5が各ポケット部2に充填された長尺状のPTPフィルム20が製造される。
【0025】
さて、前記充填装置14の下流側、かつ、前記フィルム受けロール18及び加熱ロール19の上流側には、容器フィルム3の移送経路に沿って、容器フィルム3(充填された錠剤5)の不良を検査するための錠剤検査装置21が配設されている。当該錠剤検査装置21は、ポケット部2に充填された錠剤5の割れ、欠け等の表面異常の検出を主目的とする検査を行うものである。
【0026】
上記検査を経て、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後、PTPフィルム20は、図示しない打抜装置によってPTPシート1単位に裁断される。なお、錠剤検査装置21によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシートは、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0027】
さて、PTP包装機7の概略は以上のとおりであるが、以下においては図3〜5等に基づき、錠剤検査装置21についてより具体的に説明する。
【0028】
錠剤検査装置21は、照明手段としての照明装置22、撮像手段としてのカメラ23、画像処理装置24、モニタ25、及びキーボード26等を備えている。
【0029】
まずは、照明装置22について詳細に説明する。本実施形態における照明装置22は、容器フィルム3のポケット部2側に設けられており(図1参照)、面発光が可能となっている。図3に示すように照明装置22は、容器フィルム3に近い側(図の上側)において容器フィルム3と平行に延びる拡散板27を有しているとともに、その内部には、LED実装基板28が設けられている。そして、LED実装基板28には、青色光を照射可能な青色LED28a(青色光源)が多数配列されている。尚、青色光の波長としては、430nm以上490nmであることが望ましく、本実施形態では470nmに設定されている。
【0030】
尚、青色LED28a(青色光源)に代えて、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外LED(近赤外光源)を備えた構成としてもよい。近赤外光は、通常のCCDカメラ等おいても撮像可能な波長であり、青色光等の可視光に比べて錠剤5等の透過率が高いため、より精度の高い検査が可能となる。しかも、錠剤5等として着色の施されたものが採用されたり、容器フィルム3として着色フィルムが採用されたりする場合があるが、このような場合でも、着色による減光要素を無視しやすいというメリットがある。
【0031】
さらに、前記拡散板27の容器フィルム3側の面には、直接入射光制限手段としての角度透過率制御フィルタ29が取着されている。当該角度透過率制御フィルタ29は、図4に示すように、少なくとも光源(ここでは青色LED28a)と、カメラ23のレンズ部中心を結ぶ直線L1上の光を全反射可能に構成されているとともに、前記直線L1に対し、プラスマイナス前記レンズ部の画角θ以内の光を全反射可能に構成されている。換言すれば、角度透過率制御フィルタ29は、前記レンズ部の画角θよりも大きな光のみを透過しうるよう構成されている。これにより、光源(青色LED28a)からの青色光のカメラ23への直接の入射が制限されるようになっている。
【0032】
また、撮像手段を構成する前記カメラ23は、前記容器フィルム3を介して前記照明装置22とは反対側(図1では上側)に設けられており、照明装置22から照射される光のうち、容器フィルム3及び錠剤5を透過した光を撮像可能となっている。本実施形態では、カメラ23としては、少なくとも青色光に感度のあるCCDカメラが採用されている。
【0033】
このように、本実施形態では、照明装置22から拡散して斜めに照射される青色光が、容器フィルム3及び錠剤5を照らし、そこを透過した光が、カメラ23によって二次元撮像されるように構成されている。そして、カメラ23によって撮像された画像データは、カメラ23内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で画像処理装置24に入力されるようになっている。
【0034】
画像処理装置24は、図5に示すように、カメラ23に対応する画像メモリ41、マスキング手段42、二値化手段43、判定用メモリ44、検査結果及び統計データメモリ45、カメラタイミング制御手段46、並びに、CPU及び入出力インターフェース47などから構成され、後述するような画像データの処理や、錠剤不良の判定(検査)等を実施可能となっている。
【0035】
カメラ23で撮像された二次元イメージデータは、デジタル信号に変換された後、対応する画像メモリ41に記憶される。また、イメージデータは、検査時において、マスキング手段42によりマスキング処理が行われた後、再度画像メモリ41に記憶され、同様に、二値化手段43により二値化された後、再度画像メモリ41に記憶される。
【0036】
CPU及び入出力インターフェース47は、各種処理プログラムを判定用メモリ44の記憶内容などを使用しつつ実行するとともに、PTP包装機7に制御信号を送出し又はPTP包装機7から動作信号などの各種信号を送受信するためのものである。これによって、例えば、PTP包装機7の不良シート排出機構などを制御することができるようになっている。また、CPU及び入出力インターフェース47は、モニタ25に表示データを送出する機能をも有する。かかる機能により、二値あるいは濃淡のイメージデータや不良検査結果などを、モニタ25に表示させることができるようになっている。さらに、CPU及び入出力インターフェース47は、キーボード26からのデータを入力する機能をも有する。
【0037】
検査結果及び統計データメモリ45は、イメージデータに関する座標等のデータ、検査結果データ、及び、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。これらの検査結果データや統計データは、CPU及び入出力インターフェース47の制御に基づき、適宜モニタ25に表示させることができる。また、これらの検査結果データや統計データに基づいてCPU及び入出力インターフェース47がPTP包装機7に制御信号を送出することもできる。
【0038】
カメラタイミング制御手段46は、カメラ23が撮像するイメージデータを、画像メモリ41に取り込むタイミングを制御するものである。かかるタイミングはPTP包装機7に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3を所定量送るごとにカメラ23によるシート単位(例えば打ち抜かれるPTPシート単位)で撮像(撮影)が行われる。
【0039】
なお、本実施形態においては、検査に先だって、各ウインドウの設定処理が実行されるようになっている。当該ウインドウは、予め設定される錠剤ウインドウJW及び錠剤形状ウインドウKWからなる。図8に示すように、錠剤ウインドウJWは、ポケット部2内の領域(ポケット部領域)と、ポケット部2外のシート部の領域(シート部領域)とを区別するための境界とされるものである。当該錠剤ウインドウJWは、良品サンプル及び各種データに基づき事前に設定されるものであって、ポケット部2の円と同心円をなし(ポケット部2が円形である場合)、かつ、径が一回り(例えば直径が1mm)大きい。そして、検査に際しては、例えば、図8(b)に示すように、各検査画像データに関し、錠剤ウインドウJWが設定された上で、ポケット部2内の領域について、錠剤の異常が検出される(ポケット部2外の領域(同図網目模様を付した領域)についてはマスキングが施される)ようになっている。
【0040】
また、図9に示すように、錠剤形状ウインドウKWは、錠剤5の形状が適正であるかを検査する際に用いられるものであって、事前に設定されるものである。錠剤形状ウインドウKWは、錠剤5の大きさよりも一回り小さい内側形状ウインドウKW1と、錠剤5の大きさよりも一回り大きい外側形状ウインドウKW2とからなる。
【0041】
次に、上記不良検査(錠剤検査)の手順について図6のフローチャート等に従って説明する。
【0042】
同図に示すように、「検査ルーチン」において、まずステップS101では、検査用の濃淡画像を取得する。次に、ステップS102においては、取得した画像につきシェーディング補正を行い、続くステップS103においては、所定の閾値に基づき2値化処理を行い、錠剤2値化画像A,Bを得る。ここで、図7及び図10に基づいて当該2値化処理について説明する。図7において、(a)は、チッピング(欠け)Tが生じ、かつ、中央に割線PLを有し、かつ、「C」字状の刻印KMの付された錠剤5を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のJ−J線断面図であり、(c)はJ−J線に沿った画像信号(明度)曲線を示すグラフである。錠剤5は、欠け等が生じて薄肉となっている部位ほど光を通しやすい。そのため、薄肉部位ほど画像が明るくなる傾向にある。本実施形態における2値化処理に際しては、まず、基準閾値δ0以上で、かつ、第1の閾値δ1以下(範囲d1以内)の2値化画像A(図10(a)参照)を得る。当該画像Aにおいては、チッピングTや割線PLを除いた正常な錠剤部位が明るいものとなる。また、これとともに、基準閾値δ0以上で、かつ、第2の閾値δ2以下(範囲d2以内)の2値化画像Bを得る。当該画像Bにおいては、チッピングT、割線PLに加えて、刻印KM部分を除いた正常な錠剤部位が明るいものとなる。尚、基準閾値δ0、第1の閾値δ1及び第2の閾値δ2は、そのときどきの錠剤の厚みや密度等によってそれぞれ違った値に設定される。
【0043】
その後、ステップS104において、塊処理を行う。より詳しくは、上記2値化画像Aを塊処理した結果Cと、2値化画像Bを塊処理した結果Dとを得る。
【0044】
次に、ステップS105において、予め設定した前記錠剤ウインドウJWを用いて、ポケット部領域を特定するとともに、各ポケット部領域において、面積値が基準錠剤面積Lo以上の塊を抽出する(Lo未満の塊を除去する)。その後、ステップS106では、各ポケット部領域毎の塊個数が「1」であるか否かを判定し、否定判定された場合には、後述するステップS110へ移行する。
【0045】
これに対し、各ポケット部領域毎の塊個数が「1」である場合には、ステップS107において、前記錠剤形状ウインドウKWを用いて、錠剤5の形状が良好(適正)であるか否かを判断する。より詳しくは、前述した錠剤5の塊データより錠剤5の重心を求め、当該重心を同心とするようにして、予め設定された錠剤形状ウインドウKW(内側形状ウインドウKW1及び外側形状ウインドウKW2)を同時に配置し、両ウインドウKW1,KW2間から錠剤5の外形線が逸脱するか否かを判断する。そして、両ウインドウKW1,KW2間から錠剤5の外形線が逸脱する場合に、錠剤5の形状が異常であるものとして、ステップS109へ移行し、そこで、錠剤5に関し不良判定し、その後の処理を一旦終了する。
【0046】
また、前記ステップS107で肯定判定された場合には、ステップS108へ移行し、錠剤5に関し、良品判定を行い、その後の処理を一旦終了する。
【0047】
さて、前記ステップS106において、否定判定された場合には、ステップS110へ移行する。ステップS110においては、今回の検査ルーチンにおいて、「割線あり」の設定がなされているか否かを判定するとともに、塊個数が「2」であるか否かを判定する。そして、「割線あり」の設定がなされており、かつ、塊個数が「2」である場合に限り、ステップS111へ移行し、割線部マスク処理を行った上で、ステップS107の錠剤形状が良好か否かを判定する。
【0048】
ここで、割線部マスク処理について図11に基づき説明すると、2つの塊のそれぞれの重心位置M1,M2を求め、当該重心位置M1,M2を通る線分αの中心点C1を得る。そして、当該中心点C1を通り、かつ、前記線分αに直交する線分(直線)γを求め、当該線分γにプラスマイナスβの幅を持たせた帯状領域を、割線PLとみなしてマスク部として設定する。当該マスク処理されることで、次のステップS107においては、割線部の影響を除外した上での形状検査が可能となる。
【0049】
一方、前記ステップS110において、「割線あり」の設定がなされていないと判定されるか、又は、塊個数が「2」でもないと判定された場合には、ステップS109へ移行し、錠剤5に関し不良判定を行い、その後の処理を一旦終了する。
【0050】
次に、本実施形態によって奏される作用効果を確認するべく、照明装置22の光源として、紫色光(400nm)、青色光(430nm,470nm,490nm)、緑色光(550nm)、赤色光(700nm)、近赤外光(850nm,940nm,950nm,980nm)、赤外光(1000nm)を照射する各種光源を用いて試験を行った。その結果を図12に示す。
【0051】
ここでは、錠剤5を撮像して得られた錠剤画像において、被覆顆粒の中心部分に暗部(輪郭部分に明部)が現れない輝度斑の小さいものに「○」の評価を下し、被覆顆粒の中心部分に暗部(輪郭部分に明部)が現れた輝度斑の大きいものに「×」の評価を下した。
【0052】
図12に示す結果を踏まえて判断すると、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光を照射可能な青色光源、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外光源が、テオフィリン徐放性錠剤を検査するのに適していることが判る。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態によれば、従来の透過光検査とは異なり、照明装置22の照射光として、青色光(430nm〜490nm)又は近赤外光(940nm〜980nm)を用いることにより、テオフィリン徐放性錠剤5を撮像した場合でも、その被覆顆粒の中心部分と輪郭部分とで輝度斑の少ない錠剤画像を取得することができる。結果として、錠剤表面の欠け等を適正に検出することができ、検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、照明装置22が角度透過率制御フィルタ29を具備しており、当該角度透過率制御フィルタ29によって、容器フィルム3越しにカメラ23に直接入射する光が除去又は減光させられる。結果として、被覆顆粒の中心部分と輪郭部分との輝度差を小さくし、上記作用効果をさらに高めると共に、錠剤表面のより微小な欠け等をも検査することが可能となる。
【0055】
以上説明した実施形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
【0056】
(a)上記実施形態では、光源として青色光(430nm〜490nm)を照射可能な青色LED28a(青色光源)又は近赤外光(940nm〜980nm)を照射可能な近赤外LED(近赤外光源)を備えた構成となっている。
【0057】
これに限らず、照明装置22が、前記青色光源及び前記近赤色光源の両者を具備し、照射される光を前記青色光と前記近赤色光との間で切換可能とされる構成としてもよい。
【0058】
(b)上記実施形態では、照明装置22の拡散板27には、角度透過率制御フィルタ29が取着されているが、これを省略した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…密封用フィルム、5…テオフィリン徐放性錠剤、7…PTP包装機、21…錠剤検査装置、22…照明装置、23…カメラ、24…画像処理装置、27…拡散板、28a…青色LED、29…角度透過率制御フィルタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートの製造に際し用いられる錠剤検査装置、及び、該錠剤検査装置を備えたPTP包装機を含む技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTPシートは、錠剤が充填されるポケット部が形成された樹脂製の包装用フィルムと、その包装用フィルムにポケット部の開口側を密封するように前記包装用フィルムに取着されるアルミニウム製のカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
PTPシートの製造に際しては、ポケット部に錠剤が充填された後、カバーフィルムが取着される前段階において、錠剤の欠けや剥離など、錠剤の異常に関する検査が行われる。
【0004】
当該検査に際しては、錠剤充填後において、例えばポケット部側に設けられた照射手段から光を照射し、照射手段とは反対側に設けられたカメラにて透過光の撮像を行うことにより、錠剤を透過した光の画像データに基づいて、錠剤表面に欠けや剥離等の異常があるか否かが検査される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−198175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来では、錠剤の色による輝度変化を避ける等するため、一般に850nm程度の近赤外光を利用して上記透過光検査を行っているが、錠剤の種類によっては適切な検査を行えない場合もある。
【0007】
例えば、テオフィリン徐放性錠剤は、一定時間持続的に薬効成分が放出されるよう、主としてテオフィリンから成る素顆粒を水不溶性物質により被覆し、該被覆顆粒を賦形剤と共に打錠されて形成されている。このため、テオフィリン徐放性錠剤に上記近赤外光を照射して撮像を行った場合には、素顆粒を構成するテオフィリンと、その周りの賦形剤成分との光の透過率の違い等から、図13の模式図に示すように、撮像された錠剤画像70は、被覆顆粒71の中心部分が暗く、輪郭部分が明るい輝度斑の大きい画像となる。その結果、錠剤表面の欠けや剥離等を適正に検出することが困難となっていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、PTPシートの製造過程における錠剤の欠け等の検査に際し、検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.主としてテオフィリンから成る素顆粒を水不溶性物質により被覆し、該被覆顆粒を賦形剤と共に打錠してなるテオフィリン徐放性錠剤を収容するPTPシートの製造過程にあって、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に前記錠剤が収容された後、前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムがシール状態で取着される前段階において用いられる錠剤検査装置であって、
前記錠剤及び包装用フィルムに対し、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光を照射可能な青色光源、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外光源を具備する照明手段と、
前記照明手段とは前記包装用フィルムを介して反対側に設けられ、前記光源から照射され前記錠剤を透過する透過光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像信号を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、前記画像信号から得た画像データに基づき、少なくとも前記錠剤の表面異常を検出可能に構成されていることを特徴とする錠剤検査装置。
【0011】
上記手段1によれば、PTPシートの製造過程にあって、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部にテオフィリン徐放性錠剤が収容された後、ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムがシール状態で取着される前段階において錠剤検査装置による検査が行われる。すなわち、照明手段の光源から、錠剤及び包装用フィルムに対し上記青色光(430nm〜490nm)又は上記近赤外光(940nm〜980nm)が照射され、前記照明手段とは包装用フィルムを介して反対側に設けられた撮像手段にて、前記光源から照射され錠剤を透過する透過光が撮像される。そして、画像処理装置では、撮像手段から出力される画像信号が処理され、画像信号から得られた画像データに基づき、少なくとも錠剤の表面異常が検出される。ここで、錠剤の表面異常としては、錠剤のひびや欠け等が挙げられる。
【0012】
特に、照明手段の光源として、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光を照射可能な青色光源、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外光源を用いることにより、テオフィリン徐放性錠剤を撮像した場合でも、被覆顆粒の中心部分と輪郭部分とで輝度差の少ない錠剤画像を取得することができる。結果として、錠剤表面のひびや欠け等を適正に検出することができ、検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0013】
手段2.前記照明手段は、前記包装用フィルム越しに前記撮像手段に直接入射する光を除去又は減光させる直接入射光制限手段を具備していることを特徴とする手段1に記載の錠剤検査装置。
【0014】
上記手段2によれば、被覆顆粒の中心部分と輪郭部分との輝度差を小さくし、上記手段1の作用効果をさらに高めると共に、錠剤表面のより微小な欠け等をも検査することが可能となる。また、「前記直接入射光制限手段は、少なくとも前記光源と、前記撮像手段のレンズ部中心とを結ぶ直線方向に対し、前記レンズ部の画角分以内の光のみすべて全反射可能に構成された角度透過率制御フィルタからなること」がより好ましい。
【0015】
手段3.前記照明手段は、前記青色光源及び前記近赤色光源の両者を具備し、照射される光を前記青色光と前記近赤色光との間で切換可能としたことを特徴とする手段1又は2に記載の錠剤検査装置。
【0016】
上記手段3によれば、そのときどきのニーズに応じた照射の下、検査を実行することができる。例えば、包装用フィルムとして、赤色系のフィルムが採用されることがあるが、このような場合にまで青色光源から青色光を照射させたのでは、却って包装用フィルム自体で遮光されてしまうことが懸念される。このような場合には、近赤色光源から近赤色光を照射することで、無色フィルムと同様に、錠剤に関し正確な検査を実現することが可能となる。
【0017】
手段4.手段1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【0018】
上記手段4のように、錠剤検査装置をPTP包装機に備えることで、PTPシートの製造過程において不良品を効率的に除外できる等のメリットが生じる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態におけるPTP包装機等の概略構成を示す模式図である。
【図2】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPシートを示す部分拡大断面図である。
【図3】照明装置を模式的に示す部分断面図である。
【図4】照明装置のうち、角度透過率制御フィルタの機能を模式的に説明する説明図である。
【図5】錠剤検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】「検査ルーチン」を示すフローチャートである。
【図7】(a)はチッピング(欠け)が生じ、中央に割線を有し、かつ、刻印の付された錠剤を模式的に示す平面図であり、(b)は(a)のJ−J線断面図であり、(c)はJ−J線に沿った画像信号(明度)曲線を示すグラフである。
【図8】錠剤ウインドウの概念を説明するための平面模式図である。
【図9】錠剤形状ウインドウの概念を説明するための平面模式図である。
【図10】2値化後の画像を示す模式図である
【図11】割線部のマスク処理の手法を説明する説明図である。
【図12】各種光源を用いた試験の結果を示す表である。
【図13】従来の検査装置によりテオフィリン徐放性錠剤を撮像して得られた錠剤画像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、錠剤検査装置をPTP包装機に装備することによって、PTP包装機においてPTPシートの不良(特に、チッピング、キャッピング、スティッキング等と称される錠剤の表面欠け等の異常)が検査される。
【0021】
図2(a),(b)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた包装用フィルムとしての容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルムとしての密封用フィルム4とを有している。容器フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によって構成され、光透過性を有している(ここでは、透明を呈している)。密封用フィルム4は、アルミニウムによって構成されている。また、各ポケット部2にはテオフィリン徐放性錠剤5が1つずつ収容されている。
【0022】
テオフィリン徐放性錠剤5(以下、単に「錠剤5」という)は、一定時間持続的に薬効成分が放出されるよう、主としてテオフィリンから成る素顆粒を水不溶性物質により被覆し、該被覆顆粒を賦形剤と共に打錠されて形成されている。
【0023】
図1に示すように、PTP包装機7は、錠剤5を容器フィルム3に自動的に包装するものである。具体的には、PP、PVCなどの帯状の樹脂フィルムをフィルム送りロール9とテンションロール10,11とで、加熱装置12及び成形装置13に送り込み、錠剤5充填用のポケット部2を樹脂フィルムに成形する。そして、樹脂フィルムにポケット部2の成形された容器フィルム3が、充填装置14の下まで送られてくると、充填装置14が各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する。
【0024】
一方、帯状に形成された密封用フィルム4は、テンションロール16,17を介してフィルム受けロール18の方へと案内されている。フィルム受けロール18には、加熱ロール19が圧接可能となっており、該加熱ロール19の外周面には、僅かに凸状に形成された格子状の線(図示略)が設けられている。そして、両ロール18,19間に、容器フィルム3及び密封用フィルム4が送り込まれるようになっている。両フィルム3,4が、両ロール18,19間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着される。これによって、錠剤5が各ポケット部2に充填された長尺状のPTPフィルム20が製造される。
【0025】
さて、前記充填装置14の下流側、かつ、前記フィルム受けロール18及び加熱ロール19の上流側には、容器フィルム3の移送経路に沿って、容器フィルム3(充填された錠剤5)の不良を検査するための錠剤検査装置21が配設されている。当該錠剤検査装置21は、ポケット部2に充填された錠剤5の割れ、欠け等の表面異常の検出を主目的とする検査を行うものである。
【0026】
上記検査を経て、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後、PTPフィルム20は、図示しない打抜装置によってPTPシート1単位に裁断される。なお、錠剤検査装置21によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシートは、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0027】
さて、PTP包装機7の概略は以上のとおりであるが、以下においては図3〜5等に基づき、錠剤検査装置21についてより具体的に説明する。
【0028】
錠剤検査装置21は、照明手段としての照明装置22、撮像手段としてのカメラ23、画像処理装置24、モニタ25、及びキーボード26等を備えている。
【0029】
まずは、照明装置22について詳細に説明する。本実施形態における照明装置22は、容器フィルム3のポケット部2側に設けられており(図1参照)、面発光が可能となっている。図3に示すように照明装置22は、容器フィルム3に近い側(図の上側)において容器フィルム3と平行に延びる拡散板27を有しているとともに、その内部には、LED実装基板28が設けられている。そして、LED実装基板28には、青色光を照射可能な青色LED28a(青色光源)が多数配列されている。尚、青色光の波長としては、430nm以上490nmであることが望ましく、本実施形態では470nmに設定されている。
【0030】
尚、青色LED28a(青色光源)に代えて、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外LED(近赤外光源)を備えた構成としてもよい。近赤外光は、通常のCCDカメラ等おいても撮像可能な波長であり、青色光等の可視光に比べて錠剤5等の透過率が高いため、より精度の高い検査が可能となる。しかも、錠剤5等として着色の施されたものが採用されたり、容器フィルム3として着色フィルムが採用されたりする場合があるが、このような場合でも、着色による減光要素を無視しやすいというメリットがある。
【0031】
さらに、前記拡散板27の容器フィルム3側の面には、直接入射光制限手段としての角度透過率制御フィルタ29が取着されている。当該角度透過率制御フィルタ29は、図4に示すように、少なくとも光源(ここでは青色LED28a)と、カメラ23のレンズ部中心を結ぶ直線L1上の光を全反射可能に構成されているとともに、前記直線L1に対し、プラスマイナス前記レンズ部の画角θ以内の光を全反射可能に構成されている。換言すれば、角度透過率制御フィルタ29は、前記レンズ部の画角θよりも大きな光のみを透過しうるよう構成されている。これにより、光源(青色LED28a)からの青色光のカメラ23への直接の入射が制限されるようになっている。
【0032】
また、撮像手段を構成する前記カメラ23は、前記容器フィルム3を介して前記照明装置22とは反対側(図1では上側)に設けられており、照明装置22から照射される光のうち、容器フィルム3及び錠剤5を透過した光を撮像可能となっている。本実施形態では、カメラ23としては、少なくとも青色光に感度のあるCCDカメラが採用されている。
【0033】
このように、本実施形態では、照明装置22から拡散して斜めに照射される青色光が、容器フィルム3及び錠剤5を照らし、そこを透過した光が、カメラ23によって二次元撮像されるように構成されている。そして、カメラ23によって撮像された画像データは、カメラ23内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で画像処理装置24に入力されるようになっている。
【0034】
画像処理装置24は、図5に示すように、カメラ23に対応する画像メモリ41、マスキング手段42、二値化手段43、判定用メモリ44、検査結果及び統計データメモリ45、カメラタイミング制御手段46、並びに、CPU及び入出力インターフェース47などから構成され、後述するような画像データの処理や、錠剤不良の判定(検査)等を実施可能となっている。
【0035】
カメラ23で撮像された二次元イメージデータは、デジタル信号に変換された後、対応する画像メモリ41に記憶される。また、イメージデータは、検査時において、マスキング手段42によりマスキング処理が行われた後、再度画像メモリ41に記憶され、同様に、二値化手段43により二値化された後、再度画像メモリ41に記憶される。
【0036】
CPU及び入出力インターフェース47は、各種処理プログラムを判定用メモリ44の記憶内容などを使用しつつ実行するとともに、PTP包装機7に制御信号を送出し又はPTP包装機7から動作信号などの各種信号を送受信するためのものである。これによって、例えば、PTP包装機7の不良シート排出機構などを制御することができるようになっている。また、CPU及び入出力インターフェース47は、モニタ25に表示データを送出する機能をも有する。かかる機能により、二値あるいは濃淡のイメージデータや不良検査結果などを、モニタ25に表示させることができるようになっている。さらに、CPU及び入出力インターフェース47は、キーボード26からのデータを入力する機能をも有する。
【0037】
検査結果及び統計データメモリ45は、イメージデータに関する座標等のデータ、検査結果データ、及び、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。これらの検査結果データや統計データは、CPU及び入出力インターフェース47の制御に基づき、適宜モニタ25に表示させることができる。また、これらの検査結果データや統計データに基づいてCPU及び入出力インターフェース47がPTP包装機7に制御信号を送出することもできる。
【0038】
カメラタイミング制御手段46は、カメラ23が撮像するイメージデータを、画像メモリ41に取り込むタイミングを制御するものである。かかるタイミングはPTP包装機7に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3を所定量送るごとにカメラ23によるシート単位(例えば打ち抜かれるPTPシート単位)で撮像(撮影)が行われる。
【0039】
なお、本実施形態においては、検査に先だって、各ウインドウの設定処理が実行されるようになっている。当該ウインドウは、予め設定される錠剤ウインドウJW及び錠剤形状ウインドウKWからなる。図8に示すように、錠剤ウインドウJWは、ポケット部2内の領域(ポケット部領域)と、ポケット部2外のシート部の領域(シート部領域)とを区別するための境界とされるものである。当該錠剤ウインドウJWは、良品サンプル及び各種データに基づき事前に設定されるものであって、ポケット部2の円と同心円をなし(ポケット部2が円形である場合)、かつ、径が一回り(例えば直径が1mm)大きい。そして、検査に際しては、例えば、図8(b)に示すように、各検査画像データに関し、錠剤ウインドウJWが設定された上で、ポケット部2内の領域について、錠剤の異常が検出される(ポケット部2外の領域(同図網目模様を付した領域)についてはマスキングが施される)ようになっている。
【0040】
また、図9に示すように、錠剤形状ウインドウKWは、錠剤5の形状が適正であるかを検査する際に用いられるものであって、事前に設定されるものである。錠剤形状ウインドウKWは、錠剤5の大きさよりも一回り小さい内側形状ウインドウKW1と、錠剤5の大きさよりも一回り大きい外側形状ウインドウKW2とからなる。
【0041】
次に、上記不良検査(錠剤検査)の手順について図6のフローチャート等に従って説明する。
【0042】
同図に示すように、「検査ルーチン」において、まずステップS101では、検査用の濃淡画像を取得する。次に、ステップS102においては、取得した画像につきシェーディング補正を行い、続くステップS103においては、所定の閾値に基づき2値化処理を行い、錠剤2値化画像A,Bを得る。ここで、図7及び図10に基づいて当該2値化処理について説明する。図7において、(a)は、チッピング(欠け)Tが生じ、かつ、中央に割線PLを有し、かつ、「C」字状の刻印KMの付された錠剤5を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のJ−J線断面図であり、(c)はJ−J線に沿った画像信号(明度)曲線を示すグラフである。錠剤5は、欠け等が生じて薄肉となっている部位ほど光を通しやすい。そのため、薄肉部位ほど画像が明るくなる傾向にある。本実施形態における2値化処理に際しては、まず、基準閾値δ0以上で、かつ、第1の閾値δ1以下(範囲d1以内)の2値化画像A(図10(a)参照)を得る。当該画像Aにおいては、チッピングTや割線PLを除いた正常な錠剤部位が明るいものとなる。また、これとともに、基準閾値δ0以上で、かつ、第2の閾値δ2以下(範囲d2以内)の2値化画像Bを得る。当該画像Bにおいては、チッピングT、割線PLに加えて、刻印KM部分を除いた正常な錠剤部位が明るいものとなる。尚、基準閾値δ0、第1の閾値δ1及び第2の閾値δ2は、そのときどきの錠剤の厚みや密度等によってそれぞれ違った値に設定される。
【0043】
その後、ステップS104において、塊処理を行う。より詳しくは、上記2値化画像Aを塊処理した結果Cと、2値化画像Bを塊処理した結果Dとを得る。
【0044】
次に、ステップS105において、予め設定した前記錠剤ウインドウJWを用いて、ポケット部領域を特定するとともに、各ポケット部領域において、面積値が基準錠剤面積Lo以上の塊を抽出する(Lo未満の塊を除去する)。その後、ステップS106では、各ポケット部領域毎の塊個数が「1」であるか否かを判定し、否定判定された場合には、後述するステップS110へ移行する。
【0045】
これに対し、各ポケット部領域毎の塊個数が「1」である場合には、ステップS107において、前記錠剤形状ウインドウKWを用いて、錠剤5の形状が良好(適正)であるか否かを判断する。より詳しくは、前述した錠剤5の塊データより錠剤5の重心を求め、当該重心を同心とするようにして、予め設定された錠剤形状ウインドウKW(内側形状ウインドウKW1及び外側形状ウインドウKW2)を同時に配置し、両ウインドウKW1,KW2間から錠剤5の外形線が逸脱するか否かを判断する。そして、両ウインドウKW1,KW2間から錠剤5の外形線が逸脱する場合に、錠剤5の形状が異常であるものとして、ステップS109へ移行し、そこで、錠剤5に関し不良判定し、その後の処理を一旦終了する。
【0046】
また、前記ステップS107で肯定判定された場合には、ステップS108へ移行し、錠剤5に関し、良品判定を行い、その後の処理を一旦終了する。
【0047】
さて、前記ステップS106において、否定判定された場合には、ステップS110へ移行する。ステップS110においては、今回の検査ルーチンにおいて、「割線あり」の設定がなされているか否かを判定するとともに、塊個数が「2」であるか否かを判定する。そして、「割線あり」の設定がなされており、かつ、塊個数が「2」である場合に限り、ステップS111へ移行し、割線部マスク処理を行った上で、ステップS107の錠剤形状が良好か否かを判定する。
【0048】
ここで、割線部マスク処理について図11に基づき説明すると、2つの塊のそれぞれの重心位置M1,M2を求め、当該重心位置M1,M2を通る線分αの中心点C1を得る。そして、当該中心点C1を通り、かつ、前記線分αに直交する線分(直線)γを求め、当該線分γにプラスマイナスβの幅を持たせた帯状領域を、割線PLとみなしてマスク部として設定する。当該マスク処理されることで、次のステップS107においては、割線部の影響を除外した上での形状検査が可能となる。
【0049】
一方、前記ステップS110において、「割線あり」の設定がなされていないと判定されるか、又は、塊個数が「2」でもないと判定された場合には、ステップS109へ移行し、錠剤5に関し不良判定を行い、その後の処理を一旦終了する。
【0050】
次に、本実施形態によって奏される作用効果を確認するべく、照明装置22の光源として、紫色光(400nm)、青色光(430nm,470nm,490nm)、緑色光(550nm)、赤色光(700nm)、近赤外光(850nm,940nm,950nm,980nm)、赤外光(1000nm)を照射する各種光源を用いて試験を行った。その結果を図12に示す。
【0051】
ここでは、錠剤5を撮像して得られた錠剤画像において、被覆顆粒の中心部分に暗部(輪郭部分に明部)が現れない輝度斑の小さいものに「○」の評価を下し、被覆顆粒の中心部分に暗部(輪郭部分に明部)が現れた輝度斑の大きいものに「×」の評価を下した。
【0052】
図12に示す結果を踏まえて判断すると、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光を照射可能な青色光源、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外光源が、テオフィリン徐放性錠剤を検査するのに適していることが判る。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態によれば、従来の透過光検査とは異なり、照明装置22の照射光として、青色光(430nm〜490nm)又は近赤外光(940nm〜980nm)を用いることにより、テオフィリン徐放性錠剤5を撮像した場合でも、その被覆顆粒の中心部分と輪郭部分とで輝度斑の少ない錠剤画像を取得することができる。結果として、錠剤表面の欠け等を適正に検出することができ、検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、照明装置22が角度透過率制御フィルタ29を具備しており、当該角度透過率制御フィルタ29によって、容器フィルム3越しにカメラ23に直接入射する光が除去又は減光させられる。結果として、被覆顆粒の中心部分と輪郭部分との輝度差を小さくし、上記作用効果をさらに高めると共に、錠剤表面のより微小な欠け等をも検査することが可能となる。
【0055】
以上説明した実施形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
【0056】
(a)上記実施形態では、光源として青色光(430nm〜490nm)を照射可能な青色LED28a(青色光源)又は近赤外光(940nm〜980nm)を照射可能な近赤外LED(近赤外光源)を備えた構成となっている。
【0057】
これに限らず、照明装置22が、前記青色光源及び前記近赤色光源の両者を具備し、照射される光を前記青色光と前記近赤色光との間で切換可能とされる構成としてもよい。
【0058】
(b)上記実施形態では、照明装置22の拡散板27には、角度透過率制御フィルタ29が取着されているが、これを省略した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…密封用フィルム、5…テオフィリン徐放性錠剤、7…PTP包装機、21…錠剤検査装置、22…照明装置、23…カメラ、24…画像処理装置、27…拡散板、28a…青色LED、29…角度透過率制御フィルタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてテオフィリンから成る素顆粒を水不溶性物質により被覆し、該被覆顆粒を賦形剤と共に打錠してなるテオフィリン徐放性錠剤を収容するPTPシートの製造過程にあって、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に前記錠剤が収容された後、前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムがシール状態で取着される前段階において用いられる錠剤検査装置であって、
前記錠剤及び包装用フィルムに対し、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光を照射可能な青色光源、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外光源を具備する照明手段と、
前記照明手段とは前記包装用フィルムを介して反対側に設けられ、前記光源から照射され前記錠剤を透過する透過光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像信号を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、前記画像信号から得た画像データに基づき、少なくとも前記錠剤の表面異常を検出可能に構成されていることを特徴とする錠剤検査装置。
【請求項2】
前記照明手段は、前記包装用フィルム越しに前記撮像手段に直接入射する光を除去又は減光させる直接入射光制限手段を具備していることを特徴とする請求項1に記載の錠剤検査装置。
【請求項3】
前記照明手段は、前記青色光源及び前記近赤色光源の両者を具備し、照射される光を前記青色光と前記近赤色光との間で切換可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【請求項1】
主としてテオフィリンから成る素顆粒を水不溶性物質により被覆し、該被覆顆粒を賦形剤と共に打錠してなるテオフィリン徐放性錠剤を収容するPTPシートの製造過程にあって、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に前記錠剤が収容された後、前記ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムがシール状態で取着される前段階において用いられる錠剤検査装置であって、
前記錠剤及び包装用フィルムに対し、430nm以上490nm以下の範囲内にピーク波長をもつ青色光を照射可能な青色光源、又は、940nm以上980nm以下の範囲内にピーク波長をもつ近赤外光を照射可能な近赤外光源を具備する照明手段と、
前記照明手段とは前記包装用フィルムを介して反対側に設けられ、前記光源から照射され前記錠剤を透過する透過光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像信号を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、前記画像信号から得た画像データに基づき、少なくとも前記錠剤の表面異常を検出可能に構成されていることを特徴とする錠剤検査装置。
【請求項2】
前記照明手段は、前記包装用フィルム越しに前記撮像手段に直接入射する光を除去又は減光させる直接入射光制限手段を具備していることを特徴とする請求項1に記載の錠剤検査装置。
【請求項3】
前記照明手段は、前記青色光源及び前記近赤色光源の両者を具備し、照射される光を前記青色光と前記近赤色光との間で切換可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−127827(P2012−127827A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280002(P2010−280002)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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